ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第41話『2回戦、終了です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第41話『2回戦、終了です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦車道・歩兵道全国大会2回戦………

 

序盤こそアンツィオ&ピッツァ機甲部隊に損害を与えた大洗機甲部隊だったが………

 

あんこうチームととらさん分隊が先行した間に、フォルゴーレ率いるピッツァ歩兵部隊に襲撃され、あわやのところまで追い詰められた。

 

だが、辛うじて弘樹が間に合い、更にみほ達あんこうチームも、アンツィオ戦車部隊のフラッグ車………アンチョビが乗るP40の撃破に成功。

 

隔して………

 

大洗機甲部隊は、またも辛くもだが、2回戦を勝ち進んだのだった。

 

 

 

 

 

大洗学園艦が停泊している港………

 

「こりゃまた派手にやられたねぇ~」

 

戦車の回収に来た整備員達の中に居たナカジマが、全て何処かしらが損傷している大洗戦車部隊の戦車を見てそう呟く。

 

「すぐに部品を発注してくれ。整備は損傷の激しい車両から優先して行う」

 

「ホイ来たぁっ!」

 

敏郎は即座に整備部長の顔となり指示を出し、藤兵衛を中心とした整備部員達が戦車を大洗学園艦へと運び出す。

 

「今回もギリギリの勝利だったね」

 

「ハッ………」

 

その様子を見ていた迫信がそう呟き、傍に居た弘樹は肯定の返事を返す。

 

集まっている大洗機甲部隊の面々も、皆大なり小なり疲れた様子を見せている。

 

「み、皆さん………」

 

とそこで、そんな一同にみほが声を掛け、全員の視線がみほに集まる。

 

「今回は私が手間取ったせいで皆さんに負担掛けてしまって、申し訳………」

 

と、みほがそう言って謝ろうとしたところ………

 

「申し訳ありません、西住総隊長」

 

それを制する様に弘樹がみほに向かって謝罪した。

 

「えっ!?」

 

「今回の損害の責任は全て小官にあります。小官が今少し早く本隊へ合流していれば………」

 

戸惑うみほに弘樹はそう言葉を続ける。

 

「そ、そんな! アレは!………」

 

「いやいや、本隊の指揮を任されていたのは私だ。責任は私に有るよ」

 

みほが何か言おうとしたところ、再びそれを遮って、今度は迫信がそう言って来た。

 

「いや、アレは俺が………」

 

「俺がもっと頑張っていれば!」

 

「すみません! 僕が!………」

 

それを皮切りに、大洗歩兵部隊の面々から次々に責任を感じている言葉が挙がる。

 

「皆さん………」

 

「西住くん。責任は我々全員に在る。誰か1人のせいと言う事は有り得ないのだよ。我々がすべき事は、反省点を反省し、次の試合に活かす事だ」

 

そんな大洗歩兵部隊の様子を見ていたみほに、迫信がいつもの様に不敵に笑ってそう言った。

 

「神大さん………」

 

そこでみほは再び弘樹の方を見やる。

 

「…………」

 

弘樹はいつもの仏頂面のまま、ただ力強く頷いた。

 

「………皆さん、ありがとう」

 

それを見たみほは笑顔となり、皆に向かって謝罪ではなく、お礼を言った。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

大洗機甲部隊のメンバーは同じ様に笑いながら、ピースサインをしたり、サムズアップをしたり、ガッツポーズをする。

 

「じゃあ、帰ろうかぁ」

 

とそこで場を纏める様に杏がそう言った瞬間………

 

「西住 みほ!!」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

怒鳴り声が響いて来て、一同がそちらを見やるとそこには………

 

「私はお前の戦車道を認めないぞ! お前は黒森峰で! フラッグ車の車長でありながら勝負を投げ出した!!」

 

「総帥(ドゥーチェ)!」

 

「…………」

 

そこには興奮した様子で捲し立てる様に言葉を飛ばしてくるアンチョビとそんなアンチョビを止めようとしているカルパッチョ。

 

そして、その傍に無言で佇んでいるフォルゴーレの姿が在った。

 

