ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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チャプター5『トドメの1発です!』

『OVA ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース ボーネシュラハト』

 

チャプター5『トドメの1発です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

盛り上がりを見せていた『磯前神社奉納戦車・歩兵戦』も………

 

いよいよ終幕を迎える時が近づいていた………

 

その戦況は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗町………

 

「行け行けぇーっ! 攻めろーっ!!」

 

アウンさんの勇ましい掛け声と共に、竪琴戦車チームの九五式軽戦車達が、次々に突撃を掛ける。

 

「慌てるんじゃないザマス! 落ち着いて迎え撃つザマス!!」

 

それに対し、アスパラガスのBC自由機甲部隊は、バトリング選手達と共に方陣を組んで、突っ込んで来る竪琴戦車チームを迎え撃っている。

 

「キャアッ!」

 

「怯むなーっ! 突撃を続行っ!!」

 

1輌の九五式軽戦車が撃破されて横転するが、アウンさんは突撃を止めさせない。

 

(何故こんな無謀な突撃を? 何を考えているザマス?)

 

だが、一見無謀な突撃を繰り返しているだけに見える竪琴戦車チームの動きに、アスパラガスは何かの企みを感じ取る。

 

「わああああぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

 

と、その間にも、新たな九五式軽戦車が突撃して来る。

 

「また来たぞっ!」

 

「狙えっ!!」

 

それに対し、ルノーAMR35とBC自由のバトリング選手達が照準を合わせる。

 

すると………

 

「オラァッ! 行くぜぇっ!!」

 

突撃して来た九五式軽戦車の後ろに乗っかって隠れていたキデーラがバッと姿を現した!

 

「!? ええっ!?」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

思わぬ事態に、ルノーAMR35とBC自由のバトリング選手達は一瞬呆気に取られてしまう。

 

「そらぁっ!!」

 

そのルノーAMR35とBC自由のバトリング選手達に向かって、キデーラは何と片手で3つも保持していた収束手榴弾を投げつける!

 

「「「「「「「「「「!? うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」」」」」」」」」」

 

真面に爆風と破片を浴びたBC自由のバトリング選手達は戦死判定となり、装甲の薄いルノーAMR35も白旗を上げる。

 

「!? 何っ!?」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

陣形の一角が撃破された事で、BC自由機甲部隊の注目がそちらに集まる。

 

「今だっ!!」

 

するとそこで、周囲に在った1軒の建物の2階の窓が開け放たれ、姿を見せたポタリアがそう叫ぶと………

 

更に周辺のあらゆる建物の窓、玄関、勝手口、車庫の中からクメン歩兵達が現れ、一斉に得物を向けた!

 

「!? クメン校っ!?」

 

「メルドッ! 建物内を通って包囲網を形成したザマスね! 流石はゲリラ戦のプロザマスッ!!」

 

ボルドーが声を挙げると、アスパラガスが舌打ちしながらそう叫ぶ。

 

「撃てぇーっ!!」

 

その瞬間には、ポタリアの号令で、クメン歩兵部隊の一斉射撃が開始された!!

 

「ぎゃあっ!?」

 

「ぐああっ!?」

 

銃弾を浴びたBC自由のバトリング選手達が次々に倒れて行く。

 

「それっ!!」

 

「「きゃああっ!?」」

 

更に、バズーカを装備した対戦車兵の攻撃で、ルノーR35が1輌撃破される。

 

「この機を逃すなぁっ! 一斉突撃ぃっ!!」

 

そして好機と見たアウンさんがそう叫び、残る竪琴戦車チームで一斉に突撃した。

 

「! 舐めるなザマスッ!!」

 

だがそこで、アスパラガスのM22 ローカストがアウンさんの九五式軽戦車に主砲を向け、発砲する!!

 

「!?」

 

「アウンさん隊長っ!!」

 

硬直してしまうアウンさんだったが、間一髪で別の九五式軽戦車が割って入り、アウンさん車への被弾を身を呈して阻止する。

 

「このアスパラガス! 腐ってもBC自由機甲部隊の総隊長! これぐらいの計略で遅れは取らないザマスッ!!」

 

「ヒュー、カッコイイねぇ」

 

アスパラガスがそう吠えると、ボルドーが茶化す様に呟く。

 

「! 守ったら負ける! 攻めろーっ!!」

 

「「「「「「「「「「おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

その気迫に一瞬気押されたアウンさんだったが、すぐに気を取り直し、今の勢いに乗るべくそう檄を飛ばし、竪琴戦車チームは突撃を敢行する!

