ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第40話『フォルゴーレ空挺師団です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第40話『フォルゴーレ空挺師団です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アンツィオ&ピッツァ機甲部隊を追い詰めたかに思われた大洗機甲部隊………

 

だが、しかし!

 

あんこうチームととらさん分隊が本隊への先回りを掛けていた間に………

 

ピッツァ歩兵部隊の副隊長・フォルゴーレが………

 

大洗機甲部隊を強襲!

 

その鬼の様な戦闘力を持って、アッと言う間にM3リーと八九式を撃破する。

 

本隊の危機を聞いたとらさん分隊から、弘樹と白狼が救援に向かい、みほ達あんこうチームと残りのとらさん分隊員達は、アンツィオ&ピッツァ機甲部隊の本隊へ仕掛ける。

 

戦いはどちらがフラッグ車を撃破するのが早いか………

 

時間との戦いとなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗機甲部隊・本隊………

 

突如現れたフォルゴーレにより、2両の戦車を撃破され、大混乱の大洗機甲部隊。

 

そしてそんな中、熾龍はフォルゴーレと対峙していた。

 

着剣したカルカノM1938を構えるフォルゴーレと、愛刀・戦獄を脇で構えている熾龍が、互いの様子を窺う様に横移動する。

 

『フォルゴーレ! コチラは現在大洗の隊長車と交戦中!! このままじゃマズイかも知れないわ!!』

 

とそこで、フォルゴーレの耳にそう言うカルパッチョからの通信が飛び込んで来る。

 

「了解しました、カルパッチョ様………悠長にしていられんか………仕掛けさせてもらう!」

 

それを聞いたフォルゴーレは、熾龍へと仕掛けた!

 

「!!」

 

着剣したカルカノM1938の縦斬りを戦獄で流す熾龍。

 

しかし、フォルゴーレはすぐさま返す刀で横薙ぎを繰り出す。

 

「!!………」

 

コレも如何にか受け止めた熾龍だが、間髪入れずに今度は突きが襲って来る!!

 

「チイッ!………」

 

熾龍は飛び退く様にバックステップして距離を離す。

 

そして、左手を戦獄から放したかと思うと、戦闘服の懐に入れて十四年式拳銃を抜き、フォルゴーレに向けたが………

 

「させんっ!!」

 

フォルゴーレはそう言い放ったかと思うと、左手にワイヤーを握り、それを熾龍目掛けて伸ばした!!

 

伸びて来たワイヤーが、十四年式拳銃に巻き付く!

 

「!?」

 

「むんっ!!」

 

熾龍が一瞬驚いていた瞬間に、フォルゴーレはそのまま熾龍の手から十四年式拳銃を奪い去る!

 

ワイヤーに絡め取られていた十四年式拳銃は、上へと舞い上げられ、そのまま彼方へ放り投げられた。

 

「小癪なっ!………」

 

「隙有りっ!!」

 

熾龍がそう言った瞬間、フォルゴーレの着剣したカルカノM1938での袈裟懸けが繰り出される!

 

「!!………」

 

咄嗟に身を反らした熾龍だったが、着剣したカルカノM1938は熾龍の左腕を斬り裂いた!

 

戦闘服が甚大なダメージを受けたと判定を下し、左腕の動きが効かなくなる。

 

「ッ! 片腕をやられただけだ………」

 

だが、熾龍はそれを逆手に取り、フォルゴーレの追撃を動かなくなった左腕で受ける。

 

フォルゴーレは2撃、3撃と攻撃を続けるが、熾龍は左腕を盾に受け止める。

 

「フッ! 反射神経は良い様だな。だが! コレは避けられるかっ!!」

 

するとフォルゴーレはそう叫んだかと思うと、着剣したカルカノM1938を右に向かって思いっきり放り投げた!

 

「!?………! 不覚っ!!」

 

「目の良さが命取りだぁっ!!」

 

熾龍が反射的にそれを目で追ってしまった隙にフォルゴーレは跳躍。

 

再びワイヤーを握って、熾龍に向かって伸ばす!

