ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第31話『スクールアイドル作戦、始まります!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第31話『スクールアイドル作戦、始まります!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

両チーム集合場所………

 

「一同! 礼っ!!」

 

「「「「「「「「「「ありがとうございましたぁっ!!」」」」」」」」」」

 

再び集合場所へと集結した両チームは、互いに並んで礼を交わす。

 

観客席からは惜しみない拍手が送られる。

 

「凄い拍手………」

 

「勝ったーっ!」

 

その拍手を受けて、華と沙織がそう言い合う。

 

「何だか、まだ信じられませんね………」

 

「ホントだぜ」

 

楓と地市がそんな事を言い合う。

 

「シャーマン相手に勝てるなんて………」

 

「ありがとう、舩坂くん、歩兵の皆さん。皆さんが敵を食い止めてくれたから勝つ事が出来ました」

 

と優花里が感激の涙を流している横で、みほは大洗歩兵部隊の面々に向かって、改めて感謝する。

 

「いやいや、それは違うよ、西住くん」

 

「我々は一丸となって任務を遂行したに過ぎない。この勝利は、フラッグ車を撃破し、尚且つ的確な指示と部隊の士気を保てた君の功績だ」

 

しかしそれに対し、迫信と弘樹がそう返す。

 

「そんな、私は………」

 

「貴方がキャプテン?」

 

とみほが謙遜しようとしていたところ、そう言う台詞と共にサンダースのケイと、カーネルのジョーイが現れる。

 

「えっ? あ、ハイ………」

 

「ジョーイ=ミヤギ………」

 

みほと弘樹がそう呟く中、ケイはみほの前に、ジョーイは弘樹の前へ佇んだ。

 

「フフ………エキサイティーングッ!!」

 

すると不意に、ケイが笑みを浮かべてみほに抱き付く!

 

「!? はわわわわっ!?」

 

突然抱き付かれた事に、みほは真っ赤になって固まる。

 

あんこうチームの面々も、其々に様々な反応を見せて固まっている。

 

「こんな試合が出来るとは思わなかったわ~!」

 

「あ、あの………」

 

「何?」

 

やがてケイが離れると、何かを聞こうとするみほ。

 

「戦車が4両しか来なかったのは、一体?………」

 

「貴方達と同じ車両数だけ使ったの」

 

「如何して?」

 

「ザッツ戦車道! コレは戦争じゃない。道を外れたら、戦車が泣くでしょう」

 

首を傾げるみほに、ケイは笑みを浮かべてそう言う。

 

その顔は、求道者の顔だった。

 

「盗み聞きなんて、つまらない事して悪かったわね」

 

「いえ、全車両来られたら、負けてました」

 

みほがそう言うと、背後に居た優花里達も頷く。

 

「でも、勝ったのは貴方達よ」

 

ケイはそう言って、みほの前に右手を差し出した。

 

「あ………ありがとうございます!」

 

みほは一瞬戸惑った様子を見せたが、やがてケイの手を両手で取って、固く握手を交わす。

 

一方………

 

「見事な戦いぶりだったぞ、舩坂 弘樹」

 

「君もな。ジョーイ・ミヤギ」

 

ジョーイは、弘樹とそんな会話を交わしている。

 

「…………」

 

と、ジョーイが不意に黙ったかと思うと、腰のホルスターからM1911A1を抜いた。

 

「!?」

 

「…………」

 

一瞬身構えた弘樹だったが、ジョーイはM1911A1を手の中で回転させ、銃身の方を持って、グリップを弘樹の方に向けて差し出す。

 

「………受け取れ」

 

「何?………」

 

「…………」

 

ジョーイの言葉に、弘樹は躊躇する様な様子を見せたが、やがてジョーイの目を見て、M1911A1を手に取った。

 

「舩坂 弘樹。次の試合………いや、この後の戦いも全て勝て。そして見事優勝をもぎ取れ」

 

「…………」

 

「それが私達を負かしたお前達の責務だ………期待しているぞ」

 

