ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第156話『大ピンチです!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第156話『大ピンチです!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

準々決勝にて、ナイトウィッチ&ハロウィン機甲部隊との試合を開始した大洗機甲部隊。

 

ブルムベアとシュトルムティーガーの超長距離攻撃を警戒しつつ、廃墟の街並みを進軍していたが、中々接敵しない………

 

待ち伏せ作戦を警戒したみほは、アヒルさんチームとペンギンさん分隊、アリクイさんチームとキツネさん分隊を偵察に出す………

 

しかし、そこで接敵した偵察部隊は………

 

ナイトウィッチ&ハロウィン機甲部隊の罠に嵌り………

 

ペンギンさん分隊とキツネさん分隊の多数の歩兵達が戦死判定を受けてしまう………

 

そこで大詔が………

 

敵の狙いが歩兵部隊である事に気づくのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦車道・歩兵道全国大会、決勝リーグ・準々決勝………

 

大洗機甲部隊VSナイトウィッチ&ハロウィン機甲部隊の試合会場………

 

廃墟の工業地帯・大洗機甲部隊本隊の待機地点では………

 

「敵の狙いは歩兵部隊?」

 

「恐らくな………」

 

戻って来た偵察部隊の大詔が、みほにそう報告する。

 

「市街戦では歩兵の存在が重要になる。それを先に叩こうと考えたワケか………」

 

「西住総隊長。如何致します?」

 

「…………」

 

俊がそう呟くと、弘樹がみほに尋ね、みほは顎に手を当てて思案顔になる。

 

「………ウサギさんチーム」

 

やがて、ウサギさんチームのM3リーの方を見ながらそう声を掛ける。

 

「! ハイッ!」

 

「………囮役、頼める?」

 

「!!」

 

みほにそう聞かれて、一瞬梓の顔が強張る。

 

「フラッグ車を囮にするんですか?」

 

「うん。フラッグ車が動けば、流石に敵も狙って来る筈。そこを叩きます」

 

「でも、大丈夫? 危なくない?」

 

優花里にそう言葉を返すみほだが、沙織が心配そうに言う。

 

「………大丈夫です、西住総隊長。囮役、拝命させて頂きます」

 

しかし、当のウサギさんチームの梓が、しっかりとした口調でそう言って来た。

 

「私達だって、何時までの昔の私達じゃないもんね!」

 

「頑張るよー」

 

「あいーっ!!」

 

「…………」

 

「紗希もやれるって言ってます」

 

更に、あや、優希、桂利奈、紗希、あゆみもそう反応を示す。

 

「では、『うさうさ作戦』を開始します! 決行はこの先の森林地帯です!」

 

みほはそう号令を掛け、現在大洗機甲部隊が居る場所から少し先にある、この廃工業都市の僅かな森林スペースへと移動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

森林スペース内………

 

「分隊員の皆さん。周辺の警戒をお願いします」

 

「「「「「「了解っ!!」」」」」」

 

木々が生い茂る中で、M3リーが1輌だけで停車している。

 

その周りには、ハムスターさん分隊の歩兵達が展開し、周辺を密に警戒しているが、一見すると防備は手薄に見える。

 

だが、見えるだけであり、すぐ近くにはカメさんチームのヘッツァーと、カバさんチームのⅢ突がカモフラージュの迷彩ネットを車体に掛けて待ち伏せをしている。

 

周りにも、ツルさん分隊とワニさん分隊の歩兵達が、戦車と同じ様にカモフラージュを施して隠れている。

 

更に、少し離れているがすぐ駆けつけられる位置には、みほの大洗機甲部隊本隊が控えている。

 

「…………」

 

神妙な面持ちで、ハッチから姿を晒して周囲を警戒している梓。

 

「………狙撃兵の皆さん。何か見えますか?」

 

とそこで、勇武が相変わらず高所に陣取って居る狙撃兵部隊へ通信を送る。

 

『いや、何も見えない。まだ敵に動きは………』

 

その通信に、狙撃兵の1人が答えていた瞬間………

 

『!? うわっ!?』

 

「!? 如何しました!?」

 

遣り取りしていた狙撃兵が突然声を挙げた事に驚きながらもすぐに問い質す勇武。

 

しかし、通信機から返って来たのはノイズ音だった。

 

