ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第205話『因縁、学校を超えてです!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第205話『因縁、学校を超えてです!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒森峰機甲部隊に対する最後の作戦………

 

『フラフラ作戦』、略称『フ号作戦』が決行され………

 

みほはフラッグ車の陽動に掛かり………

 

大洗機甲部隊の面々は、得意のゲリラ戦で市街地へ入り込んだ黒森峰機甲部隊を攪乱する………

 

八九式が歩兵部隊との連携で1両を仕留め………

 

ウサギさんチームのM3リーも撃破されたものの、ヤークトティーガーを道連れにする事に成功………

 

そんな中で………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦車道・歩兵道全国大会の決勝戦の試合会場………

 

陸上自衛隊の東富士演習場・市街地………

 

フラッグ車であるまほのティーガーⅠ、エリカのティーガーⅡ、そしてパンター1両に追われているみほの大洗フラッグ車Ⅳ号。

 

その目的は、フラッグ車のティーガーⅠの誘導にある。

 

現在のところ、その目論みは上手く行っている。

 

だが………

 

『こちらレオポンさんチーム。トラブル発生』

 

「! 如何しましたっ!?」

 

作戦の要であるレオポンさんチームからトラブル発生の報告を受け、みほに緊張が走る。

 

『駆動系の異常だよ。今隠れて随伴歩兵分隊に護衛して貰って修理中。ちょっと時間が掛かるよ』

 

「分かりました。出来る限り急いで下さい」

 

『やってみるよ』

 

ナカジマはそう答えて通信を切る。

 

「ココへ来てトラブルなんて………」

 

「まあ、ココまでが上手く行き過ぎたとも言えるがな………」

 

沙織が焦った様子を見せると、麻子がいつもと変わらぬ調子でそう返す。

 

「………一旦敵を引き離します! 優花里さん! 煙幕をっ!!」

 

「了解っ!!」

 

しかし、みほは冷静に対処。

 

一旦まほ達を引き離す為、スモークディスチャージャーから煙幕を発射。

 

「! 停止っ!!」

 

Ⅳ号が煙幕を噴き出したのを見て、まほは警戒して停止指示を出す。

 

煙幕は一瞬にして広がり、ティーガーⅠ達を覆い尽くす。

 

「歩兵部隊! 防御陣形で展開っ!!」

 

「「「「「「「「「「ハッ!」」」」」」」」」」

 

煙幕に紛れての攻撃を懸念した都草が、随伴歩兵部隊を戦車の周辺に盾として展開させる。

 

そのまま待ち構えるが、何も起きない………

 

やがて、煙幕が完全に晴れると、そこにはⅣ号の姿は無かった。

 

「………逃げたか? 各員、連携を密にして捜索を………」

 

「西住総隊長! 逸見戦車副隊長が居ませんっ!!」

 

「!? 何っ!?」

 

そこで、パンターの車長からそう報告が挙がり、まほが驚きながら振り返ると、その言葉通りエリカのティーガーⅡの姿が無かった………

 

「逸見戦車副隊長、まさかっ!?」

 

「エリカ! 何故だっ!?」

 

みほを追って行ったのだとパンターの車長が推測すると、まほは困惑を隠せずにそう声を挙げる。

 

沸点が低く、嫌味なところの有るエリカだが、決して無能では無い。

 

戦車隊の副隊長と言う立場に居るだけあり、黒森峰の中では自身で考えて判断する事が出来、更に総隊長のまほの命令は順守する。

 

正に副隊長としてはうってつけな人物であった。

 

そのエリカが命令無視をした………

 

まほには到底信じられる行為ではない。

 

一体何が彼女を突き動かしたのか?………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、逃走したⅣ号は………

 

「煙幕から出るぞ」

 

麻子がそう言うと、Ⅳ号が展開させていた煙幕の範囲外へと出る。

 

そこは丁度住宅街を抜ける交差点であり、正面には巨大スーパーマーケット跡と所々に街灯が建っている広い駐車場が広がっている。

 

「右折して下さい。また市街地に入って時間を………!?」

 

一旦抜けた後、再び市街地内へ侵入しようとしたみほだったが、そこで嫌な予感を感じる。

 

「停止っ!!」

 

「!!」

 

みほが叫んだ瞬間に麻子は反応。

 

Ⅳ号が若干前のめりになりながら急停車!

 

その直後!!

