ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第169話『対戦車道です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第169話『対戦車道です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦車道・歩兵道の全国大会の準決勝………

 

グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊とのリベンジ戦に臨んだ大洗機甲部隊………

 

だが、ダージリンはその卓越した戦術眼で、みほの動きを次々と看破………

 

損害こそまだ軽微なものの、サンショウウオさんチームが孤立し、援護の為にタコさん分隊とアリクイさんチーム・キツネさん分隊を派遣した事で、戦力を分散させられる………

 

そこでみほは………

 

弘樹を部隊長とする『アッセンブルEX-10』を再編させ、独立遊撃部隊として行動させる作戦に出る………

 

指揮系統の違う部隊を出現させ、ダージリンの読みを攪乱させるのが狙いだ………

 

そして、弘樹の判断により、突撃兵と対戦車兵を中心とした歩兵部隊のアッセンブルEX-10は………

 

本隊より先行していたグロリアーナ&ブリティッシュ先遣部隊へ攻撃を仕掛けるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦車道・歩兵道全国大会、決勝リーグ・準決勝の試合会場………

 

大洗町に似た港町を模した演習場………

 

TOGⅡを中心に、マチルダⅡが2輌。

 

ダージリン車ではないチャーチルが1輌。

 

アキリーズが2輌のグロリアーナ戦車部隊に、騎兵を中心としたブリティッシュ歩兵が中隊規模で随伴している先遣部隊。

 

「各員、周囲の警戒を怠らないで下さい」

 

中心となっているTOGⅡのハッチから姿を晒しているグロリアーナ戦車隊員が、周辺の部隊員にそう呼び掛ける。

 

「「「「「「「「「「了解っ!」」」」」」」」」

 

周辺の戦車の乗員達と、ブリティッシュ歩兵達から返事が返って来る。

 

(敵、目標地点に接近)

 

(合図でスイッチを入れろ)

 

と、そんなグロリアーナ&ブリティッシュ先遣部隊の様子を、進行方向の路地の陰から、弘樹と正義が覗き見ている。

 

良く見ると、正義の手は、ダイナマイト・プランジャーの様な物に掛けられている。

 

それを知らずに、ゆっくりと前進して来るグロリアーナ&ブリティッシュ先遣部隊。

 

段々と弘樹、正義が居る路地へと接近して来る。

 

(舩坂先輩! まだっすかっ!?)

 

(もう少し引き付けろ………)

 

(でも、コレ以上接近されたら見つかる可能性が………)

 

(初弾が外れてくれる事を祈れ)

 

(ええ………)

 

弘樹の言葉に、正義は何とも言えない顔になる。

 

その間にも接近してくるグロリアーナ&ブリティッシュ先遣部隊。

 

「! 敵発見っ!!」

 

とそこで、先頭を行っていたブリティッシュ騎兵の中の1人が、隠れていた弘樹と正義を発見する。

 

「! み、見つかったっす!!」

 

「今だ! 爆破っ!!」

 

「!!」

 

その瞬間に弘樹の指示が飛び、正義はダイナマイト・プランジャーのT字型の棒を思いっきり押し込んだ!!

 

途端に、グロリアーナ&ブリティッシュ先遣部隊の居る道路の両脇に在った建物が爆発した!!

 

「!?」

 

「しまったっ!? 罠かっ!?」

 

突然の爆発に慌てるグロリアーナ&ブリティッシュ先遣部隊。

 

しかし、爆発はそれ程のものでは無く、精々建物を半壊させた程度だった。

 

「何だ、虚仮威しか!」

 

「驚かせやがって!」

 

「奴等を撃てっ!!」

 

ブリティッシュ騎兵達が弘樹達を始末しようと、馬を方向転回させようとしたが………

 

「! うおっ!?」

 

「オイ、如何したっ!?」

 

「何故動かないっ!?」

 

何故か馬達が動こうとせず、ブリティッシュ騎兵達は困惑する。

 

「! しまった! 足元だっ!!」

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」

 

