ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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新年あけましておめでとうございます。

今年も『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』をよろしくお願い致します。

今年度末にはガルパン最終章の1章が公開です。

この作品もそれまでにはいよいよ劇場版に突入出来ると思います。


第175話『不敵なるダージリンさんです!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第175話『不敵なるダージリンさんです!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦車道・歩兵道全国大会、決勝リーグ・準決勝の試合会場………

 

大洗町に似た港町を模した演習場………

 

みほ達を追う、ダージリンが率いるグロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊………

 

「ルクリリ………アレ程油断するなと言っておいたのに………」

 

ルクリリが撃破されたとの報告を受けて、ダージリンが呆れた様に溜息を吐く。

 

「ジャスパーさんもやられたみたいですね………」

 

オレンジペコも、ジャスパーが戦死判定となった事を聞いて、表情を曇らせる。

 

「ですが、残存部隊が例の歩兵部隊の発見と足止めに成功しています。ローズヒップとニルギリもまだ粘っている様ですし、コチラが優勢です」

 

そこでアッサムが、相変わらずパソコンを弄り居ながらそう報告する。

 

「アッサム、データ主義が悪いとは言わないけど、それだけだと足をすくわれるわよ」

 

しかし、ダージリンはそう言って、やんわりと釘を刺す。

 

そして、キューポラの覗き窓越しに、逃げる大洗機甲部隊の先頭を行くⅣ号を見据える。

 

(そろそろかしらね………決着を付けましょうか、みほさん)

 

そう言って不敵に笑うダージリン。

 

現在彼女は、マチルダⅡを3輌、アキリーズを2輌、チャーチル・ガンキャリアを3輌率いて、みほ達を追撃している。

 

そう………

 

何時の間にか………

 

残り2輌のチャーチルと………

 

ブラックプリンスの姿が見えなくなっていた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

街中のとある地点………

 

「ハイヤーッ! シュトゥルム! 急いでくれっ!!」

 

弘樹がそう言うと、シュトゥルムは返事の様に嘶く。

 

蹄の音を鳴らしながら、街中を駆け抜けて行くシュトゥルムに跨った弘樹。

 

と、その前方に歩兵らしき影が現れる。

 

「!!」

 

ブリティッシュ歩兵かと思い、四式自動小銃を構える弘樹だったが………

 

「ストップ! ストーップッ!!」

 

「先輩! 僕達です!!」

 

その歩兵らしき影の中に居たジェームズと勇武がそう声を挙げる。

 

「! モンロー! 柳沢!」

 

弘樹は人影の前でシュトゥルムを止める。

 

歩兵らしき影は、ハムスターさん分隊、ワニさん分隊、おおかみさん分隊の残存歩兵だった。

 

「無事だったのか」

 

「ハイ。戦車チームの皆さんが全滅した後、僕達は撤退しましたので」

 

「けど、神狩の奴が殿に残って、やられてもうた………」

 

竜真がそう言うと、豹詑が表情に影を浮かべてそう言う。

 

「そうか………恐らく今、敵の本隊と我々の本隊は交戦状態に入っている。戦力比はまだ敵の方が上だ。オマケに………」

 

そう言って弘樹が空を見上げると、そこでは制空権を争っている一航専の航空隊とグロリアーナ&ブリティッシュの航空隊の姿が在った。

 

「制空権が確保されていないとなると、航空支援も望めない。一刻も早く援護に駆け付けねばならん。全員、小官に続け!」

 

そしてそう号令を掛けると、再びシュトゥルムを駆け出させる。

 

「「「「「「「「「「了解っ!!」」」」」」」」」」

 

すぐさまその後に続く残存ハムスターさん分隊達だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び、グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊を誘い出しているみほ達は………

 

「間も無く、『Gエリア』………『ゴルフ場』です! ココへ敵部隊を誘い込み、歩兵部隊と切り離した後に、戦車を各個撃破します!」

 

「ゴルフ場なら、木々が生い茂って居て、騎兵が動くには不向きですからね」

 

間も無く『Gエリア』………『ゴルフ場』が近い事を確認したみほがそう指示を飛ばし、優花里がそう言う。

 

ゴルフ場へ誘い出そうとしている理由………

 

