ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第39話『震える山です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第39話『震える山です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先回りしたみほ達あんこうチームと、弘樹率いるとらさん分隊がアンツィオ&ピッツァ機甲部隊に奇襲を掛けるちょっと前………

 

通常追撃を行っていた大洗機甲部隊の本隊の方では………

 

 

 

 

 

戦車道・歩兵道全国大会公式戦2回戦会場、山と谷が連なる森林地帯………

 

「そろそろ西住総隊長達はアンツィオ&ピッツァ機甲部隊の先回りに成功した頃だね」

 

「足が止まれば追い付くのは容易だ。既に戦力面では此方が優勢………この試合貰ったな」

 

迫信がそう言うと、十河は勝利を確信した笑みを浮かべる。

 

「副会長さんよぉ、油断は禁物だぜ。最後まで何が起こるか分からないのが歩兵道と戦車道なんだからよぉ」

 

「フッ、何を言う………既にアンツィオ&ピッツァ機甲部隊に打つ手は無い。我々の勝利は決まったも同然だ」

 

俊がそんな十河にやんわりと注意をするが、十河がドヤ顔でそう返す。

 

と、その瞬間!!

 

突如、大洗機甲部隊の進軍方向に何かが落ちて、そのまま爆発した!!

 

「!?」

 

「何だっ!?」

 

驚いて進軍を止めた瞬間!!

 

「「「「「「「「「「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

その爆発の煙が収まりきらぬうちに、ピッツァ歩兵部隊の隊員達が突撃して来る!

 

「!? 敵襲ーっ!!」

 

「ピッツァ歩兵部隊!?」

 

「何だ!? 自棄になって突っ込んで来たのか!?」

 

「落ち着け! 相手は小隊規模だ!! 弾幕を張って近寄らせるなぁっ!!」

 

突如襲撃して来たピッツァ歩兵部隊に驚くものの、その人数が小隊規模であるのを確認すると、大洗機甲部隊の隊員達は遮蔽物や車両・戦車を盾に、弾幕を張って応戦する。

 

「うわぁっ!?」

 

「ぎゃあっ!?」

 

弾幕の前に、ピッツァ歩兵部隊の隊員達は次々に倒れて行く。

 

「怯むなぁっ! 進め! 進めぇっ!!」

 

「「「「「「「「「「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

だが、それでも構わずに、戦死判定となった仲間を飛び越えて更に突撃して来る。

 

「オイオイ! アイツ等本当に自棄になったのか!?」

 

「この弾幕の中に飛び込んで来るなんざ、自殺行為だぜ!」

 

そんなピッツァ歩兵部隊の隊員達の姿に、大洗機甲部隊の隊員達からはそんな声が挙がる。

 

「チッ、流石にうっとおしいな………装甲車を前に出せ!!」

 

「了解っ!!」

 

とそこで、一気に蹴散らそうとしたのか、十河が指示を出し、九三式装甲自動車が前に出る。

 

その直後!!

 

収束手榴弾が飛んで来て、九三式装甲自動車に直撃!!

 

「!? 何っ!?」

 

十河の驚きの声が挙がると、九三式装甲自動車は撃破判定を受け、乗員も全員戦死判定となった。

 

「!! 左の崖の上です!!」

 

すると清十郎が、その収束手榴弾が飛んで来た方向を見やり、そこに在った崖の上に人影を発見してそう報告する。

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

その声で、一斉に左側に在った崖の上を見やる大洗歩兵部隊の隊員達。

 

そこには、右手に着剣したカルカノM1938を握り、左手にベレッタModello 1938Aを握っているフォルゴーレの姿が在った。

 

「戦車4、歩兵用車両多数、歩兵部隊規模は大隊クラス………Ⅳ号戦車の姿が見えんが、先行して本隊の方へ向かったか?」

 

その両目をギョロリとさせ、大洗機甲部隊の様子を把握するフォルゴーレ。

 

「野郎! たった1人で何の積りだ!?」

 

「舐められてるのか?」

 

「炎苑! 1発かましてやれっ!!」

 

「りょ、了解!」

 

光照がそんなフォルゴーレに試製四式七糎噴進砲を向け、発射する。

 

しかし、放たれた噴進弾は、僅かに逸れて外れる。

 

するとフォルゴーレは、一旦カルカノM1938をベルトで肩に下げたかと思うと、ベルトに装備していたワイヤーを右手に握り、鞭の様にして傍に在った木の幹に巻き付けた。

 

「歩兵の中でも対戦車兵。装甲の無い我等の戦車部隊には脅威となる」

 

そして、そう言い放ったかと思うと、そのまま崖を飛び降りた。

 

「!? 飛び降りやがった!?」

 

「任せておけっ! 落下なら予測出来る!」

 

重音が驚きの声を挙げると、明夫がそんなフォルゴーレに九四式山砲を向ける。

 

「そこだぁっ!!」

 

そして、完璧なタイミングで九四式山砲から砲弾を放つ!

