ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

140 / 287
第140話『神狩さん、遅参です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第140話『神狩さん、遅参です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

激戦に次ぐ激戦で………

 

西部のエース戦車乗り達を撃破しながらも、次々にリタイヤして行った大洗戦車チーム達………

 

そんな中………

 

西部機甲部隊のフラッグ車が………

 

暴走した列車で運ばれて行ってしまうと言う珍事が発生………

 

追撃を掛けたあんこうチームととらさん分隊、サンショウウオさんチームとタコさん分隊は………

 

ジャンゴとピューマ、クロエの妨害を受けながらも………

 

如何にか弘樹が列車に飛び乗る事に成功する。

 

一方………

 

唯一生き残っていたウサギさんチームは………

 

ハムスターさん分隊とおおかみさん分隊と共に………

 

クロエの元に増援として向かおうとしている西部戦車部隊の足止めに掛かるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第7回戦の試合会場………

 

和製西部劇の撮影所・西部フラッグ車を乗せた列車が走っている線路が続いているエリア………

 

生き残っていた西部機甲部隊の戦車部隊………

 

M4A3が8輌、チャーフィーが6輌、ローカストが2輌………

 

合計16輌の戦車隊が、砂煙を巻き上げながら、鉄道土手になっている線路の片側を沿う様に進軍している。

 

「急がないと! フラッグ車が狙われてるんでしょっ!!」

 

「けど、相手のフラッグ車も居て、クロエ総隊長も居るんでしょ?」

 

「態々私達が向かわなくても大丈夫じゃない?」

 

「それはそうかも知れないけど………でも! 万が一って事もあるじゃない!!」

 

西部戦車部隊のメンバーの間では、そんな会話が飛んでいる。

 

………と、その時!!

 

突如風切り音が聞こえて来たかと思うと、先頭を行っていたローカストの傍に、砲弾が着弾した!

 

「!? 敵襲っ!?」

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

すぐさま、西部戦車部隊の面々は前方を確認する。

 

そこには、やや小高い丘となっている場所の斜面に、ハルダウンしているウサギさんチームのM3リーの姿が在った。

 

「! 大洗の戦車!!」

 

「落ち着いて! 報告によれば、あのM3は主砲を破損しているわ! 使えるのは副砲の37ミリだけよ!!」

 

「それに大洗の残りの戦車は、フラッグ車を追跡している2輌を除けばあのM3だけ………」

 

「コッチは16輌も居るんだ! 気にせず前進するわよっ!!」

 

しかし、主砲を破損し、1輌しかいないM3リーを脅威とは思わず、西部戦車部隊は前進を続ける。

 

「撃てっ!!」

 

16輌の西部戦車部隊の一斉射が、M3リーに襲い掛かる!

 

「キャアッ!?」

 

「凄い攻撃………」

 

「やっぱり無理だよ~!」

 

周辺への着弾で、車内に激しい振動が走り、あゆみが悲鳴を挙げると、あやが冷や汗を流し、優希が若干涙声でそう言う。

 

「無理でもやるしかないよ! あの戦車達を西住総隊長達の元へ行かせるワケには行かないんだからっ!!」

 

「気合だぁーっ!!」

 

だが、梓はそんな一同を鼓舞し、桂利奈は自らを奮い立たせる様に叫ぶ。

 

「…………」

 

そして紗希は、黙々と副砲の装填を続けるのだった。

 

そんなウサギさんチームのM3リーに向かって、西部戦車部隊は容赦無く行進間射撃をお見舞いして行く。

 

「クウッ! 当たらないわよっ!!」

 

「あんなに深くハルダウンされてて、行進間射撃してるんじゃねえ………」

 

しかし、M3リーがダグインしている穴は、高いM3リーの車体が完全に隠れてしまう程に深く、西部戦車部隊から見えているのは副砲塔の部分だけだった。

 

その上、只でさえ命中率の低い行進間射撃なので、当てる事が出来ない。

 