「結果、黒森峰は敗北! お前はチームを負けに追いやったのだ!!」

 

「! あ、貴方は!!」

 

「抜かしとんやないで! ワイ等に負けといて言う台詞かい!!」

 

優花里が何か言おうとしたよりも先に、大河がアンチョビに向かってそう言い放つ。

 

「黙れ! 私は西住 みほと話している!!」

 

「何やとぉっ!!」

 

「待って下さいっ!!」

 

思わずアンチョビに掴み掛って行こうとした大河を、みほが手で制す。

 

「………確かに、私は黒森峰で敗北を喫しました。でも、戦車道や歩兵道には、勝つか負けるか以外にも大切な事があると思うんです」

 

「ふざけるな! そんなモノある訳がない! 戦車道や歩兵道をやるからには勝たねば意味が無いのだ!!」

 

「それでは、アンチョビさんが仲間と一緒に頑張った事に意味は無かったんですか?」

 

「何?………」

 

みほのその言葉でアンチョビは黙り込む。

 

「私は大洗に来て、沢山の友達に支えられています。戦車道に背を向けた時もあったけど………今の私や私の戦車道は、友達が居たからこそココにあるんです」

 

そこでみほは大洗機甲部隊の面々を見渡す。

 

「私は『勝負』よりも『仲間』を大切にしたい!!」

 

そして、アンチョビに向かってハッキリとそう言い放った。

 

「西住殿………」

 

「みぽりん………」

 

「みほさん………」

 

「…………」

 

そんなみほの姿に、優花里、沙織、華、麻子のあんこうチームの面々は感激した様子を見せる。

 

他の大洗機甲部隊の面々も同様である。

 

「…………」

 

そして弘樹も相変わらず仏頂面だが、静かに頷いていた。

 

「…………」

 

「総帥(ドゥーチェ)、我々も行きましょう」

 

「………ああ」

 

アンチョビはそんなみほの姿を暫し見つめたかと思うと、カルパッチョにそう言われて踵を返す。

 

「西住 みほ………」

 

「!………」

 

と、数歩歩いた所で足を止め、背を向けたままみほに声を掛ける。

 

「お前の言い分は分かった………だが! だが!そんなモノは言葉だけ理想に過ぎないなっ!!」

 

「なっ!………」

 

「待て………」

 

優花里が食いかかろうとしたが、弘樹がそれを止める。

 

「仲間が大切であるなら………尚のこと隊長の役割は、仲間を勝利に導いてやる事じゃないのか?」

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

「隊長としての役割………私はそう思っている」

 

「総帥(ドゥーチェ)………」

 

「カルパッチョ………すまなかった」

 

「………いえ」

 

最後にそう言い残して、アンチョビとカルパッチョは去って行く。

 

「…………」

 

後には、未だに佇んでいるフォルゴーレが残された。

 

「フォルゴーレ………」

 

「本来ならば隊長が来るべきなのだが、不貞腐れていてしまってな。代理で来させてもらった」

 

弘樹が声を掛けると、フォルゴーレは初めて口を開き、そう言い放つ。

 

「そうか………」

 

「先ずは勝利を祝わせてもらおう………しかし、西住 みほ」

 

「ハ、ハイ!」

 

「先程は仲間を大切にしたいと言っていたが………その仲間がコレでは報われんな」

 

「えっ!?」

 

「貴方! 何を!!………」

 

フォルゴーレの思わぬ言葉にみほが驚き、優花里が食いかかろうとしたところ………

 

「今日の試合は見事だった。だが忘れるな、大洗機甲部隊の諸君! 勝てたのは諸君等の力ではない! 西住 みほの指揮と舩坂 弘樹の活躍による精神的な支えのお蔭だ! それを忘れるなっ!!」

 

フォルゴーレはそれを遮る様にそう言い放ち、そのまま踵を返して立ち去って行った。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

残された大洗機甲部隊の面々は茫然となる。

 

「ふん、負け惜しみを………」

 

「だが、強ち間違いとは言えないぜ」

 

十河は完全なる負け惜しみだと言うが、俊がそれに反論する。

 

