ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第27話『1回戦、白熱してます!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第27話『1回戦、白熱してます!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦車道・歩兵道全国大会の1回戦・大洗機甲部隊VSサンダース&カーネル機甲部隊の試合………

 

序盤こそサンダース&カーネル機甲部隊の無線傍受と言うダーティーな戦法に苦しめられた大洗機甲部隊だったが………

 

みほ達の機転により、それを逆手に取る事に成功。

 

サンダース戦車部隊の戦車2両を撃破する、先制点を挙げた。

 

だが、フラッグ戦である公式戦では、フラッグ車を叩く事こそが最大の目的………

 

まだサンダース&カーネル機甲部隊には、17ポンド砲を搭載したファイヤフライを始め8両の戦車が有り、歩兵の数も未だに圧倒的である。

 

果たして、大洗機甲部隊の次なる手は何か?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃………

 

そんな白熱した試合が繰り広げられていた頃………

 

大洗機甲部隊の中から姿を消していた白狼は………

 

 

 

 

 

黒森峰男子校・車両格納庫………

 

『さて、先に戦車を2両撃破する事に成功した大洗機甲部隊。ココからの試合を如何運ぶと思われますか、田中さん』

 

『そうですね~。先手を取ったとは言え、サンダース戦車隊の戦車はまだ8両も残っていますし、ファイヤフライも健在。歩兵の数でもまだ圧倒的に負けてますからね。慎重かつ大胆な攻めが必要となって来るでしょう』

 

『成程~。ありがとうございます』

 

「友達は頑張ってるな」

 

「ああ………そうみたいだな………」

 

ラジオからヒートマン佐々木とDJ田中の試合の様子を伝えて来る実況が響いて来るが、白狼は感心無さげにバイクを整備していた。

 

「本当に行かなくて良いのか?」

 

「…………」

 

おやっさんが念を押す様にそう尋ねるが、白狼は只黙ってバイクの整備を続ける。

 

「やれやれ………お前さんも相当なへそ曲がりだな」

 

苦笑いしながら呆れた様におやっさんは言う。

 

「…………」

 

それでもなお、黙々と整備を続ける白狼。

 

 

 

 

 

以前、黒森峰を来訪し、女学園の生徒会長と出会って以来………

 

白狼は頻繁に黒森峰を訪れていた。

 

エリカ辺りにでも知られたら大変な事になりそうだったが、幸運にも彼女と出くわす事は無かった。

 

白狼が黒森峰を訪れている最大の理由は、やはり一重に強さへの渇望からである。

 

その為、特に揚羽達と良く会合していた。

 

ある日、学園までの道程へと進んで行た途中の河原で、稽古着を着ていた揚羽が1人で柔術と空手、そして拳法の型をしているのを目撃し、その様子をしっかり観察。

 

そして大洗の学園艦に帰還後、歩兵道の授業が始まる中、白狼は空いてる時間を使って、揚羽がしていた空手の構えをし、早朝から見ていた型をやってみた。

 

しかし、白狼自身はもう少し捻りが必要だと感じ、放課後に黒森峰まで向った。

 

揚羽は相手が敵である大洗の生徒ながらも、熱心にバイクだけでなく武道を励もうとする白狼の姿勢に、少々ながらも打ち解け、総合格闘術を学ばせる。

 

早速揚羽は指定として、生徒会役員の1人である空手やムエタイなどのキック系が得意な斑と稽古を促す。

 

結果は、全く感じの違う相手に押されて、白狼の負けであった。

 

だが、それでも白狼は斑に掠った程度に攻撃を1発だけ当てる事の成功する。

 

驚く斑だったが、白狼は更に精進した方が良いと自分に言い聞かせた。

 

そんな白狼に、揚羽は『とある物』を譲り渡す………

 

かつてドイツ軍が使用していた信号拳銃を改造して作られた小型擲弾発射器………『ワルサーカンプピストル』である。

 

成形炸薬弾を使えば装甲目標にも有効な武器であり、小型なので携帯性にも優れるが、その小型さ故に反動も大きく、使用の際には細心の注意が必要とされる。

 

白狼は素直にそれを受け取り、今も携帯している。

 

そして今日は知っての通り試合の日だったが………

 

白狼は試合に出る気になれず、またこうして黒森峰に来ていた。

 

