ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第148話『カレーライス大作戦です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第148話『カレーライス大作戦です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海外のプロバイクレースチームからスカウトされ、日本を去った白狼。

 

その行方を知る冥桜学園の足柄から、彼の居場所を聞き出す為に………

 

冥桜学園の夏祭りで行われるカレー大会に、参加チームの助っ人として参戦する事になったあんこうチーム。

 

その中で優花里は、中学生くらいの4姉妹のチーム………

 

『第六駆逐部隊チーム』へ参加。

 

紆余曲折しつつも、如何にか満足の行くカレーを作れる様になる。

 

そして迎えた大会当日の夏祭りの日………

 

大洗機甲部隊のメンバーは、遊びに来ていた他校のメンバーと共に冥桜学園の夏祭りを楽しみつつ………

 

遂に開催された『冥桜学園鎮守府カレー大会』へ参戦するのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冥桜学園の甲板都市………

 

冥桜学園鎮守府カレー大会の会場………

 

「マイク音量大丈夫? チェック、1、2………ハ~イ! 皆さん、お待ちかねぇ! 冥桜学園鎮守府カレー大会、開幕~!! 司会実況は私金剛4姉妹の霧島!! 現場実況は!?」

 

「冥桜学園のアイドル、那珂ちゃんで~す!」

 

遂にカレー大会が開幕し、司会実況を務める霧島が特設された櫓の上からそう言い、近くでレポートする役の那珂にそう振る。

 

「それじゃあ、出場者を紹介しちゃうよ~! バーニングカレー! 金剛さんと比叡さんに、助っ人の武部 沙織ちゃん!!」

 

「テートクのストマックを掴むのは、私達のカレーデース!」

 

「気合! 入れて! 作ります!!」

 

「私の女子力、見せちゃうよ~!」

 

やる気満々の金剛チームとその助っ人の沙織。

 

「5番隊の実力を見せる為に来ました! 『瑞鶴』さんと『翔鶴』さん! その助っ人! 大洗の軍神!! 西住 みほ!!」

 

「瑞鶴にはカレーの女神が付いて居てくれるんだから!」

 

「1番隊の皆さんに少しでも近づける様なカレーを作ります」

 

「な、何か私の紹介だけ違わない?………」

 

黒髪のツインテールの少女・『上杉 瑞鶴』がそう言い、その姉である白いロングストレートの髪をした少女・『上杉 翔鶴』がそう言う中、ヤケに気合の入った紹介に困惑するみほ。

 

「ごはんも対戦相手もお残しは許せない! 1番隊の加賀さんと赤城さん! 助っ人の五十鈴 華ちゃん!」

 

「5番隊のカレーなんかと一緒にしないで………」

 

「1番隊、赤城! いただき………作ります!!」

 

「お手柔らかにお願いします」

 

5番隊に突っ掛る様な事を言うサイドテールの少女・『山本 加賀』と、作る気より食べる気が感じられる黒いロングの髪をした少女・『武田 赤城』、そしてその助っ人の華。

 

「辛きこと島風の如し! 島風さんとその助っ人、冷泉 麻子!!」

 

「コレ以上辛くなっても知らないから!」

 

「やれやれ………」

 

妙に自信満々の島風と、その助っ人の麻子。

 

「御淑やかな性格だけど強い芯! 羽黒さん! そして、求めるは勝利! 敵は全て屠る飢えた狼! 足柄さん!」

 

「足柄姉さんの背中は、私が守ります!」

 

「出撃よ! 戦場が、勝利が私を呼んでいるわ!!」

 

足柄の妹である『斉藤 羽黒』がそう言い、この場に居る中で最も戦意を見せている足柄がそう吠える。

 

「兵站のエキスパート、第六駆逐部隊の暁さん、雷さん、電さん、響さん。そして助っ人の秋山 優花里さんです!」

 

「いよいよですね………」

 

「「「「…………」」」」

 

そう呟く優花里の横で、暁、雷、電、響が神妙な面持ちで佇んでいた。

 

「どうやら相当鍛錬を積んでいる様ね。けど! 勝つのは私よ!!」

 

「イエース! 正々堂々勝負ネ!!」

 

早くも激しい火花を散らす足柄と金剛。

 

「そして審査員は、我等が生徒会長の長門さんと副会長の陸奥さん! そして大和さんと妹の武蔵さん!」

 

「…………」

 

「うふふ」

 

「よろしくお願いします」

 

「期待しているぞ」

 

審査員席には、長門、陸奥、大和、そしてその妹である『徳川 武蔵』の姿が在った。

 

「ナンバー1の座を賭けて!」

 

「冥桜学園カレー大会スタートッ!!」

 

霧島と那珂がそう宣言し、一斉に自分達の調理場へと走ったのだった。

 

「始まったな………」

 

「さて、どうなる事やら………」

 

「…………」

 

遂に始まったカレー大会の様子を見て、地市と俊がそう呟き、弘樹も無言で成り行きを見守る。

 

 

 

 

 

優花里が参加している第六駆逐部隊は、全員が分担して、それぞれに並行で作業を開始。

 

優花里は玉ねぎをあめ色になるまで炒める係。

 

電はお米を洗う係。

 

雷はじゃがいもとにんじんの皮を剥き、切る係。

 

響はフライパンでお肉を炒める係。

 

そして暁はゴマすりで隠し味を作っている。

 

「皆で頑張って練習したのです」

 

「チームワークなら負けないわ」

 

「その通りであります!」

 

「…………」

 

