ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第146話『島風ちゃんと第六駆逐部隊です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第146話『島風ちゃんと第六駆逐部隊です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗から去った白狼の行方を探るべく………

 

美嵩の母校であり、白狼も頻繁に出入りしていたと言う、武道の名門校………

 

『冥桜学園』を訪れた大洗機甲部隊。

 

しかし、白狼や美嵩との面識を持つ者は多く居れど………

 

肝心の行方を知る者は1人も居なかった………

 

大洗の一同は、藁にも縋る思いで、最後の砦である………

 

『猿飛 島風』の捜索を開始するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冥桜学園・冥桜大学付属鎮守府学園の敷地内某所………

 

「探すって言っても、こんなに広い学園からどうやって捜せばいいのよ~」

 

手分けして島風を捜索していた大洗機甲部隊メンバーの中で、固まって行動していたあんこうチームの沙織が愚痴る様にそう呟く。

 

「今、他の生徒の皆さんにも連絡して捜索して貰ってますから。必ず連絡がありますよ」

 

そこで、そのあんこうチームに同行していた吹雪がそう言って来る。

 

「すみません、ご迷惑をお掛けして………」

 

「いえ、そんな、ご迷惑だなんて。私達も、白狼さんの行き先について知りたいですし」

 

華が謝罪をすると、吹雪はとんでもないと返す。

 

「しかし、手掛かりが全く無いぞ。如何すれば良いんだ?」

 

「やっぱり、虱潰しに探すしかないと思います。大変ですが、頑張っていきましょう」

 

麻子が手掛かり無しで探すのは骨が折れると言うが、みほは檄を飛ばす様にそう返す。

 

(神狩殿………)

 

そして、白狼が見つかるか如何かの瀬戸際な優花里は、人一倍力が入った様子で、島風を捜索するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

冥桜学園・校門前………

 

「学校の外に居ると言う可能性も有るな………しかし、如何探したものか………」

 

島風が学校の敷地外に居る可能性に思い至った弘樹が、校門付近で佇んでいたが、やはり手掛かりが全く無い為、足が進まなかった。

 

と、その時………

 

「あ、あああ、あの!」

 

「ふ、舩坂 弘樹さんですか!?」

 

「ん?………」

 

不意に背後からそう言う声が聞こえて来て、弘樹が振り返ると、そこには………

 

灰色の陸軍制服を思わせる上着にプリーツスカート姿で軍帽を被り、背曩を背負った弘樹より少し年下ぐらいの少女と………

 

左胸部分に〇で囲まれた『ゆ』と言う文字のプリントが入ったジャージを着た、小学生ぐらいの少女の姿が在った。

 

「小官は舩坂だが、君達は?」

 

「も、申し遅れました! 自分は、『今村 あきつ丸』と申します!」

 

「『宮崎 まるゆ』です!」

 

弘樹が尋ねると、軍帽の少女は『今村 あきつ丸』、小学生ぐらいの少女は『宮崎 まるゆ』と名乗った。

 

「生きている英霊・舩坂 弘軍曹殿の子孫とお会い出来て、光栄です!」

 

「光栄です!」

 

更にそう言葉を続け、弘樹に向かって陸軍式敬礼をする2人。

 

「ああ、そう言う事か………そう畏まらなくても良いぞ」

 

「何を仰いますか! 舩坂 弘殿は大日本帝国陸軍の誇り! その子孫であらせられる舩坂 弘樹殿をぞんざいにするなど出来ません!」

 

「出来ません!」

 

納得が行った様な顔をしながら2人にそう言う弘樹だったが、あきつ丸とまるゆは直立不動の態勢を取る。

 

「むう………」

 

そんな2人の姿に、弘樹は少し困った様に学帽を被り直す。

 

「時に舩坂殿! 聞けば、島風の事を探していると!」

 

「是非、私達にもお手伝いさせて下さいっ!!」

 

そこで再び陸軍式敬礼をしながら、あきつ丸とまるゆが弘樹にそう言う。

 

