ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第141話『まさかの展開です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第141話『まさかの展開です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遂に試合会場へと到着した白狼。

 

飛彗に促され、西部機甲部隊のフラッグ車を追撃しているあんこうチーム達の元へと向かう………

 

一方………

 

列車で運ばれている西部機甲部隊のフラッグ車を追っていたあんこうチーム達の中で………

 

弘樹が、列車に取り付く事に成功していた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第7回戦・試合会場………

 

和製西部劇の撮影所・鉄道土手となっている線路………

 

「撃てーっ! 撃て撃てーっ!! 撃ちまくれーっ!!」

 

ミケの自棄になって居る様な号令と共に、荒野を爆走する蒸気機関車が牽いている客車に填り込んでいるスチュワートの主砲が何度も火を噴く。

 

「「「「うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」」」」

 

運悪く直撃弾を喰らったジープが爆発し、乗員の大洗歩兵隊員達が投げ出され、地面に叩き付けられると戦死の判定を受ける。

 

「クッ! 撃てっ!!」

 

「発射ぁっ!!」

 

反撃にと、みほと聖子の号令が響いたかと思うと、Ⅳ号とクロムウェルが主砲を発砲する。

 

しかし、Ⅳ号の砲弾は鉄道土手に命中し、クロムウェルの砲弾は列車の上を通り過ぎて行った。

 

「優ちゃん! もっと良く狙ってっ!!」

 

「無茶言わないで下さい! 行進間射撃をしてる上、目標も動いてます! 当てるのは至難の技ですっ!!」

 

聖子が砲手の優に良く狙ってくれと言うが、悪路での行進間射撃な上、目標も高速で移動している為、狙いが殆ど付けられないと返す。

 

とその時!

 

「…………」

 

列車内へ入っていたピューマが再び顔を出し、フリッガーファウストを構えた!

 

「! マズイッ! 分散して下さいっ!!」

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

みほの慌てた指示が飛び、サンショウウオさんチームととらさん分隊員、タコさん分隊員達の乗る車輌がバラバラに回避行動を取り始める。

 

直後に、ピューマのフリッガーファウストが火を噴くっ!!

 

次々と放たれたロケット弾が、あんこうチーム達に襲い掛かる!!

 

「!? 被弾っ!? クッ! 損傷はっ!?」

 

「大丈夫です! 砲塔右側のシュルツェンが吹き飛ばされただけですっ!!」

 

命中弾を喰らった様な感覚に襲われたみほがそう問い質すが、優花里からそう報告が返って来る。

 

『コチラ白鳥です! やられました! すみませんっ!!』

 

『Oh、NO! ミーもバトルデッドねっ!!』

 

とそこへ、弁慶とジャクソンから戦死判定を受けたと言う報告が入って来る。

 

「みぽりん! 歩兵の皆もドンドンやられてるよっ!!」

 

報告を受けた沙織が、みほに向かってそう言う。

 

彼女の言葉通り、既にとらさん分隊は全滅。

 

タコさん分隊も残り3分の1にまで数を減らしていた。

 

「舩坂さんが車内に居る筈ですが………」

 

「だが、このままでは何れ私達もやられるぞ」

 

華が1人列車に突入する事に成功した弘樹の事を思い出すが、麻子は受けている損害の方が大きいと言う。

 

「………麻子さん、列車に接近して下さい。ギリギリまで近づいて、死角からの攻撃を試みます」

 

それを聞いたみほは、一瞬考え込んだ様な様子を見せたかと思うと、麻子にそう指示を飛ばした。

 

「分かっ………」

 

『西住総隊長! ヘルキャットがっ!!』

 

「!?」

 

しかし、麻子が返事を返そうとした瞬間に、聖子から慌てた様子でそう報告が入って来て、みほはすぐにハッチを開けて車外に姿を晒す。

 

するとすぐさま、鉄道土手を超えて、自分達が居る方に進軍して来たクロエのヘルキャットの姿を目撃する。

 

「そろそろ仕掛けさせてもらうわっ!!」

 

みほと同じく、ハッチから身を乗り出していたクロエがそう言い放ち、ヘルキャットがⅣ号とクロムウェルの背後に陣取ったかと思うと、即座に発砲する!