 

「ぐうっ!?」

 

フォルゴーレが伸ばしてきたワイヤーが、熾龍の首に巻き付く。

 

「栗林先輩!」

 

「拙いぞっ!!」

 

「副隊長の邪魔はさせんっ!!」

 

熾龍の窮地を目撃する大洗歩兵部隊の面々だが、フォルゴーレに付き従って来たピッツァ歩兵部隊の隊員達に阻まれ、援護に行けない。

 

「…………」

 

まだ動く右手で首に巻き付いているワイヤーを掴み、逆にフォルゴーレを引き寄せようとする熾龍。

 

「遊びが過ぎた様だな………」

 

しかし、フォルゴーレはピクリとも動かない。

 

すると………

 

「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!」

 

桃の叫び声と共に、38tがフォルゴーレに向かって突撃する。

 

「!?」

 

「むんっ!!」

 

するとフォルゴーレは、ワイヤーを手繰り寄せ、熾龍を盾にする様にした。

 

「! 貴様っ!!」

 

「如何する!? まだコイツに戦死判定は下されていないぞ!!」

 

屈辱的な扱いに熾龍が怒りを見せるが、フォルゴーレは意に介せず、突っ込んで来る38tに向かってそう言い放つ。

 

だが………

 

「撃て撃て撃てぇーっ!!」

 

桃のテンパった叫びが響くと、38tは熾龍を盾にしているフォルゴーレ目掛けて次々に砲弾を見舞った!

 

「!? 何っ!?」

 

「! チイッ!!」

 

味方の事などお構い無しに撃って来た38tにフォルゴーレが驚いていると、熾龍はその隙を突いて後ろ蹴りを叩き込み、拘束から逃れて離脱する!

 

「! 不覚っ!!」

 

そう叫びながらも、飛んで来る砲弾を避ける為、回避行動に移るフォルゴーレ。

 

「味方ごと攻撃するとは!………いや、コチラに隙が出来る事を知って離脱すると読んだか。大した信頼だ」

 

38tからの攻撃をそう解釈するフォルゴーレ。

 

無論そんな事は全然無く、桃はいつもの様にテンパって熾龍が居るのも目に入らず砲撃を行っただけである。

 

「………あの女………後で叩き斬る………」

 

一方、辛うじて離脱に成功した熾龍は、着弾で出来た穴の中に隠れながら怒気を含んだ呟きを漏らしたのだった。

 

「撃てぇーっ! 撃て撃て撃てぇーっ!! 相手を人間だと思うなぁーっ!! 人の皮を被った化け物だと思えーっ!!」

 

「も、桃ちゃんっ!!」

 

「落ち着いて! 落ち着いて、桃ちゃんっ!!」

 

柚子と蛍が止めるのも聞かず、桃は自分で装填しては主砲をブッ放すと言う行為を繰り返す。

 

と………

 

「!? ア、アレッ!? 砲弾が無いっ!?」

 

とうとう38tは搭載されていた全ての砲弾を使い尽くしてしまう。

 

「フッ………弾切れの様だな!」

 

それに気づいたフォルゴーレは回避行動を止め、38tに突撃する。

 

「! 小山! 全速前進! 体当たりだっ!!」

 

「ええっ!? 会長! 幾らなんでもそれは!!」

 

「急げっ!!」

 

杏の指示に柚子は戸惑ったが、杏が何時もの不敵な様子を投げ捨て、完全に焦っている表情で柚子にそう言い放つ。

 

「!? ハ、ハイッ!!」

 

鬼気迫るものを感じ、柚子は条件反射的に38tを発進させ、突撃して来るフォルゴーレを跳ね飛ばそうとする。

 

「蛍! 機銃を撃てっ!!」

 

「! う、うんっ!!」

 

更に杏は蛍に砲塔の機銃を撃つ様に命じ、自らも通信手席に装備されていたMG37を発砲する!

