ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第37話『攻勢に出ます!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第37話『攻勢に出ます!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遂に開始された全国大会2回戦………

 

大洗機甲部隊VSアンツィオ&ピッツァ機甲部隊の試合。

 

とらさん分隊の中から、弘樹達が先んじて偵察に出ると、アンツィオ&ピッツァ機甲部隊は既に優位を取れる高台を抑えていた。

 

一旦本隊の元へ引き返そうとした弘樹達に、待ち伏せしていたピッツァ歩兵部隊が襲い掛かったが、弘樹達はコレを撃退。

 

すぐに分隊員達と合流すると、本隊へと帰投するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦車道・歩兵道全国大会、2回戦の会場………

 

大洗機甲部隊サイド………

 

「西住総隊長。とらさん分隊、只今帰投しました」

 

帰投したとらさん分隊の中で、弘樹がⅣ号のキューポラから上半身を出していたみほに向かってヤマト式敬礼をしながらそう報告する。

 

「お疲れ様です。皆大丈夫でしたか?」

 

「ハッ、途中敵の追撃を受けましたが、コレを撃退。全員無事で帰投しました」

 

「そう、良かった………」

 

全員無事と言う報告を聞いて、みほが安堵の表情を浮かべる。

 

「オイ、安心している場合か。高台を敵に抑えられたんだぞ。如何するんだ?」

 

しかしそこで、桃がそう水を差す様に言って来る。

 

「あ、ハイ。作戦を変更しますね」

 

するとみほは、地図を取り出して、新たな作戦を考え始める。

 

「大丈夫なんだろうな?」

 

「自信満々で作戦立案して於いて、味方を誤射して露呈させた奴が立てるよりは信頼出来る………」

 

「オイ! 貴様それは私の事かぁっ!?」

 

「自覚していなかったのか? 心底救い様の無いガラクタだな」

 

「何いいいいいいぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーっ!!」

 

そしてその傍で、いつもの桃と熾龍の遣り取りが開始されるのだった。

 

「敵の攻撃の要はフラッグ車でもあるP40です。恐らく、高所からコチラをスナイピングしてくる作戦で来るでしょう」

 

「P40………カタログスペックを見る限り、当時の重戦車としては余り良い性能ではないが、ウチにとっては脅威に変わりは無いな」

 

みほがアンツィオ&ピッツァ機甲部隊の戦略をそう予想すると、指揮車の煌人がP40のスペックデータを見ながらそう言って来る。

 

「如何するの? みぽりん」

 

「………高台を取られた場合の作戦を取ります」

 

沙織がそう尋ねると、みほは地図から目を離し、顔を上げながらそう言う。

 

「各戦車チームの皆さん。コレより、歩兵部隊と分かれて行動します」

 

『えっ?』

 

『歩兵部隊と分かれて………ですか?』

 

みほがそう指示を出すと、ウサギさんチームのあやと梓が疑問の声を挙げる。

 

「ハイ。戦車部隊で高台に陣取っているアンツィオ&ピッツァ機甲部隊に攻撃を仕掛けます」

 

『総隊長、それは………』

 

その言葉を聞いたエルヴィンが危険だと言おうとしたが………

 

「ですが、この攻撃は飽く迄敵の目を戦車部隊へと向かわせる陽動です。その間に歩兵部隊の皆さんは、アンツィオ&ピッツァ機甲部隊の背後を取って下さい」

 

「西住総隊長。背後を取れと言っても、アンツィオ&ピッツァ機甲部隊は急な崖を背にしているんだぞ」

 

十河が、みほの言葉にそう反論する。

 

「………成程」

 

しかし、弘樹が何かに気付いた様にそう呟く。

 

「弘樹? 何か分かったのか?」

 

「………『一ノ谷の戦い』だ」

 

地市が尋ねて来ると、弘樹はそう返す。

 

『おお! 源平合戦か!!』

 

それを聞いていた左衛門佐がそう口を挟んで来る。

 

「一ノ谷の戦い?」

 

「一体何なんだ?」

 

しかし、分からぬ者達は首を傾げるばかりだった。

 

『さて、偵察に出ていた分隊が帰投した大洗機甲部隊。ココから如何出るのでしょうか?』

 

