ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第159話『神狩 白狼、奮戦します!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第159話『神狩 白狼、奮戦します!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナイトウィッチ&ハロウィン機甲部隊の攻撃の前に………

 

大洗機甲部隊は戦力の半数以上を失い、かつてない大ピンチに………

 

更に、包囲を突破した際にメンバーが散り散りになり………

 

フラッグ車であるウサギさんチームのM3リーが孤立………

 

現れたナイトウィッチ戦車部隊のヴァリアントによって撃破されてしまいそうになった時………

 

遂にあの男が………

 

『神狩 白狼』が帰って来た!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

準決勝試合会場・廃墟の工業地帯………

 

『おやっ? どうやら大洗に援軍がやって来たみたいですね』

 

『援軍と言っても来たのは1人だけのようですが………ん? 前にもこんな事があった様な?………』

 

ヒートマン佐々木とDJ田中が、白狼の姿が良く確認出来ていない状況でそう実況する。

 

『上空実況の幸子ちゃんに確認した方がよろしいですわね。確か、小梅ちゃんや輝子ちゃんも一緒の筈ですが………幸子ちゃん? 聞こえますか? 輿水 幸子ちゃん?』

 

そこで、瑞樹が試合会場の上空で旋回飛行をしている審判団の航空機………陸上哨戒機『東海』の機内から試合模様を中継している幸子達へ通信を繋ぐ。

 

すると、観客席用の大型モニターに、東海の機内と幸子達の姿が映し出される。

 

『はーい、聞こえますよ! 現在、出来る限り離れて確認してしますが………え~と………あれ? アレって!?』

 

『如何したんですか? 誰か見えましたか?』

 

幸子が何かに気付いた様に声を挙げると、瑞樹が尋ねる。

 

『えーと………前のオーストラリアでの仕事の時に出会った、あのお兄さんにそっくりな人が、バイクに乗って走ってます!!』

 

『名前は忘れたけど………確かに………あのお兄さんですね………』

 

幸子の言葉に、小梅がそう同意する。

 

『ふ………フヒヒヒ………喧騒………砲撃………爆発………ふ………フヒヒヒヒヒヒ………ヒャッハーーーーーーッ!! リア充共爆発しろォォォォォォーーーーーーーーっ!!』

 

するとそこで、輝子がまるで人が変わったかの様に絶叫する!

 

『って、ちょっと輝子さん! 何勝手に別の話をしてるんですか!! 全然実況になってませんよ!!』

 

『あ~………と云うわけで、誰なのか分からずじまいですけど………』

 

喧騒が始まり、瑞樹は苦笑いしてそう言う。

 

『あ、ですが、カメラが漸く追い付いて確認できましたね。アレは………』

 

『おっと! 増援の歩兵は神狩 白狼選手だ! しかし、彼は西武戦の後、大洗から去ったと言う情報もありましたが………』

 

だがそこで、地上の中継用カメラが追い付き、増援が白狼であった事を確認したヒートマン佐々木とDJ田中がそう実況する。

 

「帰って来てくれたんですね、神狩先輩!」

 

「あ~! ホントに先輩だぁっ!!」

 

「わっ! ホントだっ!!」

 

「嘘~~」

 

「あい~っ!!」

 

「あ~、ウルセッ! いっぺんに喋るなっ!!」

 

白狼の姿を見て、M3リーからウサギさんチームの面々が次々に顔を出し、其々に口を開くと、煩く思った白狼がそう怒鳴る。

 

「…………」

 

只1人、紗希だけは何も言わずに微笑を浮かべているだけだった。

 

「居たぞっ! フラッグ車だっ!!」

 

「オイ、あのヴァリアントは、ヴィーネのか!?」

 

そこで、カロとスコールを筆頭に、ハロウィン歩兵部隊が姿を見せた!

 

「………ノンビリ話してる暇はねえな。ココは俺が引き受けるから、お前等は本隊に合流しろ。落下傘で降下した時に、この先に5キロ程行った辺りに集まってるのを見た」

 

すると白狼は、ウサギさんチームにそう言いながらバイクから降り、カロとスコールが率いるハロウィン歩兵部隊に向き直る。

 

「引き受けるって、そんな無理ですよ! 多数を相手に1人でなんて!!」

 

梓が1人で中隊規模程は居るハロウィン歩兵を引き受けると言った白狼に、梓がトンでもないと言う。

 

「うだうだいってる場合じゃねえ! 負けたいのかよ!?」

 

「!!………」

 

しかし、白狼にそう怒鳴り返されて、思わず黙り込む。

 

