ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第160話『神狩 白狼、まだまだ奮戦します!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第160話『神狩 白狼、まだまだ奮戦します!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

準決勝試合会場・廃墟の工業地帯の一角………

 

「オラァッ!!」

 

新たな球形砲弾を、白狼目掛けて蹴り飛ばすカロ。

 

「ふう~~~~………」

 

すると白狼は、深く呼吸したかと思うと、円を描く様な動きを取り始める。

 

太極拳の動きだ。

 

白狼の周りは完全に静かな世界へと変わってゆき、最早その耳には喧騒すらも聞こえない………

 

そこへ、カロが蹴った球形砲弾が迫る。

 

「!!」

 

すると白狼は、その球形砲弾に対し、まるで生クリームを掻き混ぜる様に回転させた右手を差し出す。

 

そうすると何と!!

 

蹴られた球形砲弾の勢いが急激に衰え始める。

 

そのまま白狼が身体を回転させると、球形砲弾はまるで白狼の手に吸い付いているかの様に一緒に動き、やがてはまるでバスケットボールの様に右手の人差し指の上で回転させる。

 

「!? ん何ぃっ!?」

 

「ホラ、返すぜっ!!」

 

驚くカロに向かって、白狼は球形砲弾を『投げ返す』!!

 

「!? うおおっ!?」

 

「「「「「わあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!?」」」」」

 

咄嗟にその場に伏せて交わしたカロだったが、後方に居たハロウィン歩兵達が巻き添えを喰らった形で戦死判定となった。

 

「! しまったっ!?」

 

「如何した? もう終わりか?」

 

その光景に思わず声を挙げるカロだったが、白狼はそう言って挑発する。

 

「! テメェ………」

 

そんな白狼の姿に、カロは歯軋りをする。

 

「カロさん! 援護しますっ!!」

 

とそこで、残っていたハロウィン歩兵達がカロの援護に入ろうとする。

 

「来るんじゃねえっ!!」

 

だが、カロはそれを制止する。

 

「! しかし!………」

 

「オメェ―等は本隊と合流して大洗を叩きに行けっ! 例えコイツが強くたって、フラッグ車をやっちまえば大洗の負けだ!!」

 

「! 分かりましたっ! 本隊に合流しますっ!!」

 

その指示を聞き、残存ハロウィン歩兵達は、本隊への合流に向かうのだった。

 

「何だ? 勝てないと思って諦めたのか?」

 

「勘違いすんな。飽く迄戦略的な判断だ。貴様は必ず倒す。オオカミの名は今日地に落ちる!」

 

更に挑発する様な白狼に、カロはそう言い放って、髪を櫛で整える。

 

「オオカミってのは群れで行動するスマートな動物だ! お前みたいな孤高気取りの奴なんかに、オオカミの名を名乗る権利はねえっ!!」

 

「オオカミだって色々居るんだ。まあ、確かに俺は群れより1匹が良いけどな」

 

「ハッ! それで、大洗を離れたんだろ! 仲間を信じず、勝手に逃げた捨て犬みたいなもんだ!」

 

「事情が悪くて、離れたんだ。あの時の俺は全然ダメダメで、どーせ俺なんかいなくても、大洗の優勝は決まりだと思ったからな」

 

「そういうのを逃げるって言うんだよ!」

 

「………此処に来る前に冥桜の連中に聞いたところ、連中俺の事を探しに来たってよ。ただ単にお節介なのかお人好しなのか、俺には全然分かんねえな………けど、態々探しに来てもらった責任ぐらいは執らねえとな」

 

「お前を探しにだと………なら………その仲間に対して………その態度は何だぁっ!!」

 

と、そう叫んだと同時に、カロは白狼に向かって突撃!

 

蹴り上げを繰り出す!

 

「おっと!」

 

僅かに後退してかわす白狼。

 

だが………

 

「甘いっ!!」

 

カロがそう言うと、蹴り上げた足が急降下して来る!

 

ネリチャギ(踵落とし)である!!