そう言って不敵に笑うジョーイ。

 

「…………」

 

弘樹は、M1911A1を左手に握ると、そんなジョーイに向かって、ヤマト式敬礼をするのだった。

 

 

 

 

 

その後、ケイとジョーイは、みほや弘樹達と2、3言葉を交わすと、自軍の元へと引き上げる。

 

そしてそこには、地面に正座させられているアリサ、ジェイ、ボブの姿が在った。

 

「………反省会するから」

 

「!? ヒイイッ!?」

 

ケイがやや厳しめな声で、アリサの肩に手を置いてそう言うと、アリサは悲鳴の様な声を挙げる。

 

「ジェイとボブは一時的に歩兵部隊の隊長と副隊長から解任するわ。暫くジョーイの部下の1兵として、442連隊で訓練を積んでもらいます」

 

「元上官と言えど、遠慮はしませんよ」

 

((あ、俺達、死んだ………))

 

一方、ジェイとボブにはそう言い渡し、ジョーイは厳しい表情をして2人にそう言い放ち、ジェイとボブの顔には絶望が浮かぶ。

 

「…………」

 

そんな3人を見ながら、ナオミは呆れた様に溜息を吐き、肩を竦めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方………

 

大洗機甲部隊VSサンダース&カーネル機甲部隊の試合を、とある場所よりジッと見ていた人物が居た。

 

「素晴らしい………アレが大洗機甲部隊………西住副隊長が率いている部隊か………」

 

その人物は黒毛の馬に跨っており、大洗機甲部隊の戦いをそう褒め称えている。

 

「やはり私が付き従うべき部隊は黒森峰ではなかった………大洗機甲部隊こそ、私が理想とする部隊だ。行くぞ! シュトゥルム!!」

 

ヒヒーンッ!!

 

やがてそう言い放つと、その人物は愛馬を翻し、その場から走り去って行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後………

 

試合会場の観客席エリアの一角に備えられたライブ会場にて………

 

幕が下りて、客席が見えない状態になっているステージの上で、サンショウウオさんチームのメンバーが待機している。

 

その後ろでは、バックバンドを務める磐渡、鷺澪、重音の3人が、其々にギター、ベース、ドラムをスタンバイしている。

 

『大洗女子学園のスクールアイドル、『サンショウウオさんチーム』のファーストライブ! 間も無くで~す! ご覧になる方はお急ぎ下さ~い!』

 

「………いよいよだね」

 

アナウンスを聞いた聖子がそう言う。

 

「うん!」

 

「う、うう………」

 

伊代は若干緊張しながらも返事を返すが、優の方は完全にテンパり、手がブルブルと震えている。

 

するとそこで、聖子は右手で優の左手を握り、更に左手で伊代の右手を握った。

 

「!!」

 

「大丈夫! 私達が付いてるから!」

 

そして優に向かってそう言う。

 

「聖子………」

 

「俺達も忘れて貰っちゃ困るぜ」

 

更に、磐渡達も手にしていた楽器から音を出しながらそう励ます。

 

「蹄さん………」

 

「でも、こういう時、何て言えば良いのかな?」

 

とそこで、伊代が何か掛け声を出そうとして、聖子にそう問う。

 

「ん~~………サンショウウオさんチーム! ファイト、オー!!」

 

「それでは元バレー部の皆さんの様な運動部みたいですよ」

 

少し考えた後、そう声を挙げた聖子に、優がツッコミを入れる。

 

「だよね~」

 

「アハハッ」

 

聖子がそう返すと、伊代が笑う。

 

磐渡達も笑みを浮かべている。

 

「あ! 思い出した! 番号を言うんだよ、皆で!」

 

「面白そう!」

 

思い出した様に聖子がそう言うと、伊代が乗って来る。

 

「よ~し! じゃあ、行くよぉ! 1!」

 

「2!」

 

「3!」

 

「4!」

 

「5!」

 

「6!」

 

聖子達の声に、磐渡達も乗って、そう声を挙げる。

 

「「「うふふふふふ………アハハハハハハ!」」」

 

