ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第166話『ダージリンさんのお茶会です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第166話『ダージリンさんのお茶会です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦車道・歩兵道の準決勝で、大洗機甲部隊と当たるのは………

 

かつて、再編直後に大洗機甲部隊と練習試合を行い………

 

大洗機甲部隊唯一の黒星………

 

グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊であった。

 

遂に訪れたリベンジの再戦を前に、大洗機甲部隊の士気は上がる。

 

そんな中………

 

当の対戦相手であるグロリアーナ校のダージリンから………

 

弘樹とみほに、お茶会の誘いが届いたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聖グロリアーナ女学院&聖ブリティッシュ男子高校の学園艦の甲板都市………

 

迎えに来ていた馬車に乗り込み、暫し揺られる事………

 

「お待たせいたしました。ご到着です」

 

馬を操っていたメイドがそう言って馬車を停めると、素早くドアを開いて、弘樹とみほの降車を促す。

 

「………コレは」

 

「わあ………」

 

馬車から降りた弘樹とみほは驚きに目を見開く。

 

何故ならそこには………

 

「「「「「「「「「「ようこそ、聖グロリアーナ女学院へ」」」」」」」」」」

 

校舎まで続く真っ赤なカーペットの両端に、メイドがズラリと整列して、一斉に挨拶と共にお辞儀をして来ていた。

 

「はわあ~~………」

 

「…………」

 

呆気に取られているみほと、如何にもこそばゆさを感じる弘樹。

 

「さあ、どうぞ此方へ。ダージリン様がお待ちです」

 

と、馬車を操っていた迎えのメイドがそう言い、弘樹とみほを案内しようとする。

 

「「…………」」

 

そのメイドに連れられるままに、2人はカーペットの上を歩いて校舎へと向かう。

 

その間、他のメイド達はカーペットの端に並んだまま、お辞儀の姿勢を取り続けていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聖グロリアーナ女学院・校舎内………

 

まるで宮殿の様な豪華の内装の校舎内を、メイドに案内されて歩く弘樹とみほ。

 

「ふわあ~~………」

 

(如何にも落ち着かないな………)

 

内装にまたも圧倒されているみほと、居心地の悪さを感じる弘樹。

 

やがてメイドは、これまた高級そうな木製のドアの前で立ち止まったかと思うと、そのドアをノックする。

 

「ダージリン様。西住 みほ様と舩坂 弘樹様をお連れしました」

 

「通してちょうだい」

 

「ハッ、失礼します………どうぞ」

 

ドアの向こうから、ダージリンの入室許可が下りると、メイドはドアを開け、弘樹とみほに入室を促す。

 

「「…………」」

 

促されるままに部屋の中へと入る弘樹とみほ。

 

「………お待ちして居ましたわ」

 

豪華な内装の部屋の窓際に置かれていた、茶菓子の乗って居る円卓に備えられた椅子に、ティーカップを片手に腰掛けているダージリンが、弘樹とみほの姿を認めるとそう挨拶する。

 

「御機嫌よう」

 

「ようこそ御出で下さいました」

 

そのダージリンの両隣を固める様に椅子に腰掛けていたアッサムとオレンジペコも、お辞儀をしながら挨拶をする。

 

「ど、どうも………」

 

「お招きありがとうございます」

 

緊張した様子で挨拶を返すみほと、やや社交辞令気味に返す弘樹。

 

「さ、どうぞお座りになられて」

 

ダージリンはそう言い、2人に円卓の空いてる席に座るよう促す。

 

「「…………」」

 

促されるままに空いていた席に腰掛ける弘樹とみほ。

 

「今、お茶を淹れますね」

 

とそこで、オレンジペコが弘樹とみほの紅茶を淹れる為に立ち上がろうとしたところ………

 

「待ってペコ。今日は私が淹れるわ」

 

ダージリンがそう言ってペコを制した。

 

「!? えっ!?」

 

「ダージリン様、自ら!?」

 

ダージリン自ら紅茶を淹れると言う事に、アッサムとオレンジペコは驚きを露わにする。

 

「…………」

 

しかしダージリンは、そんな2人の驚きを気にする事も無く、ティーカップをテーブルの上のソーサーに置くと、椅子から立ち上がる。

 

そして、部屋の中に在った備え付けの給湯所へ行くと、自ら紅茶を淹れ始めた。

 

少しして………

 

「どうぞ………『ダージリン・ティー』ですわ」

 