 

「!?」

 

しかし、白狼はこの攻撃を、身体をスピンさせた体捌きで何とか避ける!

 

「! チイッ!!………」

 

が、身体に僅かに掠り、それだけでも結構なダメージを受けた。

 

「フフフ………」

 

カロは不敵に笑ったかと思うと、軽やかなステップで一旦距離を取ったかと思うと………

 

「!? グアッ!?」

 

白狼は突然身体に衝撃を感じ、後ずさる。

 

見れば、衝撃を感じた部分には足型が残っており、カロは何時の間にか中段前蹴りを繰り出した姿勢となっていた。

 

「成程………やるな」

 

「今、何があったのか分かったのですか、宗近さん」

 

その様子を、観客席で見ていた宗近と三日月がそう言い合う。

 

「三日月、居合い抜きを知っているな? 先程のはアレと同じでな………鞘に納められた刀を高速で抜くと同じく、アレは膝から先が見えない程の速度でキックを繰り出したんだ」

 

「見えないキック………」

 

宗近の解説に、三日月は唖然とする。

 

「………つまらねえ技だ」

 

しかし、白狼はその見えない速度での蹴りを食らったのにも関わらずに、首を鳴らして平然としている様な態度を執る。

 

「………この後に及んで挑発か。スマートじゃねえぜ」

 

カロはそんな態度が気にくわないのか、顔を強張らせる。

 

「セイヤァッ!!」

 

「!!」

 

と、不意を衝く様に一気に接近したカロが蹴りを繰り出すが、白狼は体捌きで、後ろに回り込み、攻撃しようしたが………

 

「そこだぁっ!!」

 

カロは白狼の事を見ないまま、背面に向かって蹴りを繰り出した!

 

「!?」

 

腕を交差させてガードする白狼だったが、腕には痺れが残る。

 

「凄いのです!」

 

「後ろは見えない筈なのに、背面から向かってくる白狼に蹴りを出すなんて………」

 

「ハラショー」

 

観客席にいる電、雷、響は驚く。

 

「今のはピットロチャギか………」

 

「は? ピッコロちゃん?」

 

天龍の言葉をそう聞き違える暁。

 

「ピットロチャギ。言うなりゃひねり蹴りだな。通常は真横にある目標に対して内から外にひねりながら蹴り込む技だな。パワーより柔軟さが一番重要なテコンドーならではの足技さ」

 

「何それ、スゴッ!!」

 

先程のカロの蹴り技を天龍は解説するが、暁は唖然とする。

 

「ソラソラソラァッ!!」

 

カロは更にヨプチャチルギ(横蹴り)、アプチャプシギ(前蹴り)、コロチャギ(掛け蹴り)と連続仕掛ける。

 

(チイッ! はえぇっ!!)

 

蹴り技のオンパレードな上に、技自体の速度に、白狼は避けるのと捌くので精一杯となる。

 

「調子に………乗るなっ!!」

 

「ガハッ!?」

 

だが、一瞬の隙を衝いて蹴りを弾いたかと思うと、そこから外門頂肘を繰り出した!

 

その強烈な一撃にカロは吹き飛ばされ、観客席は歓声を上げた。

 

「………グウッ!!」

 

しかしカロは鳩尾を押さえながら、踏み留まる!

 

「しぶといなっ!!」

 

それを見た白狼は追い討ちを掛ける為、カロに向かって走り出す。

 

だが!

 

「! そこだぁっ!?」

 

カロは素早く片足を天高く上げると、白狼の方に向かって落とした!

 

「!? ガッ!?………」

 

落ちる速度の速いネリチャギは、白狼の左肩に直撃!!

 

すると、グギッと言う何か嫌な音が響き渡る。

 

「!!」

 

即座に白狼は痛みで気付く………

 

左鎖骨にヒビが入ったと………

 

「グウッ!」

 

「うおおおっ!!」

 

左肩を押さえながら、白狼がカロを見据えると、カロは攻撃の手を緩めず、更に仕掛けてくる。

 

懐からコルト・ガバメントを取り出すと、白狼に向かって発砲する!

