ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第4話『最豪 嵐一郎教官です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第4話『最豪 嵐一郎教官です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗女子学園と、大洗国際男子高校の生徒達による戦車捜索が続く中………

 

再び邂逅を果たした弘樹とみほは、自分達の祖先が浅からぬ縁を持っていた事に驚きつつ、親睦を深めていた。

 

弘樹は、友達の為に自らのトラウマと向き合おうとしているみほの優しさと強さに触れ、感銘を覚え、何が有っても彼女を護る事を誓う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗学園艦・大洗女子学園の裏手の山林………

 

弘樹達とみほ達による戦車探しが続いている。

 

「コッチはまだだったよな?」

 

「うむ。しかし、この地形では、戦車が置いておけるとは思えないな………」

 

「西住殿。コッチは如何でしょう?」

 

「う~ん、一応調べてみようか」

 

弘樹と地市、みほと優花里が、其々に地図を見ながら、戦車が有りそうな場所に目星を付ける。

 

「………うん?」

 

するとそこで、捜索を続けていた華が、何かに気付いた様に声を挙げる。

 

「? 如何かしたぁ?」

 

「…………」

 

沙織が尋ねると、華は何やら匂いを嗅ぐ様に鼻をヒクヒクとさせる。

 

「アッチから匂いが………」

 

「匂い?」

 

「匂いで分かるんですか?」

 

華の言葉に、了平が首を傾げ、優花里がそう尋ねる。

 

「花の香りに混じって、ほんのりと鉄と油の臭いが………」

 

「華道やってると、そんなに敏感になるの?」

 

「私だけかも知れませんけど………」

 

沙織の驚きの声にそう返しながら、華は匂いのする方向へと歩いて行く。

 

「華道?」

 

「あ、うん。華の実家って、華道の家元なんだ」

 

「マジで! 黒髪ロングの大和撫子で華道やってるなんて、完璧じゃん!」

 

「何がですか、了平」

 

相変わらずの了平に、楓が突っ込みを入れる。

 

「彼女が歩兵だったなら偵察兵………それもスカウト兵の素質があるな」

 

「弘樹、それも如何なんだ?」

 

そして若干的外れなコメントをしている弘樹にも、地市の突っ込みが入る。

 

更に………

 

「そうか、ありがとう。じゃあね」

 

少し離れたところで、手に小鳥を止まらせていた飛彗がそう言って小鳥を放すと、弘樹達の元へやって来る。

 

「この先に大きな金属の塊が有るそうです。戦車か如何かは分かりませんけど、言ってみる価値は有ると思います」

 

「ホントか?」

 

「ええ。小鳥が教えてくれました」

 

地市が尋ねると、飛彗は笑みを浮かべてそう言う。

 

「? 小鳥?」

 

「何お前? まさか動物と会話出来るなんて言う積もり?」

 

地市が首を傾げると、了平が何を馬鹿な事をと言う様に言うが………

 

「? ええ、そうですけど?」

 

それを聞いた飛彗の方が、不思議そうに首を傾げた。

 

「「えっ?………」」

 

思わず絶句する地市と了平。

 

「と、取り敢えず、アッチですね! ではっ! パンツァー・フォーッ!!」

 

そこで優花里が空気を読んで、華が向かって行った方向を指差し、そう声を挙げる。

 

「パンツのアホーッ!?」

 

「何っ!? パンツッ!?」

 

「何処に反応してんだ、オメェーは」

 

それを聞き違いで思わず声を挙げてしまう沙織と、その沙織の言葉に反応する了平にツッコミを入れる地市。

 

「パンツァー・フォー、戦車前進って意味なの」

 

そんな沙織達に向かって、みほが苦笑いしながら説明する。

 

「へえ~、そうなんだ………歩兵道にはそう言うの無いの?」

 

すると沙織は、弘樹へそんな質問をぶつけた。

 

「うむ、歩兵道でなら………『アールハンドゥガンパレード』だな」

 

「『アールハンドゥガンパレード』?」

 

「全軍抜刀、全軍突撃と言う意味だ」

 

首を傾げる沙織に、弘樹はそう説明する。

 

「お~い! 有りましたよ~っ!!」

 

「「「「「!!」」」」」

 