 

砲塔と車体の機銃から次々と放たれた弾丸が、フォルゴーレの足元の地面を爆ぜさせる。

 

「止められるかぁっ!!」

 

しかし、フォルゴーレは一切怯まず突撃を続ける。

 

「! 小山ーっ!!」

 

「ご、ごめんなさいーっ!!」

 

杏は再度柚子に呼び掛け、柚子は遂に最大速度でフォルゴーレに突っ込む!

 

だが、その瞬間!

 

「見切ったぞっ!!」

 

フォルゴーレはそう言い放ったかと思うと、何と!

 

その場に仰向けに寝そべった!!

 

38tが突っ込んで来ると、フォルゴーレは車体と地面の隙間、履帯と履帯の間に入り込む。

 

そして車体下側に在ったフック部分を掴み、引き摺られる。

 

「ア、アレッ!?」

 

「消えたっ!?」

 

突然フォルゴーレの姿が消えた様に見えた柚子と桃が慌てる。

 

「!? 下だよっ!!」

 

「小山! 信地旋回っ!!」

 

と、蛍がそう声を挙げると、杏もそう叫ぶ。

 

「遅いっ!!」

 

しかし、既にフォルゴーレは、対戦車地雷を38tの底面に仕掛け、フック部分から手を離して離脱する。

 

38tがそのまま少し進んだかと思うと、底面部で爆発が起こり停止。

 

そのまま砲塔から白旗が飛び出して、撃破されたと判定された。

 

「!? カメさんチームが!?」

 

「マズイぞっ! もう残ってるのはフラッグ車だけだぞっ!!」

 

それを見た大洗歩兵部隊の隊員達からそんな声が挙がる。

 

そう………

 

Ⅳ号がアンツィオ&ピッツァ機甲部隊へと向かった今、大洗機甲部隊に残された戦車はフラッグ車であるカバさんチームのⅢ突だけだった。

 

「残るはフラッグ車………奴さえ叩けば」

 

フォルゴーレはそのⅢ突を睨みつける様に見据える。

 

「クッ! 何と言う気迫………」

 

「蛇に睨まれた蛙とはこの事だな」

 

その気迫を感じ取った左衛門佐とカエサルが冷や汗を流しながらそう呟く。

 

「おりょう! 前に出ろ! 守ったら負ける!! 攻めるんだっ!!」

 

「おうぜよっ!!」

 

と、そこでエルヴィンがそう指示し、おりょうはⅢ突を前進させる。

 

「待て! カバさんチーム! 危険だっ!!」

 

「撃てぇっ!!」

 

ゾルダートがそう叫んだ瞬間、エルヴィンの号令でⅢ突がフォルゴーレに向かって砲撃する!

 

しかし、フォルゴーレはまたも僅かに身を反らしただけで回避する。

 

「正確な砲撃だ。それ故に予想し易い」

 

「カエサル! 次弾っ!!」

 

「分かっているっ!!」

 

フォルゴーレがそう言う中、エルヴィンはカエサルに次弾を装填させ、再び砲撃を行う。

 

「ほう、思いっ切りの良い戦車長だ。手強い………だが!」

 

再び僅かに身を反らしただけで砲撃をかわすと、フォルゴーレは対戦車地雷をフリスビーの様にⅢ突目掛けて投げつける。

 

「おりょう! かわせっ!!」

 

「ホイッ!!」

 

エルヴィンは即座に反応し、Ⅲ突は左方向へ進行先を変える。

 

対戦車地雷は空を切った………

 

………かに思われた瞬間!!

 

「まだ終わりではないぞっ!!」

 

何と!!

 

フォルゴーレはその投擲した対戦車地雷に向かってワイヤーを伸ばしてキャッチ!

 

そのまま軌道を変えて、Ⅲ突の右側面にブチ当てた!!

