ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

170 / 287
第170話『梓ちゃん、奮戦します!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第170話『梓ちゃん、奮戦します!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダージリンの戦術眼を攪乱する為………

 

弘樹を部隊長にした『アッセンブルEX-10』を再度結成し、独立部隊として行動させたみほ………

 

そしてその突撃兵と対戦車兵を中心とした、歩兵部隊のアッセンブルEX-10は………

 

TOGⅡ、チャーチル、マチルダⅡ2輌、アキリーズ2輌撃破と言う大戦果を挙げた………

 

更なる攪乱を考え、ウサギさんチームの梓に指揮を任せた新たな部隊を編制するが………

 

ダージリンはまだ手札を隠し持っていた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦車道・歩兵道全国大会、決勝リーグ・準決勝の試合会場………

 

大洗町に似た港町を模した演習場………

 

梓が率いている部隊………

 

「…………」

 

緊張が残る面持ちでM3リーのハッチから姿を晒している梓。

 

「梓さん、リラックスですよ、リラックス」

 

と、そんな梓の様子を察した清十郎がそう言って来る。

 

「! 清十郎くん………」

 

「その通りだ。過度の緊張はかえって隙を招くぞ」

 

「そんな難しく考えないで、訓練の延長線上だと思えば良いさ」

 

梓が僅かに驚きを示すと、彼女の乗るM3リーに追従する形で続いていたⅢ突のエルヴィンと、ポルシェティーガーのナカジマがそう言って来る。

 

「………皆さん。私の様な1年生に指揮されるのは不安だと思っているのは分かっています………ですが! 私なりに精一杯努力致します! どうか………力を貸して下さい」

 

とそこで梓は、カバさんチームとワニさん分隊、レオポンさんチームとおおかみさん分隊の皆に向かって改めてそう言い放つ。

 

「もう~、だから固いって~」

 

「西住総隊長が信じて指揮を託したんだ。ならば私達もまた信じるだけだ」

 

「しっかりフォローするぜ」

 

「オドオドすんな。うっとおしい」

 

そんな梓に向かって、ナカジマ、エルヴィン、磐渡がそう返し、白狼も一見厳しい様に見えるが、彼なりの励ましの言葉を送る。

 

「皆さん………ありがとうございます!」

 

梓はそんな一同に向かって深々と頭を下げる。

 

「………!!」

 

と、その時!!

 

覗き窓から外の様子を眺めていた紗希が、バッと覗き窓の方へ詰め寄った!

 

「!? 紗希ちゃん、如何したの!?」

 

「如何したの?」

 

「「??」」

 

あやがそれに気づき、あゆみが声を掛けた事で、桂利奈と優希も気づく。

 

「紗希ちゃん。何かを見つけたみたいなんだけど………」

 

「何かって?」

 

「!!………」

 

あやがそう言い、あゆみがそう問い返すと、梓は双眼鏡を取り出し、紗希が見ていた視線の先………

 

波が寄せては返す、海岸線の方を見やる。

 

だが、そこには何の姿も見えない………

 

「………何も居ない」

 

「見間違いだったんじゃない、紗希ちゃん」

 

「…………」

 

梓がそう言ったのを聞くと、あやは紗希にそう言うが、紗希は納得が行かない表情をする。

 

その表情が示した様に、双眼鏡では確認出来ない海岸の波打ち際には………

 

履帯の跡が………

 

波で消されかかった状態で残っていた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

みほが率いている部隊は………

 

全車がエンジン音を絞りながら、丁度海岸と山側を通っている幹線道路の中間地点である街中の大通りを進んでいた。

 

「私達はコレから敵本隊が居ると思われる地点を通り過ぎます。不意に遭遇したと思わせて撤退し、追撃して来たところを各個撃破して行きます」

 

「「「「「了解っ!!」」」」」」

 

みほがそう指示を出すと、同行しているとらさん分隊、カメさんチーム・ツルさん分隊、アヒルさんチーム・ペンギンさん分隊、カモさんチーム・マンボウさん分隊の面々は勇ましい返事を返す。

 

「…………」

 

その返事を聞きながら、みほは黙り込む。

 

「みぽりん? 如何かしたの?」

 

その様子に気づいた沙織が声を掛ける。

 

「何だか………嫌な感じがするの」

 

「嫌な感じ?」

 

「上手く説明出来ないんだけど………危ないって言うか………」

 

と、みほが説明に戸惑っていた時………

 

「………ん?」

 

M3ハーフトラックを運転していた秀人が、山側に町を見下ろす様に通っている幹線道路上で、何かが動いたかのを目撃する。

 

「何だ?」

 

双眼鏡を取り出して、良く確認しようとする秀人。

 

その瞬間!!

