ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第16話『故郷の大決戦です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第16話『故郷の大決戦です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふとした切っ掛けから………

 

『天竺女学院』と『ジョロキア男子高校』からなる『天竺ジョロキア機甲部隊』との試合は………

 

弘樹の故郷である、栃木県の山間にある田舎の村で行われる事となった。

 

弘樹と共に、村人達に熱烈な歓迎を受けた大洗機甲部隊は、村人達と宴会をしながら一夜を過ごし………

 

翌日、遂に………

 

天竺ジョロキア機甲部隊との会合を果たした。

 

インドとタイをモチーフとし、象まで駆り出してきた屈強な歩兵達と巡航戦車からなる機甲部隊に………

 

大洗機甲部隊は如何立ち向かうのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

舩坂の故郷・練習試合の会場………

 

大洗機甲部隊のスタート地点………

 

大洗機甲部隊のスタート地点は森林の中となっており、大洗機甲部隊は狭い森の中の道を通って進軍していた。

 

「全部隊、視界が悪いので気を付けて下さい」

 

「各方向に気を配り、連携を密にするんだ」

 

先頭を進んでいるとらさん分隊に守られているあんこうチームのⅣ号のキューポラから上半身を出しているみほが喉頭マイクを押さえながらそう言い、最後尾に居るAEC 四輪駆動装甲指揮車の車内に煌人と共に居る迫信からもそう指示が飛ぶ。

 

「「「「「「「「「「了解っ!!」」」」」」」」」」

 

大洗機甲部隊の面々はそれに返事を返すと、歩兵達が各方向に視線を配る。

 

また、あんこうチーム以外の戦車からも、其々蛍、典子、エルヴィン、梓がキューポラから姿を現して、直接周囲に気を配る。

 

「…………」

 

と、そんな中………

 

あんこうチームを守るとらさん分隊の中で、弘樹が難しい顔をしていた。

 

「? 如何した、弘樹?」

 

「やはり、故郷の人達が見ていると思うと緊張するのですか?」

 

そんな弘樹の様子に気づいた地市と飛彗がそう声を掛ける。

 

現在、戦車道連盟と歩兵道連盟が特設した観客席で、弘樹の故郷の村人達は湯江達と共に観戦を行っている。

 

その為、流石の弘樹も緊張しているのかと推察した。

 

「いや、そうじゃない………ただ、如何にも妙な予感がしてな………」

 

しかし弘樹は、2人に向かってそう返した。

 

「妙な予感?」

 

「止めてくれよぉ。お前がそう言うこと言った時は大抵碌でも無い事ばかり起きたじゃないかぁ」

 

楓が首を傾げ、了平がコレまでの付き合いでの事を思い出してそう言う。

 

「そうなるかも知れないから警戒しろと言う事だ………!!」

 

と、その時!!

 

弘樹は何かに気付いた様に空を見上げる!!

 

見上げた空からは黒い点………

 

砲弾が自分達の方を目掛けて落ちて来ていた!!

 

「! 伏せろぉっ!!」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

弘樹の言葉に、大洗機甲部隊は如何言う事かと考える前に身体が動く。

 

みほ達は慌てて車内へと引っ込むとハッチを閉めて、戦車を停止させる。

 

歩兵部隊の面々も、一斉にその場に伏せた!!

 

直後に、降って来ていた砲弾が、大洗機甲部隊が進軍していたルートに着弾!!

 

派手に土煙を舞い上げる!!

 

あのまま進んでいれば、少なくともあんこうチームととらさん分隊は直撃を受けていただろう………

 

「! 敵襲っ!!」

 

まだ土煙が漂う中、弘樹は素早く立ち上がると三八式歩兵銃を構えてそう言う。

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

その声に反応するかの様に、他の歩兵部隊員達も次々に立ち上がり、其々の獲物を構える。

 

「「「「「「「「「「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

やがて、土煙の向こうから雄叫びが聞こえて来て、突撃兵を中心としたジョロキア歩兵部隊が突っ込んで来た。

 

「いきなり歩兵の突撃かよ!!」

 

「面白いやないけ! 迎え撃ったらぁっ!!」

 

いきなりの歩兵部隊での突撃攻撃に、地市が声を挙げると、大河がステン短機関銃・ステンMk.IIIを発砲する!!

 

「戦車隊は後退して下さい! 後方から援護砲撃を願います!!」

 

「了解! 全車、後退して下さいっ!!」

 

弘樹がそう呼び掛けると、みほが戦車隊に指示を出し、戦車隊は後退を始める。

 

と、その直後!!

