ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第178話『因縁の戦いです!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第178話『因縁の戦いです!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦車道・歩兵道全国大会、決勝リーグ・準決勝の試合会場………

 

大洗町に似た港町を模した演習場………

 

Gエリアにて………

 

「撃てっ!!」

 

みほの号令と共にⅣ号の主砲が火を噴く。

 

吐き出された徹甲弾は、ダージリンの乗るチャーチルの右側に在った木の幹に命中。

 

折れた木が、チャーチルの行く手を塞ぐ様に前方に倒れる。

 

だが、チャーチルはその倒れて来た木を難なく乗り越え、Ⅳ号に向かって発砲!

 

「! 後退っ!!」

 

「うん………」

 

みほの指示が麻子がⅣ号を後退させると、チャーチルの砲弾は先程までⅣ号が居た場所の地面を爆ぜさせる。

 

「一旦距離を取って、後ろに回り込んで下さい!」

 

「分かった………」

 

続けての指示にも麻子は即座に反応し、Ⅳ号はチャーチルから大きく距離を空けて、機動力を活かして装甲の薄い後部へと回り込もうとする。

 

「それぐらいはお見通しですわ………」

 

しかし、ダージリンはそれを読んでおり、チャーチルは周りの木々を薙ぎ倒しながらⅣ号を追いつつ正面だけを見せ続ける。

 

「! やっぱり読まれてる………」

 

「コレでは周辺の木々もアドバンテージにはなりませんね………」

 

みほが険しい顔をしながらそう呟くと、次弾を抱えている優花里もそう漏らす。

 

今チャーチルは木々が生えた場所に居り、車体の大きいチャーチルは移動を制限されると踏んだが、ダージリンは木々を物ともせずに踏み潰させ、機動力で勝るⅣ号に対し、弱点である後面を晒さない様にしている。

 

「………後部へ回り込むのは一旦中止で。向こうの大きなバンカーへ向かって下さい!」

 

「了解………」

 

するとみほは、一旦チャーチルの後部へと回り込もうとするのを止め、フェアウェイの先に見えていた大きな砂場………バンカーへと向かう。

 

「逃がしませんわ………」

 

チャーチルはすぐにⅣ号を追う。

 

「…………」

 

その様子を振り返りながら確認したみほは正面を向き、やがて大きなバンカーの手前まで達する。

 

「このまま進んで下さい」

 

「良いのか? 砂に足を取られる可能性も有るぞ?」

 

「麻子さんの腕を信頼します」

 

「簡単に言ってくれる………」

 

みほの言葉に、麻子は愚痴る様な台詞を返しながらも、笑みを浮かべて応じる。

 

Ⅳ号はそのまま大きなバンカー内へと突入。

 

「バンカーに自分から入った?」

 

「如何言う積りか知りませんが、チャンスです」

 

オレンジペコがⅣ号の行動を訝しむが、アッサムは砂地でスピードが鈍ったⅣ号に照準を合わせる。

 

と、その瞬間!!

 

「今ですっ!!」

 

「ん………」

 

みほが叫ぶと、麻子は態と履帯を空転させた。

 

バンカーの砂が巻き上げられ、砂煙となる!

 

「!? Ⅳ号はっ!?」

 

その砂煙により、Ⅳ号の姿を見失うアッサム。

 

「………砲塔2時方向。撃ちなさい」

 

「!?」

 

だがそこで、ダージリンからそう指示が飛び、アッサムは反射的にその指示通りに砲撃。

 

チャーチルの砲弾が砂煙の中へと吸い込まれたかと思うと、金属が引き剥がされた様な音が鳴り響く。

 

直後に、砲塔後部のシュルツェンが吹き飛んでいるⅣ号が飛び出して来る。

 

「コレも読まれるなんて!」

 

みほの顔には驚きが浮かんでいる。

 

「す、凄い………」

 

「ペコ、次弾装填を急ぎなさい。みほさんは接近して来るわよ」

 

砂煙の中のⅣ号の位置を的確に当てたダージリンの読みに感嘆の声を挙げるオレンジペコに、ダージリンは次弾装填を促す。

 

「あ、ハイッ!」

 

「Ⅳ号、来ますっ!!」

 

オレンジペコが返事をした瞬間に、アッサムが声を挙げる。

 

「クッ! 装填が………」

 

「ぶつける積りで行きなさい。重量はコチラが上よ。弾き飛ばしなさい」

 

「了解!」

 

装填が間に合わない事にオレンジペコが焦るが、ダージリンは即座に体当たりを指示。

 

向かって来るⅣ号にチャーチルが迫る。

 

と、遂に衝突かと思われる距離まで接近した瞬間!