 

「! 回避っ!!」

 

「!!」

 

「くうっ!!」

 

みほの声で、Ⅳ号とクロムウェルは互いに離れる様に動いて、ヘルキャットから放たれた砲弾を回避!

 

だが、その砲弾が着弾すると同時にヘルキャットは動き出し、広がったⅣ号とクロムウェルの間を擦り抜けて両者の前方へと躍り出る。

 

そして勢い良く180度ターンしたかと思うと、そのままバックで走り出し、主砲と車体正面をⅣ号とクロムウェルに向ける!

 

「! 停止っ!!」

 

「くうっ!!」

 

すぐさまみほの停止指示が飛び、麻子はⅣ号を急停車させる。

 

直後に、停止したⅣ号の目と鼻の先に砲弾が着弾!

 

そのまま進んでいれば、間違いなく直撃弾を喰らっていただろう。

 

「ひゅ~、良いわ、良いわよ! 熱くて面白くなってきたわっ!!」

 

その光景を見たクロエの血が更に滾る。

 

「このぉっ!!」

 

とそこで、聖子の声が響くと、クロムウェルがヘルキャット目掛けて砲撃する。

 

「おっと!!」

 

だが、ヘルキャットは僅かに左に逸れて回避する。

 

「お返しよっ!!」

 

反撃にと主砲が火を噴き、砲弾がクロムウェルに向かう。

 

「! 砲塔旋回っ!!」

 

「!!」

 

咄嗟に聖子はそう指示を飛ばし、優が砲塔を旋回させる。

 

直後に、ヘルキャットから放たれた砲弾が、クロムウェルの砲塔側面に命中したが、角度が浅かったので弾く事に成功する。

 

「! 砲塔旋回装置に異常っ!!」

 

「ええっ!?」

 

しかし、無事と言うワケには行かず、砲塔旋回装置に異常が発生したと優が報告を挙げる。

 

「旋回自体は可能ですが、かなり速度が落ちます」

 

「クッ! 唯ちゃん! 砲撃時にフォローお願いっ!!」

 

「分かったっ!」

 

優からの報告を聞いた聖子は、唯にそう指示を飛ばす。

 

車体の方のコントロールで、落ちた砲塔旋回速度をカバーする積りの様だ。

 

「郷さんっ!!………!? キャアッ!?」

 

その様子を見たみほが聖子に声を掛けるが、直後にⅣ号の車体左側のシュルツェンが、ヘルキャットの撃った砲弾で吹き飛ばされ、思わず悲鳴を挙げる。

 

「さあ如何した!? まだシュルツェンが吹き飛んだだけだぞ! 掛かって来い!! 作戦を立案しろ! 徹甲弾を撃ち出せっ! 機銃で牽制しろっ! 速度を上げて喰らい付いて来いっ! さあ戦車道はこれからだ!! お楽しみはこれからだ!! ハリー! ハリーハリー! ハリーハリーハリーッ!!」

 

そんなみほに向かって、クロエは狂気の笑みを浮かべて心底楽しそうにそう挑発する。

 

「!!………」

 

そのクロエの姿を見て、みほの身体は完全に震え上がった。

 

「う………あ………」

 

嫌な汗が止まらなくなり、顔色が見る見る内に青くなって行くみほ。

 

「! 西住殿!?」

 

「みほさん!? 大丈夫ですか!?」

 

「しっかりして、みぽりん!!」

 

「気をしっかり持て!!」

 

そんなみほの様子を見たあんこうチームは、優花里、華、沙織は当然ながら、普段からテンションの低い麻子でさえ、大声を挙げて心配する程だった。

 

(弘樹………くん………)

 

恐怖に押し潰されそうな中、みほは心の中で弘樹の名を呼ぶ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暴走する蒸気機関車が牽いている列車の後部・車内………

 

「! 西住総隊長」

 

唯一、暴走する列車への侵入に成功していた弘樹は、みほが呼んだ様な感覚を感じて、客車の窓から外の様子を見やる。

 