 

パオーンッ!!と言う鳴き声が戦場に響いた!!

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

大洗機甲部隊の面々が驚きを露わにした瞬間!!

 

再び鳴き声が響いて、3匹の象が大洗歩兵部隊目掛けて突っ込んで来るっ!!

 

「! 象が来たぞぉーっ!!」

 

「お! 上手いねぇ。座布団1枚」

 

磐渡が思わずそんな声を挙げると、杏がそう言う。

 

「そう言う積りで言ったんじゃないと思うよぉっ!!」

 

「って言うか、現在進行形で危機的な状況ですぅっ!!」

 

蛍がそれにツッコミを入れると、勇武の声が挙がり、象は大洗歩兵部隊の中へと突っ込んで来た!!

 

「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!?」

 

突撃兵の1人が象の突撃を真面に喰らい、跳ね飛ばされる。

 

そして地面に転がったところでジョロキアの歩兵に撃たれ、戦死判定を受ける。

 

「くうっ!!」

 

如何にか象の突進を避けた竜真が、MAS 36小銃を象へと向けるが………

 

「ガネーシャ! 右だ!!」

 

象の上に乗って居たジョロキア歩兵部隊の狙撃兵『ガラム』がそう叫んだかと思うと、象が鼻を伸ばし、竜真のMAS 36小銃を絡め取った!!

 

「あ! か、返せっ!!」

 

慌てて自分の銃を取り上げた象………ガネーシャの鼻に跳び付く竜真。

 

しかし、ガネーシャは咆哮を挙げると、そのまま鼻を振り回し、竜真を投げ飛ばしたっ!!

 

「!? うわあぁっ!?………!? がっ!?」

 

投げ飛ばされた竜真は、背中から森林の木の1本の幹に叩き付けられ、そのまま地面に落ちる。

 

「貰ったぁっ!!」

 

それを見たジョロキアの突撃兵が、空かさずZK-383短機関銃を向ける。

 

「!?」

 

「竜真っ!!」

 

しかし、間一髪のところで、助けに入ったジェームズが竜真を引っ張って木の裏へと隠れる。

 

「サンキュー、ジェームズ!」

 

「ノープロブレム!」

 

竜真にそう返しながら、ブルーノZB26軽機関銃で隠れつつ応戦するジェームズだった。

 

「ギリメカラ! 敵の戦車へ向かえっ!!」

 

と、別の象・ギリメカラに乗ったジョロキアの対戦車兵『マサラ』が、パンツァーファウストを構えながら後退している大洗戦車隊へと向かう。

 

「象が突っ込んで来るよぉっ!?」

 

「上に乗って居る歩兵がパンツァーファウストを持っています!!」

 

「!!」

 

沙織と優花里の報告に、ペリスコープで突っ込んで来るギリメカラとマサラの姿を確認するみほ。

 

続いて後方を確認するが、大洗戦車隊は一本道の為、後退が遅れていた。

 

「後退中止! 木々を踏み散らして、森に入って下さいっ!!」

 

後退は無理と判断したみほは、多少の戦車の損傷は止む無しと森への突入を命じる。

 

「喰らえっ!!」

 

と、その瞬間にマサラがパンツァーファウストを発射した!!

 

「!! 麻子さん!!」

 

「ホイッ」

 

みほが叫びと、麻子が何時もと変わらぬ調子で返事を返し、バックしていたⅣ号の左の履帯を止め、車体を右へと流す!!

 

直後に、先程までⅣ号が居た場所に、パンツァーファウストの弾頭が着弾!

 

派手に土煙が上がり、土片がⅣ号の上に降り注いだ!

 

「チイッ! 外したか!! なら、もう1発!!………」

 

撃ち終えたパンツァーファウストに、新たな弾頭を装着すると、再度Ⅳ号に狙いを定めるマサラだが………

 

その瞬間に、象の足元にマークII手榴弾が転がって来て爆発!