「西住総隊長と舩坂の奴が離れていた間に本隊に攻め込まれた時、結局あのフォルゴーレの奴1人に掻き回されたじゃねーか。戦車を3台も撃破されて、フラッグ車もあわやと言うところ。正直、かなり危なかったぞ」

 

「それは!………」

 

俊の言葉に反論しようとした十河だが、なまじ正論な為に言葉に詰まる。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

大洗機甲部隊の面々も、言葉が無かった。

 

「諸君、今はその事を気にしていても仕方がないよ」

 

とそこで、迫信がいつもの不敵な表情でそう言って来る。

 

「我々の個々の実力は不足しているのは紛れも無い事実だ。しかし、運が良かったとはいえ、この試合では勝ちを拾えた。ならばその点を猛省し、次にはそうならない様にするのが我々の務めだよ」

 

若干気持ちが落ち込みかけていた大洗機甲部隊に向かってそう言い、上手くまとめる迫信。

 

「会長………」

 

「さ、もうすぐサンショウウオさんチームのライブだ。観覧しに行こうじゃないか」

 

そして、現在戦勝後のライブの準備を行っているサンショウウオさんチームの事を挙げ、話を切り替える。

 

「………そうだな」

 

「気にしててもしょうがねえよな」

 

「次までに練習をもっと頑張れば良いんだから!」

 

「おーっ!!」

 

それにより大洗機甲部隊の面々は気持ちを切り替え、サンショウウオさんチームが居るライブ会場へと向かう。

 

「神大さん、ありがとうございます」

 

みほは、皆の空気を変えてくれた迫信に礼を言う。

 

「何、大した事はしていないさ………では、お先に失礼するよ」

 

迫信はフッと笑うと、自分もサンショウウオさんチームが居るライブ会場へと向かった。

 

「我々も行こうか、西住くん」

 

そこで弘樹が、残されたみほに声を掛ける。

 

「あ、うん………」

 

弘樹に返事を返した後、何かを考え込む様な表情になるみほ。

 

「………気にしているのかい?」

 

先程アンチョビやフォルゴーレに言われた事について尋ねる弘樹。

 

「うん、ちょっと………アンチョビさんが言ってた事も分かる気がするから………それに、フォルゴーレさんが言ってたみたいに、私の存在が皆に依存心を与えてるんじゃないかと思って………」

 

みほは思い悩む様な表情を見せる。

 

「彼女には彼女の戦車道がある。フォルゴーレが言っていた事は、コレから解決して行けば良い………それだけの事だ」

 

弘樹はそんなみほにそう言葉を掛ける。

 

「舩坂くん………」

 

いつも通りの弘樹の仏頂面を見ながら呟くみほ。

 

「みぽり~ん! 行くよ~っ!!」

 

「お~い、弘樹~っ! 何やってんだぁ~っ!!」

 

とそこで、何時の間にか先へ行って居たあんこうチームととらさん分隊の面々の中で、沙織と地市が2人を呼ぶ。

 

「………行くか」

 

「………うん」

 

弘樹とみほはお互いの顔を見合って頷き合うと、2人並んでライブ会場へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライブ会場………

 

会場内の客席には、大洗機甲部隊の面々に加え、大洗女子学園・男子校の生徒達………

 

更に、アンツィオ高校とピッツァ男子校の一般の生徒達らしき人々が、疎らに席に座っている。

 

アンツィオ&ピッツァ機甲部隊の面々の姿は無い為、1回戦の時より空席が目立つが、実質一般の客は増えていると言えるだろう。

 

「少しだけど………お客さん、増えたね」

 

「そうだね………」

 

疎らながらも客席に居る大洗女子学園・男子校の生徒達や、アンツィオ高校とピッツァ男子校の一般の生徒達の姿を見て、聖子と伊代がそう言い合う。

 

「けど、まだ満員には程遠いですね………」

 

「それも、最初に比べれば、大きな進歩だよ!!」

 

優は冷静にそう言い放つが、聖子がポジティブな意見を挙げる。

 

「「「…………」」」

 

