ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第150話『神狩さんの行方です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第150話『神狩さんの行方です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冥桜学園の夏祭りにて開催されたカレー大会の最中………

 

戦車暴走族の一行が、木曾への仕返しにやって来た。

 

冥桜学園生徒の誇りを逆手に、卑怯な勝負に持ち込んだ戦車暴走族に対し………

 

弘樹、みほ、優花里が、知波単の絹代とカレン、ライ………

 

更に継続校の面々と、ムカデさんチームに元赤肩校の面子と協力し、助っ人で参戦。

 

戦後戦車を使い、圧倒的な数を揃えて襲い掛かって来た戦車暴走族を相手に、混合チームは奮戦。

 

最後には提督の『島津 豊久』の乱入や、ハンネスの爆撃が炸裂し、見事に戦車暴走族を粉砕したのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冥桜学園・草原………

 

「チキショーめ………」

 

力無く胡坐を掻いている晴風がそう呟く。

 

その背後には、スクラップ寸前になっている彼女達の戦車と共に、そこかしこで伸びている彼女のチームの面々の姿が在った。

 

「さて………約束は守ってもらうぜ」

 

そんな晴風に向かって、集まった混合チームの中で、木曾がそう言い放つ。

 

「まさかそこまで反故にする気じゃないでしょうね?」

 

カレンも、晴風の事を睨みながらそう言う。

 

と、その瞬間!!

 

「!!………」

 

晴風は特攻服の内側からドスを取り出した!

 

「!………」

 

「まだやる気ですか!?」

 

空かさず弘樹が英霊に手を掛け、優花里もそう声を挙げる。

 

しかし!!

 

晴風は自分の左手を開いた状態で地面に付けたかと思うと、ドスの刃をその小指に掛けた!

 

「!?」

 

「ちょっ!? 何する気だいっ!?」

 

アキが驚愕し、ミッコも声を挙げる。

 

「詫びは入れる………しっかりと見とけっ!!」

 

そう言い放つ晴風。

 

如何やら極道宜しく、エンコ詰めをする気らしい。

 

「待つんだっ!」

 

「うおおおっ!!」

 

ライが止めようとするが、晴風はドスの刃を小指に落そうとする。

 

だが、その刃が指に食い込む寸前のところで………

 

「駄目っ!!」

 

みほがそう叫んで、晴風のドスを持っていた手を包み込む様に掴んで止めた!

 

「! 何しやがるっ!?」

 

「それはコッチの台詞だよ!? 何でそんな事しようとするの!?」

 

晴風が怒鳴るが、それ以上の怒声でみほがそう言い放つ。

 

彼女にしては珍しく、怒りの様子を露わにしている。

 

「ウルセェッ! どうせアタイは不良の半端モンだ! 指の1本や2本無くなったとこで………」

 

「!!」

 

と、その瞬間!!

 

みほは、晴風の頬にビンタを噛ました!!

 

「イデッ!?………」

 

「何でそんなに自分を粗末に出来るの!?」

 

晴風の目を見据え、みほはそう言い放つ。

 

「貴方が如何して不良になったのかは私には分からない………でも! 自分を粗末にする様な事だけは絶対にしちゃいけないんだよ! まだやり直す事は出来るんだから!!」

 

「…………」

 

みほの言葉を聞き入る晴風。

 

「温い事を………そやつが指を切ると言うなら、そやつの好きに………むぐっ!?」

 

「姫! 空気読んでっ!!」

 

その様子に不満を抱いたしずかがそう言うが、途中で鈴に遮られる。

 

「やり直せない事なんてないんだよ。だから、そんな事はしちゃ駄目だよ」

 

そう言ってみほは、晴風の手からドスを取ると、落ちていた鞘を拾って納める。

 

「甘い事を………」

 

「だが、大した奴だぜ」

 

「流石は、弘樹の奴の今の総隊長だな」

 

その光景を見ていたムーザ、グレゴルー、バイマンがそう言い放つ。

 

「………よか」

 

豊久も、満足そうな表情を浮かべている。

 

「………お名前をお伺いしても宜しいですか?」

 

「えっ? えっと、西住 みほです」

 

ふと、みほの名前を問い質す晴風。

 

すると………

 

「………お見逸れ致しやしたっ!!」

 