 

象は至近距離で起こった爆発に怯み、マサラは振り落されそうになる。

 

「!? うおおっ!? な、何だっ!?」

 

しかし、マサラは象用の鞍にしがみ付いて堪え、手榴弾を投げてきた相手を探す。

 

「そらっ!」

 

すると、木の陰からマドセン軽機関銃を構えた大詔が姿を現し、象に向かって威嚇射撃をする。

 

「うおおっ!? そこかっ!!」

 

再び振り落されそうになったのを堪え、護身用のナガンM1895を抜くと、大詔に向かって発砲する。

 

「!!」

 

大詔は素早く再度木の陰に隠れ、ナガンM1895の弾丸は木の幹に穴を開ける。

 

「やるな! 全く気配を感じなかったぜ!! 貴様、名は!?」

 

「………大洗男子校歩兵部隊、アヒルさんチーム護衛部隊のペンギンさん分隊・偵察兵、蛇野 大詔」

 

名を問われ、大詔は姿を隠したまま名乗る。

 

「俺はジョロキア男子高校、対戦車兵のマサラ! 貴様とは良い勝負が出来そうだな!!」

 

「そいつは光栄だな………ところで1つ聞きたい事が有る」

 

「? 何だ?」

 

「象は美味いのか?」

 

「………はっ?」

 

大詔の質問に、マサラは思わず呆けた顔をしてしまう。

 

「味だ。美味いのか?」

 

「貴様っ!! 象を食う気か!?」

 

「そんなに褒めないでくれ」

 

「褒めとらんっ!!」

 

先程までのシリアスな遣り取りから一転し、まるで漫才の様な会話が繰り広げられる。

 

「何時もは蛇がメインなんだが………偶には動物的な肉も食わんとな」

 

「ええい、何て奴だ………」

 

悪食とも言える大詔の食欲に、マサラは若干引く。

 

とそこで!!

 

別方向から機関銃の銃弾が、大詔に襲い掛かった!!

 

「!? うおおっ!?」

 

慌ててその場から飛び退く大詔。

 

機関銃の銃弾は、大詔が隠れていた木の幹を蜂の巣にする!

 

「………象は俺達の戦友だ。それを食おうとするなど………俺が許さん」

 

機関銃を撃った主………SIG KE7軽機関銃を構えたターメリックが、大詔に向かってそう言い放つ。

 

「チイッ………」

 

大詔は別の木の陰に隠れ、マドセン軽機関銃のマガジンを交換する。

 

「!! 敵の戦車隊が来ましたっ!!」

 

とそこで、清十郎が天竺女学院の戦車隊が接近して来ている事に気づき、報告を挙げる。

 

「退避、急いで下さいっ!!」

 

「敵戦車発砲っ!!」

 

みほが思わず大声を挙げた瞬間、弘樹の声が挙がり、天竺戦車隊の先頭を進んできていたコメットが発砲!!

 

機動九〇式野砲を牽引していた九八式四屯牽引車・シケが、機動九〇式野砲と操縦者ごと吹き飛ばされる!!

 

「! 九〇式野砲が!?」

 

「まだ来るぞっ!!」

 

鷺澪が思わず声を挙げた次の瞬間、秀人がそう叫び、もう1両のコメットと3両のチャレンジャーも砲撃を開始した!!

 

2両のコメットと、3両のチャレンジャーから放たれる砲撃は、正確に野戦砲や対戦車砲を牽引車ごと、或いは固まっていた大洗歩兵達の中へと撃ち込まれる!!

 

「………正確な砲撃だ」

 

「噂通り、かなりの腕みたいだな。乱戦状態で味方も居るってのに、平気で撃ち込んで来てるぜ」

 

「貴様等、冷静に話している場合かぁ!?」

 

砲撃から逃れる様に地面に伏せていた獅龍と俊がそう言い合っていると、同じ様に地面に伏せて若干テンパっていた十河がツッコミを入れる様にそう言い放つ。

 

「ルウ! このまま前進して!!」

 

「了解! 任せといてぇっ!!」

 

コメットの砲手席に着いているローリエが、操縦席のルウにそう呼びかけると、コメットが加速する。

 

「退いた退いたぁーっ! 逃げ遅れたら容赦無く轢き潰すわよぉっ!!」

 

味方が慌てて進路を開ける中、ルウはまるで人が変わった様に過激な台詞を吐きながら、コメットを爆走させる。

 

「ひえええええっ!?」

 

「ル、ルウ副隊長ぉっ! もっと安全運転で………」

 

「何言ってんのぉっ!? そんな事じゃ勝てる試合も勝てないわよぉっ!!」

 

装填手や副操縦手の悲鳴にも似た声が挙がるが、ルウはそう一喝する。

 

「アラアラ、全く………ホントにパンツァー・ハイに成り易い子なんだからぁ」

 