とそこで、華と共に先へ進んでいた楓からの声が響いて来て、一同は慌てる様に林の奥へと向かった。

 

やがて、鬱蒼とした林の中に、鉄とサビの塊………戦車が姿を現す。

 

「やった! 有ったよ!!」

 

「38t………」

 

「軽戦車か………」

 

沙織が声を挙げると、みほが戦車の名前、弘樹が戦車の種別を呟く。

 

「何かさっきのよりちっちゃ~い。ビスだらけで、ポツポツしてるし………」

 

戦車に関しては素人な沙織も、学園の倉庫で見つけたⅣ号戦車と比べても小さい38tに不満そうな声を漏らす。

 

「38tと言えば、ロンメル将軍の第7装甲師団でも主力を務め、初期のドイツ電撃戦を支えた重要な戦車なんですぅ」

 

しかし、対照的に優花里は嬉しそうに、赤く染めた頬を38tの車体前面装甲に擦り付けている。

 

「軽快で走破性も高くて………あ! 『t』って言うのは、チェコスロバキア製って事で、重さの単位の事じゃないんですよ!………はっ!?」

 

「今………活き活きしてたよ」

 

「すみません………」

 

嬉々とした様子で語り出した優花里がハッと我に返ると、沙織がそう突っ込みを入れた。

 

「あの子………戦車マニアか?」

 

「成程。所謂戦車萌えってやつか………上級者だな」

 

「貴方は一体何を言ってるんですか?」

 

一連の流れを見ていた地市がそう呟き、了平が痛い発言をし、楓が突っ込みを入れると言う、お約束の流れが決まる。

 

「や~、漸く見つかりましたね~」

 

(この戦車では、対戦車戦は不向きと言わざるを得ないな………まさか他の戦車も同様な戦車ばかりと言う事はあるまいな?)

 

やや暢気そうにそう呟く飛彗の横で、弘樹は大洗に残っている戦車への不安を感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗女子学園・倉庫前………

 

「見つかったかな~、戦車?」

 

折り畳み式の椅子に腰掛け、茨城名物の干し芋を齧っている大洗女子学園の生徒会長『角谷 杏』が他人事の様にそう呟く。

 

「何、我が校の歩兵部隊も捜索を手伝ってくれている。発見は時間の問題だ」

 

その隣に立って、広げた扇子で口元を隠している迫信がそう言う。

 

「流石だね~。あむ」

 

「ふふふ………」

 

それを聞いて、再び干し芋を齧る杏と不敵な笑いを零す迫信。

 

「あ、どうも。大洗国際男子校生徒会、雑務担当の小金井 逞巳です」

 

「どうも御丁寧に。大洗女子学園生徒会副会長の小山 柚子です………あの、雑務担当と言うのは?」

 

「ハハハハ………ウチの生徒会は如何にも優秀な人が多過ぎましてね………」

 

その傍では、逞巳と大洗女子学園の生徒会・副会長の『小山 柚子』が丁寧な挨拶を交わしている。

 

「むっ? 私だ………」

 

とそこで、大洗女子学園の生徒会・広報官の『河嶋 桃』の携帯が鳴り、桃は通話ボタンを押して電話に出る。

 

「うむ、そうか………御苦労。運搬は自動車部と男子校の輸送科に依頼しておくので、引き続き捜索を続行せよ」

 

そう言って電話を切ると、杏達の方へ向き直る。

 

「見つかったかね?」

 

「ええ、西住達が1両発見しました」

 

迫信が尋ねると、桃はそう返す。

 

「やれば出来るもんだねぇ。あむ」

 

杏はそう言って、また干し芋を齧る。

 

「しっかし、此処に有る戦車がコレだろう? 他のも使いモンになるのかねぇ?」

 

「祈るしかありませんね………」

 

倉庫の中に有るスクラップ寸前のⅣ号戦車を見ながら、俊と清十郎がそう言い合う。

 

(この歩兵道で迫信以上の活躍をして見せれば、俺の支持率はアップ………副会長から生徒会長への出世も夢では無い!)

