ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第29話『カーネル歩兵隊を突破せよ、です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第29話『カーネル歩兵隊を突破せよ、です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サンダース戦車部隊のフラッグ車を発見したみほ達の大洗戦車部隊だったが………

 

撃破に手間取って居た間に、サンダース戦車部隊の本隊と442部隊が増援として現れてしまう。

 

128高地に展開していた大洗歩兵部隊も、逆にカーネル歩兵部隊に足止めされ、大洗戦車部隊の救援に向かえずに居た。

 

絶体絶命の状況に陥った大洗機甲部隊。

 

だが、そこへ現れたのは………

 

K800WとソードオフモデルのウィンチェスターM1887。

 

そして、カンプピストルを引っ提げた白狼だった。

 

遂に自慢のバイクテクニックを歩兵道にて披露した白狼は、今までが嘘だったかの様な大活躍を見せる。

 

その機に乗じ、弘樹は突撃命令を出す。

 

果たして、勝負の行方は?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

128高地………

 

「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!」

 

「大洗、バンザーイッ!!」

 

白狼の登場で、混乱に陥ったカーネル歩兵部隊へと突撃を敢行した大洗歩兵部隊は、カーネル歩兵部隊の隊員達と入り乱れ、乱戦を展開している。

 

『さあ、128高地では大洗とカーネルの歩兵部隊が混じり合い、大混戦を展開しています!』

 

『こうなると、逆に人数が多いカーネル歩兵部隊の方が不利ですね。フレンドリーファイアの危険性が高いですから』

 

ヒートマン佐々木とDJ田中がそう実況する。

 

「わあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

 

「逃げちゃ駄目だ! 逃げちゃ駄目だ!」

 

悲鳴の様な叫び声を挙げながらEMP35を撃ちまくる了平と、その了平に続く様にオーウェン・マシンカービンで弾幕を張る竜真。

 

「そこだっ!!」

 

「ぐああっ!?」

 

突撃して来ていたカーネルのオートバイ兵にヘッドショットを決めた飛彗が、すぐに場所を移動し始める。

 

「あのスナイパーを狙えっ!!」

 

「イエッサーッ!!」

 

と、その姿を見たM3装甲車の操縦手が、機銃座に居たカーネル歩兵にそう命じる。

 

走り去ろうとしていた飛彗に、ブローニングM1919重機関銃の7.62mm弾が次々に襲い掛かる。

 

「うわあぁっ!?」

 

飛彗は慌てて、転がり込む様にして塹壕に隠れる。

 

その塹壕に向かって更に、7.62mm弾が撃ち込まれる。

 

「もっと接近してくれ!」

 

「任せろっ!!」

 

トドメを刺そうと、M3装甲車が前進を始める。

 

だが、その瞬間!!

 

轟音が響き、M3装甲車の右前輪が吹き飛んだ!!

 

「「「!? うおわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」」」

 

忽ちM3装甲車は横転し、逆さまになり、撃破判定が下され、乗員も戦死が判定される。

 

「…………」

 

それを確認した陣が、両腕に持っていたシモノフPTRS1941を今度はジープへと向ける。

 

「「「「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」」」」

 

轟音と共に14.5ミリ弾が、ジープを穴だらけにし、乗って居たカーネル歩兵を木の葉の様にブッ飛ばす。

 

「しょ、小生だって、やる時はやるのです!!」

 

そう言う台詞と共に、九三式小火焔発射機から火炎を放つ灰史。

 

「うわあぁっ!?」

 

「アチッ! アチチチチッ!!」

 

真面に火炎を浴びたカーネル歩兵達が戦死判定を受け、回避に成功したカーネル歩兵達も、目の前で燃え上がった炎に逃げ惑う。

 

戦車が居なくなったとは言え、数の上で圧倒的に有利に立っているカーネル歩兵部隊を気迫で攪乱する大洗歩兵部隊。

 

「ヒャッホーッ!!」

 

中でも活躍を見せているのは、半ば乱入する様な形で参戦した白狼だ。

 

撃破されたM5トラクターの残骸をジャンプ台代わりに、バイクごと大きく跳躍する。

 

「うおっ!?」

 

「そらっ!!」

 

そして、思わずそれを見上げてしまったカーネル歩兵に、ウィンチェスターM1887・ソードオフモデルの散弾を浴びせる!!

