ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第208話『毛路山分隊です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第208話『毛路山分隊です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦車道・歩兵道全国大会の決勝戦の試合会場………

 

陸上自衛隊の東富士演習場・市街地………

 

『こちらレオポン。お待たせしました。修理完了です』

 

「了解しました。引き続きHS地点へ向かって下さい」

 

ポルシェティーガーの修理が終わったと聞き、みほはそう指示を飛ばす。

 

『了解~』

 

「みぽりん! 正面に敵フラッグ車っ!!」

 

「!!」

 

そこで沙織がそう報告を挙げ、みほが顔を上げると、パンター1輌と都草を含めた黒森峰随伴歩兵達を連れ立ったまほのティーガーⅠが視界に入る。

 

「麻子さん! 敵フラッグ車の前を掠める様にして左の路地へ!」

 

「任せろ………」

 

すぐさまみほの指示が飛ぶと、麻子はⅣ号を加速させる。

 

「敵正面!」

 

「撃てっ!!」

 

即座に砲撃を命じるまほ。

 

だが、ドンピシャのタイミングでⅣ号は左折し、砲弾はⅣ号を掠める様に外れる。

 

そのまま、左の路地へと突入するⅣ号。

 

まほのティーガーⅠとパンター、都草を含めた黒森峰随伴歩兵達もそれを追撃する。

 

再びフラッグ車をHS地点へと誘導する任務が始まった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

パンター2輌に追撃されていた八九式は………

 

「撃てっ!」

 

追って来るパンターに向かって発砲する八九式。

 

しかし、砲弾はアッサリと弾かれる。

 

「クソーッ!」

 

「もっと火力をっ!!」

 

典子の悔しそうな声と、あけびの切実な叫びが車内に木霊する。

 

「ええいっ! コレ以上あんなブリキ缶に構っている暇は無い!! パンター2号車! 挟み撃ちにするぞっ!!」

 

「了解っ!!」

 

とそこで、痺れを切らしたかの様に片方のパンターの車長がそう言うと、もう1輌のパンターが左側に見えた路地へ左折。

 

そのまま左折した先の道路を右折したかと思うと加速し、姿を隠したまま別のパンターに追われる八九式を追い越す!

 

そして十分に距離を取ったかと思うと右折し、そのまま八九式の前に躍り出た!

 

「! キャプテンッ! 回り込まれましたっ!!」

 

「何っ!?」

 

妙子がそう声を挙げ、典子も先回りしたパンターの姿を確認する。

 

「終わりだ! 八九式っ!!」

 

先回りしたパンターは進路を塞ぐ様に停止しており、主砲を向かって来る八九式に向ける。

 

「コレでチェックメイトだっ!!」

 

更に、追って来ているパンターの主砲も八九式へと向けられる。

 

「! 忍っ! 合図したら壁に突っ込んでも構わないから思いっきり右へ切れ!!」

 

「! ハイ、キャプテンッ!!」

 

とそこで、典子は何かを思い付いた様な顔になり、即座に忍はそれに賭ける。

 

「喰らえっ!!」

 

「撃てぇっ!!」

 

その瞬間!!

 

前と後ろのパンターの主砲が同時に火を噴く!

 

「! 今だっ!!」

 

「ええいっ!!」

 

すかさず典子の指示が飛び、忍は八九式を思いっきり右に切る!

 

八九式はそのまま右手に在った民家の塀を破壊し、更に民家にまで突っ込んだ!

 

そして、パンター達の撃った砲弾は擦れ違い、そのまま対角線上に居たお互いへのパンターへと向かう。

 

「!? あっ!?」

 

「し、しまっ………」

 

た、と言い切る前に、砲弾はパンター達に命中!!

 

爆発が起こると、パンター達は白旗を上げる。

 

「やったぁっ! 同士討ちだっ!!」

 

「流石です! キャプテンッ!!」

 

民家から脱出している八九式のハッチからその姿を晒しながらその様子を見て、典子が歓声を挙げると、あけびも歓声を挙げる。

 

『コチラあんこう! 間も無くHS地点へ突入します! 作戦を最終フェイズへ移行させますっ!!』

 

するとそこで、あんこうチームの沙織の声が通信回線に響き渡る。

 

「! キャプテンッ! 作戦が最終フェイズに入りますっ!!」

 

「いよいよか………よし、私達も………!?」

 

妙子の報告を聞き、典子も最後の踏ん張りに入ろうとしたところ、視界内に粉煙を上げながら向かって来る真っ赤なⅣ突………久美車の存在に気づく!