ダージリンがそう言って、弘樹とみほに出したのは、自らの名前と同じ『ダージリン・ティー』

 

「あ、ありがとうございます」

 

「どうも………」

 

早速2人は、ソーサーを手に取り、カップを持ち上げると、紅茶を口にする。

 

「! 美味しいっ!」

 

「!………」

 

途端に、みほがそう声を挙げ、弘樹も僅かに目を見開いた。

 

「こんな美味しい紅茶、初めて飲みました!」

 

「そう………それは良かったわ」

 

みほが感激しながらそう言うと、ダージリンは嬉しそうに微笑む。

 

「………それで、本日は一体どんな用で小官達を呼んだのですか?」

 

とそこで、弘樹が一旦カップとソーサーを置いたかと思うと、そう話を切り出した。

 

「ひ、弘樹くん………」

 

「あら? 随分とストレートにお尋ねになるのね」

 

「回りくどいのは苦手でして………」

 

みほが少し動揺するが、ダージリンは特に気にした様子は見せない。

 

「そうね………貴方達を呼んだ理由………」

 

ダージリンは再び自分の席に腰掛けると、紅茶を一口飲んで間を入れる。

 

「………貴方達とお茶会がしたかったからよ」

 

「えっ?………」

 

「それだけ………ですか?」

 

思わぬダージリンの返しに、みほは戸惑うが、弘樹は疑いの目を向ける。

 

「ええ、それだけよ………」

 

しかし、ダージリンはしれっとした様子で、また紅茶を飲む。

 

「………私はね………貴方達の………大洗のファンなのよ」

 

「ファン?」

 

「ええ………覚えていらっしゃるかしら? あの練習試合の事を………」

 

「あ、ハイ。私達が初めて他校相手に行った試合ですから………」

 

「あの時以来、私は貴方達から目が離せなくなってしまったわ」

 

みほがそう言うと、ダージリンは懐かしそうな目をしながらそう言う。

 

「あの試合、結果だけ見れば私達の勝利でしたが………何かが違っていたら………私達が敗者となっていたかも知れませんわ」

 

「そんな事………」

 

「正直、私はあの時………貴方達の事を見下していました」

 

「えっ?………」

 

そんな事は無いと言おうとしたみほを遮り、ダージリンはそう告白する。

 

「戦車道を復活させたばかりの戦車チームに、細々と歩兵道を続けていた歩兵部隊………正々堂々と言いましたけど、私達の一方的な試合になると心の何処かで思っていましたわ」

 

「「…………」」

 

「けど、貴方達は必死に喰らい付いて来た………それこそ、私達の喉元までに」

 

「ダージリン………」

 

「ダージリン様………」

 

ダージリンの言葉に、アッサムとオレンジペコも思うところが有る様な顔を見せる。

 

「以来、アナタ方の試合は欠かさず観戦させて頂いていおりましたわ。今の大洗機甲部隊に、あの時の素人集団の面影は見受けられません。今や立派な強豪校と言えるでしょう」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「だからこそ………私も本当に全力でお相手する事が礼儀だと思っております」

 

と、ダージリンがそう言った瞬間、その身体から気迫が放たれる。

 

気のせいか、窓ガラスがビリビリと震えた様に思えた。

 

「「!!」」

 

そんなダージリンの姿を初めてみるアッサムとオレンジペコは、思わず萎縮して黙り込んでしまう。

 

「「…………」」

 

しかし、弘樹とみほは、戦闘時の引き締まった表情となり、ダージリンのその気迫を真正面から受け止めていた。

 

「………それでこそ、私の宿敵………ライバルですわ」

 

そんな2人の様子を見て、ダージリンは満足そうな表情を見せると、またもや紅茶を飲むのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後………

 

試合に関する話はそれっきりになり、残りは他愛の無い会話を交わしたり………

 

ダージリンの格言とアッサムのジョークトークが炸裂したりとありながら、お茶会はお開きとなった………

 

 

 

 

 

聖グロリアーナ女学院・玄関………

 

「今日はどうもありがとうございました」

 

「気にしないで、みほさん。招待したのはコチラなのですから」

 

見送りに来てくれたダージリン達に、みほがお辞儀をする。

 

「試合の日を楽しみにしていますわ………」

 

「ハイ、私もです………」

 

「では、失礼します」

 

弘樹がそう言うと、みほは弘樹と共に、来た際にも歩いたカーペットの上を歩き出す。

 

