ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース 作:宇宙刑事ブルーノア
『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』
第35話『アンツィオ&ピッツァ機甲部隊です!』
大洗機甲部隊メンバー総出の捜索により………
新たな戦車を3両と、Ⅳ号用の長砲身を発見する事に成功した。
しかし、発見された戦車3両は、どれも長年放置されていた事による劣化や破損が酷く………
大規模な整備が必要とされ、次のアンツィオ&ピッツァ機甲部隊との試合には間に合わないとされた。
その為、戦車の改造は、Ⅳ号の長砲身化が優先されて行われる事となった。
大洗女子学園・戦車格納庫内………
「よ~し、ホシノ、そっち押さえて」
「OK」
「18番の装甲板と7の履帯だ。すぐに発注してくれ」
「アイアイサ~! 了解しました、整備長~!!」
自動車部と大洗男子校整備部の手により、Ⅳ号の改造が進む。
只長砲身化するだけでなく、それに合わせて、Ⅳ号全体をF2型仕様に改造しているのである。
2回戦は既にあと僅かまで迫っているが、自動車部と整備部の尽力により、試合前には完成するとされている。
「凄い………」
「凄いですね、ウチの自動車部と、男子校の整備部の皆さんは」
目の前で瞬く間にF2型に改造されて行って居るⅣ号を見ながら、作業の様子を見守っていたみほと優花里がそう声を挙げる。
「うん。見つけた戦車が使えないのは残念だったけど、コレで多少の戦力アップは出来たかな………」
「此処に居たのか、西住くん、秋山くん」
とそこで、格納庫内に弘樹が姿を見せる。
「あ、舩坂くん」
「如何しました? 練習開始にはまだ少し時間があると思いますが………」
「会長閣下が話が有るらしい。皆を集めてくれと言われている。格納庫前に集まってもらえるか?」
「あ、ハイ」
「分かりました」
優花里とみほは、弘樹に連れられて、格納庫を出て行くのだった。
大洗女子学園・戦車格納庫前………
「皆、集まってくれたかな? 今日は諸君等に嬉しい知らせが有る」
迫信が、集まった大洗機甲部隊の面々を前にそう言う。
「嬉しい知らせ?」
「一体何だ?」
迫信の言う嬉しい知らせと言うのが何か分からず、大洗機甲部隊の面々はざわめく。
「あ~、静かに………会長、続きを」
そこで俊が一旦一同を静かにさせると、迫信に話の続きを促す。
「うむ………実は本日、我が大洗国際男子校に転校生がやって来てね。その転校生くんが歩兵道に志願してくれたのだよ」
「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」
転校生が歩兵道に志願した。
その知らせに、大洗機甲部隊の面々は再度ざわめく。
「転校生が歩兵道に志願?」
「それってつまり………ウチで歩兵道をやりたいって事で転校して来たのか?」
「態々弱小チームなウチに来るなんて………物好きな奴も居たもんだぜ」
磐渡、鷺澪、重音からそんな言葉が漏れる。
「まあ、ウチの学校は曲者………もとい、個性が強い連中が多いからな」
俊が大洗歩兵部隊の面々を見回す様に見ながらそう言い放つ。
「それで、その転校生と言うのは?」
「どうせなら不細工な奴が良いな。俺が引き立って相対的にモテるかもしれないから」
飛彗がそう尋ねる横で、了平が何とも下衆な考えを巡らせる。
「了平、貴方と言う人は………」
と、そんな了平を楓が嗜めようとしたところ………
「!? ぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!?」
了平が悲鳴を挙げた!!
「!? 何っ!?」
「う、馬っ!?」
大洗機甲部隊の面々が驚愕する。
突如現れた黒毛の馬が、了平の頭に噛み付いたのだ。
「イデデデデデデデデッ! 助けてくれえええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!」
甘噛みなどと言う生易しいものではなく、本気で噛まれている為、了平の頭から嫌な音が聞こえ始める。
「了平っ!!」
「オイ、テメェ! いくらそんな奴でも死なれちゃ困るんだよっ!!」
楓と割と酷い事を言いながら地市が助けに入ろうとするが………
「!? アダッ!?」
馬は了平を放り投げると、2人を威嚇する様に前足を振り上げ、後ろ足で2本立ちした!!