 

今度は幹線道路上に光が煌めいた!!

 

「!!」

 

その光が発砲炎の光である事に気づいた瞬間、秀人はアクセルをいっぱいに踏み込んで、あんこうチームのⅣ号の隣へ躍り出た!

 

「!? 銅さんっ!?」

 

秀人の行動にみほが驚きを示した瞬間!!

 

M3ハーフトラックの側面に砲弾が命中し爆発!!

 

更に、2度、3度と砲弾が着弾し、ハーフトラックは完全に破壊される!!

 

当然、搭乗していた秀人も戦死判定だ!!

 

「!? 建物の陰へっ!!」

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

すぐさまみほはそう指示を飛ばし、一同は幹線道路から見えない様に建物の陰へと隠れる。

 

「逞巳くん! 敵の姿は見えるっ!?」

 

「確認出来ません! 既に移動した様です!!」

 

柚子は傍に居た逞巳に問い質すと、逞巳は身を隠しながら双眼鏡で幹線道路上を確認してそう報告する。

 

「さっきの砲撃音は………間違い無く17ポンド砲でした」

 

「と言う事はアキリーズか?」

 

優花里が砲撃音が17ポンド砲のものであった事を察し、麻子がそう推察する。

 

(何だろう?………違和感を感じる………)

 

しかし、みほは根拠は無いものの、撃って来たのはアキリーズではないと思えた。

 

と、その時!!

 

幹線道路の反対側………

 

海岸の方から、爆音と共に砲弾が次々に飛んで来た!!

 

「!?」

 

「今度は海岸線から来たぞっ!?」

 

みほが驚愕し、了平が驚きの声を挙げる中、砲弾は幹線道路から隠れる様にしていた大洗部隊へ降り注ぐ!

 

「「「「「うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」」」」」

 

直撃を受けた大洗歩兵数名が纏めて吹き飛ぶ!

 

「コレはいけないね………砲兵部隊、攻撃! 牽制になれば良い! 海岸線へ砲爆撃を浴びせるんだ!!」

 

「「「「「「「「「「! 了解っ!!」」」」」」」」」」

 

とそこで、迫信が飛ばした指示で、砲兵部隊が海岸線へ向けて砲爆撃を開始!

 

砂浜の彼方此方で火柱が上がり始める!

 

しかし、此方への砲撃は止んだものの、手応えを感じる事は出来なかった………

 

「逃げられたか………」

 

「クッ! 敵の正体は一体何だ!? 見当もつかんぞ!!」

 

俊がそう言うと、未だに敵の正体を捉えられない事に、十河が苛立ち気味にそう言い放つ。

 

(17ポンド砲を有し、隠蔽性と逃げ足の速い戦車………やっぱりアキリーズ?………でも、離脱が速過ぎる気が………)

 

そんな中で、1人冷静に敵の正体を推察し続けるみほ。

 

(砲撃を行った後、一体どうやって素早く姿を? まるで後ろ向きで砲撃して、そのまま前進で逃げた様な………!?)

 

とそこまで考えた時に、みほの脳裏にある可能性が過った!

 

「沙織さん! 自走砲のカタログ、有りますっ!?」

 

「えっ!? あ、有るけど………」

 

「貸して下さいっ!!」

 

「う、うんっ!」

 

みほに突然そう言われ、沙織は戸惑いながらも、自走砲のカタログをみほへ渡す。

 

「…………」

 

受け取ったみほは、すぐにページを捲くり始め、何かを探す。

 

「! コレだっ!!」

 

そして、その手がとあるページで止まる。

 

「! 『アーチャー対戦車自走砲』!!」

 

みほが開いているカタログのページを覗き込んだ優花里が、そこに載っていたのがイギリス製の対戦車自走砲………『アーチャー対戦車自走砲』であるのを確認する。

 

 

 

 

 

『アーチャー対戦車自走砲』………

 

当時連合国の対戦車砲としては最も優秀な対戦車能力を有していた17ポンド砲を搭載した対戦車自走砲である。

 

戦車に搭載された17ポンド砲は、戦車兵へと回された為、砲兵の為に開発された車輌であり、車体には旧式化していたバレンタイン歩兵戦車の物が使われている。

 

最大の特徴は、車体に対し砲が『後ろ向き』に取り付けられていると言う点だ。

 

この主砲配置の為、主砲を発射すると砲尾が操縦席部分まで後座する欠陥があり、操縦手は射撃時に車外へと退避する必要があった。

 