そこで、ブリティッシュ騎兵の1人が何かに気づいてそう声を挙げ、他のブリティッシュ騎兵達も一斉に下を見やる。

 

そこには、先程建物が爆発した際に飛び散った外壁の破片が散乱していた。

 

中には尖った物や、鉄筋が剥き出しになっている物も有る。

 

それが、元来臆病な動物である馬達に動く事を躊躇させていた。

 

「今だ! 突撃ぃーっ!!」

 

「「「「「「「「「「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

その瞬間に弘樹の指示が飛び、他の路地や爆破されていなかった建物内等から、小銃に着剣したり、軍刀を握った突撃兵が一斉に飛び出す!

 

「うおおおおっ!!」

 

「うぐあっ!!」

 

着剣した小銃の一突きで、ブリティッシュ騎兵の1人を討ち取る大洗歩兵。

 

「このぉっ!!」

 

ランチェスター短機関銃を持つブリティッシュ騎兵が、突撃して来た大洗歩兵を薙ぎ払おうとするが………

 

「!? ぐあっ!?」

 

パーンッ!と言う乾いた音が響いたかと思うと、ランチェスター短機関銃を持っていたブリティッシュ騎兵の頭に衝撃が走り、落馬。

 

そのまま戦死と判定される。

 

「…………」

 

その攻撃の主である、やや高い高圧電線を模した鉄塔の中腹辺りに位置取っていたシメオンは、狙撃したブリティッシュ騎兵の戦死判定を確認すると、即座に別のブリティッシュ騎兵の頭に狙いを定め、続け様にヘッドショットした!

 

「手榴弾行くぞぉっ!!」

 

鋼賀がそう叫んで、持っていたRG-42を投げる!

 

「「「「「うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」」」」」

 

見事密集地帯に叩き込まれたRG-42は、ブリティッシュ騎兵数名を纏めて吹き飛ばす!

 

「良しっ!………!? うわあっ!?」

 

とそこで、鋼賀の近くの地面が爆ぜた!

 

「好き勝手にさせません事よ!!」

 

2輌居たアキリーズの内の1輌が、鋼賀に向かって主砲を発砲して来たのだ。

 

幸いにも、ギリギリ殺傷範囲外だったが、直後に今度は、そのアキリーズの車長が車外へ姿を晒し、機銃架に備え付けられていたブレン軽機関銃を発砲する。

 

「!!」

 

すると鋼賀は、何を思ったか、そのアキリーズに向かって突撃する。

 

「!? 血迷ったのですかっ!?」

 

その行動に驚きながらも、ブレン軽機関銃の引き金を引き続けるアキリーズの車長。

 

「! たあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!」

 

だが、次の瞬間、鋼賀はアキリーズに向かって思いっきり跳躍!

 

「!?」

 

アキリーズの車長が驚いている中、右足をアキリーズの車体に掛けたかと思うと、そのまま全身のバネを使って跳び上がり、跳び箱の様にアキリーズを飛び越えて着地した!

 

車体の上から跳んだ瞬間に、捻り回転を入れると言う余裕っぷりで。

 

「! クッ!………!? 銃身がっ!?」

 

すぐに鋼賀へブレン軽機関銃を向けるアキリーズの車長だったが、何時の間にか銃身が無くなっており、驚愕する。

 

「ふふふ………」

 

そしてその銃身は、鋼賀の手元に在った。

 

アキリーズを飛び越えた際に、銃身交換機能を逆手にとって、奪取したらしい。

 

「クウッ!!………!?」

 

思わずアキリーズの車長が声を挙げた瞬間、更なる置き土産………吸着地雷が張り付けられていた事に気づく!

 

アキリーズの車長が慌てて車内へ引っ込むと、直後に吸着地雷が爆発!

 

装甲の薄い駆逐戦車であるアキリーズは当然耐えられず、アッサリと白旗を上げる。

 

「良くもやってくれましたわねっ!!」

 

すると、もう1輌のアキリーズが、仲間の仇を取ろうと、主砲を鋼賀へと向ける。

 

その直後!