「!? おわっ!?」
「!?」
2人が慌てて飛び退くと、馬はその場でロデオの様に暴れ出す。
「アブネェッ!!」
「離れろ、オイッ!!」
慌ててその馬から距離を取る大洗機甲部隊の面々。
「! あの馬は!?」
「西住殿! 危険ですっ!!」
と、その馬に見覚えを感じていたみほを、優花里が引っ張って下がらせる。
「誰か! 武器を持って来いっ!!」
最早手に余ると思ったのか、大洗歩兵部隊員の中からそんな声が挙がる。
「!!」
しかしそこで、馬に手綱が付いている事に気付いた弘樹が、暴れる馬の前に飛び出した。
「!? 舩坂くん!!」
「危ないですよっ!!」
沙織と華が叫んだ瞬間、馬が弘樹に襲い掛かろうとする。
「!!」
だがその瞬間!!
弘樹は目の前に揺らめいた手綱をキャッチする。
「どうっ! どうっ、どうっ!!」
そのまま手綱を捌き、馬を大人しくさせようとする弘樹。
馬は暫く暴れていたが、やがて大人しくなって弘樹の前で鼻を鳴らした。
「良し、良い子だ………」
弘樹は大人しくなった馬の頭を撫でる。
「凄~いっ!」
「流石です! 舩坂先輩っ!!」
その光景を見ていたあやと光照がそう声を挙げる。
すると………
「申し訳無い。私の愛馬が迷惑を掛けた様だな」
そういう台詞と共に、黒い衣装に身を包んだ金髪でサングラスを掛けた男性が姿を現した。
「………君の馬か?」
「オイオイ! 如何してくれんだよ! お前の馬のせいで、俺の頭が………」
弘樹がそう問い掛けた瞬間に、頭を噛まれた恨みからか、了平がその男に詰め寄ろうとする。
と、その瞬間に、馬が再び暴れ出そうとする!
「!? ヒイイッ!?」
「どうどうっ!!」
慌てて脱兎の如く逃げ出す了平と、再び馬を宥める弘樹。
「誠に申し訳無い。『シュトゥルム』は少々主人思いが過ぎる所があってな………私に敵意を向ける者に過剰に反応してしまうのだ」
了平に向かって謝罪しながらも、やんわりと釘を刺す男。
「それにしても見事だな。シュトゥルムは気難しい馬でもあってな。自分が認めた者以外には従おうとしないのだが………如何やら君は認められた様だな」
「みたいだな………」
男と弘樹はそう言い合って視線を交差させた。
(この男………かなり出来る)
その目を見た瞬間に、弘樹は目の前の男がかなりの強者である事を瞬時に理解する。
「ランゼンさん! やっぱりランゼンさんの『シュトゥルム』だったんですね!!」
とそこで、みほが男に向かってそう言う。
「えっ? みぽりん、知り合いなの?」
「ランゼン………!? まさか!? 『ガーバイン・ランゼン』の事ですか!? 西住殿!?」
沙織がそう言った瞬間に、優花里が大声を挙げる。
「『ガーバイン・ランゼン』?」
「黒森峰男子校歩兵部隊のエース騎兵ですよ! ドイツからの留学生で、あの梶 都草の戦友であり、その騎兵ならではスピードによる圧倒的な強さで『黒森峰の竜巻』と呼ばれた人なんです!!」
首を傾げる華に、優花里は興奮したままそう説明する。
「如何してランゼンさんが大洗に!?」
みほは男………『ガーバイン・ランゼン』にそう尋ねる。
しかし………
「失礼だが、人違いだ………私は『ゾルダート・ファインシュメッカー』だ。ガーバイン・ランゼンではない」
「!? ええっ!?」
自分はガーバイン・ランゼン………ではなく、『ゾルダート・ファインシュメッカー』だと名乗られ、みほは困惑する。
「ゾルダート・ファインシュメッカー………『食通の兵士』か」
