ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース 作:宇宙刑事ブルーノア
『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』
第191話『決戦前夜です!(中編)』
いよいよ明日へと迫った戦車道・歩兵道の決勝戦………
大洗機甲部隊の前に、最大の敵………
黒森峰機甲部隊が立ちはだかる………
そして、その夜………
大洗の面々は様々な思いを抱きつつ………
決戦前の夜を過ごすのだった………
大洗学園艦・甲板都市の一角………
とんかつレストラン『Cook Fan』の店内………
そこには、杏、桃、柚子、蛍、迫信、熾龍、逞巳、俊、元姫の姿が在った………
「明日は勝つてよー! コレ、奢りねっ!!」
オーナーの男性がそう言って、杏達に前に戦車を模したとんかつを置いて行く。
大洗機甲部隊の快進撃を見て、オーナーが考案したメニューで、かなり好評らしく、日に必ず何度も注文が入る品らしい。
「今日はカツカツ食べて、明日頑かつてーっ!!」
「ありがとうございます」
「頑張るよー」
オーナーの台詞に、柚子と杏がそう返事を返す。
「おお~、カツこ良いね~」
「………カツカツ言えば良いモノじゃない!」
と、オーナーが余りにカツに掛けたダジャレを言うのに辟易したのか、桃がそう声を挙げる。
「河嶋、そうカツカツするな」
「会長まで!………!? もがっ!?」
「黙って食え………」
それを杏が諌める様に言い、桃が食い下がった瞬間に、熾龍が桃の口にとんかつを押し込んだ。
「!??!?!」
揚げ立てアツアツのとんかつをいきなり口の中へ突っ込まれた桃は、椅子から転げ落ち、口を押えて転げ回り、悶絶する。
「お約束だな~」
「ハイ、俊、あ~んして」
「あ~ん」
そんな桃を冷ややかに見ながら、ナチュラルに元姫とイチャついている俊。
「こんなところでイチャつかなくても………」
「逞巳くんもやってみる?」
「何ですとぉっ!?」
そんな俊と元姫の様子に呆れていた逞巳だったが、柚子からそう振られて、思わず素っ頓狂な声を挙げてしまう。
「…………」
一方、そんな中で1人、真剣な表情をして、手にしているスマホを弄っている迫信。
「迫信様? 如何しました?」
「迫信~、食事中にスマホは行儀悪いよ~」
その様子に気づいた蛍が声を掛け、杏もそう言い放つ。
「ああ、すまない。では、食事を楽しむとしようか」
言われた迫信はスマホを仕舞い、食事を始める。
直前に消したスマホの画面には、『調査報告書』と書かれた画面が映っていたが、気づいた者はいなかった………
大洗女子学園・体育館………
「ハイッ!」
「ホッ!」
「ハッ!」
「そーれっ!!」
まだ明かりが点いて居る体育館内では、典子、妙子、あけび、忍のバレー部が、バレーの練習をやっていた。
「良いのか? 大事な試合前にこんな疲れる様な事していて………」
「典子ちゃん達の場合、ああやって身体を動かしている方が落ち着くみたいだからね」
その手伝いをしていた秀人がそう言うと、武志がそう返す。
「それにアイツ等の体力は底無しや。これぐらいで明日に差し支えたりはせえへんって」
「否定出来ないところが恐ろしいな………」
続いて大河がそう言うと、大詔がそうツッコミを入れる。
「皆の衆~。夕飯を買って来たでござるよ~!」
「コレを食って明日も勝つぞ! ガハハハハハッ!!」
とそこで、夕食の買い出しへ行っていた小太郎と明夫が帰って来る。
彼等が持つビニール袋の中には、大量のカツサンドが入っていた………
艦舷の公園………
「明日が決戦だな………」
「関ヶ原の戦いか………」
「いや、戊辰戦争ぜよ」
「坊ノ岬沖海戦だ」
「「「それだっ!!」」」
ベンチに腰掛け、かつ丼を頬張りながら、何時もの調子を見せているカエサル、左衛門佐、おりょう、エルヴィンの歴女チーム。
「いや、それ特攻作戦じゃないですか」
「ハハハハ! 良いじゃないか、盛り上げれば!!」
同じくベンチに腰掛け、かつ丼を食していたエグモントがそうツッコミを入れると、ハンネスが豪快に笑いながらそう言う。
「お~い、飛鳥~。お茶くれぜよ」
「あ、ハイ。只今」
