ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第180話『準決勝、終了です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第180話『準決勝、終了です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦車道・歩兵道全国大会、決勝リーグ・準決勝………

 

大洗機甲部隊VSグロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊の因縁の戦いは………

 

大苦戦の末に、大洗機甲部隊が、見事リベンジを果たす事となった。

 

支援艦隊同士の洋上戦では、スラバヤ沖海戦の奇跡が再現されるなど、ドラマティックな試合内容だった。

 

そして、両校の一同は………

 

試合終了の挨拶へ赴いていた………

 

 

 

 

 

大洗機甲部隊VSグロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊の試合会場………

 

「一同、礼っ!!」

 

「「「「「「「「「「ありがとうございましたっ!!」」」」」」」」」」

 

大洗機甲部隊とグロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊の一同が、互いに礼をする。

 

「とうとう準決勝突破かぁ!」

 

「次の決勝に勝てば優勝だよっ!」

 

「まさか数ヶ月前まで素人だった俺達がこんなところまで来るとはなぁ!」

 

「人生って分からないねえ」

 

準決勝突破に加え、因縁の相手にも勝利したとあり、大洗機甲部隊の面々は、興奮冷めやらぬ様子だった。

 

「西住総隊長! 申し訳ありませんでしたっ!!」

 

だが、そんな中で、梓はみほに向かって謝罪と共に頭を下げる。

 

「梓ちゃん?………」

 

「私達がもっと戦えていたら、総隊長にあそこまで苦労を掛けずに済んだのに………折角預かった部隊も壊滅状態にしてしまって………」

 

戸惑うみほに、梓は自分の失態を吐露する。

 

「…………」

 

だが、みほは優しく微笑みながら、下げられている梓の頭の上に右手を置いた。

 

「! 総隊長………」

 

「そんな事無いよ。梓ちゃん達が敵の戦力を削ってくれたのと、フラッグ車のチャーチルに損傷を与えてくれていたから、私達は勝てたんだよ」

 

「そんな! 私は………」

 

「ありがとう、梓ちゃん」

 

「!!………」

 

梓の言葉を遮り、みほはお礼を言うと、梓はキッと表情を引き締め、姿勢を正してヤマト式敬礼をした。

 

「お前達も、良くやったな。お蔭でアールグレイとの戦いに専念する事が出来た………立派だったぞ」

 

「「「「「「ありがとうございますっ!!」」」」」

 

一方弘樹の方も、アールグレイと対決していた間、ブリティッシュ騎兵部隊を懸命に足止めしてくれていたハムスターさん分隊の面々に礼を言っている。

 

と、そこで………

 

「盛り上がっているところを申し訳ありませんが、お邪魔致しますわ」

 

「失礼する………」

 

そう言う台詞と共に、ダージリンと『何か』を携えたアールグレイが現れる。

 

「! ダージリンさん!」

 

「アールグレイ………」

 

みほと弘樹が、其々にダージリンとアールグレイの姿を見やる。

 

「先ずはみほさん………決勝進出、おめでとうございます」

 

「あ、ありがとうございます」

 

ダージリンはまだ試合終了直後な為、解けた金髪がそのままになっており、顔の煤汚れも拭われていないが、それでもその立ち振る舞いは淑女そのものであり、みほは若干萎縮する。

 

「決勝の相手は、やはり黒森峰になるでしょうね………お姉さん………いえ、西住流と戦う覚悟はおありで?」

 

「!………」

 

ダージリンにそう言われ、みほは一瞬黙り込む。

 

「………正直に言うと、戦いたくないと言うのが本音です」

 

「そう………」

 

「でも、それは西住流を恐れてるからじゃありません」

 

「…………」

 

みほがそう言うと、今度はダージリンが黙り込む。

 

「戦いたくないのは………私は別に、お母さんやお姉ちゃんを打ちのめしたいワケじゃないんです。出来れば、また昔みたいに仲良くなりたいと思ってます」

 

「………そう」

 

「でも、それには戦わなければならないと言う事は分かっています。お姉ちゃんやお母さんと話す為には………私の戦車道を示さないといけないんです」

 

「それが出来て?」

 

「私1人では無理です………でも」

 

みほはそう言うと振り返り、最初に弘樹の事を見て、その次にあんこうチームの面々を見た後、最後には大洗機甲部隊全員の姿を見やった。

 