「良し! M4A3部隊で先行するわ!! コッチの正面装甲なら、ギリギリ耐えられる筈よ!!」

 

「「「「「「「「了解っ!!」」」」」」」」

 

するとそこで、先行していたチャーフィー6輌とローカスト2輌が停止し、それを追い越す様にM4A3が前に出た。

 

如何やら、正面装甲でM3リーの砲撃に耐えつつ、しっかり狙える位置まで接近する積りらしい。

 

「M4A3が先行して来たよっ!」

 

「良し、予定通りだね………」

 

「光照くん達………お願いね」

 

あやがそう声を挙げると、梓は表情を強張らせ、あゆみが祈る様に両手を合わせる。

 

「もう少し接近して!」

 

「M3め、覚悟しろっ!」

 

その間にも、M4A3の部隊はM3リーに接近して行く。

 

だが、この時………

 

車長が全員車内に籠っており、随伴歩兵も居ない事もあって、西部戦車部隊は気づかなかった。

 

自分達がM3リーの方向へと向かって居る進路上に………

 

人1人が入れそうな穴………

 

蛸壺が無数に空いている事に………

 

「………来た」

 

その中の1つから、勇武が顔を覗かせて、向かって来るM4A3部隊を見据える。

 

その手には、対戦車地雷が携えられている。

 

「…………」

 

更に、別の蛸壺には、梱包爆薬を携えている清十郎の姿も在った。

 

他の蛸壺にも、ハムスターさん分隊とおおかみさん分隊の隊員達が、収束手榴弾、火炎瓶、吸着地雷や九九式破甲爆雷を携えて籠っており、無人の蛸壺も在る。

 

その蛸壺地帯に向かって、M4A3部隊がドンドン迫って来る。

 

「………ゴクッ」

 

目の前まで戦車が迫って来ると言う恐怖に、勇武は思わずツバを飲み込む。

 

だが、決して迫り来る戦車達から目を反らそうとしない。

 

(やるんだ………僕達だって………舩坂先輩達みたいに………勇敢に………)

 

そして遂に、M4A3が目と鼻の先にまで迫った瞬間!

 

「! 今だっ!!」

 

勇武は対戦車地雷を携えたまま蛸壺から飛び出し、地面を転がって、迫って来た居た1輌のM4A3の履帯と履帯の間で仰向けに伏せる!

 

勇武の存在に気付いていなかったM4A3は、そのまま進み、勇武の姿がM4A3の車体下へ吸い込まれる様に消える。

 

「フッ!」

 

その瞬間勇武は、対戦車地雷を磁気吸着機能で、M4A3の車体下に張り付けた!

 

そしてM4A3が通り過ぎると、手近に掘って在った蛸壺の中へ転がり込む。

 

直後に、対戦車地雷を仕掛けられたM4A3が爆発!

 

砲塔上部から、白旗が上がった!

 

「!? ええっ!?」

 

「何っ!?」

 

突如として白旗が上がった友軍車輌の姿を見て、西部戦車部隊に動揺が走る。

 

「良しっ!!」

 

と、そこで今度は、梱包爆薬を携えた清十郎が飛び出し、近くを走り抜けようとしていたM4A3に駆け寄り、その車体上に攀じ登った!

 

「! 8号車! 大洗の歩兵だ! 取り付かれているぞっ!!」

 

やや後方に居たチャーフィー部隊とローカスト部隊の内、ローカストの1輌の車長が、清十郎が取り付いたM4A3を見てそう通信を送る。

 

「!? ええっ!?」

 

取り付かれたM4A3の車長が驚愕の声を挙げた瞬間!!

 

「ハッ!!」

 

M4A3のエンジンルーム上に梱包爆薬を仕掛け終わった清十郎が、拉縄を引いて飛び降りる。

 

その数秒後に、梱包爆薬が爆発!