しかし、その特性により、操縦手が戻る時間を差し引いても、攻撃後に素早く退避や別の場所への移動が可能なのである。

 

故に、優れた待ち伏せ兵器として威力を発揮する事となった。

 

 

 

 

 

「成程、考えたね………」

 

「コレはオープントップ仕様の砲兵用装備………戦車の枠を埋める事なく、強力な対戦車火力を有する事が出来る………」

 

迫信が感心した様に、十河が苦々しげにそう言い放つ。

 

(梓ちゃんの方は大丈夫かな?………)

 

そしてみほは、別部隊を率いている梓を心配するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その梓が率いている方の部隊は………

 

『こちらジェームズ。敵部隊を発見。かなりの規模です。本隊と見て間違いないかと』

 

「! 敵の本隊っ!」

 

偵察に出ていたジェームズが通信で、敵の本隊を発見したとの報告をしてきて、梓の顔に驚きが浮かぶ。

 

「うわあ、まさか本隊と出くわしちゃうとはねぇ………」

 

「うむ、戦力差は歴然としている………」

 

ナカジマとエルヴィンが苦い顔をしてそう呟く。

 

「…………」

 

だが、梓は覚悟を決めた様な表情となる。

 

「無理に戦うべきではない」

 

「そうだね。ココは一旦後退して………」

 

「仕掛けます!」

 

そして、後退すべきだと言う意見で纏まっていたエルヴィンとナカジマにそう言い放った。

 

「!? 何っ!?」

 

「ええっ!? 無茶だよっ!!」

 

「澤隊長! それは無謀ですっ!!」

 

「いやいやいや! 無理だってっ!!」

 

「気でも狂ったのか!?」

 

当然、エルヴィンとナカジマは戸惑い、勇武、磐渡、白狼の各随伴分隊長からも反対の意見が挙がる。

 

「ダージリンさんが西住総隊長の指揮を読み切る天才です。俄仕込みの私の戦術なんて通用しません。だから、敢えて真っ向から挑みます」

 

「それはそうかも知れませんが、やはり戦力差が有り過ぎます。フラッグ車を狙って一点突破を掛けたとしても、上手く行くか如何か………」

 

「ううん………フラッグ車は狙えたら狙う感じで良いの」

 

「えっ!?」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

敵本隊に仕掛けると言うのに、フラッグ車を優先して狙わないと言う梓の言葉に、一同は戸惑いの色を浮かべる。

 

「狙いは敵の戦力は出来る限り削ぐ事………そうすれば、後は西住総隊長や舩坂先輩が如何にかしてくれる」

 

「チームとしての勝利の為に………敢えて捨て石になるワケですか」

 

決意を固めた様な表情でそう語る梓に、飛彗がそう言い放つ。

 

「………ゴメンナサイ、皆さん。コレが私が、今考えられる最高の手なんです………嫌だと言うなら、無理には………」

 

「その策………乗ったぞ!」

 

自分でも無茶苦茶な手だと理解している為、梓は無理強いはしないと言おうとしたが、その台詞を遮って、エルヴィンがそう言い放つ。

 

「! エルヴィン先輩………」

 

「負けると分かっていても、戦わなければならない時もある………」

 

「歴史の中へ消えて行った人物の中には、そんな連中がごまんといた………」

 

「ならば我々もそれに倣おうではないか!」

 

「フッ………今日は散るには良い日ぜよ」

 

梓が驚きを露わにする中、エルヴィン、カエサル、左衛門佐、おりょうが最高のドヤ顔でそう言って来る。

 

「って、言ってるけど、如何する?」

 

「良いんじゃない?」

 

「レースは勝つ事よりも、完走する事に意味が有るんだよ」

 

「上手く良けば、相手のフラッグ車も撃破出来て、勝ちが決まるかもね~」

 

「じゃ、決まりだね!」

 

レオポンさんチームも、ナカジマが問うと、ホシノ、スズキ、ツチヤがそう返し、ナカジマもそれに同意する。

 

「あの時逃げ出してしまった事への清算は………ココで付けます!」

 

「1年生の意地を見せる時ですね」

 

「やってやります!」

 

「やりましょう!」

 

ハムスターさん分隊の勇武、誠也、竜真、清十郎も士気を挙げる。

 

「ここいらで手柄の1つでも欲しいところだな………」

 

「正直嫌ですが………ココで逃げると言ったら卑怯者ですね」

 

「ロックに行くか」

 

「俺は勝つ積りで行くぞ」

 

「白狼らしいですね」

 

「全くやな」

 

更にワニさん分隊の磐渡、灰史、鷺澪、おおかみさん分隊の白狼、飛彗、豹詑も同意に様子を見せる。

 