 

「「「「!? うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」」」」

 

何が起こったのか分からぬまま、カバさんチームの悲鳴にも似た叫びが挙がり、Ⅲ突の右側の履帯と転輪が幾つも千切れ飛ぶ。

 

しかし、辛うじて撃破判定は下らなかった様で、白旗は上がらない。

 

だが、砲塔の無い自走砲のⅢ突にとって、動けなくなる事は致命傷に等しかった。

 

「大洗機甲部隊、お前達は良く戦った………だが、ココまでだ!!」

 

そのⅢ突にトドメを刺すべく、火炎瓶を構えるフォルゴーレ。

 

「イカン! 駆けろ! シュトゥルムッ!!」

 

すぐさまゾルダートが救援に向かおうとシュトゥルムを駆けさせるが………

 

「邪魔はさせないぞっ!!」

 

「副隊長! 急いでフラッグ車をっ!!」

 

「クウッ! 退いて頂こうっ!!」

 

ピッツァ歩兵部隊が、捨て身で進路に立ちはだかり、ゾルダートを阻止する。

 

「コレで終わりだっ!!」

 

そして遂に、フォルゴーレは火炎瓶をⅢ突へ投げつけようとする。

 

大洗機甲部隊の命運も此処に尽きたか………

 

かと、思われたその瞬間!!

 

爆音と共に、茂みの中から1台のバイクが飛び出し、フォルゴーレの頭上を飛び越す様に大きくジャンプした。

 

「!? むっ!?」

 

「チェストオオオオオオオオォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーッ!!」

 

フォルゴーレがそれを見上げた瞬間!!

 

そのバイク………白狼のK800Wの後部から飛び降りた弘樹が、着剣した九九式短小銃を上段に振り被った状態から落下と共に振り下ろして来る!!

 

「! チイッ!!」

 

咄嗟にバックステップを踏んだフォルゴーレだったが、弘樹の斬撃は火炎瓶の火種部分を斬り落とした!

 

「ぬうっ!?」

 

「やはり貴様か………フォルゴーレ」

 

初めて僅かに動揺を見せたフォルゴーレに、弘樹は着剣した九九式短小銃を構えながらそう言い放つ。

 

「舩坂 弘樹か………流石は英霊の血を引く者………危機を聞いて颯爽と駆けてつけて来たか………」

 

対するフォルゴーレも、ワイヤーを使って放り投げ捨てていた着剣したカルカノM1938を回収し、弘樹に向かって構える。

 

『舩坂 弘樹。気を付けろ………その男は君と一緒だ」

 

とそこで、弘樹の耳に煌人からのそう言う通信が入って来る。

 

「小官と同じ?………」

 

『その男も第二次世界大戦で活躍した者の血を引く男だと言う事さ。最も、個人ではなく部隊の様だがな………』

 

「やはり………『フォルゴーレ空挺師団』か」

 

『その通り』

 

弘樹の言葉を肯定する煌人。

 

 

 

 

 

『フォルゴーレ空挺師団』………

 

第二次世界大戦に於ける、北アフリカ戦線での戦いで伝説的な活躍をしたイタリア軍の部隊である。

 

アメリカからの支援を受け、『バーナード・モントゴメリー将軍』に指揮されたイギリス軍により、それまで北アフリカ戦線で連戦連勝していた枢軸軍は大打撃を受けて敗退。

 

追撃を仕掛けて来た連合軍を食い止めたのがイタリア軍………『フォルゴーレ空挺師団』である。

 

兵力比1:13、戦車比1:70、更には歩兵用の対戦車装備は火炎瓶と地雷だけと言う絶望どころではない状況下で、フォルゴーレ空挺師団はイギリスの戦車部隊に果敢に肉薄攻撃を敢行。

 

最終的にフォルゴーレ空挺師団は壊滅状態となったが、連合軍の戦車部隊に大損害を与え、本格的な攻勢を2度も退けた。

 

時のイギリス首相『ウィンストン・チャーチル』は、フォルゴーレ空挺師団の奮闘を称え、『彼らは獅子の如く戦った』と賞賛したと言われている。

 

 

 

 

 

「気づいていたのか………」

 

「そんなあからさまな名前を名乗られてはな………」

 

不敵に笑うフォルゴーレに、弘樹は無表情のまま着剣した九九式短小銃を構え直す。

 