 

「今ですっ!!」

 

みほがそう叫んだかと思うと、Ⅳ号の主砲が火を噴く!

 

「砲塔旋回っ!!」

 

だが、狙いが砲塔である事を見抜いたダージリンは、砲塔を旋回させ、傾斜で弾き飛ばそうとする。

 

しかし、Ⅳ号から放たれた砲弾は、チャーチルの砲塔に命中した瞬間に爆発した!

 

「!? 榴弾っ!?………!! わっぷっ!?」

 

Ⅳ号が放った砲弾が榴弾であった事にダージリンが驚いた瞬間に、ハッチから上半身を出したままだった彼女に、榴弾の爆発による爆炎と爆風が襲い掛かる!!

 

「ダージリン様っ!?」

 

その様子にチャーチルの操縦士が一瞬気を取られる!

 

「衝撃に備えて下さいっ!!」

 

直後に、Ⅳ号が僅かに左へと移動!

 

車体右側のシュルツェンを弾き飛ばしながら、チャーチルの横を擦り抜けた!

 

「今ですっ!!」

 

「装填完了してますっ!!」

 

「貰いましたっ!!」

 

チャーチルの背後へと回ったⅣ号は、即座に信地旋回を行うと同時に砲塔も旋回させ、チャーチルの後部目掛けて砲弾を放った!

 

だが、まだ爆煙に包まれたままだったチャーチルが動き出し、僅かな差でかわされてしまう。

 

「!!」

 

「まさかあの距離で目眩ましに榴弾を使って来るとは思いませんでしたわ。下手をすれば自分も危険でしたのに………」

 

みほが驚きの表情を見せる中、爆煙が晴れて来ると………

 

「ですが、挑む者に勝利あり………こんな言葉もありますわ」

 

自慢のギブソンタックの髪型が解け、長い金髪を風に棚引かせている、顔中に少々煤の付いたダージリンが、やはり不敵な笑みを浮かべてそう言って来た。

 

「…………」

 

みほは、榴弾の爆煙が収まり切らぬ内に突撃した為、ダージリン同様に多少煤けている顔で彼女を見据える。

 

「………ふ………ふふふ」

 

すると不意に、その顔に笑みを浮かべて、笑い声を漏らし始めた。

 

「! 西住殿!?」

 

「みほさん?」

 

「みぽりん?」

 

「如何したんだ?」

 

突然笑い出したみほに、優花里、華、沙織、麻子は困惑した様子を見せる。

 

「ゴメンね、皆………大事な試合だって事は分かってるんだ………でも………今私、凄く楽しいんだ。ダージリンさんと良い勝負が出来て」

 

するとみほは、優花里達にそう説明する。

 

「「「「…………」」」」

 

その言葉を聞いて、優花里達は一瞬黙り込む。

 

「………分かりますよ。その気持ち」

 

やがて、華が最初に賛同の意志を示す。

 

「私も今、西住殿と同じ気持ちです」

 

続いて、優花里がそう言う。

 

「奇遇だな………私もだ」

 

麻子も笑いながらそう呟く。

 

「皆同じ気持ちだよ、みぽりん」

 

最後に沙織が、笑顔でみほにそう呼び掛ける。

 

「皆………」

 

その言葉に感動しながらも、みほは表情を引き締めると、再びダージリンに向き直った。

 

「フフフ………」

 

ダージリンは相変わらず不敵な笑みを浮かべている。

 

「ダージリンさん。さっき言っていましたね………挑む者に勝利あり、って」

 

「ええ………」

 

「………行きますっ!!」

 

と、そう会話を交わしてたかと思うと、みほは再びⅣ号を突撃させる!