「皆さん………」

 

「ちょっと、梓ちゃん」

 

「先ず最初の意見を聞かないといけない人達の事、忘れてない?」

 

「梓ちゃ~ん。幾ら車長だからって、勝手に決めないでよ~」

 

梓が感激していると、M3リーの車内からあや、あゆみ、優希のそう言う声が挙がる。

 

「えっ!? 皆やらないのっ!?」

 

すると、桂利奈がそんな3人の様子を見てそう言い放つ。

 

「か、桂利奈ちゃん………」

 

「そ、それは~………」

 

そんな桂利奈の姿に、あゆみと優希が戸惑っていると………

 

「…………」

 

「うわっ! 紗希ちゃんが超やる気だっ!!」

 

そして紗希も、次弾を握り締めながらガッツポーズをして見せ、あやが驚きの声を挙げる。

 

「ゴメンね。でも、どうせ皆やる気なんでしょう?」

 

とそこで、梓がウサギさんチームの面々にそう言い放つ。

 

「「「「「…………」」」」」

 

梓の問いに、一瞬沈黙するウサギさんチーム(紗希は何時も通りだが)

 

「………そんなの当たり前じゃん!」

 

「もう逃げるとか、諦めるだなんて事は、忘れちゃったよ」

 

「突撃して敵をやっつけようっ!!」

 

「死なば諸共だよ~」

 

「…………」

 

だが次の瞬間には、あや、あゆみ、桂利奈、優希からそう言う声が挙がり、紗希も力強く頷いた。

 

「ありがとう、皆………ありがとう、皆さん」

 

そこで梓は、改めてウサギさんチームと部隊一同にお礼を言う。

 

「………では、コレより………敵本隊を強襲します! パンツァー・フォーッ!!」

 

そして次の瞬間には、表情を引き締めてそう言い放つ。

 

その表情は、正にみほそのものだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、そんな梓達の事を知らないグロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊の一同は………

 

相変わらずキチンと隊列を組み、全軍で大通りを進軍している………

 

だが、その中心に居るフラッグ車兼隊長車であるチャーチルのハッチから姿を晒しているダージリンは、難しい表情をしていた。

 

(アーチャー部隊からの報告によれば、フラッグ車の他に確認出来た戦車は3輌………2輌とその随伴分隊はニルギリにローズヒップと交戦中………如何やら、歩兵部隊だけでなく、機甲部隊でも独立して動いている部隊を出した様ですわね)

 

コレまでの報告から、大洗機甲部隊の状況をそう推測する。

 

(となれば、その機甲部隊が如何動いて来るか………)

 

顎に手を当て、思案するダージリン。

 

と、その瞬間!!

 

最後尾側に居たアキリーズの砲塔と車体側面に砲弾が着弾!!

 

「「「「「うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」」」」」

 

傍に居たブリティッシュ歩兵に巻き添えを食らわせながら、アキリーズは白旗を上げる。

 

「!!」

 

すぐにダージリンは振り返り状況を把握すると、砲弾が飛んで来た位置を逆算し、その場所へ視線を向ける。

 

そこには、車体幅ギリギリの路地から僅かに姿を晒して、主砲と副砲から硝煙を上げているM3リーの姿が在った。

 

「! M3リー………1年生達のチームでしたわね」

 

「良くも私の友をっ!!」

 

ダージリンが脳内から情報を引き出していると、撃破されたアキリーズに親友の乗って居た1輌のマチルダⅡの車長がそう言い、自車をM3リーに向かわせた!

 

「M3リーなら簡単ですわ」

 

更に、相手がM3リーだけと見て、功を焦った別のマチルダⅡもそれに続く。

 

「! 待ちなさいっ!!」

 

ダージリンはすぐにそう言い放つが、その瞬間にM3リーが路地の中へと後退を開始。

 

「逃がすものですかっ!!」

 

最初に追撃を掛けたマチルダⅡがそれを追って路地に飛び込む。

 

「フフフッ! 逃げ場はありませんわよっ!!」

 

路地の幅ギリギリの車体であるM3リーを見て、マチルダⅡは親友の仇を取ろうと主砲を向ける。

 

だが、その瞬間!!

 

路地横の壁を突き破って飛んで来た徹甲弾が、マチルダⅡの砲塔側面に命中!

 

マチルダⅡは即座に白旗を上げた!!

 

「!? なっ!?………」

 

「前の戦いの時は壁を抜かれてやられたが………」

 

「今度はコッチの番だったみたいだな!」

 

驚くマチルダⅡの車長に、エルヴィンと左衛門佐がそう言い放つ。

 

「クウッ! 無念ですわ………!? キャアッ!?」

 

撃破されたマチルダⅡの車長が悔しそうにしていると、不意に後ろからの衝撃を感じた!

