ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース 作:宇宙刑事ブルーノア
『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』
第213話『舩坂 弘樹VS梶 都草です!』
遂に………
長く苦しい戦いの末に………
大洗機甲部隊VS黒森峰機甲部隊の戦いは………
みほのⅣ号が、姉・まほのティーガーⅠを打ち破り………
大洗機甲部隊の勝利………
優勝が決まった………
だが、しかし………
弘樹と決着を付ける事が出来なかった都草は………
最後に雌雄を決すべく………
弘樹に対して、男として決闘を申し込むのだった………
戦車道・歩兵道全国大会の決勝戦の試合会場………
陸上自衛隊の東富士演習場・市街地………
HS地点・廃校の屋上にて………
『お~っとぉっ!? コレは予想外の事態が起こりました!!』
『いや~、まさかの延長戦ですか』
ヒートマン佐々木とDJ田中の戸惑っている様な実況が響く。
「「…………」」
一方、当の2人は距離をとって睨み合いをしている。
『都草! 何を言っているんだっ! 試合はもう終わったんだぞっ!!』
とそこで、都草の通信機から、まほの声が響いて来る。
「分かっているさ、まほ。だからこれは………個人的な戦いだ」
『駄目だ! 今すぐ武装解除しろっ!! コレは黒森峰機甲部隊総隊長としての命令だっ!!』
飽く迄個人的な戦いに臨もうとする都草を止めるまほ。
しかし………
「………すまない、まほ。コレばかりは君の命令でも聞けないな」
『!? なっ!? 都草っ!?』
都草は命令を拒否すると、通信機のスイッチを切った。
「………舩坂より西住総隊長へ」
一方、その遣り取りを見守っていた弘樹は、逆に通信機のスイッチを入れたかと思うと、みほへ通信を繋ぐ。
『………西住です』
一瞬の間の後、みほの声が返って来る。
その語気は重い………
「西住総隊長、今の小官の状況は御存じですか?」
『うん………』
「………交戦許可を下さい」
『!!………』
弘樹からの交戦許可要請に、みほの身体は一瞬硬直する。
「みほ! お前も止めてくれっ! こんな戦いに意味は無いっ!!」
と、都草に通信機を切られた為、みほを通して弘樹にも戦いを辞める様に言って来るまほ。
「…………」
みほは目を閉じ、ジッと何かを考える様な様子を見せる。
『………西住より舩坂分隊長へ』
やがて目を開くと、弘樹へと通信を送り始める。
『交戦を………許可します』
「!? みほっ!?」
「ありがとうございます………」
そして交戦を許可し、まほが驚愕の声を挙げる中、弘樹はみほに感謝する。
『けど、1つ約束して下さい』
「ハイ………」
『………負けないで』
「!………了解」
みほからそう言われ、弘樹は一瞬驚いた様な様子を見せたが、すぐにいつもの仏頂面になる。
「みほ! 何て事をっ!!」
「止められないよ、お姉ちゃん………例え神様だって、あの2人の勝負を止める事なんて出来ないよ………」
食って掛かって来るまほに対し、みほは何処か悟っている様な様子でそう返すのだった。
「「…………」」
一方、当の弘樹と都草は………
お互いに得物の四式自動小銃とStG44を携えて、相手の事を睨む様に見据えながら、平行に横へ移動している。
「先ずは私の果し合いを受けてくれた事に礼を言うよ、舩坂 弘樹」
と、横への移動を続けながら、不意に都草がそう言い放つ。
「…………」
対する弘樹は、いつもの仏頂面で黙り込んだままである。
「相変わらずだね………昔、人から聞いた話だが、無口な人間は気持ちを溜め込んでるから感情が強いそうだが、如何なんだい?」
「…………」
「無口だから答えないか………いやぁ、当然だね、ハハ」
そう言って笑う都草。
「!!」
だがその次の瞬間には、StG44を弘樹へと向け、発砲した!!
「!!………」
しかし、弘樹は都草がStG44を向けて来た瞬間に走り出していた為、回避に成功する。
「!………」
そして、角型のクーリングタワーを飛び越えて、一旦向こう側に姿を隠したかと思うと、またすぐに姿を見せ、都草に向かって四式自動小銃を発砲する。
「! クッ!!」
四式自動小銃の弾丸が頬を掠めながらも、都草は傍に在ったコンクリート製の通風孔の陰に隠れる。
「………!」
都草が物陰に隠れたのを確認した弘樹は、自分もクーリングタワーの陰に隠れると、四式自動小銃のリロードに入る。
(………コレが最後か)
しかし、長期戦により弾薬は消耗し尽くしており、今込めたのが最後の弾丸だった。
だが、それは相手も同じ事………
寧ろ、補給が滞っていた黒森峰の弾薬は、下手をすれば大洗よりも少ない可能性もある。
「…………」
勝機は有る………
そう思いながらゆっくりと頭を上げて、都草の様子を確認する弘樹。
その瞬間に目の前で火花が散るっ!!