「隊長………せめて止めて下さいよぉ………」

 

そんなルウの様子を、アラアラの一言で済ませるローリエに、車長は無駄だと思いつつもそう呟くのだった。

 

「1両突っ込んで来るぞ」

 

「コメットって奴だよ! 多分、ローリエさんとルウちゃんが乗ってたやつ!!」

 

操縦席と通信手席の窓から、突っ込んで来るローリエとルウの乗ったコメットを確認した麻子と沙織が、報告する。

 

「撃ちますか!?」

 

「駄目です! この距離ではコメットの正面装甲は抜けません!!」

 

華が砲撃するかと問うが、優花里がそう返す。

 

「!!」

 

みほも、ペリスコープ越しに迫り来るコメットを捉える。

 

「次弾、装填完了!」

 

一方、向かって来るコメットの内部では、装填手が次弾の装填を終える。

 

「悪いわね………貰うわよ」

 

ローリエは冷静に、Ⅳ号へと照準を合わせる。

 

と、その次の瞬間!!

 

ローリエ達が乗るコメットのすぐ傍の地面が爆ぜた!!

 

「!?」

 

「!? 何っ!?」

 

突如起こった爆発に、ローリエとルウは驚きを露わにする。

 

その爆発の正体は………

 

「撃てぇーっ! 撃て撃てぇーっ!! 撃ち捲れええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーっ!!」

 

迫り来る天竺戦車部隊を見て、再びトリガーハッピーと化してしまった桃が駆る38tの37mm砲弾だった。

 

余程テンパって居るのか、砲塔及び砲身を左右上下に忙しなく動かしまくり、次々に発砲している。

 

例によって敵も味方もあったものではない。

 

「うわあああぁぁぁぁ~~~~~っ!? また河嶋さんが暴走したぁ~~~~っ!?」

 

「アイツは本当に味方か!? 敵なんじゃねえのか!?」

 

逞巳が悲鳴の様にそう叫び、秀人が痛烈な罵声を浴びせる。

 

「な、何だ、あの戦車はっ!?」

 

「敵味方お構い無しで撃ってるぞ!?」

 

「緊張のあまり精神がイカれたのか!?」

 

しかし、味方も気にせず発砲し捲る38tに、ジョロキアの歩兵達は混乱に陥る。

 

「! 西住隊長! 今です!!」

 

「! 全軍、突撃して下さい! この混戦状態から抜け出しますっ!!」

 

弘樹がそれを見て、みほへと通信を送ると、みほは即座に弘樹が言わんとしていた事を察し、全軍に指示を出す!!

 

「道はワイ等が作るでぇ! 大洗連合の野郎共ぉっ! 男を見せんかぁいっ!!」

 

「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

そこで、大河がそう声を挙げ、大洗連合の突撃兵達と共に、天竺ジョロキア機甲部隊へ切り込んで行ったっ!!

 

「! 来るぞっ!!」

 

「くそっ! 砲撃で身動きが取れないっ!!」

 

「落ち着け! 落ち着くんだ!!」

 

次々に起こる爆発で、象が怯えて動けなくなっているガラムとマサラがそう叫び、ターメリックが皆を落ち着かせようとするが、その間に大河達は強引に天竺ジョロキア機甲部隊へ突っ込む!

 

「ぐああっ!?」

 

「大洗! バンザーイッ!!」

 

何名かの犠牲者を出しながらも、敵陣の突破に成功する大洗連合の突撃兵達。

 

「今です!」

 

「全軍、突撃っ!!」

 

「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

大洗連合の突撃兵達が穿った敵陣の穴を、大洗機甲部隊が強行突破する!!

 

「撃て撃て撃てぇーっ!!」

 

「桃ちゃん! もう良いから!!」

 

その間にも38tは忙しなく砲撃を続け、敵を(味方諸共)攪乱する。

 

「突破されたわね………」

 

大洗機甲部隊が強行突破して行った後、コメットのハッチが開いて、遠ざかる大洗機甲部隊の背を見ながら、ローリエがそう呟く。

 

「ローリエ隊長! 追撃させて下さいっ!!」

 

とそこで、キーマがコメットに近づき、ローリエに追撃命令を願う。

 

「いいえ………止めときましょう」

 

「如何してですか!? こう言っては何ですが、敵は素人に毛が生えた様な連中ばかりです! ココで一気に畳み掛けた方が!!………!? アダッ!?」

 

