ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第147話『夏祭りです!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第147話『夏祭りです!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白狼の行方を知る為に訪れた冥桜学園で………

 

遂にそれを知る人物、『斉藤 足柄』と出会ったあんこうチーム。

 

しかし、足柄は只で教える事が出来ないと言い、今度の日曜日………

 

冥桜学園の夏祭りで開かれるカレー大会に出場するチームに助っ人に入り………

 

そのチームで優勝出来たら教える、と言う条件を出して来た。

 

漸く掴んだ白狼の行方の手掛かりを諦めるワケには行かないと………

 

あんこうチームは其々に、参加チームへ助っ人として参戦を決意する。

 

そしてその中で………

 

優花里は4つ子の姉妹、『鬼庭 暁』、『鬼庭 響』、『鬼庭 雷』、『鬼庭 電』から成る………

 

『第六駆逐部隊チーム』に参戦するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冥桜学園女子寮・離れにあるキッチン………

 

漸く図書館でカレーの作り方を調べ終わった第六駆逐部隊チームと優花里が、キッチンへと戻って来ていた。

 

カレーの作り方は一般的には、野菜(じゃがいも、にんじん、たまねぎ)の皮を剥き、食べやすい一口大サイズに切っておく。

 

お肉は事前に炒めて、次に玉ねぎも一緒にあめ色になるまでひたすら炒める。

 

続いて、深手のお鍋に切ったジャガイモ、にんじんを炒め、先程炒めた肉と玉ねぎを入れて、水を加え沸騰させる。

 

沸騰したら灰汁を取り、約15~20分煮込む。

 

煮込み終えたら火を止め、ルウを割り入れながら溶かす。

 

そして再び火をつけ、弱火でとろみがつくまで煮込めば至ってスタンダードなカレーライスの出来上がりである。

 

「それじゃあ!………」

 

「作り方も分かったし、作るわよ!」

 

暁が音頭を取ろうとしたところ、それを遮る様に雷がそう宣言した。

 

「ちょっと! 勝手に仕切らないでよ! それは長女である私の仕事でしょ!!」

 

「良いから、私に任せれば良いのよ!」

 

「もう! だから喧嘩は止めるのです~~~~っ!!」

 

そのまま暁と雷が口論になりかけたが、それを見た電が両腕を振り回して制止する。

 

「本当に大丈夫なのでありましょうか………」

 

「…………」

 

その光景を見て、またもや不安になる優花里と、無言で肩を竦める響だった。

 

 

 

 

 

そんなこんなありつつも、如何にか第六駆逐部隊チームと優花里のカレー作りが始まる。

 

優花里は肉を炒める係。

 

雷と電はジャガイモの皮むき。

 

そつなくこなず雷に対し、電は実を削ぎながら皮を剥いてしまい、最後には一口サイズのじゃがいもだけが残った。

 

暁は玉ねぎを剥いて切るものの、玉ねぎと言えばやはり言わずもがな………

 

暁は切りながら涙を流している。

 

玉ねぎは、成分である硫化アリルが鼻から涙腺に刺激し、涙を流してしまうというが、そうとは知らずに玉ねぎの被害を受けた人達は大勢いるだろう。

 

響の方は、にんじんの皮を剥いた後、一口大に包丁で切っていたが、誤って指を切ってしまい、暁達が急いで救急箱を持って治療した。

 

「さ! 後はこのまま良く煮て、具材が柔らかくなるのを待つだけよ!」

 

「ふう~~、やっとでありますかぁ」

 

色々あったが、漸く役割を果たし、鍋に入れ水を加え、煮えるまで待っている状態となる。

 

「シンプル・イズ・ベストね」

 

「実にハラショーだ」

 

「そして良く煮えたら、1度火を止めて、カレー粉を溶かすのです」

 

鍋を見守りながら、具材が煮えるのを待つ第六駆逐部隊チームと優花里。

 

「ま、まだ煮えないのかしら?」

 

「いやいや、暁殿。まだ1分も経ってないでありますよ」

 

と、待つのが苦手なのか、暁がそんな事を口にし、優花里がツッコミを入れる。

 

「そんなに早く火は通らないわ」

 

「なら、もっと強い火力で………」

 

するとそこで、雷と響がそんな事を言い合う。

 

「でも、コレ以上強い火力なんて………! あ! 有るのですっ!!」

 

と、電が何かを思い出した様に声を挙げる。

 

「ああ、アレね!」

 

「成程! アレなら行けるかも!!」

 

「うん………」

 

「えっ? 何でありますか?」

 

暁、雷、響も電が思い出した事を察するが、優花里は首を傾げる。

 

「行くわよ! 皆!!」

 

「だから、仕切らないでよーっ!!」

 

しかし、第六駆逐部隊チームはそんな優花里には応えず、具材の入った鍋を抱えて何処かへと向かう。

 

「あ! 待って下さいっ!!」

 

優花里は慌ててその後を追うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冥桜学園・たたら場………

 

第六駆逐部隊チームと優花里がやって来たのは、刀剣の材料となる玉鋼を製鋼しているたたら場だった。

 

「こんな所で、一体?………! ま、まさか!? 鍋をたたら炉で熱する気では!?」

 

「そんな事しないわよ!」

 

「そうよ! 刀剣作り修行をしている生徒の人達に怒られちゃうじゃない!」

 

優花里がまさかとそう言うが、暁と雷から否定の返事が返って来る。

 

「ああ、良かった………」

 

「使うのはコッチなのです!!」

 

安堵の息を吐く優花里だったが、そこで電が持って来たのは、火炎放射器だった!!