そこには、ヘルキャットを相手に苦戦しているⅣ号とクロムウェルの姿が在った。

 

「クッ………」

 

助けたい衝動に駆られた弘樹だが、この状況ではみほ達を援護するより西部機甲部隊のフラッグ車を叩く方が、結果的に助けになると判断。

 

(申し訳ありません、西住総隊長………今暫くの御辛抱を)

 

心の中でみほにそう詫び、弘樹は西部機甲部隊のフラッグ車であるスチュワートが填り込んでいる前方の客車を目指す。

 

やがて、列車の丁度中央辺りに差し掛かり、新たな客車の車内へと続くドアを開けようとした瞬間………

 

「………!!」

 

ドアの向こうから僅かに殺気を感じ、弘樹はドアノブを握る手を止めた。

 

(この気配は………)

 

その気配の正体を推測しつつ、弘樹のM1911A1を握っている手に力が入る。

 

「………フゥ~~」

 

と、弘樹は深呼吸をし、気持ちを落ち着かせる。

 

「…………」

 

そして、片手にしっかりとM1911A1を握りながら、もう片方の手で客車の車内へと続くドアのノブを回す。

 

やがて、ドアノブが回り切って、ドアが開けられる状態になると………

 

「………!!」

 

勢い良くドアを開けて、即座に近くに在った座席の陰に隠れた!

 

直後に発砲音がして、弘樹が隠れた座席に次々と弾痕が刻まれる!!

 

「流石に良い勘してるね~」

 

M1917リボルバーから撃ち終えた薬莢を排莢し、新たな弾薬を込めながら、ジャンゴがそう言い放つ。

 

「ジャンゴ………」

 

「さて、如何する、舩坂分隊長? この先に行きたかったら俺を倒して行くしかないよ、うん?」

 

座席の陰からジャンゴの姿を見やる弘樹に、ジャンゴは何処かおどけた様な態度でそう言い放つ。

 

「…………」

 

弘樹はそれに何かを言い返す様な事はせず、無言のままにM1911A1を両手で握る。

 

「オイオイ、折角の対決だってのに、俺だけが一方的に話すってのは悲しいぜ」

 

「無駄話は得意ではない………」

 

とそう言った瞬間!

 

弘樹はバッと座席の陰から立ち上がり、ジャンゴに向かってM1911A1を発砲した!

 

「おっと!」

 

しかし、ジャンゴはそれを読んでいた様で、弘樹が発砲した瞬間には、代わる様に座席の陰へと隠れていた。

 

「質実剛健だねぇ。まあ、良いさ。ボチボチ行こうか」

 

「…………」

 

とぼけた態度を続けるジャンゴだったが、弘樹は決して油断はしない。

 

何時ぞやのガンショップでの事もあり、ジャンゴが相当の実力者である事は分かっているからだ。

 

「…………」

 

ジャンゴが隠れたままだったので、M1911A1を構えたまま、ゆっくりと前進する弘樹。

 

「ほっ、と!」

 

と、不意を衝く様にジャンゴが姿を晒し、再びM1917リボルバーを発砲する!

 

「!!」

 

すぐさま近場の座席の陰に転がり込む様に隠れる弘樹。

 

だが、ジャンゴは弘樹が隠れている座席に向かって発砲を続ける。

 

(………3………4………5………)

 

弘樹は、ジャンゴが何発撃っているのかをしっかりと確認し、最後となる6発目を撃ち終えた瞬間に飛び出そうとタイミングを見計らう。

 

(………6!!)

 

そして最後となる6発目の発砲音が聞こえると、すぐさま座席の陰から身を曝し、M1911A1をジャンゴに向けた!

 

しかし!!

 

「! グッ!?」

 

その瞬間に、銀色に光る『何か』が飛んで来て、弘樹が構えていたM1911A1を弾き飛ばす!