それは、優花里の言う通り、ブリティッシュ歩兵を切り離す算段の為である。

 

ブリティッシュ歩兵部隊は騎兵を中心としており、非常に高い機動力を有している。

 

だが、木々が生い茂っている場所など、障害物の多い所ではその機動力は損なわれる。

 

そこでみほは、この試合会場で最も木々が生い茂る場所であるゴルフ場にグロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊を誘い出し、先ずは騎兵の機動力を奪う。

 

そして、歩兵部隊と戦車チームの足並みが乱れたところで、戦車チームを各個に撃破する作戦である。

 

(でも、ダージリンさんの事だから、もうこの手を読んでいる可能性も………その場合はやっぱり、ゴルフ場に入る前に勝負を掛けてくる可能性が………)

 

「! 西住さん! 前だっ!!」

 

「!!」

 

と、思案していたところで麻子の声が挙がり、みほがペリスコープで正面を見やると、そこには………

 

大洗機甲部隊の進路を妨害する様に陣取っている、2輌のチャーチルの姿が在った!

 

「! 先回りされた! やっぱり読まれて………! 左へ避けてっ!!」

 

「!!」

 

みほがそう言った瞬間には、麻子はⅣ号を左に動かす。

 

「「!!」」

 

後続のヘッツァーとルノーB1bisもそれに続く様にハンドルを切る。

 

直後に、先回りして陣取っていたチャーチル2輌が発砲!

 

2発の砲弾が、先程までⅣ号が居た場所に着弾し、アスファルトの破片を巻き上げる。

 

「今だ! 次弾装填の隙を狙えっ!!」

 

「バズーカやパンツァーファウストばかりが戦車への攻撃手段じゃないぞっ!!」

 

とそこで、数名の大洗突撃兵の面々が梱包爆薬や収束手榴弾、吸着地雷を手に、チャーチルへ果敢にも肉薄攻撃を仕掛けて行く。

 

「アレ? ねえ、あのチャーチル、何か後ろに付いてるよ?」

 

「アラ? ホントですね」

 

すると沙織が、正面に見えるチャーチルが2両とも、タンクの様に見える物を牽引している事に気づき、華も照準器越しにそれを確認する。

 

「! イケナイッ!!」

 

「皆さん! 逃げて下さいっ!!」

 

みほはそれが何であるかを瞬時に悟り、優花里が悲鳴の様な声を挙げた瞬間!

 

チャーチルの車体正面………本来ならば前方機関銃が装備されている場所から………

 

突撃して来ていた大洗歩兵目掛けて、火炎が発射された!

 

「!? なっ!?」

 

「ぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!」

 

突っ込んで行っていた大洗突撃兵達はかわす事が出来ず、全員が火炎を浴びてしまう。

 

更には爆薬に引火し、次々と誘爆。

 

一瞬にして、突っ込んだ大洗突撃兵の面々は全滅した。

 

「な、何アレッ!?」

 

「『チャーチル・クロコダイル』………前方機銃の代わりに火炎放射器を装備した『火炎放射戦車』です!」

 

驚愕の声を挙げる沙織に、優花里が火炎を放ったチャーチル………

 

『火炎放射戦車』………『チャーチル・クロコダイル』の事を説明する。

 

「オイオイ、如何すんだよ!? アレじゃ近づけねえよっ!!」

 

「コレでは挟み撃ちにされます!」

 

了平と楓がそう声を挙げる。

 

行く手をチャーチル・クロコダイルに阻まれ、後方からはグロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊の本隊が迫っている。

 

正に前門の虎、後門の狼である。

 

「………クッ! 華さん! 牽引車を狙えますかっ!!」

 

「駄目です! 車体の陰になって居て狙えませんっ!!」

 

みほは華に、チャーチル・クロコダイルが牽引している火炎放射用の燃料タンクを狙えないかと尋ねるが、華が言う通り、弱点が分かっている為、チャーチル・クロコダイルは昼飯の角度を取って、車体でタンクを隠していた。

 

「! 敵主砲、コチラに指向中っ!!」

 

「! 回避っ!!」

 

「駄目だ! もう1輌からも狙われている!!」

 

と、華が1輌のチャーチル・クロコダイルの主砲がコチラに向けられようとしているのを見てそう叫び、みほは慌てて指示を飛ばすが、麻子がそう言い、もう1輌のチャーチル・クロコダイルにも狙われている事を報告する。

 

2門の砲に狙われ、逃げ場の無いⅣ号。

 

そして、2輌のチャーチル・クロコダイルから、砲弾が放たれる!