 

「ええっ!? 何でたたら場に火炎放射器が!?」

 

「炉の温度を一気に上げたい時に使ってるんだ………」

 

驚愕する優花里に、響が淡々とそう説明する。

 

「準備完了なのです!」

 

「それじゃあ、高速クッキング………開始!」

 

「あ! 待って下さいっ!!」

 

唖然としている間に火炎放射器が鍋に向けられ、慌てて止めようとした優花里だったが、時既に遅く、火炎放射器から放たれた猛火が鍋を包み込んだ!

 

「完成なのです!………!? あっ!?」

 

そこで電が見たのは、ボロボロに焦げた鍋………

 

いや、『鍋であった物』の残骸だった。

 

当然、具材も一緒に焼失している………

 

「そりゃそうですよ………」

 

鍋であった物の残骸を見ながらそう呟く優花里。

 

「暁が煮えるのを待てないから………」

 

「あ、暁のせいだって言うの!?」

 

「最初っから私に任せておけば良いのよっ!」

 

「何ですって! 夏祭りカレー大会に出るって決めたのは暁の方なのよっ!!」

 

そこで再び、暁と雷の口論が始まってしまう

 

「ま、まあまあ! 失敗は誰にでもありますからここは穏便に………」

 

「ふ、2人とも悪くないのです! 変な事を思いついちゃった、電が悪いのです………」

 

優花里が止めに入ろうとするが、そこで今度は電が泣き出す。

 

「ああ、電殿! 泣かないで下さいっ!!」

 

「だいだい雷はいつも出しゃばりなのよ! 暁の方がお姉さんなんだからねっ!!」

 

「そのお姉ちゃんが頼りないから私が頑張ってるじゃないっ!!」

 

電を慰めようとする優花里だったが、その間にも暁と雷の口論はヒートアップして行く。

 

「あうう………どうすればいいんでありますか~~~~っ!! 西住殿おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!」

 

手の付けられない状況となり、優花里は思わずみほの名を叫んだ。

 

と、その瞬間!!

 

「………てい」

 

「あう!」

 

「キャッ!?」

 

「ふにゃ!」

 

「はわっ!?」

 

突如響が、暁、雷、電、優花里の頭を軽く叩いた。

 

「少し落ち着こう………」

 

「「「「響ちゃん(殿)」」」」

 

「第六みんなで優勝目指すんだろう? 昔、白狼も言ってたじゃないか。信じ合うこそが本当の仲間という証だって」

 

「! 神狩殿が!?」

 

響の口から白狼の名が出た事に驚く優花里。

 

「………そうね。皆で1人前のレディーを目指すんだもんね」

 

「ちょっと熱くなり過ぎちゃってたかも」

 

「反省なのです………」

 

それを聞いた暁、雷、電が反省の色を見せる。

 

(響殿が1番落ち着いているでありますな………って言うよりも、私が1番年上だったのに………諭されてしまったであります)

 

4人の中で1番長女らしい響の様子を見ながら、場を納める事が出来なかった事に優花里は自己嫌悪する。

 

「でも、鍋は如何する? これじゃあ、とても代わりが欲しいなんて言えないわ」

 

「「「う~ん………」」」

 

「でしたら、大洗の皆さんに………」

 

鍋を如何すると言う話になり、第六駆逐部隊チームが悩んでいると、優花里が大洗の皆に助力を得ようとするが………

 

そこで、たたら場の入り口が開かれた。

 

「「「「「??」」」」」

 

その音に反応して、第六駆逐部隊チームと優花里が入り口の方を見やると、そこには………

 

オレンジのつなぎ作業服に溶接マスクを付けた怪しい人物が2人立っていた!!

 

「「「「キャアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!?」」」」

 

「だ、誰ですかっ!?」

 

悲鳴を挙げる第六駆逐部隊チームと、その人物に向かって問い質す優花里。

 

「ちょっ! 待ってよ!」

 

「私達ですよ!」

 

するとそこで、2人の人物は溶接マスクを上げて顔を見せる。

 

「ゆ、『夕張』さん………」

 

「『明石』さんも………」

 

電と雷が、その2人が刀剣作りに参加している生徒………『黒田 夕張』と『牧野 明石』である事に気付く。

 

「お、驚かさないでよっ!!」

 

「ゴメンゴメン」

 

「刀剣錬成の自主練習してたもんだから」

 

(刀剣と言うよりは、何か機械的な物を作って居そうな姿でありますが………)

 

夕張と明石がそう謝っていると、優花里は心の中でそんなツッコミを入れる。

 

「それで、皆は何してるの?」

 

「見たところ、玉鋼の製鋼って感じじゃなさそうだけど………」

 

「えっと、実は………」

 

そう尋ねられた電は、事情を説明する。

 

「成程………そうでしたか」

 

「そう言う事ならお姉さん達に任せなさい!」

 