 

1人、内心で密かな野心を燃やしている十河。

 

「…………」

 

そして熾龍は、無言で目を閉じ、倉庫の壁に背を預けて佇んでいた。

 

と、そこへ………

 

「杏~っ!」

 

杏の名を呼びながら、大洗女子学園の制服に身を包んだ1人の背の高い少女がやって来る。

 

「アレ? 蛍じゃん。如何したの?」

 

杏がその少女………『蛍』の姿を見て、軽く驚いた様に言う。

 

「ハアハア………杏が………戦車道を復活させるって聞いたから………私も………お手伝いしようと思って………ハアハア………あ~、寝起きで走るの辛い………」

 

若干息を切らせた様子で、杏にそう言う蛍。

 

「大丈夫ぅ? そっちは夜に学校なんだし、無理しなくても………」

 

そんな彼女の事を気遣う様に杏はそう言う。

 

実は彼女は苦学生であり、昼間はアルバイトで学費を稼ぎ、大洗女子学園の夜間定時学科に通っているのだ。

 

更に、定時校の生徒会長も務めており、その忙しさは計り知れない。

 

「ううん、そうは行かないよ………」

 

とそこで、蛍は杏に耳打ちする様な姿勢となる。

 

(戦車道で優勝しないと廃校になっちゃうんでしょ? 私にだって他人事じゃないよ)

 

(蛍………ありがとう)

 

そう耳打ちしてくる蛍に、杏は多くは語らず、ただ礼を言うのだった。

 

「やあ、蛍くん。元気そうで何よりだ」

 

するとそこで、今度は迫信が蛍へと声を掛ける。

 

「お久しぶりです、迫信様………あの時以来ですね」

 

すると蛍は、迫信に向かって畏まった挨拶をする。

 

実は彼女、入学前に陸の大洗町の駅にて通り魔事件に遭っているのだが、その際に彼女を助けたのが他ならぬ迫信なのである。

 

尚、その時のショックで彼女は記憶の一部を失っているのだが、本人は然程気には止めていない。

 

「君も戦車道に参加してくれるのか………心強いよ」

 

「友達と学校の為です。それに迫信様への恩も有りますから」

 

「感謝する」

 

迫信はそう言い、扇子をパチンと閉じるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その間にも………

 

女子学園と男子校の生徒による、戦車探しは続けられている。

 

 

 

学園艦の山林地帯・岩肌となっている断崖絶壁の上にて………

 

「良いぞぉっ! ゆっくり下ろせやぁっ!!」

 

「「「「「「「「「「オッスッ! 親分っ!!」」」」」」」」」」

 

「皆! 頼むよぉっ!!」

 

「「「「「「「「「「ハイ、キャプテンッ!!」」」」」」」」」」

 

大河が大洗連合の舎弟達に、武志がラクビー部の部員達に身体に巻き付けたロープを握ってもらい、岩肌の崖をロッククライミングか、特殊部隊の訓練の様に降りていた。

 

「あの、大丈夫ですか?」

 

「やっぱり、私達が行った方が………」

 

その様子を見ていた、大洗女子学園の戦車道受講者で、現在廃部となっているバレー部のメンバーである金髪のロングヘアで、後ろ髪を束ねカチューシャを付けている背の高い少女『佐々木 あけび』と、同じくバレー部で茶色掛かった紫色でセミロングの髪で、赤い鉢巻を巻いている背の高い少女『近藤 妙子』がそう言う。

 

「ガハハハハッ! 何を言う!!」

 

「こんな危険な事、女子にさせたとあっては男の名折れでござる!」

 

「君達はそこで見ていてくれ」

 

しかし、大洗連合とラクビー部のメンバーに混じっていた明夫と小太郎、大詔が、そう返す。

 

「武志、大丈夫かなぁ?」

 

「? キャプテン。ラクビー部のあの方とお知り合いなんですか?」

 

そこで、同じ様に男子の様子を見守っていたバレー部のキャプテンであるメンバーの中で1番小柄な少女『磯辺 典子』がそう呟き、部員の1人でショートヘアで後ろ髪を束ねている背の高い少女『河西 忍』がそう尋ねる。

 

「うん、幼馴染なんだ、武志とは」

 

「有ったでぇーっ!!」

 

と、典子がそう答えていたところ、大河の声が響いて来る。

 

「こんな所に………」

 

「一体どないしてこうなったんや?」

 