 

放たれた砲弾が、自由落下中のフォルゴーレに向かう。

 

だがそこで、予め巻き付けておいたワイヤーが伸び切り、ワイヤーを握っていた腕を吊られる様にして、フォルゴーレの落下が停止!

 

九四式山砲から放たれた砲弾は、フォルゴーレの真下を通って崖に命中し、派手に土煙を上げる。

 

「やったかっ!?」

 

鷺澪が思わずそう叫んだ瞬間!

 

「先ず1つ!!」

 

晴れた爆煙の中からフォルゴーレが姿を見せ、ベルトの後ろ腰部分に下げていた対戦車地雷を真下に向けて投擲した!!

 

丁度そこには、進軍しようとしていたウサギさんチームのM3リーが居た!

 

「! 澤さん! 危ないっ!!」

 

「えっ?………」

 

勇武が叫んだが時既に遅し!

 

対戦車地雷はM3リーのボンネット部分にぶつかり、大爆発!!

 

M3リーのエンジン部が炎上したかと思うと、砲塔から白旗が上がる!

 

「嘘っ!? やられたの!?」

 

「ウサギさんチームが!?」

 

あやと真竜が驚愕の声を挙げる。

 

「コチラが完全に手玉に取られただと!?」

 

「アッと言う間に戦車を1両撃破………間違い無い。アンツィオ&ピッツァ機甲部隊の本当のエースは奴だ」

 

十河も馬鹿なと言う様な表情を浮かべ、大詔がフォルゴーレをそう評する。

 

その間に、フォルゴーレはワイヤーを緩め、撃破したM3リーを足場に、崖下へと着地を決める。

 

「全員頭を切り替えろ! 奴は普通の歩兵では無い!」

 

とそこで、アッという間にM3リーがやられた事でやや呆然としていた大洗機甲部隊を叱咤する様に、迫信がそう言い放つ。

 

「…………」

 

フォルゴーレは無言のまま左手に握っていたベレッタModello 1938Aを大洗機甲部隊に向け発砲。

 

着弾した弾丸が土煙を舞い上げ、大洗機甲部隊の視界を塞いだ!

 

「クソッ!? 何も見えないぞ!?」

 

「煙幕の積りかいな!?」

 

鷺澪と大河がそう声を挙げる。

 

だが、フォルゴーレが走っていると思われる足音は聞こえており、それは着実に近づいて来ていた。

 

「チイッ! 何処から来るんやっ!?」

 

八九式の直掩に入っていた大河が、土煙だらけの周りを見回しながらそう愚痴る様に言う。

 

その次の瞬間!!

 

突如大河から見て左側の土煙が揺らめき、フォルゴーレが出現したと同時に、大河に体当たりを食らわせた!

 

「!? おうわっ!? こなくそぉーっ!!」

 

木の幹に叩き付けられながらも、すぐにトンプソン・サブマシンガンM1/M1A1を発砲する大河。

 

しかし、既に出現して来た方向にフォルゴーレの姿は無かった。

 

「!? 居ないっ!?」

 

「うわああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ!?」

 

大河が驚きの声を挙げた瞬間、典子の悲鳴と共に、八九式が急発進した!

 

「!? しもうた!?」

 

その八九式の車体の上に、フォルゴーレが乗って居るのを見た大河が声を挙げる。

 

「忍! 振り落せないの!?」

 

「やってるわよ!!」

 

「…………」

 

妙子の台詞に忍がそう返している間に、フォルゴーレは八九式のエンジンハッチをこじ開けると、携帯していた火炎瓶に火を着ける。

 

「エンジンをやる気かいなっ!?」

 

大河がそう声を挙げた瞬間に、フォルゴーレは八九式のエンジンルームへ火炎瓶を投げ入れた!