 

「!?(やられる!!)」

 

みほがそう思った瞬間!!

 

「わああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

みどり子の叫び声と共に、ルノーB1bisが前進!

 

Ⅳ号の前へと躍り出ると、自らの身でチャーチル・クロコダイルの砲弾を受け止める!!

 

「! カモさんチームッ!!」

 

みほの悲鳴の様な声が挙がった瞬間に、爆炎に包まれたルノーB1bisから白旗が上がる。

 

「西住さん、申し訳ありません………ですが、貴方には如何しても生き残って貰わないと………」

 

「園さん………クッ!」

 

「グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊! 間も無く此方を射程内に納めます!!」

 

みどり子から申し訳無さそうな声が挙がる中、みほが苦い顔をし、優花里がそう報告を挙げる。

 

「全車、砲撃用意………」

 

ダージリンがそう言うと、グロリアーナ戦車部隊が一斉にⅣ号とヘッツァーに主砲を向け始める。

 

ブリティッシュ歩兵達も、砲兵が対戦車砲を設置し始め、対戦車兵がPIATを構える。

 

「万事休すか………」

 

麻子がそう呟く。

 

「………いや、そうでもない様だよ」

 

だがそこで、迫信がそんな台詞を呟いた。

 

「会長? 何を………」

 

逞巳が迫信の言葉の意味が分からずに聞き返そうとした瞬間………

 

空からエンジン音の様な物が聞こえて来た。

 

「!?」

 

「! まさかっ!?」

 

それを聞いたみほとダージリンは、同時にハッチを開けて車外へと姿を晒すと、上空を見上げる。

 

そこには………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

ルクリリが率いていた分隊の残存戦力と交戦中のアヒルさんチームとペンギンさん分隊は………

 

「うおおおおっ! 死に曝せ、アホンダラッ!!」

 

アドレナリンの過剰分泌か、少々過激な言葉と共に、オレガノに正面から腰目掛けてのタックルを食らわせる大河!

 

「おうっ!?………バーッハッハッハッハッ! やるのうっ!!」

 

一瞬怯んだ様な様子を見せたオレガノだったが、すぐに平然とし、タックルして来た大河を、背中側から抱え込む様に捕まえる!

 

「!?」

 

「ぬあああっ!!」

 

そしてパワーボムの様に持ち上げた後、脳天から地面に叩き落す!

 

「ゴハッ!?………バカタレイッ!!」

 

「グオッ!?」

 

一瞬意識が飛びかけた大河だったが、持ち前の気力で強引に引き戻し、オレガノの顔面を蹴って脱出する。

 

「オリャアアッ!!」

 

そしてお返しとばかりに、オレガノに延髄斬りを見舞う!

 

「バッ!?」

 

「オラララララララーッ!!」

 

更に畳み掛けるかの様にナックル・パンチを連続で見舞う。

 

「ゴハッ!? オウッ!? ブベッ!?」

 

サンドバック状態になるオレガノ!

 

「オリャアッ!!」

 

「何のぉっ!!」

 

だが、大河が大振りの1撃を繰り出した瞬間、そのナックル・パンチに向かって頭突きを繰り出す!

 

「!? おうわっ!?」

 

思わず衝撃を受け、頭突きを喰らった手を振りながら、大河が後ずさる。

 

「ブリティッシュ・ラリアートッ!!」

 

そして、大河の首に向かってラリアットを掛ける!

 

「!? ゴフッ!?」

 

真面に喰らい、数メートル引き摺られたかに見えた大河だったが………

 

「!!」

 

そこで足を踏ん張り、無理矢理オレガノを止める!

 

「!? んなぁっ!?」

 

「男は根性やぁっ!!」

 

そのまま、サイクロン・ホイップで投げ飛ばす!