 

「Ⅳ突! 敵だぁっ!!」

 

「ええっ!?」

 

「こんな時にっ!!」

 

典子が叫ぶと、妙子が驚き、忍も愚痴る様に言う。

 

「牽制しますっ!!」

 

と、あけびが牽制にと、Ⅳ突へ主砲を旋回させ、発砲する。

 

だが………

 

八九式の砲弾がⅣ突に命中するかと思われた瞬間………

 

Ⅳ突の姿がスッと消えてしまう………

 

「!? 消えたっ!?………!? うわあっ!?」

 

典子が驚きの声を挙げた瞬間、八九式に衝撃が走る!

 

何と、消えたと思われたⅣ突が、八九式に体当たりを見舞って来たのだ!!

 

「忍ーっ!!」

 

「ぐうう!!」

 

軽々と弾き飛ばされた八九式だったが、忍の操縦テクニックで如何にか立て直す。

 

「あけび!この際撃ち捲くれっ!!」

 

「ハイ! キャプテンッ!!」

 

そこで典子は車内へと引っ込むと、あけびが撃つのに合わせて次々に砲弾を装填!

 

まるで拳銃の様に、八九式が次々に主砲を発砲する!

 

だが、この連続砲撃も、Ⅳ突は急停止、急発進、急旋回の連続で全て回避してしまう!

 

「何っ!? あの動きっ!?」

 

「通常の3倍の速さで動いていますっ!!」

 

その凄まじい機動に、あけびと妙子が思わず声を挙げる。

 

と、その瞬間………

 

突然Ⅳ突が動きを止める。

 

「「「「!?」」」」

 

典子達が身構えると………

 

「…………」

 

Ⅳ突のハッチが開いて、久美が姿を現した。

 

「! アイツ………」

 

典子がそう言った瞬間………

 

「………フッ」

 

久美は、コレ以上無いくらいのドヤ顔を決めて見せた!

 

「! 忍っ! 突っ込めっ! 車体が小さい分、接近すれば小回りの利くコッチが有利だっ!!」

 

「! 了解っ!!」

 

それに挑発されたかの様に、八九式はⅣ突に向かって突撃する!

 

「見せて貰おうでありますか! 大洗の八九式の性能とやらをっ!!」

 

久美がそう言い放つと、Ⅳ突も八九式に向かって突撃する!

 

「! 右だっ!!」

 

「ハイッ!!」

 

と、典子の合図で忍がレバーを入れ、八九式が右へ切れる。

 

そして同時に、Ⅳ突の左側面に主砲を向ける。

 

「撃てっ!!」

 

至近距離からⅣ突に向かって放たれる八九式の砲弾。

 

だが、Ⅳ突は左の履帯をストップさせると、勢いで八九式の方へと向き直り、砲弾はⅣ突の脇を擦り抜ける様に外れる。

 

「当たらなければ如何と言う事はないであります!」

 

そう久美が言い放つと、今度はⅣ突が発砲!

 

極めて至近に着弾し、八九式の車体が一瞬浮かび上がった!

 

「うわあっ!? 撃て! 撃てぇっ!!」

 

「ハイッ!」

 

一瞬怯みながらも典子は指示を飛ばし、あけびがまたも発砲。

 

だが、Ⅳ突は後退し、八九式の砲弾は地面に突き刺さる。

 

「戦車の性能が戦力の決定的な差ではない………しかし、良く見ておくのであります。実戦と言うのは、ドラマの様に格好の良いものではないのであります」

 

久美が某赤い彗星の台詞を連発する中、再度八九式に向かって発砲するⅣ突。

 

「忍っ!!」

 

「!!」

 

だが、間一髪のところで八九式は発進し、難を逃れる。

 

「我輩もよくよく運の無い女であります」

 

そう言いながら、八九式を後ろから追い縋る久美。

 

「来るぞっ!」

 

「そこぉっ!!」

 

典子が叫ぶと、あけびが砲塔を後方に向け、発砲する。

 