緊張が解けたのか、揃って笑い声を挙げる聖子達。

 

「んじゃ、ボチボチ始めるか!」

 

そう言って磐渡は、再びギターを掻き鳴らす。

 

「ハイ! サンショウウオさんチームのファーストライブ! 最高のライブにしよう!」

 

「うん!」

 

「勿論です!」

 

聖子達がそう言った瞬間、ブザーが鳴って幕が上がり始める。

 

手を離して、目を閉じて集中を始める。

 

やがて、幕が開ききると、拍手の音が聞こえて来る。

 

そこで目を開ける聖子達。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが………

 

観客席に居たのは、大洗機甲部隊のメンバーだけだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その他の客の姿は無く、結構な広さを誇るライブ会場は、大洗機甲部隊の面々が全員居ても、空席が目立つ。

 

「「「…………」」」

 

思わぬ光景に言葉を失い、呆然と立ち尽くす聖子達。

 

「コイツは………」

 

「マジかよ………」

 

「アチャー………」

 

磐渡達も気まずそうに顔を伏せる。

 

「お客さん………来ませんでしたね」

 

「宣伝は十分にした筈なんですが………」

 

「試合に出てなかったからかなぁ?」

 

観客席に居た華と優花里、沙織がそう呟く。

 

「やっぱ無名のアイドルのデビューライブなんざ興味ねえってか………」

 

「白狼、それは………」

 

白狼が歯に衣着せぬ言い方でそう言い、飛彗が咎めようとしたが、現実にそんな状況の為、言葉に詰まる。

 

「聖子ちゃん………」

 

「聖子………」

 

一足早く我に返った伊代と優が、聖子に呼び掛ける。

 

「…………」

 

聖子の脳裏には、今までのスクールアイドルへの道や、レッスンの日々が思い起こされる。

 

そしてその記憶が、目の前の光景を一層物悲しい物にする………

 

「………そりゃそうだ!」

 

「「!?」」

 

と、突然大声を挙げた聖子に、伊代と優が驚く。

 

「世の中、そんなに甘くない!!」

 

吹っ切れたかの様にそう言う聖子だったが、その顔は今にも泣きだしそうだった。

 

「「…………」」

 

それに釣られるかの様に、伊代と優の目も潤み始める。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

バックバンドの磐渡達も、観客席の大洗機甲部隊の面々も何と行って良いか分からず、ライブ会場を悲しい沈黙が支配する。

 

 

 

 

 

と、その時!!

 

 

 

 

 

「あ! あの!!」

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

突如入り口の方から声が聞こえて来て、全員がその方向へ注目する。

 

「ラ、ライブ………もう終わっちゃったんですか?」

 

突然全員の視線を浴び、その声の主………大洗女子学園の制服を着た3人の女子生徒の内、声を発した生徒が、戸惑いながらもそう尋ねる。

 

「!!…………」

 

例えたった3人でも、学校の生徒が見に来てくれた事に感極まりそうになる聖子。

 

 

 

 

 

と、更にその次の瞬間!!

 

 

 

 

 

「ヘーイ! サラマンダーチームのライブ会場は此処かしら!?」

 

そう言う台詞と共に、ケイを先頭にサンダース&カーネル機甲部隊の面々が姿を見せた。

 

「! ケイさん!」

 

「もう~! 水臭いじゃない! 貴方達の学校のスクールアイドルのデビューライブがあるなら、ちゃんと教えてよね」

 

ケイはそう言うと、すぐにサンダース&カーネル機甲部隊の面々と共に、空いている席に座る。

 

………アリサ、ジェイ、ボブが妙にやつれた顔をしているが、気にしてはいけないのだろう。

 

「! やろう!!」

 

「えっ!?」

 

「歌おう! 全力で!!」

 

「聖子………」

 

「だって………その為に今日まで頑張って来たんだから!」

 

「「!!」」

 

聖子のその言葉でハッとする伊代と優。

 

「歌おう!」

 