「敵を過小評価するな、キーマ」

 

追撃は必要無いと言うローリエに、キーマは言葉を返すが、そこでターメリックが現れて、キーマの頭に拳骨を見舞った。

 

「けど、隊長………」

 

「こちらの統制が乱れた瞬間に、敵部隊が即座に強行突破を行った………指揮官の的確な指揮に加え、それを実行に移せる連携力が大洗機甲部隊には有る。決して侮るな」

 

納得が行かない様なキーマだったが、ターメリックは先程の大洗機甲部隊の動きを見て、そう冷静な分析を下す。

 

「奴等を侮ると痛い目を見るぞ………気を引き締めて掛かれ」

 

「………了解」

 

そこで漸くキーマは納得した顔になり、ジョロキア歩兵部隊の中へと向かう。

 

「楽しそうね、ターメリック」

 

と、キーマが居なくなると、ローリエがターメリックにそんな事を言う。

 

「ああ………久々に燃えさせる奴等が相手だからな………」

 

ターメリックはローリエにそう返し、不敵な笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

弘樹の故郷の村役場では………

 

「ハア~、危ないところだったぁ~」

 

「でも、大洗の子達、大分やられちゃったみたいだけど、大丈夫なの?」

 

「な~に、今回は殲滅戦じゃ。戦車がやられなければ戦いは続けられるわい」

 

特設されたモニターで、故郷の人々が試合の様子を観戦していた。

 

「それにしても、幾らタイとインドをモチーフにしてるからって、象を持ち出してくるなんてねぇ」

 

「凄かったねぇ」

 

村人達と共に試合を観戦していた遥とレナも、そんな事を言い合う。

 

「………兄貴達、如何戦う積りかなぁ?」

 

(………お兄様)

 

屈強な歩兵部隊に守られた天竺ジョロキア機甲部隊を相手に如何戦うのかと頭を捻る遥と、只ジッとモニターを見つめる湯江だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして再び………

 

天竺ジョロキア機甲部隊から逃げ果せた大洗機甲部隊は………

 

狭い森の中を如何にか進み、開けた場所へと辿り着くと、偵察兵を中心に歩兵が周囲を警戒しつつ、集合する。

 

「皆! 大丈夫!?」

 

Ⅳ号のキューポラから姿を現したみほが、他の戦車チームに向かって問い質す。

 

「大丈夫です!」

 

「問題無い」

 

「ハア~、怖かった~」

 

「何とか無事だよ~」

 

すると、八九式から典子、Ⅲ突からエルヴィン、M3リーから梓、38tから杏が姿を見せ、そう言って来る。

 

「各部隊、報告してくれ」

 

AEC 四輪駆動装甲指揮車から出て来た迫信の方も、歩兵部隊に報告を命じる。

 

「とらさん分隊、3名やられました」

 

「ワイのとこは10人近くやられたで」

 

「こっちは8人もやられちまった………」

 

「ハムスターさん分隊、5名戦死判定です。車両も数台撃破されました」

 

「我々の分隊も7名がやられています。火砲の半数と装備も一部放棄してしまっています」

 

弘樹、大河、磐渡、勇武、十河が報告を挙げる。

 

「ふむ………」

 

『戦車が無事だとは言え、いきなり手酷くやられたな』

 

それを聞いて、迫信は顎に手をやり、煌人がAEC 四輪駆動装甲指揮車から出て来ず、通信でそう言って来た。

 

「クッソッ! いきなり総攻撃を仕掛けてくるなんて思わなかったぜ!!」

 

「今はコレから如何戦うかを考えろ」

 

思わず愚痴る様にそう言う地市に、弘樹は冷静沈着にそう言う。

 

「あの象が思ったより厄介ですね………」

 

楓が、ジョロキア歩兵部隊の先陣を切る様に突撃して来た象部隊の事を思い出し、そう呟く。

 

「昔使ってたというところもあったそうだが、銃声に驚いて制御不能になってしまうので、廃れたと聞いてるが………」

 

「恐らく、相当な訓練を積んでるのでしょう」

 

「先に倒しちまおうぜ。幾らデカイとは言え、只の動物だ。遠くから狙って撃っちまえば………」

 

「でも、歩兵道用の模擬弾とは言え、罪も無い動物を撃つのは………」

 

了平が先の象から倒す事を提案するが、動物好きな飛彗が難色を示す。

 

『それに、あの象はかなりの訓練を受けている………そう簡単に倒す事は叶わないだろう』

 