 

弾かれたM1911A1は、ドアが開けっ放しだった為、後方の客車内の方まで転がって行く。

 

「見積もりが甘かった様だな、舩坂分隊長さん」

 

そう言い放つジャンゴの、M1917リボルバーを握っている右手の反対の手………左手には、数本のナイフが握られていた。

 

「投げナイフか………」

 

「御名答。ソラッ!!」

 

弘樹がそう呟くと、ジャンゴは左腕を鞭の様に撓らせ、握っていたナイフを投擲する。

 

「!!」

 

身を反らす様にしてかわし、再び座席の陰に隠れる弘樹。

 

「無駄だぜ………」

 

しかし、ジャンゴがそう言って投げナイフを壁に向かって投擲したかと思うと………

 

壁に当たって跳ね返った投げナイフが、座席の陰に隠れている弘樹に向かった!

 

「!?」

 

驚きながら、咄嗟にその場に伏せて如何にか跳ね返って来た投げナイフをかわす弘樹。

 

「チイッ!」

 

舌打ちをしながらも、背負っていた四式自動小銃を手にすると、再び身を晒してジャンゴに狙いを付けようとする。

 

「おっと!」

 

しかし、弘樹が狙いを付けるよりも早く、接近して来たジャンゴが、四式自動小銃の銃身を掴む。

 

「!!」

 

「こんな狭い中で小銃を使うのは不利だぜ………」

 

ジャンゴはそう言い放つと、弘樹に前蹴りを食らわせる!

 

「グッ!………」

 

咄嗟に自分から跳んでダメージを軽減したものの、銃身を掴まれたままだった四式自動小銃が、ジャンゴに奪われてしまう。

 

「フフ………」

 

ジャンゴは不敵に笑うと、奪った四式自動小銃を客車の窓から投げ捨てた。

 

「…………」

 

弘樹は英霊の柄に手を掛けたが、思い留まった様な様子を見せると、三十年式銃剣の方を抜く。

 

「良い判断だな。ポン刀より銃剣の方がこの場じゃ取り回しが良いからな」

 

「…………」

 

右手にM1917リボルバーを持ち、左手に数本の投げナイフを握りながらそう言うジャンゴに対し、弘樹は只無言で、右手に三十年式銃剣を握って構えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

クロエのヘルキャットと戦っているあんこうチームのⅣ号と、サンショウウオさんチームのクロムウェルは………

 

「それっ!!」

 

「クウッ!」

 

クロエの掛け声と共に放たれた砲弾を、麻子が苦い声を漏らしながらもギリギリで回避。

 

Ⅳ号の車体右側に付けられていたシュルツェンが吹き飛ぶ。

 

「撃ちますっ!!」

 

反撃にと、ヘルキャットに狙いを済ませて砲撃する華だったが………

 

「ホイっと!!」

 

クロエがそう声を挙げたかと思うと、ヘルキャットは片輪走行状態となり、Ⅳ号が放った砲弾をかわす。

 

「クッ! またしても………」

 

「フラッグ車撃破の事を考えると、コレ以上砲弾は無駄に出来ませんよっ!!」

 

華が悔しそうな様子を見せる中、優花里が新たな砲弾を装填しながらそう言う。

 

「…………」

 

そしてみほは、まだ青さを残している顔で、クロエの乗るヘルキャットを見据えていた。

 

「西住総隊長! 歩兵の皆が落伍し始めてますっ!!」

 

「!!」

 

するとそこで、聖子からそう報告が挙がり、みほが振り返ると、追従して来ていたタコさん分隊の残存歩兵部隊の速度が落ち、徐々にあんこうチームとサンショウウオさんチームとの距離が開き始めている。

 

コレまで生身で戦闘を続け、快晴の為に反射熱も相当ある荒野の移動を繰り返した為、屈強な歩兵部隊のメンバーにも疲労が出始めたのだ。

 

(………ココでスピードを落としたら、フラッグ車を見失っちゃう………消耗度を考えると、私達が絶対不利………何としてもフラッグ車を叩かないと………)

 

だが、状況を顧みると、歩兵部隊の速度に合わせて減速するワケには行かず、何とか早くフラッグ車を叩きたいと考えるみほ。

 

と、その時!!

 

Ⅳ号とクロムウェルの周辺に、次々とロケット弾が着弾した!!