一方、今日がデビュー&初ライブとなる明菜、静香、満里奈の3人は、緊張でガチガチに固まっている。

 

最早頭の中も真っ白な状態だろう。

 

「「「…………」」」

 

聖子、優、伊代の3人は、そんな明菜、静香、満里奈の姿を見ると………

 

聖子が明菜、優が静香、伊代が満里奈の背後に立ち、優しくその肩に両手を乗せた。

 

「!?」

 

「ふわっ!?」

 

「せ、先輩!?」

 

優しく置かれたとはいえ、突然肩に手を置かれた事に驚く満里奈、静香、明菜だったが………

 

「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ~」

 

「そうです。日頃の練習通りにやれば良いのです」

 

「失敗しても、私達がちゃ~んとフォローしてあげるから」

 

伊代、優、聖子は其々に3人に向かって笑みを向けてそう言った。

 

「先輩………」

 

「…………」

 

「にゃあ~~………」

 

その笑顔を見た明菜、静香、満里奈から緊張が消えて行く………

 

「………良し! じゃあ行くよぉっ!!」

 

「「「「「おお~~~~っ!!」」」」」

 

そして、聖子が拳を振り上げてそう言うと、他の一同もそれに続いた!

 

「ミュージック、スタートッ!」

 

磐渡がそう言って演奏を開始し、明菜、静香、満里奈を加えた『Enter Enter MISSION』が披露される。

 

「…………」

 

そんな聖子達のライブを、食い入る様な視線で見つめている、1人の大洗女子学園の生徒が居た。

 

「………輝いてる」

 

ステージ上の聖子達を見ながら、そんな言葉を零す少女。

 

「………アタシも………あんな風に………」

 

少女は更にそう呟き、聖子達のステージを1秒たりとも見逃さず、観賞し続けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして………

 

ライブステージの出入り口付近では………

 

「ふん………中々良い歌じゃないか」

 

アンチョビが出入り口部分に背中を預け、ステージ上のサンショウウオさんチームを見ながらそんな事を呟く。

 

「………まだまだ荒削りですが、中々のモノを持っています………戦車乗りとしても………スクールアイドルとしても」

 

その傍に控えていたカルパッチョも、聖子達を見ながらそう評す。

 

「彼女達が戦車チームとして参戦していたら………もっと危うかったかも知れませんな」

 

フォルゴーレもそう言った瞬間………

 

「L・O・V・E! ラブリー、サンショウウオさんチームッ!!」

 

すっかりサンショウウオさんチームのファンになった様子のロマーノが、脇目も振らずに声援を飛ばす。

 

「…………」

 

それを見たアンチョビは、無言でロマーノをしばき始めた。

 

「ありがとうございます! ありがとうございます!」

 

しばかれる度にお礼を言うロマーノ。

 

完全に手遅れである………

 

「………行くぞ」

 

「ハイ」

 

「隊長、行きますよ」

 

「ほええ~~~………」

 

アンチョビがそう言って踵を返すとカルパッチョが続き、フォルゴーレも恍惚の表情を浮かべているロマーノの首根っこを掴んで引き摺って行くのだった。

 

「サンショウウオさんチームか………貴様等が西住 みほの戦車道で生き残れるか如何か………見させてもらうぞ」

 

一瞬だけステージの方を振り返ったかと思うと、アンチョビはサンショウウオさんチームを見ながらそう言い放つ。

 

そのサンショウウオさんチームは既にライブを終え、大洗機甲部隊の面々と、僅かに集まっていた客から拍手を浴びていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

アンツィオ&ピッツァ機甲部隊との公式2回戦、終了です。
敗れはしたものの、みほに大きな影響を与えるアンチョビとフォルゴーレ。
サンショウウオさんチームのライブも、地味ながらも観客が入り始めました。

さて、次回からは予告したとおりに、サンショウウオさんチームが本格的に戦車道に参加し、カモさんチームも参入するので、大洗歩兵部隊員の増員を行うエピソードが暫く続きます。
どんなメンバーが加入するのか、楽しみにしていて下さい。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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