「………今まで勝手な事してた分の借りを返す。返せなかった時は………悪いが自分で何とかしてくれ」

 

白狼は続けてそう言うと、再びハロウィン歩兵部隊を見据える。

 

「………桂利奈、出して」

 

「えっ? で、でも………」

 

「早く!!」

 

「あ、あい~っ!!」

 

梓は桂利奈にそう命令し、M3リーは逃げる様に白狼から離れて行った。

 

「…………」

 

その姿を振り向かず、遠ざかるエンジン音だけを聞きながら、白狼は表情を引き締める。

 

「フラッグ車が逃げるぞっ!!」

 

「逃がすなぁっ! 追えっ!!」

 

ハロウィン歩兵部隊は当然フラッグ車を追おうとするが………

 

「行かせねえよっ!!」

 

白狼がそう言ったかと思うと、複数の手榴弾を纏めて投擲する。

 

「! 手榴弾っ!!」

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

転がって来た手榴弾を見て、慌てて散開するハロウィン歩兵部隊。

 

しかし、手榴弾は爆発せず、黒い煙を吹き出し始める。

 

「! しまった! 発煙手榴弾かっ!?」

 

「えほっ! ごほっ! クソッ! 何も見えねえっ!!」

 

発煙手榴弾から発生した煙は、アッと言う間に辺り一面に広がり、ハロウィン歩兵部隊は視界を奪われ、或いは煙で咳き込み、行動不能となる。

 

やがて、段々と煙が晴れて行くと………

 

「…………」

 

フラッグ車の姿は完全に見えなくなっていたが、相変わらずその場に佇んでハロウィン歩兵達を見据えている白狼の姿が現れる。

 

「! テメェ、一人で俺達とやり合おうってのか? 舐めた真似してカッコつけてんじゃねえ!!」

 

そんな白狼の姿を見たスコールが、激高した様にそう叫ぶ。

 

「貴様確か、神狩 白狼と言う奴だな。元ジュニアクラスでのトップレーサーだったと聞いたが、随分と焼きが回った様だな」

 

カロも、白狼に向かってそんな事を言い放つ。

 

「気安く呼ぶんじゃねえ………」

 

「! 何っ!?」

 

「俺を名前で呼べるのは友達が仲間だけだ………お前等は………『ベオウルフ』と呼びな」

 

ハロウィン歩兵部隊に向かってそう言い放つ白狼。

 

「へっ! 大した自信じゃねえか! なら!………」

 

「待て、カロ! お前が出張るまでも無い! こんな奴、俺達だけで十分だっ!!」

 

その言葉を挑発と受け取ったカロが、お馴染みの髪を整える仕草をしながら、白狼と対峙しようとしたところ、スコールにそう言って止められる。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

それと同時に、ハロウィン歩兵部隊が一斉に、白狼に向かってU.S.M1カービンを構える。

 

「撃てぇっ!!」

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

そして、スコールの合図で、白狼に向かって一斉射撃を開始した!!

 

「フッ!!」

 

白狼はすぐに、転がる様に跳んで、近くに在った木箱の影に入る。

 

「撃て撃てーっ!!」

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

しかし、ハロウィン歩兵部隊からの射撃は止まらず、白狼が隠れている木箱がドンドン穴だらけにされて行く!

 

中には、木箱を完全に貫通したモノもある。

 

「撃ち方止めーっ!!」

 

再びスコールの号令で、射撃が中止される。

 

木箱は穴だらけである、貫通弾も多数有る状態だった。

 

「………見て来い、カルロ」

 

「ハッ!」

 

スコールに言われ、カルロと呼ばれた歩兵が、白狼が隠れた木箱に近づく。

 

その途端!

 

「オラッ!!」

 

「がっ!?」

 

バッと現れた白狼に、M1カービンを構えた腕ごと掴まれ、投げ技を掛けられる!

 

投げ飛ばされた歩兵は、頭から地面に叩き付けられて、戦死となる。

 

「オラオラオラァッ!!」

 

そして白狼は、奪ったM1カービンを、ハロウィン歩兵達に向かって乱射する!

 

「うわっ!?」

 

「ぎゃあっ!?」

 

「ち、散れっ! 散れっ!!」

 

弾が命中して戦死判定を受ける歩兵が出るのを見て、スコールが慌てて指示を飛ばす。

 

「!!」

 

その一瞬の隙に、白狼はM1カービンの銃身の方を掴んで棍棒の様に構え、ハロウィン歩兵の中に突撃した!

 

「ホワタァッ!!」

 

「ガフッ!?」

 

そして、近場に居たハロウィン歩兵の頭を思いっきり殴打!