「「「「「本当(でありますか)!?」」」」」

 

事情を聞いた明石と夕張はそう言い、第六駆逐部隊チームと優花里の目に希望が戻る。

 

「刀剣作りの要領で、鍋も作って上げるわ」

 

「それも飛び切り上等な物をね」

 

明石と夕張はそう言い合い、早速鍋作りに取り掛かるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「出来たわ!」

 

「早っ!?」

 

ものの数分で出来上がったと言う声が挙がり、優花里が驚きの声を挙げる。

 

2人の言葉通り、そこにはまるで刀剣の様な輝きを放つ鍋が出来上がっていた。

 

「「「「おおお~~~~~っ!!」」」」

 

「上等の玉鋼をふんだんに使いましたから」

 

「ちょっとやそっとじゃ壊れない、最高の鍋よ!」

 

(玉鋼で鍋って………)

 

鍋を見て感動した様子を見せる第六駆逐部隊チームに、誇らしげにそう語る明石と夕張に、心の中でツッコミを入れる優花里。

 

「「「「ありがとうございますっ!!」」」」

 

「いえいえ! こういう事なら、私達にお任せ下さい!」

 

「後で感想聞かせてね!」

 

明石と夕張がそう言われながら、第六駆逐部隊チームと優花里はたたら場を後にした………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてそのままキッチンに戻るかと思いきや………

 

何故か甘味処・間宮を訪れていた。

 

「美味しいカレーの作り方?」

 

「「「「ハイ!」」」」

 

「是非、ご教授下さい」

 

間宮にそう尋ねる第六駆逐部隊チームと優花里。

 

如何やら、味を高める為に、間宮にアドバイスを貰いに来た様だ。

 

「そうね………愛情と言う名のスパイスかしら?」

 

「武部殿も良く言っておられます」

 

間宮がそう言うと、優花里が沙織もそんな事を良く言っていたのを思い出す。

 

「「「「そう言うのは良いです」」」」

 

しかし、意外にも第六駆逐部隊チームはリアニストだった。

 

「い、意外と現実的なのね………」

 

そんな第六駆逐部隊チームの姿に、間宮は苦笑いするのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冥桜学園女子寮・離れにあるキッチン………

 

その後、自分達なりに試行錯誤を重ね、カレーの味を高めようとした第六駆逐部隊チームと優花里。

 

しかし、全員が粗料理の素人である為、早くも行き詰まりを感じて始めていた。

 

「もうやだ! やってらんなーいっ!!」

 

「あ、暁殿!」

 

突如そう声を挙げた暁に、優花里が狼狽する。

 

「もう………止めちゃおっか」

 

「「「…………」」」

 

その暁の意見に、雷達は反対する様子を見せない。

 

彼女達も限界を感じ始めていたのだった………

 

「み、皆さん!………」

 

「努力に憾みなかりしか!」

 

と、優花里が何か言おうとしたところ、それを遮ってそう言う声が響いた。

 

「! 長門さん!」

 

声がした方を向いた暁が、キッチンの出入り口に立つ長門の姿を認める。

 

「詳しくは聞くまい………だが、諦めるか?」

 

「「「「…………」」」」

 

長門の問いに沈黙で返す第六駆逐部隊チーム。

 

「それも良いだろう………十分に努力したと、胸を張って言えるのならな」

 

「そんなの………言えるワケないじゃない!」

 

「そうよね! 1度や2度の失敗で諦めてたら、武道なんで出来ないもの!」

 

「不死鳥の様に、立ち上がるまで」

 

「まだ試していない事は山程有るのです」

 

まるで激励するかの様な長門の言葉に、第六駆逐部隊チームの心が再び燃え上がる。

 

「私達は、必ず勝つわ!」

 

「微力ながら、お力添えさせていただきます!」

 

暁がそう言うと、優花里も敬礼しながらそう言う。

 

「フッ………」

 

そんな第六駆逐部隊チームと優花里の姿を見て、長門は微笑むと、その場から去って行ったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして時はアッと言う間に流れ、日曜日………

 

冥桜学園の夏祭りの日………

 

冥桜学園の甲板都市………

 

カレー大会の様子を観戦すべく、大洗歩兵部隊の面々が、甲板都市に足を踏み入れていた。

 

「コレは凄い活気だな………」

 

夏祭りムード一色に染まっている甲板都市の様子を見て、弘樹がそう呟く。

 

「話によれば、学園艦の半分が祭会場となり、屋台も多数出るらしいね」

 

「コレだけデカイ学園艦の半分がかよ………スケールがデケェなぁ」

 

迫信が説明する様にそう言うと、俊がスケールの大きさに圧倒される。

 

「お待たせ~」

 

とそこで、杏の声が響いて来て、大洗歩兵部隊の一同が振り返ると、そこには………

 

全員が浴衣姿となっている大洗戦車チームの面々の姿が在った。

 

「Ohー! ビューティフォーッ!」

 

「ジャパニーズユカタネ!」

 

その戦車チームの面々を見て、ジェームズとジャクソンがそう歓声を挙げ、他の大洗歩兵部隊の面々も多種多様な反応を見せる。

 

「お兄様」

 

「おお、湯江」

 