 

「ぐあああっ!?」

 

散弾を全身に浴びたカーネル歩兵は、忽ち戦死と判定される。

 

「そうらっ!!」

 

「!? ガハッ!?」

 

更に、着地地点に居た別のカーネル歩兵の顔に、バイクの前輪を叩き込み、跳ね飛ばす!!

 

「それっ!!」

 

「!? うわああっ!?」

 

そしてオマケとばかりに突っ込んで来ていたカーネルのオートバイ歩兵に、高速マックスターンを見舞い、カーネルのオートバイ歩兵はマシンから放り出されて地面に転がった。

 

「何だ? 歯応えの無い連中だぜ」

 

今までのパッとしなかったのが嘘の様に、次々と戦果を挙げる白狼。

 

今の彼は正に、水を得た魚である。

 

とその時!!

 

K800Wの至近距離の地面を、銃弾が次々に抉った!

 

「!!」

 

白狼は、すぐにその銃弾が飛んで来た方向へ向き直る。

 

そこには、オートバイに乗った状態でM1カービンを片手で構えていたボブの姿が在った。

 

「オノレェ………貴様さえ現れなければ!」

 

「へえ、アンタ隊長格みたいだな。丁度良い。アンタを倒しゃあ、此処に居る連中は混乱するって寸法だ」

 

「ほざけぇっ! ベオウルフだか何だか知らないが、我々はカーネル歩兵機動部隊だ!! 他のどの学校よりも機械化されたエリート歩兵部隊だ!! 負けるワケがない!!」

 

ボブはそう叫ぶと、M1カービンを構えたまま、片手で自分のマシンを操り、発進させる!!

 

「エリートね………じゃあ、精々頑張りな!」

 

それに対し、冷めた目をした白狼は、同じ様にK800Wを発進させる。

 

そして、突っ込んで来るボブに向かって、ウィンチェスターM1887を向けたが………

 

「遅いっ!!」

 

何と!!

 

ボブは右手のM1カービンを構えたかと思うと、バイクを操縦していた左手を離して、腰のホルスターからコルト・ガバメントを抜き、M1カービンと共に発砲して来た!!

 

「!? 何っ!?」

 

走行中のバイクから両手を離すと言う行為を行ったボブに一瞬驚いた白狼だったが、すぐにハングオンしながらハンドルを切り、飛んで来た銃弾を如何にかかわす。

 

「逃がすかぁっ!!」

 

一旦離れ始めた白狼を、そのままM1カービンとコルト・ガバメントを構えたままで追うボブ。

 

揺れるバイクを体重移動だけで乗りこなしている。

 

「成程………エリートだって言うだけの事はあるみたいだな」

 

後ろから次々に銃弾が飛んで来て、風切り音を立てている中、白狼はバイクの上で姿勢を低くしながらそう呟く。

 

「けど………俺には敵わないぜ!」

 

と不意にブレーキを掛けて止まったかと思うと、その場で再び高速マックスターンを披露!!

 

粉塵が舞い上がって、白狼の姿を隠した。

 

「フン………砂煙に紛れて一気に強襲する積りか………」

 

ボブはそう推測すると、M1カービンとコルト・ガバメントのマガジンを交換する。

 

そして、強襲して来るであろう白狼を待ち構える。

 

と、その次の瞬間!!

 

砂煙の一角が揺らめいた!!

 

「! そこだぁっ!!」

 

お見通しだとばかりに、白狼の身体があるであろう位置に向かって、M1カービンとコルト・ガバメントの弾丸を叩き込むボブ。

 

しかし、砂煙の中から飛び出してきたのは、K800Wだけだった。

 

「!? 奴は何処に………!?」

 

その瞬間、一瞬上方の砂煙が途切れ、ボブは見た………

 

上空で自分に向かって右足を伸ばして飛び蹴りの姿勢を取っている………

 

白狼の姿を!!