「友達と一緒なら………出来ると信じてます」

 

そして、ダージリンの方に向き直ると、一点の曇りも無い表情でそう言い放った。

 

「きっと出来ますわ。貴方の戦車道は………こんなにも素晴らしいのですから」

 

そう言うと、ダージリンはみほに握手を求める。

 

「…………」

 

ダージリンの手を取り、みほは固く握手を交わす。

 

「みほさん………今日のこの敗北は、私が今まで掴み取って来たどんな勝利よりも………誇るに値する敗北でしたわ」

 

「! ハイッ!!」

 

ダージリンの言葉に、みほは一瞬驚いた様な表情を見せたが、すぐに笑顔を浮かべて頷いた。

 

「………見事だったぞ」

 

「そうか………」

 

「………優勝して見せろ」

 

「その積りだ………」

 

一方、アールグレイと弘樹の方も、お互いを見ながらそう会話を交わす。

 

短い遣り取りであったが、それで十分だった………

 

彼等は全てを出し切って戦い、片方は敗れ、片方は勝った………

 

それ以上の事実は必要無い………

 

また語り合う時………

 

それは再び、大洗とグロリアーナ&ブリティッシュが戦う時である………

 

「それから………ウサギのお嬢さん」

 

「えっ!? わ、私っ!?」

 

とそこで、みほとの握手を終えたダージリンが、梓に呼び掛け、急に呼ばれた梓は慌てる。

 

「確か澤 梓さんでしたわね?」

 

「ハ、ハイ! そうです!!」

 

「………アールグレイ」

 

「…………」

 

ダージリンが呼び掛けると、アールグレイは携えていた物………バスケットをダージリンに渡す。

 

(! アレって………)

 

そのバスケットに見覚えを感じるみほ。

 

「どうぞ………」

 

「えっ? わ、私に?………」

 

そしてダージリンは、そのバスケットを梓に差し出し、梓は戸惑いながらもそれを受け取る。

 

「あ、あの………中を見ても?」

 

「構いませんわよ」

 

「…………」

 

ダージリンから許可され、梓は恐る恐るバスケットを開けて、中身を確認する。

 

すると………

 

「! コレって!?」

 

中身を確認した梓が驚愕の表情を浮かべる。

 

バスケットの中に入っていたのは………

 

ウサギさんチームの人数分の『紅茶』だった。

 

聖グロリアーナ女学院は、好敵手として認めた相手に紅茶を送ると言う伝統がある。

 

即ちコレは………

 

ダージリンが梓達を好敵手と認めた証だった。

 

「………来年の貴方達と戦えない事が残念でなりませんわ」

 

「!!」

 

「澤 梓さん………貴方と、そして貴方のチームは立派な戦車乗りですわ。私が保障致します」

 

「! ハイッ!!」

 

それを聞いた梓の目からは、嬉しさの余り涙が零れそうになったが、グッと堪えて笑顔でダージリンに返事を返す。

 

「それから、呉校の皆さんにもよろしくお伝えして下さるかしら。私達の支援艦隊の乗組員を、危険を顧みず救助してくれた事、深く感謝しておりますと」

 

「確かに伝えさせていただきます」

 

そして最後に、ダージリンは自分達の支援艦隊の乗員を救ってくれた呉校艦隊の面々へのお礼を言づける。

 

「あの! ダージリンさん!!」

 

するとそこで、聖子が走り寄って来て、ダージリンに声を掛けた。

 

「この後、私達のライブがあるんです! 良かったら見に来てくれませんか?」

 

如何やら、勝利ライブに直接ダージリンを誘いたかった様である。

 

「ええ、是非観覧させて頂きますわ。実は私、貴方達の大ファンなの」

 

「ええっ! 本当ですかぁ! 嬉しいなぁっ!!」

 

ダージリンの思わぬ告白に、聖子は素直に喜びを露わにする。

 

「では、後程お邪魔させていただきますわ。御機嫌よう」

 

「失礼する………」

 

そしてそう言い残すと、ダージリンとアールグレイは、自軍のメンバーが居る場所へと戻っていた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーージリン様ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!!

