ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース 作:宇宙刑事ブルーノア
『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』
第211話『毛路山 久美ちゃんです!』
駿河湾………
「う~む、やはりドイツ艦に攻撃すると言うのは複雑な気分だな」
「既に12隻も轟沈判定させといて言う台詞ですか、ソレが」
気が乗らない様な事を言いながらも、既に複数の黒森峰艦艇に急降下爆撃を加え、轟沈判定を下させているハンネスに、エグモンドはそうツッコミを入れる。
一方………
「撃てぇーっ!!」
護の号令と共に、大和の主砲が全門火を噴く!
飛翔する46センチ砲弾が、次々にアドミラル・グラーフ・シュペーに命中!
大爆発が一瞬アドミラル・グラーフ・シュペーの姿を包み込み、やがて爆煙が晴れると、白旗を上げたアドミラル・グラーフ・シュペーの姿が露わになる。
「アドミラル・グラーフ・シュペー、轟沈判定!」
「艦長! Z1からZ16までは、敵艦載機の攻撃を受けて轟沈! 若しくは航行不能ですっ!!」
「プリンツ・オイゲンが潜水艦の魚雷にやられました!!」
「我が方の潜水艦隊は、例のモビーディックに攪乱されています!!」
黒森峰側の旗艦であるビスマルクの艦橋では、味方艦が戦闘不能になった等と言う報告が次々に挙がる。
「クッ! コレが一航専と呉艦隊か!!」
ビスマルクの艦長は、彼方此方で黒煙を上げている友軍艦の様子を見て、そう呟く。
そしてビスマルク艦長は、視線を大和へと向ける。
その大和は再び主砲を発砲!
放物線を描きながら飛んで行った砲弾が、デアフリンガーに命中!
デアフリンガーの艦橋上部に白旗が上がる。
「デアフリンガー、轟沈判定っ!!」
「凄まじい………流石は46センチ主砲だ」
その様子を見ていたビスマルク艦長は、大和の46センチ主砲の威力に改めて戦慄する。
「だが、我等も黒森峰! 後退の文字は無い!!」
「大和! 本艦に向けて発砲っ!!」
と、ビスマルク艦長がそう言った瞬間に、見張り要員から悲鳴の様な報告が挙がる。
「慌てるな! 機関全速! 面舵一杯っ!!」
「機関全速! 面舵一杯っ!!」
ビスマルク艦長がそう叫び、副長が復唱する中、ビスマルクが全速で面舵を切り始める。
急な加速と面舵で、艦体が若干傾くが、ギリギリを維持して面舵を続ける。
直後に、大和の主砲弾が、艦尾付近の海に着弾!
「「「「「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」」」」」
46センチ砲弾は、至近弾でもビスマルクに巨大な振動を走らせる!
「被害報告!!」
「艦尾Cブロックに浸水発生! しかし極めて軽微! 応急修理完了していますっ!!」
ビスマルク艦長が問い質すと、艦尾で浸水が発生したが、既に応急修理を終えたとの報告が入る。
「火力と装甲は向こうが圧倒的に上だ! 機動戦に持ち込め! アレだけデカい主砲だ! 取り回しは悪い筈だっ!!」
「了解っ!!」
ビスマルクはそのまま、大和の主砲が旋回し切る前に、反航戦になる様に位置取る。
「主砲! 撃てぇーっ!!」
そして、大和目掛けて主砲を斉射する。
大和の周辺で次々に大きな水柱が上がる。
そして2発の砲弾が、大和の左舷側に命中した!
「左舷被弾っ!!」
「第三艦橋大破っ!!」
「そんな場所無いだろ」
「いえ、何か言わなきゃいけない気がして………」
大和の艦橋で、艦橋要員達の冗談交じりの報告が響く。
「流石に旗艦を務めるだけあって一筋縄では行かないか………総員、気を引き締めろ! ココからが正念場だぞっ!!」
そんな中で護は、ビスマルクの乗員達の腕を褒めながら、自艦の乗組員達を鼓舞する。
「「「「「「「「「「了解っ!!」」」」」」」」」」
それに対し、大和の乗組員達は勇ましい返事を返すのだった。
一方、その頃………
戦車道・歩兵道全国大会の決勝戦の試合会場………
陸上自衛隊の東富士演習場・市街地………
HS地点・学校跡にて………
みほのⅣ号を追って、まほのティーガーⅠが突入した中庭へと続く通路を塞ぐレオポンさんチームのポルシェティーガーに対し、黒森峰戦車部隊の攻撃が加えられている。
「ココから先は行かせないよ」
しかし、ナカジマがそう言うと、ポルシェティーガーが発砲!