 

「キャアッ!?」

 

「!!」

 

悲鳴を挙げる聖子と、すぐにロケット弾が飛んで来た方向を確認するみほ。

 

「…………」

 

そこには、何時の間にか列車から降り、自分達の方へと向かって来ながら、フリーガーファウストを構えているピューマの姿が在った。

 

「!? 何時の間にっ!?」

 

「逃げ切れんぞっ!!」

 

みほが驚きの声を挙げ、麻子が回避が間に合わないと言う。

 

「…………」

 

フリーガーファウストの狙いを、Ⅳ号とクロムウェルに付けるピューマ。

 

「「!!」」

 

みほと聖子の目が見開かれる。

 

………と、その時!!

 

爆音と共に、1台のバイクが、鉄道土手からジャンプしながら現れた!

 

「「「!?」」」

 

みほ、聖子、クロエが驚く中、空中に在ったバイクは、降下しながらピューマを踏み潰そうとする。

 

「………!!」

 

しかし、寸前で進行方向を変更したピューマは、バイクのボディプレスをかわす。

 

「チイッ! 外したかっ!!」

 

乗って居た人物が悪態を吐きながら、アクセルターンすると、Ⅳ号とクロムウェルに追従する様に走り出すバイク。

 

「! 神狩殿っ!!」

 

優花里が声を挙げる。

 

そう、現れたのは白狼と彼の駆けるツェンダップK800Wだった。

 

「神狩さん!」

 

「神狩くん!」

 

「白狼!」

 

「やれやれ………やっと到着か」

 

聖子、沙織、明菜、麻子もそう声を挙げる。

 

「悪かった! 色々あってよ!!………」

 

「神狩さん! フラッグ車を狙って下さいっ!!」

 

白狼は謝罪の言葉を述べて来るが、みほはそれを遮る様に叫んだ。

 

今この場で、フラッグ車を撃破出来る可能性が1番高いのが、白狼だからである。

 

「! 分かったっ!!」

 

それを聞いた白狼は、すぐさまバイクを加速させ、列車に填り込んでいる西部機甲部隊のフラッグ車へと向かった!

 

「! オートバイ兵が来ますっ!!」

 

「アレ、神狩 白狼じゃないっ!?」

 

「マジで!? ヤバいじゃんっ!!」

 

接近して来るバイクに跨った白狼の姿を見て、ラグドール、スコッティ、マンチカンがそう声を挙げる。

 

「撃てーっ! 近寄らせるなぁっ!!」

 

そこでミケがそう叫び、スチュワートの主砲が白狼に向けられ、火を噴く。

 

「うおっ! こんのぉっ!!」

 

榴弾を使っているのか、すぐ近くで次々に着弾の爆発が上がるが、白狼は構わずに更にバイクの速度を上げる。

 

爆発が次々に起こる中をバイクで走り抜けると、一昔前の特撮作品のヒーローの様な状況に置かれる白狼。

 

「懐に飛び込めば………」

 

やがて、鉄道土手を登り、スチュワートの射線が通らない列車のすぐ傍へとバイクを寄せる。

 

「! 死角に入られたっ!!」

 

「何も出来ないよっ!?」

 

「ピューマさんっ!!」

 

「!!」

 

攻撃が出来なくなる慌てるミケとマンチカンだったが、ラグドールがそう呼び掛け、ピューマが白狼を追う。

 

「…………」

 

フリーガーファウストを構えると、白狼に向かって引き金を引く。

 

「うおっ!?」

 

ロケット弾が至近距離に次々と着弾し、思わず声が出る白狼。

 

しかしそれでも、アクセルを緩める様な事はしない。

 

「へんっ! そんなヘナチョコ弾に当たるかってんだよっ!!」

 

白狼は後ろを振り返ると、ピューマに向かって挑発する様にそう言い放つ。

 

すると………

 

「…………」

 

何とピューマは、背負っていたまだ装填されている状態のフリーガーファウストを全て捨てた!

 

そして、その次の瞬間!!