「それはありがたい。小官は学校の外を探そうとしていたところだ。取り敢えず、この辺りを手分けして捜索してみてくれるか?」

 

「ハッ! 了解致しました!!」

 

「了解致しましたっ!!」

 

あきつ丸とまるゆはそう言うと、すぐに島風を探しに出る。

 

「小官も行くか………」

 

そしてそれに続く様に、弘樹も足を踏み出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして再び、あんこうチームの方は………

 

「見つかりませんねえ………」

 

「あ~、もう疲れたよ~!」

 

未だに島風を発見出来ず、華が呟くと、沙織が両手を上げてそう叫ぶ。

 

「す、すみません………」

 

「あ、いや、別に吹雪ちゃんのせいじゃないからね、うん!」

 

そんな沙織の姿を見て申し訳無く思ってしまう吹雪と、その吹雪を慌ててフォローする沙織。

 

「やはりこの広い学園艦を手掛かりも無しに捜索するのは無理があるぞ………」

 

「ですが、見つけないと神狩殿の行方が………」

 

「う~~ん………」

 

麻子と優花里がそう言い合うのを聞いて、頭を捻るみほ。

 

「そんなにしかめっ面してたら、プリティーなフェイスが台無しですよ、ミポリー」

 

するとそこで、そんなみほにテーカップに入った紅茶を差し出した者が居た。

 

「あ、ありがとうございます………!? えっ!?」

 

反射的に受け取ったみほだったが、すぐにティーカップが出された事に驚く。

 

そこには、何処から持って来たのか、イギリスの茶菓子の乗ったテーブルの椅子に腰掛け、紅茶を飲んでいる金剛の姿が在った。

 

比叡、榛名、霧島も、同じ様に着席して紅茶を嗜んでいる。

 

「何やってるのぉ!? 島風ちゃんを探してくれてたんじゃないのぉっ!?」

 

「今はティータイムの時間デース。このタイムは何人たりとも冒せないのデース」

 

沙織がそうツッコミを入れるが、金剛は優雅に紅茶を飲みながらそう返す。

 

「金剛お姉さま、御手製のスコーンです」

 

「大盛りでーっ!」

 

「榛名、全力で頂きます」

 

霧島、比叡、榛名もすっかりくつろぎムードである。

 

「すみません。金剛さん、イギリスに長期留学に行っていたので、イギリスの習慣が抜けなくて………」

 

「この学校より、聖グロリアーナに行った方が良いんじゃないのか?」

 

吹雪が申し訳無さそうに謝罪すると、麻子からそうツッコミが入る。

 

と、その時………

 

「あ! 良い匂い~! 私も食べる~っ!!」

 

そう言う台詞と共に、ウサギ耳のカチューシャをした少女が駆け寄って来て、空いていた椅子に腰掛けた。

 

「あ! 『島風』ちゃん!!」

 

その少女………『猿飛 島風』の姿を見た吹雪がそう声を挙げる。

 

「えっ!? あの子がですか!?」

 

「こんな簡単に………」

 

「私達の苦労は何だったの~っ!!」

 

捜していた相手がアッサリと自分から出て来た事に、あんこうチームは思わず脱力するのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃………

 

冥桜学園・甲板都市の一角………

 

「舩坂殿!」

 

「おお、今村くん」

 

甲板都市部で島風を捜索していたあきつ丸と弘樹が合流する。

 

「如何だった?」

 

「申し訳ありません。見つけられませんでした………」

 

「そうか………捜索範囲を広げるか」

 

あきつ丸からの報告を聞いた弘樹が、顎に手を当てて思案する。

 

「………ん? そう言えば、宮崎くんは如何した?」

 

「いや、自分とは別に捜索していたので………」

 

とそこで、弘樹がまるゆの姿が無い事に気付くが、別々に捜索していた為、あきつ丸は知らないと言う。

 

すると………

 

「返して下さいっ!!」

 

「! あの声は!?」

 

「まるゆくんだな………何かあったのか?」

 