 

煙幕の中から砲弾が飛び出して来て、停車したⅣ号のすぐ目の前に着弾した!!

 

あのまま進んでいたら、間違いなく直撃していただろう。

 

「!?」

 

すぐに砲弾の飛んで来た煙幕の方を確認するみほ。

 

その瞬間!!

 

煙幕の中から、ティーガーⅡが現れる。

 

そのキューポラからは、エリカが姿を見せている。

 

「!? エリ………逸見さん!」

 

「意外そうね………そりゃそうよね。私も何で自分がこんな事してるのか疑問に思ってるもの」

 

驚くみほに向かって、エリカは何処か自嘲する様に笑いながらそう言う。

 

「黒森峰戦車部隊の副隊長ともあろう者が命令違反で独断専行………下手したら副隊長解任ね」

 

「…………」

 

「けどね………私は今此処でアンタを倒さなきゃならない………そんな気がしてならないのよ」

 

「逸見さん………」

 

「だから………西住 みほ………私と戦えっ!!」

 

叫ぶ様にそう言い放ち、みほを睨みつけるエリカ。

 

対するみほは………

 

「麻子さん、バックでティーガーⅡを捉えながら駐車場の方へ………隙を見て店内を突っ切って逃げます」

 

「良いのか?」

 

「今優先すべきは、作戦の遂行です」

 

「分かった………」

 

飽く迄フ号作戦を遂行する為、エリカの隙を衝いて逃走を計ろうと、Ⅳ号をバックのまま駐車場へと侵入させる。

 

「なっ!? 逃げる積りっ!? ふざけるんじゃないわよ! 私と戦いなさいっ!!」

 

当然、エリカは怒りを露わにⅣ号を追撃する。

 

「このまま後退! 砲撃をかわしたら、再装填中の隙を衝いて………」

 

「また逃げる積り! あの根暗なむっつり男と付き合い出して、更に性格が暗くなったんじゃないのっ!!」

 

と、口の悪いエリカは深く考えもせず、そんな事を口走ってしまう。

 

「………(ビキッ!)」

 

「!? ひいっ!? に、西住殿っ!?」

 

その瞬間、優花里は確かに見た………

 

みほの米神に………

 

怒りの青筋が浮かぶのを………

 

「………撃てっ!!」

 

「えっ!? あ、ハイッ!!」

 

突然砲撃命令が走り、華が一瞬戸惑いながらも反応し、Ⅳ号が発砲。

 

「!? ガフッ!?」

 

その砲弾はティーガーⅡの砲塔左前側面に当たり、明後日の方向に弾かれたものの、不意を衝かれた事でエリカの反応が遅れ、対ショック姿勢が出来ていなかった為、砲塔上部装甲とキスする。

 

「~~~~~ッ!」

 

予想外の痛みに少し悶絶しながらも、すぐに身体を起こし、顔を手で押さえながらみほを再度見やる。

 

「…………」

 

するとみほのⅣ号は何時の間にか停まっており、そのキューポラから姿を見せているみほは顔を伏せている。

 

「逸見さん………さっき根暗なむっつり男とか言ってたけど………まさか弘樹くんの事を言ったんじゃないよね?」

 

穏やかな口調でそう問い質すみほ。

 

「あわわわ………」

 

「み、みほさん………」

 

「み、みぽりん………」

 

「…………」

 

だが、車内のあんこうチームは気が気でない。

 

何故なら、今のみほからは凄まじい怒気が溢れていたからだ………

 

「それ以外に誰が居るって言うのよっ!!」

 

しかし、距離が離れていた為、その様子に気づかなかったエリカはそう言ってしまう。

 

その瞬間!!

 

「………絶対に許さないっ!!」

 

みほは鬼の形相を浮かべた顔を上げ、エリカを睨みつけた!!

 

「!? ヒイイッ!?」

 

その表情を見たエリカは情けない悲鳴を挙げて狼狽する。

 

いつも穏やかで、決して人に対して敵意を向ける様な事など絶対にしないみほ………

 

そのみほが、黒森峰時代はおろか大洗に転校してからも決して見せた事が無い怒りの表情………

 

それは、まるで普段の穏やかさに反比例するかの様に凄まじいモノだった。

 

「う、うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!」

 

その恐怖を振り払う様に、エリカは雄叫びを挙げてティーガーⅡを突撃させる!