 

八九式のエンジンルームから炎が上がったと思われた次の瞬間には黒煙が吹き出し、八九式は停止し、砲塔から白旗を上げる。

 

「大河くん! 任せてっ!!」

 

とそこで、武志がフォルゴーレ目掛けてM18 60mmバズーカを発射する。

 

「!!」

 

だが、フォルゴーレは難なく八九式の上から飛んでかわしたかと思うと、そのまま武志に向かってベレッタModello 1938Aを発砲!

 

「!? うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」

 

武志は全身に銃弾を浴び、バタリと倒れると、そのまま戦死と判定される。

 

「東郷っ!!」

 

「「「「「キャプテンッ!!」」」」」

 

大河とラクビー部員の声を聞きながら、着地を決めると同時に近場に居た38tに向かって走り出す。

 

「コ、コッチに来るぅっ!?」

 

「どどどどど、如何しようっ!?」

 

「お、落ち着いて! 2人共!!」

 

その様子に、桃だけでなく柚子も慌て、蛍が2人を落ち着かせようとするが自分も動揺を隠せずに居る。

 

「…………」

 

そして杏も苦い顔を浮かべていた。

 

その時!!

 

『砲兵部隊。ポイント24から37に向けて砲撃だ』

 

「「「「「「「「「「了解っ!!」」」」」」」」」」

 

煌人からそう通信指示が入り、砲兵部隊が一斉にフォルゴーレに向けて榴弾砲で砲撃を開始した!

 

「フラッグ車さえ潰せば………」

 

かなりの至近距離で爆発が起きながらも、フォルゴーレは一切怯まずに走り抜けようとする。

 

だがそこで、1発の榴弾が大木の根本に直撃し、大木がフォルゴーレ目掛けて倒れて来た!!

 

「!?」

 

そのまま大木の下敷きとなるフォルゴーレ。

 

「やったっ!!」

 

「って言うか、大丈夫か、オイ!?」

 

歓喜の声と同時に心配の声を大洗機甲部隊から挙がる。

 

戦闘服を着ている為、死ぬ様な事には先ずならないが、それでも大木の下敷きになっていると思われるフォルゴーレの身を案じている様だ。

 

「こりゃマズイんじゃないのか?」

 

「何をやっている! 早く救助だ! 事故が起こって没収試合にされたら如何する!?」

 

とそこで、先程まで怯えていた様子は何処へやら………

 

38tがやや前進し、桃が細々と集まっていた大洗歩兵隊の面々にそう言い放つ。

 

「全く、勝手な事を………!?」

 

そんな桃にいつも様に毒舌を吐こうとした熾龍が固まった。

 

「? 如何しました、栗林先ぱ………」

 

それに気づいて声を掛けようとした清十郎も言葉を失う。

 

「なっ!? ななななななななっ!?」

 

そして桃は最早言葉にすらなっていない。

 

他の一同も動けずに居る。

 

何故ならば………

 

目の前で倒れていた大木が………

 

持ち上がり始めたからだ!!

 

「…………」

 

何と!!

 

大木の下敷きになったと思われていたフォルゴーレが、その大木を押し出していたのである!!

 

しかも右腕1本で!!

 

「ぬああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

そして気合の雄叫びを挙げたかと思うと、大木を大洗機甲部隊目掛けて押し倒した!!

 

「!? 逃げろぉっ!!」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

秀人の声で、慌てて方々に散り始める大洗歩兵部隊の隊員達。

 

「「「「「!? ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」」」」」

 

しかし、何人かは退避が間に合わず、倒れて来た大木の下敷きとなる。

 

そんな大洗歩兵部隊を尻目に、フォルゴーレは粉塵が舞う中、38tへと歩を進める。

 

「あ、ああああ………」

 

「怯えろぉっ! 竦めぇっ!! 戦車の性能を活かせぬまま、撃破されて行けぇっ!!」

 

完全に恐慌状態の桃が乗って居る38tに向かって、フォルゴーレはそう叫ぶ。

 

「! 小山! 全速後退っ!!」

 

「!! ハ、ハイッ!!」

 

とそこで、杏の声で我に返った柚子が、慌てて38tをバックさせる。

 

「撃てぇーっ!! 倍返しだぁっ!!」

 

そして、明夫を中心とした砲兵部隊が、フォルゴーレ目掛けて砲撃を行う。

 

しかし、フォルゴーレはその場から動かず、放たれた砲弾は全て爆風による殺傷範囲外の周囲に着弾する。

 

フォルゴーレが回避行動を取れば命中する様に砲撃を行った様だが、それを読んだフォルゴーレは敢えて動かない事で回避したのである。

 

「見た目は派手だが、タンクはがら空きだぞ!!」

 

そしてフォルゴーレはそう言いながら、後退を続けている38tを見据えて火炎瓶を取り出す。

 

「! イカンッ!!」

 

「うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ! 来るなっ! 来るなぁっ!!」

 

十河が声を挙げた瞬間に、桃は38tの主砲を連射した!