 

「!!」

 

今まで以上のスピードで走り出し、アッと言う間に白狼のバイクへと追い付く!!

 

「!? 何っ!?」

 

「………!!」

 

白狼が驚きの声を挙げた瞬間、ピューマは両手でバイクの後部を掴み、両足を思いっきり踏ん張った!!

 

「!? うおおっ!?」

 

途端にバイクが急減速を初め、白狼は思わず声を漏らす。

 

「マジかよっ!? コイツ、ホントに人間かっ!?」

 

信じられないピューマの身体能力に、白狼は驚愕を露わにする。

 

「クッソッ!! 離せってんだよぉっ!!」

 

アクセルを全開にして、ピューマを振り払おうとする白狼。

 

「!!」

 

だがピューマは、まるで喰らい付いたスッポンの様に、白狼のバイクから手を離そうとしない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、列車の客車内では………

 

「おっと? 向こうも面白い事になってるみたいだな」

 

「! 神狩………」

 

その光景は、客車内に居るジャンゴと弘樹からも確認出来ており、ジャンゴは飄々とした、弘樹は苦い顔を浮かべる。

 

車内の彼方此方には、弾痕と切り傷が刻まれ、投げナイフが突き刺さっており、弘樹の戦闘服も、所々が斬り裂かれている。

 

対するジャンゴも、戦闘服に斬られた後が有るものの、弘樹と比べてその度合いは少ない………

 

得意な得物を駆使して戦うジャンゴに対し、弘樹は1歩後れを取っていた。

 

「となると、コレ以上の戦いは無意味か………そろそろ決めさせてもらうぜ、舩坂分隊長」

 

「!!………」

 

とそこで、ジャンゴは勝負に出ると宣言し、弘樹の銃剣を握る手に力が入る。

 

「「…………」」

 

両者はそのまま睨み合う。

 

「………フッ!」

 

不意を衝く様に、ジャンゴが投げナイフを1本投擲!

 

「!………」

 

その軌道を見切った弘樹は、銃剣を使って、飛んで来た投げナイフを弾き飛ばす。

 

だが、直後!

 

最初に投擲された投げナイフの陰に隠れる様に飛んで来た、もう1本の投げナイフが襲い掛かった!

 

「! グッ!」

 

2本目の投げナイフは、弘樹の戦闘服の右肩口に命中して突き刺さる。

 

途端に、右腕が痺れて鉛の様に重たくなり、銃剣を落としてダラリと力無く垂れ下がった。

 

「終わりだな………舩坂分隊長」

 

そう言ってジャンゴは、M1917リボルバーを弘樹に向ける。

 

すると、その瞬間!!

 

「!!」

 

弘樹はまだ動く左手を、背負っていたパンツァーファウストに掛けた。

 

(オイオイ、対戦車兵器を対人に使うのか? けど、俺の早撃ちなら、弾頭が飛ぶ前に撃ち抜いてやるなんざ………)

 

ジャンゴは、弾頭が飛ぶ前に撃ち抜いてやろうと考えたが………

 

弘樹は弾頭が装着されている前部を、後ろに向けて構える!

 

「!? 何っ!?」

 

そこで初めてジャンゴは飄々とした顔を崩し、驚きを露わにした。

 

「…………」

 

弘樹はその状態のまま、パンツァーファウストの引き金を引く!

 

弾頭は後部に向かって発射され、バックブラストが前方に居たジャンゴに襲い掛かった!!

 

「! ぐああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」

 

真面に爆炎を浴び、仰け反るジャンゴ。

 

しかし、まだ戦死判定を下させるには至らない。

 

その直後!!

 

後方に向かって飛んだパンツァーファウストの弾頭が、弘樹達が居る客車の1両後ろの客車の車内の壁に命中!

 

「!?」

 

「ぐうっ!?」

 

爆風が前方に居た弘樹とジャンゴに襲い掛かる!

 

と、その時………

 

弘樹の傍に何かが飛んで来た………

 

それは、ジャンゴによって、後部車両の車内へと弾き飛ばされていたM1911A1だった。

 

パンツァーファウストの弾頭の爆発で、吹き飛ばされて戻って来たのである。

 

凄まじい偶然である。

 

「!!」

 

弘樹は反射的にそのM1911A1を左手で握ると、ジャンゴへと向ける!