『ん~、何か作戦が有るみたいですね。一体何でしょう?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

高台に陣取ったアンツィオ&ピッツァ機甲部隊は………

 

「総帥(ドゥーチェ)! パスタが茹で上がりました!!」

 

「うむ!」

 

「隊長(カピタン)! ピッツァも焼き上がりましたよ!」

 

「待ってました!」

 

パスタを茹で、ピザを焼きと、完全に食事タイムに入っていた。

 

「総帥(ドゥーチェ)、ノンビリ食事などしていて良いのですか?」

 

「隊長(カピタン)、少々気を抜き過ぎではありませんか?」

 

カルパッチョとフォルゴーレがそう言うが………

 

「心配するな。言っただろう。我々は絶対に負けんとな」

 

「腹が減っては戦が出来ぬだ。兎に角、今は食う事に集中しようぜ」

 

アンチョビとロマーノはそう返し、パスタとピザを食し続ける。

 

「総帥(ドゥーチェ)………ハア~………」

 

そんなアンチョビ達の姿を見ながら、カルパッチョが重々しい溜息を吐く。

 

「全く………オイ、見張り要員。異常は無いか?」

 

フォルゴーレも呆れながら、見張りをしているピッツァの隊員にそう尋ねる。

 

「やっぱパスタはペペロンチーノだぜ」

 

しかし、その見張り要員は任務をそっちのけで、パスタを啜っていた。

 

「オイ! 何をしている! 見張りをしろっ!!」

 

そんな見張り要員の姿を見て、フォルゴーレが怒鳴る。

 

「うわっ!? す、すみません、副隊長」

 

「大丈夫っすよ、副隊長。コッチは有利な高台を抑えてるんすよ。大洗の連中も馬鹿正直に真正面から攻めて来るなんて真似は………」

 

ペペロンチーノを啜っていた見張り要員が謝り、別の見張り要員がそう言いかけた瞬間!!

 

風切り音がして、砲弾がアンツィオ&ピッツァ機甲部隊の陣地の中に着弾した!

 

「!? うわあぁっ!?」

 

「な、何だぁっ!?」

 

突然の事態に大慌てになるアンツィオ&ピッツァ機甲部隊の面々。

 

「!?」

 

そんな中、フォルゴーレが高台の下を見下ろす。

 

そこには、主砲の仰角を最大に上げて、自分達の陣地へ砲弾を撃ち込んでいる大洗戦車部隊の姿が在った。

 

仰角が取れない車両の中には、地面に穴を掘って、そこに潜る様にして無理矢理砲身を上げている車両も在る。

 

「! 隊長(カピタン)! 敵襲です! 大洗の戦車部隊が!!」

 

すぐにロマーノに向かってそう報告するフォルゴーレだったが………

 

「おお、神よぉっ! お助け下さい~っ!!」

 

「「「「「「「「「「神様~っ!!」」」」」」」」」

 

ロマーノはピッツァ歩兵部隊の面々と共に地面にひれ伏し、祈りを捧げていた。

 

「隊長(カピタン)! 祈っている暇が有ったら反撃して下さいっ!!」

 

「退け退けぇっ!!」

 

と、フォルゴーレの怒声が飛ぶ中、アンチョビの乗ったフラッグ車でもあるP40が、高台の縁まで進む。

 

「舐めた真似をしてくれたなぁっ! お蔭で折角のパスタが台無しだっ!! このお礼はたっぷりとさせてもらうぞっ!! フォーコッ(撃て)!!」

 

そして、主砲の仰角を下げると、大洗戦車部隊目掛けて砲撃を行う。

 

P40から放たれた砲弾は、38tの至近に着弾し、大きく土片を舞い上がらせる。

 

しかし、大洗戦車部隊は怯まずに砲撃を続ける。

 

「全車両! 大洗の戦車部隊を狙い撃てぇっ!!」

 

と、アンチョビがそう指示を飛ばすと、アンツィオ戦車部隊が次々に高台の縁まで進み、大洗の戦車部隊目掛けて、上から砲撃を見舞う。

 

「! 砲兵隊! コチラも砲を崖に配置しろっ!!」

 

「りょ、了解っ!!」

 

漸く落ち着いた様子のロマーノもそう言い放ち、ピッツァ歩兵部隊の砲兵部隊も、野戦砲や対戦車砲を高台の縁へと配置し始める。

 