負けるのは嫌いだが、バイクを戦いの道具にする気にはなれない………

 

そんな思いがグルグルと頭の中を渦巻き、何も結論を出せずに居た………

 

揚羽達とまた組み手でもして気を紛らわそうとしたが、生憎と彼女達は今日は仕事が忙しい為、相手になれないと言われ、仕方なくおやっさんの元へ来たのである。

 

 

 

 

 

『さて、先手を取られたサンダース&カーネル機甲部隊ですが、そこは流石に強豪校。オートバイ部隊が次の作戦の為に激しく動き回っています』

 

「フフフ、オートバイ部隊か………」

 

と、それを聞いたおやっさんが、懐かしそうな笑みを浮かべる。

 

「そう言や、おやっさんも昔は歩兵道の選手だったんだっけ?」

 

「ああ、オートバイ兵だった」

 

白狼がそう尋ねると、おやっさんはそう返す。

 

そしてそのまま当時の事を話し始める。

 

 

 

 

 

自分も若い頃は歩兵道の大会にて、よくバイクを乗り回していた。

 

そして、負けそうな母校を逆転勝利させたと。

 

その時の決め技だったのが、白狼が使う様な拳法とは違う、ジャンプキックだった。

 

バッタの様に突然現れ、飛び跳ねるその姿に、当時の試合を見ていた、ある撮影所の人物は、それをモチーフにしたヒーローを作ろうと考えた。

 

それからその人は、おやっさんにカッコイイバイクの運転の仕方などを見本として見せてもらい、大層感謝したという。

 

 

 

 

 

「…………」

 

おやっさんの話を黙って聞いている白狼。

 

「白狼。バイクはレースの為だけに存在しているのではない。車では行けない場所にも行け、小回りが利き、機動性がある。だから多くの仕事場で使用されている」

 

「それは………」

 

「道具に決まった使い方なんてものは無い。それを決めるのは………扱っている人間自身だ」

 

「…………」

 

おやっさんのその言葉を聞いて、白狼は考え込む。

 

「白狼くん………」

 

とそこで、揚羽を始めとした黒森峰生徒会メンバーが現れる。

 

「揚羽………」

 

「試合に出なさい」

 

白狼に向かっていきなりそう言い放つ揚羽。

 

「何?」

 

「実はウチにはベオウルフのファンが結構居てね………大洗に居るって聞いたら、皆試合に出て来るのを楽しみにしてるのよ」

 

やや戸惑う白狼に、揚羽はそう言う。

 

「ファンの期待には………答えるものじゃないかしら?」

 

揚羽は不敵に笑ってそう言い放つ。

 

「…………」

 

一瞬の間の後………

 

白狼は決意を固めた様な表情となって立ち上がった。

 

「おやっさん、悪い………コレで失礼させてもらうぜ」

 

「ああ、そうしろ………だが、今から行って間に合うのか?」

 

漸く覚悟を決めた様子の白狼に、おやっさんは安心しながらも、心配する様にそう言う。

 

「それについては、私に任せてちょうだい」

 

しかし、それについては問題無いと言う揚羽。

 

「それと整備長。『アレ』を彼にあげて」

 

「オイオイ、良いのか? 他校の生徒に?」

 

「構わないわ。生徒会長権限よ」

 

「やれやれ………」

 

更に、おやっさんとそんな会話を交わしたかと思うと、おやっさんが車両格納庫の片隅へ向かう。

 

そこには、シートに隠された『何か』があった。

 

「白狼………お前の戦場での相棒だ」

 

おやっさんはそう言い、シートを剥がす。

 

「!? コレは!!」

 

そのシートの中から現れた物を見て、白狼は驚愕を露わにするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃………

 

戦車道・歩兵道全国大会の1回戦の会場では………

 

「やりましたね! 西住殿!!」

 

「まさか、私達が先に相手の戦車を撃破出来るなんて」

 

「うん」

 

撃破したサンダースのシャーマンを見下ろせる丘の上に集結していた大洗機甲部隊の中で、Ⅳ号・砲塔内の優花里と華がそう言うと、キューポラから外の様子を見ていたみほが返事を返す。

 

「でも、この大会がフラッグ車を叩いた方が勝ちなんでしょう?」

 

「うん」

 

