ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第190話『決戦前夜です!(前編)』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第190話『決戦前夜です!(前編)』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世間からの非難の声に、評判がガタ落ちした黒森峰は………

 

生徒数と新入予定生の大幅な減少により、廃校を言い渡される………

 

しかし、全国大会で優勝すれば廃校を撤回すると言う役人の言葉に縋り………

 

しほの介入も受けて、ギリギリのところで踏み止まる………

 

一方、そんな黒森峰の事情を知らぬ大洗は………

 

継続高校の歩兵達を招き………

 

対黒森峰戦に向けた特別訓練を開始した………

 

其々の思惑が交錯する中………

 

全国大会・決勝戦の日が迫る………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

茨城県・大洗町………

 

アクアワールド茨城県大洗水族館・入り口………

 

そこには、弘樹、みほ、地市、沙織、飛彗、優花里、白狼、楓、了平の姿が在った。

 

「麻子、遅いなぁ………」

 

「色々あんじゃねえのか? 何せ、お祖母さんがやっと退院なんだからよ」

 

麻子を待っている様子の沙織がそう言うと、地市が口を挟む。

 

そう………

 

1回戦の後に倒れて、入院していた麻子のお祖母さんである冷泉 久子が漸く退院となったのである。

 

病状自体はすぐに安定したのだが、迫信が厚意で神大コーポ―レーションの系列の病院を紹介してくれたので、今までそこで本格的な治療とリハビリを受けていたのである。

 

お蔭で久子は漸く退院となった今、前よりも元気になったと麻子は言っていた。

 

「良かったですね、冷泉さん。お祖母さんが元気になって」

 

「ハイ。冷泉殿、神大さんに物凄く感謝していましたよ」

 

「…………」

 

飛彗の言葉に優花里がそう返すと、白狼も思う様なところがある様な顔をする。

 

と、その時………

 

水族館前のバス停に、バスが停まる。

 

ブザー音がして扉が開くと、風呂敷包みを携えた麻子と、その後ろを気だるげに付いて来る煌人の姿が在った。

 

「待たせたな………」

 

「あ、麻子! お祖母さん、如何だった?」

 

「すっかり元気だよ。アレは後100年は生きるぞ」

 

沙織が尋ねると、麻子はドヤ顔気味の笑顔を浮かべてそう返す。

 

「それで………何でアインシュタインまでそのお祖母さんに呼ばれたんだ?」

 

とそこで、白狼が何故が久子に呼び出された煌人の事について尋ねる。

 

「前に1度話した事があってな………退院する時に連れて来いと言われていた」

 

「煌人さんを? 何でまた?」

 

麻子がそう答えると、飛彗が首を傾げる。

 

「如何も彼氏だと思われたらしくてな。全く面倒な事この上ない」

 

煌人は頭を掻きながら気だるげにそう答える。

 

「そりゃ大変だったな」

 

「全くだ………ファ~~」

 

白狼がそう言うと、煌人は欠伸を漏らす。

 

(ね、麻子。実際のところは如何なの?)

 

とそこで、沙織が耳打ちする様に小声で麻子にそう尋ねる。

 

(? 何がだ?)

 

(何って、平賀くんとだよ! 本当は付き合ってるの!?)

 

麻子が首を傾げると、元々恋愛好きな沙織は、親友の恋路に興味津々な様子でそう言う。

 

(………お前の頭は常にピンク色か?)

 

(何ソレ、ヒドーイッ!)

 

(別に付き合うとか、付き合わないとかは如何でも良い………)

 

(もう~、ハッキリしないんだから~)

 

曖昧な態度の麻子に、沙織はやきもきする。

 

(ただ………)

 

(?………)

 

(アイツと一緒に居るのは………嫌いじゃない)

 

ふとそう零した麻子。

 

その顔には、本人も分からぬ内に笑みが浮かんでいる。

 

(………ま、心配なさそうかな)

 

それを見た沙織はそう判断し、自分も笑みを浮かべるのだった。

 

「ぐぐぐ………周りは皆リア充になって行くのに………如何して、俺だけ………」

 

「了平………もういい加減ツッコミを入れるのも面倒臭いんですけど」

 

そんな沙織と麻子の様子を見ていた了平がお馴染みの血の涙を流し、楓は最早ぞんざいなツッコミを入れる。

 