電、雷、優花里がそう言い、響も無言で同意する。

 

「他のチームはどんな様子かしら?」

 

とそこで、暁が他のチームの様子を覗き見る………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金剛&比叡+沙織チーム………

 

「う~ん、全ての具が溶け込んだこの黄金のカレースープ。優勝は私達で決まりデース!」

 

「凄いです、金剛さん! とても女子力高いカレーですね!」

 

イギリス式のカレースープを煮込みながら、優勝宣言をする金剛と、その金剛のカレーを手放しで褒める沙織。

 

「イエース! そしたら………も~う! 駄目だよ、テートク~!! 私は食後のデザートデース!!」

 

と、すっかり慢心し切った金剛は、その場で妄想を始める。

 

「デザート………そうだ! 序にそれも作っちゃおう!」

 

一方沙織は、金剛がデザートと言ったのを聞いて、デザートも用意しようと流し台の方へと向かう。

 

それが悲劇の始まりだった………

 

「!? ハッ!? このカレー………具が入って無い!?」

 

妄想している金剛に代わって鍋を覗き込んだ比叡がそう言う。

 

如何やら金剛が具材が溶け込んだと言っていたのを全く聞いていなかった様である。

 

(お姉さまに恥は掻かせません! こんなこともあろうかと………え~いっ!!)

 

そこで比叡は、自分が用意していた食材を、カレーの中へ放り込んだ。

 

金剛の妄想はまだ続いており、気づいていない。

 

と、比叡の具材が放り込まれた瞬間………

 

それまで普通だったスープカレーが………

 

真っ赤に変色して、まるでマグマの様にゴボゴボと音を立て始めた!!

 

「コレがお姉さまと私の合作………あ、愛の共同作業! ハハ~ハッ! なんちゃって~っ!!」

 

そして比叡は、姉妹愛を暴走させる。

 

「それでは比叡! 一緒に味見デースッ!!」

 

とそこで、先に我に返った金剛が、カレーの現状を確認せず、味見用の小皿によそる。

 

「ハイ! 御姉様っ!!」

 

そして、金剛と比叡は、一緒に味見用によそったカレースープを1口飲む。

 

「「!?!?」」

 

途端に、金剛と比叡の顔………いや、全身が真っ赤に染まって行き………

 

「「カレエエエエエエエエエエェェェェェェェェェェェーーーーーーーーーーーッ!?」」

 

まるで怪獣の様に口から火を吐いて、バタリと倒れた。

 

「お待たせ~………って!? 何があったの!?」

 

漸く戻って来た沙織が、僅か数分の間に起きた惨状に驚愕する。

 

「カウント! 1、2、3! 御姉様方!! まさかまさかのダブルノックダウンです!!」

 

「き、霧島さん?………」

 

「おいぃぃぃぃぃぃぃぃ!! 自分の姉妹がアクシデント起こしてんのに何、K-1のレフェリーぶってんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

霧島の的外れとも取れる実況が響き、那珂が唖然とし、観客の中に居た逞巳が、某文字が多い漫画ばりのツッコミを入れる。

 

「比叡さん………極度の辛党なんですけど、いつもやり過ぎて、自分でも食べられない様にしちゃうんです………」

 

「苦労してるんだね………」

 

吹雪が遠い目をしてそう言い、聖子がそんな吹雪の肩に手を置く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、赤城&加賀+華チームは………

 

「栄えある1番隊に小細工何て必要無いわ。普段通りにやれば良いだけ。そうよね、赤城さん」

 

そう言って加賀が、切り終えたじゃがいもをザルの中へ入れる。

 

すると、凄い速さで手が伸びて来て、ジャガイモを掴んで引っ込む。

 

「う~ん、その通りよ、加賀さん」

 

それは赤城の手だった。

 

何と、まだ調理も何もしていない皮を剥いただけのじゃがいもを次々に頬張っており、その頬はハムスターの様に膨れている。

 

「ええっ!? あ、あの………まだ調理も何もしていないんですけど………」

 

「…………」

 

華が思わずそう言うが、何故か加賀は頬を染めて、食材を切っては赤城の方へ差し出して行く。

 

「えっ!? か、加賀さん!?」

 

「お~と、加賀さん! 見事なスルーパス! あ、今のは赤城さんの行動をスルーした件と、食材をパスした件をかけた解説です」

 

「自分で説明しちゃうの!?」

 

「いやその前に突っ込むところあるだろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

霧島の実況に那珂がそう返し、またも逞巳のツッコミが飛ぶ。

 

「………ハア~、申し訳ありません。私、棄権させていただきます」

 

そして華はやってられなくなったのか、棄権を表明してその場から去って行ったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続いては、翔鶴&瑞鶴+みほチーム………

 

「フフ、1番隊、恐るるに足らずね!」

 

赤城と加賀の惨状を見て、勝利を確信する瑞鶴。

 

「そんな事言っちゃ駄目よ、瑞鶴。5番隊の私達が慢心してはいけないわ」

 

(翔鶴さんが居れば大丈夫そうかな………それにしても、カレーかぁ。お姉ちゃんが好きだったなぁ)

 

そんな瑞鶴をやんわりと戒める翔鶴と、その様子を見て安心しつつ、カレーが好きだった姉の事を思い出すみほ。

 

「分かってるって………あ! 翔鶴姉! カレー跳ねてる!」

 

するとそこで、瑞鶴が翔鶴の服にカレーが跳ねているのを発見する。

 

「えっ!? 何処!? カレーの汚れって落ち難いのに………」

 

「ホラ、此処此処」

 

跳ねていたのは、翔鶴のスカートの丁度端の辺りだった。

 

「あ、待ってて下さい! 確か台所用の洗剤で………」

 

みほが一般的な手順に基づき、台所洗剤を探すが………

 

「ま、待って! スカートはあまり触らないで!………!? キャアッ!?」

 

あまりスカートを触られたくない翔鶴が身を捩ったところ、足をもつらせて転んでしまう。

 

「ああっ!?」

 

「だ、大丈夫ですか!?………!? ああっ!?」

 

瑞鶴が声を挙げ、慌てて駆け寄ったみほも驚きの声を挙げる。

 

何故なら、翔鶴の穿いていたスカートは現在瑞鶴の手に握られたまま………

 

つまり、パンモロ状態なのである!

