ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第152話『神狩 白狼の放浪記です(後編)!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第152話『神狩 白狼の放浪記です(後編)!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗から離れた白狼が居たのは、オーストラリアだった………

 

スカウトされたチームで、バイクレースの練習に励むが、イマイチ調子が乗らなかった………

 

そんな中、美嵩に言われてカメラマン達から逃げた向かった宿泊先のリゾート地にて………

 

偶然にも、海外合宿中だった黒森峰機甲部隊と出くわす………

 

エリカや、歩兵隊副隊長の『朽葉 蟷斬』と一悶着あったものの………

 

都草の仲裁で何とか穏便に済ます………

 

その翌日………

 

白狼は、揚羽達と久美に誘われ、リゾート地の観光に繰り出す………

 

その日の夕方に訪れた海岸で………

 

西住 しほの姿を発見するのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オーストラリア・グレートオーシャンロード………

 

「………大洗の歩兵だったわね」

 

しほは白狼に向かってそう言い放つ。

 

「いや、もう大洗とは関係ねぇ」

 

「そう………」

 

「何で此処に?」

 

「黒森峰の指導教官として来ていたのよ。今日の訓練は終わったから、此処に居るのは単なる気まぐれよ」

 

そう言うとしほは、白狼から興味を無くした様に、水平線を見やる。

 

「………あの時は言い過ぎた。すまない」

 

するとそこで、突如白狼は、しほに向かってそう謝罪した。

 

「…………」

 

しかし、しほは水平線を見たままである。

 

「プラウダ&ツァーリの試合の時、その………言い過ぎた」

 

白狼が謝っているのは、如何やら見事に啖呵を切った様に見えたが、内心気にしていた様である。

 

「………貴方はもう大洗の人間ではないのでしょう。謝罪を受け取る理由は無いわね」

 

しかし、しほは振り返りそう言ったかと思うと、そんな白狼の横を擦り抜けて去って行った。

 

まるで最初から白狼の存在に興味が無かったかの様に………

 

「…………」

 

残された白狼は、何とも言えない気持ちで佇んでいた。

 

と、そこで………

 

「あの~………すいません」

 

突然誰かに声をかけられた。

 

振り向けばそこにいたのは、身長がやけに低そうながらも意外にも揃っている女の子達と、やけに身長がデカい女の子がいた。

 

みんな水着を着ている。

 

「十二使徒って言うのは何処にありますか?」

 

「ああ、それならアレだ。あの突き出した花崗岩の奇岩がその十二使徒と呼ばれているヤツだ」

 

女の子の1人の質問に、白狼はその場所を指差しながらそう返す。

 

「おお~~~っ!」

 

女の子達は目を輝かせ、その美しい光景をジッと見つめる。

 

「お前等も観光か?」

 

「ああ、いえ、ボク達はここで撮影をしに来ました」

 

「撮影って事は………何かテレビの関係者か?」

 

「あ、あの………ハイ………」

 

「ほ、他のプロダクションのトモダチと一緒に………ヌード写真を撮りに………」

 

「ハッ? ヌード?」

 

思わぬ言葉に、白狼は驚いた様子を見せる。

 

「いや、ヌードはないよ………杏達は、海外出張っていう名目の元、他を挿んでグラビア撮影に来たんだよ」

 

「んでー。撮影が終わったら杏ちゃんとみんなでビーチで遊ぶんだにぃ」

 

小柄な少女・『双葉 杏』が、背の高い少女・『諸星 きらり』に抱えられた状態でそう言って来る。

 

「ふーん………」

 

やけに個性的な連中だが白狼は動じない。

 

と言うよりも余り興味が無い様子である。

 

「も、もしかしておにーさんは、ぬ、ヌードが………ご、ご希望………か?」

 

銀髪の少女・『星 輝子』が、照れながらそう尋ねる。

 

「いやーん、こんなにもカワイイボクの裸を見るのが御希望とは罪な人ですね」

 

「いや、全然」

 

「同感」

 

「それ、どういう意味なんですか!? というよりも杏さん! 貴方も賛同しないで下さいっ!!」

 

白狼の一言にジト目の女の子は怒る。

 

「皮肉気な人………なんですね………」

 

「このどうみても自意識過剰なヤツに腹が立っただけだ」

 

