ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第163話『準々決勝、決着です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第163話『準々決勝、決着です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

準決勝試合会場・廃墟の工業地帯………

 

「撃………」

 

「ファイアッ!!」

 

みほが発砲を指示しようとしたタイミングで、バレンタインのみほ(シュガー)がワンテンポ早く発射を指示!

 

「! 停車っ!!」

 

「! クッ!!」

 

慌てて停車指示を出し、麻子がフルブレーキを掛ける。

 

直後に、Ⅳ号のすぐ目の前に、バレンタインの砲弾が直撃する。

 

「右へ転進!」

 

「そう来るでしょうよね………」

 

着弾で立ち上った土煙が収まる前に、みほは次の指示を飛ばすが、バレンタインのみほ(シュガー)はそれを読んでいた様で、移動先へ向かって再度発砲する!

 

「!? キャアッ!?」

 

幸い直撃は免れたが、砲塔後部のシュルツェンが吹き飛ばされた。

 

「後退して下さい!」

 

「下がるわよ! 追撃っ!!」

 

後退しようとするとバレンタインは即座に追撃を掛けて来る。

 

(やっぱり………動きが読まれてる)

 

そこでみほはハッキリと、自分の動きが見透かされている事を認識する。

 

(貴方の敵は………貴方自身だよ)

 

「!!………」

 

シュガーの言葉が思い起こされ、再び身体が震えるのを感じるみほ。

 

「西住殿!」

 

「みほさん!」

 

「みぽりん! しっかりっ!!」

 

その様子に気づいた優花里、華、沙織が激励を飛ばす。

 

「!? マズイ! 来るぞっ!!」

 

とそこで、操縦手の覗き窓から、バレンタインの主砲がコチラを向いているのを見た麻子が声を挙げる。

 

「! 左旋回っ!!」

 

「だから見切ってるって!!」

 

すぐに指示を飛ばすみほだったが、みほ(シュガー)がそう言った瞬間に、バレンタインが発砲!

 

「「キャアアッ!?」」

 

「うわあ!?」

 

「「!?」」

 

Ⅳ号に凄まじい衝撃が走る!

 

「! みほさん! 砲身がっ!?」

 

「!? ああっ!?」

 

華から挙がった声に、みほはⅣ号の砲身を見て、悲鳴の様な声を挙げる。

 

先程のバレンタインの砲弾は、Ⅳ号の砲身に命中し、砲身を根元から破壊していた。

 

撃破判定は下らなかったが、コレでは攻撃が出来ない。

 

シュガーのバレンタインを撃破する事が出来なくなってしまった。

 

「コレで本当に手詰まりね」

 

「…………」

 

バレンタインのみほ(シュガー)が不敵に笑うと、みほは思わず俯く。

 

(駄目だ………私の戦い方が通用しない………勝てないよ………)

 

そんな諦めの言葉が脳裏を過ぎる。

 

「終わりにしてあげるわ」

 

と、バレンタインのみほ(シュガー)がそう言うと、バレンタインの主砲が再びⅣ号へ向けられる。

 

「! 狙われています!」

 

「如何するんだっ!?」

 

「みぽりん!!」

 

「みほさん!!」

 

「…………」

 

あんこうチームの声が飛ぶが、みほは俯いたまま動けない………

 

………その時!

 

「みほくんっ!!」

 

「!!」

 

名前を呼ばれたみほが顔を上げると、コチラに向かって駆けて来る弘樹の姿を発見する。

 

「! 弘樹くん!!」

 

「何も考えずに走れっ!!」

 

「!!」

 

弘樹がそう叫んだ瞬間、みほは身体に電流が走った様な感じを覚える。

 

「バレンタインに向かって突撃っ!!」

 

「えっ!?」

 

「早くっ!!」

 

「あ、ああっ!!」

 

即座にそう指示が飛び、戸惑っている麻子に更にどやしつける様に叫ぶと、Ⅳ号はバレンタインに向かって突撃した!!

 

「!? なっ!? ファイアッ!!」

 

みほなら絶対にしないであろう行動に、バレンタインのみほ(シュガー)は狼狽し、慌てて発砲する。

 

バレンタインの主砲が火を噴いたが………

 

照準の調整が甘かった為、Ⅳ号車体右側のシュルツェンを吹き飛ばすだけに終わった!

 

そのままⅣ号はバレンタインに体当たりを敢行!!

