ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第22話『潜入作戦です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第22話『潜入作戦です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦車道&歩兵道の全国大会で………

 

大洗機甲部隊の1回戦での相手となるサンダース大学付属高校とカーネル大学付属高校からなる………

 

『サンダース&カーネル機甲部隊』の情報を収集する為………

 

優花里を中心に、蛍、大詔、小太郎の4人は、サンダースとカーネルの学園艦へと潜入した。

 

果たして………

 

見事情報を入手し、大洗へと帰還する事が出来るのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サンダース校内………

 

「コレで何処から見てもサンダース校の生徒です」

 

予め用意していたサンダース校の制服へと着替えた優花里は、大胆にも正面からサンダース校へと侵入していた。

 

「ハーイ!」

 

「「ハーイ!」」

 

擦れ違うサンダース校の生徒と挨拶を交わす優花里。

 

サンダース校の生徒達は、優花里が他校の生徒だとは微塵も思っていない様子である。

 

「皆フレンドリーです。バレてません」

 

優花里はその様子を見ながら、記録用の小型カメラに向かって1人呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、同じくサンダース校へと潜入していた蛍は………

 

「………見つけた………此処が戦車の格納庫だ」

 

ダクトの中を移動しながら、戦車格納庫へと辿り着いていた。

 

「凄い………M4中戦車があんなに………」

 

ダクトの格子越しに見える格納庫の中には、機甲師団並みの数の『M4中戦車・シャーマン』が、バリエーションごとに所狭しと並んでいた。

 

その周りを整備員や戦車道の選手らしき生徒達が忙しなく歩き回っている。

 

「え~と………M4A1で………アレが無印のM4………アレはM4A6? 珍しいもの持ってるなぁ~」

 

そんな事を言いながら、サンダースが保有している戦車の数と種類を、メモ帳に書き留めて行く蛍。

 

『学園放送。学園放送。戦車道&歩兵道の全国大会の作戦会議を行う。選手の者は直ちに合同作戦室へ集合せよ。繰り返す………』

 

とそこで、そんな艦内放送が響き渡り、選手と思わしき生徒達が格納庫を後にし出す。

 

「作戦会議するんだ………良し、行ってみよう」

 

蛍もそれを聞いて、再びダクトの中を移動し始め、作戦会議室へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

カーネル男子校へと潜入した大詔と小太郎の方は………

 

「新しい武器が届きました!」

 

「よおし! 急いで搬入しろっ!!」

 

武器庫と思しき場所にトラックが横付けし、荷台にあった荷物を次々に降ろして行く。

 

「良し! このダンボールで最後だなっ!!」

 

最後に積まれていた、人が入りそうな位の大きさのダンボール箱を下ろし、搬入を終えるカーネル歩兵部隊の隊員達。

 

「お~い! 手が空いたんなら、コッチを手伝ってくれないかなぁっ!?」

 

するとそこで、車両担当の整備員の1人が、倉庫内に入って来るなり、搬入作業を行っていたカーネル歩兵達へそう声を掛ける。

 

「ああ、分かった! 今行くっ!!」

 

1人がそう答えると、搬入作業をしていたカーネル歩兵部隊の隊員達は、全員車両整備の手伝いへと向かった。

 

そして、武器庫内が静まり返ったかと思うと………

 

先程運び込まれたダンボールがガタガタと動き出し、ガバッと持ち上がったかと思うと、中から大詔が姿を現す。

 

「待たせたなっ!」

 

誰に言うのでもなくそんな台詞を言い放つ大詔。

 

「こうも簡単に潜入出来るとはな………金は持っているが、兵士の質は良くないのか。それとも只の油断か………」

 

そう呟きながらも、大詔は武器庫内に置かれているカーネル歩兵部隊の武器を調べ始める。

 

「やはり主力の小銃はM1ガーランドか。コッチはボルトアクションばかりだと言うのに………対戦車兵器はバズーカが中心か………それとコレは………ブローニングM1917重機関銃か?」

 

大詔は、武器庫内にある武器を次々にメモし、写真を撮影して行く。

 

とその時、武器庫内へと向かって来る足音が響いて来た。

 