 

「えっ? あ!………ああっ!? もう! 何で私ばっかり~っ!!」

 

翔鶴は恥ずかしさのあまり逃げ出してしまう!

 

「ま、待って翔鶴姉! 態とじゃないの~っ!!」

 

「ああ! カレーは如何するんですか~~~!?」

 

慌ててその後を追う瑞鶴とみほ。

 

「ありがとうございます!! こういうのを待っていたんですよ!!」

 

「霧島さん! 声も顔も冷静だけど、実はテンションマックスだよね!!」

 

「何でラッキースケベに喜んでるんだよぉぉぉぉあんたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

またも霧島が無理矢理締め、那珂と逞巳のツッコミが炸裂するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、島風+麻子チームは………

 

「ふ~んふん、ふふふん、ふんふふん~」

 

鼻歌交じりに、お湯を入れた鍋で、小さな袋の様な物を温めている島風。

 

やがて、その袋を取り出し、封を切って、皿に盛っていた御飯の上に中身を掛ける。

 

「出来た―っ!!」

 

そう言う島風の手にはカレー………

 

そう、レトルトカレーが出来上がっていた。

 

「ねえ、島風ちゃん。それ、もしかしてレトルトカレーじゃ………」

 

「うん? だって早いもん」

 

那珂が呆然となりながら尋ねると、島風はシレッとそう返す。

 

「早いからって、レトルトは………」

 

「御馳走様~」

 

と、那珂がツッコミを入れようとしていた間に、島風はカレーを平らげる。

 

「食べるのも早っ!? とゆーか、島風ちゃんが食べちゃ駄目ーっ!!………あ、そうだ! 麻子ちゃんは!?」

 

激しくツッコム那珂だったが、そこで麻子が居る事を思い出して、一途の望みを掛ける。

 

「ん………」

 

しかし、そこに居たのは、カレーパンを手にしている麻子の姿だった。

 

「…………」

 

那珂は諦め切った表情で、その場を後にする………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

観客席サイド………

 

「さっきから真面に作れているメンバーが居ないぞ………」

 

「最早料理への冒涜やで………」

 

1大イベントにも関わらず、グダグダの内容に、海音と豹詑が呆れ果てる。

 

「…………」

 

弘樹も思うところがあるのか、何時も以上の仏頂面となっている。

 

「舩坂」

 

「舩坂殿」

 

「舩坂さん」

 

とその弘樹に声を掛ける者がいたので、弘樹が振り返ると、木曾、あきつ丸、まるゆの姿を確認する。

 

「ああ、長宗我部くん達か」

 

「心配になって見に来たんだが………案の定みてぇだな」

 

木曾が、カレー大会の惨状を見て、呆れた様にそう呟く。

 

「酷い光景であります………」

 

「折角の大会なのに………」

 

あきつ丸とまるゆも、気落ちした様子でそう言う。

 

他の観客の中にも、呆れている様子を見せている者達が居る。

 

「うむ………止むを得んか。湯江」

 

「? ハイ? 何ですか、お兄様?」

 

とそこで、弘樹は傍に居た湯江に声を掛ける。

 

「ちょっと頼まれて欲しいんだが………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暁、雷、電、響+優花里チーム………

 

他のチームが次々と脱落する中、順調に調理を進めている第六駆逐部隊チームと優花里………

 

「周りが勝手に脱落して行く、この虚しさは何なのかしら………」

 

脱落したチームの様子を見て、暁が虚しそうに呟く。

 

「それより暁ちゃん。味見、お願いなのです」

 

とそこで電が、完成間近のカレーの味見を頼んで来る。

 

「ん………」

 

「如何だい?」

 

「良い! 今まで1番良いわ!!」

 

響が尋ねると、暁はそう返す。

 

「ホント!? やったね!!」

 

「努力して来た甲斐がありました!」

 

それを聞いて、雷と優花里が笑顔を見せる。

 

「ええ! 周りもあんな調子だし、コレなら勝ったも同然よ!!」

 

勝利を確信し、そう言い放つ暁。

 

「それは如何かしら?」

 

「「「「うん?」」」」

 

「! 斉藤殿!?」

 

しかし、そんな暁達に水を差す様に、足柄がそう言って来た。

 

「羽黒、お願い」

 

「ハ、ハイ………どうぞ、皆さん」

 

足柄がそう言い、羽黒がお盆の上に、味見皿に入った自分達が作ったと思われるカレーを、5人に差し出して来る。

 

「「「「「…………」」」」」

 

流される様に、そのカレーを味見する第六駆逐部隊チームと優花里。

 

「! コ、コレは!?」

 

「な、何コレ!? かりゃ過ぎるっ!?」

 

「で、でも! 凄く美味しいのです!!」

 