「見える! 我輩にも敵が見えるでありますっ!!」

 

しかし、久美はアッサリ回避すると、反撃に発砲する。

 

「うわっ!?」

 

至近弾で八九式が一瞬浮かび上がり、忍が声を挙げる。

 

「固定砲塔なのに機動戦も問題無いなんて………」

 

「砲塔など飾りです! 偉い人にはそれが分からんのですよ!!」

 

戦車の意義を否定しながら更に発砲する久美。

 

「クッ! 如何すれば………! そうだっ! 妙子! 煙幕の残り! まだ有っただろうっ!!」

 

「! ハイッ! 有りますっ!!」

 

「噴射しろっ! 奴の目を眩ませるんだっ!!」

 

「了解っ!!」

 

典子がそう言うと、妙子が煙幕放出のスイッチを押す!

 

八九式から残っていた煙幕が放出され、辺りを煙が覆い尽くす。

 

久美のⅣ突の姿も、煙の中へと消える。

 

「良し! この間に一旦距離を取って回り込むんだ!!」

 

「了解っ!!」

 

典子が続けてそう言うと、忍が八九式をⅣ突の背後へと回り込ませようとする。

 

「………停車」

 

一方久美は、何を思ったか煙が充満している中でⅣ突を停車させる。

 

「…………」

 

そして一瞬周囲を見回したかと思うと、静かに目を閉じた………

 

周辺からは八九式のエンジン音は聞こえない………

 

しかし、久美はまるで意識を集中させるかの様に目を閉じ続ける。

 

と、その時!!

 

久美の額の辺りで、スパークが走った様に見えた!

 

「! 右35度っ!!」

 

「てゆ~か、予感的中!」

 

そして久美の指示が飛ぶと同時に、茂亜がその方向へⅣ突を旋回させる。

 

「撃つよっ!!」

 

車体が静止した瞬間に冬子が発砲!

 

砲撃が煙幕を切り裂く!!

 

そして、飛翔する砲弾によって切り裂かれた煙幕の先には………

 

八九式の姿が在った!!

 

「「「「えっ!?」」」」

 

アヒルさんチームの驚きの声が挙がった瞬間………

 

Ⅳ突の砲弾は、八九式の右側面に吸い込まれる様に命中!

 

「「「「わあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!」」」」

 

アヒルさんチームの悲鳴が響く中、八九式は勢い余って横に1回転すると、横倒しとなる。

 

そしてそのまま、上にしている側面部から白旗を上げた。

 

「ゲロゲロリ………戦いは非情であります」

 

「流石です~! 部隊長さ~んっ!!」

 

久美がニヒルな笑みを浮かべてそう言うと、玉枝が手放しでそう褒めて来る。

 

「さてと………コレで大洗の戦車は残り2輌………茂亜殿。例の地点へ向かって欲しいであります」

 

「りょ~かい。てゆーか、先見之明?」

 

とそこで、久美はそう指示し、Ⅳ突をある地点へと向かわせるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

他の場所でも………

 

「ゴ、ゴメン、皆………」

 

「Oh no………」

 

倒れ伏し、戦死判定を受けている弁慶とジャクソンがそう呟く。

 

「クッ………」

 

「エ、エース先輩………」

 

「…………」

 

その光景に、エースが苦い顔を浮かべ、勇武が若干慄き、光照も生唾を飲み込む。

 

「フン………この程度か」

 

その倒れている弁慶とジャクソンの傍に立つ義炉太。

 

その右手にはMG42。

 

左手にはMP40が握られている。

 

更に、パンツァーファウスト、フリーガーファウスト、パンツァービュクセ、ワルサーGew43半自動小銃、収束手榴弾、M41火炎放射器等々………

 

全身にコレでもかと言うくらいに武器を携帯している。

 

「何て重武装なんだよ………」

 

「…………」

 

圭一郎がその姿にそう呟き、陣も僅かに目を見開いている。

 

「俺は黒森峰1の武器のスペシャリストだ。戦場に於いて火力は有り過ぎて困る事など無い」

 

武器と同じく全身に携帯している弾薬やら何やらをジャラジャラと鳴らしながら義炉太はそう言い放つ。

 

「武器は状況に応じて適切に運用出来てこそだ。沢山携行すれば良いというものではないだろう」

 