 

殴打されたハロウィン歩兵は、気絶して倒れる。

 

「! このっ!?」

 

それを見て、別のハロウィン歩兵が、白狼にM1カービンを向けて発砲する!

 

「おっと!」

 

「ぐああっ!?」

 

しかし白狼は、別の手近に居たハロウィン歩兵を掴まえたかと思うと、そのまま盾にしてM1カービンの弾を受けさせる。

 

「あ!? し、しまった!?………」

 

「セイッ!!」

 

フレンドリーファイヤに慌てるハロウィン歩兵に向かって、白狼は盾に使って戦死判定となっていたハロウィン歩兵を物の様に投げつける!

 

「!? ぐはっ!?」

 

「良い夢を………」

 

戦死判定を受けた歩兵ともつれ合って倒れたハロウィン歩兵に、白狼は接近すると、残っていたM1カービンの弾を全弾叩き込んだ!

 

「このぉっ!!」

 

そこで更に別のハロウィン歩兵が、着剣したM1カービンで白狼に踊り掛かる!

 

「!!」

 

すると白狼は、弾の無くなったM1カービンを捨てたかと思うと、腰のベルトに携えていた………ヌンチャクを手にした!

 

「オワタァッ!!」

 

「ガハッ!?」

 

そして瞬時に、着剣したM1カービンで踊り掛かって来たハロウィン歩兵を返り討ちにする!

 

「ホオオオオオオォォォォォォーーーーーーー………アチャーッ!!」

 

そのまま気合の叫びと共に、見事なヌンチャク捌きを披露する白狼。

 

その姿はまるで、ジークンドーの使い手である某有名カンフースターを思い起こさせる。

 

「ううっ!?………」

 

「!?」

 

その妙な迫力の前に、ハロウィン歩兵達が1歩後ずさる。

 

「こ、このぉっ!!」

 

だが、1人のハロウィン歩兵がその迫力にも負けず、白狼に向かってM1カービンを構えて引き金を引く。

 

その瞬間!!

 

「オワタァッ!!」

 

何と!

 

信じられない事に、白狼は飛んで来た銃弾を、ヌンチャクを振って叩き落とした!

 

「!? んなっ!?」

 

驚きの余り、発砲したハロウィン歩兵が固まってしまうと………

 

「ホワチャァッ!!」

 

「ゲボアッ!?」

 

白狼は一瞬でそのハロウィン歩兵に接近し、ヌンチャクの1撃で沈める!

 

「アチャーッ!! オワタァッ!! ホワチャァッ!!」

 

「グハッ!?」

 

「ゲホッ!?」

 

「ゲボラッ!?」

 

そのままヌンチャクを振り回し、ハロウィン歩兵を薙ぎ倒して行く白狼。

 

「ええいっ! だらしのない連中め! こうなれば俺が相手だっ!!」

 

その様子を見かねた様に、スコールが白狼に肉薄する。

 

「オワタァッ!!」

 

すぐさま白狼は、スコールの顎にヌンチャクの1撃を叩き込む!

 

「ふんっ! 何だソレは?」

 

しかし、スコールには全く効いておらず、平然としている。

 

「!? アチャーッ!! オワタァッ!! ホワチャァッ!!」

 

白狼は一瞬驚いた様子を見せながらも、今度は連続で、スコールの頭に集中的にヌンチャクの攻撃を叩き込む!

 

………が!!

 

「こそばゆいわぁっ!!」

 

それでも尚、スコールに応えた様子は無かった!

 

「ぬんっ!?」

 

「ぐっ!?」

 

スコールは右手で白狼の頭を、アイアンクロー宜しく鷲掴みにする!

 

「ぬああああああああっ!!」

 

そして気合の声と共に持ち上げて、左手の鉄拳で殴り飛ばす。

 

「ぐああっ!?」

 

吹き飛ばされた白狼だったが、すぐに受け身を取って着地する。

 

「今だぁ! 撃てぇーっ!!」

 

そこでスコールがそう命じ、再びハロウィン歩兵部隊が、白狼に向かって銃撃を見舞う。

 

「!!」

 

すると白狼は、近くに在った森林地帯の茂みの中へと逃げ込む!

 

「撃て撃てぇーっ!!」

 

茂みに向かって射撃を続けるハロウィン歩兵部隊。

 

しかし、幾ら撃っても手応えが無い………

 

「クソッ! 追え追え! 絶対に逃がすなっ!!」

 

スコールがそう命じ、ハロウィン歩兵部隊は森林地帯へと足を踏み入れて行く………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

森林地帯内………

 

「居たかっ!?」

 

「いや、居ない!」

 

「コッチもだ!」

 

茂みの中を漁る様に、白狼の姿を追い求めるハロウィン歩兵部隊。

 

「気を付けろ! 何処から出て来るか分からんぞ!!」

 

と、スコールがそう注意を飛ばした瞬間!