「自意識過剰じゃありません! 僕は自分に確実に自信があるんです! そうこの『輿水 幸子』は世界一カワイイトップアイドルなんですよ!」

 

そう言ってジト目の少女・『輿水 幸子』はドヤ顔を決める。

 

「知るか、そんなもん」

 

しかし、やはり白狼は興味ゼロである。

 

「このカワイイボクを知らないなんて、おにーさんってばかわいそうな人ですね」

 

「ホント腹の立つ奴だな………」

 

「本当に知らないの? 杏達はアイドルなんだぞ」

 

ふとそこで、杏がそう尋ねて来る。

 

「あ~………ワリィ、あんましテレビ見る余裕がないから………そのうち見て覚えておくよ」

 

「ふふーん。このボク、輿水幸子の可愛さは………」

 

「あ、でもアイドルって事は………スクール関係?」

 

「………って聞いてくださいよ!!」

 

話を遮られ、憤慨する幸子。

 

「ん~ん~。きらり達はプロダクションに入っているアイドルだにぃ! 因みにきらりは司会進行のお仕事もやってるよ~っ!!」

 

「じゃあ、モノホンってヤツだな」

 

「とーぜん! 何たって………」

 

「で、何の番組だ?」

 

「とときら学園っていうんだにょ~」

 

「ってだから聞いてくださいよっ!!」

 

幸子は無視され続けている白狼に怒鳴ったものの、白狼はそれをスルーしてきらりと話を続けた。

 

「じゃ、俺はも行くぜ。多分待ってるだろう連中が居るんでな。縁が在ったらまた会おう」

 

「バイバイだにぃ~!」

 

やがて白狼は話を打ち切ると、揚羽達を待たせていると思い、その場から去って行った。

 

「さ、杏ちゃ~ん。お仕事行くにぃ~」

 

「あ~、メンドクサイなぁ~」

 

きらりは杏を持ち上げたまま、仕事場へと向かう。

 

それを見た輝子は………

 

「よし………幸子ちゃん………わ………私達も………」

 

「ちょっとちょっと!? 何対抗してるんですかっ!?」

 

「だ………だって………何時かは勝負するかもしれないから………こ………こちらも………トモダチ魂を………み………みせつけてやろうぜ………フヒ………フヒヒヒ………」

 

何やら意味の分からない理論を展開する………

 

「ああ、もう! 仕方ありませんね、ほら!」

 

「ふ………ふひひひ………では………お言葉に甘えて………」

 

腰を下ろし、背を向けた幸子に向けて足を上げて乗っかろうとするが………

 

「? 如何したんですか? 早く上がってください」

 

「あ………足が………こ………これ以上………上がらない………」

 

輝子の足は、僅かに上がったところで止まっていた。

 

「何々ですか、結局!? だから嫌だったんですよこんなユニット!!」

 

運動不足な輝子に叫び散らす幸子。

 

「うふふ………皆楽しそう………あの子も喜んでる」

 

一方、今までずっと黙っていた片目の隠れた少女・『白坂 小梅』は、何も無い空間を見ながら少し微笑んでいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕暮れ過ぎになり………

 

白狼は宿泊しているホテルに戻り、夜になると再び揚羽達がやって来て、ディナーへ誘われた。

 

美嵩に小言を言われたが無視し、揚羽達に誘われるがままに近くのレストランへ。

 

そこで出された品物は、メガネモチウオ、そしてシロカジキ、数10匹のロブスターと大量のパシフィックオイスター。

 

と言った具合に海鮮尽くしであった。

 

それ等がコックにより調理され、完成した料理がテーブルに並べられると、皆は美味しく召し上がり始める。

 

白狼はロブスターの殻を剥きながら、かぶりついたり、味の付いた茹でたオイスターを持ち上げ、それを口に付けると中身だけ吸い出して食べた。

 

(美味いな………)

 

凄く美味しいと白狼は内心で絶賛する。

 

白狼を中心に、次々と美味しそうに食べる様子に、揚羽達は和気藹々となる。

 

その時、何処からか………

 

「は~い! そこにいる日本人のおに~さんも、盛り上がっちゃってる~?」

 

ビールを片手に、紫色のテカテカなボディコン風な低身長の女性が、白狼に絡んで来る。

 

「オメーも日本人だろ………つーか気色悪りぃから近づくな」

 