上からの狙い撃ちに、大洗戦車部隊は苦戦を強いられる。

 

だが、それでも撤退しようとはせずに、アンツィオ&ピッツァ機甲部隊の陣地に、砲撃を撃ち込み続ける。

 

「アイツ等全然逃げないぞ?」

 

「馬鹿じゃないのか? 上から撃ってるコッチの方が遥かに有利だってのよぉ!!」

 

自分達が圧倒的に優位に立っている事で、調子に乗り始めるアンツィオ&ピッツァ機甲部隊の面々。

 

「隊長(カピタン)、何かの罠の可能性があります。念の為に警戒を………」

 

「その必要は無い! このままフラッグ車を撃破すれば我々の勝ちだ!」

 

1人その様子を不審に思ったフォルゴーレが、ロマーノにそう言うが、ロマーノは攻撃続行の指示を出す。

 

「しかし!………」

 

「諄いぞ、フォルゴーレ! 我々は高台に居て、左右の見通しは良い。背後はほぼ断崖絶壁で敵は攻めて来れない! 我々が圧倒的優勢なのだ!!」

 

「その通り! このまま一気に押し潰しちゃおうっ!!」

 

食い下がるフォルゴーレにロマーノはそう怒鳴り返すと、P40の操縦手である『ペパロニ』もそう同意して来る。

 

「西住 みほ………如何やら貴様は私が思っていた以上に愚か者だった様だな。ならば! ココで完全に葬り去ってくれるわぁっ!! 全部隊! 撃って撃って撃ちまくれっ!!」

 

アンチョビも、みほが完全に下策を取って来たと思い、砲撃指示を継続させる。

 

(おかしい………大洗の連中は何を考えているのだ? 正面切って戦えば自分達が負ける事ぐらい想像出来る筈だ………)

 

只1人、フォルゴーレだが一抹の不安を感じていたのだった。

 

『おおっと、大洗戦車部隊が正面からアンツィオ&ピッツァ機甲部隊に仕掛けてますね』

 

『いや、コレは陽動です。見て下さい。アンツィオ&ピッツァ機甲部隊が陣取っている高台の背後の崖の上を』

 

と、ヒートマン佐々木とDJ田中はそんな実況を流す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その実況の内容にあった………

 

アンツィオ&ピッツァ機甲部隊が背にしている断崖絶壁に近い崖の上にて………

 

「良し………作戦通り、アンツィオ&ピッツァ機甲部隊の目は完全に戦車部隊に向いている。今がチャンスだ」

 

その崖の上に陣取っていた大洗歩兵部隊の中で、崖の縁に立っていた弘樹が、眼下で大洗戦車部隊を攻撃しているアンツィオ&ピッツァ機甲部隊を見ながらそう言う。

 

「なあ、オイ、弘樹………本当にやる気かよ?」

 

と、傍に居た了平が、青褪めた表情で弘樹にそう尋ねる。

 

「当たり前だ。西住総隊長達が注意を惹き付けてくれている今が好機なのだぞ」

 

「けどよぉ………やっぱ無理だって………この崖を降りるだなんて………」

 

崖の下を覗き込みながらそう呟く了平。

 

そう………

 

大洗歩兵部隊の面々は………

 

何とこの断崖絶壁を下り、大洗戦車部隊に注意が向いているアンツィオ&ピッツァ機甲部隊を背後から奇襲する作戦の様だ。

 

しかし、崖の傾斜は45度を超えており、最早壁である。

 

「危険が危ないぜ、こりゃ」

 

「危険を冒す者が勝利する………」

 

まだビビっている了平に、大詔が九九式軽機関銃を構えながらそう言い放つ。

 

「SASのモットーだね」

 

それを聞いていた迫信がそうコメントする。

 

「で、でもよぉ………」

 

「ゴチャゴチャ言ってんやないで! もう此処まで来たんや! 後は運を天に任せて突っ込むだけや!!」

 

尚もビビる了平に、大河の一喝が飛ぶ。

 

「では、先陣は私が切らせていただこう」

 

「何っ?………」

 

「駆けろ! シュトゥルムッ!!」

 

とそこで、ゾルダートがそう言い放ち、愛馬シュトゥルムと共に、1番に断崖絶壁の崖を駆け下り始めた!!

