ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第182話『求道者の精神です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第182話『求道者の精神です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦車道・歩兵道準決勝の第2試合………

 

カンプグルッペ学園の試合を翌日に控えた黒森峰機甲部隊は………

 

明日に備えて休養日を執る………

 

その休養日に………

 

みほに対して複雑な感情を持つエリカが、決勝戦まで上がって来た大洗の事が気に食わず、一言物申しに向かったのだが………

 

街中でチンピラに絡まれ、危うく女性としての危機に陥ってしまいそうになる………

 

そんなエリカを助けたのは、拳龍と湯江だった。

 

その後、湯江に舩坂家に連れられ、みほとも思わぬ再会を果たすエリカ………

 

その際に感情を爆発させたエリカだったが、その姿に腹の立った湯江から説教を喰らったばかりか、肝心のみほはそれを正面から受け切る………

 

と、その時………

 

みほへと掛かって来た電話の相手である久美から、驚くべき話が齎された………

 

まほが………

 

行方不明になったと言う………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗学園艦・甲板都市………

 

舩坂家・居間………

 

「!? 隊長が行方不明ですってっ!?」

 

「えっ!?」

 

「「「!?」」」

 

久美からの話を聞いたエリカは思わずそう叫んでしまい、みほや弘樹達も話の内容を知る事となる。

 

『兎も角! すぐに戻って来て欲しいで有ります!!』

 

「わ、分かったわ! すぐに戻るわっ!!」

 

エリカは慌てて携帯を切ると立ち上がる。

 

「エリ………逸見さん! 今、お姉ちゃんが………」

 

すぐさまみほが、事の詳細を問い質そうとするが………

 

「ホラ、返すわよっ!!」

 

「!? わわっ!?」

 

エリカはみほの携帯を投げ返し、みほがそれをお手玉している間に立ち上がって、すぐさま玄関へと向かった。

 

「逸見さん! 待………」

 

「コレは黒森峰の問題よ! アンタには関係無いわっ!!」

 

玄関までエリカを追い、尚も問い質そうとしたみほだったが、エリカはそう吐き捨てる様に言うと、勢い良く戸を開け、走り去って行った!

 

「逸………」

 

「コレは只事では無いよ………」

 

「すぐに会長閣下に報告だ。あの方なら何かを掴んでいるかも知れない」

 

呆然と立ち尽くすみほの後ろで、拳龍と弘樹がそう言い合い、迫信に相談しようと言う話になる。

 

(………お姉ちゃん)

 

「みほくん。今は兎に角、会長閣下への報告へ向かおう。それできっと何か分かる筈だ」

 

今は疎遠となったとは言え、彼女にとって只1人の姉であるまほの身を案じるみほに、弘樹はそう声を掛けて、肩に手を置いた。

 

「………うん」

 

「湯江、スマンがまた出かけるぞ」

 

「ハイ、御気を付けて」

 

やや力無く立ち上がったみほを連れて、弘樹と拳龍は、湯江に見送られて舩坂家を後にしたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから少しして………

 

黒森峰女学園・戦車格納庫内………

 

「久美!!」

 

「エリカ殿!!」

 

「逸見くん。いやはや大変な事になったよ………」

 

漸く戻って来たエリカが格納庫内に飛び込んで来ると、久美と都草が出迎えた。

 

他の機甲科の隊員達も集合している。

 

「梶歩兵隊長、総隊長は!?」

 

「落ち着きたまえ………2、3時間程前に、まほが姿を消した。最後に目撃されたのは女子寮だったそうだが、その後の足取りは一切不明。携帯も繋がらない状態だ」

 

エリカが都草に詰め寄ると、都草はエリカを落ち着かせながらそう言う。

 

「今、男子校の歩兵隊員総出で捜索しているが、まだ発見出来ていない」

 

冷静にそう言う都草だったが、その顔には僅かに焦りの様子が見て取れる。

 

「まほ殿はエリカ殿に確認事項があって会いに行ったそうであります。エリカ殿は何か知らないでありますか?」

 

「わ、私も何も………」

 

久美がそう言うと、エリカは狼狽しながらそう返す。

 

(そんな………私が携帯を忘れて勝手にいなくなったせいで、総隊長が………)

 

自分のせいでまほが行方不明になったと感じ、自責の念に苛まれる。

 

「副隊長! 如何するんですかっ!?」

 

「明日はカンプグルッペ学園との試合なんですよ!!」

 

「総隊長が居ないんじゃ………」

 

集まっていた機甲科の隊員達からも動揺の声が挙がる。

 

黒森峰機甲部隊は、西住流の後継者たるまほの下、徹底的に統率された重戦車を中心とする言わば火力重視の正面戦闘を得意としている。

 

だがそれは、まほが要として黒森峰の全てを統率していると言える状態であり、そのまほを失った結果、綻びが生じ始めていた。

 

「お、落ち着きなさい!」

 

副隊長として皆を落ち着かせようとするエリカだったが、自身も動揺している為、その声が届く事は無い………

 

と、その時!!