突然晴風はそう声を挙げ、みほに向かって土下座の姿勢を取った。

 

「え、ええっ!?」

 

「この湘南 晴風! みほさんの心意気に感服致しやしたっ!! 今日から姐(あね)さんと呼ばせて下せえっ!!」

 

みほが困惑していると、晴風は顔を上げてそう言い放つ。

 

「あ、姐さんっ!?」

 

「おうっ! テメェ等ぁっ!! たった今から棲蛇亜麟は西住 みほの姐さんの傘下に入るっ!! 文句はねぇなぁっ!!」

 

狼狽しているみほを余所に、晴風は後ろを振り返り、起き上がり始めていた棲蛇亜麟の面子にそう言い放つ。

 

「姐さん!!」

 

「西住の姐さんっ!!」

 

「姐御ぉっ!!」

 

途端に、棲蛇亜麟の一同も、みほの事を姐さんや姐御と呼び始める。

 

「ちょ、ちょっと待ってよ~っ!!」

 

その光景に、みほは悲鳴の様な声を挙げる。

 

「根は素直な子達だったみたいね。差し詰め、『大洗会直系西住組』って言ったところかしら。アハハハハハハッ!!」

 

「…………」

 

そしてそんなみほの様子を見て、そう評しながら豪快に笑う絹代と、無言で微笑んでいる様な表情でカンテラを鳴らすミカだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、晴風を筆頭とした棲蛇亜麟は、長門達に正式に謝罪。

 

晴風達の潔い態度を見た長門達はこの謝罪を受け入れ、この場は手打ちとなった。

 

そして、その場の勢いで、図らずも組長を襲名してしまったみほだったが………

 

棲蛇亜麟の面々の為にも、止むを得ずその立場を受け入れ、晴風達に不良行為を絶対にしない事と更生を厳命。

 

晴風達はそれを受け入れ、以後棲蛇亜麟の名は不良界から姿を消したのだった………

 

 

 

 

 

冥桜学園鎮守府カレー大会の会場………

 

「さてさて~、トラブルはありましたが、いよいよカレー大会、優勝チームの発表です!」

 

「ホント、トンでもないトラブルだったけいどね~」

 

霧島と那珂がそう実況し、いよいよカレー大会の優勝チームが決められようとしている。

 

「やっぱり、木曾さん達よね………」

 

「そうですね………」

 

「悔しいけど、完敗だわ………」

 

「姉さん………」

 

しかし、第六駆逐部隊+優花里チームも足柄&羽黒チームも、既に敗北を悟った様な顔をしていた。

 

彼女達も木曾達が作ったビルマ風カレーを実食しているので、その美味しさは身に沁みて分かっていた。

 

「異論は無いな」

 

「私は無いわ」

 

「大和も有りません」

 

武蔵が問うと、陸奥と大和がそう返す。

 

「…………」

 

しかし、長門だけは沈黙したままだった。

 

「では、今大会の優勝チームは、ビルマ風カレーの木曾チームに決定とする!」

 

と、遂に武蔵が、木曾達のチームが優勝だと宣言したが………

 

「辞退するぜ」

 

「………ハッ?」

 

途端に木曾が辞退を表明し、武蔵は思わず間抜け顔をしてしまう。

 

「おおっと!? 木曾チーム! まさかの優勝辞退宣言です!!」

 

「一体如何言う事なのぉーっ!?」

 

それを聞いた霧島が大袈裟に実況し、那珂も困惑を露わにする。

 

「俺達が参加したのは、他の連中が真面にカレーを作れてなくて、大会の盛り上がり的に問題ありと思ったからだ。別に優勝に興味はねえ」

 

「「「「「…………」」」」」

 

木曾にそう言われ、カレーを真面に作る事すら出来ていなかった他のチームの面々が気まずそうに目を伏せる。

 

「それに………このビルマ風カレーのレシピは借りモンでな」

 

「借りもの?」

 

「長宗我部殿が親しくなったカレーショップのオーナーとシェフ殿から教えて頂いたモノを拝借した次第であります」

 

「店を開いた初代のオーナーとシェフさんから代々受け継いできたメニューだそうです」

 

木曾のレシピが借り物と言う事に、大和が首を傾げると、あきつ丸とまるゆが敬礼しながらそう説明する。

 

「何てお店なの?」

 

「確か………そう、カレーショップ『ハッピータイガー』だ」

 

陸奥の質問に、木曾は一瞬の思案の後、そう答える。

 

「まあ、兎に角、そう言うワケだから、優勝は辞退させてもらうぜ」

 

「となると、やはり足柄達のカレーと第六駆逐部隊のカレーの勝負となるか」

 

木曾が重ねてそう言うと、武蔵が顎に手を当てて思案顔になる。

 

「………私は第六駆逐部隊のカレーを押す!」

 

するとそこで!