 

だが、只でさえ砲撃の才能が無いのに、恐慌状態で当たるワケもなく、放たれた砲弾はいつも以上に明後日の方向へと飛んで行っている。

 

「コレで終わりだ」

 

そんな38t目掛けて、フォルゴーレは火炎瓶を投擲する。

 

回転しながら、38tへ向かう火炎瓶。

 

だが、銃声が木霊したかと思うと、火炎瓶が空中で破裂し、炎が飛び散った。

 

「むっ!?」

 

火炎瓶が破裂する寸前に、銃弾が飛んで来たのを捉えていたフォルゴーレはそちらの方向を確認する。

 

「…………」

 

そこには、銃口から硝煙の立ち上っているスプリングフィールドM1903小銃を構えている熾龍の姿が在った。

 

「………フアーッハッハッハッハッ!」

 

すると、フォルゴーレは突如高笑いを挙げた。

 

「………何が可笑しい?」

 

そんなフォルゴーレに向かって容赦無く発砲する熾龍。

 

しかし、発砲のタイミングと銃口が向いている先を見抜いていたのか、フォルゴーレは僅かに身を反らしただけでスプリングフィールドM1903小銃の銃弾を回避した。

 

「総帥(ドゥーチェ)アンチョビ。カルパッチョ様。無事では済ませられそうにありません。自分は………戦うべき相手を見つけました」

 

そして、着剣したカルカノM1938を右手に構え、熾龍を見据えながらそう呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

アンツィオ&ピッツァ機甲部隊の本隊へと仕掛けたあんこうチームととらさん分隊は………

 

「フォーコッ(撃て)!!」

 

アンチョビの掛け声で、P40が榴弾を発射する。

 

「「「「「うおわあああああぁぁぁぁぁーーーーーーっ!?」」」」」

 

爆風と破片の殺傷範囲内に居たとらさん分隊の分隊員達が吹き飛ばされ、戦死判定を受ける。

 

「野郎っ!!」

 

お返しとばかりに、地市がM9A1・60mmバズーカを構え、P40目掛けてロケット弾を放つ。

 

「総帥! 危ないっ!!」

 

しかしそこで、カルロ・ベローチェCV35が間に割って入り、その身を呈してロケット弾を受け止める。

 

衝撃の余り、カルロ・ベローチェCV35は横倒しとなり、白旗を上げる。

 

「ああ、クソッ! 邪魔しやがってっ!!」

 

「撃てぇーっ!!」

 

次のロケット弾を装填しようとした地市に、残っていた護衛のピッツァ歩兵部隊が銃撃を浴びせる。

 

「おわたたっ!?」

 

装填を中止すると慌てて逃げ回る地市。

 

「石上さん! Ⅳ号の陰へっ!!」

 

とそこで、みほがⅣ号を前進させ、地市の盾になる様にする。

 

銃弾が次々とⅣ号に命中するが、装甲で弾かれる。

 

「沙織さん! 機銃掃射っ!!」

 

「了解っ!!」

 

そこで、みほは沙織に命じ、沙織は車体前方機銃のMG34機関銃で、地市を攻撃していたピッツァ歩兵部隊に銃撃を浴びせる。

 

「「「「「ぎゅああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」」」」」

 

木々が薙ぎ倒されるが如く、次々に戦死判定となって行くピッツァ歩兵部隊。

 

「このぉっ!!」

 

そのⅣ号に向かって、M13/40カルロ・アルマートが砲撃する。

 

「ん………」

 

しかし、それに気づいていた麻子はすぐにⅣ号を発進させ、M13/40カルロ・アルマートが放った砲弾は、Ⅳ号が居た空間を通り抜ける。

 

「徹甲弾、装填完了!」

 

「撃ちます!」

 

そこで優花里が装填を終え、華が再びⅣ号が停止するのと同時に発砲。

 

長砲身となり、威力の増したⅣ号の砲弾は、M13/40カルロ・アルマートの正面装甲を軽く貫通したとの判定を下させ、白旗を上げさせた。

 

「コレで敵の戦車は2両………」

 

キューポラのペリスコープで、アンツィオの残る戦車、P40とM13/40カルロ・アルマートを確認したみほがそう呟く。

 

「みほさん! P40をお願いしますっ!!」

 

「残りの1両戦車と歩兵部隊は、僕達が引き受けますっ!!」

 

そこで、飛彗と楓が、みほへそう呼び掛けた。

 

「おまっ!? まだ戦車が残ってるのに、無理だって!!」

 

只1人、了平だけが不安を露わにそう言うが………

 

「分かりました! お願いしますっ!!」

 

聞こえなかったのか、みほがそう返すと、Ⅳ号はP40に向かって行った!