武志と大河は、岩肌の崖の途中に空いていた洞窟の中にあった戦車………『八九式中戦車甲型』を見ながらそう呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、湿地地帯のとある沼では………

 

「如何だ? 磐渡?」

 

沼の端に座り込み、箱メガネで沼の中を覗き込んでいる磐渡に向かって、鷺澪が尋ねる。

 

「ちょっと待ってくれ………」

 

そう言いながら、更に箱メガネを覗き込むが………

 

「駄目だ! 濁ってて全然見えないぞ!!」

 

やがてそう言って顔を上げた。

 

「オイ、ホントに此処に戦車が在るのか?」

 

「ま、間違いありません! 金属探知機に反応が有りましたから………多分」

 

重音に尋ねられて、金属探知機を持った灰史が、自信無さ気にそう返す。

 

「頼りねえなぁ………」

 

「そんなんじゃまどろっこしいぜよ」

 

するとそこで、磐渡達と一緒に捜索していた女子学園の生徒………黒系の青色で眼鏡を掛けており、紋付を羽織っている少女・『おりょう』がそう言ったかと思うと………

 

「むっ!」

 

左目を瞑っている、赤茶色のロングストレートの髪で、六文銭模様付きの赤い鉢巻を付け、弓道の胸当てをしている少女・『左衛門佐』が、口に竹を咥え、沼の中へと飛び込んだ!

 

所謂水遁の術である。

 

「!? えええっ!?」

 

「ちょっ!? 何してんの!?」

 

それを見た磐渡が驚きの声を挙げていると………

 

「いざ!」

 

「ヤヴォール!」

 

それに続く様に、赤いマフラーを首に巻いた背の高い少女・『カエサル』と、金髪のショートヘアで軍用ジャケットを着用しドイツ陸軍を模した軍帽を被った少女・『エルヴィン』が、おりょうと共に水蜘蛛の術で沼の上に立つ。

 

「ええ~~っ!?」

 

「あの人達、何者ですか?」

 

思わず灰史がそんな事を呟いてしまう。

 

彼女達は、全員が歴女であり、カサエルが古代ローマ史、エルヴィンが欧州戦史、左衛門佐が戦国時代、おりょうが幕末史に精通している。

 

尚、彼女達の名前は曰く、『ソウルネーム』らしく、本名は別にあるらしい。

 

程無くして、左衛門佐が沼の底に沈んでいた戦車………『Ⅲ号突撃砲F型』を発見するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更に、大洗女子学園の飼育エリアでも………

 

「鶏小屋には………無いな」

 

「ホースの小屋にもアリマセン」

 

「ヤギ小屋にも無しです!」

 

鶏小屋と馬小屋を覗いていた竜真とジェームズ、ヤギ小屋を覗いていた正義からそう声が挙がる。

 

「牛舎にも有りません………!? うわぁっ!?」

 

「鴨小屋にもです………ひゃあっ!?」

 

牛舎とカモ小屋を捜索していた光照と勇武がそう報告を挙げた瞬間、牛とカモに驚かされる。

 

「有ったよ!」

 

「コレ戦車でしょ!」

 

「間違いないよ!!」

 

するとそこで、1番奥のウサギ小屋を見に行っていたメンバーの中の、女子学園の1年生である焦茶掛かったの髪の少女・『澤 梓』、青色のロングヘアの髪の少女・『山郷 あゆみ』、黄土色のツインテールで眼鏡を掛けた少女・『大野 あや』の声が響いて来る。

 

それを聞いた光照達がウサギ小屋へと向かうと、そこにはウサギ達の家代わりに使われている『M3中戦車・リー』の姿が在った。

 

「やったーっ!!」

 

「やった見つかった~!」

 

捜しに捜し抜いて、漸く見つかった事へ歓喜の声を挙げる、茶色のショートの髪をした少女・『阪口 桂利奈』、黒色のショートボブの髪の少女・『宇津木 優季』

 

「ゴメンよ。新しいお家は必ず用意してあげるからね」

 

その女子達の中に混じって、M3中戦車の上に居たウサギ達を退かしながらそう言う誠也。

 

「…………」

 