「!!」
慌てて頭を下げると、銃だけを向けて牽制で射撃する。
すると、反撃の銃撃が撃ち込まれ、弘樹の頭の傍で激しい火花が散る!
「クッ!!………」
すぐに銃を下げる弘樹。
しかし、程無くして不意に銃撃が止んだ………
「?………」
如何した?と弘樹が怪訝に思うと………
「弾切れだ」
「!?………」
そう都草が告げて来て、弘樹は一瞬驚くものの、すぐにブラフだと考え、そっと都草の方を覗き見る。
「…………」
しかしそこには、マガジンの外れたStG44を片手で無造作に持っている都草の姿が在った。
「…………」
弘樹が見ているのに気づくと、都草は不敵に笑ってStG44を捨てる。
更に、腰のホルスターに在ったワルサーP38を抜くと、それも放る。
「!………」
それを見た弘樹は一瞬目を見開いた後、やがてクーリングタワーの陰から出て来た。
「…………」
その姿を見た都草は、嬉しそうにダガー状のナイフを逆手で右手に握る。
「…………」
対する弘樹は、四式自動小銃を床に置き、更に腰のホルスターに入っていたM1911A1も抜いて、同じ様に床に置く。
「…………」
そして、英霊を鞘から抜き放ち、正眼の構えを取る。
「良いね………そう来なくては」
「…………」
軽口の様に言う都草に、無言の弘樹。
両者はそのまま睨み合いとなる。
「「…………」」
弘樹が摺り足で1歩間合いを詰めると、都草も摺り足で1歩前に出る。
「「!!」」
その次の瞬間には、両者は弾かれた様に一気に突撃した!!
「ハアアッ!!」
先手を取ったのは弘樹!
振り上げた英霊を、都草目掛けて振り下ろす!
「ぬうっ!!」
しかし都草は、右腕に左手を添えたダガーで受け止める!
「ハッ!!」
そして、弘樹の腹に前蹴りを入れて来た!!
「!! グッ!!………」
咄嗟に腹筋を締めてダメージを減少させたものの、数メートル後方にズラされ、片膝を付く弘樹。
「シエエアッ!!」
すぐに立ち上がるが、その瞬間にはダガーを順手に持ち替えた都草が突撃して来て、ダガーを持つ右手を伸ばした突きを繰り出して来る!
「!!」
高速で繰り出されたその突きに対し、弘樹は何を思ったか首を下に曲げて、頭を突き出す様な姿勢を取った!
すると、都草のダガーの突きは、弘樹が被っていたヘルメットに当たり、火花を散らして反らされる!!
(!? ヘルメットでっ!?)
一歩間違えれば即死判定も有り得る様な回避の仕方に都草が驚愕し、一瞬動きが止まる。
「!!」
その一瞬を見逃す弘樹ではない!
素早く都草の首を英霊から放した左手で鷲掴みにする!
「!? ぐっ!?」
「うおおおっ!!」
そして何と!!
そのまま片手で都草を投げ飛ばした!!
喉輪落としならぬ喉輪投げである!
「! ぐあっ!?」
空中で1回転して、背中から地面に叩き付けられる都草。
「トオアッ!!」
その都草に向かって、弘樹は逆手に構えた英霊の刃を振り降ろす!
「!? クウッ!?」
しかし、都草は床の上を転がり回避。
英霊の刃は、屋上の床に突き刺さる!
更にそのまま、ブレイクダンスの様な動きを見せ、突き刺さった英霊に蹴りを入れる!
衝撃で英霊が弾かれ、離れた場所に転がった!
「!!」
「貰ったっ!!」
都草は素早く立ち上がり、武器の無くなった弘樹にダガーでの突きを繰り出そうとしたが………
「! シュッ!!」
弘樹は反射的に、右の水平チョップを繰り出す!
チョップはダガーの横腹に当たり、ダガーを弾き飛ばす!!
「! 何とっ!?」
またも弘樹の捨て身とも取れる攻撃に、都草は驚く。
「!!」
その都草の横っ面に、そのまま返す刀での右フックが炸裂する!