まるゆにモノと思わしき声が聞こえて来て、すぐにあきつ丸と弘樹は、その声が聞こえて来た方向へと向かった。

 

 

 

 

 

甘味処・間宮の前………

 

「返して下さい! それはまるゆのお財布なんです!!」

 

「オイオイ、嬢ちゃん。言い掛かりは止せよ。コレがお嬢ちゃんの財布だって証拠はあんのかよ」

 

そこには、如何にも不良と言った感じの男子数名の中で、リーダー格と思われる男が、右手で頭上に掲げる様に持っている財布を必死に取ろうとしているまるゆの姿が在った。

 

「貴方達! 何をしているの!?」

 

と、騒ぎを聞いた間宮が店から出て来て、不良達にそう言い放つ。

 

「ウルセェッ! 引っ込んでろっ!!」

 

「じゃねえと店をブッ壊すぞ!!」

 

「うっ!………」

 

しかし、不良達は逆に、鉄パイプやバットを突き付けて、間宮を威嚇する。

 

「! 彼等は………」

 

「恐らく、他校の不良生徒であります。冥桜学園は観光地として常に一般開放しているのですが、近頃はああ言った輩まで入り込んで来る様になっていまして………」

 

そこで、弘樹とあきつ丸が駆け付ける。

 

「返して下さいっ!!」

 

「ええいっ! ガキだと思ってりゃあ、調子に乗りやがってっ!!」

 

すると、しつこく食い下がるまるゆに腹が立ったのか、リーダー格の不良が、まるゆを蹴飛ばした!

 

「!? キャアアアッ!?」

 

勢い良く、背中から地面に倒れるまるゆ。

 

「う、ううう………」

 

倒れたままのまるゆの目尻に涙が浮かぶ。

 

「! まるゆ!」

 

「!!」

 

あきつ丸が叫び、弘樹は外道の所業に我慢出来ず、英霊に手を掛ける。

 

と、その時………

 

1人の黒いマントを羽織り、右目に眼帯をした人物が、不意にその場に姿を見せた。

 

「あん?………!? ぐあっ!?」

 

その人物は、問答無用でリーダー格の不良の襟首を右手で掴んで引き寄せ、そのまま宙吊りにする。

 

そして、左手でまるゆの財布を持っていたリーダー格の不良の右手首を握ったかと思うと………

 

そのまま力任せに圧し折った!!

 

「!? ギャアアアアアアアアアァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーッ!?」

 

「「「「「!?」」」」」

 

手首を圧し折られたリーダー格の不良は悲鳴を挙げ、取り巻きの不良達も戦慄する。

 

圧し折られた手からまるゆの財布が零れ、倒れていたまるゆの傍に転がる。

 

「! あ、貴方は………『木曾』さん!!」

 

と、その人物を見たまるゆがそう叫ぶ。

 

黒マントの人物………

 

それは吹雪達と同じく、冥桜大学付属鎮守府学園の生徒………

 

『長宗我部 木曾』だった。

 

「木曾殿!」

 

「彼女もこの学園の生徒か………」

 

あきつ丸も声を挙げ、弘樹は英霊に掛けていた手を離す。

 

「間宮さん、ラムネをくれ」

 

「! あ、ハイ!」

 

木曾は、店の外に出たままだった間宮にそう言い、間宮は店内へ戻る。

 

「木曾さん………」

 

財布を取り戻したまるゆは、羨望の眼差しで木曾を見上げる。

 

「お待たせしました」

 

とそこで、間宮がラムネの瓶を持って戻って来る。

 

木曾はリーダー格の不良を持ち上げたまま、左手でラムネの瓶を取ると、リーダー格の不良に見せつける様にしながら片手で栓を空ける。

 

「一杯やれよ」

 

「お、俺は炭酸が飲めないんだ! 勘弁してくれっ!!………むぐっ!?」

 

炭酸が飲めないと喚くリーダー格の不良だったが、木曾は容赦無く、ラムネをリーダー格の不良の口に捻じ込み、流し込む!!