 

「うおおっ!? 行きやがったっ!?」

 

「スゲェッ! 正に源平合戦の一ノ谷の戦いだぜ!!」

 

巧みにシュトゥルムを操り、僅かな足場を飛び石を飛ぶ様にしてみるみる間に崖を下り降りて行くゾルダートの姿に大洗歩兵部隊の中から歓声が挙がる。

 

「野郎………負けられねえなぁっ!!」

 

すると続いて、負けず嫌いな白狼が、バイクで崖を下り始めたっ!!

 

「白狼っ!?」

 

「へっ! こんなモン! オフロードバイクのスタントに比べりゃ何て事ないぜっ!!」

 

飛彗が驚きの声を挙げる中、白狼は急勾配でスピードが上がっているにも関わらず、これまた巧みなテクニックで崖を下って行く。

 

「よおし! 我々も行くぞっ!! ラッパを吹けぇっ!!」

 

「了解っ!!」

 

そこで弘樹がそう言い放つと、とらさん分隊員の1人がラッパを取り出し、突撃ラッパを奏でる。

 

「いざ! 突撃いいいいいいぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーっ!!」

 

「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

九九式短小銃に着剣し、先頭に立って突撃した弘樹に続いて、大洗歩兵部隊のメンバーは一斉に断崖絶壁と言って良い崖を駆け下りて行ったのだった。

 

『ああーっと! 大洗歩兵部隊! 何と断崖絶壁を下り降りての奇襲攻撃だぁっ!!』

 

『いや~、凄いですね。まるで源平合戦の一ノ谷ですよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、大洗戦車部隊は………

 

「キャアッ!?」

 

Ⅳ号の至近距離に砲弾が着弾し、車内に走った振動に沙織が悲鳴を挙げる。

 

「もうそろそろ持ち堪えるのも限界だぞ」

 

巧みな操縦でアンツィオ&ピッツァ機甲部隊の攻撃を避けていた麻子が、他人事の様にそう言う。

 

「みほさん! 一旦後退しましょうっ!!」

 

「いえ! まだです!!」

 

後退しようと進言する華にそう返すみほ。

 

「あともう少し! 敵の注意を惹き付けます!!」

 

『こちらウサギさんチーム! もう無理ですぅっ!!』

 

『くうっ! 只でさえ仰角が取れない砲だと言うのに………』

 

『もう駄目だああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!』

 

そう言うみほだったが、通信回線には梓とエルヴィンの苦い声に加え、桃の絶望し切った悲鳴が響き渡る。

 

その間にも、アンツィオ&ピッツァ機甲部隊の攻撃は激しさを増す。

 

「総帥(ドゥーチェ)アンチョビ! もうそろそろ終わりにしてやろうぜ!! いい加減帰りたいしな!!」

 

「そうだな………遊びはココまでだ。全部隊、大洗のフラッグ車を狙え」

 

そこでロマーノがケリを着けようと言い、アンチョビの命令でアンツィオ&ピッツァ機甲部隊は、一斉に大洗のフラッグ車………カバさんチームのⅢ突に狙いを定める。

 

『!? マズイ! 狙われているぞっ!!』

 

『総隊長っ!!』

 

「!?」

 

カエサルとエルヴィンの声が通信回線に響くと、みほの表情に焦りが浮かぶ。

 

「終わりだ、大洗! そして西住 みほ! 全部隊、攻げ………」

 

と、アンチョビの命令が下されようとしたその瞬間!!

 

アンツィオ&ピッツァ機甲部隊の背後上方の方から、突撃ラッパの音色が聞こえて来た。

 

「? 何だ?」

 

「ラッパ?」

 

振り返ったアンチョビとロマーノ、アンツィオ&ピッツァ機甲部隊が見たモノは………

 

「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

断崖絶壁を勢い良く駆け下りて来る、大洗歩兵部隊の姿だった。

 

「なあっ!?」

 

「て、敵襲ーっ!?」

 

「お、大洗の歩兵部隊が! 空から降って来たーっ!?」

 

有り得ない場所からの奇襲に、アンツィオ&ピッツァ機甲部隊は浮足立つ。

 

「シュトゥルムよ! 今が駆け抜ける時っ!!」

 

と、先陣を切っていたゾルダートが1番に仕掛けた!