「「「「「うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」」」」」
放たれたのは榴弾だった様で、爆発で黒森峰歩兵達が数人纏めて吹き飛ばされる。
「だ、駄目だ! 火力が足りないっ!!」
パンターの車長がそう叫ぶ。
現在黒森峰戦車部隊の残存車輌は、パンター、ラング、ヤークトパンターが其々1輌ずつ。
ティーガーⅠと同等の装甲を持ち、更に敵に対して車体を斜めに傾ける事で避弾経始の効果を作り出す『食事時』を取っている事で、更に防御力の増しているポルシェティーガーを撃破するには若干火力不足であった。
「クッ! このぉっ!!」
ならばと、対戦車兵の黒森峰歩兵が、パンツァーシュレックを構えるが………
「そうはさせないよ………」
「!? ガハッ!?」
迫信が撃ったスプリングフィールドM1903小銃の弾丸を頭に受け、戦死判定となって倒れる。
砲兵が全滅している中、対戦車戦闘で最も頼りになる歩兵は対戦車兵である。
大洗側もそれは十分に分かっており、対戦車兵を優先的に狙って弾幕を張っている。
戦況は膠着状態だが、それこそが大洗の狙いである。
「クッ! まほ………早まるんじゃないぞ」
StG44に新たな弾倉を装填しながら、都草はそう呟くのだった………
一方、その頃………
まほ、そして久美と対峙していたみほは………
「…………」
苦い顔で、嫌な汗を流しているみほ。
前方に久美のⅣ突。
後方には、まほのティーガーⅠの姿が在る。
正に前門の虎、後門の狼である。
………この場合、後門の方が虎とも言えるが。
「西住流に逃げると言う道は無い。2対1と言うのは多少気が引けるが、この場にて決着を着ける」
やがてまほが、みほに向かってそう言い放つ。
「!………」
その言葉に反応する様に、振り返ってまほの姿を確認するみほ。
「ゲロゲロリ………こんな時でも西住流でありますか………まほ殿は相変わらずお堅いでありますな」
久美はそんなまほの様子を見て、そんな事を呟く。
「私は生まれながらに西住流だ。他の生き方を知らない………だから私は何があろうと西住流でなければならないんだ」
そう言い放つまほだったが、その顔には僅かに哀しみの様な表情が浮かんでいる。
「お姉ちゃん………」
そんなまほの顔を見て、みほも複雑そうな表情を浮かべる。
………と、
「西住流でなければならないでありますか………割とそうでもないのではないでありますか?」
不意に久美は、そんな事を口にした。
「? 如何言う意味だ、久美?」
「??」
久美の思わぬ言葉に、まほもみほも首を傾げる。
「いや~、だって、身も心も西住流だってお方が、まさか総隊長室で梶殿とあんな事を………」
「!?!?」
と、久美がそう言葉を続けた瞬間、まほの顔が一瞬でトマトの様に真っ赤になった!
「なななななっ!? 何故それを知っているっ!?」
明らかに動揺を露わにしながら久美に問い質すまほ。
「ゲロゲロリ、我が分隊にはそう言った事情に詳しい奴が居りますのでなぁ」
「! 来流矢かっ!! シャイセッ!!」
まほは思わずドイツ語で『チクショウッ!』と叫んでしまう。
「否定しないって事は事実なんだ………」
「ええ、まさかあのお堅い西住総隊長が………」
「意外………」
「ヒューヒュー、お熱いですね~」
と、話を聞いていたまほのティーガーⅠの乗員達が、まほの意外な一面を知り、驚いた様子を見せたり、囃し立てて来る。
「お、お前達!!………」
「えっと、お姉ちゃん………その………別に都草さんとの恋愛に口出しする気は無いよ………寧ろお似合いだと思うし………けど、その………学校で、そ、そう言う事するっていうのはちょっと………」
何か言い返そうとしたまほだったが、そこでみほがモジモジとしながらそう言って来る!