そして1人、何を考えているのか分からない顔で、只ボーッとM3中戦車を見上げている灰色の髪をした少女・『丸山 紗希』が居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男子校歩兵道受講者の生徒達と、女子学園戦車道受講者の生徒達は、大洗女子学園の倉庫前に並べられた戦車の前に集まっている。

 

「八九式中戦車甲型、38t軽戦車、M3中戦車リー、Ⅲ号突撃砲F型、それからⅣ号中戦車D型」

 

桃が集めた戦車の名前を読み上げて行く。

 

「捜しゃあ有るもんだな」

 

地市が、集められた戦車達を見ながらそう呟く。

 

「…………」

 

しかし、弘樹は難しい顔で、集められた戦車を眺めている。

 

(火力として最大なのはⅢ突か………Ⅳ号も立ち回り次第では活躍出来る………しかし………総合的に見て、対戦車戦闘能力が乏しいな………)

 

内心でそんな思いを抱く弘樹。

 

(だがそこは我々歩兵がカバーするしかないな………歩兵道は戦車に乗る女性を守ってこそ意味を持つ)

 

だが、自らをそう納得させ、不安を断ち切るのだった。

 

「どう振り分けますか?」

 

「見つけたモンが見つけた戦車に乗れば良いんじゃない?」

 

「そんな事で良いんですか?」

 

「杏………相変わらず、豪快と言うか、適当と言うか………」

 

桃、杏、柚子の生徒会メンバーと蛍がそう言い合う。

 

「38tは我々が、お前達がⅣ号で」

 

すると、如何やら生徒会メンバーは38tを選んだらしく、Ⅳ号がみほ達に回って来る。

 

「えっ? あ、ハイ………」

 

突然言われて戸惑いながらも返事を返すみほ。

 

そしてそのまま、戦車の振り分けが行われた結果………

 

Ⅳ号戦車が、みほ、沙織、華、優花里のAチーム。

 

八九式中戦車が、典子、妙子、忍、あけびのバレー部達・Bチーム。

 

Ⅲ号突撃砲が、カエサル、エルヴィン、左衛門佐、おりょうの歴女達・Cチーム。

 

M3中戦車が、梓、あゆみ、紗希、桂利奈、優季、あやの1年生達・Dチーム。

 

そして38t軽戦車が、杏、桃、柚子、蛍の生徒会メンバー・Eチームとなった。

 

「明後日には教官がお見えになる。粗相の無いよう、戦車を綺麗にするんだぞ」

 

桃がみほ達を見ながらそう言う。

 

「どんな人かな~」

 

そんな中、まだ見ぬ教官に淡い思いを抱いている沙織。

 

「では、我々も戦車を綺麗にする手伝いを………おっと! すまない。少し失礼させてもらう」

 

と、迫信が男子校の生徒達に戦車の清掃を手伝う様にと言おうとしたところ、携帯電話が鳴り、皆に断わると、一旦その場から少し離れる。

 

「私だ………ふむ………ふむ………何? 到着は明日ではなかったのか?………うむ………そうか………了解した。連絡、感謝する」

 

何やらしきりに頷いていたかと思うと、そう言って電話を切ると、男子校の生徒達の元へと戻って来る迫信。

 

「? 会長? 如何かしたんですか?」

 

その様子が気になった逞巳が、迫信に尋ねる。

 

「うむ………諸君、大至急学園へと帰還してくれ。間も無く教官殿がお見えになる事になった」

 

すると迫信は、皆に向かってそう言い放つ。

 

「ええっ!? 教官が来るってのは明日の筈じゃなかったのかよ?」

 

海音が驚いた様にそう声を挙げ、他のメンバーもざわめき立つ。

 

「それが急遽予定を早めたらしい。到着次第、歩兵道の授業を行うらしい」

 

「そりゃまた急な話だな………」

 

俊が急な予定変更に呆れた様に呟く。

 

「兎に角、全員学園に戻るぞ。教官殿をお待たせするワケにはイカン」

 

そこで、弘樹が場を纏める様に言い放ち、男子校の生徒達は一斉に帰路に就き始める。

 

「すまない、杏くん」

 

「良いよ、良いよ。気にしないで。歩兵の皆には試合の時、活躍してくれる事を期待してるからさ」

 

「そう有れるよう努力するよ」

 

杏にそう言い、迫信と生徒会一行も男子校へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数十分後………

 

男子校生徒達は、男子校の敷地内にあった歩兵道授業用訓練場へと集結していた………

 

「急に予定早めるだなんてなぁ………」

 

「私達の方の教官と言うのは、一体どんな方なのでしょうか?」

 

地市と楓、急に予定を早めた教官への興味を募らせる。

 

他のメンバーも、多かれ少なかれ緊張の様子を見せている。

 

と、その時………

 

爆音が聞こえて来たかと思うと、訓練場に突風が吹き始めた!