 

「!!」

 

しかし、白狼は銃口の向きで弾道を見極めると、カロへと最接近!

 

そのまま、ガバメントを構えていた腕を取って、1本背負いの様に投げ飛ばす!!

 

「うおっ!?」

 

「おりゃああっ!!」

 

投げ飛ばされ、空中で無防備となったカロに向かって跳び蹴りを放ったかと思うと、跳び蹴りの反動で反転し、更にキックを見舞ったっ!!

 

「ガハッ!………まだまだぁっ!!」

 

反転飛び蹴りを食らい、吹き飛ばされたものの、カロは受け身を取って耐える。

 

「うおおおっ!!」

 

そのカロに向かって、着地した瞬間に走り出す白狼。

 

「!!」

 

カロは白狼を一瞬睨み付けたかと思うと、白狼に向かって連続バク転で迫る!

 

「!?」

 

「オラァッ!!」

 

その意外な行動に白狼が一瞬唖然とした瞬間に、カロはドロップキックを食らわせる!

 

「ガッ!?」

 

「ララララァーッ!!」

 

更にそのまま、連続で蹴りを食らわせるカロ。

 

「トドメだぁっ!!」

 

そして着地すると、再びガバメントを取り出し、残り全弾を白狼に叩き込んだ!!

 

「!!………」

 

諸に喰らい、数歩後ずさったかと思うと、そのまま倒れそうになる白狼。

 

「………!!」

 

だが、寸前のところで踏ん張る!

 

「!? 嘘だろっ!?」

 

「………急所は外れたみたいだな」

 

驚愕するカロに対し、白狼は他人事の様にそう言い放つ。

 

「コイツ!!………」

 

苛立ちを露わに、カロは弾の無くなったガバメントを捨てる。

 

「…………」

 

すると白狼は両手を広げる姿勢を執った。

 

「さあ、来いよ!」

 

「な、何っ!?」

 

「今、俺の鎖骨にはヒビが入ってる! 確実に勝ちを手に入れるんなら、折らなきゃ意味ないぞ!!」

 

『何とぉっ! 神狩選手! 鎖骨にビビが入っている事を自ら露呈し、挑発に使うぅっ!!』

 

『バカじゃないですか』

 

『ホント、本物のバカだわ………』

 

白狼のその挑発を実況するヒートマン佐々木の横では、DJ田中と瑞樹がそう酷評を下していた。

 

「………ふざけやがって。そこまで言うんなら覚悟しとけよ! 犬ッコロ!!」

 

挑発に乗ったカロは思い切りジャンプし、白狼に向かって空中踵落としを繰り出す!!

 

「貰ったぁっ!!」

 

踵落としは見事に白狼の肩に直撃した!!

 

しかし………

 

「………残念だが………そこは鎖骨じゃない………」

 

「!? しまったっ!?」

 

怒りで僅かに狙いを誤った為、カロは白狼のヒビが入った鎖骨を僅かに外してしまう!

 

「狙いの粗さが仇になったな!!」

 

直後に!!

 

白狼は腕を思いっきり振り上げ、カロの足の骨………腓骨を叩き折った!

 

「! があああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーっ!!」

 

カロは苦悶の表情を浮かべ、悲鳴を挙げながら倒れる。

 

「…………」

 

白狼は、そんなカロを一瞥すると、その場から去ろうとする。

 

「待てっ!!」

 

「!?」

 

しかし、そう言う声が聞こえて、白狼が驚きながら振り返ると、そこには腫れ上がった足で佇むカロの姿が在った。

 

「ベオウルフ!! 足が折れても俺はまだ立っているぞ!!」

 

「………いや………もうケリは着いた」

 

「!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

大洗機甲部隊本隊は………

 

「西住総隊長っ!!」

 

「ウサギさんチーム! 良かった………無事だったんだね」

 

残存大洗機甲部隊が集結していた地点に漸くの事で合流したM3リーと梓の姿を見て、みほは安堵の声を漏らす。

 

「ハイ! 神狩先輩が助けてくれたんです!」

 