 

「梶隊長ーっ!!」

 

そう言う台詞と共に、黒森峰歩兵隊員が1人、格納庫内に慌てた様子で入って来た!

 

「! 如何したっ!?」

 

「い、今、コチラに戻って来たら………校門の前に、コレが………」

 

都草が問い質すと、黒森峰歩兵隊員は『ある物』を取り出しながらそう報告する。

 

「!? それはっ!?」

 

「! 総隊長の携帯っ!?」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

久美とエリカ、機甲科の隊員達は驚きを露わにする。

 

黒森峰歩兵隊員が取り出したのは、まほの携帯だった。

 

………そこで!!

 

突如、まほの携帯に着信が入る。

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

突然の着信に、エリカ達は一瞬身構える。

 

「………貸して!」

 

「あっ!?」

 

すると、エリカが黒森峰歩兵隊の手から奪い取る様にまほの携帯を手に取る。

 

「…………」

 

エリカが画面を確認すると、『非通知』と言う文字が浮かんでいる。

 

「………もしもし」

 

意を決してスピーカーフォンを起動させ、皆にも通話内容に聞こえる様にすると、電話に出るエリカ。

 

『………黒森峰機甲部隊の方ですか?』

 

電話の先から聞こえて来たのは、ボイスチェンジャーを使っていると思われる合成音声だった。

 

「副隊長の逸見 エリカよ………」

 

『ほう、副隊長さんですか………それは好都合』

 

「アンタ一体誰よ。如何して総隊長の携帯に………」

 

『西住 まほさんは我々が預かって居ます』

 

「!? なっ!?」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

まほを預かっている………

 

電話の先の相手から齎された驚愕の言葉に、エリカと黒森峰の一同は驚愕する。

 

「た、性質の悪い悪戯は止めなさい! 何の証拠が………」

 

『この携帯電話に電話を掛けている事が何よりの証拠ではありませんか?』

 

「ぐっ!………」

 

そう言われてエリカは言葉に詰まる。

 

「………要求は何?」

 

『話が早くて助かります………次の準決勝の試合を棄権して下さい』

 

「!? 何ですってっ!?」

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

黒森峰の一同に動揺が走る。

 

「そんなこと出来るわけないでしょう!」

 

『しないと言うなら構いませんよ。但し、その場合は西住 まほさんの安全は保障しかねますね………』

 

「!! アンタ! カンプグルッペ学園の奴ね!!」

 

電話の相手に向かってそう言い放つエリカ。

 

この要求を飲んだ場合、1番得をするのは当然カンプグルッペ学園である。

 

相手はカンプグルッペ学園の人間………

 

そう思うのは当然だった。

 

『さて? 何の事でしょうかねえ?』

 

そんなエリカを嘲笑うかの様に、白々しく惚けるフリをする電話の相手。

 

「惚けるんじゃないわよ!!」

 

『まあ、取り敢えず、棄権するのかしないのかだけお聞かせ願えますかね?』

 

「………ふざけるんじゃないわよ」

 

相変わらず惚けた態度を続けながら電話の相手がそう問うと、エリカは身体を小刻みに震わせながら絞り出す様にそう言い放つ。

 

「! 逸見くん! 待ちたまえ!!」

 

「ふざけるんじゃないわよ! 棄権ですって!? 誰がするもんですか!! 私達は黒森峰よ! 戦車道・歩兵道の頂点に立つ王者よ!! 戦わずして負けを認める事なんて絶対に無いわっ!!」

 

都草がハッとして止めようとしたが、エリカは感情を爆発させてそう言い放ってしまう。

 

『………つまり、棄権する気は無いと?』

 

「そうよ! 西住流に逃げるなんて言葉は無いわっ!!」

 

「エ、エリカ殿………」

 

久美が言葉を失う。

 

確かに、戦車道・歩兵道の頂点に立つ黒森峰に於いて、そして西住流から教えを受ける者達として、棄権して不戦敗などと認められるものではない。

 

『………フハハハハハハハハッ!!』

 

すると、突然!