「むむ~、ナマイキなニーチャンめ~~~! そんな悪いコにゃ~、タイホしちゃうぞ~~~っ!!」

 

酔っ払いな相手に対し、一蹴する白狼だが、そんな態度の白狼に女性は胸元から取り出した手錠を掛けようとするが………

 

「ちょっと、此処は日本じゃないわよ」

 

そう言って揚羽が、女性の手首を掴み、手錠を取り上げる。

 

「こら~~っ! 公務執行妨害だぞ~っ!!」

 

女性はすっごく不満そうな顔をする。

 

離れていても匂って来るほど、相当酒臭い………

 

「酔っ払いに用はないんです! ここは私達の席なので!」

 

「ふ~んだ! 何よ何よ! ペッタンコのくせに~~~!!」

 

「ペッタンコじゃない!! 子供みたいな屁理屈言ってないで帰りなさい!!!」

 

コンプレックスを刺激され、揚羽が激昂する様子を見せる。

 

「ごめんなさい~! ウチの同僚が悪いことしませんでしたか~っ!?」

 

失礼な事を言う女性に、別の女性が現れ、酔っ払いの女性を手元に引き寄せ謝る。

 

「見りゃわかるでしょ!! とっとと戻って下さい!!」

 

「ホント、すみません!」

 

再度謝罪すると、酔っぱらいの女性を連れて、すぐさまその場から去った。

 

「全く、もう………」

 

余程さっきの言葉が気に障ったのか、イラついている揚羽。

 

「騒々しいな、全く………」

 

白狼は訳が分からず、取り敢えず食事を再開する。

 

「ねえねえ! さっきのひょっとして、『片桐 早苗』さんと『川島 瑞樹』さんじゃなかったっ!?」

 

「ああ、そう言えば!!」

 

「嘘! マジで!!」

 

生徒会お気楽三人組は、先程の二人が『片桐早苗』、『川島瑞樹』と言うアイドルだと気付き、感激する。

 

(またアイドルか………何か今日はアイドルに良く合うな………)

 

またも現れたアイドルに、白狼は呆れた様子を見せる。

 

「申し訳ありません~。これ、私達からのお詫びです~」

 

するとそこで、今度は小さめのポニーテールにメイド服を着ていた小柄な少女が、白狼達の席にトロピカルフルーツセットを差し入れた。

 

「おお、ありがと、メイドさん」

 

「気に入ってくれて何よりです。ナナもそんな皆さんを見て嬉しい気持ちでいっぱいです~」

 

誰もが喜ぶと、メイドの少女も喜んでいた。

 

「つーかお前も日本人かよ」

 

「フッフッフ………ナナはこのお店で欠員している店員さんの代わりにお仕事をしているんですが………その実態はっ!!」

 

すると少女は可愛いポーズを取ると………

 

「ウサミンパワーでメルヘンチェ~ンジ!! ウサミン星からやって来た、歌って踊れる声優アイドル・ウサミンこと、『安部 菜々』で~~すっ!!」

 

「…………」

 

ウィンクしながらポーズを決めた『安部 菜々』の事を、白狼は呆然としながらジト目で睨む。

 

「な、何なんですかそのケーハクそうな目は………ナナ悲しんじゃいますぅ~」

 

「ワリィ………余りにもハッチャけすぎる様子だったから………どうにもな」

 

泣き真似をされて気まずくなったのか、白狼がそう謝罪する。

 

「まあ、引いてしまう人も多く居ますが………それでもナナは明日に向かって歩き出す! それがウサミン星人のプラス思考で~すっ!!」

 

「とんだプラス思考だな………アイドルってヤツは………スクールアイドルと言い、随分な連中が多いんだな」

 

「いやぁ、ナナもこんなに若いリアルJKに………ああ! いえ!! ナナも若いですよ! 永遠の17歳ですから!! もちろんスクールアイドルにも参加していま~す! キャハ!」

 

「てことはお前も戦車道にか?」

 

「しかし、ウサミンという単語は聞いたことないであります。揚羽殿は?」

 

「いや、私も知らない………」

 

「あ、いえ、ウサミン星は非軍事主義でして、兵器の類は存在しません」

 

「それでよくスクールアイドルなんて参加出来たな………」

 

「一応スクールアイドルには、戦車道道が関わっているけど………」

 

「な、ナナの故郷は、一応認められていまして、今に至ってまーす!!」

 