「!? 神狩殿が!?」

 

「白狼が!? 白狼が帰って来たんですかっ!?」

 

梓の報告を聞いた優花里と飛彗がそう驚きの声を挙げる。

 

「ハイ。今は私達に襲い掛かって来たハロウィン歩兵部隊を相手にしてくれています!」

 

「そうですか………やっぱり帰って来てくれたんですね」

 

「神狩殿………」

 

安堵の表情を浮かべる飛彗と、頬を紅潮させて両手を組む優花里。

 

「だが、現在の我々の状況は非常に厳しい………」

 

だがそこで、迫信が珍しく難しい顔でそう呟く。

 

その言葉通り、現在大洗機甲部隊は、戦車チームはあんこうチーム、カメさんチーム、うさぎさんチーム、そしてサンショウウオさんチームだけ………

 

歩兵部隊は、弘樹、地市、了平、楓、迫信、秀人、俊、大詔、小太郎、灰史、ゾルダート、光照、誠也、清十郎、月人、シメオン、鋼賀、ハンター、紫朗、飛彗、弁慶、シャッコーのメンバーを含め、僅か100名足らず………

 

壊滅寸前の被害だった………

 

「如何するの? この戦力で?………」

 

「…………」

 

沙織が不安そうにみほにそう尋ねるが、みほの表情は暗い………

 

「恐らく、敵は一気に勝負を着けようと、全戦力を投入してくるだろう………」

 

「正面決戦となれば、我々に勝ち目は無い………」

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

大詔とゾルダートの言葉が、残存大洗機甲部隊メンバーの心に突き刺さる。

 

「今度ばかりはホントに駄目かもな………」

 

「うわ~~~んっ! 柚子ちゃああああああぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~~んっ!!」

 

「も、桃ちゃん落ち着いて!」

 

俊が思わずそう呟くと、絶望的な悲鳴と共に、桃が柚子に抱き付く。

 

(如何しよう………このままじゃ負けちゃう………そしたら学校が………)

 

必死に考えを巡らせるみほだったが、自分の手が読まれている以上、思いつく限りの作戦は使えない………

 

「全員、良く聞けっ!!」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

そこで不意に弘樹がそう声を挙げ、残存大洗機甲部隊メンバーの視線が弘樹に集まる。

 

「現在の我々に状況は非常に厳しい………だが、我々はまだ戦闘継続が可能である! 元より負けられない戦いだと言うのは百も承知の筈だ!!」

 

「けどよ、弘樹。ウチの司令塔のみほちゃんの作戦が読まれてるんだぜ?」

 

「ならば全員で知恵を絞って作戦を考えれば良い! 今こそコレまでの学習の成果を発揮する時だ! 大洗の意地を見せろっ!!」

 

了平の弱気な台詞も跳ね飛ばし、弘樹はそう言い放つ。

 

「………よおし! やってやらぁっ!!」

 

「このまま負けたとあっちゃあ、女子学園の皆に申し訳が立たないぜ!」

 

「元より徹底抗戦であああああああるっ! 誇り高き大洗に敗退の文字などなあああああああいっ!!」

 

それを聞いた残存大洗機甲部隊メンバーの指揮が上がり、月人も相変わらずテンションが高い様子を見せる。

 

「弘樹くん………」

 

「…………」

 

そんな弘樹にみほが声を掛けると、弘樹はただ、みほの方を見返して無言で頷いた。

 

「………態勢を立て直します!! 何か意見が有れば、遠慮無く言って下さいっ!!」

 

そこでみほも表情を引き締め、皆に向かって意見を集う。

 

「兎に角、相手の数を一気に減らせる作戦が必要だ!」

 

「洋上支援を要請して、艦砲射撃を浴びせて貰うのは如何だ?」

 

「コチラは敵の位置を掴めていない。艦隊の偵察機を使っては気づかれて分散されてしまう。何より、洋上支援自体が妨害される可能性も有る」

 

「特攻でもするか?」

 

「それこそ勝ち目が無くなるだけだぞ!」

 