 

今まで沈黙を保っていた長門がそう言って立ち上がった!

 

「「「「! 長門さん!!」」」」

 

「ちょっ!? 如何してっ!? 理由を教えて頂戴っ!!」

 

第六駆逐部隊は笑顔を浮かべたが、足柄は納得が行かない様子である。

 

「足柄………確かに、お前のカレーと比べて、第六駆逐部隊のカレーは未熟と言わざるを得ない」

 

「だったら………」

 

「しかし! 未熟なりに自分達を見据え、向上して行こうと言う志を私は感じたっ!!」

 

足柄の言葉を遮り、長門がそう叫ぶ。

 

「お前のカレーの味は完成された味………武人として、常に高みを目指す我等にとって、完成とは即ち停滞。日々之精進………第六駆逐部隊のカレーには、そんな意志が込められていた!!」

 

「うっ!!………」

 

「成程………確かに」

 

「言われてみればその通りだ」

 

長門の言葉に、足柄は怯み、大和も武蔵も納得が行った様な表情を見せる。

 

「………フフフ」

 

しかし、陸奥だけは意味有り気に笑いを零していた。

 

「それじゃあ………」

 

「ああ………優勝は、第六駆逐部隊+秋山 優花里チームとする!!」

 

「「「「! やったーっ!!」」」」

 

「や、やりましたーっ!!」

 

長門がそう宣言したのを聞き、第六駆逐部隊は跳び上がって喜び、優花里も歓声を挙げる。

 

「ま、負けた………この私が………」

 

一方、負けた足柄は相当なショックを受けている様子を見せている。

 

「ね、姉さん。そんなに落ち込まないで………」

 

そんな足柄を気遣う様な様子を見せる羽黒。

 

「…………」

 

しかし、足柄は無反応である。

 

「姉さん?………!? 姉さんっ!?」

 

不審に思った羽黒が再び声を掛けた瞬間、彼女は驚愕する!

 

「燃えたわ………燃え尽きたわ………真っ白な灰にね………」

 

「姉さあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーんっ!?」

 

足柄は、どこぞのボクサー宜しく、真っ白な灰になって燃え尽きていた………

 

「ハア~~~………」

 

そんな喧騒の中で、長門は椅子に腰掛け、深く息を吐いていた。

 

「審査員、大変だったわね」

 

その長門に、陸奥がそう声を掛ける。

 

「大した事は無い………」

 

「良かったわねぇ。これから1年、カレーの日は第六の甘口カレーで。長門ってば、辛い物がホントに駄目だもんね」

 

「………煩い」

 

陸奥の言葉に、不機嫌そうにそう返す長門。

 

如何やら、第六駆逐部隊のカレーを評価したのは、彼女の個人的な嗜好もあった様である。

 

そんな事は露知らず、大洗の一同を含めた観客達は、優勝者である第六駆逐部隊と優花里のカレーを振る舞われていたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、暫し時が流れ………

 

「タマヤーッ!」

 

「カギヤーッ!」

 

楽しい夏祭りも、終わりが近づき、シメを飾る打ち上げ花火が打ち上げられている。

 

夜空に咲き誇る花火の花々を見上げながら、歓声を挙げる大洗一行。

 

そして、そのシメの花火も、間も無く終わろうとしていた。

 

「どうだったい? 冥桜学園の夏祭りは」

 

ふとそこで、大洗の一同の前に、三日月宗近が現れ、そう尋ねて来た。

 

「あ、宗近さん」

 

「久しぶりに楽しませて頂きましたよ」

 

みほが気付いて声を挙げると、迫信がそう返事を返す。

 

「そうか、それは何よりだ」

 

「宗近さん、斉藤さんは………」

 