「! 違う! 違うぞ、みほ! 別に総隊長室で事に及んだワケではなくて、チューしてただけ! 大体、アレは都草がせがむから!」
「西住総隊長………それ自爆です」
「!?!?」
誤解を解こうとして逆に自爆してしまった事をティーガーⅠ乗員に指摘され、更に顔を赤くするまほ。
「他にも実はブラックコーヒーが超苦手で、皆が見ていないところでは砂糖とミルクをたっぷり入れてカフェオレにして飲んでたり………」
「ええっ!? 総隊長! 言ってくれれば良かったのに!!」
「うわああ~~~っ!!」
まほは頭を両手で押さえてブンブンと降る。
半ば錯乱状態である。
「それからレトルトの作り方が分からなくてそのまま食べたり、ご飯を炊こうとしておじやにしてしまったり、袋麺をそのままバリバリ食べたり………」
だが、久美の暴露話は止まらない。
「………変わってないなぁ、お姉ちゃん」
「あ、ホントの事なんだ………」
そんな久美の暴露話にみほが頷き、沙織が呆れた様に呟く。
「極め付けは、ご実家で飼われているペットのワンちゃんと戯れている時、赤ちゃん言葉になって………」
と、久美が更に暴露話を続けようとした瞬間!
砲撃音が響き渡り、みほのⅣ号を通り越して、久美のⅣ突に砲弾が命中した!
「ゲローッ!?」
正面装甲に真面に着弾したⅣ突は宙に浮かび上がりながら引っ繰り返り、車外へ姿を晒していた久美は車外へ投げ出される!
「ゲエッ!?」
そして文字通り蛙が潰れた様な声を出しながら地面に叩き付けられると、Ⅳ突も完全に引っ繰り返った状態となり、底部から白旗を上げた!
「ハアーッ! ハアーッ! ハアーッ! ハアーッ!………久美………お前と言う奴は………」
羞恥と怒りで顔を真っ赤にして、肩で息をしているまほ。
彼女の乗るティーガーⅠの砲門からは煙が上がって居る。
「あ、あの………総隊長………御命令でしたから撃ちましたけど、本当に良かったんですか?」
とそこで、照準器から顔を離した砲手が、まほを見上げながらそう尋ねて来る。
「? 何がだ?」
「いや、思いっきりフレンドリーファイヤな上に、折角の2対1の状況を潰してしまったのですが………」
「………あ」
思わず間抜けた声を挙げるまほ。
如何やら、衝動的にやってしまった様で、後先の事を全く考えてなかった様である。
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
中庭に奇妙な沈黙が流れる………
「………フ、フフフ………アハハハハッ!!」
やがて、みほが耐え切れなくなった様に大笑いし始めた。
「! み、みほ! そんなに笑う事ないだろう!!」
「だって、お姉ちゃん! アハハハッ!! お姉ちゃんがこんなミスするなんて!! ハハハハッ! あー、お腹痛いっ!!」
「わ、笑うなーっ!!」
腹筋が痛くなって泣きながら笑うみほと、子供の様に手を振って泣き顔で抗議するまほ。
((((((((え? 何、この空気?………))))))))
西住姉妹の間に流れている和やかな雰囲気に、あんこうチームとティーガーⅠの乗員達は若干疎外感を感じながら置いてけ堀にされる。
「ハハハハッ!!」
「酷いぞ、みほっ!!」
まだ笑うみほに、まほは更に抗議する。
「ゴ、ゴメンね、お姉ちゃん………あ~、お姉ちゃんとこんな遣り取りしたの久しぶり」
「!!」
とそこで、みほがそう呟いた事にまほはハッとする。
先程までの雰囲気は、『あの頃』のみほとまほの雰囲気だった。
幼少時のみほとまほは、とても仲の良い姉妹だった。
幼少時から礼儀正しい品行方正なまほに対し、幼き日のみほは活発な少女であったが、2人は何時も一緒に遊んでいた。
しかし、西住流の後継者として教練を受ける中、みほは徐々に今の様な内気な性格へと変わって行った。
対するまほは特に変わる事も無く、徐々に西住流の後継者としての地位を固めて行く。
やがて、内気な性格になったみほと、元来不器用な性格のまほとの間には、僅かな擦れ違いが生じる事となる………
そして、みほが黒森峰を去ったのを契機に、2人の関係は完全に気まずいモノとなってしまった………
以前、カンプグルッペ学園にまほが拉致された時も真面に会話する事は出来ず、今の今までその関係が続いていた。
しかし、久美の暴露話に、まほが思わず衝動的な行動を取った事で、2人は昔の雰囲気を思い出す。
「………そうだな。確かにこんな風に話し合うのは久しぶりだな」
まほは何時の間にか穏やかな顔になり、みほにそう言う。
「お姉ちゃん………」