 

「来なさい………西住 みほっ!!」

 

それに対し、ダージリンもチャーチルを突撃させるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

その激闘を繰り広げるⅣ号とチャーチルの近くでは………

 

「せやあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

 

「!!」

 

シュトゥルムの突撃と気合の叫びと共に振られた弘樹の英霊を、アールグレイはフルーレで往なす。

 

「フッ! ハアッ!!」

 

アールグレイを一旦通り過ぎた弘樹は、手綱を引いてシュトゥルムを反転させ、再度アールグレイに接近。

 

「ハアアッ!」

 

「!!」

 

再び英霊を振るうが、アールグレイはコレも往なす。

 

「うおおっ!!」

 

「…………」

 

そのまま接近戦となり、2撃、3撃と斬撃を繰り出す弘樹だったが、アールグレイはポーカーフェイスのまま、その全てを往なし、或いは避ける。

 

(やはり出来る………本来は突く事が専門のフルーレでコチラの攻撃を次々に往なされる………)

 

(更に腕を上げた………アレほどに素早く重い斬撃をこう連続で繰り出して来るとは………)

 

お互いに、相手の腕に内心で感嘆していた。

 

「「!!」」

 

やがて両者は、お互いに弾かれる様に距離を取った。

 

「ハアッ!!………!?」

 

とその直後、シュトゥルムを反転させていた弘樹が、何か嫌なモノを感じてシュトゥルムの背に伏せたかと思うと、先程まで弘樹の頭と身体が在った位置を、銃弾が通り過ぎて行った。

 

(銃声が無い?………)

 

銃弾が飛んで来たにも関わらず、銃声が無かった事に違和感を感じながらアールグレイを見やる弘樹。

 

「…………」

 

(成程………『ウェルロッド』か………)

 

そこでアールグレイの右手に、フルーレから持ち替えて握っていた消音機付きの自動拳銃『ウェルロッドMk.Ⅰ』が有るのを見て納得する。

 

「………!」

 

と、アールグレイは更に2発、3発とウェルロッドを発砲する!

 

「! ハイヤーッ!!」

 

弘樹はシュトゥルムを駆けさせ、木々の合間を縫う様に疾走する。

 

アールグレイのウェルロッドから放たれる弾丸が、木々の幹に次々と穴を空ける。

 

「クッ………」

 

細かな木片が顔に掛かって来るのを感じながら、弘樹は一旦英霊を左腰の鞘へ戻すと、右腰のホルスターからM1911A1を抜こうと手を掛ける。

 

「!!………」

 

だが、その瞬間に!!

 

アールグレイは左手に握っていた愛馬の手綱を引いたかと思うと、彼の愛馬は疾走し、木々で移動ルートを制限されていた弘樹とシュトゥルムの前に回り込んだ!

 

「!!」

 

「ハアアッ!!」

 

そしてウェルロッドを納め、再び右手に握ったフルーレで、弘樹の首を狙って突きを繰り出す。

 

「クッ!」

 

咄嗟にホルスターから抜いたM1911A1に装填されていたマガジンの底で、そのフルーレの突きを受け止める。

 

「! ツウッ!!………」

 

だが、その突きの威力の前に、弘樹の右腕はM1911A1を握ったまま後方へと伸び切ってしまう。

 

「貰ったぞっ!!」

 

その隙を見逃さず、アールグレイは素早く2撃目の突きを繰り出す!

 

姿勢が悪いので回避は出来ない………

 

すると、弘樹は!!

 

「!!」

 

何と!

 

左手に握っていた手綱を口で咥え、左手で左腰に挿していた鞘に納めていた英霊を逆手で抜き放ち、アールグレイのフルーレの突きを受け止める。

 

「!?」

 

アールグレイは驚きながらも、素早く手綱を引いて、愛馬と共に離脱する。

 

「…………」

 

その間に弘樹はバランスを取り直し、シュトゥルムをその場で停まらせる。

 

そして、左手で握っていた英霊と、右手に握っていたM1911A1を交換すると、手綱を口から放し、アールグレイに向かって突撃した!

 

「…………」

 

一方のアールグレイも、弘樹と同じ様に右手にフルーレ、左手にウェルロッドを握ると、弘樹に向かって突撃!

 

「「………!!」」

 

お互いに突撃し合った弘樹とアールグレイが、M1911A1とウェルロッドを其々に相手に発砲!