「!!」

 

すぐさま大詔はダンボール箱を被り、息を顰める。

 

直後に武器庫の扉が開き、2人のカーネル歩兵隊の隊員が顔を出す。

 

「おかしいな? 確かに声が聞こえたと思ったんだけど?」

 

「やっぱり気のせいだろ。それよりそろそろサンダースとのブリーフィングの時間だぜ。早く行くぞ」

 

「あ! 待ってくれよぉっ!!」

 

2人のカーネル歩兵は、大詔が入っているダンボールを怪しむ事無く、サンダースとの合同ブリーフィングへと向かった。

 

「………ブリーフィングか」

 

大詔はダンボール箱の中でそう呟いたかと思うと、ダンボール箱を被ったまま移動を始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、小太郎の方は………

 

カーネル歩兵部隊のメンバーのデータが入ったパソコンがある部屋の天井の通風孔の格子が外され、小太郎が音も無く床に降り立つ。

 

「コレでござるな………」

 

小太郎はパソコンに近づくと、指紋を付けない様に操作を始める。

 

そしてすぐさま、お目当てのカーネル歩兵部隊のメンバーのデータを発見する。

 

「良し………むっ?」

 

すぐに閲覧しようとしたが、ロックが掛けられており、パスワードを入力しなければ閲覧出来ない仕様になっていた。

 

「小癪な………その程度で拙者から逃れられると思ったか………葉隠忍術! 『パスワード見破り!』」

 

と、小太郎がそう言い放つと、その目が光り、パスワードが勝手に入力され、データの閲覧が可能となる。

 

「ふふふ、葉隠流忍術の前には近代機器もこの通りでござる」

 

自信満々なドヤ顔でそう言い放つ小太郎。

 

って言うか、それは『忍術』ではない!

 

『忍法』だ!

 

「さてさて、肝心の中身は………」

 

小太郎が再びパソコンを操作すると、凄まじい人数のデータが表示され始める。

 

「ぬう、流石に人数が多いでござるな………」

 

そう呟きながら、パソコンにUSBメモリを差し込み、データをコピーし始める。

 

「ん? 何でござるか? この『第442連隊』と言うデータは?」

 

と、コピーしているデータの中に、気になるモノを見つける小太郎。

 

(オイ、そろそろブリーフィングだぜ)

 

(ああ、サンダースと一緒に1回戦の作戦を考えるんだったな)

 

そこで、小太郎のニンジャ聴力が、カーネルの歩兵隊の隊員のものと思われる声を拾い上げる。

 

「ブリーフィング………」

 

そう呟いたのと同時に、データのコピーが終了する。

 

「…………」

 

小太郎はUSBメモリを抜くと懐にしまい、そのまま自らの影の中へと沈んで行った………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

合同作戦室………

 

サンダース校側に設置されていた合同作戦室は、大洗男子校にあった物と遜色無い設備を誇っており、多数のサンダース校戦車部隊の隊員生徒達と、カーネル校歩兵部隊の隊員生徒達がズラッと並んでパイプ椅子に座っている。

 

「全体ブリーフィングが始まる様です」

 

その中にシレッと混じっている優花里が、他の生徒に気付かれない様に録画を続けながらそう呟く。

 

すると、集合している両校の生徒達の前方、大型モニターの前の壇上に、3人の女子生徒と3人の男子生徒が上る。

 

「では、1回戦出場車両を発表する」

 

3人の女子生徒の内、茶髪のツインテールで、そばかすの目立つ少女、サンダース校戦車部隊の2人の副隊長の片方『アリサ』が手にしているメモを見ながらそうブリーフィングを切り出し始める。

 

「ファイヤフライ1両、シャーマンA1・76mm砲搭載1両、75mm砲搭載8両」

 

アリサがそう言うと、後方の大型モニターに、使用する戦車の映像が映し出される。

 

「容赦無いようです………」

 

戦車の編成内容を聞いて、優花里はカメラに向かってそう呟く。

 

「歩兵隊の投入数は3000。対戦車兵を中心に機械化歩兵で機甲師団を形成する」

 