 

「!?」

 

「うわぁっ!?」

 

「何だっ!?」

 

突然の突風と爆音に一同はたじろぐ。

 

「!? 上や!!」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

とそこで大河がそう声を挙げ、全員が空を見上げる。

 

そこには、ゆっくりと降下してくる迷彩色のタンデムローターの大型ヘリの姿が在った。

 

「CH-47チヌーク………陸上自衛隊仕様のJA型か」

 

学帽を押さえながら、降下して来るヘリ………陸上自衛隊のCH-47JA、大型輸送用ヘリコプターを見上げていた弘樹がそう言う。

 

やがてCH-47JAは、弘樹達の前に横になる様に着陸。

 

機械音を立てて後部ハッチが空いたかと思うと、迷彩服3型に身を包み、作服装業帽を被った如何にも叩き上げと言う様なガタイの良い自衛官が姿を現した。

 

「…………」

 

自衛官は気難しそうな顔をしながら、無言で弘樹達の前まで歩み寄って来る。

 

「貴方が歩兵道の教官をして下さる自衛官の方ですか?」

 

「………貴様は?」

 

迫信が代表して尋ねると、自衛官は鋭い視線を向けながらそう尋ね返す。

 

(うわっ!?)

 

(す、凄い迫力だ………)

 

「コレは失礼致しました。私は当学園の生徒会長を務めています、神大 迫信です。本日はお忙しい中お越し頂き、誠にありがとうございます」

 

その迫力に、逞巳と俊が思わず怯むが、迫信と平然と挨拶をする。

 

「うむ………」

 

自衛官の教官はそれを聞くと、並び立っている弘樹達を見据える。

 

「………整列っ!!」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

突然の教官の言葉に、一同はその迫力に押される様に整列する。

 

「俺が貴様等の歩兵道の授業で教官をする『最豪 嵐一郎(さいごう らんいちろう)』だ!! 話し掛けられた時以外は口を開くな!!」

 

そんな一同に向かって、教官………『最豪 嵐一郎』は、怒鳴る様にそう言い放つ。

 

「「「「「「「「「「ハイッ! 教官っ!!」」」」」」」」」」

 

それに対し、多くの者が恐れを抱きながら脊髄反射的にそう返事をする。

 

「ハイではない! 私への返事は、『ラジャーッ!』若しくは『了解!』だ!! 分かったか、屑共!!」

 

「「「「「「「「「「ラジャーッ!」」」」」」」」」」

 

嵐一郎が罵倒を浴びせると、一同は訂正して返事をする。

 

「ふざけるな! 大声を出せっ! 貴様等全員オカマ野郎か!?」

 

「「「「「「「「「「ラジャーッ!!」」」」」」」」」」

 

再び嵐一郎の罵倒が飛ぶと、一同は大声を出して返事をする。

 

「貴様等屑共が俺の訓練を生き残れた時! 各人が立派な歩兵となり、活躍出来るだろう!! 歩兵こそが試合の花形だ!!」

 

整列している一同の前を行ったり来たりしながらそう言い放つ嵐一郎。

 

「その日まで、お前達はゴミ屑だ! この世で最も劣った生き物だ! 貴様等は人間では無い!! 道端に転がっている石ころ程度の値打ちも無い!!」

 

容赦無い罵詈雑言が一同へと浴びせられる。

 

既に一部のメンバーは心が折れそうになっている。

 

「貴様等は厳しい俺を嫌う! だが、憎めばそれだけ学ぶ! 俺は厳しいが公平だ!! 差別は許さん!! 優等生、劣等生、模範生、不良を俺は見下さん!! 全て………平等に価値が無いっ!!」