「! ゴフッ!!」
「!!」
怯んだ都草に、弘樹はすかさずボディーブローを叩き込む!
「グッ!?」
「ハアアッ!!」
そのまま連続でボディを殴りつける弘樹!
「グウウッ!!」
「うおおっ!!」
そしてそのまま都草の戦闘服の両肩部分を掴むと、振り回す様にして背後に在った配電盤に叩き付ける!
「がっ!!」
「おおおっ!!」
更にそこから振り回すと、そのまま右腕を両腕で掴み、一本背負いの様に投げ飛ばして背中から床に叩き付ける。
「ぐはっ!!」
「!!」
グロッキーになってきたかに思われた都草の肩口を掴んで立ち上がらせ、更に追撃を見舞おうとした弘樹だったが………
「むんっ!!」
そこで都草が不意打ちの様に頭突きを弘樹の顔に叩き込んだ!
「!?」
思わぬ1撃に弘樹が怯んで離れた瞬間………
「ハアアッ!!」
何と都草はジャンプしながらその場で横に一回転して振り回した蹴り………ヘリコプターキックを弘樹の横っ面に叩き込んだ!!
「ぐうっ!?」
強烈な1撃で、弘樹は立っていられずにその場に仰向けに倒れ込む。
「如何したっ! 何を寝そべっているっ!!」
そんな弘樹に向かって、アドレナリンが過剰分泌され始めたのか、興奮状態の都草がコレまでとは違った荒い口調でそう言って来た。
「さあ、立てっ!!」
「望み通りっ!」
立てと言われ、すぐさま立ち上がる弘樹。
「ハアッ!!」
「!!」
だがその瞬間に、またもヘリコプターキックが決まり、倒される!
「また寝てるのかっ!」
「うおおっ!!」
都草がそう言い放つと、弘樹は膝立ちまで立ち上がると、そこから都草の腰目掛けてタックルの様に組み付く!
「ぬうっ!?」
そのまま押し倒され、弘樹に馬乗りになられる都草。
「おおっ!!」
弘樹はそのまま、都草の顔に拳を見舞う!
「ガッ!?」
「うおっ!!」
1撃目が決まると、更に2撃目、3撃目と続ける!!
「おおっ!!」
「チイッ!!」
しかし、4撃目の左の拳を、都草は両手で掴んで止める。
そしてそこから、両足を弘樹の首に絡ませる!
「!?」
「ハアッ!!」
そのまま弘樹を倒し、腕挫十字固めを掛けた!
「グウッ!」
完全に決まり、脱出出来ない弘樹。
「降参しろ、舩坂 弘樹! コレは外せんぞっ!!」
もがく弘樹に向かってそう言い放つ都草。
だが………
「ぬがああっ!!」
何と弘樹は全身を使い、都草を技を掛けられている腕ごと持ち上げる!
「なっ!?」
「おおおおおっ!!」
驚く都草をそのまま更に身体を捻って床へと叩き付ける。
「ガッ!!」
「!!」
溜まらず都草が技を解くと、弘樹は床の上を転がって距離を取り、立ち上がる。
「………無茶をするじゃないか」
叩き付けられた時にやられたのか、鼻血を払いながら起き上がった都草が弘樹に向かってそう言う。
脱出される際に、都草は弘樹の左腕からバリバリと言う音………靭帯が断裂する音を聞いていた。
「…………」
何時も通りの仏頂面で、左腕も何にも無い様に上げている弘樹だが、相当な激痛が走っているらしく、僅かだが脂汗が垂れている。
「セエアッ!!」
と、その弘樹に向かって突進する都草!
「おおっ!!」
対する弘樹も呼応するかの様に突進!
そのまま、お互いの戦闘服の肩口を掴み合って組み合う!!
(右っ!!)
弘樹は右の拳を繰り出して来ると予想し、都草は左腕でガードを取る。
が!!
「ふうあっ!!」
「ガッ!? 左っ!?」
何と!!
弘樹は靭帯が断裂している左腕で躊躇無く拳を繰り出した!
「おおおっ!!」
クリーンヒットしてフラついた都草は、弘樹は更に左腕で殴りつける!!
「グウッ! このぉっ!!」
だが、都草は若干意識が朦朧としながらも、弘樹の左脇腹に右膝蹴りを叩き込む!
「!?………」
只でさえ左腕の激痛に耐えているところへ、更なる激痛に襲われ、弘樹は一瞬怯む!
「おおおおおっ!!」
そこで都草は、そのまま弘樹の左脇腹へ連続で右膝蹴りをお見舞いし始める!!