 

「しまっ………」

 

「喰らええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーっ!!」

 

慌てるボブに、白狼必殺のライダーキックが叩き込まれる!!

 

「!! ガハッ!?」

 

ライダーキックはボブの胸を直撃!!

 

まるでハンマーで殴られた様な感覚に襲い掛かられ、ボブはマシンからブッ飛ばされた!!

 

地面に叩き付けられた際の打ち所が悪かったのか、戦死と判定される。

 

「コレが………ベオウルフ………」

 

ボブはそう呟き、気を失う。

 

「ホッ! やったぜ!!」

 

一方その白狼は、ボブにキックを見舞った反動で再び飛び上がり、K800Wに再び跨り、ターンしながら止まると、戦死判定を受けたボブを見てそう言い放った。

 

「副隊長!?」

 

「副隊長がやられた!! 誰か! 誰か指揮を!!」

 

歩兵部隊の副隊長であり、この場の指揮を執っていたボブがやられた事で、混乱していたカーネル歩兵部隊の統率が、更に乱れる。

 

「良し、今だ! 敵の統率は完全に乱れている! 突破を掛けろぉっ!!」

 

その様子を確認した弘樹が、大洗歩兵部隊全員にそう呼び掛ける!

 

「弘樹! アレだ!!」

 

とそこで、傍で戦っていた地市が、戦場の一角を指差す。

 

そこには、カーネル歩兵部隊が乗り捨てたと思われる荷台にM2重機関銃の機銃架が備え付けられたジープが在った。

 

「良し!! 了平! お前も来い!!」

 

「ま、待ってくれよぉっ!!」

 

カーネル歩兵部隊の様子を窺いながら、地市と了平を伴ってそのジープへと駆け出す弘樹。

 

だが、その瞬間!!

 

機関銃から放たれたと思われる銃弾が、弘樹達の足元を耕した!!

 

「!?」

 

「うおっ!?」

 

「わわわっ!?」

 

すぐさまその場に伏せる弘樹と、近くの塹壕に転がり込む地市と了平。

 

「奴等め! 我々のジープを奪う積りか!!」

 

「そうはさせるか!!」

 

ブローニングM1919A2の射手と助手がそう言い合い、助手の方が新たな弾倉をブローニングM1919A2にセットしようとする。

 

「!!」

 

弘樹は腰のベルトに手を伸ばし、手榴弾を使おうと試みたが………

 

「オラァーッ!!」

 

それよりも早く、塹壕を飛び越える様にやって来たくろがね四起が、ブローニングM1919A2ごと、射手と助手を跳ね飛ばした!!

 

「「ギャアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!?」」

 

跳ね飛ばされたブローニングM1919A2の射手と助手が悲鳴を挙げ、地面に叩き付けられたかと思うと、戦死判定を受ける。

 

「! 大河か!」

 

「ハハハッ! 弘樹! さっさとお嬢ちゃん達の援護に行くでぇっ!!」

 

そのくろがね四起を操縦していたのが大河であるのを確認した弘樹がそう言うと、大河は笑いながらそう言って来る。

 

「ああ、分かっている!」

 

弘樹はそう言いながら起き上がり、放棄されていたジープへと乗り込む。

 

「地市! 了平! 急げっ!!」

 

「おうっ!」

 

「わたたっ!? 急かさないでくれっ!!」

 

ギアチェンジをしながら地市と了平に呼び掛けると、2人が駆け寄って来て、ジープへと飛び乗る。

 

「黒岩くん! 僕も行くぞっ!!」

 

「俺もだ!!」

 

大河が操縦していたくろがね四起の方にも、武志と俊がそう言って乗り込む。

 

「分隊長!」

 

「親分! お供しますぜっ!!」

 

更に、とらさん分隊の分隊員達と、大河の舎弟達を中心としたメンバーが、鹵獲したジープや装甲車、くろがね四起に乗り込んだ状態でそう言って来る。

 