 

電話の相手は大声で笑い始めた!

 

「! 何がおかしいよのっ!!」

 

『いやあ、コレは失敬。実は先程、西住 しほさんにもお電話を差し上げたのですが、貴方と同じ様な事を言っていたものですから』

 

「! 西住師範にもっ!?」

 

しほにも脅迫の電話を掛けていたと言う事に、エリカは驚く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数刻前………

 

西住家にて………

 

『では、要求を飲む積りは無いと?』

 

「当然です。その様な要求が受け入れられるワケがありません」

 

まほを誘拐したと言う相手に向かって、しほは毅然とした態度でそう言い放つ。

 

『宜しいのですか? その場合はお嬢さんの安全は保障しかねると………』

 

「その前に貴方達を捕まえてやります」

 

まほに危害を加えれると言っても、しほは毅然とした態度を崩さない。

 

「西住流に逃げると言う道はありません。貴方達の姑息な手など正面から粉砕してあげます。西住の名に掛けましてね」

 

『………素晴らしい』

 

「はっ?」

 

突然称賛の言葉を送って来た誘拐犯に、しほは初めて困惑した様子を見せる。

 

『実の娘より西住流の名の方が大事だと言う貴方の態度………正に流派の家元の鏡ですな』

 

「何を………」

 

『それが聞けて大変満足です………また後程にご連絡を差し上げます。もしその時に気が変わっていましたらお教え下さい。では………」

 

「! 待ちな………」

 

誘拐犯は一方的にそう言うと、電話を切った。

 

「…………」

 

「奥様! 宜しいのですか!?」

 

しほの方も電話を切ると、傍に控えていた菊代が、慌てた様子でそう問い質して来る。

 

「………戦わずして負けを認めるなど、西住流の名折れです。要求は絶対に受け入れません」

 

「しかし! まほお嬢様が………」

 

「まほは西住流の後継者です。あの子も西住の恥となる事は望みません」

 

「奥様っ!!………!?」

 

あんまりな物言いに、菊代は思わずしほに食って掛かろうとしたが、そこでしほの手が小刻みに震えている事に気づく。

 

「奥様………」

 

(まほ………)

 

しほは今、必死に耐えていたのである………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒森峰女学園・戦車格納庫内………

 

『………と言う事でしたね。流石は勝利を貴ぶ西住流の教え子の方。どちらも総隊長さんより勝利が大切と言う事ですか。いや感服、感服』

 

「! アンタッ!!」

 

芝居が掛かっている上に、完全に舐めた態度を執る誘拐犯に、エリカはまたも怒りを爆発させる。

 

『では、その勝利への執着心に敬意を表しまして、良い提案を致しましょう』

 

「良い提案ですってっ!? 何様よ、アンタッ!!」

 

『黒森峰が次の試合で勝てば、西住 まほさんを無事に返す事にしましょう』

 

「そんな約束を信じろっての!?」

 

『信じるしかない筈ですよ? 今の貴方達には?』

 

「! ぐうっ!!………」

 

痛い所を衝かれ、エリカはまたも絶句する。

 

『では、黒森峰の奮闘に期待させて頂きます』

 

「ちょっ! 待ちなさいっ!!」

 

そう言うエリカだったが、電話を無情にも切られる。

 

「クウッ!………」

 

「エリカ殿………」

 

「逸見くん。如何するかね?」

 

苦い表情を浮かべるエリカに、久美と都草がそう言って来る。

 

「副隊長! コレはもう事件ですよ!!」

 

「警察に届けましょう!」

 

会話を聞いていた黒森峰機甲科の面々からそう声が挙がる。

 

「駄目よ! 警察沙汰になったら試合に影響するかも知れないでしょ!」

 

「試合って………」

 

「総隊長は如何なるんですかっ!?」

 

「総隊長だって西住の名に泥を塗る真似はしない筈よ! 明日の試合に勝てばそれで済む話よ! 兎に角、全員明日の試合に備えるのよ!!」

 

しかし、エリカは黒森峰機甲部隊の戦車隊副隊長として、飽く迄試合の勝利を考える。

 