 

「来いザマスッ!!」

 

それをアスパラガスが迎え撃とうとした瞬間………

 

すぐ近くで爆発音が鳴り響いた!!

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

思わず、BC自由機甲部隊メンバーと竪琴クメン機甲部隊メンバーが、その爆発音が聞こえて来た方向を見やると………

 

1軒の民家を突き破る様にして、ムカデさんチームのテケが飛び出して来る!

 

「! 鶴姫 しずかっ!!」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

以前交戦経験のあるしずかの姿を確認すると、アスパラガスとBC自由機甲部隊メンバーが身構える。

 

「クウッ!!」

 

しかし、当のしずかの方はアスパラガス達の事など全く気にも留めず、テケを反転させて、突き破って来た家の方を警戒する。

 

その直後!!

 

発砲音が鳴り響いたかと思うと、テケが空けた住宅の穴の中から20ミリ弾が飛んで来る!

 

「!!」

 

「ひゃうんっ!?」

 

即座にしずかが鈴の背を蹴ると、テケが空かさずバック!

 

「!? うわあっ!?」

 

20ミリ弾は竪琴戦車チームの九五式軽戦車の内の1輌に命中。

 

白旗を上げさせる。

 

そのすぐ後に………

 

「………!」

 

路地の合間を縫う様にローラーダッシュで移動して来た弘樹が姿を現す。

 

「! 弘樹っ!?」

 

「オイオイ、こんな時にかよっ!?」

 

ポタリアが弘樹の姿を見て驚き、キデーラが愚痴る様に叫ぶ。

 

「!!」

 

とそこで、しずかが弘樹に向かって榴弾を発砲!

 

「!………」

 

だが弘樹は、ターンピックを使ってスピンする様な動きで躱す。

 

「「「「「「「「「「!? うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」」」」」」」」」」

 

テケが放った榴弾は流れ弾となり、クメン歩兵達を数名纏めて吹き飛ばした!!

 

「!!………」

 

すると今度は弘樹が、MG42を構え、テケに向かって発砲する!

 

「!!」

 

「あひゃんっ!?」

 

すぐさま鈴の背を蹴り、テケに回避行動を執らせるしずか。

 

装甲の薄いテケでは、機関銃弾と言えど、至近距離から浴びれば何らかの損傷を受ける可能性も有る。

 

弘樹が発砲したMG42の弾丸は、先程までテケが居た空間を通り過ぎ、BC自由バトリング部隊の面々に命中!!

 

「「「「「「「「「「ぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!?」」」」」」」」」」

 

またも巻き込まれる形で、多数のBC自由バトリング部隊員達が戦死判定を受ける。

 

「覚悟っ!!」

 

反撃にと、再び弘樹に榴弾を見舞うしずか。

 

「!!」

 

だが、弘樹はその場に伏せて榴弾を回避。

 

「!? キャアアッ!?」

 

外れた榴弾がルノーAMR35に命中。

 

当たり所が悪かったらしく、ルノーAMR35は白旗を上げる。

 

「! 鈴! 引けっ!!」

 

「言われなくてもスタコラサッサだよっ!!」

 

と、コレ以上は不利と思ったしずかは撤退を指示し、鈴は必死な様子でテケを離脱させる。

 

「………!!」

 

すぐさま弘樹は、逃げるテケをローラーダッシュで追跡する。

 

如何やら、お互いに相手しか見えていなかったらしく、BC自由機甲部隊と竪琴クメン機甲部隊を巻き込んだ事にさえ気づいていない様だ。

 

「何だったんだ、一体?………」

 

「まるで嵐ザマス………」

 

一方、2人の戦いの巻き添えで、多大な損害を被ったBC自由機甲部隊と竪琴クメン機甲部隊のメンバーは茫然と立ちつくしていたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

逃げるムカデさんチームのテケを追う弘樹………

 

やがて両者は市街地を抜け、大洗ホテルの在る交差点………

 

大洗磯前神社の大鳥居へと差し掛かる。

 

「………!!」

 

そこで弘樹が、またもMG42を発砲する。

 