 

木々の合間から、『黒い物体』が飛んで来る!

 

「!?」

 

「スコールさん! 危ないっ!!」

 

驚くスコールの前に、ハロウィン歩兵が躍り出る!

 

「!? ゴハッ!?」

 

その身を犠牲に、スコールへの攻撃を防いだハロウィン歩兵。

 

「! オイッ!?」

 

倒れたハロウィン歩兵の状態を見るスコールだったが、既に戦死判定が下っていた。

 

「外したか………」

 

そう言いながら現れたのは、中国の暗器『流星錘』を携えた白狼だった。

 

「貴様っ!」

 

「よくも戦友をっ!!」

 

怒りに駆られたハロウィン歩兵達が、その白狼へと襲い掛かるが………

 

「ハッ! ホッ! そりゃあっ!!」

 

「ゲボッ!?」

 

「ブバッ!?」

 

襲い掛かったハロウィン歩兵達は、次々に流星錘の攻撃を喰らい、倒されて行く。

 

「オノレェッ! もう許さんぞぉっ!!」

 

とそこで、今度はスコールが、白狼に向かって突撃する!

 

「そらよっ!!」

 

「ブッ!?」

 

そんなスコールにも、白狼は容赦無く流星錘での攻撃を、顔面に浴びせた!

 

「何のこれしきぃっ!!」

 

しかし、スコールは僅かに後ずさっただけで、再び白狼へと向かって行く。

 

「じゃあもう1丁だっ!!」

 

すると白狼は、流星錘を振り回して勢いを付けると、真上からスコールの脳天へと叩き付けた

 

「!?!?」

 

目の前に星が散らばるスコール。

 

「! ぬんがああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!!」

 

だが、それでもスコールは気合を入れる様に叫び、踏み止まる。

 

恐ろしいまでの頑丈さである。

 

「チッ、無駄に丈夫な野郎だぜ………」

 

と、白狼はそう言ったかと思うと………

 

「…………」

 

その場に気を付けして、両手を拝む様に合わせると、目を閉じた。

 

その姿はまるで、瞑想している様にも見える………

 

「何だぁっ!? 俺様の頑丈さに恐れをなしたかぁっ!?」

 

しかしスコールは、自分に気迫負けしたと思い込み、足元に落ちていたM1カービンを手にすると、白狼へと狙いを定める。

 

「…………」

 

それでも尚。白狼は瞑想を続ける。

 

「………!!」

 

不意に目を見開いたかと思うと、流星錘を鎖ごとスコール目掛けて投げつけた!

 

流星錘はスコールの両足に巻き付く!

 

「ぬおっ!? 何のこれしきぃっ!!」

 

倒れそうになったスコールだが、気合で耐える。

 

「!?」

 

だが、そこでスコールが見たモノは………

 

自分に向かって空中回転から跳び蹴りの姿勢を取る白狼の姿だった!

 

「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーっ!!」

 

気合の雄叫び共に、白狼はスコールの胸にキックを食らわせる!!

 

(!? な、何だこの衝撃はぁっ!?)

 

途端に、スコールの身体には、まるで10トントラックにでも衝突された様な衝撃が走る!

 

「!? ぬ、ぬあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーっ!!」

 

耐えようとしたスコールだったが耐え切れず、木々を薙ぎ倒しながらブッ飛ばされた!!

 

その際に、足に巻き付いていた流星錘が外れる。

 

「ま、まだだぁっ! まだ、終わり………では………」

 

そう気合を入れながら起き上がろうとしたスコールだったが………

 

途中で力尽きた様にガクリと崩れ、再び地面に倒れると、そのまま戦死と判定される。

 

「ス、スコールさん!」

 

「そんなっ!?」

 

それを見た残存ハロウィン歩兵部隊に動揺が走る。

 

タフさだけならハロウィン1である筈のスコールが、白狼の跳び蹴り1発で倒されてしまったのだ。

 

動揺するなという方が無理である。

 

「…………」

 

しかし、そんな中で、狙撃銃にて白狼を狙う者が居た………

 

「…………」

 

スコープの真ん中に、白狼の頭を納めるハロウィン狙撃兵。

 

そして、引き金に指が掛けられる………

 

………と、その時!

 

「………そこだなっ!!」

 

白狼はそう良い放ったかと思うと、腰のベルトから今度はボウガンを手に取り、何処へともなく発射した!