「聖子ちゃん………優ちゃん!」

 

「ええっ!」

 

「………1、2! 1、2、3!」

 

聖子達がそう言ったのを聞いて、磐渡が音頭を取って、この日の為に考えた曲………『Enter Enter MISSION』の演奏を始める。

 

そして、聖子達のデビューライブが始まった………

 

磐渡達の演奏が響く中、聖子、伊代、優の3人は歌って舞い踊る。

 

空席が目立つライブ会場に、その歌声は透き通る様に響き渡る。

 

ハッキリ言って、身内と対戦相手、僅か3人の生徒しか見に来てくれていないこのライブは失敗と言って良いだろう………

 

だが、それでも彼女達は、今自分達が出来る最高の歌と踊り、そして笑顔を観客席へと届ける。

 

それがスクールアイドルとなった彼女達に課せられた責務なのだ。

 

やがて歌が終わり、聖子達はステージ上で決めポーズを取る。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

みほ達とサンダース&カーネル機甲部隊の面々、そしてお客である3人の女子生徒も、呆然としていた。

 

彼女達のパフォーマンスはまだまだ未熟である。

 

しかしそれでも、今この場に居る人々の心には、深く確かに『何か』を残していた。

 

と、不意に1人が拍手を送る。

 

「! 舩坂くん!」

 

「! 弘樹!」

 

みほと地市が驚きの声を挙げる。

 

何故なら、最初に拍手を送ったのは他ならぬ弘樹だったのだ。

 

「…………」

 

顔は相も変らぬ仏頂面だが、サンショウウオさんチームに向かって惜しみなく拍手を送っている。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

やがて、それに呼応するかの様に、大洗機甲部隊の面々、サンダース&カーネル機甲部隊の面々、そして3人の女子生徒達も拍手を始めた。

 

「「「…………」」」

 

会場と比例するとそれ程多くない観客数のため疎らではあるが、惜しみない拍手を受けて、聖子達は感激の様子を見せる。

 

「………郷くん。如何するかね?」

 

するとそこで、不意に迫信が立ち上がり、聖子達に向かってそう言い放った。

 

「えっ? 如何するって?………」

 

「君達の歌とダンスは素晴らしかった。それは認めるよ………だが、デビューライブがこの様子では、今後も如何なるかは分からない………」

 

「ココで止めるのも1つの手だと思うけどね~」

 

戸惑う聖子に迫信はそう言葉を続け、杏もそんな事を言いながら立ち上がる。

 

「! 会長!」

 

「か、閣下! それはあんまりでは………」

 

杏と迫信の思わぬ言葉に、柚子と逞巳が慌てるが………

 

「………続けます!」

 

聖子はそんな2人を正面から見ながらそう返した。

 

「…………」

 

「聖子………」

 

「ほう? 何故かね?」

 

扇子で口元を隠しながら更にそう問い質す迫信。

 

しかし、その顔は不敵に笑っている。

 

「やりたいからです! 今、私ももっともっと歌いたい! 踊りたいって思ってます! きっと優ちゃんも、伊代ちゃんも」

 

聖子がそう言って、左右の優と伊代を見ると、2人も黙って頷いた。

 

「こんな気持ち、初めてなんです! やって良かったって、本気で思えたんです! 今はこの気持ちを信じたい………このまま誰も見向きもしてくれないかもしれない………応援なんて、全然もらえないかもしれない………」

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

その言葉に通じるものがあったのか、大洗機甲部隊の面々も多種多様な表情を浮かべる。

 

「でも………一生懸命頑張って、私達が頑張って届けたい! 今、私達が此処に居る、この思いを!! それにまだ………戦車道もやってないんだから! 何時か………何時か私達、必ず! 今度は試合にも参加して! 会場を満員にしてみせます!!」

 

迫信と杏を正面から見据え、聖子はそう宣言した!