そこで続いて、3人の男子生徒の1人、カーネル校歩兵部隊の副隊長である『ボブ』がそう言うと、モニターが切り替わって歩兵部隊の編成図が表示される。

 

(3000………大洗歩兵部隊の6倍じゃない………)

 

と、天井にある通気口の中に潜み、ブリーフィングの様子を盗み見ていた蛍が、大洗歩兵部隊の6倍の人数を投入して来る事に冷や汗を流す。

 

「じゃあ、次はフラッグ車を決めるよぉ! OK!?」

 

サンダース校戦車部隊の隊長であるウェーブがかかったロング金髪の少女『ケイ』が、皆に向かってそう言いながら、拳を握った右手を突き上げる。

 

「「「「「「「「「「イェーッ!!」」」」」」」」」」

 

それに対し、ノリノリな返事を返すサンダースとカーネルの生徒達。

 

「随分とノリが良いですね。こんなとこまでアメリカ式です」

 

その様子を小声でリポートする優花里。

 

そして、フラッグ車はアリサの乗るシャーマンA1に決まる。

 

「何か質問は?」

 

「あ! ハイ! フラッグ車の防衛は如何するんですか?」

 

するとそこで優花里は席から立ち上がり、そう尋ねる。

 

(ちょっ!? 優花里ちゃん!?)

 

通気口の中から覗いていた蛍は、スパイ活動中にも関わらず、目立った行動をする優花里の姿に焦る。

 

「お~、良い質問ね」

 

「フラッグ車には歩兵部隊2個小隊が着く。敵は少数。防御を固めるよりは一気に攻めて押し潰すまでだ」

 

ケイが反応すると、カーネル校歩兵部隊の隊長である『ジェイ』が作戦図らしき書類を見ながらそう答える。

 

「では、敵にはⅢ突が居ると思うんですけど………」

 

「大丈夫! 1両でも全滅させられるわ!!」

 

小馬鹿にしているのか、絶対の自信があるのか、ケイはそう返す。

 

「「「…………」」」

 

しかし、その左右に居るアリサと、サンダース校戦車隊のもう1人の副隊長『ナオミ』が、表情を険しくしている。

 

更に、3人居た男子生徒の残りの1人、日系アメリカ人らしき人物も、優花里に疑いの眼差しを向けている。

 

(!! マズイ!!)

 

「………見慣れない顔ね」

 

蛍がマズイと思った瞬間、ナオミが優花里に向かってそう言い放つ。

 

「へっ!?」

 

その一言で、集合していた生徒達の視線が、一斉に優花里に集まる。

 

「あわわわ………」

 

(………優花里ちゃんが危ない!)

 

慌てる優花里を見て、蛍は懐から何かを取り出す。

 

「所属と階級は?」

 

「えっ!? あの~………第六機甲師団オッドボール三等軍曹であります!!」

 

指名を尋ねられた優花里は、咄嗟に映画『戦略大作戦』の主人公の名前を偽名として名乗る。

 

「! アハハハハハハッ!」

 

「偽物だっ! 『ジョーイ』! 捕まえて!!」

 

「イエス、マム!」

 

それを聞いたケイが吹き出し、ナオミが優花里を指差しながらそう叫び、日系アメリカ人らしき男子生徒『ジョーイ・ミヤギ』が優花里の確保に向かう。

 

「はわわっ!?」

 

優花里が慌てて逃げ出そうとした瞬間!!

 

「忍法! 閃光玉の術っ!!」

 

蛍がそう言い放ち、格子を外した通風孔から、合同作戦室に向かって何かを投げつけた!!

 

何かは床に叩き付けられたかと思うと、激しい光を発する!!