「「「「「「「「「「ありがとうございました。お気を付けて」」」」」」」」」」

 

またも、カーペットの両脇に整列していたメイド達が、挨拶と共に一斉に頭を下げて見送る。

 

「あ、あはは………」

 

「慣れんな、コレは………」

 

その様子に、如何にも居心地の悪さを感じ、みほと弘樹は正門付近に停めてある馬車の元まで早足気味になる。

 

「ん? アレは………」

 

と、その時………

 

弘樹が、校門の付近に佇んでいる人影を発見する。

 

「あ、あの人は………」

 

「アールグレイ………」

 

「…………」

 

近づくと、その人影がアールグレイである事に気づく2人。

 

「…………」

 

無言で2人の姿を見据えながら、ジッと佇んでいるアールグレイ。

 

「「…………」」

 

弘樹とみほは無言のまま歩みを進め、馬車の元へと辿り着く。

 

そして、先ずみほが馬車へと乗り込み、続いて弘樹が乗り込もうとしたところ………

 

「………決勝へ進むのは、我等グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊だ」

 

「…………」

 

アールグレイがそう言ったのを聞いて、弘樹の足が止まる。

 

「………それは如何かな?」

 

弘樹は一瞬だけアールグレイの方を見やると、改めて馬車へと乗り込む。

 

2人が乗り込んだのを確認すると、手綱を握っていたメイドは、馬車を走らせる。

 

「…………」

 

アールグレイは、その馬車の姿を見えなくなるまでジッと見ていたのだった。

 

「珍しいですわね………」

 

「アールグレイさんがあんな事をするなんて………」

 

その様子を見ていたアッサムとオレンジペコがそう漏らす。

 

「それだけ彼も期待していると言う事よ………歩兵道者としての試合をね」

 

しかし、ダージリンだけは不敵な笑みを浮かべてそう言う。

 

「………それにしても、ダージリン様。本当に良かったのですか?」

 

「『彼女』とクルセイダーの投入は、黒森峰用の隠し玉だった筈では」

 

とそこで、オレンジペコとアッサムは、ダージリンにそう問い質す。

 

「先ず大洗に勝たなければ黒森峰も何も無いわ。それに、全力で戦う………そう約束したのですから」

 

「まあ、確かに今の大洗機甲部隊のデータは、練習試合の時と比べて遥かに優れています。油断は出来ません」

 

ダージリンがそう返すと、アッサムが自分のノートPCを取り出し、大洗機甲部隊について纏めたデータを見ながらそう言う。

 

「でも、OG会の意向を無視して、新しい戦車を購入して投入するのはやり過ぎではないですか?」

 

「そうですよ。もし負けたりしたら、OG会が何て言って来るか………」

 

アッサムとオレンジペコの顔に不安な様子が現れる。

 

聖グロリアーナ女学院は、本家イギリスとの提携や卒業生の経済支援により、財政的には裕福な学校なのであるが………

 

その体制ゆえに、OG会が強力な発言権を持っており、マチルダ会・チャーチル会・クルセイダー会の3つから成るOG会が、購入・使用する戦車を制限して来ているのだ。

 

マチルダ会に至っては、戦車道チームの戦車編成にまで注文をつけてくる有り様である。

 

しかし、ダージリンは今回、そのOG会全ての意向を完全に黙殺。

 

戦車道用の予算を、全て独断で決めた戦車購入に充てたのである。

 

「心配要らないわ。その時は全て私が独断でやった事と言う事にすれば、お叱りを受けるのは私1人で済むわ」

 

「! ダージリン! それは!!………」

 

「!!」

 

サラリとそう言い放つダージリンに、アッサムとオレンジペコは驚愕する。

 

「アッサム、ペコ………私は次の試合………それこそ燃え尽きる積りで戦う積りよ」

 

「「えっ!?………」」

 

「だって、あの方は………西住 みほさんは………」

 

そう言いながら空を見上げるダージリン。

 

その見上げている空に、みほの姿が幻視される。

 

「………私の終生のライバルと認めた相手ですから」

 

そう言い放つダージリンの目は、闘志に溢れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、時は流れ………

 

遂にグロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊との準決勝戦………

 

大洗機甲部隊にとっては、リベンジ戦となる戦いの日が訪れた。

 

試合会場となるのは、何処となく大洗に似た港町を模した自衛隊の演習場だった。

 