 

弾丸は寸分違わず同じコースを辿り………

 

ウェルロッドの弾丸とM1911A1の弾丸は、互いに衝突し合って潰れ、地面に落ちる!

 

「おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!」

 

「!!」

 

と、そこで両者の距離は零距離となり、右手の英霊とフルーレを振るう。

 

ぶつかり合った英霊とフルーレが火花を散らした瞬間!

 

「「!!」」

 

弘樹とアールグレイは、お互いに左手を相手に突き出し、頭に向かって発砲!

 

だが、どちらも狙いが甘かった様で、銃弾はお互いの顔の横を掠める様に通り過ぎる。

 

「「…………」」

 

両者は再び距離を空ける。

 

騎馬対騎馬の対決は、やはり1撃離脱に成り易い。

 

お互いに決め手を欠いているこの状況では、中々決着は付かなかった。

 

何かこの拮抗状態を破るモノがなければ、決着は付かないであろう………

 

「「…………」」

 

距離を取った弘樹とアールグレイは、睨み合いへと発展する。

 

(………アレを試してみるか?………しかし、それには一瞬でも奴に隙が出来なければ………)

 

と、弘樹が何か手を思いついた様だが、アールグレイに隙が無ければ使えないらしく、隙を作らせるべく思案を巡らせる。

 

………その時!!

 

突如、2人の間を、砂煙を立てながら『何か』が通り過ぎて行った!!

 

「!?」

 

予想外の事態に、アールグレイの愛馬が嘶く。

 

「! 隙有りっ!!」

 

絶好の隙を見逃さず、弘樹は右手の英霊を再び逆手に握ったかと、アールグレイに向かって投擲した!

 

「! 窮したか! 舩坂 弘樹っ!!」

 

だが、隙を衝いたにも関わらず、アールグレイは素早く対応。

 

飛んで来た英霊を、アッサリとフルーレで弾き飛ばす!

 

(自らの得物を投げるとは………何を考えて………!?)

 

得物を投げると言う、軽率とも取れる行動をした弘樹に、アールグレイは苦い顔を浮かべた次の瞬間には、驚愕の表情を浮かべた。

 

「…………」

 

何故なら、先程まで離れていた筈の弘樹が、目の前に飛び掛かって来ていたからである!

 

(タイ捨術!!)

 

「むんっ!!」

 

飛び掛かって来た弘樹は、そのままアールグレイに覆い被さる様にして、左脇にアールグレイの頭を抱え込み、更に左足でロック、クラッチする!

 

「グウッ!!」

 

「おおおおっ!?」

 

アールグレイが思わず声を漏らすと、弘樹はそのまま全体重を掛け、一気に馬上から落ちた!!

 

「!?」

 

その際に頸椎を圧迫され、後頭部に衝撃を受けたアールグレイは、四肢が麻痺し、意識が遠のく。

 

「!!」

 

そのアールグレイに、弘樹は馬乗りになったままで銃剣を抜き、両手で逆手に構えて振り被る。

 

「!!………」

 

だが、アールグレイも最後の意地で右腕に残る全ての力を集中させて自由にすると、フルーレで弘樹の首目掛けて突きを繰り出す!

 

「!!」

 

その瞬間に弘樹も銃剣を振り降ろす!!

 

そして!!

 

弘樹の銃剣がアールグレイの胸を突き、アールグレイのフルーレが弘樹の喉を突いた!!

 

「「…………」」

 

一瞬の静寂が、辺りを支配する。

 

やがて、戦死を告げるブザーが………

 

アールグレイの方から成り響いた。

 

「………私の負けだ」

 

静かにそう言うアールグレイ。

 

「…………」

 

弘樹は、そのアールグレイの身体の上から退くと、戦闘服の襟を貫いていたフルーレを抜き放つ。

 

そう………

 

あの時のアールグレイの突きは僅かにズレ………

 

弘樹の喉ではなく、戦闘服の襟を貫いていたのだ。

 

正に紙一重であった………

 

と、その直後!!

 

一際大きな爆発音が鳴り響く!