「!!」

 

「ひゃうんっ!?」

 

するとテケは、その弾丸を避ける様に、大洗磯前神社へと続く坂道を上って行った。

 

「!………」

 

すぐにそれを追う弘樹は、MG42が弾切れしたのを見て、迷い無く投げ捨てると、ラハティ L-39を構えるのだった。

 

そして、先に坂を上り終えたムカデさんチームは………

 

「姫っ! ココから如何するのかっ!?」

 

テケを神社の境内に止めると、鈴がしずかにそう問い質す。

 

「…………」

 

しずかはグルリと境内を見渡す。

 

「………!」

 

そして、大洗磯前神社の最大の特徴である海岸に立つ鳥居………『神磯の鳥居』の在る海岸へと続いている正面鳥居の階段に目を留める。

 

「フフフ………」

 

階段を見ながらニヤリと笑うしずか。

 

「………あの姫………すっごく嫌な予感がするんだけど………」

 

そんなしずかの笑みに、嫌な予感を感じる鈴。

 

「鈴………海へ向かえっ!!」

 

しずかがそう言った直後に、弘樹が到着。

 

「!………!?」

 

すぐさまラハティ L-39を構えたが、それよりも早く、ムカデさんチームのテケが………

 

何と!!

 

正面階段の真ん中に在った手摺へと突っ込み、それをジャンプ台代わりに、空中に躍り出たのだった!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗アウトレット・特設観戦ステージ………

 

「「「「「「「「「「おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

ムカデさんチームの無謀な行動に、観客達は悲鳴にも似た歓声を挙げる。

 

「な、何て無茶をっ!?」

 

「滅茶苦茶危ないよぉっ!!」

 

優花里と沙織も悲鳴を挙げている。

 

「オイ………」

 

とそこで、地市が何かに気付いた様に声を挙げる。

 

「? 如何したの? 地市くん?」

 

「………続くみたいだぞ」

 

「「「「「「「「「「えっ?…………」」」」」」」」」」

 

沙織が問うと、地市がそう返したのを聞いて、大洗メンバーが再びモニターを見やるとそこには………

 

『…………』

 

テケが破壊した手摺の始まり部分を飛び越えると、手摺の上に着地し、そのままスケボーのストリートレール宜しく、ブーツから火花を散らせて下り始める弘樹の姿が在った!!

 

「舩坂くんも何やってるのぉーっ!?」

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

沙織が思わずそう叫び、大洗メンバーも唖然となる。

 

「あわわっ!? 弘樹くんっ!?」

 

みほに至っては気が気でない。

 

だが、そんな一同の事など露知らず、弘樹は階段の中腹まで差し掛かったかと思うと………

 

『………!!』

 

そこで一気に跳躍して、ムカデさんチームのテケへと追い付いた!!

 

「「「「「「「「「「!?!?」」」」」」」」」」

 

最早大洗の一同は声も出なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗磯前神社・正面鳥居方面の空中………

 

「!?」

 

自分達を追う様に跳躍して来た弘樹に気づき、驚きを露わにするしずか。

 

「…………」

 

そんなしずかのテケに向かって、弘樹はラハティ L-39を空中で構える!

 

「!! 舐めるなぁっ!!」

 

だが、しずかがそう吠えたかと思うと、テケの砲塔が信じられないくらいの速さで弘樹の方に向けられる。

 

「!!………」

 

咄嗟に弘樹は、空中で身を捻りながらもラハティ L-39を発砲!

 

同時に、テケの主砲も火を噴いた!

 

弘樹が放ったラハティ L-39の弾丸は、テケの左履帯を破断!

 

テケの放った砲弾は、弘樹の右足のローラーダッシュアンクルを掠める様に命中!

 

「!!」

 

「ぬうっ!!」

 

両者はバランスを崩し、砂浜に叩き付けられる様に落下した!!