「「「「「「…………」」」」」」

 

何やら慌てふためく彼女の様子に、怪訝な顔をする一同。

 

「奈々ちゃん、別の人のオーダー入ってるわよ」

 

そこへ、またも別の女性が現れ、菜々に仕事の催促をする。

 

「あ、すみませ~ん! すぐ行きま~す!」

 

驚く菜々はすぐさまメイドの仕事に取り掛かる。

 

「ごめんなさいね。あれでも普段は結構真面目なんですよ」

 

「あんな中二病っぽい設定がか?」

 

「うふふふふ、でも可愛いじゃないですか。西部戦じゃ、ウサギさんチームを必死で応援していましたし」

 

「え? 何でお前が西部戦の事を知ってるんだ?」

 

戦車道・歩兵道全国大会の事を知る様子の女性に、白狼は軽く驚く。

 

「知ってますよ。西部戦の事は、せーいぶ、知ってますから。フフフフ………」

 

「…………」

 

屈託のない笑みを見て、白狼は呆然とする。

 

それよりも先ほどダジャレっぽく聞こえるのは気のせいなのか………

 

すると揚羽、瀬芹を除く生徒会3人娘が席を立ち、女性をマジマシと見つめ、驚く。

 

「ひょっとしてお姉さんって………『高垣 楓』さんですか!?」

 

「あ、あのアイドル界のラスボスと言われる高垣楓をこの目で見られるとは………」

 

「今日はアイドル達のオフなのか?」

 

と、感激の様子を露わにする。

 

「またアイドルか………踏んだり蹴ったりだな………」

 

「至れり尽くせりじゃない辺りが白狼くんらしいわね」

 

呆れる白狼に、揚羽がそう言う。

 

「………それよりも、メシが冷めちまう。如何だ一緒に?」

 

「外国なだけにしめ鯖がないのが惜しいところですけどね。宜しいんですか?」

 

尋ねて来た楓に白狼は皆で食べれば美味しいと主張した。

 

思わぬゲストを迎え、生徒会3人娘のテンションが上がる。

 

楽しいディナーに、周りのお客さんの中に居た日本人観光客らしき人々も和気藹々とし出す。

 

その時………

 

「あ~っ!!」

 

突如驚きの声が挙がり、白狼がそれがした方向を見やると、そこには幸子達の姿が在った。

 

「あ、お前………コミミズ………だっけ?」

 

「輿水です! コ・シ・ミ・ズ!! カワイイ僕こと、輿水幸子ですっ!!」

 

「お~、昼ぶりだな~、おに~さん」

 

「にゃっほ~い! おひさだにぃ~!!」

 

「こ………こんばんわ………」

 

「ふ………ふひひひひ………」

 

「お前らも此処でメシか?」

 

「そうですよ! 此処はとっても美味しいと評判なんです!!」

 

アイドル達は其々に席に着く。

 

「おお! 今度は142cm揃いのJCトリオ! 幸子ちゃんと小梅ちゃんと輝子ちゃん!」

 

「そして更にはあんきらの2人まで………アイドル尽くしだな………」

 

「最近のアイドル人気、凄いからね~………」

 

生徒会の面々は、彼女達の姿に感嘆し、異様に感激する。

 

席は丁度、白狼が座っているテーブルの近く。

 

「撮影は終わったのか?」

 

「うん! すっごく楽しかったにー!! ねー、杏ちゃん!」

 

「ん~………まあね………」

 

「ふふ~ん! こんなにかわいい僕を撮影してくれるとは、カメラマンさんも幸運ですね」

 

「一体どの辺りが幸運なのか俺には全然分からないけどな………」

 

ドヤ顔の幸子に白狼は呆れる。

 

「でも、まだ明日撮影があるんだったよなぁ………」

 

「うん! 今度は愛梨ちゃんも一緒だにぃ!」

 

「誰だ?」

 

「あ………きらりさんと一緒に司会している………人です………」

 

「ある意味………ボインな………いい体つきな………アイドルで………ケーキも………ご馳走してくれて………フ………フヒヒヒヒ………」

 

「まあ、別にどっちでもいいけどよ」

 

尋ねておきながら、興味無さ気な白狼。

 

「アイドルに興味はないんですか?」

 

「もしあったら喜んでいたさ。でも今はどうでも良い………」

 