 

「「!!」」

 

その音がした方向をバッと向く弘樹とアールグレイ。

 

それは、この準決勝の決着を告げる爆音だった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

弘樹とアールグレイの対決に決着が付く寸前………

 

みほVSダージリンの戦いは………

 

「そこですっ!!」

 

ダージリンの声と共に、チャーチルの主砲が火を噴く。

 

「麻子さん! 右に流してっ!!」

 

「くうっ!!」

 

みほがそう指示すると、麻子はⅣ号を右へと向かわせ、チャーチルの砲弾はⅣ号の車体左横のシュルツェンを破壊する!

 

「撃ちますっ!!」

 

そこで今度は、華の声と共にⅣ号が発砲!

 

「車体を左へ傾けなさい!」

 

だが、ダージリンのそう言う指示が飛ぶと、チャーチルは車体を左へと傾ける。

 

Ⅳ号の砲弾はチャーチルの車体右側面に命中したが、角度が浅かったので受け流される。

 

「ジグザグに後退っ!!」

 

「クッ………」

 

みほのそう言う指示が飛び、Ⅳ号は稲妻の様なジグザグを描きながら後退。

 

途中でチャーチルが発砲して来たが、回避に成功する。

 

「ハア………ハア………」

 

みほの顔は煤や付着した砂が汗を吸って出来た泥に塗れており、髪もボサボサになって来ており、明らかに疲労困憊していた。

 

「フウ………フウ………」

 

そして、ダージリンも同じ様な状況である。

 

(そろそろ限界………決着を付けないと………)

 

コレ以上の長期戦は無理と判断したみほは、決着を付ける事を決意する。

 

「決着を付けます! 優花里さん! 最後の『アレ』を使います!!」

 

「! 了解です!!」

 

みほがそう言うと、優花里が『ある物』の用意に掛かる。

 

「………そろそろ決着を付けに来る頃ね」

 

一方、ダージリンもみほが決着を付けに来る事を読んでおり、疲労困憊の顔に不敵な笑みを浮かべる。

 

「………行きますっ!! 全速前進っ!!」

 

とそこで、Ⅳ号は全速でチャーチル目掛けて突っ込んだ!!

 

「突っ込んで来ます!」

 

「アッサム! 良く狙いなさいっ!!」

 

「ハイッ!!」

 

オレンジペコがそう言うと、ダージリンはアッサムに向かって叫び、アッサムは食い入る様に照準器を覗き込み、砲撃のタイミングを見計らう。

 

そして、絶好の砲撃タイミングが訪れようとした瞬間………

 

「今ですっ!!」

 

みほが叫んだかと思うと、Ⅳ号のスモーク・ディスチャージャーから煙幕が放出された。

 

「!? まだ煙幕が残っていたっ!?」

 

「よ、Ⅳ号ロストっ!!」

 

ダージリンが驚きの声を挙げ、アッサムがⅣ号の姿を見失ったと報告する。

 

「クッ! 何処に!?………」

 

煙幕が辺りに立ち込める中、Ⅳ号の姿を探すダージリン。

 

この煙幕は予想外だった為、位置が掴めない。

 

と、その瞬間!!

 

チャーチル後方の煙幕が揺らめいたかと思うと、Ⅳ号が姿を現す。

 

「! 何時の間にっ!! 砲塔旋回っ!!」

 

「貰いましたっ!!」

 

ダージリンがそれに気づいて砲塔旋回の指示を飛ばすが、その瞬間にみほの叫びが木霊し、Ⅳ号の主砲から徹甲弾が、チャーチルの車体後部に向かって放たれた!

 

………しかし!!

 

「ダージリン様ああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーッ!!」

 

そう言う叫び声と共に、ローズヒップのクルセイダーが、チャーチルとⅣ号が放った徹甲弾の間に割り込んだ!!

 

「!?」

 

「えっ!?」

 

ダージリンとみほが驚愕を露わにした瞬間に、割り込んだクルセイダーにⅣ号が放った砲弾が命中!

 

ローズヒップのクルセイダーは、まるで玩具の様にブッ飛び、地面に叩き付けられた後、ゴロゴロと転がって行き………

 

やがてゴルフコース内に在った池に水没した!

 

「!?」

 

そのクルセイダーが水没する瞬間を見てしまったみほの脳裏に、一瞬だが黒森峰時代………前回の全国大会・決勝戦で仲間の戦車が水没してしまった場面が過る。

 

「! 隙有りですわっ!!」

 

そしてその隙を見逃すダージリンではなかった。

 

砲塔旋回を終えたチャーチルが、Ⅳ号へ向かって砲弾を吐き出す!