 

「ゴバッ! まだまだっ!!」

 

「上等じゃボケェッ!! 吐いた唾呑むなやぁっ!!」

 

更に激しいプロレス技の応酬を繰り広げる大河とオレガノ。

 

「………あそこだけ別の戦いになっているなぁ」

 

そんな2人の戦いの様子を見て、大詔がそう漏らす。

 

「「「「「うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーッ!!」」」」」

 

「!?」

 

だがそこで悲鳴が聞こえて来て、その方向を見やり、チャーチル・ガンキャリアが放った榴弾で、複数のペンギンさん分隊員が戦死しているのを目撃する。

 

「おっと! 気を取られている場合じゃなかった! しかし………厳しいな」

 

未だに健在のマチルダⅡ、アキリーズ3輌、チャーチル、チャーチル・ガンキャリアの姿を見て、大詔は苦い顔で呟く。

 

対戦車兵の大半がアッセンブルEX-10に編成されてしまった為、現在大洗の各随伴歩兵分隊は対戦車火器が不足しているのである。

 

現在最も有効な対戦車兵器は、突撃兵達による肉薄攻撃のみだった。

 

「根性ーっ!!」

 

八九式も果敢に砲撃を行っているが、如何せん攻撃力不足であり、先程から命中こそしているものの、全て弾かれてしまっている。

 

「ええい! こうバカスカ撃たれては狙いどころではないわっ!!」

 

唯一の希望とも言える明夫の7.5 cm PaK 40も、グロリアーナ戦車部隊から激しい砲撃に晒され、狙いを付けられない。

 

「何か手は………」

 

打開策はないかと、必死に頭を巡らせる大詔。

 

と、その時………

 

頭上から、サイレンの様な音が聞こえて来た。

 

「!? コレはっ!?」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

大詔だけでなく、その場に居た全ての人間が頭上を見上げる。

 

そして、目に飛び込んできたのは………

 

「グーテンターク! グロリアーナの淑女とブリティッシュの紳士諸君! だが、もうおやすみの時間だぁっ!!」

 

そう言う台詞と共に、37ミリ機関砲をブッ放した、ハンネスのJu87 G-1の姿だった!

 

37ミリ機関砲弾が、チャーチル・ガンキャリアの上面部に命中!

 

派手に火柱が立ち上ると、チャーチル・ガンキャリアは白旗を上げる。

 

そしてそのハンネス機に続く様に、スツーカと九九艦爆が急降下して来る!

 

次々に爆弾が、ルクリリ部隊の残存戦力に向けて投下される!!

 

「「「「「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」」」」」

 

至近距離への着弾で、破片と衝撃波を浴びたブリティッシュ騎兵達が纏めて戦死判定を喰らう。

 

更に、天板に1トン爆弾が直撃したマチルダⅡが、派手な爆炎に包まれたかと思うと、直後に白旗を上げた。

 

「うおおっ!? 何だっ!?」

 

とそこで、近場で爆発があり、オレガノが漸く爆撃を受けている事に気づく。

 

「余所見しとる余裕が有るんかぁっ!?」

 

その瞬間に大河は、渾身の拳をオレガノのボディへ叩き込む!

 

しかし………

 

「!? つあぁっ!?」

 

何と!!

 

大河の方が殴った手を押さえながら後ずさる。

 

「バーッハッハッハッ! 余裕余裕!」

 

勝ち誇りながら馬鹿笑いを挙げるオレガノ。

 

如何やら、拳が来るのを読んでいて、腹筋を締めて受け止めたらしい。

 

「そうれっ!!」

 

「!? うおおっ!?」

 

そしてオレガノは、怯んでいた大河を、頭上で掲げる様にリフトアップする。

 

「そうらっ! 飛んでけぇっ!!」

 

「おおわぁっ!?」

 

そのまま、ボディスラムで投げ飛ばす!

 

「!? ゴバッ!?」

 

大河は受け身が取れず、地面に叩き付けられる。

 

(ア、アカン………打ち所が悪かったみたいや………)

 

意識が朦朧とし始め、大河は頭を振る。

 

「クウッ! これしきぃ………」

 

何とか立ち上がるが、足元がフラつき、仰け反る様な姿勢になる。

 

(グウウ………!? アレは!?)