それを聞いていた煌人が、その名がドイツ語で『食通の兵士』となる事を指摘する。
「そんな!? だって………」
と、優花里がそこで携帯を操作したかと思うと、何かの写真を画面に出す。
「ホラ! 何処から如何見てもガーバイン・ランゼンさんじゃないですか!!」
そう言って携帯の画面を皆に見せる様に持つ優花里。
そこには確かに、黒森峰歩兵隊の戦闘服を着て、髪型が違ってサングラスを掛けていないだけのゾルダート・ファインシュメッカーの姿が在った。
「おおっ! 確かに!!」
「こりゃ如何見たって………」
それを見た大洗機甲部隊の面々は、次々にゾルダートの事をガーバインだと思い始めたが………
「私はゾルダート・ファインシュメッカーだ。それ以上でもそれ以下でもない」
((((((((((ええ~~~~?………))))))))))
尚もゾルダートは、某4番目の偽名の赤い彗星の様な台詞を言って平然と白を切った。
最早ココまで来ると逆に清々しささせ感じる。
「君がガーバイン・ランゼンか、それともゾルダート・ファインシュメッカーなのかは小官等にとって然したる問題ではない。要は敵か味方か、だ」
するとそこで、弘樹がゾルダートに向かってそう言う。
「無論、私は大洗の味方だ」
「…………」
ゾルダートが即座にそう言い返すと、弘樹はそんなゾルダートの目をサングラス越しに見やる。
「「…………」」
そのまま暫し、互いの目を見やる弘樹とゾルダート。
「………ゾルダート・ファインシュメッカー。貴官の着任を歓迎する」
「感謝する」
やがて2人はそう言い合って、互いに握手を交わした。
如何やら、2人の中で何らかの決着が着いたらしい。
「え~と………」
「心強い味方が増えたね。西住くん。コレでアンツィオ&ピッツァ機甲部隊との戦いも楽になるな」
最早如何して良いか分からずに居たみほに、迫信がそう声を掛けた。
「! ハ、ハイ! そうですね」
「んじゃ西住ちゃん。皆に何か言ってやって」
みほが戸惑いながらそう返すと、杏が例によって無茶振りをする。
「え、ええっ!? えっと………」
困惑するみほだったが、既に全員の視線がみほに集まっている。
「あう………み、皆さん! 次も頑張りましょーっ!!」
「「「「「「「「「「おおーっ!!」」」」」」」」」」
みほは戸惑いながらも戦車部隊の皆にそう呼び掛け、戦車部隊の皆からガッツポーズと共に勇ましい声が挙がる。
「大洗機甲部隊! バンザーイッ!!」
「「「「「「「「「「バンザーイッ!!」」」」」」」」」」
それに呼応するかの様に、弘樹も歩兵部隊の皆に呼び掛け、歩兵部隊の面々は万歳三唱を始めた。
隔して新メンバー、ゾルダート・ファインシュメッカー(ワニさん分隊に配属)を加え、大洗機甲部隊は次なる対戦相手………
『アンツィオ&ピッツァ機甲部隊』との戦いに備えるのだった。
◇
そして迎えた公式戦2回戦の日………
アンツィオ&ピッツァ機甲部隊との試合会場は、山と谷が連なる森林地帯だった。
現在大洗機甲部隊の面々は、アンツィオ&ピッツァ機甲部隊と試合前の挨拶に入ろうとしている。
両チーム集合場所………
「キャーーーーーッ! イタリア戦車揃い踏みですよーっ!!」
優花里が歓喜の声を挙げる。
今彼女の目の前には、対戦相手であるアンツィオ&ピッツァ機甲部隊の戦車部隊………
イタリア軍が使用していた戦車達が並んでいた。
M13/40カルロ・アルマートが4両。
突撃砲セモベンテM40が2両。
カルロ・ベローチェCV35が3両。
そして、P40が1両。