煌人も再び、そう通信を送って来る。

 

「如何すれば………」

 

ジョロキアの歩兵を突破するには先ずあの象を何とかしなければならない………

 

戦車戦や歩兵戦の指揮は得意なみほも頭を悩ませる。

 

すると………

 

「………あっ!?」

 

白狼が、何かに気付いた様に声を挙げた。

 

「? 如何した? 神狩?」

 

「………コレが使えるかも知れないぞ」

 

弘樹が問い質すと、白狼がそう言いながら、戦闘服の懐から『とある物』を取り出す。

 

「! ソレは!?………」

 

「成程………確かに、使えるかもしれないな」

 

白狼が取り出した『ソレ』を見て、みほは驚き、迫信はニヤリと笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数十分後………

 

3匹の象を先頭に、進軍している天竺ジョロキア機甲部隊。

 

象に乗るのは、キーマ、ガラム、マサラの3人だ。

 

背の高い象の上から、周囲を見回し警戒する3人。

 

「! ストップッ!!」

 

すると、1番先頭を行っていたキーマが、手を上げてそう呼び掛けた!

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

その声で、進軍を停止する天竺ジョロキア機甲部隊。

 

キーマは進軍しようとしていた先をジッと見やる。

 

そこには、大洗歩兵部隊が築いた防御陣地が在った。

 

横に長く掘られた塹壕に、突撃兵を中心とした大洗歩兵部隊が銃を構えており、土嚢を積んだ防御壁には砲兵達の火砲が備え付けられている。

 

更に、奥の方では、戦車部隊が車体部分を地面に埋め、トーチカと化して砲を連ねている。

 

「敵の防御陣地を発見!」

 

「奴等め………最初の突撃にビビって守りを固めて来たな………」

 

「そんな事したって無駄だって教えてやるぜ」

 

キーマが報告を挙げると、ガラムとマサラがそう言い合い、ガネーシャとギリメカラを敵陣に向かって突撃させた!

 

「オイ、待てっ!!………」

 

「支援砲撃、開始ぃっ!!」

 

「「「「「「「「「「了解っ!!」」」」」」」」」」

 

ターメリックがそれを止めようとしたが、それを遮る様にキーマがそう叫び、ジョロキア歩兵部隊の砲兵達が、突撃を支援する砲爆撃を開始する!!

 

「来るぞっ!! 撃てぇっ!!」

 

「「「「「「「「「「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

弘樹がそう叫ぶと、大洗歩兵部隊は一斉に攻撃を開始する。

 

小銃、短機関銃、軽機関銃と重機関銃が火を噴き、キーマ達が駆ける象部隊の突撃を防ごうとする。

 

土嚢を積んだ防御壁に配置していた砲兵部隊と、トーチカと化していた戦車部隊も砲撃を始める。

 

しかし、天竺ジョロキア機甲部隊との初戦にて、火砲の大半をやられてしまった大洗機甲部隊は、支援砲撃の半分以上を戦車隊に頼っている状態であり、徐々に押され始める。

 

「うわあっ!?」

 

「光照がやられたぁっ!?」

 

「おうわぁっ!?」

 

「キャプテンッ!!」

 

「大丈夫だ………しかし、武器が………」

 

徐々に損害が増え始める大洗歩兵部隊。

 

「弘樹! 駄目だぁっ! やられちまうよぉっ!!」

 

「まだだ! もう少し持ち堪えろ!!」

 

弱音を吐く了平に、弘樹がそう檄を飛ばす。

 

「舩坂くん!!………!? キャアッ!?」

 

みほがそんな弘樹達の身を案じた瞬間、トーチカと化していたⅣ号の近くに砲弾が着弾する。

 

「2号車は右修正1度! 3号車は上2度修正!」

 

「「了解ッ!!」」

 

ローリエの指示で、照準修正を行ったチャレンジャーとコメットが、再びトーチカと化している大洗戦車部隊に向かって発砲する。

 

「うわあっ!? また近くに着弾したよぉっ!?」

 

再びⅣ号の至近距離に砲弾が着弾し、振動で揺さ振られる車内で、沙織が悲鳴の様に声を挙げる。

 

「駄目です! コッチの砲弾は弾かれています!!」

 

果敢に砲撃を続けていた華もそう報告を挙げる。

 