「失礼な人ですね。まあ、僕は明日も続くグラビア撮影が楽しみなんですよ~」

 

「グラビア撮影じゃないわよ」

 

「………え?」

 

幸子が自慢していると後ろから瑞樹が声を掛けて来た。

 

「川島さん? 如何して此処に?」

 

「愛梨ちゃんって、以前川島さんと一緒に司会もしていたから、その縁で今回は合同なんだにぃ」

 

「え?………ごう………どう………?」

 

「ああ、たしかアクティビチィーが如何だこうだとか………」

 

「うん………ゴールドコーストの………『タワーオブテラー』とか『ジャイアントドロップ』とか………」

 

「あ、あと………『ボマトロン』とか………『フライコースター』とか………」

 

「き、聞くからにして、穏やかそうじゃなさそうですね………」

 

いやな予感がしてたまらない幸子

 

むしろ何かデジャヴを感じていた。

 

「う、うん………全部、絶叫系だって………」

 

「さ………幸子ちゃん、頑張って………」

 

「なんでボクが!?」

 

「だ………だって………この前の………謎のくじ引きで………幸子ちゃん………赤が出たでしょ………」

 

「スタッフさんの話だと………今日の合同番組で………幸子ちゃんが絶叫マシンに乗って………アクティビティーを体験だって………」

 

「そんな話聞いてませんよ!! っていうか今更過ぎ!!」

 

「大丈夫だにぃ~! 幸子ちゃんは大好きだって聞いたんだにぃ!」

 

「全然! むしろ反対ですよ!!」

 

「幸子ちゃん、気持ちはわかるわ。でもね、明日の絶叫ロケは全国放送だから、活躍すれば幸子ちゃんの可愛さが伝わる筈よ」

 

「え………そうなんですか………ふ………ふふん! しょうがないですね! なんたってボクは何をやらせても可愛いんですから!!」

 

瑞樹に言われると、幸子はどこか得意げになるのだった。

 

「さ、流石身体を張ったアイドル………」

 

「なんだか大昔の芸人さんを彷彿とさせるわね………」

 

「有名人も大変だね~」

 

「というよりも、チョロいアイドルね………」

 

生徒会のメンバーは幸子に言いたい放題言いまくる。

 

「………ああ、これが至れり尽くせりか」

 

「踏んだり蹴ったりですよっ!!」

 

白狼が思い出した様に例えるが、幸子はツッコミを入れるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、夕食を済ませ、揚羽達と別れてホテルへと戻った白狼。

 

すると、意外な人物が出迎えた。

 

「やあ、こんばんわ」

 

「アンタは………」

 

都草である。

 

「何の用だ? 黒森峰の歩兵総隊長さんがよぉ」

 

「………此処じゃなんだ。少し歩こうか?」

 

「…………」

 

そのまま2人は、夜の浜辺へと移動する。

 

人気は無く、波の寄せて返す音だけが辺りに響いている。

 

「んで、何なんだよ?」

 

「………大洗を辞めた理由は、あの西部戦での事かい?」

 

「!………」

 

都草からそう言われ、白狼は一瞬驚いた様子を見せた後、黙り込む。

 

「図星の様だね。確かに、フレンドリーファイヤで危うく敗退だなんて、責任を感じるのも無理は無い」

 

「別に責任を感じたワケじゃない」

 

「ほう………」

 

白狼がそう返したのを聞いて、都草は意味深な笑みを見せる。

 

「大洗は俺が居なくても勝てる………そう思っただけだ。元々バイクを歩兵道に使うのはあんまり気が乗らなかったからな」

 

「レーサーとしてプライドか………」

 

「それに、美嵩のヤツと約束していた。約束は守るもんだ」

 

「約束か………確かに、約束を守る事は大事だ。だが、今の君はそれに固執するあまり、もっと大切な事を見失っているのではないのかい?」

 

「? もっと大事な事? 何だよ、ソレ?」

 

「それは君自身が気づかなくてはならない」

 

「んだよソレ………」

 

はぐらかす様な都草に、白狼は若干イラつく。

 

「心配しなくても良い。君ならすぐに気づけるさ。それが言いたかったんだ。邪魔をしたね」

 

都草はそう言い残し、去って行こうとする。

 

「オイ、待て」

 

だが、白狼はその都草を呼び止めた。

 

「………何かな?」

 