 

「!? ぐうっ!?」

 

「まだまだですっ!!」

 

バレンタインのみほ(シュガー)が、衝撃で揺さ振られていると、みほは更にそう叫び、そのままバレンタインを押して行く!

 

そしてそのまま、背後にあった瓦礫の壁に押し付けた!!

 

Ⅳ号はバレンタインをそのまま壁に埋めかねない勢いで押し続ける。

 

バレンタインは、Ⅳ号と瓦礫の壁に挟まれ、動けなくなる。

 

「クッ! 次弾装填! 早くっ!!」

 

「は、ハイッ!!」

 

そこでバレンタインのみほ(シュガー)は、装填手に次弾の装填を指示。

 

バレンタインの主砲を、自分達を抑え込んでいるⅣ号へ向ける。

 

粗接射の状態である。

 

外す事は無い。

 

「…………」

 

それでもみほは、バレンタインから離れようとしない。

 

「!!………」

 

その様子を見た弘樹は、吸着地雷を手に更に走る速度を上げる。

 

「装填完了っ!!」

 

だが、バレンタインの装填の方が先に終わってしまう。

 

「惜しかったわね! 主砲が壊れていなければココで勝負を決められたものを!!」

 

Ⅳ号とみほを見据えながら、バレンタインのみほ(シュガー)がそう言い放つ。

 

「…………」

 

だが、みほはバレンタインとみほ(シュガー)から目を反らさない。

 

「今度こそ終わりよ! 撃………」

 

て、と言う前に………

 

バレンタインのモノではない砲撃音が鳴り響き、バレンタインの車体側面に、砲弾が命中!

 

爆発が起こり、一瞬の間の後………

 

バレンタインから白旗が上がった!

 

「!? なっ!?」

 

「「!?」」

 

みほ(シュガー)と弘樹、みほが砲弾が飛んで来た方向を確認するとそこには………

 

「やった………のか?」

 

「やった! やりましたよ会長!」

 

「みたいだね………はあ~~、疲れた~~」

 

「お疲れ様、杏」

 

装甲が殆ど真っ黒に染まり、所々へこんでいる痕がありながらも………

 

如何にか動いていたカメさんチームのヘッツァーが、砲口から硝煙を上げていた。

 

「! 会長っ!!」

 

「折角ヘッツァーに改造したのに、良いとこ無しでやられちゃったら申し訳が立たないからねぇ」

 

みほがそう口走ると、ヘッツァーのハッチを開けて姿を晒した杏が、そう言って来た。

 

『ナイトウィッチ&ハロウィン機甲部隊フラッグ車、行動不能! よって! 大洗機甲部隊の勝利っ!!』

 

そこで、主審のレミにより、大洗の勝利を告げるアナウンスが流される。

 

直後に、観客席から割れんばかりの歓声と拍手が鳴り響く。

 

『やった! やりましたぁっ!! 大洗機甲部隊! またしても奇跡の大逆転勝利ーっ!!』

 

『ホント、大洗は毎回魅せてくれますね』

 

『分かるわ』

 

実況席のヒートマン佐々木、DJ田中、瑞樹も興奮している様子でそう実況する。

 

「勝った………!? うわっ!?」

 

勝利を聞き届けた瞬間、みほは脱力してキューポラの縁に寄り掛かろうとしたが、身体がかなり外に出ていた為、キューポラの縁を超えて背中から落ちそうになる。

 

………が、そのみほを弘樹が支えた。

 

「大丈夫ですか、西住総隊長」

 

「弘樹くん………ありがとう」

 

弘樹がみほの顔を覗き込みながらそう尋ねると、みほは安堵の笑みを浮かべてそう返した。

 

「まさか最後の最後で見誤るとはね………」

 

とそこで、バレンタインのみほ(シュガー)が、みほの目の前まで来てそう言って来る。

 

「あ、シュガーさん」

 

「フフ………」

 

みほがそれを確認すると、みほ(シュガー)は変装用のマスクを顔から剥がし、只のシュガーへと戻る。

 

「まさかヘッツァーが無事だったとはね………それを見越して突撃して来て動きを封じるなんて」

 

「いえ、カメさんチームが無事だったのは知りませんでした」

 

「へっ?」

 

みほがそう言ったのを聞き、シュガーは思わず間抜けた表情を浮かべる。

 