とそこで、湯江が弘樹の元に歩み寄って来る。

 

浴衣姿のみほのを手を引いて………

 

「あ………」

 

湯江によって半ば無理矢理に弘樹の前に引き出されたみほは、頬を染めて沈黙する。

 

彼女の浴衣は水色の生地に、赤と青の花が入れられ、黄色い帯をあんこうの帯留めで止めている。

 

「流石だな、湯江。上手く着付けが出来ている」

 

「これぐらい当然ですよ」

 

湯江に向かって弘樹がそう言う。

 

如何やら、湯江が着付けを担当した様である。

 

「それよりもお兄様。みほさんに言う事が有るのではないのですか?」

 

「? 言う事?」

 

湯江にそう言われ、弘樹は首を傾げる。

 

「もう! この浴衣、みほさんに似合ってますか!?」

 

「ゆ、湯江ちゃん………」

 

朴念仁な弘樹に痺れを切らした様にそう言い、みほは縮こまる。

 

「ふむ………」

 

そう言われて、弘樹は改めて浴衣姿のみほを見やる。

 

「え、えっと、弘樹くん………如何、かな?」

 

「ああ………似合っているぞ」

 

「! そ、そう………」

 

只それだけの言葉だが、それだけでみほはとても嬉しく、益々真っ赤になって、頭から湯気を上げる。

 

((((((((((甘酸っぺぇ………))))))))))

 

そしてそんな弘樹とみほの様子を見て、そんな思いを抱く大洗機甲部隊の一同。

 

「兄貴! 早く行こうよ!!」

 

「お兄ちゃんも早く早く!」

 

とそこで、同じく浴衣姿の遥とレナが姿を見せ、大河と清十郎にそう呼び掛ける。

 

「分かった分かった。そないに慌てんな」

 

「お祭りは逃げたりしないよ」

 

「では、カレー大会が始まるまで、祭の様子を見て回るとしようか」

 

大河と清十郎がそう返すと、迫信がそう言って、大洗機甲部隊の一同は、祭の中へと繰り出して行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ! ねえ! アレやろうよっ!!」

 

少し歩いていると、桂利奈がとある屋台を指差してそう言う。

 

「金魚すくいか………」

 

それは金魚すくいの屋台だった。

 

祭の規模がデカいだけに、金魚すくいの屋台も半端では無く………

 

横幅が10メートル近くある巨大な水槽が鎮座しており、大量の金魚が優雅に泳いでいる。

 

「わー! 凄いっ!!」

 

「やろうやろう!」

 

あやとあゆみがそう言って屋台に向かい、ウサギさんチームとハムスターさん分隊の面々が金魚すくいに挑戦する事になる。

 

「コレは………一体如何やるのデスか?」

 

と、金魚すくいを初めて見たジェームズが、そんな声を挙げる。

 

「あ、そっか。アメリカには金魚すくいなんてないもんね~」

 

「ほら、モンローくん。このポイって言うのを使ってね………」

 

優季がそう言うと、梓が店主から貰ったポイを水に沈め、紙が破けない様にしながら金魚を掬い上げ、御椀の中に入れる。

 

「こんな風にして、紙が破けない様に金魚を掬うんだよ」

 

「熟練すればこの様な事も可能だ………」

 

と、梓がそう言っていると、何時の間にか参加していた迫信が、既に御碗5杯に金魚を満杯にしながらそう言う。

 

「「「「「「「「「「おおお~~~~~っ!!」」」」」」」」」」

 

「流石は会長!」

 

(この人、ホントに何でも出来るな………)

 

その様子に見物客から歓声が挙がり、清十郎が手放しで褒めている横で、内心で半ば呆れている逞巳。

 

「D、DIFFICULTですね………でもやってみマス!」

 

ジェームズ、金魚すくいに初挑戦。

 

ポイを水中に沈めると、慎重に動かしながら、金魚を乗せて掬い上げる。

 

「ヤッタ!」

 

成功したかに思われた瞬間!

 

紙が破れ、金魚は水槽に落下した!

 

「ア!」

 

「惜しかったねぇ、外人の兄ちゃん」

 

思わず声を挙げるジェームズに、屋台の店主がそう言う。

 

「Oh………」

 

ガッカリするジェームズ。

 

するとそこで、新しいポイが横から差し出された。

 

「!」

 

「付き合うよ。出来るまでやろう」

 

それを差し出したのは竜真だった。

 

彼も、自分用のポイを手に持っている。

 

「トウマ………THANK YOU VERY MUCH」

 

竜真にお礼を言うと、一緒に挑戦を再開するジェームズだった。

 

「よおし! 俺も良いとこ見せてやる!!」

 

と、女性陣に良いとこを見せたい了平が、気合十分な様子で挑戦を始める。

 

「………! そこだぁっ!!」

 

ニュータイプの様に額の辺りで電撃を走らせたかと思うと、勢い良くポイを水槽に入れ、金魚を掬い上げる。

 

しかし、勢いに余ったのか、金魚がポイの上からスッ飛ぶ!!

 

「キャアッ!?」

 

そしてその金魚が、沙織の浴衣の首元から胸の中へと飛び込んだ!