 

「!?」

 

バックブラストのダメージを引き摺ったまま爆風に煽られたジャンゴは為す術もない!

 

「!!………」

 

弘樹はそのジャンゴに向かって、マガジン内の弾を全て撃ち込んだ!!

 

「ゴハッ!!………」

 

短く断末魔を漏らして床に倒れるジャンゴ。

 

今度こそ遂に、戦死判定が下った。

 

………その瞬間!!

 

列車が大きく揺れた!!

 

「!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び、白狼の方では………

 

「コレで如何だっ!!」

 

バイクの後部にしがみ付くピューマを振り払おうと、左右に激しくハンドルを切る白狼。

 

「!!………」

 

だが、それでもピューマは、バイクから手を離そうとしない。

 

「ええい! いい加減にしろっ!!」

 

とそこで、白狼は苛立った声と共に、カンプピストルを抜く。

 

この距離で使えば、白狼にも被害が及ぶのだが、頭に血が上っているのか、気づいていない。

 

しかし、そこで!!

 

突然、1両の客車が爆発!!

 

「!?」

 

「何っ!?」

 

ピューマと白狼が驚きを露わにした瞬間、爆発して激しく損傷した客車が脱線!

 

脱線した客車を引き摺る形となった蒸気機関車もバランスを崩す。

 

「えっ!?」

 

「ちょっ!?」

 

「まさかっ!?」

 

「嘘でしょっ!?」

 

ミケ、スコッティ、ラグドール、マンチカンがそう声を挙げた瞬間!!

 

先頭の蒸気機関車も遂に脱線!!

 

スチュワートが填っていたのを含めた残りの客車も次々にクラッシュして脱線し、大事故となる!

 

そしてその脱線した車両が全て、派手に土煙を挙げながら白狼達の方に転がって来た!!

 

「!? うおおおっ!?」

 

「!?!?」

 

回避が間に合わず、真面にその中へと突っ込む白狼とピューマ。

 

「!? 停車っ!!」

 

「ヤバッ!? ブレーキッ!!」

 

「止まってーっ!!」

 

更に、Ⅳ号、ヘルキャット、クロムウェルもその中に突っ込みそうになり、みほ、クロエ、聖子の慌てた指示が飛んだが、間に合わず………

 

3輌は脱線した車両の中へと突っ込んだ!!

 

白狼とピューマ、Ⅳ号、ヘルキャット、クロムウェルの姿は、脱線の際に舞い上がった土煙の中に完全に消える………

 

 

 

 

 

土煙の中………

 

「イテテテ………クッソ! 如何なったんだっ!?」

 

頭を押さえながら白狼が立ち上がる。

 

事故る直前にバイクから受け身を取って飛び降りたのだが、周りは濃い土煙が立ち込めていて何も見えない。

 

「試合終了のアナウンスが無いって事は、まだどっちのフラッグ車もやられてないって事か?」

 

試合終了のアナウンスが無い事からそう推察し、白狼は目を凝らしながら土煙の中を見回す。

 

その時!!

 

「!!」

 

白狼の前方の土煙が揺らめいたかと思うと、そこからピューマが飛び出して来た!

 

如何やら、彼も無事だった様である。

 

「! ピューマッ! クソッ!!」

 

白狼は反射的に、握ったままだったカンプピストルのグレネードを、ピューマ目掛けて発射した!

 

「!?」

 

だが、ピューマは上体を仰け反らせ、某映画の様にかわした………

 

かに見えたが、身体を支えきれず、後頭部を地面に強打!!

 

「!?………」

 

そのまま気を失ってしまう。

 

しかし、そこで………

 

最悪の事態が発生した!!

 

ピューマがかわした為、外れて飛翔を続けたグレネード弾が飛んだ先に、大きな影が現れる。

 

それは、停車し切れずに事故現場へと突入してしまった………

 

あんこうチームのⅣ号だった!!