とそこで、優花里が宗近に足柄の事を尋ねる。

 

「足柄の奴なら、まだ燃え尽きたままだよ。よっぽど気合を入れていたんだろうね。暫くはあのままだと思うよ。白狼の事は、私が後で聞いて連絡するよ」

 

「そうですか………」

 

実を言うと一刻でも早く白狼の居場所を聞きたい優花里だが、肝心の足柄が元に戻らない事にはどうしようもなかった。

 

「ところで、この後、まだ時間は有るかい?」

 

すると宗近はそんな事を尋ねて来る。

 

「? ハイ、大丈夫ですけど………」

 

「そうかそうか。じゃあ、取って置きの場所へ案内しよう」

 

「「「「「「「「「「取って置きの場所?」」」」」」」」」」

 

そう告げる宗近に、大洗の一同の一部は、首を傾げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宗近が用意していた数台のバスに乗り込み、吹雪、睦月、夕立、大和、清光、それに睦月の妹分に当たる『明智 如月』を加えて、大洗の一同は甲板都市の山岳地帯へと向かった。

 

暫く山道を進んでいたかと思うと、不意にバスは、山道が在った路肩に停まる。

 

「さ、ココからは歩きだ」

 

「ええ~っ!? この山道を行くのぉ~っ!?」

 

宗近がそう言い、聖子が長そうな山道を見て思わずそう声を挙げる。

 

「大丈夫ですよ。見た目の割に短いですから」

 

「ホントに~?」

 

吹雪がそう言うが、沙織が疑いの眼差しを向ける。

 

しかし、何時までも此処に居ても仕方ないと思い、一同はその山道を登って行った………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

山道を暫く歩くと広い空間へと出る………

 

目の前に在ったのは、古くボロボロになった廃寺だった………

 

「ご苦労様、ココは冥桜学園艦一美しい寺だよ」

 

「………此処が?」

 

如何見ても只の廃寺にしか見えない寺を見て、重音が思わずそう声に出す。

 

「想像してみて下さい………きっと素晴らしい場所に違いありませんよ」

 

「………いや、その………分からないんだが………」

 

「分からなくても構いません。ただ………この場所が1番だという事を知って欲しくて………」

 

「それだけの為に?」

 

「それだけだと思ってんの? 見なよ」

 

清光に言われ別の方向を見ると、蛍が飛んでいるのを見えた。

 

「! おおっ! 蛍!!」

 

「見て下さい! 1匹や2匹じゃないですよ!!」

 

海音が声を挙げると、清十郎がそう言い、蛍の大群が現れる。

 

大量の蛍の光によって、辺りが幻想的に明るくなり、大洗の一同は驚きを露わにする。

 

「私達、冥桜の生徒達は、ずっと昔からホタルを繁殖させる為にこうして、研究し、保護してるんです」

 

「だから私達も、こうして夏になると山に来て、ホタルの様子をみるっぽい」

 

「そうだったんですか………」

 

冥桜の生徒達の努力に感銘を受けるみほ。

 

「遠い昔はそこかしこに蛍が居たが、技術進歩の為に工場等による水質汚染が増え、農村でも農薬散布や生活排水などが原因で、蛍の絶滅が危惧されておる」

 

「近代化の弊害とも言えるな」

 

宗近の言葉に、俊がそんな事を言う。

 

「やがて私達はこの冥桜で………恋に落ちたんです」

 

「恋に!?」

 

ふとそこで、如月がそんな事を言い、真っ先に沙織が反応する。

 

「ふふふ、多分勘違いしているけど、そういう恋とは違うんですよ」

 

その様子に苦笑しながらそう返す如月。

 

「えっ? 如何言う事?」

 

「恋に落ちたのはこいつさ」

 

沙織が首を傾げると、清光がある方向を指差した。

 

その方向を向いた大洗の一同が見たのは………

 

「うわああ~~~~~っ!」

 

「凄~~~いっ!」

 

夜空には天の川、そしてその天の川を映す美しい湖と大量の蛍火だった。

 

幻想的な光景に、誰もが息を呑む。

 

大洗では決して見れない光景、冥桜だからこそ見れる光景である。

 

「凄いねぇ………」

 

「いやはや、恐れ入ったよ」

 

杏と迫信も、素直にそんな感想を漏らす。

 