 

ドゴンッ!!と言う鈍い発砲音がしたかと思うと、アキリーズの砲塔側面に大型の銃弾が命中。

 

更に、2発、3発、4発と次々にその弾丸が叩き込まれた!!

 

「キャアッ!?」

 

「対戦車ライフルッ!?」

 

「落ち着きなさい! 幾ら装甲の薄いアキリーズでも、対戦車ライフルの弾丸ぐらいでは………」

 

と、砲手と操縦手が慌てる中、車長は落ち着かせる様にそう言った直後!

 

5発目となる弾丸が命中したかと思うと、アキリーズの砲塔上部から白旗が上がった!

 

「なっ!?」

 

何故白旗が上がったのか分からない車長は、弾丸の命中地点を見やる!

 

「!?」

 

そこで初めて、先程からの着弾が、全く同じ場所であった事に気づく。

 

「れ、連続して同じ箇所に命中させて装甲を貫通したと判定させたと言うの!?」

 

「…………」

 

アキリーズの車長が驚きの声を挙げる中、シメオンが居る場所の反対側で、ラハティ L-39 対戦車銃を2丁撃ちしていた陣が、無言でそのアキリーズを見やっている。

 

「行けっ!!」

 

「ファイヤッ!」

 

「喰らいやがれっ!!」

 

掛け声と共に構えていたパンツァーファウストを一斉に発射する重音、光照、海音。

 

3発のパンツァーファウストの弾頭がマチルダⅡへと向かい、重音が撃った物がマチルダⅡへと命中!

 

マチルダⅡが爆煙に包まれたかと思うと、やがて白旗を上げた状態で再度姿を現す。

 

「良しっ!………おうわっ!?」

 

思わずガッツポーズをする重音だったが、直後にすぐ傍の地面が爆ぜる。

 

「良くもお姉様を!!」

 

もう1輌のマチルダⅡが、そう言う台詞と共に再び主砲を発砲する。

 

「後退っ!」

 

「逃げろ、逃げろっ!」

 

光照と海音からそう声が挙がり、3人はマチルダⅡに背を向けて逃げ出す。

 

「逃がしませんわ!」

 

マチルダⅡは追撃し、次々に主砲を発砲する。

 

だが、マチルダⅡの2ポンド砲は榴弾が撃てない為、発射しているのは皆徹甲弾であり、破片を浴びせると言う手が使えない為、近くに着弾させる事が出来ても殺傷させるには至らない。

 

「クッ! 機銃に切り替えて攻撃しなさいっ!!」

 

「ハイッ!」

 

埒が明かないと思ったのか、攻撃を機銃に切り替える様に指示を飛ばすマチルダⅡの車長。

 

すると………

 

「今でござる! 石上殿っ!!」

 

「貰ったぁっ!!」

 

建物の壁が紙の様に捲れたかと思うと、そこから小太郎と、パンツァーファウストを持った地市が出現!

 

隠れ身の術である!

 

「!? なっ!? そんな所に………」

 

マチルダⅡの車長が驚きの声を挙げた瞬間に、パンツァーファウストの弾頭が命中!

 

一瞬の間の後、マチルダⅡは白旗を上げた!

 

「コレで残りはチャーチルとあのデカブツか!」

 

ブルーノZB26軽機関銃を薙ぎ払う様に掃射して、ブリティッシュ歩兵を次々に撃ち抜いていた俊が、TOGⅡとそれを守る様に位置取っているチャーチルを見ながらそう言う。

 

「うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ! すぐにスクラップにしてやるぜぇっ!!」

 

と、コンバットハイ状態となっている武志が、ラクビー部の対戦車兵2名を引き連れて、TOGⅡとチャーチルに突撃する。

 

そこでチャーチルが近寄らせないと発砲!