「ところで麻子さん。その風呂敷包みは?」

 

「ああ、忘れるところだった………おばあから皆に渡してくれって頼まれた」

 

とそこで、みほが麻子が抱えていた風呂敷包みに付いて尋ねると、麻子はそう言って、風呂敷包みを皆に見せる様に開けた。

 

「ほう、おはぎか………」

 

中から出て来た物………おはぎを見た弘樹がそう呟く。

 

「麻子のおばあのおはぎ、とっても美味しいんだよ」

 

「そりゃ楽しみだな」

 

「後で五十鈴殿も一緒に食べましょうね」

 

沙織がそう言うと、地市と優花里が嬉しそうな声を挙げる。

 

「じゃあ、そろそろ行きましょうか………華さんが活けた花を見に」

 

「うん、行こう」

 

飛彗がそう言うと、みほが返事を返し、一同は水族館の中へと入って行く。

 

その入り口には、『華道展覧会、開催中』と言う看板が立てられていた。

 

そう………

 

実は今日、生け花の展覧会が開かれており、華が活けた花も展示される事になっており、みほ達はそれを見に来ていたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アクアワールド茨城県大洗水族館内・生け花展覧会場………

 

「わあ~、素敵~」

 

「お花の香り~」

 

会場内に所狭しと置かれた色取り取りな生け花達と漂って来る香りにみほと沙織が感嘆の声を漏らす。

 

「いつも鉄と油の臭いばかり嗅いでますからね、私達」

 

「俺達は硝煙と炎と火薬の臭いだな」

 

「むせる………」

 

優花里がそう言うと、地市もそんな言葉を漏らし、了平がそう呟いた。

 

「華さんのお花は………」

 

「あ! アレじゃない!」

 

と、みほが華の生け花を探していると、沙織がそれらしき作品を発見する。

 

「「「「「わあ~~っ!」」」」」

 

「コレは………」

 

「凄~いっ!」

 

その華の生け花を見て一同は感嘆の声を漏らし、弘樹も目を見開き、沙織が改めてそう口にする。

 

「戦車にお花が………」

 

「コレは………笠間焼だな」

 

みほが花を活けている花器が戦車の形をしている事に気づき、煌人がその花器が茨城県笠間市周辺を産地とする陶器『笠間焼』である事を見抜く。

 

「来てくれてありがとう」

 

とそこで、そう言う台詞と共に、着物姿の華が姿を見せた。

 

「華さん!」

 

「うおおっ! コレぞ正に和服美人!!………!? ぐえっ!?」

 

「了平、ココでは大声を出さないで下さい」

 

みほが声を掛けると、和服の華に興奮した了平が叫び声を挙げるが、すぐに楓に取り押さえられる。

 

「このお花、凄く素敵です! 力強くて………でも、優しい感じがする」

 

「そう………まるで華さんそのものですね」

 

「…………」

 

みほと飛彗がそう言うと、華は照れた様子を見せる。

 

(………被弾して爆発したみたいだな)

 

(か、神狩殿! しーっ! しーっ!!)

 

一方、空気が読めていない発言をしそうになった白狼を、優花里が慌てて押さえる。

 

「この花は、皆さんが活けさせてくれたんです」

 

「えっ?」

 

「俺達が?」

 

とそこで、華がそう言うと、みほ達は首を傾げる。

 

「そうなんですよ」

 

するとそこで、そう言う台詞と共に、華の母親である百合が姿を見せた。

 

「あ………」

 

「…………」

 

みほが思わず声を漏らし、弘樹が学帽を脱いで頭を下げると、他の面々もそれに倣う。

 

「この子が活ける花は纏まっているけど、個性と新しさに欠ける花でした………こんなに大胆で力強い作品が出来たのは………戦車道のお蔭かも知れないわね」

 

「! お母様………」

 

百合の口から戦車道を認める様な言葉が出た事に、華は軽く驚く。

 

「私とは違う………貴方の新境地ね」

 

「! ハイ!」

 

笑顔で百合がそう言った瞬間、華も笑顔を浮かべた。

 

「おめでとうございます、華さん」

 

それを聞いていた一同の中で、飛彗がいの1番にお祝いの言葉を送る。

 

「ハイ! ありがとうございます、飛彗さん!」

 

華は笑顔のまま、飛彗にお礼を言う。

 

「………華、ちょっと」

 

「あ、ハイ………」

 

とそこで、百合は華の手を引くと、一同から少し離れて、後ろを向いたまま小声を話し始める。

 

(貴方もやっぱり私の娘ね………)

 

(えっ?………)

 

(良い人じゃないの………若い頃のあの人にソックリだわ)

 

飛彗の事を覗き見ながら、華にそう言う百合。

 

(えっ? お父様に?)