 

「! うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ! 口と喉が焼ける~~~っ!!」

 

ラムネの瓶が空になると、漸くリーダー格の不良は解放され、情けない姿で退散して行く。

 

「リーダーッ!?」

 

「ま、待って下さい~っ!!」

 

他の不良達も、リーダー格が逃げ出したのを見て、慌てて逃げて行くのだった。

 

「やれやれ………最近はああいうのが多くて困るぜ」

 

「ありがとうございます、木曾さん!」

 

皮肉る様な笑みを浮かべる木曾に、財布を取り戻したまるゆが礼を言う。

 

「大丈夫だったか?」

 

木曾はそんなまるゆの頭を撫でてやりながらそう言う。

 

「木曾殿! まるゆを救っていただき、感謝致します!」

 

とそこで、弘樹を伴ったあきつ丸が寄って来て、陸軍式敬礼をしながら木曾にお礼を言う。

 

「おう、あきつ丸も居たのか。で、そっちのはどいつだ?」

 

木曾があきつ丸に気づくと、その隣の弘樹にも気づいてそう尋ねる。

 

「初めまして。小官は学園艦・大洗の大洗国際男子校の舩坂 弘樹と申します」

 

「大洗? あの戦車道・歩兵道の全国大会で最大のダークホースって言われている? そんな奴が何でウチに居るんだ?」

 

弘樹がそう自己紹介すると、木曾はそう疑問を呈する。

 

「それは………」

 

そんな木曾に対し、弘樹は事情を説明するのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冥桜大学付属鎮守府学園の敷地内某所………

 

余りにもアッサリと姿を見せた島風を加え、金剛姉妹達と共にティータイムと洒落込んでいるあんこうチームと吹雪。

 

「えっ? 白狼の今居る場所?」

 

「うん、何か知らない、島風ちゃん?」

 

スコーンを齧っていた島風に、吹雪がそう尋ねる。

 

「ううん、知らないよ」

 

「そう、ですか………」

 

だが、最後の希望と思われた島風も知らないと言い、優花里は完全に落ち込んだ様子を見せる。

 

「ゆかりん! しっかり!!」

 

沙織が慌ててフォローする。

 

「………白狼は約束を守る奴だよ」

 

不意にそこで、島風がそう語り出す。

 

「けど、約束を守る為に別の約束を破っちゃう事もあるの。それで周りの人に迷惑掛けて、悲しませたりして………だから、白狼は約束を破る事の結果を恐れてるの」

 

「白狼さんにそんな事が………」

 

それを聞いた華がそう呟く。

 

「でも、私は白狼に感謝してるよ。ぼっちだった私の最初の友達になってくれたんだ」

 

「私にとっても、ホワイトウルフは大切なフレンドね。彼に助けられた事もあるデース!」

 

「本当に、この学園の奴等からは慕われてるんだな………」

 

島風と金剛がそう言うのを聞いて、麻子が意外そうに呟く。

 

「では、皆さんからも神狩さんに大洗に戻る様に頼んでくれませんか?」

 

そこでみほは、金剛達にも白狼の説得を手伝って貰いたいと願い出る。

 

しかし………

 

「OH、そうしたいのは山々ですが………」

 

「美嵩が絡んでるんじゃ難しいよぉ」

 

金剛と島風は申し訳無さそうにそう返す。

 

「本多殿は、一体何者なのでありますか?」

 

「前にウチに来た時に、綿貫くんを凄い感じに殴り飛ばしてたけど………」

 

そこで、優花里が冥桜学園での美嵩の事について尋ね、沙織が以前に美嵩が了平を殴り飛ばした時の事を思い出しながらそう言う。

 

「美嵩は、今我が校で上位の強さを誇る生徒デース」

 

「恐らく、私達が束になって掛かっても危ういでしょうね………」

 

金剛がそう答えると、霧島がメガネをクイッと上げながらそう言う。

 

「そ、そんなに強いんですか?」

 

「イエース。私達のネームについて、何か気になる事はありませんか?」

 