 

「キャアッ!?」

 

「な、何だっ!?」

 

「眩しい!!」

 

「目が!? 目がああああぁぁぁぁぁ~~~~~~っ!?」

 

忽ち阿鼻叫喚と化す合同作戦室内。

 

「な、何がっ!?」

 

辛うじて直前に目を覆った優花里だったが、動きが止まってしまう。

 

「優花里ちゃん!」

 

とそこで誰かに名前を呼ばれ、手を引かれる。

 

「!? うわぁっ!?」

 

優花里は驚きながらも、そのまま手を引かれて合同作戦室から脱出する。

 

「! ほ、蛍殿!?」

 

「走って! 急いで脱出するよっ!!」

 

漸く目を開けると、自分の手を引いていたのが蛍である事に気付くが、蛍は話は後だとばかりに優花里の手を引いて走る。

 

だが次の瞬間、学園内に非常ベルの様なサイレンの音が鳴り響き始める。

 

『他校のスパイが侵入した! 発見次第拘束せよ! 繰り返す!! 他校のスパイが侵入した! 発見次第拘束せよ!』

 

スピーカーからそうアナウンスが流れる。

 

「! 急がないと!!」

 

「ハ、ハイッ!!」

 

そこで優花里も全力疾走し始める。

 

「居たぞっ!」

 

「あそこだ!!」

 

と、背後から声が聞こえて来たかと思うと、武装したカーネル校の歩兵達が2人の後を追って来る。

 

「止まれぇっ! 止まらんと撃つぞぉっ!!」

 

カーネル歩兵の1人が、優花里と蛍にM1ガーランドを向けてそう叫ぶ。

 

「!?」

 

「マズイですよっ!?」

 

後ろを振り返りながら顔を青くする蛍と優花里。

 

「2人供、伏せろぉっ!!」

 

「「!?」」

 

と、その瞬間に今度は前方からそう声が響いて来て、優花里と蛍は反射的に床へと伏せる。

 

直後に、伏せている2人の頭上を、無数の銃弾が通過する!!

 

「「「「「ぐああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」」」」」

 

その銃弾を浴びたカーネル歩兵達は、翻筋斗打って倒れ伏す。

 

「! 今のは!?」

 

銃声が止んだのを確認した優花里が顔を上げると、そこには………

 

「2人供、無事か?」

 

銃口から硝煙が挙がっているブローニングM1918自動小銃を持った大詔の姿が在った。

 

「! 蛇野殿!」

 

「蛇野さん! 助かりましたっ!!」

 

大詔の姿を確認すると、優花里と蛍は安心した様な顔をして立ち上がる。

 

「待てぇっ! 逃げるなぁっ!!」

 

「大人しく投降しろっ!!」

 

だがそこで、新手のカーネル歩兵達が姿を現す。

 

「!?」

 

「また来た!!」

 

「!!」

 

するとすぐさま大詔は2人を庇う様に前に出て、新たに現れたカーネル歩兵達に向かってブローニングM1918自動小銃を発砲する!

 

「うおおっ!?」

 

「隠れろぉっ!!」

 

慌てて遮蔽物に身を隠すカーネル歩兵達。

 

「撤収するぞ! 急げっ!!」

 

「「! ハイッ!」」

 

大詔は射撃を続けながらそう言い放ち、優花里と蛍は再び駆け出す。

 

「そらっ!」

 

それを確認すると、大詔はベルトに下げていたマークⅡ手榴弾を投擲する!

 

「!? グレネードだぁっ!!」

 

「Fire in the hole!」

 

カーネル歩兵達が慌てて退避した直後に手榴弾は爆発。

 

爆煙が通路を埋め尽くした。

 

それを確認すると、大詔も優花里と蛍の後を追う様に走り出す。

 

「逃がすなぁっ!」

 

「追えーっ!!」

 

すぐさま追撃するカーネル歩兵達。

 

「急ぐぞ! もうすぐコンビニの定期便船が来る! それに乗っておさらばするぞ!」

 

「うん!」

 

「それにしても、大詔殿! その武器は一体!?」

 

逃走の最中、大詔の持っている武器について尋ねる優花里。

 

「な~に、連中の武器庫からちょっと失敬したのさ。帰る時に返せば問題あるまい」

 

シレッとそう言い放ち、大詔は不敵に笑う。

 

と、その3人の行く先の通路が左右に分かれていた。

 

「あわっ!? どっちに行けば………」

 

「右へ行くぞ。定期便船が来る港へコッチから脱出するのが近道だ」

 