「!! うおおおおおおっ!!」
だが弘樹も負けじと、今度は右腕の拳で都草の左こめかみの辺りを連続で殴りつける!!
そのまま、お互いノーガードでの殴打の応酬となった。
選手控所………
「うわぁっ!」
「まただよ………」
「慣れませんね、こういう光景は………」
「夢に出て来そうだ………」
既に戦車ごと回収され、控所まで連れて来られていたあんこうチームの優花里、沙織、華、麻子が、モニターに映し出されている弘樹と都草の決闘の様子を見て、飛鳥の時の事を思い出しながらそう言う。
2人の戦いには、華麗さや優雅さなど一切無く………
ただ目の前の敵を叩き倒すと言う純粋な闘争本能による泥臭い戦いだった………
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
同じ様にモニターを見ている観客達も言葉を失っている。
しかし、誰1人として、モニターから目を離そうとする者は居なかった………
「クッ! やはり駄目だっ! 皆手伝ってくれ! 都草を止めるぞっ!!」
だが、まほはそんな光景に耐えられなくなった様に、黒森峰機甲部隊の隊員に呼び掛ける。
「総隊長っ!?」
「いや、しかし………」
けれども、黒森峰機甲部隊員達の反応も何処か鈍かった。
「みほ! お前も舩坂くんを止めるんだっ!!」
まほはそれに構わずにみほにもそう呼び掛けるが………
「…………」
「み、みほ………」
決してモニターから目を反らそうとせず、両手を血が出んばかりに握り締めながらも、みほはジッと2人の戦いを見守っていた………
HS地点・廃校の屋上にて………
「セエッ!!」
「ハアッ!!」
最早何発目とも分からぬ拳と膝蹴りを繰り出し合う弘樹と都草。
その周りの床には、2人が吐いた血反吐が彼方此方にこびり付いている………
「グッ!………」
「ガッ!………」
と、何度目とも知れぬ拳と膝蹴りが叩き込まれた瞬間、弘樹と都草は組み合いを解き、お互いによろけながら後ずさって膝を付いた。
「ゴホッ! ガホッ!………」
「ハアーッ………ハアーッ………」
むせかえる弘樹と呼吸の荒い都草。
最早共に血反吐すら出なくなっている様だ。
するとそこで………
「「………!!」」
両者の傍らには、手放してしまった英霊とダガーが在る事に気づく。
「………そろそろ決着を付けようか」
都草がそう言って、ダガーを手に取って最後の力を振り絞って立ち上がる。
「………ああ」
すると同じ様に、弘樹も英霊を右手で握り、杖代わりにしながらも立ち上がる。
「…………」
そして弘樹は、英霊を片手大上段で構える。
(片腕の大上段………いや、さっきまでの行動を見ていると、左腕が使えないとは考え難い………)
靭帯の断裂している左腕で何の躊躇も無く殴りつけたりして来た弘樹の行動を思い出し、都草は警戒する。
(上段は攻撃の構え………防御は考えられていない………かわして懐に飛び込めば得物の短い此方が有利………かわせるか?)
自問自答しながらも、都草は神経を研ぎ澄まし、弘樹が仕掛けて来るのを待つ。
「………!!」
やがて、弘樹が不意を衝く様に都草に突撃!
更に突撃した瞬間には、左手でも英霊を握った!!
(やはりかっ!!)
だが、神経を研ぎ澄ませていた都草は、弘樹の太刀筋を完全に見切っていた。
「!!」
(かわせっ!!)
振り降ろされた英霊を、右へと身体を反らしてかわそうとする都草。
神速とも言えるスピードで英霊を振り降ろした弘樹だったが………
それでも都草の方がコンマ数秒速かったらしく………
英霊の刃は、都草の身体の僅か5ミリ横を擦り抜け………
屋上の床へと叩き付けられて、火花を散らした!
「貰ったぁっ!!」
英霊を振り切った弘樹に対し、ダガーを握った右手を突き出す都草。
「!!」
弘樹は都草を見やりながら英霊を再度振り上げようとするが間に合わない!
「私の勝ちだ! 舩坂 弘樹っ!!」
勝利を確信した都草からそう声が挙がる。
………と、その時!!