 

エンジンのガソリンに引火し、炎を撒き散らしながら炎上したかと思うと、白旗を上げる!

 

「うおおおっ!!」

 

ハムスターさん分隊の分隊員の1人が蛸壺から飛び出し、接近して来たM4A3に火炎瓶を持って突撃する。

 

「機銃掃射っ!」

 

「ハイッ!!」

 

しかし、タイミングを誤った為、同軸機銃での掃射を浴びせられてしまう!

 

「!? うわぁっ!?」

 

戦死判定は喰らわなかったものの、右足の大腿部に命中弾を喰らい、足が動かせなくなった状態で倒れるハムスターさん分隊の分隊員。

 

そのハムスターさん分隊の分隊員にトドメを刺そうと、M4A3が接近して来る。

 

踏み潰す積りの様だ。

 

「危ないっすっ!!」

 

とそこで、近くの蛸壺の中に居た正義が飛び出し、倒れていたハムスターさん分隊の分隊員の上に覆い被さる様にしがみ付いたかと思うと、そのまま一緒に転がってM4A3を回避する。

 

「チキショウッ!!」

 

そして、ハムスターさん分隊の分隊員が持っていた火炎瓶を手に取ると、通り過ぎたM4A3のエンジン部に向かって投げつけた!

 

火炎瓶が命中したエンジン部から炎が上がり、一瞬間を於いてエンジンが爆発!

 

M4A3は白旗を上げて停止する。

 

「マズイ! 突入するわよ!!」

 

「了解! 連携を密にっ!!」

 

とそこで、後方に下がっていたチャーフィー部隊とローカスト部隊が再度速度を上げ、やられているM4A3部隊を援護しようと突撃する。

 

その瞬間!

 

「貰ったぁっ!!」

 

そう言う台詞が聞こえたかと思うと、西部戦車部隊が居る場所の反対側の鉄道土手に隠れていた光照を中心とした対戦車兵部隊が、バズーカやパンツァーファウストを構えて姿を現す!

 

「!? しまった!? 鉄道土手の陰に!?」

 

「行けーっ!!」

 

1輌のチャーフィーの車長が驚きの声を挙げた瞬間、光照が構えていたバズーカの引き金を引く。

 

バックブラストが吹くと、ロケット弾が白煙の尾を引いて1輌のチャーフィーに向かい、車体側面に命中!

 

側面が焦げたチャーフィーが、ガクリと停止したかと思うと、白旗を上げる!

 

「ええいっ!!」

 

更に、別の大洗対戦車兵が、ロタ砲を発射し、ローカストに命中させる。

 

ローカストの砲塔上部から、白旗が上がる。

 

「ええいっ! 応戦しろっ!!」

 

止むを得ず、チャーフィー部隊と残り1輌のローカストは足を止め、鉄道土手の方へと車体と砲塔の向きを変え、砲撃を開始する。

 

砲弾が光照達の周辺に着弾し、次々に土埃が舞い上がる!

 

「うわあぁっ!?」

 

「こ、後退っ!!」

 

コレは堪らないと言う様に、光照達は再び鉄道土手の陰へと隠れる。

 

「逃がすか! 蹂躙してやるっ!!」

 

と、頭に血が上ったのか、残り1輌のローカストが鉄道土手を超えて光照達を追撃しようとする。

 

「! 待て! 深追いするなっ!!」

 

1輌のチャーフィーの車長がそう言ったが、既にローカストは鉄道土手の頂上部へ到達していた。

 

「貰ったっ!」

 

その瞬間、逃げた様に見せかけて、実はその場を動いていなかった光照が、鉄道土手を越えようとして晒されたローカストの車体下部分に、再装填を終えたバズーカのロケット弾を放った!