 

(ええ………若い頃のあの人は絵草子からそのまま抜け出してきた王子様なんて言われてて、とってもモテたのよ。お母さんは必死になってアピールしたんだから)

 

(ええっ!? そうだったんですか!?)

 

百合と父親の意外な馴れ初めを聞き、華は驚きを露わにするのだった。

 

華のアクティブを求める根底には、案外意中の男性を必死になってものにした母親にあるのかも知れない。

 

「…………」

 

一方、勘当の事など無かったかの様にすっかり仲良さ気に話し合っている華と百合を見て、みほは心の中で華を自分、百合をしほの姿へと置き換える。

 

何時か自分も、あんな風に母親と笑い合える日が来る事を夢見て………

 

と、そのみほの肩に、弘樹の手が置かれる。

 

「あ………」

 

「…………」

 

みほが弘樹の事を見やると、弘樹は無言で頷く。

 

まるでみほの心中を察しているかの様に。

 

「…………」

 

そんな弘樹の姿を見て、みほは安堵の笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからまた日が経ち………

 

いよいよ決勝戦が明日へと迫った………

 

大洗女子学園・戦車格納庫前………

 

「さあーっ! いよいよ決勝戦だよ~っ!! 目標は優勝だからね~っ!!」

 

訓練を終え、集まった大洗機甲部隊の一同を前に、杏がそう言い放つ。

 

「大それた目標なのは分かっている。だが、我々にはもう後が無い。負ければ………」

 

大洗女子学園は廃校になる………

 

改めてその事を確認した一同の表情が引き締まる。

 

「じゃあ、西住ちゃんも何か一言」

 

「へっ?」

 

突然杏にそう振られて、みほが軽く驚く。

 

「舩坂くん。序に君も頼むよ」

 

「小官もでありますか?」

 

更に迫信も、弘樹にそう命ずる。

 

「こういう事は会長がなされた方が………」

 

「確かに纏めるのは私だが、引っ張るのは君の役目だ………皆も待っているぞ」

 

「弘樹くん、お願い出来るかな?」

 

断ろうとする弘樹だったが、迫信に加えてみほもそう言って来る。

 

「………分かった」

 

仕方なく、弘樹はみほと共に一同の前に出た。

 

「明日対戦する黒森峰機甲部隊は………私が居た部隊です」

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

みほがそう話を切り出すと、全員の注目が集まる。

 

「でも、今はこの大洗女子学園が大切な母校で、皆さんが大切な仲間です。勿論、黒森峰の皆にも負い目はあります………でも、それは試合で清算しようと思います。それが私なりの責任の取り方です」

 

(みほくん………)

 

そう言うみほの姿を横目で見やる弘樹。

 

「私も一生懸命落ち着いて、冷静に頑張ります。だから………皆さん! 頑張りましょうっ!!」

 

「大洗の興廃、この一戦にあり! 各員一層奮励努力せよっ!!」

 

「「「「「「「「「「大洗バンザーイッ!!」」」」」」」」」」

 

みほがそう締めると、弘樹も日本海海戦にて東郷 平八郎が言った言葉を捩り、それに合わせて、一同は万歳三唱をした。

 

そして、決勝に向けての最後の訓練が開始された………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後………

 

日が傾き始めた頃、明日の移動に備えて、学園艦が大洗の港に入港。

 

そして、大洗女子学園・戦車格納庫前では、訓練を終えた大洗機甲部隊の一同が再度集合していた。

 

「訓練終了! やるべき事は全てやった! 後は各自、明日の決勝に備える様に!」

 

「「「「「「「「「「ハイッ!!」」」」」」」」」」

 

「もうココまで来たら、後は運を天に任せるだけだ」

 

桃が訓練の終了を宣言し、一同が返事を返すと、俊がそう呟く。

 

「では、解散!」

 