 

嵐一郎の罵詈雑言は更に続く。

 

「俺の使命は役立たずを刈り取る事だ! 愛する歩兵道の害虫を! 分かったか、屑共!!」

 

「「「「「「「「「「ラジャーッ!!」」」」」」」」」」

 

「ふざけるな! 大声を出せっ!!」

 

「「「「「「「「「「ラジャーッ!!!」」」」」」」」」」

 

正に恐怖政治と言っても良い空気が、一同を支配する。

 

「全員良く覚えておけ! この歩兵道の時間は俺が全てだ! 全て俺が考え、俺が決める! 貴様等には何1つとして権利は無い!! 分かったな!!」

 

「「「「「「「「「「ラジャーッ!!」」」」」」」」」」

 

嵐一郎の言葉に、全員が脊髄反射的に返事を返す。

 

「トンでもねえ教官が来ちまったな、オイ………」

 

「俺………明日まで生きてられるかな?………」

 

鬼教官と言う言葉が生易しく聞こえる嵐一郎の姿に、地市と了平は早くも不安を露わにしている。

 

(見事だ………ああでなければ国防を担う自衛官を育てる事など出来ん………如何やら、小官は素晴らしい教官に巡り合えた様だ)

 

だが、弘樹は皆とは対照的に、嵐一郎の事を高く評価していたのだった。

 

「良し! 先ずは貴様等の実力を見てやる!! 全員! 運動が出来る服装に着替えたら、俺が良いと言うまでグランドを走れぇっ!!」

 

「「「「「「「「「「ラジャーッ!!」」」」」」」」」」

 

そして、嵐一郎の怒声と共に、波乱に満ちた歩兵道の授業が開始される………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして時は流れ………

 

日が傾き、辺りが夕焼けに染まり始めた頃………

 

大洗女子学園の倉庫前では、漸く戦車の清掃を終えたみほ達が整列している。

 

ボロボロだった戦車が、嘘の様に綺麗になって整列している。

 

「よし、良いだろう。後の整備は、自動車部の部員にやらせる。それでは、本日は解散!」

 

磨き上げられた戦車を見た後、みほ達の方を振り返り、桃がそう言う。

 

「「「「「「「「は~~い………」」」」」」」」

 

戦車道受講者達は、すっかり疲れた様子で返事を返す。

 

「早くシャワー浴びた~い」

 

清掃作業ですっかり汚れた沙織が、愚痴る様にそう呟く。

 

「早く乗りたいですね」

 

そんな中、優花里がみほにそう言う。

 

「あ………う、うん………」

 

しかし、みほはその言葉に目を背けながら元気なさげに返事を返す。

 

「?」

 

それを見た優花里は、首を傾げるしかなかった。

 

「あ、ねえ! 男子校の様子見に行ってみない!?」

 

するとそこで、沙織がそう声を挙げた。

 

「えっ?」

 

「だって、歩兵道の方はもう教官さんが来てるんでしょう? ちょっと興味有るし~」

 

「沙織さんったら、また………」

 

頬を染めながらそう言う沙織に、華が呆れた様に呟く。

 

「でも、確かにちょっと気になりますね。態々予定を早めて来て下さった教官さんですし」

 

「………うん、そうだね。ちょっと見に行ってみようか」

 

しかし、優花里が賛成したのを聞いて、みほも賛成する。

 

「それじゃあ! いざ男子校へレッツゴーッ!!」

 

沙織はそう言い、拳を握って右手を突き上げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数10分後………

 

シャワーを浴び、着替えを終えたみほ達は、県立大洗国際男子校へと辿り着く。

 

「わあ~、ココが男子校か~」

 

男子校の看板を見た沙織がそう呟く。

 

「同じ艦ですけど、来るのは私も初めてです」

 

「そうなんだ」

 

「歩兵道の授業は何処で行われているのでしょうか?」

 

と、華、みほ、優花里がそう言い合っていると………

 

「この屑共! トロトロするんじゃないっ!!」

 

学校中、いや学園艦中に響き渡りそうな怒声が聞こえて来た。

 

「キャアッ!?」

 

「うわぁっ!?」

 

「な、何!? 何っ!?」

 