夏になればこういう光景を見られ、冬になれば湖は凍りつきスケート場になる。

 

学園艦にも自然公園みたいなものはあるが、ここまでするとは思いも寄らなんだ………

 

見ただけで心が洗われる、そんな光景であった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後………

 

漸く立ち直った足柄から、白狼の行方の手掛かりが知らされる。

 

曰く、白狼と美嵩が会話していた場面を目撃し、その際に『海に面した長いビーチ』、『大好きなネズミの国』、そして『誰もが釣りを楽しめる、アメリカ人の国』と言う単語を聞いたらしい。

 

煌人によれば、この3つに該当する場所はたった1つ………

 

アメリカの『フロリダ州』であると。

 

そして、フロリダでは丁度、オートバイ競技が行われていると。

 

そこで迫信が、神大コーポレーションを通じ、現地の大使館に白狼の行方について尋ねた。

 

返答が有り次第、白狼を迎える準備をするとの事である。

 

漸く居場所が分かった………

 

そう思った大洗の一同は、逸る気持ちを押さえながら、次の試合に向けての準備を整えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗女子学園・戦車格納庫内………

 

「そうですか………いえ、どうもありがとうございます。それでは」

 

備え付けの電話を使っていた敏郎が、そう言って受話器を置いた。

 

「如何でした?」

 

「やはり駄目だ。在庫は無いそうだ」

 

柚子がそう尋ねると、敏郎はやや落胆した様子でそう答える。

 

「クウッ! 何たる事だっ!!」

 

「まさか『ヘッツァー改造キット』がこんなに品薄状態だなんて………」

 

桃が苛立ちの声を挙げ、蛍が頭を抱える。

 

 

 

 

 

『ヘッツァー改造キット』とは………

 

戦車道連盟が正式に認可し、戦車道関連企業で販売している戦車の改造キットの1つである。

 

『ヘッツァー』とは、ドイツ軍が開発した軽駆逐戦車の事であり、このキットを使う事で、軽戦車からの改造でヘッツァーを組み上げる事が出来るのだ。

 

万年火力不足に喘ぐ大洗戦車部隊の戦力を少しでも上げようと、生徒会が各方面から集めた義捐金で38tの改造用に購入を計画していた。

 

しかし、肝心のキットが現在品薄状態であり、入手が困難なのである。

 

 

 

 

 

「う~ん、コレは戦力強化は無理かな~………」

 

杏もそんな諦めの言葉を口にする。

 

金が在っても、物が無ければ仕方がなかった。

 

すると………

 

「角谷生徒会長殿」

 

その杏に、弘樹が声を掛けて来た。

 

「あ、舩坂ちゃん。どったの?」

 

「実は改造キットの件なのですが………小官に少し当てがありまして」

 

「当て?」

 

弘樹の言葉に、柚子が首を傾げた瞬間………

 

不意に、格納庫の戦車用の出入り口が開いた。

 

「「「「「「「「「「!?………」」」」」」」」」」

 

「ちょいと邪魔するぜぇ。大洗戦車チームは此処かい?」

 

一同の視線が集まる中、開いた出入り口から、髪と同じ灰色の顎鬚を蓄えた中年ぐらいの男性が姿を見せた。

 

「誰?」

 

「ちょっと貴方! 勝手に学校の敷地内に入って来て………」

 

あやがそう言うと、みどり子がその男性に詰め寄って行くが………

 

「園風紀委員長殿。申し訳ありません。小官の知人です」

 

弘樹がそう言って、みどり子を抑えた。

 

「おう、弘樹! 久しぶりだな!」

 

「とっつぁんも元気そうだな」

 

とっつぁんと呼ばれた男が弘樹の姿を見て笑顔になると、弘樹も微笑を浮かべる。

 

「弘樹くん、その人は?」

 

「小官が中学生時代に所属していた機甲部隊に、武器・弾薬等を卸してくれていた方だ」

 

「『ブールーズ・ゴウト』だ。よろしくな、軍神ちゃん」

 

みほがそう尋ねて来ると、弘樹がそう説明し、男………『ブールーズ・ゴウト』が自己紹介する。

 

「それでとっつぁん。例の物は?」

 

「ああ、ちゃんと持って来たぜ。ホレ」

 