久しぶりに見た姉の穏やかな顔に、みほも笑みを浮かべる。
「ゲロゲロ………漸く2人で笑い合えたでありますな」
するとそこで、何時の間にか起き上がっていた久美が、2人に向かってそう言った。
「久ちゃん………」
「久美………お前、まさか態とあんな事を………」
久美の方を振り返るとみほと、久美が狙ってあんな事をやったのかと勘繰るまほ。
「………全校生徒諸君には申し訳無いでありますが、我輩には今の学校の事など然程重要な事では無いであります。例え何処へ行っても誇りさえ有ればそれで黒森峰であります」
すると久美は、何処か達観したかの様な顔でそう語り始める。
「我輩はみほ殿とまほ殿が普通の姉妹の様に仲良くなって欲しかった………それだけであります」
「如何して………」
「決まってるであります。我輩はみほ殿の『友達』でありますからな」
「! 久ちゃん………」
久美の友情に、みほは震える。
「………皆、すまないでありますな。付き合わせてしまって」
「気にしないでよ、部隊長」
「部隊長さんの為なら何だってやるですぅ!」
「てゆ~か、一蓮托生?」
そこで久美が引っ繰り返っているⅣ突に向かってそう言うと、冬子、玉枝、茂亜が這い出して来ながらそう言う。
「………まほ殿」
「! あ、ああ………」
「もう気負う必要も無いであります。ココからは西住流でも黒森峰の総隊長でも無く………みほ殿の姉の『まほ殿』として戦うであります」
「!!」
そう言われた瞬間………
まほはスーッと肩が軽くなった様な感覚を覚える。
「久美………感謝する」
「ゲロゲロリ………我輩は只勝手にやっただけであります。さて………後は若い者同士でごゆっくりであります」
久美に向かって敬礼するまほと、何処か惚けた様にそう言い返し、仲間達と共に退避する久美だった。
「「…………」」
久美達が居なくなった後、改めて対峙するみほ。
「お姉ちゃん………」
「みほ………お前も私も、色々な物を背負ってココまで来た………そうだな」
「うん………」
「だが、今この瞬間、私はその全てを忘れる!」
「えっ!?」
「来い、みほ! 昔みたいな戦車道をしようじゃないかっ!!」
まほは無邪気に笑い、そう言い放つ!
「!………負けないよ! お姉ちゃんっ!!」
それに対してみほも、無邪気に笑ってそう返した!
「………すまない、皆。私の我儘に付き合ってくれ」
そこでまほは、みほを見据えながらティーガーⅠの乗員にそう声を掛ける。
「構いませんよ、総隊長」
「って言うか、総隊長はもっと我儘になっても良いですよ」
「そうそう。何だかんだ言っても、結局は私達と同じ、花の女子高生なんですから」
「私も吹っ切れましたよ。もう勝っても負けて恨みっこ無しです」
と、まほとみほの空気に当てられたのか、ティーガーⅠの乗員達も笑いながらそう返して来る。
「………感謝する」
そんなティーガーⅠの乗員達に、まほは心から感謝した。
「お姉さんと気まずくなくなって良かったね」
一方、Ⅳ号の方では、沙織がみほにそう言って来る。
「うん………ココからは、私とお姉ちゃんの純粋な勝負だよ」
「お付き合いさせていただきますね」
みほがそう言うと、華が照準器を覗いたまま笑顔でそう返す。
「この秋山 優花里の命は元より西住殿に預けてあります!」
「まあ、勝つ事には変わりはないんだ………やるぞ」
優花里と麻子も笑顔でそう言う。
「………コレがフ号作戦の最終段階………最後の勝負だよ」
そしてそこで、みほは軍神の顔となり、そう宣言したのだった。
みほとまほ………
今、蟠りも柵も超えて………
姉妹による、純粋な勝負が始まる………
つづく
新話、投稿させていただきました。
海戦でも激戦が続く中………
みほとまほの一騎打ちに割って入る形になった久美。
しかし何を思ったのか、久美はまほの暴露話を始める。
羞恥の余り、思わず久美のⅣ突をフレンドリーファイヤしてしまうまほ。
そんなまほの姿を見てみほは笑い、西住姉妹の間に、幼少期の様な懐かしい穏やかさが芽生える………
そして2人は今、全てを忘れ………
純粋に姉妹として、戦車道の対決に臨む!
久美にとってまほは総隊長である前に、友達であるみほの姉。
2人が気まずい関係になっているのに我慢ならなかった彼女は、黒森峰を犠牲にしてでもその仲を修復しようとこんな行動に出ました。
ある意味、究極の友情です。
さて、そんな西住姉妹がいよいよ対決。
次回が最終決戦になりますが、またもや予想外の事態が?
では、ご意見・ご感想をお待ちしております。