 

「ぐうっ………鈴、無事か?」

 

「信じられないけど、生きてるよ………白旗も上がってないし………けど、テケは動けないよ」

 

頭を押さえながらしずかが問うと、鈴がそう返す。

 

その言葉通り、テケは履帯が破断している事もあり、動けない様子だが、まだ辛うじて白旗は上がっていない………

 

「…………」

 

一方の弘樹も、砂浜に落下した際に受け身を取ったのか無事な様子であるが、右足のローラーダッシュアンクルが壊れてデッドウェイトになった上、負傷判定も喰らったのか右足が全く動かない。

 

それでもすぐにラハティ L-39をテケに向けたが………

 

「………!?」

 

そこで弘樹は、先程撃った弾丸の薬莢が完全に排莢されておらず、薬室内に引っ掛かって残っているのを目にする。

 

弾詰まり(ジャム)だ!

 

「! もらったぞっ! 舩坂 弘樹っ!!」

 

しずかはすぐさまその様子に気づき、テケの主砲を向けた!

 

「!!………」

 

弘樹には何も出来ない!

 

「舩坂 弘樹っ! 討ち取ったぁっ!!」

 

しずかが吠えた瞬間………

 

発砲音が、『2つ』鳴り響いた………

 

その直後に場が一瞬にして静まり………

 

海風と波の音だけが支配する様になる………

 

テケが撃った砲弾は、僅かに外れ、砂浜に突き刺さっている。

 

一方………

 

「………抜かったわ」

 

そう呟くしずかのテケからは、白旗が上がって居る。

 

良く見れば、エンジン部には弾痕も確認出来る。

 

「嘘………まさか『拳銃』で………」

 

操縦席から出て来た鈴が、弘樹を見ながら唖然とした様子でそう呟く。

 

その弘樹の手には、『拳銃』が………

 

いや、拳銃と呼ぶには余りにも大きな銃………

 

差し詰め『ハンドキャノン』とも呼ぶべき巨大な銃が握られていた。

 

銃身を切り詰めた散弾銃のような外観であり、その口径はラハティ L-39と同じく20ミリは有ろうかと言う大口径だ。

 

「………感謝します、整備長」

 

弘樹は、そのハンドキャノンを『こんなこともあろうかと』用意していた敏郎に感謝する。

 

これぞ『バハウザーM571アーマーマグナム』

 

バトリング選手達の間で重宝されている、『対戦車拳銃』である。

 

全長450ミリ、重量7キロ弱ととてつもなく大きく、銃身が極端に短いために有効射程距離・命中精度も低く、発砲時の反動も大きいので、お世辞にも良い銃とは言えない。

 

しかし、他の対戦車兵器と比べて格段に持ち歩き易く、豆・軽戦車が中心である強襲戦車競技(タンカスロン)・バトリングでは良く使われている。

 

『え~、磯前神社奉納戦車・歩兵戦に参加されている皆様にお知らせ致します』

 

するとそこで、町内放送用のスピーカーからアナウンスが流れ始めた。

 

『只今、ムカデさんチームのテケ車が撃破された事で、残存戦車チームは大洗のアヒルさんチームだけとなりました。よって、大洗チームの優勝が決定致しましたっ!!』

 

『『『『『『『『『『おおおぉぉぉぉ~~~~~っ!!』』』』』』』』』』

 

そう言うアナウンスが流れると、観客席が在るアウトレットの方から歓声が聞こえて来る。

 

如何やら、弘樹とムカデさんチームが激戦を繰り広げている間に、他のチームは殆ど脱落してしまっていた様だ。

 

「…………」

 

それを聞いた弘樹は、アーマーマグナムをホルスターに納める。

 

「舩坂 弘樹っ!!」

 

「!………」

 

そこでしずかが弘樹へ声を掛ける。

 

「此度の戦は我等の負けぞ………やはり貴殿は戦の神であった様だ」

 

素直に弘樹を称賛するしずか。

 

「だが! 次こそはその首を貰い受けるっ!!」

 

だが、次の瞬間には『頑張る女の子の美しい笑顔』を浮かべて、弘樹にそう宣言した。

 

「………好きにしろ」

 

そんなしずかに、弘樹は半ば呆れた様子でそう言い放つと、ムカデさんチームのテケ車に背を向け、右足を引きずりながら立ち去り始めたのだった。

 

「…………」

 

(またやる積りなの~、姫~)

 

しずかは『頑張る女の子の美しい笑顔』を浮かべたまま見送り、鈴は何れ来る弘樹との再戦に、今から涙を流す………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、様々な人物の思惑が入り乱れた『磯前神社奉納戦車・歩兵戦』は………

 