 

「うむ………君の決意………しかと聞かせてもらったよ」

 

迫信はそう言って、口元を隠していた扇子を閉じる。

 

「じゃあやっぱり優勝しないとねぇ」

 

杏もそんな言葉を口にした。

 

「? 如何言う事ですか?」

 

「実はさあ、今までの戦車道・歩兵道の全国大会優勝でのライブじゃさあ、大手の音楽企業の社長さんや大物プロデューサーが良く現れてるんだよね」

 

「運良く、その方々の目に留まり、武道館でライブを行えたスクールアイドル達は数多いそうだよ」

 

首を傾げる聖子に、杏と迫信は驚くべき情報を齎す。

 

「!? 武道館で!?」

 

「ライブを!?」

 

その情報に伊代と優が驚愕する。

 

「…………」

 

聖子も、驚きを露わに固まっている。

 

「オイオイ、マジかよ!?」

 

「武道館でライブと言やぁ、ミュージシャンの夢じゃねえか!」

 

「大会で優勝すればその可能性が有るのかよ!!」

 

バックバンドを務めていた磐渡達も沸き立つ。

 

「! よ~し! やるぞ~!! 目指せ! 武道館ライブーっ!!」

 

やがて聖子は我に返り、右手で拳を握って、天に向かって突き上げながらそう宣言した!

 

「ブラボー! 頑張ってね、サラマンダーチーム! 私達も応援してるわよ!!」

 

そんな聖子達の決意に、ケイもそう声援を送り、サンダース&カーネル機甲部隊の面々は、再び惜しみない拍手を送り始める。

 

こうして………

 

サンショウウオさんチームのデビューライブは、幕を閉じたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後………

 

辺りは夕焼けに染まり、あんこうチームととらさん分隊の面々が、引き上げて行くサンダース&カーネル機甲部隊の面々を見送っていた。

 

「さ~て、コッチも引き上げるよ~。お祝いに特大パフェでも食べに行く?」

 

「おっ! 良いね!!」

 

「行くっ!」

 

沙織がそう言うと、地市と麻子が同意する。

 

するとそこで、ニャ~オ、ニャ~オと言う猫の鳴き声が聞こえて来る。

 

「あ、麻子、鳴ってるよ、携帯」

 

それを聞いた沙織が麻子にそう言う。

 

如何やら、麻子の携帯電話の着信音らしい。

 

鞄から携帯を取り出す麻子。

 

「誰?」

 

「知らない番号だ………」

 

麻子は沙織にそう答えながら、通話ボタンを押して耳に携帯を当てる。

 

「ハイ………えっ?………ハイ」

 

とそこで、麻子の顔に動揺の色が浮かぶ。

 

「? 如何したの?」

 

「いや………何でも無い………」

 

沙織に尋ねられてそう返す麻子だったが、動揺の様子は隠せず、震え始めた手から携帯を落としてしまう。

 

「! 何でも無いワケないでしょ!」

 

「如何したんですか?」

 

その様子を見て只事ではないと感じ取った沙織と楓が、麻子を問い質す。

 

「………おばぁが倒れて………病院に………」

 

「「「「「!?」」」」」

 

麻子が絞り出す様にそう呟くと、みほ達の顔が驚愕に染まる。

 

「麻子、大丈夫!?」

 

「早く病院へ!」

 

「でも、大洗まで如何やって………」

 

「学園艦に寄港してもらうしか………」

 

「撤収まで時間が掛かります!」

 

すぐに麻子を病院へと送ろうとする沙織達だったが、今から大洗まで向かうには時間が掛かってしまう。

 

「!!」

 

するとそこで、突如麻子が靴と靴下を脱ぎ始めた!