「ですが、敵の戦車を2両減らした意味は大いにあります。敵の戦力の低下は確実でありますし、何よりコチラが先制した事で、多かれ少なかれ敵は動揺している筈です」

 

とそこで、同じ様にハッチから外を見ていた沙織がそう言い、みほが返事を返すと、傍に居た弘樹がそう告げて来る。

 

「………次は如何する?」

 

同じく、ハッチから姿を見せていた麻子が、みほの事を見上げながらそう問う。

 

「次は………」

 

「やはりフラッグ車の捜索が急務だろうね。そしてその間、サンダース&カーネル機甲部隊の本隊を遠ざけておく必要がある」

 

みほが言おうとした次の作戦を、迫信が代弁する。

 

「ハイ、ですので、また偽情報を流して、サンダース&カーネル機甲部隊の本隊には、128高地へ向かってもらう積りです」

 

地図を広げながらそう言うみほ。

 

「128高地か………確かにそこなら、何かあってもすぐには駆けつけて来れないな」

 

同じ様に地図を広げながら、迫信がそう言う。

 

「…………」

 

すると弘樹が、何かを考える様な素振りを見せる。

 

「? 弘樹? 如何した?」

 

「な~んか、嫌な予感がするんだけど………」

 

それに気づいた地市が声を掛けると、了平が背中に冷たい汗が流れるのを感じながらそう言う。

 

「………西住総隊長殿、神大歩兵隊長殿。意見具申、宜しいでしょうか」

 

と、そこで弘樹は、みほと迫信に意見具申を申し出る。

 

「あ、ハイ」

 

「何だね?」

 

「ハッ! 如何に128高地が遠いとは言え、サンダース&カーネル機甲部隊は我々の姿が無い事を確認すればすぐにでも立ち去ってしまうでしょう」

 

「それは………」

 

「確かに………」

 

弘樹の指摘に、みほは考え込み、迫信が弘樹が何を言わんとしているかを察する。

 

「ですので、砲兵を中心に我々歩兵部隊も、偵察兵を除いて128高地へ向かわせて下さい」

 

そこで弘樹は、そう意見具申した。

 

「! ええっ!?」

 

「本当に部隊が集結していると見せかけて足止めをする………と言う事か」

 

驚くみほとまるで他人事の様に淡々とそう分析する迫信。

 

「そ、そんな!? 危険だよ!! 歩兵部隊だけで機甲部隊に立ち向かうなんて!!」

 

「ですが、フラッグ車の捜索に手間取れば、敵本隊と合流を計る可能性があります。そうなってしまえば、それこそ数で劣る我々に勝機は無くなってしまいます」

 

「彼の意見は最もだ。理に適っている」

 

指揮車から姿を見せていた煌人も、弘樹と同意見であると告げる。

 

「それは………そうだけど………でも!」

 

「西住総隊長!」

 

「!!」

 

何か言おうとしたみほの声を遮り、弘樹はみほに呼び掛ける。

 

「………我々は歩兵です。貴方達の乗る戦車を守り、部隊を勝利に導く事が我々の使命です。だから、総隊長は迷わず………指示を出して下さい」

 

そう言って、弘樹はみほに向かってヤマト式敬礼をする。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

と、それに続く様に、大洗歩兵部隊の面々が、みほに向かってヤマト式敬礼をする。

 

「皆さん………」

 

「西住総隊長………御命令を」

 

みほが言葉を失っていると、弘樹は更にそう呼び掛けた。

 

「………大洗機甲部隊・総隊長として命令します。とらさん分隊を中心に、歩兵部隊は偵察兵の皆さんを除いて128高地へ向かって下さい。偽情報によって誘き出されてきたサンダース&カーネル機甲部隊の足止めをお願いします。ただし………」

 

そう付け加えると、みほは一呼吸置いてこう言う。

 

「絶対に無理はしないで下さい。危ないと思ったらすぐに撤退して下さい。皆さんが怪我をしない事が第一です」

 

「「「「「「「「「「………了解っ!!」」」」」」」」」」

 

大洗歩兵部隊の面々は、そう勇ましく返事を返した。

 

「アイタタタタタッ!! じ、持病の神経性胃炎が………わ、悪いけど、俺はリタイヤで………」

 

そんな中、怖気づいた了平が1人見っとも無く仮病を使って難を逃れようとするが………

 