 

「このおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!」

 

それに対し、みほもⅣ号を突撃させた!!

 

Ⅳ号とティーガーⅡが高速で擦れ違う!

 

その後、Ⅳ号は砲塔を後ろに回して砲撃!

 

だが、ティーガーⅡは超信地旋回で正面を向け、Ⅳ号の砲弾を弾き飛ばす!

 

「いつもいつも私にばかり噛み付いてきてぇっ! 骨にでも噛み付いてれば良いんだっ!!」

 

そこで、Ⅳ号は横へと移動を始める。

 

「! 何ですってっ!!」

 

ティーガーⅡもそれを追う様に移動し始め、両者は同航戦の様な状態となる。

 

「お正月行事の時のチキンレースだって! 私が勝ってたのに、エリカさんがイチャモン付けたからぁっ!!」

 

やがて、Ⅳ号がティーガーⅡとの距離を詰め始める。

 

「先にブレーキ踏んだのはアンタでしょうっ! 昔の事まで捏造するわけっ!?」

 

するとティーガーⅡの方も距離を詰め始め、両者はマニューバのシザーズの様に交差する。

 

「私が貸したCD! 未だに返さないのはエリカさんでしょっ!!」

 

やがて、小回りの利くⅣ号が、ティーガーⅡの後ろを取る!

 

「アンタが勝手に黒森峰から居なくなったからよっ!!」

 

「クウッ!………食堂で2回、御飯奢ったよぉっ!!」

 

そして、ティーガーⅡに向かって、優花里による素早い装填による2連射をお見舞いする。

 

だが、ティーガーⅡは急減速したかと思うと、Ⅳ号が予測進路上に向かって放った砲弾は外れ、更にⅣ号がティーガーⅡを追い越してしまう。

 

「私は13回奢るハメになったぁっ!!」

 

エリカの怒声と共に、ティーガーⅡの主砲が火を噴き、砲弾がⅣ号へと向かう。

 

「勝手に賭け試合して、負けた結果でしょうーっ!!」

 

しかし、Ⅳ号は右の履帯を停止させると、左の履帯から火花を散らせながらの信地旋回を行い、紙一重でかわす。

 

そしてⅣ号はティーガーⅡへと突撃を行い、ティーガーⅡはそれから逃れる様に移動を始め、戦闘機のドッグファイトの様になる。

 

「「わああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!!」」

 

すると、熱くなっているのか、みほとエリカは、互いに効果・意味が無いと分かっていながらも、機銃架の機銃を相手の戦車に向かって発砲する。

 

互いの装甲表面で、機銃弾が火花を散らして弾かれる。

 

その内、両者は再びシザーズに突入する。

 

「学園祭の時、私が乗る予定だった戦車のトランスミッション壊したのもアンタでしょうっ!!」

 

「知らないよっ!!」

 

「惚けるなぁっ!!」

 

再びエリカの怒声と共に、ティーガーⅡが発砲!

 

砲弾は外れ、お返しにとⅣ号が発砲するが、砲塔の装甲で弾かれる。

 

「全く! アンタって奴はっ!!」

 

するとそこで、ティーガーⅡは地面に向かって発砲!

 

放たれたのは榴弾だったらしく、派手に爆発して粉煙と爆煙を巻き上げるっ!!

 

「!!」

 

その粉煙と爆煙で一瞬ティーガーⅡを見失うみほ。

 

すると、左側面側の煙が僅かに揺らいだ。

 

「! 後退っ!!」

 

それに気づいたみほが空かさず叫ぶと同時にⅣ号は後退。

 

次の瞬間には、煙を吹き飛ばす様に突っ込んで来たティーガーⅡが、先程までⅣ号が居た場所を通過する。

 

戦い自体はハイレベルなものの、両者の言い合いが非常に低レベルな為、観客席からも時折笑い声が挙がっている。

 

「アンタは何時だって! 私の大切なモノをブチ壊すっ!!」

 

「はあっ!?」

 

「私の、大切なモノをぉっ!!」

 

すぐさま砲塔を旋回させるティーガーⅡだったが………

 

「煩いっ!!」

 

その前にⅣ号が放った榴弾が命中!