「………試合、試合って………副隊長は総隊長の命より、試合の勝ち負けの方が大事なんですか!?」

 

「!?」

 

だが、機甲科隊員からそんな声が挙がると、エリカは動揺する。

 

「………失礼します」

 

そして、その隊員はその場から去ろうとする。

 

「! 何処行くのよ!」

 

「もう私………付いて行けません!」

 

エリカが呼び止めるが、隊員はそう叫んで走り去った。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

それを皮切りに、他の隊員達もゾロゾロと立ち去り始める者が出始める。

 

「ちょっ!? ま、待ちなさいっ!!」

 

エリカが呼び止めるが、去り出した隊員達は振り向きもしなかった。

 

かつて、西 絹代は大洗の事をみほさえ居なければ烏合の衆であると評した。

 

皮肉な事に、彼女の姉であるまほが率いている黒森峰機甲科も、実は同じ様な状態だった。

 

黒森峰の統率、西住流の心得である鉄の掟と鋼の心は、実質まほ1人のお蔭で浸透していたのである。

 

「…………」

 

「エ、エリカ殿………」

 

「逸見くん。皆は単に動揺しているだけだ。ココは副隊長である君が………」

 

その光景に、エリカは俯いて立ち尽くし、久美はオロオロとし、都草はフォローに入るが………

 

「………行くわよ!」

 

突然エリカは顔を上げると、そう言い放つ。

 

「ゲロッ!?」

 

「行くって………何処へだい?」

 

「決まってるわ! カンプグルッペ学園よ!!」

 

驚く久美と都草に、エリカはそう言い放つ。

 

「ええっ!?」

 

「待ちたまえ、逸見くん! まだこの事件にカンプグルッペ学園が関わっているとは………」

 

「!!………」

 

久美が狼狽し、都草が早まるなと止めようとしたが、エリカは即座に駆け出した!

 

「逸見くん! クッ! 毛路山くん! 付いて来てくれっ!!」

 

「りょ、了解でありますっ!!」

 

都草は苦い顔をしながらも、久美を引き連れてエリカを追ったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

大洗男子校・作戦会議室では………

 

「ふむ、分かった………いや、コチラこそすまなかったな………そう言って貰えると助かる………では、友よ。近い内にまた」

 

何処かへと電話を掛けていたゾルダートが、そう言って電話を切る。

 

弘樹達から、黒森峰の総隊長であるまほが誘拐されたらしいと言う報告を受けた迫信は、事が事だけに機甲部隊員全員に召集を掛け、対応の協議を開始。

 

その中で、黒森峰に友人を持つゾルダートが、その友人に連絡を取り、事の詳細を問うていたのである。

 

「ゾルダートさん………」

 

「残念ながら………西住 まほが行方不明になったのは本当の様だ。しかも如何やら誘拐らしい」

 

「!!………」

 

「みほくん!」

 

ゾルダートからそう聞かされたみほの気が一瞬遠くなり、倒れそうになったのを弘樹が支える。

 

「だ、大丈夫だよ、弘樹くん………」

 

だがすぐにみほは気を取り直し、立ち上がる。

 

「ゆ、誘拐だなんて……事件だよ! 事件!!」

 

「たたた、大変ですっ!!」

 

「2人共、落ちついて下さい。私達が騒いでも仕方ありませんよ」

 

誘拐と言う言葉を聞いて、沙織と優花里が動揺を露わにすると、華がそう言い放つ。

 

他のメンバーも大なり小なりざわめき立つ。

 

「………警察には届けたのか?」

 

「それは無いだろう。黒森峰の気風や西住流の在り方からして、警察沙汰にして試合への影響を出すとは考え難い」

 

麻子がそう問うと、煌人がパソコンを弄りながらそう言う。

 

「何ソレ! 人が誘拐されてるのに、試合の方が大事なの!!」

 

「…………」

 

思わず沙織がそう叫ぶ中、みほの脳裏には、母であるしほの顔が過る。

 

「それにしても、誘拐だなんて………身代金目的か?」

 

「或いは次の試合で当たると言うカンプグルッペ学園の妨害工作か………」

 

ハンターと大詔がそう推察を述べる。

 

「それについてだが………」

 

「そのカンプグルッペ学園について調べてみたら、とんでもない事が分かったんです」

 

そこで、俊と蛍がそう声を挙げる。

 

「? とんでもない事?」

 

「うむ………全員、前方のスクリーンに注目してくれたまえ」

 