みほが驚いていると、今度は金剛がそんな事を聞いて来た。

 

「名前ですか?………」

 

「えっと、真田 吹雪ちゃんに、豊臣 金剛さん、石田 比叡さん、島 榛名さん、竹中 霧島さん………アレ? コレって?」

 

「戦国時代の武将の名が入っているな………」

 

華が首を傾げ、沙織が金剛達のフルネームを繰り返していて何かに気づき、麻子がそう指摘する。

 

「イエース! 我が校では達人レベルに達した生徒には戦国の武将や歴史の偉人の名をソウルネームとして与えられるのデース!」

 

紅茶に口を付けながら、金剛がそう説明する。

 

「そして美嵩のソウルネームは『本多』………つまりはそう言う事デース」

 

「!? ま、まさか………『本多 忠勝』ですか!?」

 

優花里が驚愕の声を挙げる。

 

 

 

 

 

『本多 忠勝』

 

徳川 家康に仕えた武将であり、徳川四天王の1人である。

 

生涯57回の合戦に参加したが、その全てに於いて傷を負う事無く、無傷だったと言う逸話が有る。

 

その豪傑ぶりから戦国最強の武人と言われており、『徳川には過ぎたるものが二つあり、唐のかしらに本多 忠勝』と言う狂歌まで存在する。

 

 

 

 

 

「それは強い筈だ………」

 

「あんなに可憐な方ですのに………」

 

「いや、華。何処を如何見たらそうなるの?」

 

麻子がそう呟き、華が若干センスがズレた発言をし、沙織がツッコミを入れる。

 

「カレン?………! Oh! そうデースッ!!」

 

「キャアッ!? ど、如何したんですか!?」

 

とそこで、金剛が何かを思い出したかの様に声を挙げ、みほがそれに驚きながら尋ねる。

 

「今度の夏祭りの日に、冥桜学園鎮守府カレー大会が有るのを忘れていました~」

 

「「「「冥桜学園鎮守府カレー大会?」」」」

 

「何だそれは?」

 

何かのイベント名と思われるものを口にした金剛に、みほ、沙織、華、優花里が首を傾げ、麻子がそう尋ねる。

 

「私から説明させていただきます」

 

すると、霧島が金剛に代わる様に説明を始める。

 

「冥桜学園鎮守府カレー大会とは、かなり昔、全国の学校の給食にカレーを盛り込む計画があったのですが、様々な事情により各学校で既に献立が決まっており、中々カレーを盛り込むのが難しかったのです。しかし、関係者の弛まぬ努力によって、夏のこの時期に学校の献立にカレーを盛り込む事が出来たの。そして夏祭りのその日は、丁度カレーを盛り込む事が出来た日で、カレー大会を開く事となったのです」

 

「な、何だか凄く壮大な話になった様な………」

 

霧島の説明を聞いたみほが、思ったよりも壮大な話に困った様な笑みを浮かべる。

 

「優勝者には記念トロフィーが送られる他、夏祭りで優勝したメンバーのカレーが食べ放題になり、更には次の大会までの1年間、優勝したメンバーのカレーが食堂のメニューとして採用されるのです」

 

「結構名誉ある大会なんですね」

 

「私は本場英国式カレーで参加しマース! 優勝は頂きデス! そしたら、私のカレーを1年間提督に………うふふふふふ」

 

優花里がそう言っている横で、金剛は自分が優勝し、自分のカレーが提督に食べられている光景を想像して笑みを浮かべている。

 

「イギリス式………」

 

「大丈夫です! 金剛お姉さまのカレーは美味しいんですよ!」

 

「そうです! それに大会当日は私もサポートに入りますから!!」

 

イギリス仕込みと聞いて、沙織が不安そうな様子を見せるが、榛名と比叡からそんなフォローが入る。

 

「えっ?………」

 

と、比叡が手伝うと言うのを聞いた吹雪が、顔を青くしたが、一同は気づかなかった。

 

すると、そこで………

 

「甘いわね、金剛」

 

「Watts!?」

 

「「「「「??」」」」」

 