 

「なっ!?」

 

ローカストの車長が驚きの声を挙げた瞬間に、ロケット弾は命中。

 

当然撃破と判定され、白旗が上がる。

 

「密集して! 孤立していたらやられるわっ!!」

 

1輌のチャーフィーの車長がそう指示を飛ばし、西部戦車部隊は1箇所に集まろうとする。

 

「今だっ!!」

 

とそこで、籠っていた蛸壺の手近を通りかかったチャーフィーを見て、竜真が飛び出し、背後から車体の上に攀じ登り、梱包爆薬を仕掛けようとする。

 

「! 竜真! デンジャーッ!!」

 

「!? えっ!?」

 

しかしそこで、ジェームズがそう叫ぶのを聞いて、竜真が顔を上げると………

 

飛び乗ったチャーフィーの後方に居たチャーフィーが、竜真に向かって同軸機銃を発射した!!

 

「!? うわああっ!?」

 

真面に機銃弾を浴びてしまい、竜真は乗って居たチャーフィーの上から転がり落ちると、地面に倒れ、戦死と判定される。

 

「竜真! ガッデムッ!!」

 

それを見たジェームズは、怒りに駆られて蛸壺から飛び出し、対戦車地雷を片手に、竜真を撃ったチャーフィーを追う。

 

「! 後方より歩兵接近! 振り切ってっ!!」

 

だが、チャーフィーの車長は、接近して来るジェームズを発見し、速度を上げて振り切ろうとする。

 

「ううううっ!!」

 

それを必死に追うジェームズ。

 

全力疾走を続け、遂にチャーフィーの車体横の部分を片手で掴み、引き摺られる様に並走する。

 

「バンザイッ!!」

 

そして、もう片方の腕で抱えていた対戦車地雷を、履帯と転輪の中へと放り込んだ!

 

爆発でジェームズは吹き飛ばされて戦死となったが、チャーフィーも白旗を上げる。

 

「竜真! ジェームズッ!!」

 

竜真とジェームズがやられたのを見て、蛸壺から出ていた勇武が、思わず動きを止めてしまう。

 

「そこっ!!」

 

そしてそれを見逃さずに、M4A3が榴弾を発砲する。

 

「!? うあああっ!?」

 

至近距離に着弾し、無数の破片を浴びて倒れる勇武。

 

しかしまだ、辛うじて戦死判定は喰らっていない。

 

「ううう………」

 

呻き声を挙げ、戦闘服がダメージ判定で身体の動きを制限しているのを感じながら上体を少し起こす。

 

するとその目の前に、梱包爆薬が転がっていた。

 

「!!」

 

それを見てハッとする勇武。

 

先程榴弾を放ったM4A3は、勇武を倒したと思い、別の歩兵を攻撃しようと前進して来ている。

 

「! うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

それを見た勇武は叫び声を挙げて梱包爆薬を抱えて拉縄を引き、向かって来るM4A3の方へと転がって行く!

 

そしてそのまま、M4A3に飛び込んだ!!

 

爆発と共にM4A3が擱座し、撃破の判定を受ける。

 

勿論、勇武も戦死である………

 

多くの犠牲を払いながらも、西部戦車部隊を足止めするウサギさんチームとハムスターさん分隊におおかみさん分隊。

 

「…………」

 

「皆さん! 何としても此処で食い止めて下さいっ!!」

 

鉄道土手を遮蔽物に、陣がラハティ L-39 対戦車銃で履帯を破壊し、動きを止めたチャーフィーに向かって火炎瓶を投げつけて撃破しながら、飛彗がそう叫ぶ。

 

と、その時………

 

戦車とは違う、別のエンジン音が聞こえて来た。

 

「? 何だ?」

 

飛彗がその音が聞こえて来た方向を見やると、そこには………

 

「オノレ、大洗め! よくも我々の戦車部隊を!!」

 

バイクに乗るオセロットを先頭に、サイドカーに乗った山猫部隊の姿が在った。

 

「! リボルバー・オセロットッ!?」

 

「神狩 白狼の奴を探していたのに………何処にもいないではないか! その間にジャンゴから救援要請が来たと思えば、戦車部隊がこの有り様とは………全員、モグラ共を始末しろっ!!」