勇武がそう呟くと、迫信がそう言い、一同の視線が前方の大型スクリーンへと集まる。

 

すると、スクリーンにある記録票の様な物が映し出される。

 

「コレはカンプグルッペ学園の今までの試合結果を纏めたモノだ」

 

「! オイ! コレってっ!?」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

十河がそう言うと、地市が『ある事』に気づき、他の一同も目を見開く。

 

「そうなんです………」

 

「カンプグルッペ学園は、コレまでの試合の殆どを………相手校の棄権、或いは試合中にギブアップを宣言されての不戦勝で勝ち進んで来たんです」

 

「更に言うと、ギブアップした相手校の機甲部隊には、必ず何かしらのトラブルが起きている」

 

清十郎、逞巳、十河がカンプグルッペ学園のコレまでの戦績を見ながらそう言い放つ。

 

「超真っ黒じゃん!!」

 

「絶対その学校の仕業だよっ!!」

 

「連盟に訴えましょうよ!」

 

それを聞いたあや、あゆみ、優希がそんな声を挙げる。

 

「それが………連盟も流石に変に思って度々査察をしているんですけど………」

 

「その全ての結果が白だった」

 

柚子と桃がそう言うと、映像が査察の結果、問題無しとされた記録のモノに切り替わる。

 

「そんなっ!?」

 

「まあ、実際は限りなく黒に近い灰色ってところだけどね~」

 

梓が驚きの声を挙げると、杏がいつもの調子でそう言うが、その顔にいつもの不敵な笑みは無い。

 

「だが、黒森峰はカンプグルッペ学園の仕業だと思っているんじゃないのか?」

 

「しかし、状況的にはそうとしか考えられないが、確たる証拠が無ければ………」

 

「向こうが白を切ってしまえばそれまでか………」

 

「逆に名誉棄損で訴えられるって事もありえるぜよ」

 

エルヴィン、カエサル、左衛門佐、おりょうからそんな意見が挙がる。

 

「あの! 1つ質問良いですかっ!?」

 

するとそこで、聖子がそう言って手を上げた。

 

「何だ?」

 

「詰まる所………私達は如何すれば良いんですか?」

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

聖子がそう言うと、一同の視線が両校生徒会メンバーへと注がれる。

 

それは今、この場に居る全員が感じている疑問だった。

 

「それについての意見を伺う為に、皆には集合してもらったのさ」

 

そこで迫信が、何時もの様に開いた扇子で口元を隠しながらそう言う。

 

「会長方。この件、やはり関わるべきではないと思います」

 

するとそこで、桃が迫信と杏に向かってそう進言した。

 

「!! 桃ちゃんっ!?」

 

「これは黒森峰とカンプグルッペ学園の問題です。それに、もしカンプグルッペ学園が不正を行っているのだとすれば、その証拠を掴んで失格処分にすれば良い話です。上手く行けば黒森峰に不戦勝して勝ったところで不正を訴えて失格処分にすれば、我が校の優勝が自動的に決定します」

 

柚子が驚きの声を挙げる中、桃はそう自論を展開する。

 

「河嶋さん!」

 

「河嶋先輩! それは………」

 

「我々は大洗女子学園を守らなければならんのだ! その為には優勝をしなければならん! 態々危険を冒してまで黒森峰を助ける義理は無い!!」

 

逞巳と清十郎が何を言うんだと言って来たが、桃はコレまでにない強い口調でそう言い放つ。

 

「! そ、それは………」

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

桃の言葉にも一理有り、逞巳達が黙り込むと、大洗の一同も沈黙する。

 

「…………」

 

その中でみほは、膝の上に乗せた両手を固く握り締めていた。

 

(みほくん………)

 

そんな痛々しい姿を見て、弘樹は桃に意見しようとしたが………

 

「………が、西住。お前は如何したい?」

 

「!? えっ!?」

 

突如桃は、みほに向かってそう尋ねた。

 

「如何したいかと聞いているんだ! ハッキリ言えっ!!」

 

「! わ、私は………」

 

畳み掛ける様に桃が怒鳴ると、みほは一瞬逡巡した様子を見せたが………

 

「私は、黒森峰を………お姉ちゃんを………助けたいですっ!!」

 

やがてそう言って立ち上がった。

 

「みぽりん………」

 

「みほさん………」

 

「西住殿………」

 