 

「ちょ~っとゴメンあそばせっ!」

 

もう1輌のマチルダⅡが追い付き、撃破されたマチルダⅡの車体をグイグイと押し始めたのだ!

 

「残念でしたわね、大洗のⅢ突………良い待ち伏せでしたが、先に行った車輌を攻撃したせいで、位置が分かりましたわ」

 

如何やら、先程の先行したマチルダⅡが撃破されたのを見た事で、Ⅲ突の場所を確認した様である。

 

撃破されたマチルダⅡを押して、次弾装填前に撃破する積りの様だ。

 

遂に撃破されたマチルダⅡを押し退け、Ⅲ突の前へと躍り出る後続のマチルダⅡ。

 

「貰いましたわ!………!?」

 

そこで、貰ったと思った後続のマチルダⅡの車長が見た物は………

 

Ⅲ突の上を越える様にして主砲を向けている………

 

ポルシェティーガーの姿だった。

 

「待ち伏せしてるのが1輌だけだと思ったのが運の尽きだね」

 

「発射っ!!」

 

ナカジマがそう言った瞬間に、ホシノが引き金を引き、アハトアハトが火を噴く!

 

主砲から吐き出された徹甲弾は、狙いを過たずにコチラに主砲を向けていたマチルダⅡの砲塔正面に命中!!

 

最も厚い装甲部分である防楯部分に徹甲弾が深々と突き刺さり、後続のマチルダⅡもアッサリと白旗を上げる。

 

「またマチルダが!?」

 

「オノレッ! コレ以上はやらせんぞっ!!」

 

マチルダⅡを2輌もやられ、ブリティッシュ歩兵達が仇を討とうとするが………

 

そこで、風切り音が響いて来た。

 

「! 伏せろっ!!」

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

セージがそう叫ぶと、ブリティッシュ歩兵達は一斉に伏せる!

 

直後に、2発の榴弾が、グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊の中へと降り注いだ!

 

「「「「「うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」」」」」

 

運悪く直撃を喰らったブリティッシュ歩兵の一団が、悲鳴と共に吹き飛ばされて地面に叩き付けられ、戦死と判定される。

 

「初弾命中!」

 

「同一射撃! 効力射っ!!」

 

双眼鏡を構えている観測隊員の報告を受け、鷺澪が付いて居る九六式十五糎榴弾砲と、誠也が付いて居るM115 203mm榴弾砲から次弾が放たれる!

 

両榴弾砲の榴弾は、再びグロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊の中へと着弾!

 

「履帯損傷!」

 

「砲身破損っ!!」

 

1輌のマチルダⅡが至近弾で履帯を切られ、アキリーズ1輌が砲身を折られる。

 

「今だぁっ! 突撃ーっ!!」

 

「「「「「「「「「「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

そして、その榴弾砲による火力支援の元、ハムスターさん分隊、ワニさん分隊、おおかみさん分隊の面々が一斉に突撃した!

 

「落ち着きなさい! 全部隊! 直ちに迎撃態勢へ移行っ!!」

 

「ダージリン様! 正面から敵戦車っ!!」

 

浮足立ちかけていたグロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊にそう指示を出すダージリンに、オレンジペコがそう報告を挙げる。

 

「!!」

 

正面を見やったダージリンが見たモノは、M3リーを中心に突っ込んで来るⅢ突とポルシェティーガーの姿だった。

 

(まさか真っ向から挑んで来るとは………コチラの戦力を削ぎ、みほさんに有利に戦って貰う積りの様ね………)

 

すぐにウサギさんチーム達の意図に気付いたダージリンは、M3リーとそのハッチから姿を晒している梓の姿を見て、フッと笑う。

 

(まさかあの逃げ出したチームの子達がこんな果敢な攻めを見せるなんてね………あの子の顔なんて、みほさんそのものね)

 

引き締まった梓の表情に、みほの顔をダブらせながらそう思うダージリン。

 

「良いわ………来なさい! 西住 みほを継ぐ者っ!!」

 

そして、向かって来る梓に向かってそう言い放つのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

部隊を細かく分け、ダージリンの戦術眼を攪乱しようと試みるみほ。
だが、彼女の率いる部隊は、『アーチャー対戦車自走砲』部隊の奇襲を受ける。

一方………
梓達の部隊は何とグロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊の本隊を発見!
その戦力を削ぐ為に………
決死の強襲を試みる。
果たして、梓達の運命は?

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。