「警告する! 貴様は戦いから逃げようとしている! 逃亡者は銃殺される!!」

 

弘樹がそう言い、十四年式拳銃を了平の眉間に突きつけそう言い放つ。

 

「ヒイイイイッ!?」

 

「仲間が決死の覚悟で戦おうとしているのに………1人怖気づいて、恥かしいと思わんのか!!」

 

ビビる了平に向かって、弘樹はそう怒鳴る。

 

「わ、分かったよ………クソォッ! こうなりゃもう破れかぶれだ! 矢でも鉄砲でも持って着やがれ!!」

 

「むんっ!?」

 

「ぶべらぁっ!?」

 

了平がやけくそ気味にそう言い放った瞬間、弘樹の鉄拳が横っ面に叩き込まれる。

 

「な、何で?………」

 

「大和魂を注入してやったまでだ………行くぞっ!!」

 

「「「「「「「「「「おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

弘樹はそう言い放つと、128高地へと向かうのだった。

 

『さて、ココで大洗機甲部隊は戦車部隊と歩兵部隊に分かれました。歩兵部隊は128高地へ移動する様です』

 

『如何やら、戦車部隊がフラッグ車を探し、歩兵部隊がその間、サンダース&カーネル機甲部隊の本隊を足止めする積りみたいですね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

相変わらず無線傍受を行っていたアリサは………

 

「良い気になるなよ………」

 

苛立った様子で無線傍受機のダイヤルを回している。

 

如何やら、先程戦車を撃破されたのは偶然であり、無線傍受に気付かれたとは思っていない様である。

 

『全部隊、128高地に集合して下さい。現状において一番厄介なのはファイアフライです。危険ではありますが、128高地に陣取って、上からファイアフライを一気に叩きます』

 

とそこで、傍受機からみほの声が聞こえて来る。

 

無論コレは、サンダース&カーネル機甲部隊の本隊を誘い出す為の偽情報である。

 

「フ、フフフフ………アハハハハハハハハッ! 捨て身の作戦に出たわね!!」

 

しかし、そうとは知らないアリサは、高笑いを挙げて嫌な笑みを浮かべる。

 

「でも丘に上がったら、良い標的になるだけよ………128高地へ向かって下さい」

 

アリサはケイへそう通信を送る。

 

『如何言う事?』

 

「敵の全部隊が集まる模様です」

 

『ちょっと、アリサ。それ本当? 如何して分かっちゃうワケ?』

 

相変わらず具体的な情報の内容に、ケイは若干疑いを覚える。

 

「私の情報は確実です」

 

『!………OK! 全車! ゴーアッヘェェェェーーーーーッドッ!!』

 

しかし、そう言われてすぐに128高地へ向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その128高地では………

 

「良し! 出来たっ!!」

 

そう声を挙げた勇武と数名の工兵達の目の前には、7.5cm PaK 97/38をベースにハリボテを組んで、更にその上から葉っぱを生い茂らせたカモフラージュネットを被せた、偽装戦車が在った。

 

「良し、良い出来だ。遠目に見れば間違いなく戦車に見える」

 

弘樹がその偽装戦車を見てそう言う。

 

その他にも、高地の彼方此方に、十河や灰史を中心とした工兵部隊が作り上げた偽装戦車が在る。

 

皆、其々に大洗戦車部隊の戦車の形に見える様になっている。

 

「こんなんで誤魔化せんのかよ?」

 

「ま、そこは五分五分だな………後は運を天に任せるだけだ」

 

ハリボテの戦車もどきで本当に誤魔化せるのかと不安になる地市だが、俊が後は運を天に任せるだけだと言う。

 

「! 来たぞっ!! 12時の方向っ!!」

 

と、着弾観測用の双眼鏡を覗いていた明夫がそう声を挙げた。

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

その報告を受けて、128高地に陣取っていた大洗歩兵部隊の面々は、一斉に12時の方向を見やる。

 

12時方向の遠方には、土煙を上げて高地に向かって来る、サンダース&カーネル機甲部隊本隊の姿が在った。

 

「総員戦闘準備!!」

 