「奴等を行かせるなっ!!」

 

「撃て撃てぇっ!!」

 

だが、それを見てカーネル歩兵部隊もその意図に気付き、車両に乗って居る大洗歩兵部隊員に攻撃を集中させる。

 

「クッ!!………」

 

飛んでくる銃弾から身を隠しながら、ジープを出しあぐねる弘樹。

 

すると………

 

「させるか!!」

 

「邪魔はさせません!!」

 

正義がそう言って九八式柄付手榴弾を投げ、真竜がオーウェン・マシンカービンで弾幕を張る!

 

「「「「「うわああああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」」」」」

 

手榴弾の破片と9mmパラベラム弾を浴びたカーネル歩兵達が次々に倒れる。

 

「舩坂先輩! 行って下さいっ!!」

 

「! 何っ?」

 

オーウェン・マシンカービンで弾幕を張り続けていた真竜がそう言い、弘樹は僅かに驚きを露わにする。

 

「此処は僕達が食い止めます!!」

 

「先輩達は、西住総隊長の救援に向かって下さいっ!!」

 

そこで、九三式小火焔発射機で火炎を噴射していた勇武と、九六式軽機関銃で弾幕を張っていた正義もそう言って来る。

 

「練習試合の時は逃げ出し、天竺ジョロキアの時は碌に活躍出来なかったんです………せめて、ココでぐらい働かせて下さい!!」

 

「先輩! お願いします!!」

 

頼み込む様に勇武と真竜が、弘樹に向かってそう叫ぶ。

 

「舩坂くん、私が残って指揮を執る。君は彼等の言う様に行きたまえ」

 

Kar98kでヘッドショットを決めた迫信も、弘樹にそう呼び掛けた。

 

「………幸運を祈る」

 

弘樹はそれだけを言ってヤマト式敬礼をすると、ジープを発進させる。

 

「恩に着るでぇっ!」

 

大河が乗るくろがね四起も発進し、とらさん分隊の分隊員達と、大河の舎弟達を中心とした車両部隊も発進した。

 

「よ~し! 俺も行くか! 飛彗! 乗れっ!!」

 

「! わ、分かったっ!!」

 

それを見た白狼が自分も後を追おうとし、近くに居た飛彗に声を掛け、バイクの後ろの乗せる。

 

「白狼! 飛彗! 任せたぞ!!」

 

「此処は俺達が食い止めとくでぇっ!!」

 

この場に留まる事を選択した海音と豹詑がそう言って来る。

 

「おうよ! 任せたぜっ!!」

 

「頼むよ、2人共!!」

 

白狼と飛彗はそう言い残し、弘樹達の後を追った。

 

「ま、待てぇっ!!」

 

「行かせるかぁっ!!」

 

追い縋ろうとしたカーネルのオートバイ兵に、勇武が火炎を浴びせる!

 

「ぐあああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!」

 

「お前達の相手は………」

 

「俺達っすよーっ!!」

 

炎に包まれたカーネルのオートバイ兵を見ながら、真竜と正義がそう言い放つのだった。

 

『おっとーっ! ココで大洗歩兵部隊の半数がカーネル歩兵部隊を突破したーっ!!』

 

『この試合、まだ分かりませんよ。壮大などんでん返しがあるかもしれません』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

0615地点………

 

フラッグ車の護衛をしていたジェイ達を釘付けにしている楓達偵察兵部隊は………

 

「うわぁっ!?」

 

「銅さん!?」

 

「クッソ! すまねぇ! やられちまった!!」

 

楓が銃弾を浴びた秀人に近寄ったが、秀人には既に戦死判定が下されていた。

 

「だ、弾幕はパワーッ!!」

 

「ぐああっ!?」

 

「隊長! アリゾンがやられました!!」

 

「煩い! 分かってるっ!!」

 

逞巳がSIG KE7軽機関銃で展開した弾幕を浴び倒れたカーネル歩兵の事を、別の歩兵がジェイに報告したが、ジェイはうっとおしそうにそう返す。

 

大洗偵察兵部隊とカーネルフラッグ車護衛部隊は、お互いに遮蔽物に身を隠しながら、一進一退の攻防を続けていた。

 

お互いに軽装備の部隊であった為、決め手に欠け、膠着状態に陥っている。

 

(さっきの凄い発砲音………西住総隊長達は大丈夫かな?)