皆が考えた、様々な作戦が議論されて行く………

 

「………うん? アレは?………」

 

とそんな中、周囲を警戒していた地市が、何かに気付いた様に声を挙げる。

 

「如何した? 地市?」

 

「いや、『アレ』なんだけどよぉ………使えねえかなと思って」

 

弘樹が尋ねると、地市は見つけた『アレ』を指差してそう言う。

 

「『アレ』をか?………」

 

「いやな、この前見た映画で、『アレ』を使ったシーンがあってな………」

 

「あっ! その映画! 私も見ましたぁっ!!」

 

怪訝な顔をする弘樹に地市がそう言うと、M3リーの桂利奈がそう言って来る。

 

「桂利奈、どんな風に使われたの?」

 

「えっとねぇ………」

 

梓が尋ねると、桂利奈が映画の内容を思い出しながら語り始める………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………と言う感じだったんだよぉ」

 

「何ソレ?」

 

「ありえな~い」

 

桂利奈の話を聞き終えたあやとあゆみがそう声を挙げる。

 

「幾ら何でも、それは無いよね~、梓ちゃ~ん」

 

優希がそう言いながら、梓の姿を見上げる。

 

「…………」

 

しかし梓は、何時の間にか地図を取り出して、何かを考えている様な表情となっている。

 

「? 梓ちゃん?」

 

「西住総隊長! 地図を見て貰えますかっ!? B5の地点です!!」

 

首を傾げる優希だったが、梓はそれに構わず、みほへと声を掛ける。

 

「B5?………! 此処はっ!?」

 

「此処を使えば、さっき桂利奈が言ってた事が出来ると思うんですっ!!」

 

促されて地図を見たみほが何かに気づき、梓がそう言う。

 

「ええっ? 映画でやってた手を使うのぉっ!?」

 

「幾ら何でも無茶苦茶だよ~」

 

梓の意見に、それは無いと言う様な声を挙げるあやとあゆみ。

 

「………いや、奇抜で意外と行けるかも知れないよ」

 

しかしそこで、同じ様に地図を見ていた迫信がそう言った。

 

「この際、使える手は全て使ってみるまでだ。案外行けるかも知れん」

 

弘樹もそう同意する。

 

「すぐに作業に掛かりますっ!!」

 

「時間が惜しい! 全員でやるぞっ!!」

 

直後に、灰史を筆頭に、残存大洗機甲部隊メンバーが作戦への準備に取り掛かり始める。

 

「西住総隊長、作業が完了するまで、時間を稼ぐ必要があります。洋上支援を要請しましょう」

 

「うん………コチラは大洗機甲部隊総隊長、西住 みほ。洋上支援を要請します!」

 

弘樹のその言葉に、みほは護の呉造船工業学校艦隊へ支援要請を入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

ナイトウィッチ&ハロウィン機甲部隊は………

 

『偵察機よりシュガー総隊長へ。洋上に多数の艦影を確認。大洗機甲部隊の支援艦隊と思われます』

 

「了解………艦砲射撃で一気に撃破を狙う積りかしら?」

 

偵察機から、洋上より艦隊が接近しているの報告を受け、シュガーがそう思案する。

 

「如何します、総隊長?」

 

「一旦停止。バラバラになって遮蔽物に退避して。コチラも洋上支援を呼ぶわ。安全が確認され次第、追撃を続行するわよ」

 

「「「「「「「「「「了解っ!!」」」」」」」」」」

 

シュガーがそう指示すると、ナイトウィッチ&ハロウィン機甲部隊は小隊規模に分散し、頑強な遮蔽物の影へと入り込む。

 

「悪いけど、ウチの支援艦隊は対洋上支援艦隊用に特化した艦隊よ。そっちは手も足もだ出せないわ。シュガーより支援艦隊へ」

 

不敵に笑いながら、シュガーは自軍の支援艦隊へと通信を送るのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして………

 

試合会場に面している海から、数隻の艦艇が波飛沫を上げて向かって来る。

 