 

「「「「「「「「「「了解っ!!」」」」」」」」」」

 

飛彗が驚きの声を挙げる中、オセロットは愚痴りながらそう指示を出し、サイドカーに乗った山猫部隊が方々に散らばって行く。

 

「コレ以上はやらせんっ!」

 

「うわあっ!?」

 

「ぎゃあっ!?」

 

サイドカーの側車に乗って居た山猫部隊員が、短機関銃を薙ぎ払う様に連射し、ハムスターさん分隊員とおおかみさん分隊員達を次々に戦死させて行く。

 

「そらっ!!」

 

「!? うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」

 

また、別の山猫部隊員は、蛸壺の中に手榴弾を投げ入れ、籠っていたおおかみさん分隊員を戦死させる。

 

「喰らえっ!!」

 

「「「「「ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」」」」」

 

更に別の山猫部隊員は、火炎放射器から火炎を放ち、地上と蛸壺を同時に攻撃して戦死判定者を出して行く。

 

「フッ………」

 

「うわぁっ! た、弾が跳ね返って………」

 

オセロット自身も、得意の跳弾で蛸壺内の大洗歩兵隊員を次々に屠って行く。

 

「いけないっ! このままじゃっ!!」

 

その様子に焦った飛彗が、遮蔽物にしていた鉄道土手から飛び出す。

 

「!!」

 

陣が止めようとしたが敵わず、飛彗はオセロットの前へと躍り出る。

 

「指揮官を倒せば!………」

 

「馬鹿め! 狙撃兵が姿を晒して攻撃するなど!!」

 

しかし、飛彗がモシン・ナガンM1891/30を撃つよりも先に、オセロットがピースメーカーを発砲。

 

モシン・ナガンM1891/30が弾かれる。

 

「!? しまったっ!?」

 

「そらぁっ!!」

 

狼狽した飛彗に、オセロットはウィリーさせたバイクの前輪を叩き込んで来る!

 

「!? うわあっ!?」

 

咄嗟に身を捻ってダメージを軽減させたものの、衝撃でブッ飛ばされ、地面に倒れる飛彗。

 

「ぐうう………」

 

「しぶとい奴め………トドメだ」

 

戦闘服が動きを制限して中々立ち上がれない飛彗の傍の停車したオセロットがピースメーカーも向ける。

 

「くうっ!………」

 

ピースメーカーを向けて来ているオセロットを睨む飛彗。

 

だが、そこで………

 

またもやエンジン音が聞こえて来た。

 

「! この音っ!?」

 

飛彗が驚きの声を挙げる。

 

そのエンジン音は、飛彗にとって聞き慣れている音だった。

 

その直後!!

 

「うおりゃあっ!!」

 

オセロットの頭上に、バイクに乗った人物が躍り出た!!

 

「!? 何っ!?」

 

驚きながらも即座にバイクを発進させるオセロット。

 

バイクに乗って居た人物は、先程までオセロットが居た位置に着地する。

 

「やっと着いたぜ! チキショウッ!!」

 

その人物………漸く試合会場に到着した神狩 白狼は、そう悪態を吐く。

 

「白狼っ!!」

 

「飛彗! 大丈夫かっ!?」

 

白狼はバイクから降りると、近くに在ったモシン・ナガンM1891/30を拾い、飛彗を助け起こす。

 

「白狼! 僕の事は良いです! それより西住総隊長の方へ向かって下さいっ!!」

 

「ああ? 何でだよ?」

 

「実は………」

 

首を傾げる白狼に、飛彗はみほ達の状況を簡潔に手早く説明する。

 

「んな事になってるのかっ!?」

 

「恐らく、西住総隊長達は1人でも援軍が欲しい状態です。今此処から向かって間に合えるのは白狼だけです! 行って下さいっ!!」

 

「…………」

 