 

マチルダⅡと違い、榴弾の撃てるQF 75mm砲を装備したチャーチルから放たれた砲弾は当然榴弾であり、武志達の近くに着弾するとド派手に爆発する。

 

「うおっ!?」

 

爆風に煽られ、武志とラクビー部の対戦車兵1名が地面に伏せる様に倒れる。

 

「クソッ! やられたっ!!」

 

残る1名は破片を真面に浴びたのか、戦死と判定される。

 

「仇は取ってやるぞぉっ!!」

 

「お供します、キャプテンッ!!」

 

そこで武志はすぐに起き上がり、再びチャーチルへと向かって行き、生き残ったラクビー部の対戦車兵も続く。

 

「喰らえっ!」

 

「発射っ!!」

 

そして遂に有効射程に達すると、チャーチルに向かって2発のパンツァーファウストの弾頭が飛ぶ。

 

武志の撃った物が主砲の砲身、ラクビー部の対戦車兵が撃った物が車体左後部に命中!

 

主砲身と左後部のサイドスカートと転輪の一部が弾け飛ぶ。

 

しかし、白旗は上がらない。

 

チャーチルは主砲の無くなった砲身を回転させると、同軸機銃を薙ぎ払う様に掃射する!

 

「! クウッ!!」

 

「うわあっ!?」

 

武志は咄嗟に伏せてやり過ごしたが、ラクビー部の対戦車兵は反応が遅れ、銃弾を浴びて倒れると、戦死と判定される。

 

「まだ戦闘能力が失われたワケではございませんわっ!!」

 

チャーチルの車長はそう言いながら、機銃掃射を続ける。

 

「うわあっ!!」

 

「ぐわあっ!?」

 

新たに2名の戦死判定者が出る。

 

「コレ以上はやらせんっ! 駆けよ、シュトゥルムッ!!」

 

するとそこで、シュトゥルムに跨ったゾルダートが、機銃掃射しているチャーチルに突撃する。

 

「敵騎兵がチャーチルに突っ込むぞっ!」

 

「行かせるなっ!!」

 

だが、ブリティッシュ騎兵達が間に割って入り、ゾルダートの突撃を阻止しようとする。

 

その瞬間!

 

「我を阻むものなしっ!」

 

ゾルダートがそう言った瞬間に、シュトゥルムが大跳躍!

 

ブリティッシュ騎兵達を一気に跳び越える!

 

「なっ!?」

 

「何っ!?」

 

「!?」

 

余りの事態に、ブリティッシュ騎兵達とチャーチルの車長は上を見上げて固まる。

 

「覚悟して頂くっ!!」

 

そのブリティッシュ騎兵達とチャーチルに向け、ゾルダートは滞空している状態で収束手榴弾を放り投げる。

 

収束手榴弾は、チャーチルに当たって爆発!

 

「「「!? うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」」」

 

チャーチルの傍に展開していたブリティッシュ騎兵数名を巻き込み、チャーチルから白旗を上げさせた。

 

「コレで残るはTOGⅡのみ………!? むっ!?」

 

ゾルダートがそう言う台詞と共に着地した瞬間に、TOGⅡが動き始める!

 

撃破されたチャーチルを押し退け、電柱や郵便ポスト、電話ボックスなど路肩の物を薙ぎ倒しながら前進する。

 

如何やら強引に突破する積りらしい!

 

「アブネェッ!!」

 

「あんなのに轢かれたらペシャンコだぞっ!!」

 

TOGⅡのその巨体を前に、流石のアッセンブルEX-10のメンバーも尻込みする。

 

「デカブツめ! コレでも喰らえっ!!」

 

が、1人の大洗突撃兵が、果敢にも二式擲弾器からタ弾を放つ!

 

放たれたタ弾はTOGⅡの側面に命中。

 

しかし、装甲が僅かに穿かれただけで、撃破には至らない。

 

とそこで、何を思ったか、TOGⅡは路肩の建物に自ら突っ込んだ!

 

すると、突っ込んだ建物が崩落し、それに巻き込まれる形で隣の建物も崩落し始め、それがドミノ倒しの様に連鎖して行く!