合計10両のイタリア製の戦車隊である。
「全10両ものイタリア戦車! 夢の共演!!」
「楽しそうだな………」
舞い上がっている優花里を見て、白狼が呆れる様にそう言い放つ。
「!? ハッ!?………す、すみません………」
その一言で我に返った優花里が、皆に向かって謝罪する。
「また戦車の数はウチの倍かよ………」
「しかし今回はサンダース&カーネル機甲部隊の時とは違う。敵の戦車の性能はそこそこな物が多い。上手く立ち回れば然程苦戦はしないだろう」
地市が愚痴る様に言うと、十河が不敵に笑ってそう言い放つ。
「だが、P40には注意を払わなくてはいけないね………アレならば十分に我が部隊の戦車を撃破出来る」
だが対照的に、迫信は油断無くアンツィオ戦車部隊の戦車を見渡しながらそう言う。
とそこで、大洗戦車部隊の方が何やら騒がしくなる。
「? 何だ?」
それに反応して、白狼が大洗戦車部隊の方を見やると………
「やあ、カワイ子ちゃん達。この後、お時間ある? 僕と一緒にカプチーノとか如何?」
「え? あ、あの………」
「に、西住殿! 危険です! 下がってください!!」
「やだも~! ナンパされちゃった~!」
「私、カプチーノよりもお茶の方が………」
「………眠い」
第二次世界大戦時のイタリア陸軍の戦闘服に身を包んだ男が、あんこうチームの面々をナンパしていた。
ナンパされているあんこうチームは、多種多様な反応を見せている。
「オイ! あの戦闘服って、ピッツァ歩兵部隊のじゃないか!?」
とそこで、了平がその男の姿を見てそう声を挙げる。
「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」
その言葉で、大洗歩兵部隊の一同は一斉にイタリア陸軍の戦闘服を着た男へ視線を向ける。
「あ、君達も如何だい? 勿論僕が奢ってあげるからさぁ」
しかし、男はその視線に気付く様子すら見せず、大洗戦車部隊の面々へナンパを続けている。
と………
「………動くな」
何時の間にかその男の後ろに立って居た弘樹が、男の背にM1911A1を突き付けた。
「!?」
「両手を頭の後ろで組め。ゆっくりとだ」
男が固まると、弘樹はM1911A1を突き付けたまま、そう指示をする。
「ハ、ハイ!………」
男は言われた通りに、両手を頭の後ろで組む。
「そのまま膝立ちになれ」
弘樹が続けてそう言うと、男は両手を頭の後ろで組んだまま、地面に膝を着く。
「ゆっくりとうつ伏せに地面に寝そべるんだ」
そして更に、うつ伏せになる様に地面に寝かせる。
「…………」
そこで弘樹は、M1911A1を右手で何時でも撃てる様にして握りながら、男のボディチェックを行う。
「ちょっ!? 止めろって! そんな趣味無いぞ!」
「大人しくしていろ!」
「ヒイッ!?」
男は抗議の声を挙げるが、弘樹が怒鳴ると再び黙り込む。
やがて、弘樹は男の懐のホルスターからベレッタM1934を発見。
取り上げると、ベルトの後ろに挿し、もうそれ以外に武器が無い事を確認する。
「………所属と姓名を明らかにしろ」
まだM1911A1を突き付けたまま、弘樹は男に向かってそう言う。
「お、俺はピッツァ男子校・歩兵部隊総隊長の『ロマーノ』だ!」
すると男………ピッツァ男子校・歩兵部隊総隊長の『ロマーノ』はそう名乗る。
「隊長?………お前がか?」
ロマーノの自称・隊長と言う言葉を聞いて、疑いの眼差しを向ける弘樹。
何故歩兵部隊の総隊長と言う責任ある立場の者が、敵陣へナンパをしに来ていたのか?