 

「!?」

 

砲撃音でハッと我に返るみほだったが、指示が間に合わない!

 

「クウッ!!」

 

だが、その瞬間!

 

麻子が咄嗟の判断で、Ⅳ号を僅かに旋回させた!!

 

チャーチルの放った砲弾は、Ⅳ号の砲塔右側面に命中したが、角度が付いて居たのと1度シュルツェンに当たって減速した事により、弾かれる!

 

「クッ!!」

 

「! 砲塔旋回装置損壊! 砲塔旋回が出来ませんっ!!」

 

「!?」

 

至近を掠めたシュルツェンの破片に一瞬怯んでいたみほに、華が悲鳴の様にそう報告を挙げる。

 

砲塔旋回装置が損壊した事で、Ⅳ号の主砲は正面を向いたままの状態で固まっていた。

 

更にそこで、無情にも煙幕が晴れてしまう………

 

「! 急速後退!!」

 

すぐにみほはⅣ号をバックさせてチャーチルとの距離を空ける。

 

対するチャーチルは、ゆっくりと超信地旋回を行い、車体正面をⅣ号へと向ける。

 

「フフフ………残念でしたわね」

 

不敵に笑いながらそう言い放つダージリン。

 

如何やら、砲塔旋回装置が損壊しているのを見抜いた様だ。

 

「…………」

 

みほの頬を冷や汗が流れる。

 

状況は誰が見ても正に絶体絶命だった………

 

「…………」

 

だが、みほの目にはまだ諦めの色は浮かんでいなかった。

 

その目は、まだ状況の打開を考えている目である………

 

(落ち着け………落ち着け、西住 みほ………どんな時でも冷静に考えるんだ………)

 

そう思いやるみほ。

 

その脳裏には、どんな状況にあろうと冷静に戦闘を熟す弘樹の姿が在った。

 

更に続けて、みほは練習試合でグロリアーナ&ブリティッシュと戦った時の事を思い出す。

 

(! そうだ!!)

 

そこで、みほの1つの案が浮かぶ。

 

「………皆。危険だけど、1つだけ勝てる戦法を思いついたの」

 

「なら御命令ください!」

 

「みほさんに従います」

 

「みぽりんの戦法だもん! 信じるよ!!」

 

「一蓮托生だ………」

 

みほがそう言うと、既に覚悟の決まってる優花里達からはそう声が挙がった。

 

「ありがとう、皆………」

 

思いついた戦法を皆に説明するみほ。

 

そして………

 

「パンツァー・フォーッ!!」

 

気合のパンツァー・フォーと共に、再度ダージリンのチャーチルに向かって突撃した!!

 

「Ⅳ号、突撃して来ます!」

 

「アッサム! 恐らく練習試合の最後に見せたあのドリフトよ!! 方向を見極めて砲塔を旋回させなさい!!」

 

「ハイッ!!」

 

オレンジペコがそう言うと、ダージリンはそう叫び、アッサムが全神経を照準器内のⅣ号へ集中させる。

 

(右………左………)

 

Ⅳ号がドリフトするのにどちらへ旋回するのかを必死に見極めようとするアッサム。

 

と、その瞬間………

 

Ⅳ号の車体が、僅かに右へ切られた。

 

「! 左っ!!」

 

だが、アッサムはそれがフェイントである事を見抜き、砲塔を右へ旋回させた。

 

直後に左へと操縦桿を切ったⅣ号の姿が、再び照準器に重なる。

 

その重なったⅣ号が、履帯から土片を巻き上げながら、ドリフトを開始する。

 

「! そこだっ!!」

 

その瞬間にアッサムはトリガーを引いた!

 

チャーチルの主砲が火を噴き、砲弾がドリフトしているⅣ号の1番荷重が掛かっている、左履帯に命中!

 

履帯と転輪、駆動輪が吹き飛び、荷重が掛かって居た場所を失ったⅣ号の車体が回転する様に浮き上がった!