とそこで、おりょうがそう言うと、飛鳥が食事を中断しておりょうの紙コップにお茶を注ぐ。
「すっかり尻に敷かれてますねぇ」
「当然ぜよ。乙女にあんな真似をしたんだぜよ」
エグモントがそう指摘すると、おりょうはしたり顔でそう言い放つ。
「うう! だから何度も謝ってるじゃないですか!」
「文句あるぜよか?」
「………無いです」
抗議の声を挙げる飛鳥だったが、負い目と罪悪感もあるので、強くは出れないのだった。
「よろしいぜよ。序に肩でも揉んでもらおうかぜよ」
「ええっ!? そ、それは………」
「ハハハ! 冗談ぜよ! 何本気にしてるぜよ!」
「お、おりょうさ~ん」
何とも情けない声を挙げる飛鳥。
(((………年下の彼氏をからかってるみたいだな)))
そんなおりょうと飛鳥の様子を見て、そんな感想を抱くカエサル、左衛門佐、エルヴィンだった。
戦車格納庫内………
「テメェ等ぁっ! 明日はいよいよ決戦だぁっ!! いつも以上に念入りに整備しておけっ!! 適当な事やってる奴は、海に叩き込んで、鮟鱇の餌にしてやるぞぉっ!!」
「「「「「「「「「「ハイ! 副部長っ!!」」」」」」」」」」
藤兵衛の号令の元、明日に向けていつも以上に入念な戦車や武器の整備が行われている。
「張り切ってるね~、志波くん」
「明日が決戦だからね」
「そうそう」
その様子を見ていた、ポルシェティーガーの整備を行っていたナカジマ、スズキ、ツチヤがそう呟く。
「君達ももう休んだら如何だい? 後は我々が引き受けよう」
そんなナカジマ達に、敏郎がそう声を掛ける。
「いやいや、自分達が乗る戦車ぐらいは自分達で整備したいからね」
「この子、私達が見てやらないとすぐにグズるからね~」
「自動車部の意地ってヤツ~?」
しかし、ナカジマ、スズキ、ツチヤはそう返す。
「そうか………」
それを聞くと、敏郎は何も言わず、ナカジマ達の整備を手伝い始めるのだった。
「お~い、買って来たよ~」
「一息入れましょうか」
とそこで、買い出しに出ていたホシノと速人が戻り、カツカレー弁当を皆に見せる。
「おお~! 待ってましたっ!!」
「やっぱりこういう日はカツだよな~」
それを見た整備部員達が寄って来て、一同は一旦休憩に入る。
「浅間くん。君も休んだら如何かね?」
「…………」
敏郎は格納庫の片隅で、ラハティ L-39 対戦車銃を整備していた陣に声を掛け、陣は整備の手を止めて、一同に加わるのだった。
演習場………
月明かりだけが照らす演習場に停められている三式中戦車改とBT-42。
「…………」
BT-42の砲塔の上にはミカが腰掛け、カンテレを鳴らしている。
「相変わらず良いな。ミカのカンテレは」
その隣に腰掛けているシメオンが、その音色を聴きながらそう漏らす。
「ふふ、そうかい?」
何時もと変わらぬ調子でそう返すミカだったが、カンテレの音色の方は僅かに変化する。
「…………」
だが、シメオンはそれを指摘する様な真似はせず、只黙ってミカの演奏に耳を傾けている。
「…………」
そしてミカも、シメオンの方へと身体を預けながらも、演奏を続ける。
「「…………」」
カンテレの音色が響く中、2人の間に穏やかな空気が漂う。
一方、三式中戦車改の方でも………
「ねこにゃーさん、すまない………」
「えっ!? な、何がですか?」
砲塔の上に腰掛けていた六郎が突然謝り、ねこにゃーが困惑する。
「決勝の舞台には、我々は出る事が出来ない………無念だ!!」
心底無念そうにそう言い、拳を握り締める六郎。
「し、仕方ないですよ。山岳波があるんですから」
「それでも! 只見ている事しか出来ぬと言う歯痒さは抑えきれんっ!!」
「六郎さん………」
そんな六郎の姿を見て、ねこにゃーは如何すれば良いかと困惑する。
「…………」
すると、何かを思い付いたかの様な表情となったかと思うと、六郎の事を見ては視線を反らすと言う行為を数回繰り返した後………
六郎の手に自分の手を重ねた。
「! ねこにゃー殿!」
「だ、大丈夫ですよ。僕達は必ず勝ちます。だから、六郎さんは信じて見守っていて下さい」
驚く六郎に、ねこにゃーは精一杯の事を伝える。
「…………」
六郎は暫し、ねこにゃーの事を見つめていたかと思うと………
やがて不意を衝く様にねこにゃーを抱き締めた!