 

だがそこで、大河は霞む視界で何かを捉える!

 

「うおおおおっ!!」

 

その瞬間に、最後の気力を振り絞って、オレガノ目掛けて突進して行く!

 

「バーッハッハッハッ! 返り討ちだぁっ!!」

 

オレガノは返り討ちにしようと、両手を広げる様な姿勢を取って待ち構える。

 

と、そこで!!

 

「おりゃあっ!!」

 

大河は身に着けていた戦闘服以外の全ての装備を投棄し、力の限り思いっきり跳躍した!

 

「!? 何っ!?」

 

そんな大河を目で追い、上を見上げるオレガノ。

 

「良し! 掴んだでぇっ!!」

 

すると、跳躍した大河は、上から降って来た『物』をキャッチする。

 

………それは、九九艦爆が投下した、60キロ爆弾だった!

 

「なあっ!?」

 

「コレがホントの………パワーボムじゃいっ!!」

 

驚くオレガノに向かって、大河は両手で60キロ爆弾を空中で振り被り、オレガノ目掛けて落とす様に投げつけた!

 

「!? バアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!?」

 

思わず声を挙げたオレガノの脳天に60キロ爆弾は命中!

 

オレガノの姿が巨大な爆煙に包まれた!!

 

「アデッ!?」

 

着地に失敗しながら地面に降りる大河。

 

直後に爆煙が晴れ、中から………

 

「…………」

 

ヘルメットの頭頂部がヘコんで煤けているオレガノが、目を回した状態で倒れている姿が露わになる。

 

当然、戦死判定だ。

 

「ヘッ………ええ勝負やったで」

 

そのオレガノ姿を見ながら、大河は笑ってそう呟いたのだった。

 

「ハハハハハハハッ! 如何だぁ! ブリテン共ぉっ!!」

 

一方、ハンネスは歓喜の声と共に37ミリ機関砲弾を撃ちまくっている。

 

「オイ、ルーデル! お前がコッチに来て如何する! 西住総隊長の本隊を援護しないと駄目だろうが!!」

 

しかしそこで、大詔がハンネスが本来向かうべきはみほの方である事を指摘する。

 

「心配要らん! 今回はアッチに譲ったからな!!」

 

「アッチ?」

 

だが、ハンネスからはそう言う返事が返って来て、大詔は首を傾げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのみほの居る大洗機甲部隊の本隊は………

 

「来ますわ! 回避を!!」

 

「無理ですっ!!」

 

チャーチル・クロコダイルの車長と操縦士からそう言う声が挙がった瞬間………

 

その砲塔上部に、『何か』が命中!

 

爆煙が上がったかと思うと、チャーチル・クロコダイルは撃破されたと判定される。

 

チャーチル・クロコダイルの砲塔上部に突き刺さった『何か』………

 

それは、75ミリの砲弾であった。

 

「コチラへ来ましたわっ!!」

 

と、もう1輌のチャーチル・クロコダイルの車長がそう叫ぶ。

 

そのペリスコープ越しの視線の先には、上空を飛ぶ2機の双発の大型機の姿が在る。

 

2機の双発大型機は、編隊を組んだまま旋回し、チャーチル・クロコダイルの方を向こうとしている。

 

そして、その機首がチャーチル・クロコダイルへと向けられた瞬間………

 

先端に付いて居たピトー管の様な物が火を噴いた!!

 

直後に、チャーチル・クロコダイルのエンジン部と牽引していた火炎放射用の燃料タンクに砲弾が命中!

 

燃料タンクが派手に爆発し、辺り一面が火の海となって、チャーチル・クロコダイルも白旗を上げる!