 

愛馬シュトゥルムと共に、アンツィオ&ピッツァ機甲部隊の中を駆け巡る!!

 

「ぐああっ!?」

 

「う、馬っ!?………!? ギャアアッ!?」

 

まさかの騎兵に、ピィツァ歩兵隊員達は驚き、次々に跳ね飛ばされて行く。

 

「クッ! このぉっ!!」

 

と、1両のカルロ・ベローチェCV35が旋回し、ブレダM38車載重機関銃を発砲するが………

 

「フッ………」

 

ゾルダートが一笑したかと思うと、その姿がシュトゥルム諸共忽然と消えた!

 

「!? き、消えたっ!?………!? キャアッ!?」

 

カルロ・ベローチェCV35の乗員が驚いていると、車体に振動が走る。

 

何と、消えたと思われていたゾルダートが、シュトゥルムごとカルロ・ベローチェCV35の上に着地して来たのである。

 

「覚悟して頂く」

 

そう言い放ち、腰のベルトに下げていた吸着地雷を手に取り、下に落とすゾルダート。

 

吸着地雷がカルロ・ベローチェCV35の上部に張り付いたかと思うと、ゾルダートはバッとシュトゥルムと共に離脱する。

 

直後に吸着地雷が爆発。

 

装甲の薄いカルロ・ベローチェCV35が耐えられる筈も無く、撃破を示す白旗が上がった。

 

「クソッ! 先越されたか! だったら俺の獲物はアイツだ!!」

 

先に戦果を挙げられた事に対抗心を燃やした白狼が、アクセルを吹かすと、近場に居たセモベンテM40へと向かう。

 

「やらせるか!」

 

「調子に乗るなよっ!!」

 

しかし、そうはさせないとピッツァの歩兵達がその前に展開する。

 

「ちょっと!? 退いて! 撃てないよっ!!」

 

だが、それは結果的にセモベンテM40の砲撃を邪魔する事になってしまう。

 

「そらよっ!!」

 

と、白狼はそのセモベンテM40の前に展開したピッツァ歩兵達の前でバイクを思いっきり反転させる様に回転させたかと思うと、砂と土片を舞い上げさせた!

 

「うわっぷっ!?」

 

「目が!? 目がぁっ!?」

 

砂と土片が目に入り、行動不能となるピッツァ歩兵達。

 

「ひゃっほうーっ!!」

 

「!? ゲバナッ!?」

 

すると白狼は容赦無く、1番手前に居たピッツァ歩兵をジャンプ台代わりに跳ね飛ばして宙に舞う。

 

跳ね飛ばされたピッツァ歩兵が戦死判定を受けたのを尻目に、白狼はセモベンテM40の真上を取った。

 

「そらよっ!!」

 

そしてそのまま、セモベンテM40の上部に、カンプピストルでグレネードを撃ち込む!

 

派手な爆発が、セモベンテM40の上部で起こったかと思うと、一瞬間が有って、セモベンテM40から白旗が上がった。

 

「総帥(ドゥーチェ)! カルロ・ベローチェCV35とセモベンテM40が!?」

 

「分かっている! ええい! 歩兵部隊! 何をやっている!! 守りを固めろっ!!」

 

砲手のカルパッチョが悲鳴にも似た声を挙げる中、アンチョビは怒りを露わにしながらも、冷静に指揮を執ろうとする。

 

「そうだ! 怯むなぁっ!! 所詮は戦車の居ない歩兵部隊だ!! 守りを固めれば我々に方が有利だ!!」

 

ロマーノの大声で、ピッツァ歩兵部隊の面々にそう言い放つ。

 

「そ、そうか!!」

 

「よ~し! 戦車を中心に守りを固めろぉっ!!」

 

と、それを聞いたピッツァ歩兵部隊の一部の隊員達が、1両のM13/40カルロ・アルマートの周りに集結し、守りを固めようとする。

 

「よしっ! 榴弾装填っ!!」

 

M13/40カルロ・アルマートの装填手も、主砲に榴弾を装填し、大洗歩兵部隊の中へと撃ち込もうとする。

 

だが、しかし!!