不意にそう言う声が聞こえて来て、金剛達とみほ達は振り返る。

 

そこには、黒いロングウェーブヘアで、プロポーションに優れた長身な女性の姿が在った。

 

「わあ~、スッゴイ出来る女の人って雰囲気が有る~」

 

その女性の姿を見た沙織が、そんな感想を漏らす。

 

「Oh! 『足柄』! さっきの言葉、如何言う意味デスかー!」

 

金剛はその女性の事を『足柄』と呼び、食って掛かる。

 

「あの人は?」

 

「『斎藤 足柄』。大学の方の生徒よ。誰よりも貪欲に勝利を求める人でね。『飢えた狼』とも呼ばれているわ」

 

「大した渾名だな………」

 

みほが霧島に尋ねると、霧島は『斎藤 足柄』の事をそう紹介し、麻子がそうツッコミを入れる。

 

「その大会には私も出るわ。ちょっとやそっとじゃ、私のワイルドでハードな極上のカレーに太刀打ちする事なんて出来ないわよ。優勝は私で決まりね」

 

「面白いネ。流石は飢えたウルフと言われる事はありますね」

 

「フフフ………ところでこの人たちは誰なの?」

 

不敵に笑った足柄は、みほ達に気づいてそう尋ねる。

 

「此処のエヴリワンは大洗から来た生徒達ね」

 

「ああ、今開催中の戦車道・歩兵道全国大会の出場校ね。何しに来たかは知らないけど、夏祭りは今度の日曜日よ」

 

「いえ、私達が来たのは………」

 

優花里が足柄に、自分達がこの学園艦を訪れた目的を説明する。

 

「何だ、そう言う事。白狼の事なら知ってるわよ」

 

「えっ!? 本当でありますか!?」

 

「「「「!!」」」」

 

遂に白狼の行方を知る人物が現れ、みほ達は顔を見合わせる。

 

「ええ。ただ、美嵩から聞いたけど居場所ははっきり答えてくれなくて、会話からして心当たりがありそうな単語を幾つか聞いただけだけど」

 

「そ、それで! 神狩殿は今、どちらに!?」

 

「う~ん、教えてあげたい気持ちは山々なんだけど、美嵩に知られたら、後が怖いから流石に言い難いわね」

 

「そ、そんな~………我々がこれだけ苦労をかけたのに、あんまりでありますよ~~っ!!」

 

とうとうそんな弱音の叫びを挙げてしまう優花里。

 

「………なら勝負をしましょう」

 

「「「! しょ、勝負っ!?」」」

 

するとそこで、足柄はそう提案し、優花里、沙織、華は戦慄を覚える。

 

「武道で………ですか?」

 

みほも冷や汗を掻きながらそう尋ねる。

 

「それじゃあ、こっちがアッという間に勝って意味が無いでしょ」

 

しかし、足柄は不敵に笑ってそう返す。

 

「ひょっとして………」

 

「ええ、その通りよ。カレー大会で私に勝つ事が出来たら、白狼の居場所のヒントを教えるわ」

 

そこで麻子が何かに思い至り、足柄が肯定する様にそう言う。

 

「カレー大会でですか………」

 

「オイ、さっきから何の話してるんだ?」

 

と、みほがそう呟いた瞬間に、そう言う台詞と共に2人の女子生徒が姿を見せた。

 

「アラ、『天龍』に『龍田』」

 

1人は、龍の角の様な髪飾りを付け、左目に眼帯をして木刀を携えた少女………『伊達・天龍・政宗』

 

もう1人はその妹で、紫がかった黒のセミロングヘアーと同色の瞳を持ち、左頬には泣き黒子がある少女………『片倉・龍田・景綱』である。

 

「あら~、お客さん~?」

 

「ええ、実はね………」

 

龍田がノンビリとした口調で尋ねると、足柄はみほ達の事を紹介し、カレー大会で勝負する事を説明する。

 

「へえ~、そうなの~」

 