 

そんな中で楓は、先程この0615地点まで聞こえて来たファイアフライの発砲音を聞いており、みほ達の安否を気にしていた。

 

と、その時!!

 

風切り音が聞こえて来たと思われた次の瞬間には、大洗偵察兵部隊が展開していた場所の一角で爆発が発生する!!

 

「!?」

 

「うわぁっ!?」

 

「砲撃っ!?」

 

それが砲撃であると気付いた大洗偵察兵部隊は驚愕する。

 

その直後に、3両のシャーマンが0615地点へ姿を現す。

 

ボブの独断で、フラッグ車の救援に向かわされたサンダースの戦車部隊だ。

 

『此方ブラボーチーム! ジェイ歩兵隊長! 大丈夫ですか!?』

 

「! 援軍か! よし! コレで形勢逆転だっ!! あの偵察兵共を吹き飛ばせっ!!」

 

『了解! ファイアッ!!』

 

ジェイの命令を受けたシャーマンの1両が、楓達に向かって発砲する!

 

「おうわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

 

「! 蹄さん!!」

 

運悪く着弾の至近距離に居た磐渡が吹き飛ばされ、そのまま戦死判定を受ける。

 

更に、残り2両のシャーマン達も、次々に砲弾を大洗偵察兵部隊目掛けて撃ち込んで来る!!

 

「うわああああぁぁぁぁぁーーーーーーっ!?」

 

「助けてくれぇーっ!!」

 

「良いぞ! 奴等を蹴散らしたら、すぐにアリサの救援に向かうぞ!!」

 

先程までの膠着状態から一転して、自分達が完全に優位に立った為か、ジェイが気が大きくなった様な発言をする。

 

その間にも、シャーマンは次々に砲弾を大洗偵察兵部隊へと撃ち込んで行く。

 

「クソッ! このままでは全滅するぞっ!!」

 

ウィンチェスターM1897を発砲しながら大詔が叫ぶ。

 

「ハハハハッ! コレがサンダース&カーネル機甲部隊の力だぁっ!!」

 

悪役染みた台詞がジェイの口から飛び出る。

 

と、その次の瞬間!!

 

白煙の尾を引いて来たロケット弾が、1両のシャーマン後部へ命中!

 

「!? なぁっ!?」

 

思わずジェイが間抜け顔をした瞬間に、砲塔から撃破を示す白旗が上がる。

 

「よっしゃあっ! 命中!!」

 

「楓! 大丈夫かっ!!」

 

その次の瞬間には、助手席に立って砲口から白煙を上げている試製四式七糎噴進砲を担いでガッツポーズをしている地市と、運転席でハンドルを握っている弘樹の姿が見えるジープを先頭に、車両に乗った大洗歩兵部隊が雪崩れ込んで来る!

 

『!? 大洗の歩兵部隊!?』

 

『そんな!? ボブ歩兵副隊長は如何したの!?』

 

突如現れた大洗歩兵部隊を見た残り2両のシャーマンの乗員達が驚愕する。

 

「せ、戦車部隊! 先にアッチを狙えっ!! 奴等の中には対戦車兵も居るっ!!」

 

そこでジェイが、やや慌てながらもそう指示を出す。

 

装甲目標への攻撃手段に乏しい楓達の偵察兵部隊よりも、対戦車兵が含まれている弘樹達の方が脅威だと判断した様である。

 

『りょ、了解っ!!』

 

『ファイアッ!!』

 

戸惑ながらも砲塔を旋回させ、新たに現れた大洗歩兵部隊へ砲撃を浴びせるシャーマン2両。

 