その怒声に、みほ、優花里、沙織が慌てる。

 

「向こうの方から聞こえましたけど………」

 

華が、怒声の聞こえて来たのはグラウンドの方だと気づき、視線で示す。

 

「行ってみよう!」

 

沙織がそう言うと、みほ達はグラウンドの方へと向かって行く。

 

そして、そこに広がっていたのは………

 

「全く! 何たる様だ!! 貴様等は最低のゴミ屑だ!! 地球どころか宇宙で最も劣った生き物だ!!」

 

歩兵道の訓練と思われるモノを熟している男子生徒達に、容赦無く罵声を浴びせている嵐一郎の姿だった。

 

更に、男子生徒が受けている訓練も半端では無い。

 

ある者達は丸太を肩に担いだ状態でマラソンをしており、ある者達は小銃に見立てた木の棒を持って、地面が泥沼となっている鉄条網の下を潜り抜けている。

 

またある者達は敵に見立てた案山子を、模擬戦用の銃剣で只管突きまくり、ある者達は両先端を布で包んだ棍棒でガチで殴り合う接近戦訓練を行っている。

 

どれもコレも本物さながらの兵士訓練である。

 

「す、凄い………本物の軍人の訓練そのものですよ!!」

 

「や、やり過ぎじゃないの………」

 

興奮した様子を見せる優花里だが、逆に沙織は引いている様子を見せる。

 

「皆さん、苦しそうな顔をしてます」

 

「ハハハハ………」

 

華は苦しそうな顔で訓練を受けている男子生徒達を憐れみ、みほは乾いた笑い声を漏らす。

 

「よおしっ! 今日の訓練はコレまでとする!!」

 

と、嵐一郎がそう言った瞬間、男子生徒達が次々にグラウンドへ倒れ伏せる。

 

「ゼエッ! ゼエッ! ゼエッ! ゼエッ!」

 

「死、死ぬ………」

 

「これ程に………厳しい………訓練だとは………」

 

地市、了平、楓も、グラウンドに大の字になり、息を切らしながらそう言い合う。

 

「…………」

 

「副会長。大丈夫ですか?」

 

逞巳が、うつ伏せに倒れたままピクリとも動かない十河に声を掛ける。

 

「…………」

 

「へんじがない。ただのしかばねのようだ」

 

「生きてますよ!!」

 

しかし、十河は返答するどころか、本当にピクリとも動かない為、俊がそう言い、清十郎がツッコミを入れる。

 

(くうっ! 体力不足がココまで響くとは!! 何たる醜態!! コレでは迫信に勝つ事など出来んではないか!!)

 

そして満身創痍の状態でも、頭の中は野心でいっぱいの十河だった。

 

「ふうう………良い訓練だった」

 

「フフフ………」

 

「…………」

 

「コレだけ身体を動かしたのは久しぶりです」

 

そんな死屍累々の中、弘樹、迫信、熾龍、飛彗だけが立った状態で居る。

 

弘樹と飛彗は多少汗を掻いているものの、特に疲労している様な様子は無く、手拭いで汗を拭っている。

 

そして迫信と熾龍は汗を掻いていないどころか涼しげな表情をしており、まるで訓練を受けていなかったと思えるぐらい優雅な姿であった。

 

「どいつもこいつも情けない連中め! 少しはあの4人を見習ったら如何だ!!」

 

嵐一郎がそんな4人を示しながら、他のメンバーにそう言い放つ。

 

「言っておくが、今日の訓練はほんの小手調べだ!! 今後の訓練は更に厳しいものになるからな!! 覚悟しておけっ!!」

 

「「「「「「「「「「!? ゲエェーッ!?」」」」」」」」」」

 

嵐一郎の言葉に、大洗男子校の歩兵道受講者達は、絶望した表情を浮かべたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




ガルパン原作キャラ達に混じり、学園艦の彼方此方で戦車を見つける大洗男子校の歩兵部隊員達。

だが、漸く戦車が見つかったかと思ったら、歩兵道側の教官が予定を早めて到着。
その本物の軍隊式の訓練の前に、すっかり参ってしまう大洗歩兵部隊。
果たして、こんな調子で大洗歩兵隊は大丈夫なのであろうか?

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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