優花里がそう言うと、大詔がそう言って右の通路へと入ろうとしたが………

 

『待て、大詔。その先では敵が待ち伏せを行っているぞ』

 

「!? 誰だっ!?」

 

突如無線機から聞きなれない声が聞こえて来て、大詔は驚く。

 

「何者だ、一体?」

 

『ディープ・スロートとでも名乗っておこう』

 

「ディープ・スロート? ウォーターゲートの内部告発者か?」

 

大詔に対し、『ディープ・スロート』と言う名を名乗る通信の送り主。

 

『そんな事は如何でも良い』

 

「バースト通信ではないな。近くに居るのか?」

 

『いいか。右の通路では先回りしたカーネルの歩兵達が網を張っている。左の通路へ行き、迂回しろ』

 

「お前は誰だ?」

 

『ファンの1人だよ』

 

そう言って通信は切断された。

 

「オイ! オイ!」

 

「ど、如何したの?」

 

「………部外者から通信が入って来た。右の通路ではカーネルの歩兵達が待ち伏せしているらしい」

 

「その通信自体が罠と言う可能性は無いのですか?」

 

優花里がそう指摘する。

 

「いや、俺の通信周波数はごく一部の奴しか知らない筈だ………」

 

と、大詔がそう答えていると、背後の通路から複数の足音が聞こえて来る。

 

「今は考えている時間は無いよ。一か八か行ってみよう」

 

「止むを得んか………」

 

蛍がそう言い、一同は済し崩し的に左の通路へと進んだのだった。

 

「左の通路へ行ったぞ!!」

 

「クソッ! 右へ行ったのなら先回りした部隊とで挟み撃ちに出来たのに!」

 

「運の良い連中だ!」

 

背後から追って来ていたカーネルの歩兵達は、大詔達が左の通路へ逃げるのを見て、そんな事を言い放ち、自分達も左の通路へと入って行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

合同作戦室のサンダース&カーネル機甲部隊の隊長陣は………

 

『スパイは現在サンダース校のA1エリアを通過! 間も無く校舎外に出るかと!!』

 

「何をやっている! 相手はたった3人だぞ! すぐに捕まえろっ!!」

 

「あんな弱小校のスパイに情報を盗まれたなんて知られたらいい笑いものだ!!」

 

通信機に向かってジェイとボブが怒鳴り散らす。

 

「クソッ! まさか大洗の連中がスパイに来るなんて!!」

 

「ケイ。こうなった以上、編制を変更した方が良いんじゃないか?」

 

アリサも苛立ちを露わにし、ナオミがケイにそう進言する。

 

「Non、Non。折角危ない橋渡ってまで来てくれたのよ。そのBRAVEには応えてあげないとね」

 

しかし、ケイは陽気そうに笑ってそう返す。

 

「しかし………」

 

「ジョーイも良いわよね」

 

ナオミは尚も何か言おうとしたが、ケイはそこで、ジョーイに話を振る。

 

「総隊長の決断であるならば、自分は異議はありません。全力で任務を遂行するまでです」

 

ジョーイは武骨にそう返す。

 

「OK! 流石はLEGENDの『442』ね!」

 

ケイはそう言ってウインクする。

 

「それにしても………あのオッドボール軍曹を救出した子が合同作戦室から脱出する時に使った技………アレはひょっとして『ニンジャ』の技じゃ」

 

(あ………)

 

(マズイ………)

 

と、ケイの口から『ニンジャ』と言う単語が出た途端、ナオミとアリサがマズイと言う様な表情となる。

 

「ケ、ケイ総隊長」

 

「ア、アレはですね………」

 

ジェイとボブも、何か言おうとしたが………

 

「ちょっと気になるわね。見に行ってみよ~うっと!」

 

ケイはワクワクを抑えきれないと言った様子を見せ、すぐさま合同作戦室を後にした。

 

「ちょっ! 総隊長!!」

 

「またケイの悪い癖が!」

 

「止めるんだ!」

 

「只でさえ大変だってのに!」

 

アリサ、ナオミ、ジェイ、ボブが慌てて後を追う。

 

「やれやれ………」

 