「じゃ、じゃあ、如何してあんな突撃を?」

 

「何も考えてませんでした」

 

「ええっ!?」

 

更に問い質すと、驚愕の答えが返って来て、シュガーは思わず声を挙げる。

 

「な、何もって………ホントに何も考えてなかったのっ!?」

 

「………弘樹くんが、何も考えずに走れって言ってたから………だから、それを信じて突っ込んだんです」

 

「…………」

 

唖然とした様子を見せるシュガーだったが………

 

「ハハハハハッ! 成程ね! 信じて何も考えずにか………それは読めないわ」

 

そう言って豪快に笑うと、右手をみほの方へと差し出す。

 

「…………」

 

みほはその手を取り、2人はしっかりと握手を交わすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後………

 

両機甲部隊は集合地点へ集結………

 

「「「「「「「「「「ありがとうございましたっ!!」」」」」」」」」」

 

互いに試合終了の挨拶を交わし、改めて準々決勝は終了。

 

大洗は準決勝へと駒を進めた。

 

「白狼! コイツゥッ!!」

 

「いいとこで現れやがって、ホンマに!!」

 

「テメェの遅刻癖は一生治らねえのかよっ!!」

 

「ちょっ!? お前等っ! 止めろぉっ!!」

 

そして漸く復帰した白狼に対しては、海音と豹詑を中心に、大洗歩兵部隊が祝福と言う名の袋叩きをお見舞いしていた。

 

殴る・蹴るは当たり前………

 

中には投げ技を食らわせたり、絞め技を決めている者も居た。

 

「あ、あの、皆さん………そ、その辺で………」

 

止めようとする優花里だが、微妙に殺気立っている大洗歩兵部隊を前に、完全に尻込みしている。

 

「安心しろ、秋山くん。命に危険が及びそうになったら小官が止める」

 

「それって、命の危険が無かったら止めないって事ですよねっ!?」

 

そんな優花里に弘樹がそう言うと、優花里はそうツッコミを入れる。

 

「よ~し、今日はコレぐらいで勘弁してやる」

 

「もう勝手な真似するんじゃねえぞ」

 

とそこで、如何やら飽きたらしく、大洗歩兵部隊の面々が白狼を解放した。

 

「テメェ等………覚えてろよ」

 

戦闘服がすっかり泥塗れになった白狼が、大洗歩兵部隊の中から逃げる様に抜け出して来る。

 

「あ! 神狩………」

 

「ホロウッ!!」

 

優花里が声を掛けようとしたところ、それを遮る様に白狼と同い年ぐらいの男子が現れ、白狼に声を掛ける。

 

「! 『イチ』!! また会えるだなんて夢にも思わなかったぞ!!」

 

「俺もだよホロウ!! もう二度と会えないと思っていたけど、会えて嬉しいよ!」

 

『イチ』と呼ばれた男子と、親しげに会話を交わす白狼。

 

「ハハハハッ!! 俺もだよ!! 元気にしてたか?!」

 

「ああ! でも相も変わらずフユ姉にしごかれてさ、大変な毎日だったよ………」

 

「ほう? 私のシゴキがそんなに大変か?………」

 

「ああ、そりゃもう、地獄の様な………って、フユ姉!? あ、いや………!? イデェッ!!」

 

と、何時の間にか現れた、空港で白狼を迎えた女性・フユが、イチに拳骨を見舞う。

 

「全く………お前も男なら、アレ位の事で音をあげてどうする? 情けないぞ、未熟者」

 

「ご、ごめん………」

 

(相も変わらず………か)

 

フユとイチの遣り取りを見て、白狼は笑みを零す。

 

「白狼さん!」

 

「白狼くん!」

 

「白狼!!」

 

「神狩!」

 

「神狩くん!!」

 

「ホーリー!!」

 

「! お前等!」

 

とそこで今度は、冥桜学園の面々が姿を現し、白狼を取り囲んだ。

 

(神狩殿………楽しそうであります)

 

その様子を見て、優花里は複雑そうながらも、笑みを浮かべる。

 

「優花里さん………」

 

「…………」

 

みほはそんな優花里の姿を見て何と言って良いか分からず、そんなみほの傍に弘樹は無言で佇んでいる。

 

「フーッ………舩坂 弘樹」

 

「………貴様か」

 

とそこで、背後から声を掛けられた弘樹が振り向きながら、ジャックの姿を確認する。

 