都草は、白狼に背を向けたまま、顔だけ振り返って尋ねる。

 

「何で俺にそんな事を言いに来た? 俺は元はお前等の敵だぞ」

 

「敵………か。敵とは何かね?」

 

「ああ?………」

 

「確かに、他校の機甲部隊の事を便宜上敵と呼ぶ。だが、敵は滅ぼすもの。歩兵道や戦車道で相手を滅ぼすなんて事は先ず有り得ない」

 

「…………」

 

「我々は試合と言うの名の元で戦う。だがそれは相手を滅ぼす為ではなく、互いに切磋琢磨し合い、共に高みへと向かう為の戦いだ」

 

「綺麗事だな………」

 

「その通りだ。だが、その一言で否定し切れるのかね?」

 

「…………」

 

黙り込む白狼。

 

「では、失礼するよ………」

 

そんな白狼を海岸に残し、都草は改めて去って行った。

 

「…………」

 

白狼は暫く、海岸に立ち尽くしていたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日・空港にて………

 

黒森峰の面々が帰国する事になり、見送りに(半ば無理矢理)訪れた白狼。

 

「じゃあね、白狼。今度は日本で会いましょう」

 

「ああ…………」

 

「神狩殿! またお会いしましょうっ!!」

 

そう言って搭乗ゲートを潜って行った揚羽と久美を、白狼は何処か上の空で見送った。

 

「…………」

 

続いてしほが、白狼には目もくれずにゲートを潜る。

 

「よう、生徒会長さんの見送りか?」

 

「…………」

 

続いて、蟷斬がやって来て、挑発する様な言葉を吐くが、白狼は無視する。

 

「チッ、ムカつく野郎だぜ。あばよ、クソヤロウ」

 

「………ハリガネムシには気をつけるんだぞ」

 

蟷斬がイラついた様子を見せると、白狼はそう言い放つ。

 

尚、ハリガネムシとはカマキリ等の昆虫に寄生する寄生虫の事である。

 

「!!………」

 

蟷斬は歯ぎしりしながらゲートを潜って行った。

 

「…………」

 

「………また会おう」

 

最後に、まほが軽く会釈して、都草が短くそう言って、ゲートを潜って行く。

 

程無くして、黒森峰の面々が乗った飛行機が飛び立った。

 

「…………」

 

それを見送ると、白狼は空港から出ようとする。

 

本来ならばレースの練習に行くべきなのだが、如何にもそんな気持ちになれなかった。

 

(如何するか………)

 

白狼がそう思っていると………

 

「う………うう………」

 

「?………」

 

呻き声が聞こえて来た気がして、白狼が視線をやると、そこには………

 

ターミナル内で、膝を着いて苦しんでいる老人の姿が在った。

 

「オイ、爺さん。大丈夫か?」

 

流石に放っては置けず、白狼が声を掛けると………

 

「お、おお………若いの………スマンが、ちょっと荷物を頼めるかのう?」

 

目を隠すほどの白く太い眉毛の老人は、白狼にそう言って荷物を差し出して来る。

 

「それは良いが、救急車呼んだ方が………」

 

と、白狼が荷物を受け取りながらそう言いかけた瞬間………

 

「ハアアアアアア~~~~~~………」

 

老人は両手を腹の中心に添えるようにすると、一瞬カッと目を見開き、深く深呼吸をした。

 

「………ふう」

 

すると、何事も無かったかの様に立ち上がった。

 

「何?………」

 

その様子に、白狼は驚きを露わにする。

 

「スマンの若いの。世話を掛けた」

 

そう言って、老人は白狼から荷物を返してもらう。

 

「………本当に大丈夫か?」

 

「うむ、もう心配ないぞ。ホッホッホッホ………」

 

心配する白狼だが、老人は大丈夫な様で、ケラケラと笑う。

 

「さ~て、急がんと………飛行機が出てしまう」

 

と、老人は改めて、搭乗ゲートへと向かう。

 

「………待てよ」

 

するとそこで、白狼はその老人に付き添う。

 

「心配だからな。付いてくぜ」

 

「………構わんぞ」

 

老人は一瞬白狼の目を見やると、何かを察した様な表情となった。

 

そしてそのまま………

 

白狼は老人と共に飛行機に乗り込み、オーストラリアを発ったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、辿り着いたのは………

 

中国は安徽省………

 