ゴウトはそう言い、背後に停めてあったトラックの、オープンになっている荷台に積まれている物を指す。

 

「! ああっ!? ヘッツァー改造キットッ!!」

 

蛍がその積まれていた物………ヘッツァー改造キットを見てそう声を挙げる。

 

「一体コレを何処で!?」

 

「ま、蛇の道は蛇………でな」

 

柚子が尋ねると、ゴウトはしたり顔でそう返す。

 

「ちゃんと正規の物なんだろうな?」

 

「オイオイ、人聞きの悪い事言うなよ。入手経路は明かせねえが、物自体は連盟が認可してる純正品だぜ」

 

((((((((((入手経路が凄く気になる………))))))))))

 

弘樹がゴウトとそう言い合うのを聞いて、大洗機甲部隊の面々は入手経路を気にするものの、敢えて問い質す勇気の有る者はいなかった。

 

「まあ、兎も角、商売の話をしようじゃないか。代金としてこれぐらい貰おうか」

 

ゴウトは商談に入る為、1枚の書類を杏に差し出す。

 

「どれどれ?………ふむふむ………えっ? こんなんで良いの?」

 

その書類を受け取った杏は、思わずそんな声を挙げる。

 

「通常の半額以下じゃないですか」

 

横から書類を覗き込んだ柚子も、書かれている値段を見てそう指摘する。

 

「良いのか、とっつぁん?」

 

「サービスだよ。お前には散々儲けさせてもらったからな」

 

弘樹が尋ねると、ゴウトは笑みを浮かべたままそう返す。

 

「うん、ありがとね………じゃあ、真田ちゃん! 早速改造しよっか!!」

 

「ああ、すぐにでも取り掛かろう」

 

杏はゴウトに礼を言うと、敏郎にそう呼び掛け、整備部員達によってヘッツァー改造キットが、トラックごと格納庫内に運ばれる。

 

他の面々も、改造を手伝うべく、格納庫内へ戻って行く。

 

「………世話になったな」

 

1人残っていた弘樹が、ゴウトにそう礼を言う。

 

「気にすんな。他ならぬお前さんの頼みだから」

 

「助かる。我々は何としても大洗女子学園の廃校を阻止しなければならないからな」

 

「………弘樹。その事なんだが、ちょいと気になる噂を聞いてな」

 

とそこで、ゴウトが表情を険しくしてそう言って来る。

 

「? 気になる噂?」

 

「ああ、廃校の話が持ち挙がってる、或いは持ち挙がった事があるのは、大洗女子学園だけじゃねえそうだ」

 

「大洗女子学園の廃校は、文科省の学園艦統廃合計画の一環だ。別段不思議ではないだろう。それに申し訳無くは思うが、他の学校の事まで気に掛けている余裕は………」

 

「その廃校の話が持ち挙がった中に、グロリアーナ&ブリティッシュ、サンダース&カーネル、プラウダ&ツァーリ、黒森峰の名が在ってもか?」

 

「………如何言う事だ?」

 

ゴウトのその言葉を聞いた弘樹の表情も険しくなる。

 

元々大洗女子学園に廃校の話が持ち挙がったのは、生徒数の減少と目立った活動実績が挙がっていない事が理由である。

 

しかし、ゴウトが挙げた学園は何れも戦車道・歩兵道で毎年優秀な成績を納めており、生徒数減少とも無縁の学園ばかりである。

 

「そもそも、元々大洗の廃校は女子学園だけでなく男子校も一緒に………つまりは学園艦その物を廃校にする積りだったそうだが、お前のところの生徒会長さんが敏腕で男子校を立て直しちまったから、女子学園だけに矛先が向かったって話もあるぜ」

 

「………つまり、その噂が真実だとするならば、文科省は学園艦を潰したがっている、と言う事か?」

 

「そう言う事になるな」

 

「…………」

 

弘樹は顎に手を当てて思案顔になる。

 

「………とっつぁん」

 

「分かってる。皆まで言うな。その話を更に詳しく調べてみてくれってんだろ?」

 

「頼めるか?………」

 

「任せておけって。分かり次第、連絡する」

 

「頼んだぞ………」

 

弘樹とゴウトはそう言い合い、互いに無言で頷き合ったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして………

 

ゴウトから気になる噂を聞きつつも………

 