 

「!? うわあああっ!?」

 

そのままタ弾を放った大洗突撃兵の傍の建物も崩れ、大洗突撃兵は瓦礫に埋もれる。

 

更に、TOGⅡの主砲である17ポンド砲も火を噴く。

 

「! 伏せろっ!!」

 

「うおおっ!?」

 

幸いにも外れたが、かなりの大きな爆発にアッセンブルEX-10メンバーは慌てる。

 

その混乱を衝き、TOGⅡは崩した建物の中から抜け出ると、再び強行突破を計ろうとする。

 

と、そのTOGⅡに走る寄る者が1人………

 

「…………」

 

弘樹だ!

 

「………!」

 

TOGⅡの左側面から接近したかと思うと、そこに在った乗降用のハッチの取っ手を目掛けて跳躍!

 

ハッチの取っ手を掴み、側面に張り付く。

 

だが、TOGⅡはその弘樹に気づき、彼を押し潰そうと建物の方へ幅寄せする。

 

「!!………」

 

間一髪のところで弘樹は転がる様にTOGⅡの車体後部の上に登り、押し潰される事を回避。

 

すると今度は、砲塔が旋回し、17ポンド砲の砲身が棍棒の様に振られていた!

 

「!………」

 

それも弘樹は、車体後部の上で伏せる事で回避する。

 

そして、腰のベルトに下げていた吸着地雷を外し、TOGⅡの車体後部上にセット!

 

信管を作動させると、TOGⅡの後方に向かって跳び降りる。

 

弘樹が地面に転がる様に伏せた瞬間、吸着地雷が爆発!

 

TOGⅡの車体後部上から炎が上がり、動きが止まる。

 

「やったっ!」

 

「いや、まだだっ!」

 

光照が思わず歓声を挙げるが、直後に弘樹がそう言うと………

 

TOGⅡのエンジン音が響き渡り、車体後部上を炎上させたまま、再度動き始める!

 

「!? まだ動くのかっ!?」

 

「見た目通り、タフな奴だぜ、オイ!」

 

そんなTOGⅡの姿を見て、俊と海人がそう言い放つ。

 

直後に、TOGⅡの17ポンド砲が火を噴く!

 

「うわああああぁぁぁぁぁーーーーーーっ!?」

 

運悪く榴弾の殺傷範囲に入っていた大洗突撃兵が悲鳴と共に倒れる。

 

幸い戦死判定は免れた様だが、重傷判定で真面に動けない。

 

TOGⅡはトドメを刺す為、履帯で轢き潰そうと迫る。

 

「う、うわあああああぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

悲鳴の様な叫びを挙げる大洗突撃兵。

 

幾ら死ぬ事は絶対に無い戦闘服を着ていると言えど、TOGⅡの様な超重戦車が迫って来れば、怯えるなと言うのが無理だった。

 

目の前に迫る81.3トンのTOGⅡの車体!!

 

「!!………」

 

だがそこで! 

 

弘樹がその大洗突撃兵に駆け寄り、覆い被さる様に抱き付くと、そのまま横に転がる!

 

転がって移動した僅か5cm横を、TOGⅡの履帯が金属音と共に通り過ぎて行く。

 

「大丈夫か?」

 

「あ、ありがとうございます、舩坂分隊長………コレを!」

 

弘樹がそう尋ねると、大洗突撃兵はお礼を言いながら、弘樹に火炎瓶を差し出す。

 

「良し………」

 

弘樹はそれを受け取ると、点火してTOGⅡに向かって投げつける!

 

弧を描いて飛んだ火炎瓶は、丁度弘樹が吸着地雷を付けて爆破した場所へと命中!

 

燃え上がっていた炎が更に炎上!

 

大火災が発生するっ!!