ジョーイは1人落ち着いた様子で、歩いてその後に続いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び、逃走中の大詔、優花里、蛍の方は………

 

如何にか校舎からは脱出に成功したかに見えたが………

 

「クソッ! まさか装甲車まで出してくるとはなぁっ!!」

 

サンダースの校舎の入り口の物陰に隠れながらブローニングM1918自動小銃を連射している大詔が愚痴る様に叫ぶ。

 

現在3人が隠れているサンダース校の校舎の入り口の前には、M20装甲車2台が並んで停まり、周囲にはカーネルの歩兵達が展開していた。

 

「ど、如何しましょう!?」

 

「モタモタしてると捕まっちゃうよ!」

 

「分かっている!………!? うおっ!?」

 

慌てる優花里と蛍にそう返し、牽制射撃を続けていた大詔だったが、M20装甲車が兵員室の上部に備え付けられたブローニングM2重機関銃を発砲して来たので、一旦物陰に完全に隠れる。

 

12.7mmの弾丸が、校舎の壁を砕いて、コンクリートの破片を撒き散らす。

 

「チイッ!………!? しまった!? 弾切れか!?」

 

敵側から射撃が止んだ瞬間に射撃を再開する大詔だったが、そこでブローニングM1918自動小銃は弾切れとなってしまう。

 

「もう諦めろ! お前達は完全に包囲されている!!」

 

「武器を捨てて大人しく降伏しろ! 捕虜の待遇は戦車道・歩兵道の規約に基づいて約束する!!」

 

それに気づいたカーネルの歩兵達が、武器を構えながらM20装甲車の陰から出て来て、大詔達にそう呼び掛ける。

 

「へ、蛇野殿~」

 

「せめて情報だけでも届けないと………」

 

「クッ!………」

 

3人の顔に諦めの色が過る。

 

「さあ、両手を上げて、出て………」

 

と、カーネルの歩兵の1人がそう言いかけた瞬間!!

 

「Wasshoi!」

 

ニンジャシャウトと共に、サンダース校2階の窓ガラスが割れ、煌めくガラスの破片と共に何かが飛び出した!!

 

「「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

驚いて、上を見上げた状態で固まるカーネルの歩兵達。

 

飛び出した人影は空中で捻りを加えた回転と共に、そんなカーネルの歩兵達の前に着地する!

 

「ドーモ。カーネルの皆=サン。葉隠 小太郎です」

 

その人物………小太郎は、カーネルの歩兵達に向かって身体の前で両手を合わせると頭を下げて、アイサツと共にオジギをする。

 

「アイエエエエ!」

 

「ニンジャ!? ニンジャナンデ!?」

 

「コワイ!」

 

「ゴボボーッ!」

 

サツバツ!

 

NRSが起こり、カーネルの歩兵達は恐怖のあまり容易に(自主規制)し、嘔吐した。

 

「小太郎!」

 

「申し訳無い、皆の衆。探すのに手間取ったでござる」

 

と、大詔が小太郎の姿を見て声を挙げると、小太郎はそう返す。

 

「お詫びと言っては何でござるが………ココは拙者が何とかするでござる。その隙に脱出を!!」

 

「ザッケンナコラー!」

 

と、小太郎が続けてそう言った瞬間!

 

NRSから逸早く立ち直った、M20装甲車の機銃座に着いて居たカーネルの歩兵が、ブローニングM2重機関銃を小太郎に向けた。

 

だが、しかし!!

 

「イヤーッ!!」

 

小太郎のニンジャシャウトが再び木霊したかと思うと、その右腕は鞭の様に撓り、1枚のスリケンが射出される!

 

射出されたスリケンは、ブローニングM2重機関銃の銃口を塞ぐ様に突き刺さった!!

 

「!? アバーッ!?」

 

忽ちブローニングM2重機関銃は暴発!!

 

機銃座に着いて居たカーネルの歩兵は、ネギトロめいた死体になった様なアトモスフィアを出しながら、ダシを取られたマグロの様に車外へ転げ落ちる。

 

「イヤーッ!!」

 

更に小太郎は、そのままニンジャ跳躍し、吹き飛んだリングマウントの部分から、M20装甲車の車内へと飛び込んだ!!