そう言われた白狼の脳裏に、一瞬優花里の顔が浮かんだ。

 

「………やられるんじゃねえぞ」

 

そして、白狼はそう言ったかと思うと、再びバイクに跨り、線路に沿って離脱して行く。

 

「良し………」

 

飛彗は如何にか身体を動かして、手近に在った蛸壺の中へと転がり込む。

 

すると、そこで………

 

「待てぇっ! 神狩 白狼ッ!!」

 

そう言う台詞と共に、オセロットが白狼の後を追った。

 

「! クッ!!………」

 

すぐにモシン・ナガンM1891/30を構える飛彗だったが、既にオセロットは射程外である。

 

「しまった………白狼、すみません。頼みます!」

 

飛彗はそう言うと、狙いをサイドカーに乗って居る山猫部隊員達に変え、その頭を次々にヘッドショットして行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

線路沿いにバイクを疾走させている白狼………

 

「急がねえとな」

 

白狼はそう言ってアクセルを更に吹かす。

 

何せ今回の戦いで活躍を挙げなかった場合、彼は大洗から転校しなければならないのだ。

 

「…………」

 

と、その事を思い出した白狼の顔に一瞬影が差す。

 

「神狩 白狼おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!」

 

「!?」

 

だがそこで叫び声が聞こえて来て、後ろを振り返るとそこには………

 

「あの時の屈辱を晴らさせてもらうぞぉっ!!」

 

右手にピースメーカーを握った状態でバイクに跨っているオセロットが、白狼を追撃して来ていた。

 

「チイッ! 今お前に構ってる暇はねえんだよっ!!」

 

白狼はそう言うと、速度を更に上げ、オセロットを振り切ろうとする。

 

「逃がさんっ!!」

 

するとオセロットは、腰のベルトに下げてあった銃床を取り、ピースメーカーに装着。

 

肩撃ちの姿勢で白狼に狙いを定めた。

 

「!? ヤベッ!!」

 

しかし、それに気づいた白狼は即座に、ハンドルを切る。

 

銃弾は、先程まで白狼が居た空間を通り抜ける。

 

「チイッ! 小癪なぁっ!!」

 

弾丸がかわされたのを見ると、オセロットは速度を上げ、そのまま白狼のバイクに後ろから接触した!

 

「!? おわっ!? テメェッ! 俺の大事なバイクに何しやがるっ!!」

 

一瞬バランスを崩しながらも持ち直し、接触されて少し破損したバイクの後部を見ながら、オセロットにそう怒鳴る白狼。

 

「ハアッ!」

 

しかし、オセロットはそれを無視して、今度は左側から接触して来る。

 

「うおっ!? またやりやがったぁっ! もう我慢出来ねぇっ!!」

 

すると白狼はそう言い放ち、今度は自分の方からオセロットの乗るバイクに接触した!

 

「おわっ! 貴様! 大事だと言って置いて自分からぶつけるのか!?」

 

「むんっ!!」

 

と、オセロットがそう喚いたところ、白狼はバイクに跨ったまま、オセロットの頭に左腕でヘッドロックを掛ける!

 

「うおっ!?」

 

「コノヤロッ! コノヤロッ!!」

 

そしてもう片方の手で、ヘッドロックを掛けたオセロットの脳天に拳骨を何度も見舞う。

 

「うおっ!? 馬鹿! 止せっ!!」

 

慌てるオセロット。

 

2人は未だにバイクに跨って走っている状態なので、傍から見ると危ない事この上ない。

 

「コノッ! コノォッ!!」

 

更にオセロットの脳天に拳骨を見舞う白狼。

 

「アダッ! イダッ!?………ええーいっ! いい加減にしろぉっ!!」

 

と、漸くの事で、白狼のヘッドロックを振り払うオセロット。

 

「うおっ!?」

 

バランスを崩して、オセロットから離れる白狼。

 

その間に、オセロットは白狼の背後の方に位置取る。

 

そして再び、銃床を付けたままのピースメーカーを構え、発砲する。

 

「!? うおっ!?」

 

白狼は咄嗟に、バイクの上にうつ伏せになる様な姿勢を取って回避する。

 

「チイッ!」

 

それを見たオセロットは舌打ちすると、速度を上げて再び白狼の隣に並ぶ。

 

「テヤァッ!!」

 

そして、銃床を付けたピースメーカーの銃本体部分を掴むと、銃床の部分で殴りつけて来る!