見事大洗チームの勝利で幕を閉じたのであった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

OVA・ボーネシュラハト………完

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本某所………

 

西洋風の立派なお屋敷………

 

その家の一室に、テーブルを挟んで向かい合って座っている1組の男女の姿が在った。

 

男は外人らしく金髪であり、軍服らしき服を着ている。

 

女の方はかなりの美人であり、名灰白色のロングヘアで貴婦人の様な穏やかな風格を漂わせている。

 

「………西住流は首の皮一枚で繋がった様ですな」

 

軍服の男はそう言い、テーブルの上に置いてあった戦車道・歩兵道の新聞を見やる。

 

「その様ですわね………」

 

貴婦人は落ち着いた雰囲気でそう相槌を打つ。

 

「意外に冷静ですな………てっきり完全な没落をお望みだと思っていましたが………」

 

「ええ、勿論ですわ………だからこそ、最後は我が『島田流』が西住流を破り、トドメを刺してやるのですよ」

 

だが、軍服の男がそう言った瞬間、貴婦人は穏やか雰囲気を保ったまま、目に殺気を露わにそう言い放った。

 

「成程………トドメは『島田流』の手でと言う事ですか」

 

軍服の男は納得したかの様に笑う。

 

 

 

 

 

 

『島田流』………

 

西住流と並んで、日本の戦車道の代表流派と言われる流派である。

 

圧倒的火力と一糸乱れぬ統制で敵を殲滅する西住流に対し、臨機応変に対応した変幻自在の戦術を駆使する戦法を得意とする。

 

その為、『ニンジャ戦法』と言う異名を持つ。

 

長きに渡り、西住流とは因縁の戦いを繰り広げているのだ。

 

また、島田流は『歩兵道』の流派でもある。

 

 

 

 

 

 

「島田流こそが最強………私はそれを何としても証明する必要が有るのです」

 

そして、この貴婦人こそが、島田流の現師範・家元である『島田 千代』その人である。

 

「ええ、良く存じております」

 

軍服の男は、『ジャン・ポール・ロッチナ』

 

アメリカ陸軍の情報将校である。

 

とそこで、2人の居る部屋の扉がノックされた。

 

「お母様、『愛里寿』です。只今戻りました。『お兄様』も一緒です」

 

扉の向こうから、幼い少女と思わしき声が発せられる。

 

「あら、お帰り、『愛里寿』、『伊四郎(いしろう)』。入っても良いわよ」

 

「失礼します」

 

「失礼致します、『母上』」

 

千代がそう言うと、ドアが開いて、まだ小学生か中学に上がったばかりと思われる千代と同じ名灰白色の髪をサイドテールに纏めている少女………千代の娘で、島田流戦車道の継承者『島田 愛里寿』………

 

そして、高校生くらいと思われる白髪の男………千代の息子で、愛里寿の実の兄である『島田 伊四郎(いしろう)』、通称『イプシロン』が入室して来る。

 

「試合は………勿論、勝ったわよね?」

 

「ハイ、勿論です」

 

「当然です。最強の島田流戦車道と『父上』のお力を借りている愛里寿が指揮を取り、その愛里寿を島田流歩兵道を使う『パーフェクトソルジャー』たる私が護っているのです。島田流に隙は有りません」

 

千代がそう尋ねると、愛里寿とイプシロンは当然だとそう返す。

 

「そう、その通りよ。島田流こそが最強よ。貴方達がそれを証明するのよ」

 

千代はそう言って立ち上がると、愛里寿の前で屈み込み、視線を合わせて愛里寿を見つめる。

 

「良いわね、愛里寿。イプシロンも。全ては………『あの人』の為よ」

 

「分かっています………全ては『お父様』の為に………」

 

「全ては『父上』の………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「『ワイズマン』の為に………」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

千代、愛里寿、イプシロンがそう言い合っているのを見て、ロッチナは不敵な笑みを浮かべるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

予告(GloryStoryが流れながら)

 

 

 

 

 

見事全国大会で優勝を果たし………

 

平穏を取り戻した大洗学園艦とみほ達、弘樹達………

 

だが………

 

新たな戦いの火種が………

 

既に燻っていた………

 

 

 

 

 

「貴方もボコが好きなんだね! 私、西住 みほ! 貴方は?」

 

「あ、愛里寿………」

 

 

 

 

 