 

「や、やだ! あんっ!? そ、そこは駄目! あううっ!?」

 

飛び込んだ金魚が暴れ、沙織が色っぽい悲鳴を挙げながら悶える。

 

「うおおっ!? 堪りませんなぁ~………ゲボッ!?」

 

その様に了平は歓喜の声を挙げたが、その瞬間に後頭部を鷲掴みにされて、金魚の水槽に顔を突っ込まれた!

 

「俺のこの手が光って唸る! お前を倒せと輝き叫ぶ!」

 

「ガボガボガボッ!?」

 

鷲掴みにしている人物・地市が、そんな口上と共に更に了平の顔を水槽に水没させて行く。

 

「地市さん! それ以上は駄目です! 本当に死にますよっ!!」

 

本当に了平を殺しかねない勢いの地市を、楓が慌てて止める。

 

「さ、取れましたよ」

 

「ありがとう~、華~」

 

一方、問題の金魚は、華の手によって回収されていた。

 

と、そこで………

 

「アラ? ひょっとして、みほじゃない?」

 

「えっ?」

 

不意にそう声を掛けられて、みほが振り返るとそこには………

 

「やっぱり! 凄いBy CHANCEね!」

 

「な、何でアンタ達がこの学園艦に居るのよ!?」

 

「アリサ、落ち着け………」

 

浴衣姿のケイ、アリサ、ナオミ………

 

サンダース戦車部隊の面々の姿が在った。

 

「! ケイさん!」

 

「久しぶり! この前、あの西部を破ったそうじゃない! 流石はミラクルみほね!! ところで、何でこの学園艦に?」

 

「実は………」

 

みほは、ケイ達に事情を説明する。

 

「へえ、そうだったの………」

 

「ハッ、逃げ出した歩兵1人の為に、随分と世話を焼くじゃない」

 

「! 神狩殿は逃げ出したワケではありません!」

 

ケイが頷いていると、アリサがそんな皮肉を飛ばし、優花里が空かさず反論する。

 

「居なくなったのは事実でしょう。それが逃げ出したと言わず………」

 

「止せ、アリサ」

 

皮肉を続けるアリサだったが、ナオミが止めに入る。

 

「ちょっと! 何で止めるのよ!」

 

「周りを見て見ろ………」

 

「えっ?………」

 

ナオミにそう言われて、アリサが周囲を見渡すと………

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

殺気立った大洗歩兵部隊の面々が、アリサに刺す様な視線を向けていた。

 

「!? ヒイッ!?」

 

「コレ以上は本当に命が危ないぞ」

 

途端に顔を真っ青にするアリサに、ナオミはそう忠告する。

 

「ゴメンナサイね、またアリサが………」

 

「いえ、大丈夫です。神狩さんは必ず戻って来てくれますから」

 

みほに謝るケイだったが、みほは笑ってそう返す。

 

「ありがとう………あ! 小太郎ーっ!!」

 

とそこでケイは、小太郎の姿を発見し走り寄る。

 

「ケイ殿」

 

「小太郎! 一緒に屋台巡りしましょう!」

 

「ええ、構わぬで………!? ござるううううううぅぅぅぅぅぅぅーーーーーーーーっ!?」

 

ケイから誘いを受ける小太郎だったが、返事をしていた最中に、何かに気付いた様に大声を挙げる。

 

「What’s happened? 如何したの小太郎」

 

「ケケケケケケ、ケイ殿ぉっ!! 何故肌着を付けておらぬのでござるかぁっ!?」

 

首を傾げるケイに、小太郎は絶叫しながらそう問い質す。

 

そう………

 

実は今のケイ………

 

下着を付けていないのである。

 

その証拠に、浴衣のその豊満なバスト部分に『アレ』がハッキリと浮き出ていた………

 

「えっ!? だって、浴衣や着物の時は下着を付けないんでしょう?」

 

「いやいや! それ、間違ってるから!!」

 

さも当然の様にそう返すケイに、沙織のツッコミが飛ぶ。

 

「もう! そんな事より、早く行きましょうよ!!」

 

と、そこでケイは、小太郎の腕を取った。

 

それは即ち、ケイの豊満なバストが、小太郎の腕に布1枚越しに………

 

「!? サヨナラッ!!」

 

途端に小太郎は爆発四散した様なアトモスフィアを醸し出し、盛大に鼻血を噴いて倒れた!

 

「!? 小太郎!? 如何したの!?」

 

「………大惨事だな」

 

慌てて倒れた小太郎を揺さぶるケイと、辺り一面に小太郎の鼻血が撒き散らされている様子を見て、大詔がそう呟く。

 

さながら何かの事件現場の様だった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後………

 

「あ、頭がクラクラするでござる………」

 

「大丈夫、小太郎?」

 

貧血気味の鼻にティッシュを詰めた小太郎に、心配そうに寄り添っているケイ。

 

因みに、アリサ達から言われ、(渋々ながら)現在は下着を着用している。

 

大洗機甲部隊の一同は、ケイ達を加えて、屋台の並んでいる通りを更に散策している。

 

「ねえ、ノンナ~! まだなの~!」

 

「申し訳ありません、カチューシャ! ですが、どうしても! どうしてもアレだけは!!」

 

「! この声は………」

 