「!? ふええっ!?」
「抱きしめたいなぁ、ねこにゃーっ!!」
「も、もう抱き締めてます~っ!!」
そう叫ぶ六郎に、ねこにゃーは顔を真っ赤にして、頭から湯気を吹き出しながらツッコミを入れるのだった。
「ねこにゃーもすっかりリア充ナリ」
「羨ましいだっちゃ」
そんなねこにゃーと六郎の姿を見て、ももがーとぴよたんが串カツを頬張りながらそう漏らす。
「お互いお熱い友達が居ると苦労するね~」
「ミカったら、私達とシメオンとで露骨に態度変えるんだから………」
そんなももがーとぴよたんに同意の声を漏らすミッコとアキ。
「さあ、ドンドン食べてね~」
「私と弁慶くんの特製串カツだ。存分に堪能してくれたまえ」
そしてそんな一同に、次々とその場で串カツを調理して差し出す弁慶とゾルダートだった。
大洗女子学園・風紀委員詰所………
「応援の心得………ヤジは飛ばさない………フラッシュは焚かない………被り物禁止………」
「そど子~、まだやるの~?」
「もうその辺にしようよ~」
決勝戦での応援のルール作りをしているみどり子に、モヨ子とパゾ美がそう言う。
「何言ってるのっ!? 何時如何なる時であろうと風紀を取り締まる! それが私達風紀委員よっ!!」
だが、みどり子はそう言って、応援のルール作りを続ける。
「それで明日の試合に支障が出てしまっては元も子もないのではないか?」
「!?」
とそこで、そう言う声が聞こえて来て、みどり子が驚きながら振り返ると、そこには紫朗、十河、鋼賀の姿が在った。
「十河さん!」
「鋼賀さんも」
「やあ、パゾ美ちゃん」
「差し入れだ。遠慮無く食べてくれ」
モヨ子とパゾ美が声を挙げると、鋼賀と十河がそう言い、トンカツバーガーと飲み物の入った袋を差し出す。
「さ、みどり子くん。君も………」
紫朗もそう言い、みどり子にトンカツバーガーと飲み物の入った袋を差し出すが………
「い、要らないわよ! アンタからの差し入れなんて!!」
みどり子は意地を張り、そんな事を言う。
「そど子~、遠慮しない方が良いよ~」
「そうだよ。お腹空いてるんでしょう?」
既にトンカツバーガーに手を付けているモヨ子とパゾ美が、みどり子にそう言う。
「あ、貴方達! 貴方達には風紀委員としてのプライドが………」
と言い掛けた瞬間、みどり子の腹の虫が鳴いた。
「!?」
途端に、みどり子は真っ赤になって縮こまる。
「………風紀委員たるもの、規則正しい生活をするものだ」
「な、何よ、突然!?」
そこで、不意にそんな事を言い出した紫朗に、みどり子は困惑する。
「なら夕食をキチンと食べる事も風紀を守る一環じゃないのか?」
そう言って、改めてトンカツバーガーと飲み物の入った袋を差し出す紫朗。
「…………」
そう言われてみどり子は、暫し紫朗の事を見つめる。
「そ、そうね! コレは飽く迄風紀を守る為よ! そうなんだからね!!」
やがて誰に言うでもなくそう言って、そっぽを向いたまま紫朗からトンカツバーガーと飲み物の入った袋を受け取る。
((素直じゃないな~………))
そんなみどり子の姿に、内心で呆れるモヨ子とパゾ美だった。
ジェームズ邸………
その1室では、梓、あゆみ、紗希、桂利奈、優季、あやに、家主であるジェームズを初めとした勇武、光照、竜真、清十郎、正義、圭一郎の面々が戦争映画の鑑賞会を行っていた。
明日の決勝戦で、何か使えるアイデアがないか、映画からヒントを得ようとしているのである。
「「「「「う、ううう………」」」」」
「…………」
その最中、映画の内容に感動したウサギさんチームの面々が、紗希を含めて思わず涙を流し始めている。
尚、ウサギさんチーム全員の手には、駄菓子のカツが握られている。
(今の映画にそんなに感動出来る場面、在ったっけ?)