 

「!? アイエエエエ!?」

 

「イヤーッ!!」

 

そして、驚愕の声を挙げたM20装甲車の操縦士に、小太郎は腰を沈めた姿勢から、ジュー・ジツの踏み込みを経て繰り出される必殺の威力を秘めたパンチ、『ポン・パンチ』を食らわせる!!

 

「グワーッ!?」

 

真面に食らった操縦士は、M20装甲車のドアを突き破って、外へと飛び出す。

 

そして、小太郎は主の居なくなったM20装甲車を操縦し、サンダース校の玄関へと横付けする。

 

「コレを使って逃げるでござる!」

 

「ありがたい!」

 

「助かったであります、葉隠殿!」

 

「ありがとう!!」

 

小太郎が降りると同時に、入れ替わる様に大詔、優花里、蛍がM20装甲車へと乗り込む。

 

「せ、狭いですぅ………」

 

「キャッ!? 優花里ちゃん! そんなとこ触らないで!」

 

「2人乗りだからな。脱出までは我慢しろ!」

 

2人乗りのところへ3人無理矢理乗って居る為、狭さに四苦八苦しながらも、運転席に着いた大詔はM20装甲車を発進させる!

 

「行かせるかぁっ!!」

 

と、もう1台のM20装甲車が、その進路を塞ぐ様に陣取るが………

 

「しっかり捕まっていろぉっ!!」

 

「「!?」」

 

大詔は自分が運転していたM20装甲車を突っ込ませ、無理矢理退かして強行突破した!!

 

「に、逃げたぞぉーっ!!」

 

「追え! 追うんだっ!!」

 

慌てて逃げるM20装甲車に、カーネルの対戦車兵がバズーカを向けたが………

 

「イヤーッ!!」

 

「「「「「アバーッ!?」」」」」

 

小太郎のニンジャシャウトと共に射出されたスリケンが、バズーカを構えていたカーネルの対戦車兵の後頭部へと命中する!!

 

「邪魔はさせん! カーネル歩兵、殺すべし………慈悲は無い!」

 

「ザッケンナコラー!」

 

「スッゾコラー!」

 

「ドグサレッガー!」

 

コワイ!

 

小太郎の台詞に、カーネルの歩兵達は怒りのあまりヤクザスラングを叫び始めるのだった。

 

 

 

 

 

丁度、その頃………

 

サンダース校の屋上にて………

 

「アラッ? コッチじゃなかったの?」

 

スパイの姿を探していたケイは、何故か見当違いな屋上へと出てしまい、不思議そうに首を傾げる。

 

「イヤーッ!!」

 

「グワーッ!?」

 

「What?」

 

しかしそこで、叫び声や爆音が聞こえて来て、ケイは屋上の端へと向かうと、音が聞こえて来た下の方を見やる。

 

そこでは、小太郎がカラテとジュージツのワザで、カーネルヤクザ、もとい歩兵達を薙ぎ倒していた。

 

「!! アレは!! 正しくニンジャだわ!! ワンダホー!! 本当のニンジャが見られるなんて!!」

 

その小太郎の姿にケイは、目を輝かせて興奮した様子を見せ、思わず転落防止用の柵を乗り越えて、屋上の縁の上に立つ。

 

「!? ケイ!?」

 

「総隊長!? 何やってるんですか!?」

 

「あ、危ないですよっ!!」

 

「すぐに戻って下さいっ!!」

 

とそこへ、遅れてナオミ、アリサ、ジェイにボブが姿を現し、屋上の縁の上に立っているケイの姿を見て、慌てて注意する。

 

「Oh! 皆来て来て! あそこに本物のニンジャが居るのよ!!」

 

しかし、ケイは興奮している為、注意が耳に入らず、逆にナオミ達を自分の方へと誘おうとする。

 

その時!!

 

「ナマルベッケロアー! ニンジャ野郎めぇっ! コレでも喰らえぇっ!!」

 

大暴れする小太郎に業を煮やしたのか、1人のカーネル歩兵が、バズーカを持ち出して小太郎へ向けて発射した!!