弘樹がそう言うが否や、砲兵部隊は偽装戦車にしたり、塹壕や茂みに隠す様に配置した砲に着き、歩兵部隊は塹壕へと転がり込み、重機関銃や対戦車ライフル、試製五式四十五粍簡易無反動砲やライフルを構える。

 

「見つけたわ!」

 

「流石アリサだ! 情報通りに大洗機甲部隊が集結してるぜ!!」

 

「一気に叩く」

 

その光景を見た、ケイ、ボブ、ナオミからそう声が挙がる。

 

「…………」

 

しかし、ジョーイだけは何か気に入らない様な表情を見せている。

 

「来るでぇっ!」

 

「良いか! 我々の目的は西住総隊長達がフラッグ車を発見し、撃破するまでの間、サンダース&カーネル機甲部隊本隊の足止めをする事だ! 1秒でも長く奴等を此処に引き付けろ!! 各員の奮戦に期待するっ!!」

 

「「「「「「「「「「了解っ!!」」」」」」」」」」

 

大河がそう声を挙げると、大洗歩兵部隊の面々は、勇ましい返事を返す。

 

とそこで、サンダース&カーネル機甲部隊本隊の中に居たファイアフライが発砲!

 

凄まじい砲撃音が響いた後、風切り音が響いて、砲弾が大洗歩兵部隊が居る陣地の中に着弾した!!

 

「うわぁっ!!」

 

「慌てるな! 只の牽制だっ!!」

 

舞い上がった土片が降って来て、竜真が思わず声を挙げるが、弘樹がそう言って落ち着かせる。

 

直後に、他のシャーマン達も次々と砲撃を開始。

 

そのままジリジリとカーネル歩兵部隊と足並みを揃えながら、大洗歩兵部隊の方へと進軍して来る。

 

「全軍! 攻撃開始ぃっ!!」

 

「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

その瞬間に弘樹の号令が下り、大洗歩兵部隊は一斉に反撃を開始したのだった。

 

『お~と! サンダース&カーネル機甲部隊! まんまと大洗機甲部隊の作戦に引っ掛かってしまいました!!』

 

『ココで歩兵部隊が粘れるかが、大洗機甲部隊に取って重要な場面となって来ますよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

フラッグ車を捜索している、みほ達の大洗戦車部隊は………

 

「恐らくフラッグ車は、此処か此処、それか………この辺りの筈」

 

此方側のフラッグ車の38tを守りながら進軍している中、試合会場の地図を見ながら、サンダースのフラッグ車が潜んでいると思われる場所に目星をつけて行くみほ。

 

「まだ視認できません」

 

「大空くん達も、まだ発見出来ないって」

 

そこで、砲塔側面のハッチを開けて、双眼鏡で周囲を見ていた優花里がそう言い、フラッグ車の捜索に出ていた偵察兵部隊の楓達からメールを受け取った沙織もそう報告する。

 

「後1両あれば、囮に出せるんだけど………」

 

少々歯痒い思いを感じながらも、冷静に務めるみほ。

 

(舩坂くん達が頑張ってくれてる間に………何とかフラッグ車を撃破しないと………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び、大洗歩兵達が陣取る128高地では………

 

「俺は攻撃を行う!」

 

「前方に敵! 敵は攻めて来る!」

 

「良し! 手榴弾、投入ーっ!!」

 

「爆発するぞぉーっ!!」

 

「しっかり踏ん張って守るのだぁーっ!!」

 

「弾が切れた! 装填中! 援護せよっ!!」

 

「くたばれ米兵めぇっ!!」

 

「敵の潜水艦を………」

 

「「「「「「「「「「駄目だぁっ!!」」」」」」」」」」

 

シャーマンと砲兵部隊の砲撃を援護に、ジリジリと迫って来るサンダース&カーネル歩兵部隊相手に、大洗歩兵部隊は1歩も引かずに奮戦。

 

敵の意識を完全に引き付けている。

 

「うわああああぁぁぁぁぁーーーーーーっ!?」

 

「クソッ! 鷺澪がやられた!!」

 

「弾切れだ! 予備弾倉を!!」

 

「手榴弾! コレで最後です!!」

 

しかし、只でさえ人数の上で負けているのに加え、戦車が居ない為、火力面で圧倒されており、じわじわと被害が増え始めている。

 

「駄目だ、弘樹! とても持ち堪えられねえぞっ!!」

 