「「「「「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」」」」」

 

直撃を食らったくろがね四起がブッ飛び、乗員が戦死と判定される。

 

「散開しろっ!!」

 

「「「「「了解っ!!」」」」」

 

弘樹のその声で、車両に乗った大洗歩兵部隊は散開する。

 

『バラけられた!』

 

『照準が!!』

 

その動きに着いて行けず、砲塔がウロウロと左右に旋回するシャーマン2両。

 

「奴等の足を止めろ! 攻撃ぃっ!!」

 

するとジェイが、そんな大洗歩兵部隊を止めようと、機関銃を持ったカーネル歩兵達に弾幕を張らせる。

 

「お前達の様な無名の弱小校なんかに! 我々カーネルが! サンダースが負ける事など! あってはならんのだぁっ!!」

 

ジェイ自身もそんな事を叫びながら、ブローニングM1918自動小銃を乱射する。

 

「うわたたっ!? あの野郎!!」

 

「地市! 運転を代われ!!」

 

「えっ!?」

 

銃弾がすぐ傍を掠めて、地市が思わず声を挙げた瞬間、弘樹がそう言い放ち、地市の返事も聞かずに荷台の方へと移動する。

 

「ちょっ!? 待てって、オイ!!」

 

慌てながらもすぐに運転席へと移動して、ハンドルを握る地市。

 

「了平! 邪魔だ、退いてろ!!」

 

「ハ、ハイィッ!!」

 

そして、先程から荷台で伏せていた了平を半ば無理矢理助手席へと退かし、荷台の機銃架に備え付けられていたM2重機関銃に着いた。

 

12.7mmの銃口を、ジェイ達へと向ける弘樹。

 

「!? イ、イカン!!」

 

「!!………」

 

ジェイが慌てて退避命令を出そうとした瞬間!!

 

弘樹はM2重機関銃の引き金を引き、爆音と共に射撃を開始した!!

 

「ぐあああっ!?」

 

「ぎゅああああぁぁぁぁぁーーーーーーっ!?」

 

曳光弾が混じった弾丸が、カーネル歩兵隊に次々に命中して行く!!

 

「!!………」

 

そのまま薙ぎ払う様にM2重機関銃を連射する弘樹。

 

「うわぁっ!?」

 

「た、隊長ぉっ!!」

 

「う、狼狽えるなっ!! 戦車隊! あのジープの奴を狙えっ!!」

 

次々に味方が薙ぎ倒されるのを見て動揺しながらも、ジェイはシャーマンにそう指示を出す。

 

『了解!』

 

それに応える様に、片方のシャーマンの砲が、弘樹達が乗って居るジープを追尾する。

 

「! 狙われているぞ! 回避っ!!」

 

「ちょっ! ちょっと待ってくれっ!!」

 

弘樹が運転席の地市に向かって叫ぶが、地市は一瞬反応が遅れる。

 

『ファイアッ!!』

 

その一瞬を見逃さず、シャーマンは発砲!

 

「!!」

 

「「おわあああぁぁぁぁーーーーーっ!!」」

 

直撃は辛うじて免れたが、至近距離の着弾で、ジープは粗1回転横に転がった!

 

その際に機銃架が壊れ、M2重機関銃が地面に落ちる。

 

「クウッ! 地市! 了平! 無事か!?」

 

「何とかな………」

 

「もうやだ! 俺お家帰る!!」

 

車両から投げ出された弘樹が頭を振りながら身を起こすと、同じ様にして地市が起き上がり、了平が半分泣きながらそう叫ぶ。

 

如何やら運良く、全員戦死判定は受けなかった様だ。

 

「今だ! アイツ等を仕留めろぉっ!!」

 

その姿を見たジェイは、弘樹達を格好の獲物だと思い、一斉に突撃を開始する。

 

「! 来るぞっ!!」

 

「あわわっ!? 如何すんだよ!?」

 

地市がそう叫び、テンパって何も出来ない了平。

 

「!!」

 

とそこで、弘樹は地面に落ちていたM2重機関銃の元へと駆け寄った。

 

機銃架からは外れたが、損傷はしていない様であり、ベルト式の弾薬もまだ繋がっている。

 

「あの男を狙えっ!!」

 

そんな弘樹へ、ジェイを初めとしたカーネル歩兵部隊の攻撃が集中。

 

近くに次々と銃弾が着弾し、甲高い音を立てる。

 

「弘樹ぃっ!!」

 

「オイ、何する気だよ!?」

 

地市と了平がそう叫んだ次の瞬間!!