「オイ、待てよ。カレー大会に参加出来るのはウチの学園の関係者だけってルールの筈だぜ」

 

龍田がそう返すと、天龍がそう指摘する。

 

「あ! そう言えば、そうだったわね………」

 

「ええ~~っ!? そんな~っ!?」

 

「それじゃ駄目じゃないですか!!」

 

足柄が思い出した様に呟くと、優花里と沙織がそう声を挙げる。

 

「だったら、こういうハンデなら文句無いかしらね」

 

「ハンデ?」

 

「優勝を狙っているのは私や金剛だけじゃないわよ。他にも何人かの参加者が居るから、その子達のチームにお手伝いとして参加するの」

 

「お! 成程な!!」

 

「確かに~。お手伝いさんを入れちゃいけないってルールも無いし~、ギリギリ大丈夫じゃない~?」

 

天龍が上手い事考えたなと手を叩くと、龍田が間延びした口調でそう言う。

 

つまり、足柄に勝つ為には他の参加者と一緒にカレーを作り勝てば良い、というワケである。

 

「じゃあ、首を洗って待ってる事ね」

 

そう言うと、足柄はその場を後にして去って行った。

 

「凄い自信………」

 

「相当に腕に覚えがあるのでしょうね………」

 

「「「…………」」」

 

その足柄の姿に、沙織と華がそう言い合い、麻子、優花里、みほは黙り込んだ。

 

「ハイ、コレ」

 

するとそこで、龍田がみほ達に何かのプリントを手渡して来た。

 

「? コレは?」

 

「カレー大会の参加者名簿よ」

 

「そん中から組みたい相手を選びな。俺達が話を通しておいてやるぜ」

 

みほがそう尋ねると、龍田と天龍がそう返す。

 

「ありがとうございます」

 

「天龍さんは相変わらず面倒見が良いですね」

 

みほがお礼を言っていると、吹雪が天龍に向かってそう言う。

 

「べ、別にそんなんじゃねえよ………」

 

途端に、天龍は照れた様子を見せて、ぶっきらぼうにそう返す。

 

(((((可愛い人だな………)))))

 

その天龍の姿を見たあんこうチームは、そんな感想を抱くのだった。

 

「そ、そんな事より! 早く参加するチームを決めろよ!」

 

「では、自分はこの人達のチームに参加するであります!」

 

天龍に促され、優花里はプリントの『第六駆逐部隊』と書かれたチームを指差す。

 

「『第六駆逐部隊』?」

 

「優花里さん、如何してこのチームに?」

 

「何だか頼り甲斐の有りそうな名前ですから。何処となく、駆逐戦車の部隊の様にも聞こえますし!」

 

「やっぱり戦車絡みなんだ………」

 

みほが尋ねると、優花里はそう答え、沙織が何時も通りだなと言う顔をする。

 

「じゃあ、私は………『上杉姉妹』チームで」

 

続いてみほが、『上杉 翔鶴』と『直江 瑞鶴』からなる『上杉姉妹』チームを選ぶ。

 

「私は、この『武田組』と言うチームに参加させていただきます」

 

華は、『武田 赤城』、『山本 加賀』からなる『武田組』チームを選ぶ。

 

「じゃあ、私は………」

 

「Hey! サオリン! 良かったら、私達のチームに参加しませんかー?」

 

沙織が参加チームを選ぼうとしたところ、金剛がそう提案して来た。

 

「えっ!? 良いんですか!?」

 

「YESー! 貴方となら上手くやれそうな気がしマース!!」

 

如何やら金剛は、沙織に自分と似た匂いを感じ取った様である。

 

「じゃあ、よろしくお願いします」

 

「なら、私は………お前とで良いか」

 

「お゛うッ! 私?」

 

残った麻子は、島風のチームへ参加を表明する。

 

「麻子、適当過ぎない?」

 

「大丈夫だ、問題無い………」

 

沙織が心配そうに言うが、麻子は全然大丈夫そうじゃない台詞で返す。

 

「よっし、決まりだな! 今言った連中には連絡しておくからな」

 