 

「!?」

 

咄嗟に小太郎は、持ち前のニンジャ反射神経をフル回転させ、その場でブリッジをしてバズーカから放たれたロケット弾をかわす!

 

外れたロケット弾は、そのままサンダース校の校舎を直撃した!!

 

「キャッ!?」

 

その際の振動で、屋上の縁に立っていたケイがフラつく。

 

そしてそのまま、屋上の縁から足を踏み外した!!

 

「あ………」

 

「!? ケイッ!!」

 

「「「総隊長ぉーっ!!」」」

 

ナオミとアリサ達が駆け出したが時既に遅し!!

 

「キャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

ケイの身体は重力に引かれ、そのまま落下して行く!!

 

「!? イカンでござる!!」

 

当然その悲鳴は小太郎の耳にも入り、すぐに落下するケイの姿を発見する小太郎。

 

「ハアアアアアァァァァァァーーーーーーー………」

 

小太郎はすぐさま、チャドーの呼吸法を発動。

 

膨れ上がった全身の筋肉をフル稼働させ、落下するケイ目掛けてニンジャ跳躍!!

 

そのまま空中でケイをお姫様抱っこの様に受け止める!!

 

「!?」

 

「Wasshoi!」

 

そしてそのまま、サンダース校の3階の窓ガラスを突き破り、廊下へと着地する!!

 

「………怪我は無いでござるか?」

 

ガラスの破片からケイを守りながらそう問う小太郎。

 

「う、うん………」

 

「そうか。何よりでござる………」

 

と、小太郎がそう言った瞬間!!

 

ガラス片の1つが、小太郎の覆面の一部を切断!!

 

覆面がハラリと剥がれ、小太郎の素顔が露わになった!!

 

「!? しまったっ!?」

 

「!?」

 

慌てて腕で顔を隠す小太郎だったが、ケイは小太郎の素顔を見た瞬間に真っ赤になって固まる。

 

「ケイ戦車隊長!!」

 

とそこへ、遅れて一同を追っていたジョーイがそんな2人の姿を発見し、腰のホルスターに入れていた『M1911A1』、通称『コルト・ガバメント』を抜き、走り寄って来る。

 

「! チイッ!!」

 

それを見た小太郎はケイを解放し、懐から煙玉を取り出して、床に叩き付ける!

 

忽ち通路に煙が充満する!!

 

「クウッ! 煙幕か!?」

 

ジョーイがそう言った瞬間に、煙に反応してスプリンクラーが作動。

 

スプリンクラーの水で煙が晴れるが、既に小太郎の姿は何処にも無い。

 

「逃がしたか………総隊長、大丈夫ですか?」

 

「…………」

 

M1911A1をホルスターに戻しながらケイにそう尋ねるジョーイだったが、ケイは小太郎が残した覆面を両手で握り締めながら、熱っぽい瞳を見せていた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、小太郎は無事、先に逃げた大詔達と合流。

 

再びコンビニの定期便船へと乗り込み、如何にか大洗学園艦へと帰還したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方………

 

優花里達と大詔達が、サンダース校&カーネル校でスパイ活動をしていたのと時を同じくして………

 

此処にも1人、大洗の学園艦を離れ、他校の学園艦を訪れていた者が居た。

 

「………此処が黒森峰の学園艦か」

 

その人物は神狩 白狼。

 

そして、彼が訪れていたのはみほの古巣………

 

『黒森峰機甲部隊』の所属する『黒森峰学園艦』だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

原作でのオッドボール三等軍曹の活躍の場面です。
しかし、3人のオリキャラを放り込んだ結果………
混沌(カオス)です。

潜入作戦なのに派手に暴れ過ぎ!!
が、これくらいやらないと文章として映えないのも事実でして………

何気に伏線やフラグが立ってたりしています。
これが後で如何なるかはお楽しみで。

さて次回は、黒森峰を訪れた白狼の話です。
彼は何故黒森峰に?
そしてそこで出会ったのは?
黒森峰側にまたオリキャラが登場しますので、予めご了承下さい。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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