そしてこうも簡単に無力化されている………
その2点で、弘樹はロマーノの言葉を信じられずに居た。
「ホ、ホントだってばぁっ!!」
「…………」
ロマーノは必死に訴えるが、弘樹は敵の攪乱作戦ではないかと勘繰る。
「本当だ。その男はピッツァ男子校・歩兵部隊総隊長だ」
「!!」
とそこで、背後からそう言う声が聞こえて来て、弘樹は素早く左手で刀を抜いて、地面に伏せているロマーノに突き付けると、M1911A1を声が聞こえて来た方向へ向ける!
そこには、ロマーノと同じ第二次世界大戦時のイタリア陸軍の戦闘服に身を包んだ、やや日本人離れしている顔立ちをした男と、彼に率いられたピッツァ歩兵部隊の姿が在った。
「敵意は無い。隊長を迎えに来ただけだ」
と、銃を向けられた男はそう言って、白旗を掲げる。
良く見れば、背後に控えているピッツァ歩兵部隊の面々も武装をしていない。
「…………」
しかし、弘樹は油断せずにに、M1911A1の銃口を向け続ける。
「ふ、舩坂くん! もう良いから!」
とそこで、みほが見かねた様にそう声を掛ける。
「………総隊長の御命令とあらば」
その言葉で、漸く弘樹は武器を納める。
「フォルゴーレェッ!!」
途端にロマーノは起き上がり、迎えに来た人物にそう呼び掛けながら駆けて行く。
と………
「むんっ!」
「ぶべらぁっ!?」
迎えに来た男は、ロマーノを思いっきり殴りつけた!
「くぅぅ~~~………ぶったな!! パパにだってぶたれたこと無いのに!!」
「………総隊長を撤収させろ」
「「ハッ!!」」
ロマーノは初代ガ〇ダムのパイロットの様な台詞を言い放つが、男はそれを無視してピッツァ歩兵部隊にそう指示を出し、2人のピッツァ歩兵部隊員が、ロマーノを両脇から拘束して連れて行く。
「あ、オイ! 何するんだよ! 俺は隊長だぞ!! オイ、待てって! まだナンパしてない娘が居るのに~~っ!!」
煩悩丸出しな台詞を残して、ロマーノは強制的に連れて行かれたのだった。
「………全く持って申し訳無い」
それを確認すると、男は弘樹達に向かって深々と頭を下げる。
「苦労している様だな………ところで、君は?」
その男に向かって同情の台詞を言いながら、弘樹はそう問い質す。
「失礼、申し遅れた。私はピッツァ歩兵部隊副隊長の『フォルゴーレ』だ。今日はよろしくお願いする」
そう言って男………ピッツァ歩兵部隊副隊長の『フォルゴーレ』は、先程のロマーノとは全く対照的に、真面目な挨拶をする。
(フォルゴーレ………だと………まさか………)
フォルゴーレと言う名を聞いた弘樹の脳裏に、ある予感が過る。
と、その時………
「あ! 君達ひょっとしてスクールアイドル? 可愛いねぇ。如何だい? この後で僕と一緒にオンステージなんて?」
「如何しようか? 伊代ちゃん、優ちゃん」
「聖子………貴方分かってないでしょう」
「私達今、ナンパされてるんだよ」
先程ピッツァ男子校の歩兵部隊に連れて行かれた筈のロマーノが、再び現れて、今度はサンショウウオさんチームの面々をナンパしていた。
「! 何時の間に!?」
「オイ! 何をやっていた!?」
「スミマセン! 暴れられてその隙に!!」
弘樹が驚きの声を挙げ、フォルゴーレが後方に居た部下達に向かって怒鳴ると、1人の歩兵がそう報告を挙げる。
「あ、君達も個性的だねぇ。パスタ好きかい?」
その間にロマーノは、今度は歴女チームの面々へと声を掛け始める。
すると………
「ロマーノッ!?」
「!? ヒイイッ!? この声は………」
突如女性の怒声が響き渡り、ロマーノが恐る恐るその怒声が聞こえて来た方向を見やるとそこには………
緑色の軍服姿で同じく緑色の髪を黒いリボンでツインテールに纏め、手に教鞭を持った少女の姿が在った。
その米神には、怒りのマークが浮き出ている。
「私が居ない内に、随分と楽しそうな事をしてるじゃないか………」
ツインテールの少女は、教鞭を空いてる手にパシパシと叩きながらロマーノに向かって怒りを露わにしてそう言い放つ。