 

集結していたピッツァ歩兵部隊員達の中に砲弾が着弾し、破片が飛び散って、一斉にピッツァ歩兵部隊員達に命中した。

 

「「「「「うわああああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」」」」」

 

「!? な、何っ!?」

 

慌てて車長が周囲を確認すると、何時の間にかアンツィオ&ピッツァ機甲部隊の側面へと山を登って来た大洗戦車部隊の中で、長砲身となったⅣ号が砲口から硝煙を上げている。

 

「!? 大洗戦車部隊っ!?」

 

「何時の間に!? ちょっ! 撃って! 早く撃ってっ!!」

 

「で、でも榴弾じゃ!?」

 

M13/40カルロ・アルマートの操縦手が驚きの声を挙げる中、車長が慌てて指示を出すが、砲手は装填されているのが榴弾なので、効かないのではと砲撃を躊躇う。

 

その間に、今度はⅢ突の主砲が火を噴き、砲撃を躊躇して動きが止まっていたM13/40カルロ・アルマートに吸い込まれる様に命中!

 

爆発音が響き渡って黒煙が上がったかと思うと、M13/40カルロ・アルマートは白旗を上げた。

 

「全車攻撃続行! 但し、歩兵の皆さんに当てない様に気を付けて下さい」

 

「と言うワケだから河嶋~。お前は撃つなよ~」

 

「会長!! 如何してですか!?」

 

「桃ちゃん、今までの事を顧みて見れば?」

 

「ア、アハハハハ………」

 

みほからの指示が飛ぶと、38tの中で杏が桃にそう言い放ち、喚く桃に柚子が割と容赦無いツッコミを入れる。

 

そしてそんな一同の遣り取りに苦笑いするしかない蛍だった。

 

「大洗バンザーイッ!!」

 

「ぐああっ!?」

 

「西住総隊長と閣下の為にーっ!!」

 

「ぐあああっ!?」

 

銃剣を着剣した大洗部隊員達が、次々にピッツァ歩兵部隊員を串刺しにして行く。

 

「よし、良いぞ! このまま一気に押せぇっ!!」

 

九九式手榴弾を投げながら、弘樹がそう叫ぶ。

 

「「「「「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」」」」」

 

投擲した九九式手榴弾は、ピッツァ歩兵部隊員達が固まっていた場所に落ち、数名を吹き飛ばす。

 

「良し………!」

 

そこで殺気を感じ、その場から転がる様にして移動する弘樹。

 

直後に、先程まで弘樹がいた場所に銃弾が数発着弾する。

 

「舩坂 弘樹! よくもやってくれたなっ!!」

 

そこには、銃口から硝煙の上がって居るカルカノM1938を構えたロマーノの姿が在った。

 

「ロマーノ………」

 

「フッ………着剣!」

 

するとロマーノは、弘樹にそう言い放ちながら、カルカノM1938の銃剣を着剣する。

 

「銃剣で勝負する積りか?」

 

「俺は銃剣検定2級だ! その腕前を見せてやるぜ!!」

 

そう言い放つと、着剣したカルカノM1938をまるでヌンチャクの様に振り回すロマーノ。

 

「ホッ! ハッ! ヤアッ! さあ、掛かって来いっ!!」

 

「…………」

 

自信満々にそう言い放つロマーノとは対照的に、弘樹は冷静な態度を崩さずに、着剣している九九式短小銃を自然体で構える。。

 

「ハハハハッ! ビビって声も出ないのか!?」

 

その様子を、ロマーノはビビっていると判断する。

 

一体彼のその自信は何処から来るのだろうか………

 

「それっ! 行くぞーっ!!」

 

そしてロマーノは、着剣したカルカノM1938を構えて、弘樹目掛けて突撃する!

 

「…………」

 

対する弘樹はその場から動かない………

 

「貰ったぁーっ!!」

 

そんな弘樹に向かって、勢い良く着剣したカルカノM1938で突きを繰り出すロマーノ。

 

しかし………

 

「フッ!………」

 

弘樹は僅かに身体を右に動かし、ロマーノが繰り出した着剣したカルカノM1938での突きをかわしたかと思うと、そのまま左腕で着剣したカルカノM1938をロマーノの腕ごと抱え込んだ!!