支援砲撃をしながら、敵戦車を狙っていた大洗戦車部隊だが、距離が遠い為、まだ練度も低い大洗戦車隊にとって正面からの撃ち合いでは完全に不利であり、砲弾は悉く外れ(特に桃が撃った物が)、当たったとしても堅牢なコメットとチャレンジャーの装甲に弾かれる。

 

「如何するんだ?」

 

「このままでは全滅も時間の問題です!」

 

麻子と優花里が、みほにそう言う。

 

『此方アヒルさんチーム! 敵のチームの凄まじい連続アタックです!!』

 

『クソッ! 上手く左右に分かれて展開して来ている………回転砲塔が有れば!』

 

更に、アヒルさんチームの典子とカバさんチームのエルヴィンかの通信が飛び込んで来る。

 

『キャアッ! こ、怖いっ!!………でも! もう逃げないんだからっ!!』

 

『撃て撃て撃て撃てぇーっ!!』

 

至近弾に怯えながらも、今度は決して逃げないと決意を露わにする梓と、例によってトリガーハッピーと化している桃。

 

「…………全車、後退して下さい」

 

するとそこでみほは、全車に後退命令を出す。

 

トーチカと化していた大洗戦車部隊がバックし始め、後退する。

 

「戦車が後退します!」

 

「歩兵を盾に撤退する積りか………正しい判断だが、冷酷だな」

 

「そう言う事をする隊長さんだとは思えなかったですけどねぇ………」

 

後退を始めた大洗の戦車部隊を見て、ガラム、キーマ、マサラがそう言い合う。

 

「しかし、これは試合だ………容赦する積りは無い! 一気に行くぞっ!!」

 

「「了解っ!!」」

 

戦車部隊が下がったのを好機と読んだキーマは、ガラム、マサラと共に、象に乗ったまま大洗歩兵部隊の防御陣地へと突撃する。

 

一気に防御陣地を押し潰す積りの様だ。

 

「象達が一斉に突っ込んで来ます!」

 

楓がウィンチェスターM1897のポンプを下げて排莢しながらそう言う。

 

「………誘いに乗って来たな」

 

その瞬間、弘樹はそう呟いた。

 

「白狼! 今だっ!!」

 

「おうっ!!」

 

飛彗が叫ぶと、大洗機甲部隊が防御陣地を形成していた道の脇に広がっていた森林から、自転車に乗った白狼が飛び出して来た!!

 

そして、そのままジョロキアの象部隊の前に横滑りする様に止まる。

 

「!?」

 

「何だっ!?」

 

「慌てるな! たかが自転車歩兵1人で何が出来るっ!!」

 

ガラムとマサラは驚くが、キーマは構わずに突撃を続けようとする。

 

すると………

 

「おい! ゾウ共! 餌の時間だ! コイツをくれてやる!」

 

白狼はそう言って、背中に回していた右手を象達に見せつける様に向けた。

 

その手には、落花生………ピーナッツの袋が握られている。

 

そのピーナッツの袋を見た瞬間!!

 

象達は鳴き声を挙げ、一斉に白狼に殺到した!!

 

「!? うわぁっ!?」

 

「オ、オイッ!? ガネーシャッ!?」

 

「ギリメカラ! 止まれっ!! 止まるんだっ!!」

 

慌てて静止させようとするキーマ達だが、象達はピーナッツに夢中になっており、指示を受け付けない。

 

「よおしっ! 付いて来いっ!!」

 

白狼はピーナッツを象達に見せたまま、自転車を扱ぎ出す!!

 

象達はピーナッツを持った白狼を追い始める。

 

「後は任せたぜぇーっ!!」

 

白狼はそう言い残し、象達を引き連れたままその場を離れて行った。

 

「クソッ!」

 

「クウッ!」

 

「まさかこんな手で来るとはっ!!」

 

キーマ、ガラム、マサラは象から飛び降り、地に降り立つ。

 

「象達が!?」

 

「モーリス軽装甲車! 代わりに突撃しろっ!!」

 

「了解っ!」

 

象達が何処かへ行ってしまったのを見て、今度はモーリス軽装甲車が代わりに敵の防御陣地へと突撃しようとするが………

 

「手榴弾! 投擲するっ!!」

 

それを見た瞬間に、弘樹がそう叫んで、手にしていたM24型柄付手榴弾の収束手榴弾を、モーリス軽装甲車目掛けて投擲した!!