「! 狙撃兵の人がやられました! 敵はすぐ近くまで来てますっ!!」

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

勇武がすぐにそう報告すると、ウサギさんチームとハムスターさん分隊の皆に緊張が走る。

 

「カメさんチーム、ツルさん分隊。そちらに異常はありませんか?」

 

『無いよ~』

 

『コチラは敵の姿を確認していない』

 

梓がカメさんチームとツルさん分隊へ通信を送ると、杏と迫信がそう返信して来る。

 

「分かりました。カバさんチーム、ワニさん分隊、如何ですか?」

 

そこで梓は続けて、カバさんチームとワニさん分隊へ通信を送る。

 

………しかし、両者から返信は無い。

 

「? カバさんチーム? ワニさん分隊? 応答して下さい」

 

再度呼び掛けるが、やはり返信は無い。

 

「優希、通信機の調子は?」

 

「バッチリだよ~」

 

「無線の不具合じゃない………と言う事は………」

 

梓の頬を冷たい汗が伝う。

 

「確認して来ます」

 

「………お願い」

 

勇武がそう言うと、ハムスターさん分隊の半数が、カバさんチームとワニさん分隊の元へ向かった。

 

………直後に!

 

「!? うわあっ!?」

 

「う、撃て! 撃てぇっ!!」

 

ハムスター分隊員のものらしき悲鳴が聞こえて来たかと思うと、続いて銃声が響き渡る!

 

「!? 柳沢くん! 何があったの!?」

 

すぐに梓は勇武に状況を尋ねるが、通信機からはノイズしか返って来ない。

 

「柳沢くん!? 応答してっ!!」

 

再度呼び掛けるが、やはり応答は無い………

 

直後に、アレだけ騒がしかった銃声も鳴り止む………

 

「! 残りの随伴歩兵の皆さん! 付いて来て下さいっ!! 移動しますっ!!」

 

「「「「「! 了解っ!!」」」」」

 

そこで梓は直感的に、この場に留まるのは良くないと判断し、残っていたハムスターさん分隊を伴って、銃声がした方向、引いてはカバさんチームとワニさん分隊の元へ向かう。

 

「!?」

 

そして梓が目にしたのは………

 

戦死判定を受けて倒れ伏せている勇武達と磐渡達の姿だった!

 

「分隊長っ!!」

 

「蹄サンっ!!」

 

倒れていた勇武と磐渡の元に、竜真とジェームズが走ったが、そこで大洗歩兵達が倒れている辺りに足を踏み入れた瞬間!

 

踏んづけた地面がカチッ!と言う音を立てたかと思うと、直後に爆発が起こったっ!!

 

「「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」」

 

竜真とジェームズは宙に舞った後に地面に叩き付けられ、戦死と判定される。

 

「! 地雷っ!?」

 

「竜真! ジェームズ!」

 

「正義さん! 駄目ですっ!!」

 

梓がそれが地雷の爆発であった事に声を挙げ、正義が竜真とジェームズの元へ向かおうとして清十郎に止められる。

 

「本隊に合流します! 桂利奈! 反転180度っ!!」

 

「あ、あいーっ!!」

 

梓はすぐに本隊への合流を計り、M3リーが反転して、残りのハムスターさん分隊員達と共に本隊の元へと向かい出す。

 

だが、その瞬間!

 

反転したM3リーの左後方から、黒い大きな影が飛び出して来た!

 

(!? 敵の戦車っ!?)

 

そう思った梓だったが、咄嗟の事だったので指示が間に合わず、M3リーと影は接触を起こす!

 

「「「「キャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーッ!!」」」」

 

「くうっ!」

 

紗希を除いたウサギさんチームの面々から悲鳴が挙がり、梓も衝撃に揺さぶられながらも、反射的に機銃架のM1919を掴んで影に向ける。

 

「待て、撃つなっ!!」

 

しかし、そう言う声が響き、影の上部からエルヴィンが姿を見せた。

 

「! エルヴィンさん!!」

 

そこで梓は、影の正体がカバさんチームのⅢ突であった事を確認する。

 

「エルヴィンくん! 大丈夫かっ!?」

 

「ひいぃ~~………」

 

更にそこへ、愛馬シュトゥルムに跨ったゾルダートとその後ろにしがみ付く様に乗って居る灰史、そして無事だった少数のワニさん分隊員達が現れる。

 