 

「おお~! コレは凄いね~!」

 

「ありがとうございますっ!!」

 

その光景に杏がそう漏らし、みほはお礼と共に2機の双発大型機に向かって手を振る。

 

「………まさかあの様な機体が一航専に有ったとは」

 

対照的に、ダージリンは初めて苦い顔を浮かべてそう呟いた。

 

「『キ109』………」

 

アッサムが、上空を旋回している2機の双発大型機………『キ109』を見ながら、パソコンにデータを出してそう呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『キ109』

 

大日本帝国陸軍が生んだ傑作爆撃機『四式重爆撃機「飛龍」』をベースに改造を行った特殊防空戦闘機である。

 

この機体の最大の特徴………

 

それは、航空機でありながら、『75ミリ砲』を搭載していると言う事である。

 

コレは八八式七糎半野戦高射砲をベースとしたもので、元々はB-29をアウトレンジで迎撃する為のものだったが………

 

肝心の機体の高高度性能不足の為、戦果を挙げられず、上陸用舟艇攻撃用に温存され、そのまま終戦を迎えた機体である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今、悲願であったB-29を墜とす事は叶わず、無念のままに終戦を迎えた機体は………

 

大洗の頼もしい味方となって、活躍していた!

 

チャーチル・クロコダイル2輌を仕留めたキ109は、更にグロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊・本隊へも75ミリ砲弾の雨を降らせる!

 

「「「「「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」」」」」

 

「「「「「きゃああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」」」」」

 

頭上から降って来る75ミリ砲弾の雨に為す術も無く、グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊・本隊に損害が生じる。

 

「クッ! 高射砲部隊! 対空砲火っ!!」

 

ダージリンは焦った様子でそう指示を飛ばす。

 

高射砲部隊が、上空のキ109に向かって対空砲火を撃ち上げる。

 

キ109の周辺で、黒煙を伴った爆発が次々に起こり、溜まらず高度を上げて一旦離脱に掛かるキ109。

 

だが、そこへ………

 

「見つけたぞ!」

 

「オノレェッ! スツーカ部隊と九九艦爆部隊は囮か!!」

 

メビウス1やラーズグリーズ隊を切り抜けた様子のスピットファイア編隊が、キ109を目指して飛んで来る。

 

「! 味方の航空部隊です!」

 

「コレで一安心ですわね………」

 

オレンジペコがそう声を挙げると、ダージリンも安堵の表情を浮かべる。

 

と、その瞬間!!

 

1機のスピットファイアが、上空から降って来た機銃弾を浴びて炎上した。

 

「!? 何っ!?」

 

編隊長が驚きの声を挙げ、炎上した機体のパイロットが脱出したかと思うと………

 

上空から1機の戦闘機らしき機体が急降下して来て、擦れ違い様にまたスピットファイアを1機撃墜する。

 

「! 敵機かっ!?」

 

「!? あの機体は!? まさかっ!?」

 

編隊長がそう言った瞬間、別のスピットファイアのパイロットが現れた機体を見て驚愕の声を挙げる。

 

大型の逆ガルウイングを持つその機体は………

 

「『烈風』だとっ!?」

 

「うおっ! 初めて見たっ!!」

 

驚愕の声を挙げるスピットファイア編隊のパイロット達。

 

 

 

 

 

そう………

 

その機体は零戦の後継機として開発されながら………

 

様々な要因による開発遅延により、量産・配備されず、実戦を経験しえなかった幻の日本海軍次期主力戦闘機………

 

『烈風』だった!

 

 

 

 

 

「『烈風』よ! あの大戦の無念………晴らす時は来たっ!!」

 

そのコックピットで、パイロットである六郎は、風防越しにスピットファイヤ編隊を見据えてそう吠えるのだった。

 

「凄い! まさか烈風が飛んでいる光景に御目に掛かれるなんて!」

 

幻の名機が大空を飛んでいる様に、優花里が感動の声を漏らす。

 

「チャンスです! 障害は無くなりました! このまま一気にG地点へ向かいますっ!!」

 

「「「「「了解っ!!」」」」」

 

とそこで、みほの指示が飛び、大洗機甲部隊は再びゴルフ場を目指し始める。

 

「クッ! 動ける者だけで良いわ! 続きなさいっ!!」

 

「「「「「イエス、マイロードッ!!」」」」」

 

苛立った様な声を挙げながら、動ける戦車と歩兵隊員達を連れて、ダージリンはみほ達を追撃するのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

新年最初の更新で、大洗に反撃の兆しです。
チャーチル・クロコダイルの攻撃でカモさんチームを失うも………
一航専の隠し玉『キ109』によってグロリアーナ&ブリティッシュに打撃を与えました。
いよいよみほとダージリンの対決も間近です。


では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

今年もよろしくお願いします。

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