そして、桃が解散を宣言すると、一同は其々に散って行く。

 

「ねえ、みぽりん。舩坂くん」

 

「うん?」

 

「何だ?」

 

とそこで、みほと弘樹に、沙織が声を掛けた。

 

「舩坂くん家でご飯会やらない? 良いよね?」

 

そして、みほと弘樹に向かってそう提案をしてくる。

 

「あ! 沙織さんの御飯、食べたいです」

 

「前夜祭ですね」

 

それを聞いた華と優花里がそう口を挟む。

 

「祭りじゃないだろう」

 

「物の例えですよぉ」

 

麻子がそうツッコミを入れると、優花里がそう返す。

 

「分かった。ちょっと待ってくれ。湯江に連絡する」

 

弘樹はそう言い、皆から少し離れると、携帯を取り出して湯江に連絡を入れる。

 

「なあなあなあ、当然俺達も良いよな!?」

 

「うん、良いよ」

 

「よっしゃあーっ!!」

 

とそこで、了平がそう割り込んで来て尋ねると、沙織は了承し、了平は全身で喜びを露わにする。

 

(地市さん………万が一の時は手伝って下さい)

 

(ああ、任せとけ)

 

一方、楓と地市は、了平が不埒な真似に及んだ時に止める相談をしていた。

 

「か、神狩殿! 神狩殿も如何ですかっ!?」

 

とそこで、優花里がやや上ずった声で白狼の事を誘う。

 

「いや、俺は………」

 

察しの悪い白狼は断ろうとするが………

 

「ええやないけ、白狼!」

 

「ぐっ!? 豹詑っ!?」

 

そこで豹詑がそう言いながら、凭れ掛かる様に肩を組んで来た。

 

「そうだぞ、白狼! 偶には付き合えってんだよ!!」

 

更に反対側の肩にも、同じ様に海音が凭れ掛かって来ながら肩を組む。

 

「白狼、如何ですか?」

 

「飛彗………お前まで」

 

飛彗までもが半ば強引に誘って来ると、白狼は呆れた顔になる。

 

「………アインシュタイン。お前は行かねえよな?」

 

最後の願いを込めて、煌人にそう問う白狼。

 

「いや、行く積りだ」

 

「!? ホワイッ!?」

 

だが、煌人からそう返され、思わずインチキ英語で返してしまう。

 

「僕は君よりは社交性はある方なんでね」

 

「裏切り者っ!!」

 

シレッとそう言い放つ煌人に、白狼は恨みがましい目を向ける。

 

「神狩殿~………」

 

とそこで、優花里が捨てられた子犬の様な眼差しを白狼に向ける。

 

「うっ!………ハアァ~~~、分かった。行きゃあ良いんだろ行きゃあ」

 

「わ~い! やったであります~っ!!」

 

白狼が観念したかの様にそう言うと、優花里は満面の笑みを浮かべて、両手を上げて全身で喜びを表現する。

 

「…………」

 

そんな優花里の姿に何となく腹が立った白狼は、優花里の頭を両手で掴んでワシャワシャと犬でも撫でるかの様に撫で回す!!

 

「!? うわあっ!? な、何をするでありますかぁ、神狩殿ぉっ!!」

 

「うるせえっ! 黙って撫でられてろっ!!」

 

優花里の抗議の声を無視して、更に撫で回す白狼。

 

(………結構気持ち良いな)

 

そして、優花里のフワフワヘアーの触り心地に内心でそう思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒森峰との決勝戦を明日に控え………

 

大洗機甲部隊のメンバーの夜は更けて行く………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

大洗の決戦前夜です。
何か、久しぶりに原作にあるシーンのある話をやった気がします(笑)
さて、決戦前夜編ですが………
今回の前編以後、中編、後編と続きます。
中編では、あんこうチームと弘樹達以外のメンバーの決戦前夜をお送りする予定です。
ホントを言うと1人1人細かくお送りしたいのですが、それだと文章量も作業量もとんでもない事になるので、原作での各戦車チームの決戦前夜の様子に歩兵達を加えた感じとダイジェスト気味にお送りしたいと思います。
御了承下さい。

そして後編はあんこうチームと弘樹達の決戦前夜となりますが………
遂に弘樹とみほが………
おっと、コレ以上は見えてからのお楽しみです。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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