 

「うおっ!? 野郎っ!!」

 

それをかわすと、白狼はバイクに付けてあったホルスターから、ソードオフモデルのウィンチェスターM1887を抜く。

 

「させんっ!!」

 

「おわっ!?」

 

だが、オセロットは再びピースメーカーに取り付けた銃床で、白狼が抜いたソードオフモデルのウィンチェスターM1887を殴りつける!

 

ソードオフモデルのウィンチェスターM1887が弾かれそうになるが、白狼は何とか耐える。

 

しかしその際に、レバーがオープンになり、装填していた弾薬が衝撃で全て外へと飛び出してしまった。

 

「! 弾がっ!?」

 

「貰ったぞ! ベオウルフッ!!」

 

白狼がそう声を挙げた瞬間、オセロットはピースメーカーを白狼に向ける。

 

「! おりゃあっ!!」

 

だが、その瞬間!!

 

白狼は片足をギアから上げ、オセロットの身体にソバットを見舞った!

 

「!? ガハッ!? オノレッ!!」

 

その衝撃で、オセロットの乗るバイクが僅かに後退し、白狼の横にはオセロットが乗るバイクの前輪が来る。

 

「!!」

 

そこで白狼は、弾の無くなったソードオフモデルのウィンチェスターM1887を、刀で突きを繰り出す様な姿勢で構えた。

 

「!? き、貴様、まさかっ!?」

 

それを見て、オセロットは白狼が何をする気か察し、慌てて離脱しようとしたが………

 

「禁断の必殺技! 車輪に異物っ!!」

 

白狼はそう言い放ったかと思うと、オセロットの乗るバイクの前輪に、ソードオフモデルのウィンチェスターM1887を差し込んだ!!

 

「!? ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」

 

ソードオフモデルのウィンチェスターM1887が引っ掛かり、前輪が止まると、バイクが急停止し、オセロットは前方に投げ出された!

 

「!? ゴハッ!?」

 

1度地面に叩き付けられて、バウンドしたかと思うと………

 

「うおおおおおっ!!」

 

ウィリーした白狼が突っ込んで来て、バイクの前輪が身体に叩き込まれた!!

 

「ゲヤアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーーーーッ!?」

 

悲鳴と共に跳ね飛ばされて、地面を転がるオセロット。

 

漸く停止したかと思うと、そのまま戦死と判定される。

 

「言ったろっ! お前に構ってる暇は無いんだぁっ!!」

 

倒れているオセロットにそう言い放つと、白狼はアクセルを全開にし、改めて優花里達のところへと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

みほ達の元へ増援に向かって居た西部戦車隊を阻止する為………
決死の攻撃を開始したウサギさんチーム、ハムスターさん分隊、おおかみさん分隊。
今回ハムスターさん分隊達がやってきた攻撃は、以前アンツィオ&ピッツァの時にも紹介した、イタリア軍のフォルゴーレ空挺師団がやっていたとされる戦い方です。
それを映画にした『砂漠の戦場エル・アラメン』というものがあり、某動画サイトで観覧可能ですので、ご覧になって下さい。
見て損は無い戦争映画だと言えます。

そして遂に現れた白狼。
オセロットを下して、みほ達の救援に向かいますが、実は彼が思わぬ事態を引き起こしてしまいます。
それが何かは、次回のお楽しみにで。

では、ご意見、ご感想をお待ちしております。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。