「い、嫌だなぁ~!! 総帥(ドーチェ)アンチョビ様は僕等の天使だよ!! 特にこの控えめなところが魅力的でね~~」
と、ロマーノは素早く少女………アンツィオ高校戦車部隊の隊長である『安斎 千代美』こと『アンチョビ』に駆け寄ると、彼女の胸の谷間に顔を埋めながら甘え始めた。
「!! 控えめで………悪かったなっ!!」
途端にアンチョビは顔を真っ赤にして、持っていた教鞭でロマーノを思いっきりシバき始めた。
「このスケベ! エッチ! 変態!!」
「ああああああ~~~~~~~っ!?」
次々に罵声を浴びせながら、更に教鞭でロマーノをシバくアンチョビ。
「あ、あの! もうその辺で………」
と、見かねたみほが止めようとしたが………
「き………」
「? き?」
「気持ち良い~~っ! もっと叩いて~!」
ロマーノは身をくねらせながら恍惚の表情を浮かべてそう言い放つ。
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
その様に、大洗機甲部隊の面々は、3メートルほど距離を取った。
「変態だ………」
「それも真正のだ………」
更にヒソヒソ声が挙がる。
「了平と良い勝負ですね」
と、楓が思わずそんな事を言うと………
「オイ! 失礼だな!! 俺はシバかれるんなら蝋燭の方が良い!!」
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
当の本人からそんな言葉が挙がり、大洗機甲部隊内での了平の株が底値を割った。
そして数分後………
全身ズタボロの状態で放送禁止な表情を浮かべていたロマーノを、ピッツァ歩兵部隊が回収し、集合場所には大洗機甲部隊の面々と、アンツィオ戦車隊の隊長であるアンチョビ。
そしてその副官である『カルパッチョ』が残っていた。
「大変お見苦しいモノをお見せしました」
カルパッチョが、自軍の歩兵部隊の総隊長を見苦しいモノ呼ばわりし、大洗機甲部隊の面々に向かって謝罪する。
「い、いえ………アハハハハハ………」
それに対し、みほが反応に困った様子を見せながら、苦笑いを零す。
「………西住 みほだな」
とそこで、アンチョビがみほの事を見ながらそう言う。
「あ、ハイ………?」
突然声を掛けられ、みほは反射的に返事をする。
「…………」
そんなみほの事をジッと見据えるアンチョビ。
「あ、あの………」
みほは只々困惑する。
「西住 みほ………お前の戦車道は………弱いっ!!」
とそこで!!
アンチョビはみほの事を指差しながらそう言い放った!!
「!?」
「なっ!?」
その言葉にみほは動揺し、優花里は驚きの声を挙げる。
「…………」
そして、弘樹もピクリと片眉を吊り上げた。
「私は去年の黒森峰機甲部隊の試合を見ていた。そして確信したよ………戦車道に背を向けた者に、私達は絶対に負けないとね」
そんな弘樹達の様子も知らず、アンチョビはみほに向かってそう言葉を続ける。
「覚悟しておく事だな」
「では………」
やがてアンチョビはカルパッチョと共に踵を返し、高笑いを響かせながら去って行った。
「…………」
「だ、大丈夫ですか、西住殿!?」
表情を曇らせていたみほに、優花里が心配そうに駆け寄る。
「何アイツ!? いくら何でも酷くない!?」
「ああ! 許せねえぜっ!!」
沙織と地市が怒りの声を挙げる。
「アンツィオ&ピッツァ機甲部隊の総隊長、アンチョビ………」
「やー、天晴れな宣戦布告だねぇー」
「我々と言うよりも、西住に対してという感じでしたが………」
「みほちゃん、大丈夫かな?」
一方、生徒会メンバーの柚子、杏、桃、蛍はそんな事を言い合う。
他のメンバーにも、多少の動揺が走っている。
「チッ………総隊長………」
「貴様等ぁっ!! 何を呆けているっ!!」
と、桃がそんなみほを叱咤しようとした瞬間、日本兵モードとなった弘樹からそう怒声が飛んだ!!