 

投擲された収束手榴弾は、モーリス軽装甲車の銃座部分から車内へと飛び込む。

 

「!? うわあぁっ!? 手榴弾だっ!!」

 

「だ、脱出ぅっ!!」

 

乗員達が慌てて脱出した次の瞬間!!

 

収束手榴弾は、モーリス軽装甲車内で爆発!

 

モーリス軽装甲車のドアやハッチが吹き飛び、車体が一瞬浮かび上がった後、炎上した!!

 

「装甲車が!?」

 

「今やぁっ! 突っ込むでぇっ!!」

 

「「「「「「「「「「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

その瞬間!!

 

大河を中心にした大洗連合の小銃装備の突撃兵達が、全員銃剣を着剣し、ジョロキア歩兵部隊に向かって突撃を敢行する!!

 

「! 全軍! 接近戦用意っ!!」

 

「いてもうたれぇーっ!!」

 

ターメリックの指示が飛ぶ中、大河を中心にした大洗連合の突撃兵達は、ジョロキア歩兵部隊の中へと切り込んだっ!!

 

そのまま戦国時代宜しく乱戦へと持ち込む!

 

「このぉっ! 俺達に接近戦を挑もうってのかぁ!!」

 

「本場タイ仕込みのムエタイを見せてやるぜっ!!」

 

乱戦へと持ち込まれたジョロキア歩兵部隊の歩兵達の一部が、ムエタイの構えを取り始める。

 

「ケッ! そっちがムエタイなら、コッチは喧嘩殺法やっ!!」

 

「舐めんなコラァーッ!!」

 

それに呼応するかの様に、大河や大洗連合の突撃兵達も、武器を投げ捨ててステゴロで戦い始める。

 

「アラアラ~………コレじゃあ、支援砲撃は難しいわね~」

 

そんな中、照準器を覗き込んでいたローリエがそう言う。

 

先程よりも激しい乱戦に持ち込まれた為、戦場は両軍の兵士が入り乱れて戦っている状態となり、下手に撃てばフレンドリーファイヤとなる可能性が大きかった。

 

「お姉ちゃん! 戦車部隊を追おう! 戦車を全部倒せば私達の勝ちだよっ!!」

 

すると、操縦席のルウがそう声を挙げる。

 

「そうね………そうしましょうか」

 

「よっしゃあーっ! 行くわよぉっ!!」

 

ローリエの許可が降りると、ルウはコメットを発進させる。

 

そして、乱戦しているジョロキア歩兵部隊と大洗歩兵部隊の間を擦り抜け、防御陣地までも突破して、後退した大洗機甲部隊を追って行った。

 

他の戦車達もその後に続く。

 

「敵戦車部隊! 防御陣地を突破っ!!」

 

「よしっ! 予定通りに敵戦車部隊と歩兵部隊を分断するぞ! 各員! この場にて踏み止まれぇっ!!」

 

秀人がそう報告を挙げると、銃剣を着剣した三八式歩兵銃の突きで、ジョロキアの歩兵を1人倒した弘樹が、全員に向かってそう言い放つ。

 

「成程! そう言う魂胆か………」

 

「!?」

 

と、その瞬間!!

 

背後からそう言う声が聞こえて来て、すぐさま着剣した三八式歩兵銃を水平に構えて振り返る弘樹。

 

その瞬間に、三八式歩兵銃が銀色の刃を受け止め、火花を散らす。

 

「クウッ!」

 

しかし、凄まじい力を感じ、弘樹は飛び退く様に相手から距離を取った。

 

「………良く防いだな」

 

弘樹を斬りつけた相手………二振りの宝剣『インドラ』と『カルラ』を二刀流で構えているターメリックがそう言い放つ。

 

「ジョロキア歩兵部隊の隊長か………」

 

「今一度名乗ろう、ターメリックだ………舩坂 弘樹………イザ勝負と行こうか」

 

銃剣を着剣した三八式歩兵銃を構え直す弘樹に、ターメリックはそう言い放つ。

 

(西住隊長達が戦車部隊を撃破するまで、時間を稼がなければ………)

 

弘樹は目の前の敵へ集中しつつも、本来の任務を忘れないように心掛けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

遂に開始された天竺ジョロキア機甲部隊との練習試合。
象を使った歩兵達の突撃と、戦車隊の正確な砲撃により、初手から手痛い打撃を受けた大洗機甲部隊。
しかし、咄嗟のアイデアの作戦で象を無力化し、歩兵隊と戦車隊を分離させる事に成功する。
大洗は今度こそ勝利できるのか?

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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