 

「勝ったっ!!」

 

思わずそう声を挙げるダージリン。

 

彼女は今、完全に勝利を確信していた………

 

「!?」

 

だが、その直後にダージリンの顔は驚愕に染まった。

 

何故なら………

 

空中に巻き上げられたⅣ号のキューポラから………

 

まだみほが姿を見せたままだったからだ!

 

「…………」

 

錐揉みする様に空中で回転するⅣ号から姿を見せたまま、ダージリンのチャーチルをジッと見据えるみほ。

 

Ⅳ号の主砲は、チャーチルの車体後部上部………エンジン部に向けられている。

 

「!! 急速後退っ!!」

 

ダージリンは即座にその狙いを見抜き、後退指示を出す。

 

チャーチルが急速で後退を始める………

 

かに思われた瞬間!!

 

ガキィンッ!!と言う、金属が金属を咬んだ様な音が響き、チャーチルの動きが止まった!

 

「!?」

 

ダージリンが音のした場所を確認すると………

 

チャーチルの右側の履帯が、サイドスカートを咬んで、動かなくなっていると言う光景が広がっていた。

 

「まさか、あの時に!?………」

 

実はM3リーと戦った時………

 

最後の体当たりを、チャーチルの右側面で受け止めたが………

 

その際に実は、サイドスカートに歪みが生じていたのだ。

 

そこへ、Ⅳ号との勝負中に受けた被弾が重なり………

 

今まさに、ダージリンにとっては最悪、みほにとっては絶好のタイミングで履帯を咬んだのである!

 

「今ですっ!!」

 

「………発射っ!!」

 

そこでみほの指示が飛び、錐揉み中のⅣ号の中で必死に踏ん張り、照準器を覗き続けていた華が、トリガーを引いた!!

 

砲弾は一直線に、チャーチルのエンジン部へと向かう。

 

その迫り来る砲弾を見てダージリンは………

 

「………お見事」

 

まるで悟ったかの様な穏やかな笑みを浮かべ、そう呟いた。

 

その直後にⅣ号の放った砲弾は、チャーチルのエンジン部へ命中!

 

爆発と共に、火柱がチャーチルから立ち上る!!

 

そこでⅣ号も地面に叩き付けられる!

 

残っていたシュルツェンや履帯、転輪など様々なパーツを撒き散らしながら転がった後に停止するⅣ号。

 

「~~~ッ!………皆、大丈夫?」

 

と、歪んでいたキューポラのハッチを抉じ開けて、みほが車外へ姿を晒しながらそう言う。

 

「な、何とか無事であります~」

 

「流石に今回のは………アクティブ過ぎました………」

 

「私もう暫くジェットコースターとか乗れない~………」

 

「戦車道で無かったら如何なっていた事やら………」

 

そう言う台詞と共に、優花里、華、沙織、麻子が同じ様に其々のハッチを抉じ開け、這い出る様に車外へ姿を晒す。

 

と、そこで………

 

Ⅳ号の上部に白旗が上がる。

 

「!? チャーチルはっ!?」

 

そこでハッとして、ダージリンのチャーチルを見やるみほ。

 

そこには、既に白旗が上がって居るチャーチルのキューポラで、静かな笑みを浮かべ、拍手をしているダージリンの姿が在った。

 

「ダージリンさん………」

 

「おめでとう、みほさん………貴方の勝ちよ」

 

みほが呟くと、ダージリンはみほの勝利を祝福した。

 

と、その時………

 

観客のモノと思われる歓声と、溢れんばかりの拍手が聞こえて来た。

 

「!? 何っ!?」

 

「何ですの?」

 

突然の歓声と拍手に戸惑うみほとダージリン。

 

最初は試合の決着した事でのモノかと思ったが、まだ試合終了を告げるアナウンスは流れていない。

 

では、一体?

 

その答えは、洋上………

 

呉造船工業学校艦隊とグロリアーナ&ブリティッシュ艦隊の戦闘にあった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

遂に、因縁の対決にも終止符が打たれました………
みほVSダージリン。
弘樹VSアールグレイ。
共に激戦の末に………
みほと弘樹が、見事に勝利を納めました!
遂に大洗、決勝戦進出です。

しかし、試合終了同前の時に響いて来た歓声。
その原因は洋上の戦いにあり?
果たして何が起こったのか?

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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