「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」
「奴等は我々の総隊長である西住殿を侮辱した! この蛮行を許しておけるのかぁっ!!」
驚く大洗機甲部隊の面々に向かって、弘樹は演説の様に更にそう言い放つ。
「アホ抜かせっ! これが許しておけるかいなっ!!」
すると、いの一番に大河がそう言い放つ。
「ならば我々がするべき事は何だっ!?」
「アンツィオとピッツァの連中に目に物見せてやる事だぁっ!!」
「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」
そこで大洗歩兵部隊の面々から雄叫びが挙がる。
「打倒! アンツィオッ!!」
「「「「「「「「「「打倒! アンツィオッ!!」」」」」」」」」」
「打倒! ピッツァッ!!」
「「「「「「「「「「打倒! ピッツァッ!!」」」」」」」」」」
そう言いながら、各々に持った武器を天に向かって突き上げる大洗歩兵部隊の面々。
「大洗! バンザーイッ!!」
「「「「「「「「「「バンザーイッ! バンザーイッ! バンザーイッ!!」」」」」」」」」」
そして最後には、お馴染みとなった万歳三唱が始まるのだった。
「ふ、舩坂くん………」
「西住総隊長。コレは敵の心理作戦です。奴等は西住総隊長の動揺を誘い、我々の士気を乱れさせるのが目的だったのでしょう」
みほが弘樹に声を掛けようとした瞬間に、既に試合モードとなった弘樹がみほへそう言葉を掛けた。
「う、うん………そうだね。危ないところだったよ」
「………君の判断は間違っていない」
「えっ?」
「例え世界中の誰もが否定したとしても………小官は君の行動は正しかったと言い続ける」
「!!」
「だから………今は試合の事だけを考えるんだ」
弘樹はそう言うと、ヤマト式敬礼をして、とらさん分隊のメンバーが居る方向へ歩いて行った。
「舩坂くん………ありがとう」
そんな弘樹の背に、みほはそう言葉を掛ける。
そして、キッと表情を引き締めたかと思うと、皆に向き直る。
「間も無く試合開始です! 開始地点まで移動しますっ!!」
「「「「「「「「「「了解っ!!」」」」」」」」」」
みほは皆にそう呼び掛け、大洗機甲部隊の一同はスタート地点へ向かう準備を始めた。
「…………」
一方、みほを叱咤しようとしていた桃は、弘樹の行動によって掛ける言葉を失い、呆然とその場に佇んでいた。
「桃ちゃ~ん! 行くよ~っ!!」
と、そんな桃に、既に38tに乗り込んだ柚子が声を掛ける。
「!? ま、待ってよ、柚子ちゃ~ん!!」
それを聞いた桃は、慌てて38tの元へと駆けて行くのだった。
そして10数分後………
遂に公式戦2回戦………
アンツィオ&ピッツァ機甲部隊との試合が、開始されたのだった。
つづく
新話、投稿させていただきました。
大洗歩兵部隊に新メンバーが加入ですが………
如何見てもトロンベの人です!
本当にありがとうございました。
そして開始されるアンツィオ&ピッツァ機甲部隊との試合。
アンチョビのキャラは漫画版をベースにしていますが、試合会場はTVの方を元に設定しています。
試合内容ですが………
残念ながら、アンツィオ側は漫画版ほど活躍は出来ないかと思います。
ですが、『鬼』の存在が試合を際立たせる事になる予定です。
では、ご意見・ご感想をお待ちしております。