とそこで、聞き覚えのある声が聞こえて来て、みほがその方向を見やると、そこには………

 

「店主! もう1回です! 今度こそ必ず………」

 

「ノンナ~」

 

射的の屋台で、鬼気迫ると言った表情でライフル型のコルク銃を構えているノンナと、そのノンナの横で退屈そうにしているカチューシャの姿が在った。

 

尚、2人とも浴衣姿である。

 

「カチューシャさん!」

 

「アレ? ミホーシャ?」

 

みほが声を掛けると、カチューシャは大洗機甲部隊の一同の姿に気づく。

 

「今度こそ………」

 

しかし、ノンナの方は射的に夢中になっており、気づいていない。

 

「ど、如何したの、ノンナさん?」

 

「アレよ………」

 

そんなノンナの事を沙織が尋ねると、カチューシャはそう言い、射的の景品が並んでいる棚の一角を指差した。

 

そこには、『10分の1モデル ブルーティッシュドッグ(ファンタム・レディフィギュア付き)』と言う、ノンナからしてみれば喉から手が出る程欲しい代物があった。

 

「成程ね。それで夢中になっているワケか………」

 

「もう~! 私もやりたいのに~!!」

 

圭一郎が納得が行った様な顔になると、カチューシャが地団駄を踏む。

 

如何やら、彼女の身長では、手前の台に遮られて、射的が出来ない様だ。

 

「もう1回です!」

 

しかし、ノンナはそんなカチューシャの様子には気づかず、新たなコルクを購入する。

 

「ぶう~~~」

 

頬を膨らませて不満をアピールするカチューシャ。

 

すると………

 

「!? キャアッ!?」

 

不意に、その身体が何者かに持ち上げられた。

 

「…………」

 

陣である。

 

不満そうなカチューシャを見ていられなくなったのか、両脇に手を添えて、子供を抱き上げるかの様にして台に付かせる。

 

「ちょっ、ちょっと! 何勝手な事してるのよ!!」

 

「?………」

 

しかし、カチューシャは不服そうな様子を見せ、陣は困惑した様子を見せる。

 

「カチューシャは子供じゃないのよ! こんな持ち上げ方、失礼じゃないっ!!」

 

両腕をバタバタと振ってそう言うカチューシャ。

 

「…………」

 

陣はでは如何すれば良いのかと言う顔をする。

 

「仕方ないわね………特別にカチューシャを肩車する権利を挙げるわ! 光栄に思いなさい! ノンナ以外は貴方が初めてなんだから!」

 

そこでカチューシャは、偉そうな様子を見せてそう言う。

 

するとそこで………

 

「…………」

 

陣は屈み込むと、自分の右肩にカチューシャを座らせる様に乗せた。

 

「! えっ!?」

 

コレにはカチューシャも驚きの声を挙げた。

 

カチューシャが小柄であり、陣のガタイが相当デカいので出来る芸当だ。

 

「…………」

 

そのまま椅子代わりの様に、しゃがみ込んだまま台に付く陣。

 

陣の身長は190cmある為、しゃがんだままでも相当な高さで、カチューシャにはピッタリである。

 

(あ、コレ…………結構良いかも)

 

肩車とは違う感じに、カチューシャは満足そうな顔をする。

 

「おめでとう! 10分の1モデル ブルーティッシュドッグ(ファンタム・レディフィギュア付き)ゲットだよ!」

 

「やったっ! やりましたよ、カチューシャッ!!」

 

とそこで、遂にノンナが、目当ての景品を手に入れ、歓喜の声を挙げながらカチューシャに声を掛ける。

 

「もっと右に行って! ああ、行き過ぎ! 良いわ! そのままちょっと上げて!」

 

「…………」

 

そこで目に入って来たのは、陣の肩に乗って燥いでいるカチューシャの姿だった。

 

「…………」

 

その光景を見て沈黙するノンナ。

 

(何でしょう………勝った筈なのに、この敗北感は………)

 

その胸中には、勝負に勝って試合に負けた様な気持ちが渦巻いていた。

 

「どれ、我々も参加してみるか………」

 

とそこで、迫信がそう言い、大洗歩兵部隊の一同も、射的に挑戦する。

 

歩兵道で鍛え上げているだけあり、一同は次々に景品をゲットして行く。

 

中でも狙撃兵のメンバーの成績は凄まじく、特にシメオンと飛彗など、百発百中の腕前で、巨大な景品にも同じ個所に連続して命中させて揺さ振ると言うテクニックでゲットして行っている。

 

「凄いですね、飛彗さん」

 

「いえいえ、まだまだですよ………」

 

華がそんな飛彗の姿を褒めると、飛彗は謙遜する。

 

「あ………」

 

とそこで、飛彗はゲットした景品の中にとある物が有るのを発見する。

 

「華さん、ちょっと良いですか?」

 

「えっ?」

 

華が戸惑っていると、飛彗は何かを華の髪に挿した。

 

それは、藤の花を模した髪飾りだった。

 

「あ………」

 

「うん、やっぱり似合いますね」

 

髪飾りを挿した華の姿を見て、飛彗は笑いながらそう言う。

 

「あ、ありがとうございます………」

 

華はそんな飛彗を熱っぽい視線で見ながら、照れた様子を見せるのだった。

 

「チイッ! リア充め………今度こそ俺の凄さを見せてやる!!」

 

と、そんな飛彗と華の姿を呪いながら、コルクを思いっきり詰め込んだコルク銃を構える了平!