ある日、みほ達が出会った不思議な少女………『愛里寿』

 

 

 

 

 

「友達?………」

 

「うん! 私と友達になろうよ!………駄目かな?」

 

「………ううん。凄く嬉しい」

 

 

 

 

 

ボコ好きと言う共通点で、愛里寿と友達になるみほ。

 

だが………

 

 

 

 

 

 

「愛里寿ちゃんが………島田流?」

 

 

 

 

 

突然知らされる、愛里寿の正体………

 

そして………

 

 

 

 

 

「私は貴方と戦わなければならない………」

 

「そんなっ!? 如何してっ!?」

 

「それが島田と西住に生まれた者の宿命だから………何よりお母様………そしてお父様の望みだから」

 

みほへと牙を剥く愛里寿。

 

最高の友達は、最強の敵になった………

 

 

 

 

 

更に、弘樹の前にも………

 

「貴様が舩坂 弘樹か………」

 

「………何者だ?」

 

「私は『イプシロン』! 島田流歩兵道の使い手にして、『パーフェクトソルジャー』だ!!」

 

「『パーフェクトソルジャー』………」

 

自らを『パーフェクトソルジャー』と名乗る男・『イプシロン』が立ちはだかった………

 

 

 

 

 

みほVS愛里寿………

 

弘樹VSイプシロン………

 

戦いの最中に明らかになる西住流と島田流の因縁………

 

 

 

 

 

「ボコにはね………私の『初恋の思い出』が詰まってるんだ」

 

そして今明かされる、『みほの初恋』………

 

 

 

 

 

(ココから炎のさだめがサビからフェードイン)

 

平穏は質量の無い砂糖菓子………

 

脆くも崩れて再びの地獄………

 

懐かしやこの匂い、この痛み………

 

我はまた生きてあり………

 

炎に焼かれて、煙にむせて、鉄の軋みに身を任せ………

 

ここで生きるが宿命であれば………

 

せめて望みは、かけがえなき人………

 

今、新たな舞台が整い、暴走が再開する………

 

そして!

 

先頭を走るのは、いつもあの2人!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『劇場版 ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース ~炎のさだめ~』

 

コレが歩兵道の戦場だっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

劇場版につづく




新話、投稿させていただきました。

弘樹とムカデさんチームのタイマン。
勝負は、取って置きの隠し玉『アーマーマグナム』で、弘樹が辛くも勝利します。
遂に出しちゃいましたよ、コイツを(笑)
豆戦車とのバトルだったら前から出したいと思っていたので。

2人の決着を持って、試合は終了。
OVAも完結となります。
もっと他のチームの描写を入れたい気持ちもあったのですが、グダグダになるのと、早く劇場版に行きたいと思い、思い切ってカットしました。
御了承下さい。

その気になる劇場版ですが………
前々から言っていた様に、西住流と島田流の因縁を私なりに掘り下げて、それに絡む形で新たな戦いが始まります。

気にされていた方も多い『イプシロン』ですが、何と島田の息子!
愛里寿の実の兄として登場です。
以前、友人が愛里寿にお兄ちゃんと呼ばれたいなと言っていたのを聞いて、イプシロンが実兄と言うのも面白いかもと思いまして。
そして、噂されている『長女』の設定も取り入れるかも?

更に、遂に出た!
ロッチナさん!!(笑)
劇場版に向けて考えた展開で、如何しても彼が必要になり、御出演願いました。
私も愛読している『ガールズ&ボトムズ』で登場された時、『しまった、先を越された』と思ってしまいました(爆)

しかし………
まさかコイツの登場までは予測できた人は少ないでしょう………
そう………
劇場版で文科省に代わる黒幕………
それはズバリ!
『ワイズマン』です!!
勿論、古代クエント人の精神体とか、ましてや『神』なんて存在ではありません。
ではこの作品でのワイズマンとは何者か?
島田家の父と呼ばれていますが、果たして………
全ては劇場版で明らかになります。

そして、サブエピソードとして、ボコに纏わるみほの『初恋』の思い出が語られます。
一部でみほがサイコパス扱いされる原因となったボコですが(笑)、何故みほがボコを好きなったかと理由は明らかにされていませんので、そこをこの作品ならではの、初恋の思い出にしてみました。
コチラも楽しみにしていて下さい。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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