「ゾルダートさんも! 無事だったんですね!!」

 

「無事とは言い難いがな………ワニさん分隊は殆どがやられた。壊滅的な損害だ」

 

梓の言葉に、ゾルダートは苦い顔をしてそう返す。

 

「如何やら敵はまた歩兵狙いで来たみたいですね………」

 

「如何してッスか!? フラッグ車を狙う絶好のチャンスだった筈なのに!?」

 

「コチラの作戦が読まれていた………そうとしか考えられませんね」

 

清十郎、正義、光照がそう言い合う。

 

「兎も角、今は本隊と合流しましょう」

 

「ああ、そうだな………」

 

梓がそう言うとエルヴィンが同意し、ウサギさんチームと残存ハムスターさん分隊、それにカバさんチームと残存ワニさん分隊は本隊の元へと向かうのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「また歩兵狙いで来た!?」

 

その後、待機していたカメさんチームとツルさん分隊も加えて、本隊へ合流した梓達からの報告を受けて、みほは驚きの声を挙げる。

 

「完全にコチラの手を読まれました………」

 

「ねえ! ひょっとしてサンダース&カーネルの時みたいに、通信を盗聴されてるんじゃ!?」

 

優花里も険しい表情を浮かべていると、沙織が以前サンダース&カーネル機甲部隊との試合で、アリサが使った無線傍受ではないかと疑う。

 

「いや、それは無いね。見たところソレらしき物は浮かんでいないし、第一あの試合の後にレギュレーションが変更されて無線傍受は完全な禁じ手になっている。仮にルール違反をしていたとしてもリスクが大き過ぎる………」

 

しかし、迫信がそう言って沙織の懸念を否定する。

 

「じゃあ、如何して敵はコッチがフラッグ車を囮にしていると?………」

 

「………西住総隊長の戦術・戦略パターンを完全に解析したのかもしれん」

 

と、逞巳がそう首を傾げていると、十河がそんな事を言い放った。

 

「!!」

 

「みほさんの………戦術・戦略パターンを?」

 

その言葉にみほの顔が驚愕に染まり、華が強張った顔でそう呟く。

 

「考えられなくはない。状況に合わせた臨機応変な指揮が西住総隊長の特色だ。だが、人間誰しも無意識に執る癖というモノは有る。コレまでの我々の試合を分析して、西住総隊長の戦術の癖や戦略の定型を分析したのだろう」

 

「つまり、西住ちゃんの指揮はナイトウィッチ&ハロウィン機甲部隊にはお見通しって事か?」

 

「そうなるな………」

 

地市の問いに、十河は淡々とそう返す。

 

「私の戦術・戦略パターンが………完全に読まれてる………」

 

一方、みほは流石にショックが大きかったのか、俯いてブツブツと呟き始めている。

 

「西住総隊長! しっかりして下さいっ!!」

 

「!!」

 

しかしそこで、弘樹がⅣ号の上に攀じ登り、みほの肩を掴んでそう言った事で、みほは我に返る。

 

「兎に角、先ずこの森林地帯から撤退しましょう。敵が誘いに乗って来ない以上、この場に留まるのは得策ではありません」

 

「う、うん、そうだね………全軍、この森林地帯から撤退します!!」

 

「「「「「「「「「「了解っ!!」」」」」」」」」」

 

続けて弘樹がそう進言すると、みほはそう命じて、大洗機甲部隊は森林地帯からの離脱を始める。

 

「………うん?」

 

と、殿を固めていたカモさんチームとマンボウさん分隊の中で、鋼賀がふと立ち止まる。

 

「? 如何した、鋼賀?」

 

「何か聞こえませんか?」

 

それに気づいた弦一朗が声を掛けると、鋼賀はそう返して来る。

 

「何か?………」

 

言われた弦一朗は、耳を凝らして見る。

 

すると………

 

ロケットの音と風切り音が聞こえて来た。

 

「! ヤベェッ!!」

 

弦一郎がソレが何かを察した瞬間!!

 

上空から巨大なロケット砲弾が振って来て、カモさんチームのルノーB1bisの後部、5メートル程の位置に着弾!

 

巨大な爆発を起こした!!