 

「麻子さん!?」

 

「何やってるのよ、麻子!?」

 

「泳いで行く!」

 

驚くみほと沙織に麻子はそう言い放つ。

 

完全に冷静さを失っている様だ。

 

「「「ええっ!?」」」

 

みほ達が驚いている間に、麻子は制服をも脱ぎ捨てようとする。

 

「おおっ!?………!? ぶべぇっ!?」

 

「貴様はこんな時に何を考えているっ!!」

 

その光景に思わず目を見張った了平を、弘樹が鉄拳制裁する。

 

「待って下さい、冷泉さん!」

 

そんな麻子を華が落ち着かせようとする。

 

「待っていろ。会長閣下なら、戦闘機の1機ぐらいは………」

 

と、弘樹が迫信を頼ろうとしたその時………

 

「私達が乗って来たヘリを使って」

 

「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」

 

突如そう声が掛けられて、みほ達と弘樹達が振り返るとそこには………

 

夕日を背に佇む、まほ、エリカ、都草、久美の黒森峰の面々の姿が在った。

 

「! お姉ちゃん」

 

「梶………都草」

 

まほと都草の姿に、みほと弘樹が軽く驚く。

 

「急ぎたまえ」

 

そんなみほ達に向かって、都草がそう促す。

 

「隊長! 梶歩兵隊長! こんな子達にヘリを貸すなんて!!」

 

「これも戦車道よ」

 

「ですが………」

 

「逸見くん、良い機会じゃないかな? この間のルクレールでの失態を取り返す、ね」

 

「! ぐうっ!………」

 

ヘリを貸す事を渋る様子を見せたエリカに、まほがそう言い、都草はこの前のルクレールでの失態を挙げて黙らせる。

 

「お姉ちゃん………梶さん………」

 

「さ! 急ぐであります! この毛路山 久美が通常の3倍のスピードで送るであります!」

 

みほが言葉を失っていると、久美がそう呼び掛けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合会場のヘリポート………

 

そこには、黒森峰が所有している『フォッケ・アハゲリス Fa 223 ドラッヘ』が有り、離陸準備に入っている。

 

「操縦頼んだわね」

 

『ハイ………』

 

『エリカ殿。まだ不満があると言うなら、今週末の炊事手伝いは無しにするでありますよ!』

 

『! わ、分かったわよ!!』

 

操縦席に着いて居たエリカの不満そうな様子が気になった副操縦士を担当していた久美が、半ば脅す様にそう言う。

 

「早く乗って!」

 

「…………」

 

「あ! 私も行く!」

 

まほに促されて、麻子がFa 223に乗り込むと、沙織が付き添いとして一緒に乗り込む。

 

「………ありがとう」

 

「…………」

 

離陸しようとしているFa 223から離れたまほに、みほはそう呟くが、まほは振り返らずに離れて行く。

 

「………此度の件、感謝致します」

 

一方弘樹も、都草に向かって心から感謝し、深々と頭を下げる。

 

「気にしないでくれたまえ。困った時はお互い様さ。それに………ルクレールでの非礼のお詫びでもあるのだからね」

 

都草はフッと笑いながらそう返すと、まほの元へと向かう。

 

「…………」

 

弘樹はそんな都草の背に向かって、姿勢を正して、ヤマト式敬礼をするのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日………

 

黒森峰機甲部隊と知波単学園の試合が行われ………

 

黒森峰はまほが駆る『ティーガーⅠ』が、殆どの知波単学園の主力である九七式中戦車・チハを撃破。

 

歩兵の大半も、ドイツ国防軍の戦闘服に身を包み、『StG44』を携えた都草が指揮する歩兵部隊の活躍により、殆どが壊滅状態となっていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

サンダース&カーネル機甲部隊との交流。
そしてサンショウウオさんチームのアイドルデビュー!
………だったのですが、結果は散々なものになってしまいました。
しかし、彼女達はコレをバネにして一層奮戦します。
彼女達が輝くのは戦車チームとして参戦してからだと思って下さい。

原作でまほが力を貸してくれたシーンは、企画段階では色々と考えていたのですが、見直してみるとどれもイマイチだったので、原作通りのシンプルなものにしました。
黒森峰陣営の活躍は、今後に期待していて下さい。

さて次回はアンツィオ戦前の2回目の戦車捜索です。
原作ではⅣ号の長砲身とルノーを発見しましたが、この作品ではサンショウウオさんチームの戦車も発見する予定です。
ただ、数話使う事になる予定なので、気長にお願いします。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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