「西住さん………」

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

そんなみほの姿に、あんこうチームを初めとした大洗の一同は注目する。

 

「確かに、河嶋さんの言う事にも一理有ります………でも! 相手を失格にして優勝したからって、それを誇る事が出来るんですか!? 真の優勝とは………黒森峰に勝って手に入れる優勝だと思います!!」

 

その一同に向かって演説の様に語り始めるみほ。

 

「それに私は、1人の戦車道求道者として………戦車道や歩兵道を汚す様な真似をしているかも知れないカンプグルッペ学園の事を見過ごす事は出来ませんっ!!」

 

「…………」

 

桃もみほの話を黙って聞いていたかと思うと………

 

「………分かった。総隊長であるお前がそう言うならば仕方が無い。好きにしろ」

 

そうぶっきらぼうにそう言い放った!

 

「! コレより大洗機甲部隊は、西住 まほ救出作戦を開始しますっ!!」

 

「「「「「「「「「「了解っ!!」」」」」」」」」」

 

すぐさまみほはそう命じ、大洗機甲部隊の一同は一斉に行動を始めた。

 

「…………」

 

「桃ちゃん………」

 

「偉いよ、桃ちゃん!」

 

「河嶋。立派だったぞ」

 

その様子を桃が見ていると、柚子、蛍、杏が口々に称賛を送って来る。

 

「総隊長は西住です。アイツが決めた事ならば仕方が無いでしょう」

 

ぶっきらぼうにそう言い放つ桃。

 

「…………」

 

とそこで、そんな桃の前に熾龍が立った。

 

「! な、何だっ!?」

 

何時ものようにアイアンクローを食らわせるのかと思いきや………

 

「フッ………少し見直したぞ」

 

熾龍はそう言って軽く笑って見せた。

 

「!?!?」

 

途端に、桃の顔が朱色に染まる。

 

「…………」

 

だが熾龍は、もう用は無いとばかりに踵を返した。

 

「珍しいね~、栗林ちゃんが河嶋の事を褒めるなんて」

 

杏がそう言って桃の隣に立つ。

 

「…………」

 

「? 河嶋?」

 

「………アイツ………あんな顔もするのか」

 

と、桃が呆然としていた事に気づいた杏が声を掛けると、桃がそう呟く。

 

「………ほほ~う?」

 

「!?」

 

杏がそう声を挙げると、桃は初めて杏の存在に気づく。

 

「かかかか、会長! いや! い、今のは、その!!」

 

「やっぱ喧嘩するほど仲が良いって事だったんだね~」

 

「違うんです~~~~~っ!!」

 

ニヤニヤする杏に向かって、泣きながら必死に否定する桃。

 

「「…………」」

 

そして柚子と蛍は、そんな桃の姿を温かい目で見守っていたのだった。

 

「しかし、ホンマにカンプグルッペ学園の仕業なんか?」

 

「もし間違ってて逆に訴えられたら、俺達の方がヤバイんじゃ………」

 

そんな中、豹詑と海音がそんな事を言っていると………

 

大会議室に有った固定電話の1台が鳴った。

 

「私だ………分かった、繋げてくれ………」

 

如何やら外線での着信の様であり、電話に出た迫信がそう言い、その後何かを2言、3言と言っていたかと思うと………

 

「西住くん、君にだ」

 

「! えっ!? 私っ!?」

 

自分宛ての電話だと言われ、みほは戸惑いながらも迫信の元へ向かい、受話器を受け取る。

 

「もしもし? 西住ですけど………」

 

『………久しぶりね、みほ』

 

「!? その声!? ひょっとして!?………」

 

受話器の先から聞こえて来た声を聞いたみほは、驚愕を露わにするのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

まほは誘拐されていた………
犯人は身柄と引き換えに準決勝の棄権を要求するが、しほとエリカはコレを突っぱねる。
勝てばまほを返すと言う犯人からの提案に乗り、準決勝への準備を進めようとしたエリカだったが………
まほ無き黒森峰の脆弱さが露見………
機甲課は空中分解寸前になってしまう。
エリカは久美と都草と共に、犯行をカンプグルッペの仕業だと断定して、学園へと向かうが………

一方、その頃………
大洗でもまほ誘拐の情報はキャッチしていた。
そして、カンプグルッペの対戦記録に闇を見る………
みほの呼び掛けにより、大洗の一同はまほ救出を決意するが、そこへ掛かって来た電話の相手は………

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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