「フフ、英霊の子孫と一騎打ちする事になるとはな………だが、負けん!」

 

フォルゴーレもそう言い、着剣したカルカノM1938を構える。

 

「「…………」」

 

そしてそのまま、黙って両者は睨み合いとなった。

 

(2人の実力は完全に拮抗している………勝負が着くのは………一瞬だ)

 

その様子を見たゾルダートが、そう分析する。

 

「「…………」」

 

弘樹とフォルゴーレは、お互いの一挙一動を見逃さず、摺り足でジリジリと移動する。

 

(………埒が明かんか。時間を掛けている暇は無い………ならば!)

 

とそこで、本隊も襲撃を受けており、時間的な余裕が無いと感じていたフォルゴーレが誘いに出た。

 

態と大きく身体を動かし、隙を作る。

 

「………!」

 

それを見た弘樹は、即座にフォルゴーレに仕掛ける!

 

着剣した九九式短小銃で、フォルゴーレを突き刺そうと突撃する弘樹。

 

「掛かったなぁっ!!」

 

だが、その瞬間にフォルゴーレも着剣したカルカノM1938を下段に構え、弘樹に向かって突撃する!

 

「!…………」

 

弘樹はそのフォルゴーレに向かって、着剣した九九式短小銃の突きを繰り出す。

 

しかし、フォルゴーレは身を屈め、弘樹が繰り出した着剣した九九式短小銃の突きは微かに肩を斬っただけだった。

 

「勝ったぞっ!!………!?」

 

懐に飛び込む事に成功し、勝利を確信したフォルゴーレは、カルカノM1938での突きを繰り出そうとしたが、そこで彼は目撃する………

 

着剣した九九式短小銃を握っていた筈の弘樹の右手が………

 

何時の前にか、腰の刀・英霊の柄を握っている事に………

 

「しまっ………」

 

「シエアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

フォルゴーレが台詞を言い切る前に、弘樹の気合の叫びと共に英霊が引き抜かれ、そのまま片手で居合いを繰り出す!!

 

「!? ぐああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

左切り上げで斬り付けられたフォルゴーレは一瞬宙を舞い、そのまま地面に仰向けに倒れたかと思うと、戦死判定が下された。

 

「!? 副隊長っ!?」

 

「弘樹っ!!」

 

ピッツァ歩兵部隊の隊員達の悲鳴の様な叫び声と、大洗歩兵部隊の歓声にも似た声が同時に響き渡り、両部隊の動きが一瞬止まる。

 

その瞬間に………

 

『アンツィオ戦車部隊フラッグ車、行動不能! よって、大洗機甲部隊の勝利っ!!』

 

試合終了………そして、大洗機甲部隊の勝利を告げるアナウンスが響いて来たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間は少し遡り………

 

「フォーコッ(撃て)!!」

 

「撃てっ!!」

 

誘い出したP40とⅣ号は一騎打ちを展開。

 

互いに走り回りながら次々と砲撃を行っているが、行進間射撃の為、お互いに命中弾は無い。

 

「西住殿! 徹甲弾、成形炸薬弾の残り僅かです!!」

 

新たな徹甲弾を装填した優花里が、みほにそう報告する。

 

「みぽりん! ウサギさんチームとアヒルさんチームに加えて、カメさんチームもやられたって! 残ってるフラッグ車のカバさんチームも危ないって!!」

 

更に沙織も、本隊から入った報告を伝える。

 

「コレ以上は時間を掛けられない………一か八かですが、勝負を掛けますっ!!」

 

「分かりました」

 

「如何するんだ?」

 

みほがそう判断を下すと、華が照準器を除いたまま力強く頷き、麻子がそう問い質してくる。

 

「麻子さん、敵戦車の左側に回り込んで下さい!」

 

「ん………」

 

その指示通りに、麻子が操縦するⅣ号はP40の左側面に回り込もうとする。

 

「! 左に回り込んで来るぞ! 旋回っ!!」

 

「ハイッ!!」

 

アンチョビはすぐに反応し、ペパロニはP40を旋回させる。

 

「今です! 突っ込んでっ!!」

 

「ホイ………」

 

それを見たみほは、即座に回り込むのを中断し、Ⅳ号をP40目掛けて突撃させた!