 

「「「「「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!・」」」」」

 

ルノーB1bisの後方に展開していたマンボウさん分隊員達が纏めて吹き飛ばされ、戦死と判定される!

 

「キャアッ!?」

 

「うわあっ!?」

 

「ちょっとっ!? 何よっ!?」

 

更にその強力な爆風は、32トンのルノーB1bisの車体後部を僅かに浮かせた程であった。

 

「!?」

 

「今のはっ!?」

 

「ロケット推進音がしました! 間違いありません! シュトルムティーガーの砲撃ですっ!!」

 

と、フラッグ車の防備に付いて居たあんこうチームととらさん分隊の中で、弘樹とみほがすぐに反応し、優花里がその爆発がシュトルムティーガーの攻撃だと察する。

 

直後に、再びロケットの音と風切り音が聞こえて来たかと思うと………

 

今度は大洗機甲部隊の行く手に、ロケット砲弾が着弾した!!

 

「「「「「うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」」」」」

 

運悪く着弾地点に居たツルさん分隊員達が爆風で吹き飛ばされ、戦死判定を喰らう。

 

「! 全速離脱! 急いで下さいっ!!」

 

すぐさまみほはそう指示を飛ばし、大洗機甲部隊は全速で森林地帯からの離脱を計る。

 

だが………

 

「! 西住総隊長! 森から火の手が上がっていますっ!!」

 

「!!」

 

弘樹からそう報告が挙がり、みほが見やると、森林の一角から巨大な炎が上がっているのを目撃する。

 

「! 風上に回って下さいっ!!」

 

現在の風向きでは間違い無く炎に飲まれると判断したみほが、慌てて指示を飛ばし、大洗機甲部隊は離脱方向を風上へ変更する。

 

「急げ、急げっ! 炎に巻かれるぞっ!!」

 

「チキショーッ! 焦土作戦でもする積りかよぉっ!!」

 

「戦車道や歩兵道で焦土作戦は無いと思いますよ………」

 

弘樹が運転しているくろがね四起で、同乗していた地市、了平、楓がそう言い合う。

 

「………! 飛び降りろっ!!」

 

「「!!」」

 

「えっ? 何?………!? ぐえっ!?」

 

そこで、弘樹が何かに気付いた様に声を挙げ、地市と楓が反射的にくろがね四起から飛び降り、反応の遅れた了平は、弘樹が首根っこを掴んで一緒に飛び降りる。

 

直後に、木々の合間から炎が伸びて来て、先程まで弘樹達が乗って居たくろがね四起を包み込んだ!

 

くろがね四起は炎上し、木の幹に激突したかと思うと、爆発する!

 

「!!」

 

すぐに炎が伸びて来た先を確認する弘樹。

 

そこには、Sd Kfz 251………火炎放射器を搭載している16型の姿が在った。

 

「ヤツが火の手を放った犯人か………」

 

そう呟きながら、収束手榴弾を手に取る弘樹。

 

だが、その瞬間!

 

すぐ目の前のに、何かが降って来て、派手に爆発する!

 

「!!………」

 

咄嗟に伏せていた弘樹の身体の上に、爆発で舞い上がった土片が落ちて来る。

 

「うおおっ!? またシュトルムティーガーの砲撃かよぉっ!?」

 

「いえ、ロケットの推進音がしませんでした。コレは多分、榴弾砲です!」

 

「オイ、また来たぞっ!!」

 

了平と楓がそう言い合っていると、地市が空から再び黒い物が降って来ている事に気づく。

 

だが、その黒い物は地面に落ちたかと思うと、そのまま土にめり込んだ。

 

「助かった………不発だったみたいですね」

 

「………! コレはっ!?」

 

楓が安堵の声を挙げたが、弘樹はその黒い物を見て驚きを露わにする。

 

「如何した、弘樹………って、コイツはっ!?」

 

声を掛けながらその物体を見やった地市も、驚愕の声を挙げる。

 

地面に減り込んでいたのは、黒く丸い物体………

 

『球形の砲弾』だったからだ!