空港から出た老人は、そのまま歩いて目的地に向かい出し、白狼もそれに続いた。

 

そのまま数時間は延々と歩き続け、ドンドンと田舎の方………

 

更には人里離れた場所まで向かい始める老人。

 

「ゼエ………ゼエ………オイ、爺さん………一体………何処まで行くんだ?………」

 

「ふぉっふぉっふぉっ、もうすぐじゃ」

 

完全に疲労の色が見えている白狼とは対照的に、老人は涼しげである。

 

「着いたぞ。此処じゃ」

 

「あん?………」

 

そう言われて顔を上げた白狼は絶句した。

 

その先にあるのは階段………それもとてつもなく長い石の階段………

 

最早天辺の方は、霞が掛かって見えないくらいだった。

 

「…………」

 

「では行くかのう」

 

白狼は開いた口が塞がらない感じだが、老人はその階段を難なく上って行く。

 

「ええいっ! 此処まで来たら!!」

 

白狼も追い掛ける様に登って行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1時間後………

 

「ゼエ………ゼエ………ゼエ………ゼエ………」

 

すっかり息も絶え絶えで、最早立っている気力も無く、這う様に石段を登って居る白狼。

 

老人の姿は既に見えなくなっている。

 

「クソ………舐めるなよ………」

 

しかし、白狼は意地で登り続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして更に1時間後………

 

「ハア………ハア………着いた………」

 

「遅かったのう」

 

倒れ込む様に天辺に到着した白狼に、待っていた老人がそう声を掛ける。

 

そこは見事な寺院だった。

 

開いている門の先には何人もののカンフー胴着姿の者達が、見事な拳法の型を披露しながら鍛錬している様子が見えている。

 

とそこで、老人が白狼を杖で起こす。

 

「これくらいでへばってしまっては、まだまだじゃのう」

 

「も………もとより………俺はまだまだ………だ………つーか………此処………ヤケに………息切れするのが………早い………頭も………クラクラする………」

 

「当然じゃ。この寺は山の天辺で空気が薄い。お主の様に無駄な動きが多い若造共には耐えられん」

 

「へぇ………って事は何? アンタはこんな山奥の天辺に済む仙人みたいなものかよ?………」

 

「多くはそう言う。そしてワシはこの中国の歴史を、ご先祖様達より沢山沢山学んだ………そして、戦いにおいて大事なモノも学んだ」

 

「大事なモノ?………」

 

「時にお主は………歩兵道と呼ばれるものの歩兵じゃな………」

 

「な、何で知ってるんだっ!?」

 

「ワシにはチャンと分る。男は約束を堅く守ると言うが、自分の誇りよりも勝るモノは必ず存在する。お主はそれに気づいていないだけじゃ………」

 

「………でも、仮に破って戻ったとしても………」

 

「では、お主に1つ助言をしてやろう………お主は後ろを向き過ぎじゃ。未来に向かって真っ直ぐ歩く事が人生にとって一番大事な事じゃ」

 

「未来に………真っ直ぐ」

 

「何よりもお主は大切な事に気がついていない………まだまだ未熟な証拠じゃ」

 

「………そうか」

 

「理解したか?………」

 

老人に言われ、白狼は項垂れていた………

 

かと思ったら、再び顔を上げて………

 

「だからと言って諦めちゃダメなんだよな! なあ、爺さん! 俺に稽古をつけてくれ!!」

 

「………今のお主には覇気が残っておらぬ………そんなお主に用は無い。助けてくれたのは感謝するが、それとこれとは話が別じゃ」

 

「だからこそ諦める積りも無い………ここで居座って、教えてくれるまで動かん!」

 

「ならば、好きにせい………」

 

そういいながら老人は寺院の門の向こうへと入って行き、門を閉めた。

 

「………望むところだ」

 

白狼は睨むような目付きで、門を見据えるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

スペシャルゲストは、シンデレラガールズの面々でした。
前にニュージェネレーションズと武内Pをゲスト出演させたので、その関係で出して欲しいと白狼のキャラを提供してくれた友人に頼まれまして………

そしてその白狼ですが、謎の老人に付き添って中国へ。
そこで一念発起し、稽古をつけて欲しいと
いよいよ復活なるでしょうか?

次回は再び大洗。
遂に決勝リーグが始まります。
その最初の相手は………

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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