 

放たれたボウガンの矢は、木々や障害物の間の僅かな隙間を一直線に抜けて行き………

 

白狼の頭に狙いを定めていたハロウィン狙撃兵のヘルメットに突き刺さった!

 

「!? 馬鹿………な………」

 

ハロウィン狙撃兵はそう呟き、バタリと倒れる。

 

「!? 何だっ!?」

 

「今誰かやられたのか!?」

 

しかし、ハロウィン歩兵達は、その狙撃兵の存在に気づいていないかの様に、そんな会話を繰り広げる。

 

「何故、僕の………この『サミー』の居場所が分かったんだ?………」

 

その言葉と共に戦死判定を受けるハロウィン狙撃兵・『サミー』

 

何を隠そう、この男こそ、大洗の作戦を筒抜けにした張本人である。

 

彼の特技は狙撃の腕………

 

………ではなく、その存在感の薄さにある。

 

何せ、大洗が戦車道を復活させた時から、ズッと密かに学園艦に潜んで偵察を続けていて、全然気づかれていなかった程である。

 

屋上に陣取っていた大洗狙撃部隊をカウンタースナイプしたのも彼である。

 

「存在は消せても、気配までは消せてなかったみたいだな………」

 

姿の見えないサミーに向かって、白狼はそう言い放つ。

 

「サミーさんがやられたみたいだぞ!」

 

「そんな!?」

 

「まさかっ!?」

 

と、その様子を、森林地帯に面した廃墟ビルの屋上に陣取っていたハロウィン狙撃兵部隊が確認する。

 

「クソッ! サミーさんの仇だっ!!」

 

「構えっ!!」

 

サミーの仇を取ろうと、ハロウィン狙撃兵部隊は一斉に狙撃銃を白狼に向かって構える。

 

が………

 

「!? 居ないっ!?」

 

「何処へ行ったっ!?」

 

スコープを覗き込んだ瞬間には、白狼の姿は忽然と消えていた。

 

「!? 下だっ!?」

 

「「「「「!?」」」」」

 

ハロウィン狙撃兵の1人がそう声を挙げ、他の狙撃兵達も一斉に眼下を見やると、何時の間にか廃墟ビルの間近にまで接近して来ていた白狼の姿を確認する。

 

「…………」

 

すると白狼は、ガントレットを填めていた左腕を、廃墟ビルの屋上へと向けた。

 

そして何と!

 

ガントレットから細いワイヤーが射出され、先端に装着されていたフックが屋上に引っ掛かったかと思うと………

 

「そらっ!!」

 

白狼はワイヤーを巻き取りながら上昇!

 

そのまま屋上へと一瞬で登り上がった!

 

「「「「「!?」」」」」

 

「近づいちまえばコッチのもんだ!!」

 

仰天するハロウィン狙撃兵達に、白狼は接近戦を挑む。

 

「うわっ!?」

 

「ぐわっ!?」

 

発見された上に接近戦に持ち込まれたハロウィン狙撃兵達は為す術も無く、次々に白狼に殴り倒されて、戦死判定となって行く。

 

「クウッ! 距離を………」

 

「そらっ!!」

 

「がはっ!?」

 

距離を取ろうとしたハロウィン狙撃兵も、ボウガンで撃ち抜き、遂に全滅させる。

 

「良し、コレで………!?」

 

と、白狼がそう言った瞬間!!

 

彼が居た廃墟ビルに、球形砲弾が着弾!!

 

大爆発が起こったかと思うと、衝撃が廃墟ビルが完全に崩れる!!

 

立ち上った粉煙が、辺り覆い尽くす。

 

白狼は崩落に飲まれてしまったかに見えたが………

 

「ケホッ! 何だってんだ、クソッ!!」

 

粉煙が晴れて来ると、崩れた廃墟ビルの瓦礫の上に、無事な姿を見せた。

 

「少しはやるみてぇだな………だが! コレ以上の勝手は俺がスマートに許さねえぜっ!!」

 

球形砲弾を蹴り込んだカロが、白狼に向かって、お馴染みの櫛で髪を整えるパフォーマンスをしながらそう言い放つ。

 

「うっとしいから、髪切れ」

 

そんなカロの仕草にイラついたのか、そんな事を言う白狼。

 

「! テメェッ! 1番言っちゃならねえ事を言ったな! 絶対にスマートに葬ってやるぜっ!!」

 

それが逆鱗に触れたのか、カロは怒りを露わに白狼を睨みつけるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

やっと到着して白狼。
後れを取り戻すべく大奮戦です。
そして次回はカロとの対決………

更に、大洗機甲部隊も逆転の作戦に入ります。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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