 

火を消そうとしているのか、激しく動き回るTOGⅡだったが………

 

やがて一際大きな爆発………エンジンの爆発が起こると、静かに停止し、砲塔上部から白旗を上げた。

 

「やったっ!」

 

「クッ! 撤退しろっ!!」

 

地市が歓声を挙げると、戦車を全て失った生き残りのブリティッシュ歩兵達が撤退する。

 

「残存歩兵部隊、撤退中」

 

「深追いは無用だ。戦車は全て撃破出来た………損害報告」

 

「戦死判定5。重傷判定3。他は軽傷か無傷です」

 

傍に居たアッセンブルEX-10の隊員からそう報告を受ける弘樹。

 

「重傷判定者は戦闘続行可能か?」

 

「難しいですね………」

 

「そうか………」

 

その報告を受けた弘樹は、重傷判定を受けている隊員の元へ行く。

 

「あ、舩坂分隊長………」

 

「大丈夫か?」

 

「これぐらい平気です!」

 

「まだ戦えます!」

 

そう言う重傷判定の隊員達だったが、その動きは目に見えて鈍い。

 

「無理をするな。戦死判定者の回収が来たら一緒に搬送してもらえ」

 

「そんな! 大丈夫ですよ!!」

 

「イザと言う時には盾になるぐらいの事は………」

 

「それは西住総隊長の意志に反する」

 

「「「!!」」」

 

そう言われて、重傷判定の隊員達は黙り込む。

 

「コレは命令だ。お前達は武器を譲渡の後、戦死判定者と共に離脱しろ」

 

「「「………了解しました」」」

 

悔しさを滲ませながらも、重傷判定の隊員達は弘樹の命令を承服する。

 

そして、無事な隊員に武器を譲渡する。

 

「分隊長………後は頼みます」

 

「うむ………」

 

弘樹も、重傷判定の隊員の1人から、パンツァーファウストを受け取る。

 

「………良し! 移動するぞ!!」

 

「「「「「「「「「「了解っ!!」」」」」」」」」」

 

そして、アッセンブルEX-10のメンバーを連れて、移動を開始するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

大洗機甲部隊・本隊は………

 

「みぽりん! 舩坂くんから連絡で、マチルダⅡ2輌、チャーチル1輌、アキリーズ2輌、TOGⅡ1輌を撃破だって!」

 

「凄い! 大戦果ですよっ!!」

 

「しかも歩兵部隊だけでだ………勲章ものだな」

 

「素晴らしいです」

 

弘樹から戦果報告を受けた沙織が興奮気味にそう言い、その大戦果に優花里や麻子、華もテンションが上がる。

 

「油断しないで下さい。敵のフラッグ車を含め、まだ脅威となる戦車は健在です。ココからが正念場となります」

 

しかし、みほは淡々とそう皆に言い放つ。

 

「「「「!!」」」」

 

その言葉を受けて、沙織達も浮かれては居られないと表情を引き締める。

 

「それで~? 次は如何するの~?」

 

そこで、杏がみほへと指示を仰ぐ。

 

「恐らく、敵はアッセンブルEX-10によって受けた損害によって多少なりと動揺する筈です。更に揺さぶりを掛けます………梓ちゃん」

 

「! ハ、ハイッ!」

 

突如みほから呼ばれ、梓が緊張した様子で返事を返す。

 

「コレから部隊を更に2手に分けます。片方は私が指揮を取るから、もう片方の指揮をお願い出来るかな?」

 

「!? わ、私が部隊を指揮するんですかっ!?」

 

みほからの指示に、梓は仰天の声を挙げる。

 

「そ、そんなっ!? 私にはまだ部隊指揮なんて………」

 

「梓ちゃんなら出来るよ」

 

「でも………」

 

「自分が信じられないなら………私を信じてくれないかな?」

 

「! 西住総隊長………」

 

驚きの表情でみほの事を見つめる梓。

 

だが、次の瞬間には引き締まった表情となる。

 

「………了解しました。澤 梓、部隊を預かります!」

 

そして、弘樹を真似てか、ヤマト式敬礼をしてそう言い放つ。

 

「うん………」

 

そんな梓の様子を見て、みほは満足そうに頷く。

 