「痺れる程の辛さなのに、何処かまろやかで、コレは後を引く味だわ!」

 

「ハ、ハラショーッ!」

 

第六駆逐部隊チームと優花里は衝撃を受ける。

 

足柄達のカレーは辛みが強いものの、とても美味しかったからだ。

 

「…………」

 

と、その様子を見ていた審査員席の長門の表情が険しくなる。

 

「? 長門さん? 如何したんですか?」

 

「い、いや………何でも無い」

 

大和が尋ねるが、長門は誤魔化す様にそう返す。

 

「? 変な奴だな………」

 

「ふふふ………」

 

武蔵も首を傾げる中、1人分かっている様子の陸奥が笑いを零す。

 

「何で!? 何で暁達のカレーとこんなに違うの!?」

 

「これまでの知識と経験、そして数えきれない程の試行錯誤を繰り返して生み出された黄金配合スパイス………私と貴方達とでは年期が違うのよ!!」

 

「「「「「!?」」」」」

 

戦慄している第六駆逐部隊チームと優花里に、足柄はそう言い放つ。

 

「それに何よりも背負ってるものの重さが違う!!」

 

「如何言う事ですか?」

 

「私はどんな勝負であろうと決して手を抜かない! 勝利に為ならあらゆる努力を惜しまない! 全てを投げ捨てる覚悟さえ有るわ! そういう気持ちで! 私はこの大会に出場しているのよ!!」

 

「マジだーっ! たかが夏祭りのイベントにこの人大マジで挑んで来てるよーっ!!」

 

足柄の言葉に、那珂のツッコミが飛ぶ。

 

そりゃそうであろう………

 

幾ら大会と言う名を冠していても、所詮は夏祭りのイベント………

 

勝負の云々よりも、来訪しているお客様に楽しんでもらいたいと言う側面が大きい………

 

それを彼女は人生が掛かっているかの様なガチの心構えで挑んで来ているのである。

 

「ゴメンなさい………私には止められませんでした」

 

そんな足柄の様子に、羽黒はただそう言って視線を落とすばかりであった。

 

「「「「うう………」」」」

 

と、足柄の闘気に当てられたのか、膝を着く第六駆逐部隊チーム。

 

「! 皆さん!?」

 

「クッ………」

 

「私達には重過ぎるわ………」

 

「ココまでなのです?………」

 

「あんなに頑張ったのに………」

 

既に、第六駆逐部隊チームの心は折れかけている………

 

「皆さん!………」

 

「武将に渡るなかりしか!!」

 

と、優花里が何か言おうとしたところ、それを遮る様にそう言う台詞が響き渡る。

 

「「「「!?」」」」

 

「織田殿!?」

 

それは、審査員席に居た長門の声であった。

 

「お前達は十分な努力をした! ならば、後は最後まで取り組むのみだ!! 神狩 白狼ならば、決して諦めない不屈の魂を持って立ち向かう! そうだろう!!」

 

「! 神狩殿なら………」

 

長門の口から白狼の名が出て、優花里もハッとする。

 

「長門さん………」

 

「どうしてそこまで?………」

 

「ふっ、私だけではないさ………」

 

長門がそう言うと………

 

「頑張れー! 第六駆逐部隊チームっ!!」

 

「秋山先輩も頑張れーっ!!」

 

会場から第六駆逐部隊チームと優花里に応援が飛び交ってくる。

 

「なんと会場中から第六駆逐部隊チームと優花里ちゃんにコール! 彼女達の頑張りが遂に会場を動かしたというのでしょうか!?」

 

「単に傍から見て足柄さんが大人げなく見えるから応援してるだけじゃ………」

 

霧島がそう実況すると、那珂がツッコミを入れる。

 

「………少し軽くなった」

 

「皆が呼んでくれるなら………」

 

「私たちは立ち上がるのです!」

 

「そうよ! 暁達は誓ったんだから! 皆で勝つって!!」

 

「我々は負けませぬ! 神狩殿が諦めない様に………我々も諦めません!!」

 

コールが届いたのか、第六駆逐部隊チームは立ち上がり、優花里も再度闘志を燃やす。

 

「良いわ! 掛かって来なさい! 正面からねじ伏せてやるわ!!」

 

足柄はそんな第六駆逐部隊チームと優花里を見据え、そう言い放つ。

 

「第六チーム立つ!! 今、冥桜の全てを掛けた運命の最終戦が始まるのです!!」

 

「これカレー大会だよね!?」

 

「何時の間にか日曜朝アニメになってるじゃねぇかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーっ!!」

 

相変わらずの霧島の実況に、那珂と逞巳のダブルツッコミが決まるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして遂に、調理が終わり………

 

審査の時間となった。

 

「さあ、全てのカレーが出揃いました! いよいよ最終審査の時です!!」

 

「では、審査員の皆さん! お願いしますっ!! 最初は足柄さんと羽黒さんのカレーです!!」

 

霧島と那珂がそう言い、審査員の前に、足柄と羽黒のカツカレーが並べられる。

 

「流石のボリュームね」

 

「コレは食べ応えがありそうだ」

 

「それでは………」

 

「………頂こうか」

 

陸奥、武蔵、大和、長門がそう言い、足柄と羽黒のカレーを頬張る。

 

「う~ん、辛~い」

 

「だが、病み付きになる辛さだ」

 

「ホント、絶妙なスパイスの配合ですね」

 

「…………」

 

陸奥、武蔵、大和がそう感想を言うが、長門だけは脂汗を浮かべて無言のままだった。

 