 

「!? なっ!?」

 

「踏み込みが甘いっ!!」

 

驚くロマーノの頭に頭突きを食らわせる弘樹。

 

「ぐああっ!?」

 

ヘルメットとヘルメットがぶつかり合い、鈍い金属音がして頭に衝撃が走ったロマーノは、思わずカルカノM1938を手放してしまい、頭を押さえて後ずさる。

 

「ハッ!………」

 

空かさず弘樹は、追撃の蹴りを食らわせる!

 

「ガハッ!?」

 

弘樹の蹴りを真面に食らったロマーノは、そのまま地面に倒れる!

 

「セリュアァッ!!」

 

そして倒れたロマーノの胸目掛けて、弘樹は容赦無く着剣した九九式短小銃の突きを食らわせた!!

 

「グハッ!?………」

 

肺の中の酸素が全て吐き出されてしまった様な感覚に襲われたロマーノは、そのまま戦死と判定される。

 

「ば、馬鹿な………この俺が………」

 

「お前に1つだけ言っておく………自信と自惚れは全く違うものだ………」

 

「ク、クソォ~~ッ!!」

 

ロマーノの目から悔し涙が溢れる。

 

「隊長(カピタン)がやられた!?」

 

それを目撃していたピッツァ歩兵の1人がそう言った瞬間、Ⅳ号の砲撃でM13/40カルロ・アルマートが、武志が放ったPIATでカルロ・ベローチェCV35が、新たに1両ずつ撃破された。

 

「うわぁっ!! もう駄目だぁっ!?」

 

完全に押されている状況に、ピッツァ歩兵部隊からそんな声が挙がる。

 

「ええい! 落ち着けっ!! 各員其々に背中合わせとなって守り合え! 総帥(ドゥーチェ)! ココは撤退を!」

 

しかしそこで、フォルゴーレがロマーノに代わって指揮を執り、アンチョビにそう進言する。

 

『!? 撤退だと!? 逃げろと言うのか!?』

 

「このままでは全滅を待つだけです!」

 

『クウッ!………この陣地を放棄! 撤退するぞっ!!』

 

アンチョビは悔しそうな声を漏らしながらそう指示を出す。

 

直後に、ピッツァ歩兵部隊から次々に煙幕手榴弾が投擲され、辺りが煙に包まれる。

 

「エッホッ! ゴッホッ! 煙幕かよ!?」

 

「撃つな! 同士討ちになる!!」

 

地市がむせていると、弘樹がそう指示を出し、大洗機甲部隊は一旦戦闘を停止する。

 

やがて煙幕が晴れると、既に高台の陣地内に、アンツィオ&ピッツァ機甲部隊の姿は無かった。

 

「逃げたか………」

 

「見事な引き際だね」

 

十河が呟くと、迫信が皮肉る様な台詞を言う。

 

「西住総隊長。如何しますか? この陣地を接収しますか?」

 

「いえ、此処は追撃を掛けます。恐らく敵は私達が代わって陣地に陣取ると読んで来る筈です。その裏をかきます」

 

「了解しました」

 

そして、弘樹とみほがそう遣り取りを交わすと、大洗機甲部隊はアンツィオ&ピッツァ機甲部隊の追撃に入るのだった。

 

『さて、手痛い打撃を受けたアンツィオ&ピッツァ機甲部隊は陣地を放棄して撤退。大洗機甲部隊はコレを追撃するみたいですね』

 

『既にアンツィオ&ピッツァ機甲部隊は戦車が半数やられてますからね。プレッシャーを与える意味でも、ココで更に追い込みを掛ける積りでしょう』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

アンツィオ&ピッツァ機甲部隊に有利な高台へ陣取られた大洗機甲部隊。
しかし、その有利を逆手にとって、奇襲攻撃を掛ける。
ゾルダートや白狼、そして弘樹の活躍もあり、戦車を半数に加え、歩兵隊隊長であるロマーノの撃破にも成功する。
そして、みほは撤退するアンツィオ&ピッツァ機甲部隊に追撃を掛けるのだった。

アンツィオ&ピッツァ機甲部隊、良いとこ無しですが、次々回ぐらいには例の『鬼』が登場しますので、そこからが本番となります。
楽しみにしていて下さい。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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