 

そのダージリンを出迎えたのは、人目も憚らず号泣しているローズヒップだった。

 

「ローズヒップ………如何したの、一体?」

 

そんなローズヒップの姿を見て、流石のダージリンも困惑する。

 

「申し訳ありません~~~~~~~~~~っ! 私が! 私がもっと速くダージリン様の元へ辿り着けていればああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

そう言って更に号泣するローズヒップ。

 

「ダージリン様………」

 

オレンジペコも申し訳無さそうな顔をしている。

 

今回の戦い、ダージリンにとっては高校最後の全国大会だっただけでなく、事情的にも絶対に負けられない筈の戦いであった。

 

今回の試合の為に、OG会の意見を黙殺して新戦車を多数購入していたのである。

 

この後、ダージリンの立場が如何なるかは想像だに出来ない………

 

「もう、ペコまでそんな顔をするんじゃありません」

 

しかし、ダージリンは何時もと変わらぬ様子でそう言い放つ。

 

「ですが………」

 

「うわあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーんっ!!」

 

何か言おうとしたオレンジペコを遮る様に、まるでサイレンの様に泣き声を響かせるローズヒップ。

 

「………ローズヒップ。貴方随分とずぶ濡れね」

 

するとそこで、ダージリンはローズヒップのパンツァージャケットがずぶ濡れで有る事を指摘する。

 

撃破された時に、ゴルフ場の池に嵌ったせいで、車内に水が入って来て濡れた様である。

 

「!? ああ、すみません! 私とした事が、ダージリン様の前でこんな失礼な姿を!!」

 

それを聞いたローズヒップは、すぐさまずぶ濡れのパンツァージャケットの上着を脱ぎ捨てる。

 

「! ローズヒップ! 淑女が無闇に人前で衣服を脱いだりするんじゃありません!!」

 

途端に、アッサムからの叱咤の声が飛ぶ。

 

「ヒッ! も、申し訳ありませ………」

 

と、ローズヒップが謝ろうとした瞬間………

 

その身体に、別のパンツァージャケットが肩からに掛けられた。

 

「!?」

 

ローズヒップの顔が驚きに染まる。

 

ローズヒップに掛けられたパンツァージャケット………

 

それは、ダージリンが自分のパンツァージャケットを脱いで、ローズヒップに掛けたものだった。

 

「ダ、ダージリン様!………」

 

「ペコ………貴方にはコレを」

 

狼狽しているローズヒップを横目に、ダージリンは今度は、自らが使っていたティーカップとソーサーをオレンジペコに差し出す。

 

「う、受け取れませんよ! それはダージリン様の………」

 

「受け取って、ペコ。もうコレは貴方が………次のグロリアーナを受け継ぐ者が持つのが相応しいわ」

 

受け取れないと言うオレンジペコだったが、ダージリンはそう言って微笑む。

 

「ダージリン様………」

 

その微笑みを向けられ、オレンジペコは恐る恐ると言った様子で、ティーカップとソーサーを受け取った。

 

そこで、ダージリンが左手をローズヒップの右肩へ置き、右手をオレンジペコの左肩へ置いた。

 

「「!!」」

 

「貴方達が作る新しい伝統を楽しみにしていますわ」

 

驚くローズヒップとオレンジペコに向かって、ダージリンはそう言う。

 

「「! ハイッ!!」」

 

その言葉に対し、ローズヒップとオレンジペコは力強く返事を返し、頷いて見せるのだった。

 

「オ~イ、大洗のスクールアイドルのライブが始まるぞ~っ!!」

 

とそこで、オレガノが若干空気を読めてない様子で、サンショウウオさんチームのライブへ行こうと誘いを掛けて来た。

 

「オレガノさん………」

 

「やれやれ。困った先輩だな」

 

そんなオレガノの様子に、ティムとジャスパーが呆れた様な顔をする。

 

「うふふ、それでは行きましょうか」

 

しかし、ダージリンは特に気にした様子を見せず、グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊の面々を率いて、サンショウウオさんチームのライブへと向かう。

 

「ダージリン総隊長。ブリティッシュのOB会の方々に取りなしてくれる様に頼んでおいた。きっとグロリアーナのOG会の方々もそんなにお叱りにはならない筈さ」

 

とそこで、セージがダージリンにそう言う。

 

「ありがとう、セージ歩兵隊長………しかし、あの方達に頭を下げて回らないといけないと言うのは憂鬱ね」

 