パァーンッ!!と言う乾いた音………
『銃声』が、屋上に響き渡った………
「「…………」」
銃声が鳴り響いた瞬間………
弘樹と都草はお互いに固まっていた………
弘樹は英霊を床に突き刺したままの状態………
都草は、ダガーを弘樹の首筋僅か1センチにところで止めて固まっている………
「まさか………そんな事が………」
驚愕の表情で都草がそう言ったかと思うと、その身体がグラリと揺れ………
うつ伏せにバタリと倒れた。
その戦闘服の背中の中心、心臓の辺りには………
『銃弾』が命中していた。
その銃弾は、九九式普通実包………
四式自動小銃に使われている弾丸だった。
更に、弘樹が刀を振り降ろした床の傍には九九式普通実包の空薬莢が転がっており、都草の背後のクーリングタワーの側面には銃弾が当たって弾かれた跡が在った。
実は都草とノーガードで打ち合っていた時………
コッソリと戦闘服のポケットに残っていた1発の九九式普通実包を床に転がしていたのだ。
そして、先程英霊を振り降ろした瞬間に、切っ先で九九式普通実包の底部に衝撃を与えた。
火花が散ったのはこの為である。
そして、衝撃で弾丸が発射され、都草の背後に在ったクーリングタワーの側面で跳弾。
都草の背中に命中したのだ!
「…………」
倒れている都草を見下ろしながら、弘樹は英霊を腰の鞘へと納める。
「………!」
その瞬間に一瞬フラついたが、気合で持ち堪えた。
選手控所………
「やったーっ!!」
「弘樹の勝ちだっ!!」
「「「「「「「「「「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」
大洗機甲部隊から歓声が挙がる。
「…………」
みほも、今までの険しい表情から一転し、穏やかな笑みを浮かべていた。
「梶歩兵隊長………」
「梶さんが負けた………」
一方、黒森峰機甲部隊の面々は、大半が信じられない様な顔をしている。
(………都草………良く戦ったな)
だがまほだけは、みほと同じ穏やかな笑みを浮かべている。
今度こそ本当に全ての戦いが終わった………
と、その時!!
突然、HS地点の一角で大爆発が起こった!!
「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」
「!!」
「!? 何だっ!?」
突然モニター越しに聞こえて来た爆発音に、両機甲部隊隊員達とみほ、まほは驚愕の表情を浮かべて固まる。
直後に、更に次々と爆発が起こる。
如何やら、呉校の艦砲射撃の不発弾が、HS地点付近にも残っていたらしい。
凄まじい爆発の衝撃波が廃校の廃墟にも襲い掛かり、元々脆くなっていた建物全体に罅が入り始める。
「!? 都草! 逃げろぉっ!!」
と、まほがそう叫んだ次の瞬間!!
HS地点の廃墟は音を立て崩れ始め、弘樹と都草は瓦礫の波に埋もれて行った!!
「!! 都草ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!」
まほの悲鳴の様な声が木霊する中、廃校の廃墟は完全に崩落し、後には瓦礫の山が残るばかりだった………
「そ、そんな………都草が………」
顔を真っ青にして、震え始めると、立っていられなくなったのかふら付くまほ。
「! 総隊長っ!!」
慌ててエリカが駆け寄ろうとしたが………
「大丈夫だよ、お姉ちゃん」
それよりも早く、みほがまほの腕を取って支えながらそう言った。
「!? みほっ!?」
動揺を露わにしているまほとは対照的に、みほは至って普通にしている。
「だって………」
みほがそう言って再びモニターを見やると、まほも視線をモニターに向ける。
すると………
瓦礫の山の一角が、僅かに動いた!
「!?」
まほが驚いた瞬間!!
瓦礫が押し退けられ………
「…………」
都草に肩を貸しながら立ち上がる弘樹の姿が露わになった。
「弘樹くんが居たんだもん」
「…………」
ニッコリと笑ってそう言うみほだったが、まほは唖然とした表情になっている。
「………アイツ………本当に人間なの?」
出番を奪われたエリカも、連盟が救助に派遣したヘリに、都草に肩を貸したまま乗り込んで行く弘樹の姿を見て、信じられない様な表情でそう呟いたのだった。
最終回につづく
新話、投稿させていただきました。
遂に男と男の戦い………
弘樹VS都草が開始されます。
只々相手を倒そうとする泥臭い戦い………
しかし、これこそがある意味、歩兵道の神髄です。
2人の決着も終わり、いよいよ最終回。
文科省の企てが明らかに。
そして更に、思わぬ人物も登場します。
最終回とは言っていますが、その後にはエピローグのエンカイ・ウォーが入ります。
そしてそれが終わると劇場版………
………の前に、リボンの武者で行われた大洗戦をベースに、劇場版の前のエピソードに当たるOVAエピソードを入れます。
リボンの武者ベースですので、同作のキャラ達が多数登場する予定です。
では、ご意見・ご感想をお待ちしております。