既に両機甲部隊は、試合開始前の挨拶の為に集まっており、お互いの部隊の人員と使用戦車の姿が晒されている。

 

「…………」

 

「ほう? コレはコレは………」

 

そのグロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊の、グロリアーナ戦車チームの戦車を見たみほが軽く驚きを示し、迫信も口元を扇子で隠して笑う。

 

グロリアーナ戦車チームの戦車は………

 

ダージリン達が乗るフラッグ車とは別にチャーチルが4輌の計5輌

 

マチルダⅡが10輌

 

クルセイダーMk.Ⅲが10輌

 

チャーチルを改造した駆逐戦車『チャーチル・ガンキャリア』が5輌

 

『エクセルシアー重突撃戦車』、『TOGⅡ』、『ブラックプリンス』、『クロムウェル』が其々1輌ずつ。

 

アメリカ軍からレンドリースで供与されたM10・ウルヴァリンに17ポンド砲を搭載したイギリスの改造車『アキリーズ』が10輌

 

M3軽戦車ことスチュアートⅢが3輌。

 

M5軽戦車ことスチュアートⅥが3輌。

 

中心はやはりチャーチル、マチルダ、クルセイダーながらも、それ以外の多数の戦車が多く揃えられていた。

 

「此処へ来て、コレだけの新戦車を一斉投入だと?」

 

「グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊は、今までズッとチャーチルとマチルダⅡの編成で勝ち進んでいたと言うのに、如何言う積りだ?」

 

桃と十河が、いきなり多数の新戦車を投入して来たグロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊を訝しむ。

 

「御機嫌よう………」

 

とそこで、パンツァージャケット姿のダージリンが、みほの前に姿を現す。

 

「ダージリンさん………」

 

「言ったでしょう………全力を持ってお相手するって」

 

そう言って不敵に微笑むダージリン。

 

「!………」

 

その笑みに迫力を感じ、一瞬息を呑むみほ。

 

「………今日は、よろしくお願いします」

 

だが、すぐに気を取り直すと、ダージリンに向かって右手を差し出し、握手を求めた。

 

(………本当に御強くなられたわね。今から試合が楽しみだわ)

 

ダージリンはその握手に応えながら、内心でそう思いやっている。

 

「それでは、これより戦車道・歩兵道全国大会準決勝………大洗機甲部隊対グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊の試合を開始します」

 

とそこで、主審のレミがそう告げる。

 

「一同、礼っ!!」

 

「「「「「「「「「「よろしくお願いしますっ!!」」」」」」」」」」

 

レミの号令に従い、両機甲部隊の隊員達は礼を交わす。

 

そしてすぐに、自分達のスタート地点へと向かう準備に入る。

 

「「…………」」

 

その中で、弘樹とアールグレイが、互いに睨み合う様に視線を交わす。

 

「「…………」」

 

だがそれも一瞬の事であり、両者はすぐに自分達の部隊と共に移動を始める。

 

言葉を交わす必要など無い………

 

全ては試合………弾丸を通して語る………

 

それが歩兵道だ………

 

まるでそう言うかの様に………

 

『さあ! いよいよ長く続いたこの第63回戦車道・歩兵道全国大会も残す試合は後僅か! 本日の準決勝の試合のカードは! 大洗機甲部隊とグロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊!!』

 

『情報によれば、大洗は戦車道を復活させて間も無くの練習試合で、グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊に敗北していると聞きます。この試合は大洗にとってはリベンジの機会とも言えるでしょう』

 

実況席でも、ヒートマン佐々木とDJ田中によるお馴染みの実況が開始される。

 

『その注目の1戦を制するのは、果たしてどちらなのでしょうか!?』

 

『それはまだ分かりませんが………少なくとも、今年の参加部隊は、全て伝説を作っている………コレだけは確かに言えると思っています』

 

『では、いよいよ試合開始です! 大洗機甲部隊! そしてグロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊! 君達に、幸あれっ!!』

 

『試合開始ッ!!』

 

最後に、ヒートマン佐々木の決め台詞が響くと、レミの声で試合の開始が宣言されたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

ダージリンから茶会の招待を受けたみほと弘樹。
その席で告げられたのは、ダージリンからの宣戦布告だった。
全力を持って相手をする………
その言葉を証明するかの様に、試合当日に新戦車を多数引っ提げて登場したグロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊。
そして遂に………
準決勝の幕が上がる。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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