 

「!? わっぷっ!?」

 

爆風に晒されたエリカは、略帽が吹き飛び、顔中が煤だらけになる。

 

「このっ!!」

 

反撃にと撃ち返すティーガーⅡだったが、Ⅳ号は榴弾を撃ち終えた時点で移動しており、砲弾は虚しく空を通り抜けた。

 

「去年のあの決勝戦だって! アンタさえ! アンタさえ居なければぁっ!!」

 

Ⅳ号を追うティーガーⅡ。

 

その時、エリカの脳裏には、走馬灯の様に自身の過去が浮かんで来る………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

逸見 エリカは子供の頃から戦車道を嗜んでいた………

 

だが、当時の彼女に求道精神などは無く、只自分の強さを見せつける、自分が勝って良い気持ちになりたい………

 

そして勝つ事によって皆に認められたい………

 

そんな思いで戦車道をしていた………

 

しかし、小学生の頃、率いていたチームは連戦連勝………

 

向かう所敵無しだった………

 

当時の担任は、彼女に中学生までの本格的な戦車道クラス・『ユースチーム』への参加を進めた………

 

そして、そこで初めて出会った、当時中学1年だったまほに、完膚無きにまで打ちのめされた………

 

納得が行かなかったエリカは、自分が得意なルールでの再戦を申し込む………

 

だが、結果は同じだった………

 

2度の敗北を晒したエリカを待っていたのは、チームメイト達の嘲笑だった………

 

今までエリカのお蔭で勝てていたと言うのに、敗北した途端にチームメイト達は掌を返し、陰でエリカを愚弄した………

 

エリカは何も言い返せなかった………

 

負けたのは事実であるから………

 

けれでも、そんなエリカを救ったのが他ならぬまほだった。

 

陰口を叩いていたチームメイト達を一喝。

 

『これから先、お前達が戦車道を続けるなら、自らに求道精神を持て!! そしてお前達も本気で足掻いて見せろ! 逸見の様に!!』

 

それをコッソリと聞いていたエリカは、まだ短い人生だが、かつてない感動を受けた………

 

そしてそれが、彼女がまほに憧れ、尊敬し始めた切っ掛けであった………

 

『強さ』の意味………

 

自分自身の『戦車道』………

 

それがまほとなら見つけられる………

 

エリカはそう確信していた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、中学生になった彼女は………

 

猛勉強の甲斐あり、見事に黒森峰学園の中等部へ進学………

 

憧れのまほと同じ戦車チームへと入る事になった………

 

そんなエリカの前に現れたのが、みほだった………

 

まほの実の妹でありながら、毅然としている彼女と違い、いつもオドオドとしていて頼りない………

 

だが、戦車道の実力は姉譲り………

 

いや、西住流と言う縛りが無ければ、姉以上かも知れない………

 

そんな彼女が即座に副隊長となったのは当然だったかも知れないが………

 

エリカは納得が行かなかった………

 

尊敬するまほの妹でありながら、まほとは何もかもが違い過ぎる………

 

にも関わらず、彼女の隣に立てる実力を持っている………

 

それがエリカにはどうしても納得出来なかった………

 

彼女は、事ある毎にみほと衝突した………

 

そして、高校へと上がり、あの決勝戦で………

 

10連覇を掛けた試合で負けた………

 

みほが水没した戦車の仲間を助ける為に、フラッグ車の指揮を放棄して………

 

そして彼女は、黒森峰から去った………

 

かと思いきや、大洗と言う無名のチームの総隊長となって再び現れ………

 

剰え、決勝まで勝ち進んで、黒森峰と………

 

自分と対峙した………

 

今、自分達の黒森峰は没落の一途を辿っていると言うのに………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在………

 

「アンタさえ………アンタさえ居なければぁっ!!」

 

エリカの叫び声と共に、ティーガーⅡが発砲!

 

「!?」

 

その砲弾が、Ⅳ号の後部に迫ったかと思うと、Ⅳ号が煙に包まれた!!

 

「停止っ!!」

 

即座にティーガーⅡを停車させるエリカ。

 

煙は辺りに充満する。

 

(エンジン音は聞こえない………やったの?)