しかし、勇武は見ていた映画がどちらかと言うとコメディーよりな作品だった為、ウサギさんチームの泣き所が分からず、困惑している。
「今更だけどよぉ、戦争映画で戦うヒントが掴めるのかねぇ?」
そこで圭一郎が、今更ながらその点を指摘する。
「気持ちが纏まると言う点なら大成功じゃないですか」
その圭一郎に、感動しているウサギさんチームの様子を見ながら清十郎がそう返す。
「ゴメンよ、ジェームズ。いきなりこんな事したいって、上がり込ませて貰っちゃって」
「ナニ言ってるデスか。僕達はフレンズです。気にしないで下さい」
竜真は、急にジェームズ邸に転がり込む事になった事を家主のジェームズに詫びるが、ジェームズは気にしていないと返す。
「泣いても笑っても、明日がエンドです。なら、後悔しないよう、やりたい事をやっておきまショウ」
「ジェームズ………」
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
ジェームズがそう言うのを聞いて、他の一同もその表情を引き締める。
それは紛れも無く………
1人前の戦車乗りと歩兵の顔だった………
大洗女子学園・講堂………
「ワンツー! ワンツー! ワンツースリーッ!!」
聖子の掛け声に合わせ、ステージ上でステップを踏んでいるサンショウウオさんチームの面々。
「よーし! 今のところをもう1回だ!」
「「おうっ!!」」
磐渡、鷺澪、重音のバックバンドメンバーも、傍でチューニングを行っている。
「ハイ、ココで決めッ!!」
と、聖子がそう言ってポーズを決めると、サンショウウオさんチームのメンバーも揃ってポーズを取る。
「里歌さん! 如何かなっ!?」
「………完璧ね。非の打ち所が無いわ」
聖子が尋ねると、里歌は笑いながらそう言う。
「やったーっ!!」
「初めてだねえ。里歌が褒めてくれたのは」
「それも非の打ち所が無いだなんて………結構な評価ですわね」
満里奈が思わず声を挙げると、郁恵と早苗がそう指摘する。
「失礼ね。私だって褒める事ぐらいあるわよ。それに………本当に非の打ち所が無かったんだもの」
「な、何か照れるな、オイ」
里歌がそう言葉を続けると、唯が照れ臭そうにする。
「いよいよ明日は決勝のステージですからね」
「お、お客さんも大勢居る筈です」
「もう私達も立派なスクールアイドルですからね」
静香、さゆり、明菜もそう言い合う。
「幻と消ゆ………今へ溶けゆく運命の森羅万象全てを破壊し得るケッ=ショウ大崩壊後のライブアライブでは、フラッグシップモデルのパフォーマンスを発動戦闘兵器としての完成度………すなわち、闇へと葬られた真実なのです!(訳:明日の決勝戦後のライブでは、最高のパフォーマンスを披露出来ます!)」
今日子も、相変わらずの中二病言葉でそんな事を言う。
「何だか、3人で始めた頃が凄い昔の事みたいだね」
「ホント………ほんの数ヶ月前だと言うのにですね」
伊代と優は、聖子と組んで3人でスクールアイドルを始めた頃が遠い昔の様に思えて、懐かしさを覚える。
「最初は廃校を如何にかしたいって思いで始めたのに………何だか随分と遠くまで来ちゃったなぁ」
聖子もそんな事を言いながら、講堂の天井を見上げる。
「じゃあ、最後に全体合わせをやってみましょうか」
とそこで、機材のチェックをしていた灰史が、そう言って来る。
「おう! コッチは良いぜっ!」
「うん! それじゃあ、行ってみ………」
「HEーY! 今帰ったネ!」
「コレで全員分か?」
と磐渡と聖子が返事をした瞬間に、講堂内にジャクソンとシャッコーが姿を見せた。
その両手には、買い物袋が握られている。
「わ~い! 御飯~っ!!」
途端に、聖子はステージから飛び降りて、ジャクソンとシャッコーの元へと向かう。
「ちょっ! 聖子っ!?」
「あらら~、聖子ちゃんったら、相変わらずだね~」
そんな聖子の姿に、優と伊代が苦笑いする。
「けど、あの方がウチラのリーダーらしいだろ」
「良し、先に夕飯にするか」
唯がそう言うと、磐渡がギターを置き、一同は夕食の『味噌カツ弁当』に手を付け始めるのだった。
他にも、エースが野球場でピッチング練習をしており………
弦一郎は今まで出会ったダチに連絡を取り捲り………
月人が剣道場で只管素振りをし………
誠也が実家の農作業を手伝って居たり………
拳龍は同じく実家の道場で只管座禅を組み………
竜作は自室で仏像やらマリア像やら様々な神や仏の像に祈りを捧げており………
ハンターは月を見上げながら物思いに耽っている。
その誰もが、とんかつ料理を口にしている。
一見バラバラに見えて、大洗機甲部隊は1つに繋がっていた。
そして………
我等が弘樹達とみほ達は………
つづく
新話、投稿させていただきました。
決戦前夜中編、あんこうチームと弘樹達以外の様子をお送りしました。
ホントは1人1人描写したかったのですが、作業量が膨大になり過ぎるのと、この後にメインである弘樹達とみほ達が控えているので、一部メンバーはダイジェストでお送りさせていただきました。
御了承下さい。
さて、次回はいよいよみほ達と弘樹達。
そして注目のメインカップル、弘樹とみほが………
では、ご意見・ご感想をお待ちしております。