「では、続いて! 第六駆逐部隊チームと秋山さんのカレーです!!」

 

今度は、第六駆逐部隊チームと優花里のカレーが、審査員の前に並べられる。

 

「こっちは甘口のカレーね」

 

「だが、カレーの持ち味を損なわず、絶妙なバランスを保っている」

 

「コレも見事です」

 

「うむ………」

 

陸奥、武蔵、大和がそう言うと、今度は長門も短く頷きの声を出す。

 

「フフフ………」

 

「「「「「…………」」」」」

 

不敵に笑う足柄と、固唾を呑んで見守っている第六駆逐部隊チームと優花里。

 

とそこで………

 

審査員達の前に、新たなカレーが並べられた。

 

「アラ? まだあったの?」

 

「足柄達と第六駆逐部隊チーム以外は全滅かと思っていたが………」

 

「それにしてもこのカレーは………」

 

「ああ、一風変わっているな………」

 

新たに出て来た風変わりなカレーに、審査員の一同は怪訝な顔をしながら口を付ける。

 

………すると!!

 

「!?」

 

「コ、コレはっ!?」

 

「こ、このカレーは!?」

 

陸奥、武蔵、大和の顔色が変わったと思われた瞬間!!

 

「美ーーーーーーー味ーーーーーーーーーーいーーーーーーーーーぞーーーーーーーーーーーーっ!!」

 

長門が突然そう叫び声を挙げて、口から光線を吐きながら巨大化する!!

 

………様なイメージを見せた。

 

「コレは美味い!」

 

「ホント! 美味しいわ!!」

 

「まるでお店で出て来る様なカレーです!」」

 

「美ーーーーーーー味ーーーーーーーーーーいーーーーーーーーーぞーーーーーーーーーーーーっ!!」

 

審査員から絶賛の嵐が巻き起こる。

 

「そ、そんなっ!?」

 

「だ、誰よ!? あのカレー作ったの!?」

 

足柄が狼狽し、暁が他のチームを見回す。

 

「俺達さ………」

 

と、そう声を挙げたのは………

 

あきつ丸、まるゆ、湯江を引き連れた木曾だった。

 

「!? 木曾っ!?」

 

「「「「木曾さんっ!?」」」」

 

「如何だ? ビルマ風カレーの味は?」

 

驚きの声を挙げる足柄と第六駆逐部隊チームを尻目に、木曾は審査員達にそう言う。

 

「美味しい! ホントに美味しいわ!」

 

「ああ! 全くだっ!!」

 

「これ程のカレーは初めて食べました!!」

 

「美ーーーーーーー味ーーーーーーーーーーいーーーーーーーーーぞーーーーーーーーーーーーっ!!」

 

相変わらずの大絶賛を送る審査員達。

 

「そんなに美味しいの!?」

 

「あ、暁達も食べるっ!!」

 

と、その様子に我慢出来ず、足柄と第六駆逐部隊チームも、木曾達のビルマ風カレーに手を付ける。

 

「!? コ、コレは!?………」

 

「お、美味しい………」

 

「私達のカレーよりずっと………」

 

「な、なのです………」

 

「ハラショー………」

 

そして足柄と第六駆逐部隊チームも、そのカレーの美味しさを実感する。

 

「妹殿! ご協力ありがとうございました!」

 

「お蔭で大絶賛です」

 

「いえ、そんな。私はレシピ通りに作っただけですから」

 

あきつ丸とまるゆがそう言うと、湯江はそう謙遜する。

 

「おーっと! 思わぬダークホースが出現だぁーっ!!」

 

「コレは優勝決定かーっ!?」

 

何ともエンタ-テイメント的な演出に、霧島と那珂が興奮気味に実況する。

 

観客達も、思わぬ展開に沸き立つ。

 

「如何するの?」

 

「やはり決まりだろう………」

 

「そうですね。文句無しの一品でした」

 

陸奥、武蔵、大和が、優勝は木曾達のカレーだと判断する。

 

「…………」

 

しかし、長門だけは難しい顔をして黙り込んでいた………

 

「………では、優勝は!」

 

遂に優勝者が発表されようとした、その瞬間………

 

何やら、屋台の並んでいる通りの方から、破壊音が聞こえて来た。

 

「!? 何だっ!?」

 

地市が声を挙げると、更に破壊音が続き、悲鳴の様な声も聞こえて来る。

 

「!………」

 

居ても立っても居られず、弘樹が駆け出し、大洗と冥桜学園の一同も続いたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

屋台が並ぶ通り………

 

「オラァッ!!」

 

「やっちまえっ!!」

 

「ヒャッハーッ!!」

 

そこでは、不良と思われる男どもが、打ち壊し宜しく、屋台を破壊していた。

 

「! お前達! 何をやっているっ!!」

 

駆け付けた大洗と冥桜の一同の中で、その光景を見た長門が怒声を挙げる。

 

「! アイツ等は………」

 

「あ! リーダーッ! あの女っすよ!!」

 

と、木曾がその不良達に見覚えを感じた瞬間、不良の1人が木曾を見てそう声を挙げた。

 

「居やがったなぁ、このアマァッ!!」

 

すると、そう言う怒声と共に、右腕をギプスで固め、首から三角巾で吊っている不良が前に出る。

 

まるゆの財布をカツアゲしようとして、木曾に灸を据えられた連中である。

 

「やっぱり、あの時の連中か………」

 

「ウルセェッ! この前の落とし前を付けさせてもらうぜ!………総長! お願いしやすっ!!」

 

木曾が呆れた様子を見せると、リーダーはそう声を挙げる。

 

すると、近づいて来る機械音が耳に入る。

 

「! この音は!?」

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

その音を聞いたみほと、大洗と他校の戦車チームが反応する。

 

何故ならその音は、彼女達にとって馴染みにある音………

 

戦車の履帯とエンジンの音だったからだ。

 

その直後!!