 

「なっ!?」

 

「えっ?………」

 

白狼が驚愕し、みほが声を挙げた瞬間………

 

グレネード弾はⅣ号の装甲の薄い後部………

 

エンジンルームを直撃!!

 

即座に、Ⅳ号の砲塔上部から、撃破を示す………

 

白旗が上がった………

 

「!? ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーっ!?」

 

悲鳴の様な声を挙げる白狼。

 

最悪も最悪………

 

フレンドリーファイヤによって………

 

自軍のフラッグ車を撃破してしまったのである。

 

「そ、そんな………」

 

「嘘………負けちゃった?………」

 

「まさか………」

 

「あ、あああ………」

 

「…………」

 

撃破されたⅣ号のあんこうチームも、呆然自失となっていた。

 

負けたと言う事は、即ち………

 

大洗女子学園の廃校が決定してしまったのである………

 

今までの努力も健闘も、全て水泡に帰した………

 

大洗女子学園の存亡を掛けた戦いは、西部機甲部隊に敗れるという形で、ココに幕を閉じた………

 

誰もがそう思っていた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

が、しかし!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………? アナウンスが無い?」

 

そこでみほが、違和感を覚えた。

 

試合終了を告げるアナウンスが流れて来なかったからだ。

 

撃破判定システムは、審判団の持つ携帯端末から即座に確認出来る様になっているので、確認が出来てないと言う事は考えられない。

 

するとそこで、風が吹き、辺り一帯に待っていた土煙が吹き飛ばされる。

 

その瞬間、みほは………

 

西部機甲部隊のフラッグ車………

 

スチュワートから白旗が上がっているのを目撃する。

 

「! 西部のフラッグ車が!?」

 

「一体誰がっ!?」

 

みほと、装填手用のハッチを開けて身を乗り出して来た優花里も、驚きの声を挙げる。

 

「あ、当たった! 当たってるよっ! 優ちゃんっ!!」

 

「!?」

 

とそこで、後方からそう言う声が聞こえて来て、みほが振り返ると、そこには………

 

砲門から硝煙を上げているクロムウェルと、そのハッチから身を晒して叫んでいる聖子の姿が在った。

 

「ま、まさか………本当に当たるとは………」

 

「だから言ったでしょう! あそこに西部のフラッグ車が居る気がするって!!」

 

「いや、流石にそれだけじゃあ………」

 

優が信じられないと言う様子を見せていると、聖子がそう言い放ち、明菜が呆れた様子を見せる。

 

『只今の試合結果についてお知らせします』

 

とそこで、漸く主審のレミからのアナウンスが、試合会場内に響き渡る。

 

『確認を取ったところ、大洗機甲部隊フラッグ車と西部機甲部隊フラッグ車が撃破されたタイミングは完全に同時である事と判明しました』

 

「引き分け………なら」

 

『よって、戦車道のルールに則り………両機甲部隊、代表戦車チーム同士による、1対1の延長戦を行うものとします!』

 

みほがそう呟くと、レミがそうアナウンスを続けた。

 

そう………

 

戦車道のルールでは………

 

制限時間内に勝負が着かなかったり、両軍のフラッグ車が完全に同時に撃破されたりした場合………

 

両機甲部隊から代表戦車チームを1チーム選抜し………

 

1対1の延長戦を行うと言うルールが定められているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

西部機甲部隊のフラッグ車を追って、激しいデットヒートを繰り広げるあんこうチームとサンショウウオさんチーム。
弘樹がジャンゴを倒している間に、白狼もピューマの相手を引き受けていたが………
何と!!
フレンドリーファイヤで自軍フラッグ車を撃破してしまう。

命運尽きたかと思われた大洗だったが………
幸運にも、西部のフラッグ車も同時に撃破されていた。
首の皮一枚繋がった大洗は………
延長戦となる1対1の勝負に臨むのだった。

公式の戦車道ルールで、時間内に決着が着かなった場合、フラッグ車同士で1対1の戦いをやるって言うのがあったので、それを少し弄って導入してみました。
次回の決闘戦車戦にご注目です。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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