 

「ちょっ!? 待ってみほちゃん達~っ!! カムバアアアアアァァァァァァーーーーーーーックッ!!」

 

了平が思わず悲痛な叫び声を挙げるが、それは虚しく戦場の轟音で掻き消される………

 

「Ⅳ号が向かって来ます!」

 

「西住 みほ………せめて貴様だけは!!」

 

「総帥(ドゥーチェ)! 如何か冷静に!! 時間を稼げば、必ずフォルゴーレが大洗のフラッグ車を撃破してくれます!!」

 

ペパロニの報告に、アンチョビは教鞭をへし折らんばかりに折り曲げてそう言うが、カルパッチョが落ち着いてと声を掛ける。

 

とそこで、Ⅳ号の主砲が火を噴いた!!

 

「!! 左旋回っ!!」

 

「! ハ、ハイッ!!」

 

アンチョビが叫ぶと、ペパロニが慌ててP40を左旋回させる。

 

直後に、Ⅳ号が放った砲弾がP40の砲塔左側面に命中したが、奇跡的に角度が浅かった為、弾かれた。

 

「うわぁっ!?」

 

「ぐうっ! フォーコッ(撃て)!!」

 

車内に走った衝撃に、ペパロニが悲鳴を挙げ、アンチョビによろけたが、すぐに反撃を行う。

 

「麻子さん!」

 

「!!」

 

Ⅳ号は麻子の抜群の操縦により、P40の砲弾を回避する。

 

「華さん! 沙織さん! 機銃で攻撃っ!!」

 

「分かりました!」

 

「任せてっ!!」

 

そしてそこで、華が主砲同軸機銃、沙織が車体機銃をP40に向けて発砲する。

 

命中した弾丸が、P40の装甲表面で火花を散らす。

 

「うわあぁっ! 鼓膜が破れるぅっ!!」

 

「ぐうっ! オノレェッ!!」

 

その際の音で、P40の車内は騒音に支配され、ペパロニが思わず耳を抑え、アンチョビも顔を歪める。

 

と、ある程度撃ち込んだかと思うと、Ⅳ号が発進する。

 

「! 逃がすな! 追えぇっ!!」

 

先程の機銃攻撃で頭に血が上ったアンチョビは、Ⅳ号への追撃を命じる。

 

「総帥(ドゥーチェ)! お待ちを………」

 

「このぉっ! もう許さないぞっ!!」

 

罠の可能性を感じたカルパッチョが制止しようとするが、その前にペパロニがP40を発進させ、Ⅳ号を追って行った。

 

「! 総帥(ドゥーチェ)!!」

 

「マズイ! 総帥(ドゥーチェ)を守れっ!!」

 

残っていたM13/40カルロ・アルマートと、ピッツァ歩兵部隊の隊員達が慌ててP40を追おうとするが………

 

「そうはさせるかぁっ!!」

 

「行かせません!」

 

「時間稼ぎですね………」

 

地市、楓、飛彗が中心となり、とらさん分隊がそれを阻止する。

 

「うわ~~ん! 何で俺ばっかこんな目に遭うんだよ~~っ!!」

 

その中には、泣きながらカールグスタフm/45を撃ち捲っている了平の姿も在った。

 

「妙に乱射している奴が居るぞ!!」

 

「厄介だな………奴から始末しろ!!」

 

そしてその撃ち捲りの癖により、またも多数の敵から狙われてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

遂に現れたアンツィオ&ピッツァ機甲部隊の鬼、フォルゴーレ。
その戦いぶりは、台詞にもある通り、08小隊のノリスをリスペクトしております。
立った1人で大洗機甲部隊を掻き回し、戦車を2両も屠ったフォルゴーレ。
果たして彼を止められるのか?
そして、P40と一騎打ちへと持ち込んだあんこうチームは?
次回、いよいよ2回戦も決着です。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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