 

「そこだっ!!」

 

狙いを定めて、大き目な景品に向かって引き金を引く。

 

しかし、景品はビクともせず、逆に命中したコルクが跳ね返って戻って来る。

 

「!? はうっ!?」

 

そのコルクは運悪くみほの額を直撃。

 

みほは仰け反って倒れそうになる。

 

「!? 西住殿!?」

 

「みぽりんっ!?」

 

「きゅう~~~~………」

 

幸いにも、優花里と沙織が間一髪で両脇から支えたが、余程強く当たったのか、みほは気を失っている。

 

「あ、ヤバッ………!?」

 

思わず了平がそう言った瞬間、背後から凄まじい殺気を感じる。

 

錆びついたブリキの玩具の様にギギギギと音を立てながら振り返った了平が見たモノは………

 

「…………」

 

恐ろしい位に無表情で英霊を構えている弘樹の姿だった。

 

(あ、俺………死んだ………)

 

その弘樹の姿を見て………

 

了平は静かに………

 

自分の死を悟ったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う~~~ん………アレ?」

 

「気がついた? みぽりん」

 

みほが目を覚ますと、沙織の顔が視界に飛び込んで来る。

 

「沙織さん………」

 

意識がハッキリしたみほは、自分が長椅子に寝かされ、沙織に膝枕されている状態である事を確認する。

 

「具合は如何だ?」

 

「あ、弘樹くん。うん、大丈夫だよ………綿貫くん、如何したの?」

 

そこで、弘樹の顔が視界に入り、みほは身を起こしながらそう返すと、弘樹の傍に了平………

 

いや、かつて『了平だったモノ』が転がっているのを見てそう尋ねる。

 

「気にするな………」

 

「そ、そう………」

 

真顔で弘樹がそう言うので、みほはそれ以上追及するのを止めるのだった。

 

とそこで、周りから色々美味しそうな良い匂いが漂って来るので見回すと、この辺り一帯が食べ物関係の屋台となっているのに気づく。

 

綿あめ、焼きもろこし、たこ焼き、焼きそば、たい焼き、イカ焼き、大判焼き、お好み焼き、焼き鳥等々………

 

次々に視界に入って来る食べ物に、みほは思わずお腹が鳴りそうになる。

 

「お~い、沙織~!りんご飴買って来たぜ!」

 

「わ~! ありがとう、地市くん!」

 

とそこで、地市が両手にりんご飴を手にして現れ、片方を沙織に渡す。

 

「小官達も何か食べるか」

 

「うん、そうだね」

 

それを見た弘樹がそう言うと、みほは立ち上がって、屋台街の中へと繰り出す。

 

「何にしようか?」

 

「そうだな………」

 

歩きながら、何を食べようかと屋台を見回す。

 

「アンツィオ名物! 鉄板ナポリタンだよー! 美味しいパスタだよーっ!!」

 

「………何?」

 

「アンツィオって………」

 

するとそこで、聞いた事のある名前が聞こえて来て、弘樹とみほは声のした方向を見やる。

 

そこには、コック姿で鉄板ナポリタンを販売しているペパロニの姿が在った。

 

「アンツィオの………」

 

「あ、あの!………」

 

「ハイ、いらっしゃい! 2人前だね!!」

 

声を掛ける弘樹とみほだったが、ペパロニは2人の姿を見て即座に調理に入る。

 

「い、いえ、あの………」

 

「先ず、オリーブオイルはケチケチしなーい。具は肉から火を通すー。今朝獲れた卵をトロトロになるくらーい。ソースはアンツィオ校秘伝・トマトペースト。パスタの茹で上がりとタイミングを合わせてー………ハイ、お待ちー!!」

 

みほの声にも気づかず、ペパロニは出来上がった鉄板ナポリタンを差し出す。

 

「オイ、ペパロニ。売り上げは如何だ………って!? 西住 みほに舩坂 弘樹!?」

 

とそこで、アンチョビが屋台の中に顔を出し、みほと弘樹に気づいて声を挙げる。

 

「えっ?………あ、ホントだ!?」

 

「お前気づかなかったのかっ!?」

 

アンチョビに言われる今の今まで弘樹とみほに気づいていなかったペパロニがそう声を挙げ、アンチョビがツッコミを入れる。

 

「ドゥーチェ。今の御2人はお客様ですよ」

 

と、続いて現れたカルパッチョが、アンチョビにそう指摘する。

 

「う! そ、そうだな………2人前で600円だ」

 

「………貰おう」

 

アンチョビがそう言うと、弘樹が財布を取り出し、お金を払った。

 

「あ、美味しい………」

 

「当然だろぉ! 何たってアンツィオ校の名物だからなぁっ!!」

 

早速口を付けたみほがそう感想を漏らすと、ペパロニが自慢げにそう言う。

 

「………あの西部学園を倒したそうだな」

 

ふとそこで、アンチョビがみほにそう言って来た。

 

「あ、ハイ。何とかでしたけど………」

 