「当日を楽しみにしてるわね~」

 

「では、ティータイムもそろそろお開きですね」

 

そして、天龍と龍田がそう言うと、金剛がそう言い、ティータイムは終了となったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから………

 

あんこうチームは、大洗機甲部隊の一同を1度集結させ、事情を説明。

 

様々な反応が上がりつつも、ココはあんこうチームに任せようと言う結論に到り、あんこうチームを残して、一旦解散となった。

 

そして、残されたあんこうチームの中で………

 

第六駆逐部隊チームへ参加する事になっていた優花里は………

 

天龍からの連絡で、今彼女達が居ると言う、冥桜学園の女子寮の離れにあるキッチンへと向かって居た。

 

 

 

 

 

冥桜学園女子寮・離れにあるキッチン………

 

「此処でありますな………失礼しま~す」

 

漸く離れのキッチンへと辿り着いた優花里は、そう言いながら扉を開けて、キッチン内へと入り込む。

 

「? 誰?」

 

「あ! ひょっとして!」

 

「天龍さんが言っていた………」

 

「秋山 優花里さんなのですか?」

 

優花里を出迎えたのは、中学生くらいの黒いセーラー服を着た4人の女の子だった。

 

「あ、ハイ、そうです」

 

「やっぱり! 初めまして! 『鬼庭 雷』よ! かみなりじゃないわ! そこのとこもよろしく頼むわねっ!」

 

茶色のショートヘアの少女、『鬼庭 雷』がそう挨拶する。

 

「『鬼庭 暁』よ。1人前のレディーとして扱ってよね!」

 

黒に近い濃い紺色のロングヘアに、錨マークの入った黒い帽子を被っている女の子、『鬼庭 暁』が自己紹介する。

 

「『鬼庭 響』だよ。その活躍ぶりから不死鳥の通り名もあるよ」

 

続いて自己紹介して来たのは、白、もしくは銀髪のロングへに暁と同じ帽子をかぶっている少女、『鬼庭 響』

 

「『鬼庭 電』です。どうか、よろしくお願いいたします」

 

そして最後に、茶色のセミロングを結い上げている少女、『鬼庭 電』がペコリと頭を下げる。

 

彼女達は如何やら髪の色や形は違えど、4つ子の姉妹の様だ。

 

「こちらこそ、よろしくお願いするであります」

 

「ところで秋山さん。1つ聞きたいんだけど」

 

「ハイ、何でありますか?」

 

「カレーって如何やって作るの?」

 

「えっ?………」

 

暁からの思わぬ質問に固まってしまう優花里。

 

「まさか皆さん………知らないんですか?」

 

「「「「…………」」」」

 

優花里がそう尋ね返すと、第六駆逐部隊チームは苦笑いを浮かべた。

 

「いや、その………私も母の作るカレーは大好きでしたが、作り方までは………それ以外はレーションばっかりで」

 

「そうなのですか………」

 

「仕方ないわね………図書館に行って調べましょう! 行くわよ、皆!」

 

雷がそう言い、1番にキッチンから出て行く。

 

「ちょっと! 雷! 仕切らないでよ!!」

 

「ま、待って欲しいのです!」

 

その後を、少し慌てて暁と電が追う。

 

「やれやれ………」

 

「先行きが不安になって来たであります………」

 

そんな3人の様子に、響が呆れた様に肩を竦め、優花里は早くも先行きに不安を感じ始めるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

白狼の行方を知っているかも知れない島風を探すあんこうチームだが、金剛達のティータイムでアッサリと発見。
しかし、肝心の白狼の行方は分からなかった。

だが、そこで足柄と名乗る女性が現れ、何と白狼の行方に心当たりがあると言う。
しかし、美嵩の事があるので、容易には教えられないと言い、夏祭りの日に開かれるカレー大会で対決し、勝てたら教えると言って来た。

参加ルールに基づき、様々なチームの元へと向かうあんこうチーム。
その中で優花里は、4つ子の姉妹の『第六駆逐部隊』へ参加するのだった。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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