漸く入手出来たヘッツァー改造キットによって………

 

カメさんチームの38tは………

 

『軽駆逐戦車ヘッツァー』へと生まれ変わったのだった。

 

だが、しかし………

 

その翌日に、一同を落胆させる知らせが届いた………

 

フロリダの大使館から回答が有り………

 

神狩 白狼なる人物は………

 

フロリダには、いないと………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オマケ

 

最近この作品に触れて、ちょっと興味を持ったので、やってみました

 

 

 

 

 

エキシビジョンマッチを終えて、大洗女子学園に戻ったみほ達を待っていたのは………

 

文部科学省学園艦教育局長・辻 康太による廃校の知らせだった。

 

優勝すれば廃校を取り下げるという約束は、口約束は約束ではないと反故にされた。

 

こうして、みほ達は守り抜いた筈の学校を失った………

 

 

 

 

 

かに思えたが………

 

 

 

 

 

何と、下船した筈の学園艦の住人達と生徒達が再び乗船。

 

廃校の準備を進めていた文科省の役人達を追い出して学園艦を奪取。

 

そのまま出航したのである。

 

『学園艦占拠』………

 

この歴史上類を見ない事態に、辻 康太は驚きながらも直ちに対応。

 

相手が相手だけに、海上保安庁や海上自衛隊に治安出動を要請したが、世論を気にした国会によって却下される。

 

そこで、独自のコネを利用し、何と安保条約を持ち出して、在日米軍を出動させた。

 

大洗学園艦は、忽ち米艦艇に包囲された。

 

だがそこで………

 

突如、大洗学園艦の傍に、1隻の原子力潜水艦が出現。

 

大洗学園艦を包囲していた米艦艇に向かって、こう打電した。

 

 

 

 

 

『大洗学園艦を包囲中の米艦艇に告げる。直ちに停船せよ』

 

『本艦の攻撃準備は完了せり』

 

『警告する』

 

『我が魚雷並びにミサイルの弾頭は………』

 

『通常に非ず』

 

 

 

 

 

米艦艇に衝撃が走った。

 

弾頭は通常に非ず………

 

即ちそれは………

 

『核弾頭』を保有していると言う宣言だった。

 

 

 

 

 

学園艦の奪取と言う事態だけでも、驚くべき事態であったが………

 

此処へ来て、核弾頭を保有する大洗に味方する原潜の存在が発覚。

 

コレには文科省だけでなく、日本の国会、そしてアメリカ政府、国連までもが揺れた。

 

だが、更なる驚愕の知らせが、舞い込んで来る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その原潜・『やまと』の艦長であり、大洗女子学園に2学期から着任する予定だった学園長………

 

『海江田 四郎』は、世界に対し、こう宣言した。

 

我々は、『独立国・大洗』であると。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガールズ&パンツァー×沈黙の艦隊

 

『沈黙の学園艦隊』

 

公開予定無し。

 

スミマセンでした。




新話、投稿させていただきました。

戦車暴走族を見事に破った弘樹達。
そしてみほは組長に就任(笑)
カレー大会は木曾が辞退した事で、長門の推しにより、第六駆逐部隊+優花里チームとなる。
こうして、白狼の行方を知る事が出来たのだった。

そして、決勝リーグ開幕が迫る中、弘樹の知り合いである『ブールーズ・ゴウト』のツテで、漸くヘッツァー改造キットを入手。
早速、カメさんチームの38tを改造に掛かる。
だが、それと同時に………
ゴートから弘樹に、学園艦廃校に関する怪しげな噂がもたらされるのだった。

そして、更に悪い知らせが………
足柄が言っていた場所に………
白狼は居なかった………

オマケの方は、最近『沈黙の艦隊』を少し見まして、劇場版ガルパンでは役人に先手を打たれて出来ませんでしたが、廃校に抗議して学校に立て籠もるって言う、一昔前の青春ドラマみたいな展開をするって想像をしていたところ、沈黙の艦隊で原潜・やまとが独立宣言する場面を見て………
『原潜が国家になるんなら、学園艦なら国家として申し分ないな』と言う考えが浮かびまして、ちょっと小ネタで書いてみました。
本編の執筆は先ず無理です。
私、政治とかの話は書けないので………
飽く迄ネタとして見て下さい。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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