とそこで、大詔が義炉太に向かってそう言い放つ。

 

「貴様………」

 

途端に、義炉太は大詔を睨みつける。

 

「如何やら貴様とはキッチリとケリを付ける必要が有りそうだな」

 

「同感だな………」

 

「何より………」

 

「?………」

 

「貴様の声が気に食わん! 俺の苦手な兄貴に似ていてなっ!!」

 

「妙な因縁を付けられたものだ………」

 

妙に個人的な因縁を付けられながら、大詔はブローニングM1918自動小銃を構えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更に、別の場所でも………

 

「ソイヤッ!!」

 

「うわあっ!?」

 

1メートル近く有りそうな巨大な風魔手裏剣を投げつけ、武志を戦死判定にする泥川。

 

「東郷さんっ!」

 

「チイッ! 忍術使いはあの覆面だけやなかったんかっ!!」

 

竜真が声を挙げ、大河が舌打ちしながらそう言う。

 

「千霞先輩を破ったのは見事でござった………しかし、この泥川。易々とやられはしないでござるぞ」

 

泥川は右手に小太刀を逆手に握りながらそう言い放つ。

 

「OH my God………」

 

「黒森峰はニンジャの学園っすか!」

 

その様に、ジェームズと正義が若干の戦慄を見せる。

 

「良かろうっ! 黒森峰のニンジャ! お主の生体反応のデータを取りつつ、神の世界への引導を渡してやるっ!!」

 

しかしそんな中で、逆に闘志を燃え上がらせている月人。

 

アドレナリンの過剰分泌か、手にしている日本刀をブンブンと振り回している。

 

「………奇怪な御仁も居られるでござるな」

 

そんな月人の様子に、流石の泥川もリアクションに困るのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして更に別の場所にて………

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

十河、清十郎、拳龍、逞巳、秀人、俊の面々を中心にした小隊規模の大洗歩兵達が、何やら空地らしき場所の中心で固まっている。

 

遮蔽物も何も無い空き地の中心でジッとしているなど有り得ない事だが、そうしなければならない理由が有った………

 

良く見れば、全員が緊張した面持ちで冷や汗をダラダラと掻いている………

 

「うわああっ! もう駄目だっ! こんなとこでジッとしていたら気が狂いそうだぁっ!!」

 

と、1人の大洗歩兵が、我慢出来なくなった様に一団の中から走って抜け出そうとする。

 

「! オイ、待てっ!!」

 

慌てて俊が止めようとしたが、その大洗歩兵は一団の中から抜け出し、空き地の一角の地面を踏む。

 

その途端!!

 

地面から竹やり………に見立てた竹が飛び出して来る!!

 

「!? ゴフッ!?」

 

真面に喰らった大洗歩兵はバタリと倒れ、戦死判定となる。

 

更に、その大洗歩兵が倒れた地面がカチリと言う音を立てたかと思うと、空き地を薙ぎ払う様に鉄骨が横薙ぎに振るわれる!

 

「! 伏せろっ!!」

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

十河の号令で一斉に伏せようとする大洗歩兵の一団だったが………

 

「「「「「ぐあああああああっ!!」」」」」

 

反応の遅れた数名が喰らってしまい、ボールの様にブッ飛ばされる。

 

そして、そのブッ飛ばされた大洗歩兵達が叩き付けられた地面には………

 

何と地雷が埋まっており、ブッ飛ばされた大洗歩兵達は全員確実に戦死判定となる。

 

「クソッ! まんまと敵の術中に嵌っちまうなんて………」

 

『クックック~………来流矢様の特製トラップゾーンは如何だ~? 言って於くが、簡単には抜け出せねえぜぇ~』

 

秀人がそう口走ると、如何にも嫌なヤツと言う感じの声で、何処からともなくそう言って来る来流矢。

 

「脱出出来るでしょうか?」

 

「…………」

 

それを聞いて、不安そうにそう尋ねて来る清十郎だったが、拳龍は返事を返す事が出来なかったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

遂にその牙を剥いた毛路山小隊。
久美を始め、分隊員達も猛威を振るいます。

しかし、作戦は最終段階。
フラッグ車さえ撃破すれば大洗の勝ちです。
果たして………

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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