 

「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!」

 

何と!!

 

弘樹はM2重機関銃を両手で持ち上げ、そのまま機関部を脇越しで支える様にし、左手で銃身を掴み、右手でトリガー部分を握って構えた!!

 

「「なっ!?」」

 

「んなにいいいいいぃぃぃぃぃぃーーーーーーーっ!!」

 

「嘘だろっ!? 本体だけでも40キロ近く有るM2重機関銃を!?」

 

「も、持って構えたぁっ!?」

 

信じられない事を仕出かした弘樹に、地市や了平だけでなく、ジェイやカーネル歩兵部隊員達も思わず目が点になる。

 

「!!………」

 

そんなジェイやカーネル歩兵部隊員達目掛けて、弘樹は再びM2重機関銃のトリガーを引いた!!

 

またもや爆音と共に、曳光弾を交えた12.7mm弾が次々に吐き出される!!

 

「「「「「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!」」」」」

 

「………!!」

 

自分の身体を機銃架代わりに、M2重機関銃を薙ぎ払う様に連射する弘樹。

 

「…………」

 

発砲の熱で銃身が過熱し、その銃身を抑えている弘樹の左手からは白い煙が上がり始めているが、弘樹は表情1つ変えずに薙ぎ払い連射を続ける。

 

「何なんだ、アイツはぁっ!?」

 

「ター〇ネーターか!? それともラ〇ボーかよ!?」

 

アクション映画の主人公も真っ青な無茶苦茶をする弘樹の姿に、カーネル歩兵部隊からは畏怖を込めたそんな声が挙がる。

 

「…………」

 

そんなカーネル歩兵部隊の畏怖など露知らず、只管に12.7mm弾を撃ちまくる弘樹。

 

しかし、やがて弾が切れ、M2重機関銃が乾いた音を立てる。

 

「! 弾切れか………だが、もう十分か」

 

弘樹は只の鉄塊となったM2重機関銃を捨てる。

 

既にカーネル歩兵部隊は粗全滅と言っても差し支えない被害を出していた。

 

「舩坂 弘樹いいいいいいぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーっ!!」

 

とその瞬間!!

 

戦死判定を受けて倒れ伏せていたカーネル歩兵隊員達の中から、ジェイが叫びと共に起き上がり、弘樹に向かって右手に握った警棒型のトンファーを振るって来る!!

 

「!!」

 

驚きながらも、左手でそのトンファーを掴んで受け止める弘樹。

 

「!?………」

 

だが、火傷していた左手に痛みが走り、一瞬弘樹の動きが止った!

 

「死ねぇっ!!」

 

その瞬間に、ジェイは左手に握ったM1917リボルバーを弘樹へ向ける。

 

「!!」

 

弘樹危うし!!

 

………と思われた、その瞬間!!

 

発砲音がしたかと思うと、ジェイが握っていたM1917リボルバーが弾き飛ばされた!!

 

「ぐあっ!?」

 

「やったっ!」

 

「流石だな、飛彗!!」

 

白狼のバイクの後部に乗って居た飛彗が、モシン・ナガンを発砲し、ジェイのM1917リボルバーを弾き飛ばしたのである。

 

「! 隙有りぃっ!!」

 

今度は逆に弘樹がジェイの隙を突き、両手でジェイの右腕を掴んだかと思うと、1本背負いの要領で投げ飛ばし、背中から地面に叩き付けた!!