撃ち終えた試製四式七糎噴進砲に、新たなロケット弾を装填しながら、地市が弘樹にそう言う。

 

「まだだ! もっと敵を引き付けるんだ!!」

 

だが、弘樹はそう言い放ち、九九式短小銃を3連射し、バイクに乗って居たカーネル歩兵の頭を次々に撃ち抜いた。

 

「チッ! しぶとい連中だっ!!」

 

「やるじゃない! コレだけ不利な状況でココまで持ち堪えるなんてね!!」

 

そんな大洗歩兵部隊の奮戦の様子に、ボブは苛立ち、ケイはその健闘を称える。

 

「けど、そろそろ終わりにしましょう。ナオミ! 右の丘の上に居る戦車を狙って! 多分、アレがフラッグ車よ!!」

 

「イエス、ボス」

 

しかしそこで、勝負を着けようとファイアフライのナオミに通信を送ると、そう命じる。

 

ファイアフライは停止すると、砲塔を旋回させ、17ポンド砲を大洗歩兵隊の防衛陣地の奥に居る38t(に見せかけた偽装戦車)に向ける。

 

「! フラッグ車が狙われている! ファイアフライを止めろぉっ!!」

 

そこで弘樹がそう叫び、大洗歩兵部隊の攻撃がファイアフライへと集中する。

 

「…………」

 

しかしナオミは、至近距離での多数の着弾の振動に揺らされながらも、ガムを噛みながらジッと照準器を覗き込み、38t(に見せかけた偽装戦車)に狙いを定める。

 

「………!!」

 

そしてそのレティクルが38t(に見せかけた偽装戦車)に重なった瞬間!!

 

ナオミは即座にトリガーを引いた!!

 

轟音と共に放たれた17ポンド砲の砲弾が、まるで吸い込まれる様に38t(に見せかけた偽装戦車)に命中っ!!

 

「「「「「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」」」」」

 

38t(に見せかけた偽装戦車)は粉々になり、辺りにハリボテと3.7cm PaK 36の残骸が散らばり、砲に着いて居た砲兵達が軒並みに倒れ、戦死判定を受けた。

 

「!? ホワッツッ!?」

 

「何っ!?」

 

「!?」

 

その光景に、ケイ、ボブ、ナオミは驚きを露わにする。

 

「! しまったっ!!」

 

「成程………そう言う事か………アリヨシ! あのⅢ突らしき戦車を狙えっ!!」

 

「イエッサーッ!!」

 

弘樹の声が挙がった瞬間、合点が行った様な表情を見せたジョーイが、傍に居た対戦車兵にそう命じ、対戦車兵は持っていたバズーカで、茂みの中に隠れているⅢ突(に見せかけた偽装戦車)にロケット弾を撃ち込んだ!!

 

「「「「「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」」」」」

 

先程の38t(に見せかけた偽装戦車)と同じ様に、辺りにハリボテと7.5cm Pak 41の残骸が転がり、それに着いて居た砲兵達が折り重なる様に倒れ、戦死と判定される。

 

「やはりな………ケイ総隊長。コレは陽動作戦だ。此処に大洗の戦車は居ない」

 

「ちょっとアリサ! 如何なってるのよ!!」

 

ジョーイがケイにそう報告すると、ケイは即座にアリサへと通信を送るのだった。

 

『あ~っと! 此処で大洗機甲部隊の作戦が露呈してしまいました!』

 

『コレはマズイですよ』

 

実況席のヒートマン佐々木とDJ田中も、観客席にそう実況を流す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サンダース&カーネル機甲部隊のフラッグ車である、アリサが乗るシャーマンM4A1型が隠れている竹林の中………

 

「そ、そんな馬鹿な!?」

 

「オイ、アリサ! ひょっとして連中、無線傍受に気付いていたんじゃないのか!?」

 

ハッチから上半身を出していたアリサが、ケイからの通信に驚きの声を挙げると、護衛をしていたジェイがそう指摘する。

 

「じ、じゃあ、大洗の戦車部隊は今何処に?………」

 

と、アリサがそう呟いた瞬間………

 

近くに在った竹垣を踏み潰す様にして、アヒルさんチームの八九式が姿を現した!