 

無事だった屋台を破壊して、3輌の戦車が姿を現す!

 

「! IS-3………」

 

「!!」

 

その戦車がプラウダでも使用していたIS-3だったので、ノンナとカチューシャが反応する。

 

そこで、3輌の内、先頭に居たIS-3のハッチが開いたかと思うと………

 

「オウオウオウオウッ! テメェかぁっ!! ウチの舎弟共を可愛がってくれたっちゅうんはっ!!」

 

そう言う台詞と共に、晒で胸だけを隠した上に、白い特攻服を着て、頭に白い鉢巻を巻いた、いかにもレディースの総長っと言った風体の女性が姿を見せる。

 

「うおおっ!? 晒ブラジャー! 美味しいです!………! ぐへっ!?」

 

「黙ってろ………」

 

その女総長の姿を見た了平が悪い癖を出し、弘樹に制裁される。

 

「お前は?………」

 

「アタイは『湘南 晴風(しょうなん はれかぜ)』! 泣く子も黙るパンツァーレディース、『棲蛇亜麟(スターリン)』の総長様よ!! 夜露死苦っ!!」

 

木曾が問うと、女総長・『湘南 晴風(しょうなん はれかぜ)』はそう自己紹介する。

 

「パンツァーレディース?………」

 

「『戦車暴走族』ですわ。戦車を使って暴走行為を繰り返しているので、警察も手を焼いている存在ですわ」

 

沙織が聞き慣れない単語に首を傾げていると、意外にもダージリンがそう説明した。

 

「詳しいのですね………」

 

「ええ、ちょっと、ね………」

 

華がそう指摘すると、ダージリンは口籠った様子を見せてそう言う。

 

(あの子もあんなところに居たのね………)

 

その胸中には、クルセイダー巡航戦車を乗り回すグロリアーナの隊員の顔が浮かんでいた。

 

「スターリンだが、ヒトラーだか知らねえが………ウチの学園でこんな事して、只で済むと思ってるのか?」

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

木曾が若干怒りの様子を見せながらそう言うと、長門達も闘気を纏い始める。

 

「!? ヒイッ!? そ、総長ぉ~………」

 

「情けねえ声出してんじゃねえっ! まあ、待ちなって、冥桜さんよぉ………ココは1つ勝負と行こうじゃねえか」

 

「勝負だと?………」

 

「その通り! アタイ等と勝負して、そっちが負けたらお前等全員に土下座して詫び入れてもらって、この学園をアタイ等の好きにさせてもらおうか!!」

 

勝負と聞いた長門が反応すると、晴風はそう宣言する。

 

「そ、そんなっ!?」

 

「お前達が負けた時は?」

 

「そん時にゃあ、コッチがキッチリと詫び入れて、2度とこの学園艦には来ねぇって約束してやるよ」

 

あんまりな条件に、吹雪が狼狽した様子を見せたが、直後に武蔵がそう問い質すと、晴風はそう返す。

 

「まさか勝負を挑まれて受けないとかは言わねえよなぁ? 天下の冥桜学園様がよぉ?」

 

砲塔の上でヤンキー座りをしてメンチを切りながらそう挑発する晴風。

 

「舐められたものね………」

 

「良いだろう。その勝負………」

 

「待ってくれ、長門」

 

陸奥がその挑発に苛立った様子を見せ、長門が受諾しようとしたところ、木曾がそれを押さえて前に出る。

 

「! 木曾!」

 

「この騒ぎの原因は俺にある。ならこの勝負は俺が受けるのが筋ってもんだ」

 

長門に向かってそう言い、晴風の傍まで歩み寄る木曾。

 

「へへへ、流石は冥桜学園の生徒様だ。良い覚悟だぜ」

 

「フッ………実力差も分からずに喧嘩を売るなんざ、無能な総長だな。じゃあ、勝負と行こうか?」

 

「ああ、勝負だ!………『戦車道』でなぁっ!!」

 

「!? 何だとっ!?」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

晴風がそう言い放つと、長門が驚愕の声を挙げ、冥桜学園の一同も狼狽する。

 

「ま、待って下さいっ! 私達の学園では戦車道は………」

 

「オイオイ。ソイツは勝負を受ける事を受諾したんだぜ。なのにそれを覆すのか? そしたら冥桜の奴は勝負の約束を反故にする様に連中だって言いふらしてやるぜ!!」

 

「! 卑怯なっ!!」

 

冥桜学園の生徒達の誇りを逆手に取り、勝負にならない勝負を仕掛けて来た晴風に、武蔵が不快感を露わにする。

 

「まあ、確かに、戦車もねえのに戦車道は出来ねぇよな。じゃあ。歩兵道で良いぜ! お前がウチの戦車と歩兵の連中を叩きのめす事が出来たら、さっき言った通りに詫び入れてやるぜ!!」

 

「………その言葉に二言は無いな?」

 

完全に木曾を見下した様子でそう言う晴風だったが、木曾は静かにそう言い放つ。

 

「ああ、ねえぜ! じゃあ、準備が出来たら、この先の草原に来な! まあ、逃げたって一向に構わねえぜ………ハハハハハハハッ!!」

 