 

「ガハッ!?」

 

肺の中の空気が全部吐き出され、一瞬意識が飛びかけるジェイ。

 

「せりゃあああっ!!」

 

そんなジェイにトドメを刺す為、弘樹は脇越しに日本刀を抜き放ち、倒れていたジェイの胸目掛けて、突き下ろした!!

 

「グアアアアアァァァァァァーーーーーーーッ!?」

 

断末魔の様な叫びがジェイから挙がった瞬間………

 

戦死の判定が下される。

 

『! ジェ、ジェイ歩兵隊長がやられたっ!!』

 

『ちょっ!? ヤバくない!!』

 

『て、撤退! てった~いっ!!』

 

と、そのジェイがやられた姿を見ていたシャーマン2両が、コレ以上戦っていてもしょうがないと判断し、その場から離脱し始める。

 

「オ、オイ!? 待ってくれぇっ!!」

 

「置いてかないでくれぇっ!!」

 

僅かに生き残っていたカーネル歩兵達も、その後を追う様に慌てて撤退して行く。

 

「逃げてくぞ! 追撃するか、弘樹!」

 

「いや、放っておけ。今我々がすべき事は戦車部隊の元へ駆けつける事だ」

 

「分隊長~っ!!」

 

地市と弘樹がそう言い合っていると、とらさん分隊員の1人が操るくろがね四起がすぐ近くに停車する。

 

「乗って下さい!」

 

「助かる………急いで西住総隊長達の救援に向かうぞ!!」

 

「「「「「了解っ!!」」」」」

 

弘樹を中心とした大洗歩兵部隊は、生き残っていた楓達を初めとした偵察兵部隊を回収し、改めて戦車部隊の救援へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

その大洗戦車部隊はと言うと………

 

「撃てぇーっ!!」

 

「「「アターックッ!!」」」

 

典子の掛け声の後、妙子、忍、あけびの声が挙がり、八九式の主砲が後方から追って来るサンダース戦車部隊目掛けて放たれる。

 

だが、その次の瞬間!!

 

「「「「!? キャアアアアアァァァァァァーーーーーーーッ!?」」」」

 

反撃とばかりにファイアフライが放った砲弾が八九式を直撃!!

 

コントロールを失った八九式は、黒煙を上げながら隊から落伍し、岩に乗り上げる形で停まる。

 

「あっ!?」

 

みほが思わず声を挙げる中、八九式から撃破を示す白旗が上がる。

 

「アヒルチーム! 怪我人は!?」

 

『『『大丈夫です!!』』』

 

『すみません! 戦闘不能です!』

 

「ホッ………」

 

アヒルさんチームの声が返って来て、無事であった事に安堵の息を吐くみほ。

 

しかし、状況は刻々と悪化して行っていた。

 

「…………」

 

ガムを噛みながら、次の標的をウサギさんチームのM3リーに定めるナオミ。

 

「…………」

 

淡々とした様子でトリガーを引く。

 

爆音と共に放たれた砲弾が、今度はM3リーを直撃!!

 

M3リーはエンジン部から黒煙を挙げて徐々に減速。

 

そのまま砲撃戦で空いていた穴に落ち込む様にして停まり、白旗を上げた。

 

『すみません! 鼻が長いのにやられました!!』

 

「ファイアフライですね………」

 

「M3まで………」

 

梓の報告を聞きながら、優花里とみほがそう呟く。

 

これで大洗の戦車が3両となったのに対し、サンダース戦車隊はファイアフライを含めた5両が健在。

 

『大洗戦車部隊、大ピンチです!』

 

『歩兵部隊が間に合うのか如何か………そこが勝負の分かれ目となりますね』

 

状況は明らかに大洗の不利だった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

白狼の参戦に乗じ、戦況の巻き返しを計る大洗歩兵部隊。
白狼のバイクテクニックがボブを、弘樹の大和魂がジェイを倒す。
しかし、みほ達の大洗戦車隊はファイアフライの前に大ピンチ。
果たして、弘樹達の救援は間に合うのか?
次回、いよいよサンダース&カーネル機甲部隊戦、決着です。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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