「………一応、私が副隊長な筈だが………」

 

と、そんな中、一応戦車部隊副隊長である筈の桃がそう漏らす。

 

「………貴様より、あの1年娘の方が使えると言う事だろう」

 

「! 何ぃっ!!」

 

お馴染みの熾龍の毒舌に噛み付こうとした桃だったが………

 

「澤ちゃん、最近めっきり腕を上げてますもんね」

 

「うん。正に副隊長の貫禄だね」

 

「西住ちゃん達が卒業しても、大洗は安泰かな」

 

柚子、蛍、杏も、すっかり梓が副隊長であると言う様な態度を取っている。

 

「会長~~~~っ!!」

 

そんな杏達の様子を見て、泣き出す桃。

 

そして、その後………

 

大洗機甲部隊は2部隊に分散………

 

みほの指揮するあんこうチーム・とらさん分隊、カメさんチーム・ツルさん分隊、アヒルさんチーム・ペンギンさん分隊、カモさんチーム・マンボウさん分隊………

 

そして、梓が指揮するウサギさんチーム・ハムスターさん分隊、カバさんチーム・ワニさん分隊、レオポンさんチーム・おおかみさん分隊の2部隊に分かれての行動に入るのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊・本隊にて………

 

「先遣隊の戦車が全滅っ!?」

 

「しかも歩兵部隊だけによって、ですってっ!?」

 

「ハ、ハイ………残念ながら………」

 

生き延びて本隊に合流した先遣部隊のブリティッシュ歩兵からの報告に、オレンジペコとアッサムが驚きの声を挙げる。

 

「まさか、そんな………」

 

「有り得ません………データではこんな事は………」

 

信じられない報告に、オレンジペコもアッサムも動揺を見せる。

 

と、その時!!

 

ガシャッ!!と言う、まるで陶器が潰れたかの様な音が響いた!

 

「「!?」」

 

驚いたオレンジペコとアッサムが見たモノは………

 

「…………」

 

無表情で、ティーカップを握り潰しているダージリンの姿だった。

 

ダージリンは更に拳を握り締め、潰れたティーカップの破片が更に潰され、砂状になって行く。

 

「ダ、ダージリン様………」

 

「ダージリン………」

 

凄まじいダージリンの迫力に、オレンジペコとアッサムは言葉を失う。

 

「………おやりになりますのね」

 

だが、そこでいつもと変わらぬ不敵な笑みを浮かべるダージリン。

 

「ですが………それでこそですわ」

 

「ダージリン総隊長。如何しますか?」

 

とそこで、セージがダージリンに指示を仰ぐ。

 

「………『例の部隊』にそろそろ出番だと伝えてくれるかしら」

 

「………分かりました」

 

ダージリンがそう言うと、セージはメガネを不気味に光らせた。

 

「ヘイ、ダージリン。そろそろ私の出番かい?」

 

更にそこで、ジャスパーがダージリンにそう尋ねる。

 

「ええ、そろそろお願いする事になりそうね。その時はよろしく頼むわ」

 

「OKOK。さあ、危険な試合になりそうだ。ああ~、楽しみだな~」

 

ダージリンがそう返すと。ジャスパーは心底ワクワクしている様子を見せるのだった。

 

「………その時は貴方も頼みますわね………アールグレイ」

 

「………イエス、マイ・ロード」

 

更にダージリンは、自身の乗るチャーチルの傍に控えていたアールグレイにもそう言い放ち、アールグレイは騎士が忠誠を示すポーズを取るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

グロリアーナ&ブリティッシュ先遣隊へ仕掛けたアッセンブルEX-10
犠牲を出しながらも、先発隊の戦車を全滅させる事に成功する。

そこでみほは………
更なる攪乱を狙い、梓に指揮を任せた新たな部隊を編成する。

一方、ダージリンは初めて読み違えた事に内心憤慨したものの、すぐに冷静さを取り戻し、次なる手を打って来る。
果たして『例の部隊』とは?

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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