晴風の高笑いを残し、3輌のIS-3と不良達は去って行く。

 

「長宗我部殿!」

 

「木曾さん! 無理ですよ! 相手は戦車ですよ! それに歩兵も居るって………」

 

「私達の学校はもう何10年も戦車道と歩兵道をやってないから、戦車どころか戦闘服だってないんですよ!」

 

「絶対に無理っぽいっ!!」

 

そこで木曾の周りに、あきつ丸、まるゆ、睦月、夕立が集まって来て、口々にそう言って来る。

 

「………武人ならば、危険を顧みず、死ぬと分かっていても行動しなくてはならない時がある。負けると分かっていても、戦わなくてはならない時がある」

 

だが、木曾はそう言い放ち、退く様子を見せない。

 

「木曾さん………」

 

そんな木曾の姿を、まるゆは不安げに見上げる。

 

「ど、如何しよう………」

 

「加勢したいところですが、戦車が………」

 

「今から学園に取りに戻っては時間が掛かってしまいます」

 

一方、大洗の一同は、冥桜に加勢したいと考えているが、肝心の戦車や武器がこの場に無く、戦闘服も無いので如何する事も出来ない。

 

他校の面々も同様である。

 

(何か手は………)

 

弘樹も、何か手は無いかと必死に頭を回転させる。

 

と、その時………

 

「話は聞かせてもらったわ!」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

突然後ろからそう言う声が聞こえて来て、一同が振り返ると、そこには………

 

「! 絹代さん!?」

 

「西総隊長っ!?」

 

背中に『祭』と書かれた法被を纏い、頭に捩り鉢巻を巻いている絹代の姿が在った!

 

「! 西隊長!」

 

一方、長門も絹代の姿を見て、驚きの声を挙げる。

 

「長門さん。この勝負………義によって助太刀させてもらうわ!」

 

そんな長門に、絹代はそう言い放つ。

 

「何っ?」

 

「『アレ』を使う良い機会だと思ってね」

 

「! 完了したのか!?」

 

「ぶっつけ本番になるけど、まあ大丈夫よ、『彼女』なら」

 

何やら気になる単語を交えながら、絹代と長門がそう言葉を交わす。

 

「西総隊長、一体何の話ですか?」

 

とそこで、弘樹が絹代にそう質問した瞬間………

 

またもや、戦車の履帯とエンジンの鳴る音が響いて来た。

 

「わあっ!? また来たの!?」

 

「!? いえ、違います! このエンジン音は!?」

 

沙織が慌てるが、優花里は興奮した様子を見せる。

 

その直後………

 

人混みを避けながら、1人の知波単学園の戦闘服を着た男性をタンクデサントさせていた戦車が、大洗と他校、冥桜学園の生徒達の元へやって来た。

 

「やっぱり! ティーガーⅠです!!」

 

その戦車が、ティーガーⅠである事を確認した優花里が、そう声を挙げる。

 

「お久しぶりです、舩坂さん」

 

と、そのティーガーⅠにタンクデサントしていた戦闘服の男性が降りて来ると、弘樹に向かってそう挨拶した。

 

「! 『ライ』か! と言う事は………」

 

「弘樹!」

 

弘樹がその男性の事を『ライ』と呼ぶと、ティーガーⅠの操縦席のハッチが開いて、赤い特徴的に跳ねた髪型にバンダナをした知波単学園のパンツァージャケットを着た少女が姿を見せる。

 

「やはり『カレン』か」

 

「久しぶり! 元気そうだね!!」

 

かなり親しげな様子で弘樹に話しかける『カレン』と呼ばれた少女。

 

「お前達も知波単に居たのか? 練習試合の時には見かけなかったが………」

 

「いえ、最近転校して来たんですよ」

 

「前はマジノの方に居たんだけど………」

 

「マジノに? しかし、あそこは防御主体の戦術を柱にしていた筈………お前のやり方とは合わないんじゃないのか?」

 

「親が行けって煩くてさぁ………でも、エクレールって子が改革を目指して新たに総隊長になって、機動力を主体とする騎兵戦術に変わろうとしていたの。だけど………」

 

「そのエクレールさんと伝統を急激に変えるのに反発した3年生全員と1・2年生数名に亀裂が生じてしまって………」

 

「マジノはお嬢様の学校だから、アイツ等エクレールの奴に陰湿なイジメをしたのよ」

 

「オイ、まさか………」

 

そこで弘樹は、何かを思い至った顔になる。

 

「ええ、お察しの通り………カレンがその反発していた生徒達全員を叩きのめしちゃったんですよ」

 

「やれやれ………」

 

「仕方ないでしょう! 見てられなかったんだから!!」

 

弘樹が呆れた様に肩を竦めると、カレンがそう声を張り上げる。

 

「まあ、それでカレンが悪者になっちゃって、結果的にチームは再び纏まったんですけど………流石にマジノには居られなくなって、西総隊長が声を掛けてくれたんで、知波単に転校したんです」

 

「全く、お前らしいな」

 

「あ、あの、弘樹くん。その人達は?」

 

とそこで、みほが弘樹にそう尋ねる。

 

「ああ、すまない。紹介が遅れたな。シメオンや西総隊長達と同じ、小官の戦友の『神楽坂 ライ』と『紅月 カレン』だ」

 

「ライです。初めまして」

 

「カレンだよ。よろしくね」

 

弘樹はそう言って、男性・『神楽坂 ライ』と女性・『紅月 カレン』を紹介する。

 

「凄いイケメン~!」

 