 

「!? 突っ込んで来ます!!」

 

「何っ!? ええいっ! フォーコッ(撃て)!!」

 

驚きつつもアンチョビは即座に発砲を指示。

 

P40の砲塔が突っ込んで来るⅣ号に向けられる。

 

だが、その直後!!

 

「華さん! 砲身を下げてっ!!」

 

「ハイッ!!」

 

Ⅳ号の砲身が少し下がったかと思うと、更に加速を付けて突撃!!

 

「!? 何っ!?」

 

再びアンチョビが驚きの声を挙げた瞬間!

 

P40の砲身とⅣ号の砲身が接触!!

 

そのまま火花を散らして、Ⅳ号の砲身がP40の砲身の下に潜り込んだ!!

 

P40が放った砲弾は、Ⅳ号のキューポラを掠めて外れる!

 

そのまま突っ込んだⅣ号は、砲口をP40の砲塔基部に潜り込ませる様にセットした!!

 

「撃てぇっ!!」

 

「ハイッ!!」

 

直後に華が徹甲弾を発砲!!

 

P40の砲塔基部から爆発と黒煙が上がる!!

 

暫しその一帯は、爆煙に包まれ、Ⅳ号とP40の姿は見えなくなる。

 

やがて、爆煙が晴れて来たかと思うと………

 

砲身先端部が砕けたⅣ号と………

 

砲塔から白旗を上げているP40の姿が露わになった。

 

『アンツィオ戦車部隊フラッグ車、行動不能! よって、大洗機甲部隊の勝利っ!!』

 

直後に、主審の篠川 香音による、大洗機甲部隊の勝利を告げるアナウンスが流された。

 

「やったぁっ!!」

 

「やりましたね、みほさん!!」

 

「西住殿ぉっ!!」

 

「またギリギリだったがな………」

 

それを受けて、沙織、華、優花里、麻子が、多種多様な声を挙げる。

 

「フゥ~~~~………良かったぁ」

 

みほは緊張の糸が切れた様に、大きく息を吐いて椅子に深く凭れ掛かった。

 

『こちらとらさん分隊分隊長、舩坂 弘樹。西住総隊長、応答願います』

 

とそこで、弘樹からの通信が送られてくる。

 

「! アッ、ハ、ハイッ!! 西住ですっ!!」

 

途端にみほは、通信であるにも関わらずに、姿勢を正して応答する。

 

『やりましたね。フラッグ車を撃破なされたのですね』

 

「うん、何とかね………他の皆は大丈夫?」

 

『ハイ。戦車部隊はほぼ壊滅状態で、歩兵部隊にも多数の被害が出ましたが、負傷者は居ません』

 

「そう、良かった………では、コレより帰還します」

 

『了解しました。通信終わり』

 

そう遣り取りを交わすと弘樹は通信を切る。

 

「麻子さん、動けますか? 集合地点に戻ります」

 

「大丈夫だ、駆動系に異常は無い」

 

みほはそう呼び掛けると、麻子は動くのは問題無いと言って砲身先端部が砕けたⅣ号を操縦して、集合場所まで戻り始めるのだった。

 

「西住 みほ………」

 

その場に残された、撃破されたP40の中では、アンチョビが心底悔しそうな表情を浮かべて、持っていた教鞭を圧し折るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

前回、鬼の如き活躍を見せたフォルゴーレ。
実は彼も、第二次世界大戦で活躍した部隊に居た人の子孫なのです。
フォルゴーレ空挺師団については、エル・アラメインの戦いを調べてみて下さい。

しかし、今回も首の皮一枚繋がった状態で、大洗の勝利です。
次回は試合後のエピソードとなります。
そしてその次からはいよいよカモさんチームとサンショウウオさんチームが参戦。
更に、歩兵部隊にも増員を行います。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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