「………もうお前の戦車道が弱いだなどとは言えんな」

 

「えっ!?」

 

アンチョビからの思わぬ言葉に、みほは驚く。

 

「西住 みほ。お前の戦車道は本物だ。その戦車道で優勝して見せろ」

 

「アンチョビさん………」

 

「コイツはサービスだ」

 

そう言ってアンチョビは、みほの前にティラミスを差し出した。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「如何したんすか、姐さん。今日はヤケに気前が良いっすね」

 

「フッ………祭りの熱気に当てられただけだ」

 

ペパロニがそう言うと、アンチョビは何処か達観した様な顔でそう返すのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後も、2人でブラブラと屋台を見回っていた弘樹とみほだったが………

 

何処からともなく和太鼓の音が聞こえて来て、その音に導かれる様に足を進めると、そこには………

 

天辺で和太鼓を叩いている者が居る櫓を中心に、盆踊りを踊っている人々の姿が在った。

 

「わあ~、凄~い」

 

「盆踊りの規模も半端ではないな………」

 

踊っている人数の多さに若干圧倒されながら、そう言葉を漏らすみほと弘樹。

 

「お兄様~! みほさ~ん!」

 

とそこで、踊っている人々の中から自分達を呼ぶ声が聞こえ、よくよく見てみると、その人々の中に交じって一緒に踊っている湯江と遥にレナの姿が在った。

 

更に、大洗機甲部隊員達の姿もチラホラと見受けられる。

 

「一緒に踊ろうよ~」

 

「楽しいよ~」

 

遥とレナもそう呼び掛けて来る。

 

「え? で、でも、盆踊りなんて………」

 

突然の誘いに戸惑うみほ。

 

すると………

 

「こんな言葉を知ってるかしら? 『踊る阿呆に見る阿呆 同じ阿呆なら踊らにゃ損損』」

 

「えっ?」

 

そんな台詞が聞こえて来て、みほが振り返るとそこには、浴衣姿のダージリン、アッサム、オレンジペコの姿が在った。

 

………浴衣姿でも紅茶を嗜んでいる辺り、意地を感じる。

 

「お久しぶりですわね」

 

「ダージリンさん!」

 

「御機嫌よう」

 

「お元気そうで何よりです」

 

ダージリンが挨拶し、みほが驚きの声を挙げると、アッサムとオレンジペコも挨拶して来る。

 

「盆踊りに踊り方は関係ありませんわ。此処は祭りの場………つまりは楽しんだ者が勝者となりますのよ」

 

「は、はあ………」

 

確信を突いている様で的外れな事を言っている様なダージリンの台詞に、みほは困惑する。

 

と、そこで………

 

何者かが、弘樹とみほの手を取った。

 

「えっ!?」

 

「むっ?………」

 

「ホラホラ、ボーっとしてないで!」

 

「折角のお祭りなんだよ!」

 

浴衣姿のローリエとルウだった!

 

「わあっ!? ローリエさん!?」

 

「ルウくん!?」

 

その2人に強引に、みほと弘樹は盆踊りの場へ進まされ、止むを得ず見よう見まねで踊り始める。

 

(………楽しいなぁ)

 

困惑しつつも、みほは他校の生徒達とも一緒に祭りを楽しめている事を感じ、笑みを浮かべる。

 

「…………」

 

そして弘樹も、そんなみほの姿を見て微笑を浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、特設会場でもイベントで刀工が開始された。

 

沢山のセットが用意され、テレビなどで見る鍛刀が始められる。

 

観客の誰もがおおーっと驚きの声を挙げていると、見事の手際で日本刀が完成する。

 

その煌びやかな刀身に、誰もがうっとりとする。

 

イベントは続き、歌舞伎、能楽狂言、日本舞踊、寄席、落語、時代劇などなど、日本を代表とする伝統的な芸能が披露される。

 

「ファンタスティークッ!!」

 

ケイにとってはこれまでにない日本文化の祭典に大満足。

 

そして日本文化だけでなく、金剛4姉妹と冥桜のアイドル・那珂によるスクールアイドルのライブも開始。

 

盛り上がりが最高潮に達しようとしていると………

 

遂に一大イベントである………

 

『冥桜学園鎮守府カレー大会』が開始されるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

白狼の行方を知る為に、カレー大会での優勝を目指す事に。
優花里は第六駆逐部隊と協力して、紆余曲折ありながらも、カレー作りの修練を積む。

そして迎えた冥桜学園の夏祭りの日。
カレー大会開催までの間、祭の中を散策する事にした大洗の一同。

折角なので、他校の生徒にもお越しいただきました。
原作で関わったグロリアーナ、サンダース、アンツィオ、プラウダに、この作品で練習試合をして学園でも交流もしている天竺の2人にも再登場願いました。
流石に今回のストーリーは登場キャラが多いので、男子校の面々にはお留守番してもらっています。
今回、何やら新たな学校枠を超えたカップルの気配が………
そして確認の為言っておきますが、ウチのアンツィオは漫画版です。
今回は少しカッコ良く書いてみました。
カッコイイドゥーチェが居ても良い筈だ。
自由とはそう言う事だ。

さて、いよいよ次回はカレー大会。
波乱とカオスが特盛です。
御注意下さい。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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