 

Ⅳ号のエンジン音が聞こえない事から、仕留めたのだと思うエリカ。

 

「…………」

 

しかし、その瞬間にエリカに込み上げて来たのは、虚無感だった………

 

遂に憎い相手を討ち取り、黒森峰に再び勝利を齎した………

 

その筈なのに………

 

虚しかった………

 

試合開始当初、100両と言う大部隊だった黒森峰機甲部隊………

 

しかし、みほの策にまんまと嵌り、大洗の8両を撃破出来ず、逆に次々に撃破されていった………

 

超重戦車軍団の投入で漸く撃破を奪ったかと思いきや、大洗を助けにやって来た者達により、黒森峰は一気に壊滅状態………

 

そう………

 

この試合………

 

黒森峰は、西住流は、そしてエリカは………

 

何1つとして勝ってなどいない………

 

只々力押ししただけだ………

 

(コレが………私の求めた戦車道だって言うの………)

 

虚無感を抱えたまま、エリカは天を仰ぐ。

 

………と、その時!!

 

ティーガーⅡの左側の煙が揺らめいた!!

 

「………えっ?」

 

呆けた声を挙げたエリカの前に現れたのは………

 

横滑りしているⅣ号だった!!

 

「!?」

 

「撃てっ!!」

 

エリカがハッとした瞬間に、Ⅳ号は発砲!

 

放たれた砲弾は、ティーガーⅡの後部・エンジンルームへ吸い込まれる様に命中!

 

爆発と振動がティーガーⅡを揺さぶり、そして砲塔上部から白旗が上がった!!

 

それを確認し、横滑りしていたⅣ号は、ブレーキを掛けて停まる。

 

「…………」

 

車内にずり落ちていたエリカが這い出る様に再びキューポラから姿を見せる。

 

「…………」

 

そして、自分のティーガーⅡに上がっている白旗を見た後、Ⅳ号を………みほを見た。

 

「………エンジンを切って、惰性で動いていたワケね。この煙も着弾煙じゃなくて煙幕だったのね」

 

悟ったかの様な笑みを浮かべて、エリカはそう言う。

 

「…………」

 

そんなエリカを正面から見据えるみほ。

 

「分かってたわよ………私がアンタに噛み付いてたのは只の妬みだって事ぐらい………でも、そうでも思わなきゃやってられなかった………」

 

吐露する様にポツリポツリと語り出すエリカ。

 

「アンタも私の事、恨んでるでしょ? 散々嫌味なこと言って、勝手な思い込みの理想像を押し付けられて………私は」

 

「………中学の時、エリカさんが乗る筈だった戦車の駆動系壊したの、私なんです」

 

「えっ?」

 

突然みほがそう言って来て、エリカは驚く。

 

「あの戦車、昔っから乗ってみたくて………ちょっとだけ試し乗りしたら、勢い余って………」

 

「アンタ………」

 

「過ぎた事は忘れましょう」

 

「…………」

 

「………ゴメンなさい」

 

そう言って頭を下げるみほ。

 

「………まだ有るんじゃないの?」

 

するとエリカは、意地悪そうな笑みを浮かべてそう返す。

 

「………エリカさんって、ホント嫌な人だね」

 

「知ってるでしょう?」

 

「「…………」」

 

無言で見つめ合う2人。

 

「ふ、ふふふ………」

 

「ハハハハ………」

 

「「アハハハハハハッ!」」

 

やがて、どちらからともなく笑い合った。

 

「………何だかんだ言って、結局仲が良いんだね」

 

「ですね」

 

「ハイ」

 

「ん………」

 

そんなみほとエリカの様子に、沙織、優花里、華、麻子の面々も、自然と笑みを浮かべる。

 

「………行きなさいよ。けど、総隊長に勝てるなんて思わない事ね。あの人は最強よ」

 

「それは私が良く知ってるよ」

 

そして、最後にそう言い合うと、みほはⅣ号のエンジンを再スタートさせ、その場から離れて行った。

 

「…………」

 

それを見送り、エリカは再び天を仰ぐ。

 

しかし、先程とは違い、充実した気持ちで………

 

「総隊長………申し訳ありません………後は宜しくお願い致します」

 

そして空に浮かんだまほの姿に向かって、そう呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

予告していたみほVSエリカの戦い………
如何見ても『マクロスプラス』です!
本当にありがとうございました(笑)

いや~、YF-19(イサム)VSYF-21(ガルド)見ていたら、『このシーンをみほとエリカに置き換えてみたい』と思い至りまして。
何かと因縁の深い2人ですが、やはりこういう事に決着を着けるには、少年漫画的ですが腹の内を曝け出しながらとことんやり合うのが良いと思いまして。
最後に2人で笑い合ったシーンは我ながら書いてて満足度が高かったです。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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