「カッコイイ~ッ!」

 

ライを見た1年生チームが、その美形ぶりを見てそんな声を挙げる。

 

「おお、凄いオッパイ………!? ぐへっ!?」

 

「お前もホンットに懲りない奴だな」

 

一方で、カレンの中々豊満なバストを見た了平が下衆に笑い、地市が制裁を入れる。

 

「ところで、このティーガーは如何したんだ?」

 

そこで弘樹は、カレンとライが乗って来たティーガーⅠを見ながらそう尋ねる。

 

「砲塔を見てみて」

 

「?………コレは」

 

カレンに言われて、弘樹がティーガーⅠの砲塔を見やると、そこには日の丸が描かれていた。

 

「このティーガーは旧日本軍がドイツから輸入した物よ」

 

「ええっ!? 確かに、旧日本軍がティーガーの輸入を計画していましたが、戦況悪化で海路を押さえられて立ち消えになった筈じゃ!?」

 

カレンがそう説明すると、優花里が旧日本軍のティーガー輸入計画を思い出してそう声を挙げる。

 

「いえ、実際には輸入されていたのよ。非公式な記録だけど、ミャンマー………当時の『ビルマ』で英軍の戦車を相手に戦ったって」

 

「その後、日本にまで運ばれましたが、そこで終戦となり、連合軍に接収される事を惜しんだ日本軍が、この学園艦の奥深くに隠したそうなんです」

 

「!? そうなんですか、長門さん!?」

 

「そんな話、聞いた事無いっぽい?」

 

ライの説明を聞いた吹雪と夕立が、長門にそう問い質す。

 

「………お前達も知っている通り、この学園は戦車道や歩兵道から遠ざかっていた。だからそのティーガーの事も誰も触れない様にして、今では極一部の者にしか伝えられていなかった」

 

「けど、知波単にも旧日本軍の色々な記録の書類が残されていてね。その中にこのティーガーの事も書かれていたのよ」

 

長門がそう説明すると、絹代がティーガーの車体に手を置きながらそう言う。

 

「我々にとって、戦車は忌まわしい記憶を呼び覚ます物だ。だから、西総隊長が引き取ってくれると言った時は正直助かった」

 

「長年放置されてたから、大分痛んでてね。整備しようにも運び出すのも容易じゃないから、仕方なく此方から出向いて手入れをしてたのよ」

 

「成程………旧日本軍のティーガーか………ん?」

 

とそこで、改めてその旧日本軍のティーガーを見やった弘樹が、とある事に気づく。

 

「コレは………『倒福』?」

 

ティーガーの車体横に、逆さまに張られた福の文字が在った。

 

中国で幸運を呼ぶとされる、所謂まじないである。

 

「ああ、それなら最初から入ってたわよ」

 

「気にはなったんですけど、縁起は良いモノですから、特に問題無いと思って………」

 

「倒福と日の丸を持つティーガーか………」

 

何か思うところが有る様に、弘樹はそのティーガーを見やる。

 

「ですが、相手はあのIS-3。それも3輌も居るのですよ。きっと歩兵も多数居ます。幾らティーガーと言えど、1輌では………」

 

「では、我等が助太刀致そう」

 

と、優花里がそう言った瞬間、そう言う声が聞こえて来た………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

遂に開催されたカレー大会。
原作通り、カオスな内容となっています。
比叡と足柄のネタは、個人的に受け入れられなかったので、変えさせてもらいました。
しかし、最後の最後のところで、何と木曾達のチームが乱入!
優勝を掻っ攫いか?

………と、思われた瞬間に、木曾にやられた不良達が、レディースの総長を引き連れて仕返しに!
冥桜学園生徒としての誇りを逆手に取り、卑怯な勝負を仕掛ける晴風だったが、そこへ来ていた絹代が助太刀する!

新たに弘樹の旧友キャラが出ましたが、カレンの方はご存じコードギアスのキャラです。
何故旧友にしたかと言いますと、後々の劇場版の事で、知波単に副隊長ポジションのキャラが欲しかったので、スパロボでキリコとカレンが仲が良かったのを思い出し、キリコモチーフの弘樹の旧友で絡ませられると言う思いもあり、参戦してもらいました。

ライと言うキャラの方は、コードギアスのゲーム『LOST COLORS』の主人公キャラでして。
私このキャラとカレンのカップリング、俗にいう『輻射波動夫婦』が大好きでして。
カレン出すなら、やっぱりライも出したいと思い、丁度知波単に名有りの歩兵を入れたいとも考えていたので、御登場願いました。

そして、そのカレンの愛車ですが、何とティーガーです。
最初は、練習試合で出した五式辺りにしようかと思ったのですが、原作でのカレンの強さを見て、もっと強力なヤツが良いと思い、WOTで知った日本軍のティーガー輸入計画を思い出し、じゃあティーガーにしようと。
そして、そのティーガーに付けられている『倒福』のマークですが………
恐らく、ガルパンおじさん達にはお分かりでしょう。
そう、あのタイガー(敢えてこの呼び方)です!
輸入ティーガーを使おうと思った時に、丁度あの作品のティーガーも日本軍として戦っていたなと思い、やっちゃいました。
実はこのティーガー以外にも、あの作品を思い起こさせる物が登場しています。
次々回辺りで明らかになりますのでお楽しみに。

最後に現れた援軍の人ですが、口調から予想のつく方も居るでしょう。
でも、『アイツ等』の登場は流石に読めないと思います。
楽しみにしていて下さい。


長くなりましたが、では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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