「完敗だよ。やはり君は英霊の血を引く者だった」

 

「…………」

 

「僕は君の祖先………舩坂 弘軍曹に憧れていた。彼の様な英雄になりたいと心から思った。だから剣術、射撃などを一意専心に学び続け、歩兵道を続けて来た」

 

「…………」

 

「そして何時しか、僕の中には舩坂 弘の不死身とは『最強である』事………即ち『絶対に負けない』と言う方程式が出来上がっていた」

 

「………それが貴様の2つ名の意味か」

 

「そう………僕が英霊を名乗った理由………それは絶対に負けないと言う覚悟の証だ」

 

淡々と聞いている弘樹と、同じ様に淡々と話すジャック。

 

「だが、所詮は紛い物………本物の英霊の血を引く者の前では無力だったよ………運や事象、環境さえも味方につける異能の力を持つ者の前にはね」

 

「………買いかぶり過ぎだ」

 

「その言葉は皮肉にしか聞こえないね………」

 

仏頂面でそう言う弘樹に対し、ジャックはうっすらと笑みを浮かべてそう言う。

 

「その異能の力が本物か如何か………この全国大会を通して見極めさせてもらうよ………フフフ、如何やら早くも君の毒が回り始めた様だな。では、失礼」

 

そう言い残すと、ジャックは弘樹に背を向け、去って行った。

 

「な、何だか、言いたい事だけ言って帰ってったみたいだね………」

 

「小官の事を毒蛇か何かだとでも思っているのか?………」

 

みほが冷や汗を掻きながらそう言うと、弘樹は若干眉を顰める。

 

「すまない。盛り上がっているところに失礼させてもらうよ」

 

とそこで、そう言う迫信の声がしたので弘樹とみほが振り返ると、冥桜学園の者達に囲まれている白狼に、紫朗と連れ立った迫信が声を掛けていた。

 

「会長………」

 

「神狩くん。先ずは復帰おめでとう………で、コレからも大洗機甲部隊の一員として戦ってくれると見て良いのかね?」

 

「………ああ」

 

いつもの様に開いた扇子で口元を隠している迫信に、白狼はそう返す。

 

「了解した。手続きは済ませておこう。神狩 白狼くん………君の再入隊を歓迎する」

 

「そりゃどうも………」

 

「それから………上田風紀委員長」

 

とそこで、迫信は控えていた紫朗に視線をやる。

 

「ハイ………神狩 白狼。君には1週間の謹慎を言い渡す」

 

「………はあっ!?」

 

紫朗から突然謹慎を言い渡され、白狼は泡を食った表情になる。

 

「理由はどうあれ、この短期間に個人の都合で入退学を繰り返したんだ。風紀委員としては何らかの処分を下さなければ他の生徒に示しが付かない」

 

「ちょっ!? じゃあ暫くは自室に缶詰って事か!?」

 

「いや、歩兵道の訓練と試合には出て貰う。我が部隊に遊ばせておく戦力は無いからな。だが、それ以外に於いては一切の自由行動を制限する。また、期間中に反省文を原稿用紙100枚分書き上げる事」

 

「100っ!?」

 

「コレでも軽くした方だ。君の勝手な行動のせいで、我が部隊は大変な迷惑をこうむったのだからな」

 

「…………」

 

呆然としていた白狼の肩に、手を置く者が居た。

 

「神狩………」

 

「宗近………」

 

宗近である

 

「………コレも人生だ」

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

宗近がそう言うと、冥桜学園の面々も全員が同意する様に頷いた。

 

「………チクショウ! 神は死んだっ!!」

 

「神なら留守だ。休暇を取ってラスベガスに行っている」

 

「ウルセェよ!」

 

「「「「「「「「「「アハハハハハハハッ!!」」」」」」」」」」

 

思わずそう叫ぶ白狼に、竜作がそんな事を言い、またも白狼は叫ぶと、大洗機甲部隊の面々は大笑いし始めたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

自らに化け、その動きまでもトレースしたシュガーに苦戦するみほ。
だが、弘樹のアドバイスに従い、何も考えずに突撃を敢行。
そして、生き延びていたヘッツァーがシュガーを仕留め、大洗は準決勝へと駒を進める。

なお、復帰した白狼には、コレまでの勝手な行動のペナルティとして、謹慎と反省文が言い渡されたのだった。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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