 

「あ………」

 

「「「「「えっ?………」」」」

 

「うん?………」

 

思わぬ遭遇に、アリサとジェイ達。

 

そして、八九式の車外に出て箱乗りしていた典子は固まる。

 

「「「「「「「…………」」」」」」」

 

奇妙な遭遇により、お互いに思考がストップしてしまい、そのまま暫しの間、途気が止ったかの様に静止する典子達とアリサ達。

 

「…………」

 

やがて典子が、八九式の砲塔上部を叩いて、車内に居る操縦手の忍に合図を送る。

 

「右に転換! 急げぇーっ!!」

 

そしてそう叫んだ瞬間、八九式はすぐさま転換し、M4A1の前から離脱を計る!

 

「蹂躙してやりなさーいっ!!」

 

「! な、何やってる! 撃て! 撃てっ!!」

 

「「「「!?」」」」

 

そこでアリサがそう叫び、その声で我に返ったジェイも、護衛部隊の面々にそう指示を飛ばす。

 

だが、判断が遅かった為、護衛部隊が発砲するよりも早く、八九式は離脱を開始した。

 

しかし、アリサ乗るM4A1は、砲塔を旋回させ続ける。

 

「本隊に連絡しますか!?」

 

「するまでも無いわ! 撃てぇっ! 撃てえぇっ!!」

 

本隊に連絡するかと尋ねる乗員に、アリサはヒステリーの様に叫び、発砲命令を出す。

 

轟音と共にM4A1から砲弾が放たれる。

 

「「「「うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」」」」

 

とその瞬間に、周囲に居た護衛部隊のカーネル歩兵達が、爆風で吹き飛ばされた!

 

「馬鹿野郎! 俺達を殺す気かぁっ!!」

 

皆と同じ様に砲発射の爆風で吹き飛ばされたジェイが、アリサに罵声を飛ばす。

 

「きゅうううぅぅぅぅ~~~~~………」

 

しかし、当のアリサも、ハッチから姿を見せたまま発砲した為に、衝撃波を諸に浴びて軽く伸びていた………

 

一方、奇跡的にもM4A1と護衛部隊の前から逃げ果せたアヒルさんチームは………

 

「敵フラッグ車! 0765地点で発見しました! 護衛に小規模の歩兵部隊あり! 此方は発見され、現在撤退中!!」

 

典子が箱乗りをしたまま、みほへそう通信で報告を送る。

 

『おっと! 如何やら大洗戦車部隊がサンダース戦車部隊のフラッグ車を発見した様です!』

 

『こうなると時間との勝負ですね。サンダース&カーネル機甲部隊の本隊が駆けつけてくるのが早いか、大洗戦車部隊がフラッグ車を撃破するのが早いか………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗戦車部隊………

 

「! 0765地点ですね! 逃げ回って敵を引き付けて下さい! 0615地点へ、全車両前進!!」

 

典子からの報告を受けたみほは、サンダースのフラッグ車を0615地点へ誘い出し、全車両で集中砲火を浴びせる作戦に出る。

 

「武部さん! 無線封鎖を解除! 全部隊に連絡を!!」

 

「分かった!」

 

ココまでくれば無線封鎖は無用であると思い、通信回線を再び開くと、沙織が全部隊にみほの指示を送る。

 

『コチラ大空! 我々偵察部隊も急行します! 戦車の相手は出来ませんが、護衛の歩兵部隊を食い止める事は出来ます!』

 

するとその瞬間に、フラッグ車を捜索していた楓達の偵察兵部隊からも、合流するとの無線が入って来た。

 

「お願いします! 舩坂くん達が敵の本隊を食い止めてくれている内に決着を着けます!!」

 

みほはそう返すと、戦車部隊を0615地点へ向かわせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遂に敵のフラッグ車を発見した大洗戦車部隊。

 

しかし、既に大洗歩兵部隊の足止め作戦は露見しており、時間との勝負となっていた。

 

果たして、サンダース&カーネル機甲部隊の本隊が来る前に、フラッグ車を撃破出来るのか?

 

そして、漸く試合会場へと向かった白狼は?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

白熱する1回戦。
みほ達がフラッグ車を発見・撃破する時間を稼ぐ為に、サンダース&カーネル機甲部隊の本隊との対決に臨む弘樹達。
そして、1人迷いを抱え黒森峰に居た白狼が、遂に決意を固めます。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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