 

「球形の砲弾っ!? 今時こんなの使う奴居るのかよっ!?」

 

「何でまたこんな物を?………」

 

地市と楓が何故化石の様な球形の砲弾を使って来たのかと言う事に疑問を呈す。

 

「…………」

 

だがそこで弘樹は、何か違和感を感じていた。

 

「? 弘樹、如何した?」

 

「………敵は何処からコレを撃って居るんだ?」

 

その様子に気づいて尋ねて来た了平に、弘樹はそう返す。

 

「! そう言えば、砲撃音がしません!」

 

「こんな物を飛ばす砲なんざ、相当射程が短い筈だぜ。なのに砲撃音は聞こえないのはおかしいぜ!」

 

その言葉に、楓と地市も気付いた様に声を挙げる。

 

『コチラ狙撃兵部隊の宮藤! 砲弾の発射地点を発見! 森林地帯の端の方………丘になっている場所です!』

 

するとそこで、本隊から離れていた狙撃兵部隊の飛彗が、砲弾が発射されたと思われる場所を発見した事を報告して来た!

 

「! 宮藤くん! 砲兵を狙えるか!?」

 

『待って下さい! 今砲兵の姿を確認して………!? えええっ!?』

 

「如何したっ!?」

 

砲撃を行っていると思われる砲兵の姿を確認しようとした飛彗が驚きの声を挙げる。

 

『そ、そんな馬鹿なっ!?』

 

「落ち着け! 正確に報告しろっ!!」

 

『て、敵は! 敵はっ!!………』

 

だが、飛彗から齎された報告は、驚いて当然とも言うべきモノだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

森林地帯の端に位置する丘の上にて………

 

「チッ! 1発不発だったか! スマートじゃねえぜ!!」

 

先程の砲弾が不発だったのを確認したカロが、不満そうにしながら、ヘルメットを脱いで、携帯式の櫛で髪を掻き上げている。

 

「オイ、次だっ!!」

 

「ハイッ!!」

 

と、カロがそう言ったかと思うと、傍に居たハロウィン歩兵が、積み上げてあった球形の砲弾を1つ手に取り、カロの足元へ置いた。

 

「今度こそスマートに行くぜ………」

 

準備運動の様に屈伸をしながら、カロがそう言うと、砲弾から少し距離を取る。

 

そして、砲弾に向かって助走の様に駆け寄り、そして何と!!

 

「オラアァッ!!」

 

球形の砲弾を、まるでサッカーボールの様に蹴り飛ばした!!

 

蹴られた砲弾は、まるで大砲から撃たれた様に、弧を描いて飛んで行くと、大洗機甲部隊が居る場所へと落下し、爆発する!

 

「「「「「うああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」」」」」

 

直撃と破片を浴びた大洗歩兵達が戦死の判定を受ける。

 

「よっしゃあっ! スマートだぜっ!!」

 

それを確認したカロが、満足そうな様子でまたもや髪を掻き上げる。

 

「流石です、カロさん!」

 

「馬鹿野郎! 早く次を用意しろっ!!」

 

「! ハ、ハイッ!!」

 

賛辞して来たハロウィン歩兵をそう叱咤し、カロは新しい砲弾を用意させる。

 

「ソウラァッ!!」

 

そして再び!

 

強烈なキックで蹴り飛ばし、大洗機甲部隊の居る場所へと着弾させる!

 

「見たか、大洗! コレがカロ流、スマート砲撃だぜっ!!」

 

そう言いながら、カロは次々に球形の砲弾を蹴り飛ばして行く。

 

『何とーっ! コレは驚き! カロ選手、砲弾を蹴って飛ばしているぅっ!!』

 

『いや~、トンでもない脚力ですね………』

 

『あの子、歩兵よりサッカーとかやった方が良いんじゃない?』

 

そして、ヒートマン佐々木が驚き、DU田中が半ば呆れ、そして瑞樹がそんなコメントを実況するのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

歩兵を狙って来たナイトウィッチ&ハロウィン機甲部隊の戦略に、みほは敢えてフラッグ車を囮にする作戦を執る。
だが、その作戦は完全に読まれており、またも歩兵が狙われ、ワニさん分隊とハムスターさん分隊が被害を受ける。

その直後………
恐れていたシュトルムティーガーの砲撃に、火炎放射器搭載のSd Kfz 251の焦土作戦で危機陥る大洗機甲部隊。
更に信じられない事に………
ハロウィン歩兵部隊のカロが、砲弾を蹴り飛ばして砲撃してきたのだった。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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