呉造船工業高校の支援艦隊だ。

 

伊勢型戦艦の1番艦『伊勢』と2番艦の『日向』を中心に、球磨型軽巡洋艦5番艦『木曾』、長良型軽巡洋艦4番艦『鬼怒』と同5番艦『阿武隈』

 

そして、護が駆る雪風と初風、天津風、時津風の第十六駆逐隊に、特Ⅱ型、通称綾波型7番艦『朧』、同8番艦『曙』、同9番艦『漣』、同10番艦『潮』から成る『第七駆逐隊』が、輪形陣を取って航行している。

 

「間も無く、試合会場が伊勢と日向の射程に入る。全艦、戦闘隊形を取れ!」

 

「戦闘隊形へ移行!」

 

「了解っ!!」

 

伊勢に座乗している艦隊司令からそう通達が入り、雪風の艦橋でも護の指示が飛ぶ。

 

各艦が動き出し、艦隊が陣形を変えて行く。

 

と、その時!!

 

「!! 9時方向に雷跡っ!!」

 

「!? 何ぃっ!?」

 

見張り要員からそう報告が挙がり、護がすぐに双眼鏡で9時方向を確認すると、そこには確かに、艦隊に向かって来る2本の雷跡が在った!

 

「! 全艦に通達! 9時方向に雷跡を確認! 数2! 距離1000! 速力、凡そ40ノット!!」

 

「戦闘陣形展開中止! 全艦、一斉回頭っ!!」

 

護がすぐさま全艦に報告すると、艦隊司令からそう指示が飛び、艦隊は一斉に回頭を始める。

 

その間に、魚雷はドンドン艦隊へと迫って来る。

 

「かわせーっ!!」

 

雪風艦橋の見張り要員がそう言った瞬間………

 

魚雷は艦隊の間を擦り抜けて行った………

 

「かわした!」

 

「見張り要員! 付近に水上艦、或いは敵雷撃機は見えるかっ!?」

 

艦橋見張り員がそう言う中、護は伝声管でマスト頭頂部の見張り小屋の見張り要員にそう問い質す。

 

「いえ! 敵艦、並びに敵航空機の存在は見受けられず!!」

 

「と言う事は、さっきの雷撃は潜水艦か………」

 

先程の雷撃が潜水艦によるものだと判断した護の表情が険しくなる。

 

大日本帝国海軍の艦船達からしてみれば、潜水艦は忌むべき相手だった。

 

元々、帝国海軍は対潜能力が低く、多くの艦艇が潜水艦の雷撃によって撃沈されている。

 

「ソナー! 水中の音を聞き逃すなっ! 見張り要員! 潜望鏡が見えないか、注意しろ!!」

 

「「了解っ!!」」

 

「全艦! 対潜警戒態勢っ!!」

 

護がソナー員と見張り要員にそう指示する中、司令官からもそう指示が飛び、支援艦隊は対潜警戒態勢を取る。

 

「外したか………」

 

「ですが、コレで敵艦隊は迂闊な行動は出来なくなりました」

 

その水面下にて、ガトー級潜水艦6番艦『ガードフィッシュ』の艦長と副長がそう言い合う。

 

更にガードフィッシュの周りには、同じガトー級潜水艦10番艦『ブラックフィッシュ』、同13番艦『コッド』、同18番艦『フライングフィッシュ』、同20番艦『ハダック』、同23番艦『キングフィッシュ』

 

合計6隻もの潜水艦の艦隊が展開していた。

 

「その通り………後はじっくりと料理してやれば良い」

 

ナイトウィッチ&ハロウィン機甲部隊の支援艦隊は、水面下にて静かに行動を開始するのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

ハロウィンのエース、カロと対決する白狼。
激しい戦闘の末に………
カロの自慢の足を叩き折って勝利した白狼。

一方、残存大洗機甲部隊も、弘樹の激で持ち直し、最後の作戦に打って出る。

時間稼ぎとして支援艦隊を投入するが、その艦隊は、ナイトウィッチ&ハロウィンの潜水艦隊に阻まれる………

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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