「そう言う割には嬉しそうね。ダージリン」

 

OG会の面々に頭を下げて回らなければならないと愚痴るダージリンだったが、アッサムがその顔に笑みが浮かんでいる事を指摘する。

 

「当然ですわ………」

 

するとダージリンは、アッサムの方を見ながらこう言った。

 

「生涯に於いて最高の勝負が出来たのですから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、サンショウウオさんチームのライブにて………

 

新曲『GOING PANZER WAY!』が披露され………

 

大洗機甲部隊も、グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊の面々………

 

そして両校の応援に来ていた観客達も大いに盛り上がる中………

 

ダージリンは静かに、ライブの様子を見守り………

 

終わった後には、惜しみない拍手を送ったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦車道・歩兵道全国大会の準決勝・第1試合………

 

勝利したのは、大洗機甲部隊………

 

遂に大洗は………

 

優勝目前である………

 

決勝戦へと、駒を進めたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その翌日………

 

大洗学園艦にて………

 

戦車の整備が急ピッチで進められる中………

 

改良の余地が有ったⅢ突と三式の改造が行われた。

 

Ⅲ突の方には、Ⅳ号と同様に、車体両側にシュルツェンが装備され………

 

三式は、知波単からの情報援助を元に、三式改への改造が行われた。

 

悲願の優勝が目前まで迫っているだけに………

 

皆の気持ちも自然と高まり、引き締まっている………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗女子学園・生徒会室………

 

その優勝が掛かった決勝戦を前に………

 

部隊長クラスでの作戦会議が行われていた………

 

「Ⅲ突と三式の改造は今日中には終わるらしい」

 

「流石にぶっつけ本番で使わせるワケには行かないからな。慣らしの練習期間が取れるのはありがたい」

 

迫信が敏郎からの報告を告げると、エースがそう言う。

 

「今度の準決勝・第2試合の勝者と戦うワケだが………」

 

「まあ、黒森峰が勝ち上がって来ると見て、先ず間違いないだろうね」

 

「…………」

 

カエサルの言葉に、杏がそう言い、みほが表情を硬くする。

 

「コレまでの試合で、黒森峰はティーガーやパンター、それにStG44やMP40、MG42と言った、ドイツ製の高性能兵器を多数駆使しています」

 

「そして、西住流の戦車道か………」

 

「聞けば聞くほど、勝てる気がしなくなるな………」

 

柚子と桃が事前情報を整理しながらそう言うと、磐渡が愚痴る。

 

「戦車道の伝統ある流派・西住流………そのような連中と戦う事が出来る………これぞ武門の誉れなり!」

 

逆に月人は闘争本能を溢れさせている。

 

「そう言えば………黒森峰と準決勝で戦うのって、何て学校なんですか?」

 

とそこで、聖子がそう疑問を呈した。

 

「あ~、確か………『カンプグルッペ学園』ってとこだったかな?」

 

杏が頭を捻りながらそう答える。

 

「『カンプグルッペ学園』?………」

 

「聞いた事無い名前の学園ね………」

 

典子が首を傾げ、みどり子がそう言い放つ。

 

「確か~、ウチと一緒で、今年から戦車道・歩兵道に参戦して来た学校だね~。けど、結構良い学校みたいだよ。黒森峰と同じドイツ兵器で固めて、自前の航空隊や艦隊も持ってるって」

 

「となると、意外と良い勝負を見せてくれるかも知れませんね」

 

杏がそう続けると、勇武がそんな感想を漏らす。

 

「…………」

 

そんな中………

 

弘樹は1人黙り込んでいる。

 

(如何にも妙な予感がする………黒森峰とカンプグルッペとの試合に………何かが起こる様な………)

 

その胸中には、黒森峰とカンプグルッペとの試合に一波乱が起きそうだと言う………

 

奇妙な予感がしていた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その予感が現実のものとなり………

 

それが戦車道・歩兵道の歴史始まって以来の大事件となる事を………

 

この時の弘樹は、知る由も無かった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

準決勝を勝ち抜いた大洗。
その大洗を素直に祝福するダージリン。
こんな格好良いダージリン様もありですよね。

さて、そして大洗は次なる決勝戦に備える。
準決勝・第2試合で黒森峰と戦うのは、新参の『カンプグルッペ学園』
だが、その学校はトンでもない学校だった。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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