ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第130話『鉱山の戦いです!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第130話『鉱山の戦いです!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

超長距離攻撃を行って来た西部機甲部隊のT28を撃破する為………

 

弘樹を部隊長とした特務部隊………

 

『アッセンブルEX-10』が臨時編成される。

 

鉱山に陣取る様に展開していたT28と護衛部隊に対し………

 

アッセンブルEX-10は坑道を利用したゲリラ戦を仕掛ける。

 

しかし、その間に西部の観測機が再度大洗機甲部隊を捕捉。

 

チャーフィー部隊が向かう中、T28の超長距離攻撃が再開される。

 

果たして、アッセンブルEX-10は、T28を撃破出来るのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第7回戦の試合会場………

 

和製西部劇の撮影所・鉱山エリアの坑道内某所………

 

「…………」

 

岩陰から上半身だけを出した弘樹は、四式自動小銃を3連射する。

 

「「「うわああっ!?」」」

 

それにより、頭や心臓の辺りに命中弾を喰らった西部歩兵3人が、一斉に倒れる。

 

「オノレェッ! 撃て撃てぇっ!!」

 

しかし、西部歩兵の1人がそう叫ぶと、軽機関銃や短機関銃を持った西部歩兵が弾幕を浴びせる。

 

「!………」

 

弘樹は身を屈め、岩陰に完全に隠れて弾幕を凌ぐ。

 

「うわあああっ!? 如何すんだよ、弘樹! 坑道内を通って不意を衝くんじゃなかったのか!?」

 

近くでは共に行動していた了平が、縮こまって頭を両手で抱えながらそう悪態を吐く様に言う。

 

「思ったより敵の立て直しが早かった………作戦失敗だ」

 

「ええっ!? マジかよ! うわあっ! もう駄目だぁっ!!」

 

「嘆いてる暇が有ったらお前も応戦しろ!」

 

銃だけを相手の方に向けて、牽制の射撃を行っている弘樹が、喚く了平にそう言い放つ。

 

と、そこで………

 

坑道内にまで響き渡る轟音と細かな振動が伝わって来た。

 

「! この音は!?………」

 

「T28が超長距離攻撃を再開したのか?………」

 

了平がハッとすると、弘樹が苦い顔をしてそう呟く。

 

『こちら西住! アッセンブルEX-10、応答願います!』

 

途端に、みほからの通信が入って来る。

 

「こちらアッセンブルEX-10、舩坂です。西住総隊長、敵の超長距離攻撃が再開されたのですか?」

 

『うん! 今は山影で凌いでるけど、さっき哨戒に出てた偵察兵部隊がチャーフィーの部隊がコッチに向かってるのを見つけたって。攻撃されたら、流石に動かないといけないけど………』

 

「観測機付きの超長距離攻撃に身を晒す事になる………か」

 

益々苦い顔をする弘樹。

 

『多少は持たせられると思うけど、弘樹くん、お願い………成るべく急いでT28を撃破して』

 

「了解しました」

 

みほにそう返すと弘樹は通信を切る。

 

「オイ、早めに撃破してくれって、先ずこの状況如何にかしないと駄目だろっ!?」

 

「だったらお前も考えろ!」

 

傍で通信内容をを聞いていた了平がそう言い放つが、弘樹はそう怒鳴り返す。

 

とその時!

 

「フッ飛べっ!」

 

M1ガーランドに、M7グレネードランチャーを取り付けていた西部歩兵がそう言う声と共に、装着しているグレネードを弘樹達に向ける。

 

「! 伏せろっ!!」

 

「へぶっ!?」

 

それを見た弘樹は、そう言って了平の頭を掴み、地面に完全に伏せさせる。

 

直後にグレネードが発射され、弘樹達が隠れている岩を飛び越して行ったかと思うと、その先に在った木箱に命中する。

 

「ぎゃあああっ!?」

 

「クッ………」

 

慌てふためく了平と、短く声を漏らす弘樹。

 

幸い殺傷範囲からは外れていたらしく、弘樹達の元に届いたのは木箱の破片と爆煙だけだった。

 

するとそこで………

 

弘樹の目の前に、石ころが転がった様な音と共に『何か』が転がって来る。

 

「!? コレは………」

 

その転がって来たモノを見て、弘樹は僅かに驚きを示す。

 

「…………」

 

そして何かを思いついたかの様な顔を見せたかと思うと、その転がって来たモノを引っ掴んだ。

 

「やったかっ!?」

 

「いや、まだだ! もう1発………」

 

倒したかと思う西部歩兵に対し、M1ガーランドを持つ西部歩兵が、再びM7グレネードランチャーを装着する。

 

………そこで!!

 

「そらっ!」

 

岩陰から一瞬で身を出した弘樹が、手に握っていた物を投擲した!

 

「! グレネードだ! 下がれっ!!」

 

「!? うおおおっ!?」

 

投擲されて来た物が手榴弾だと思い、後退する西部歩兵。

 

しかし、何時まで経っても爆発が起こらなかった………

 

「………うん?」

 

「不発弾か?………」

 

爆発しなかったので、そこで改めて投擲されて来た物を確認する西部歩兵達。

 

すると………

 

「なっ!?」

 

「ア、アレはっ!?」

 

「そんな!? まさか!?」

 

途端に西部歩兵達は目の色を変える。

 

何故なら、投擲され来た物は黄金色に輝く物体………

 

そう………

 

「き………」

 

「「「「「金だぁーっ!!」」」」」

 

金だった。

 

「俺の物だぁーっ!!」

 

西部歩兵の1人が、欲望丸出しでそう言い、その金を拾い上げる。

 

「あ! テメェッ! 抜け駆けは許さねえぞっ!!」

 

別の西部歩兵が、その金を奪おうと掴み掛る。

 

「ウルセェッ! 早いもん勝ちだぁっ!!」

 

「そんなのアリかよ!?」

 

「俺に寄こせっ!!」

 

「いや、俺だぁっ!!」

 

忽ち、金を巡っての奪い合いに発展する西部歩兵達。

 

何とも醜い争いである。

 

「…………」

 

するとそこで、弘樹が再び岩陰から身を乗り出し、またも『何か』を投擲した!

 

「おおっ!? また金かっ!?」

 

「今度は俺のモンだぁっ!!」

 

と、欲に支配された西部歩兵達は、それも金だと思い、キャッチする。

 

しかし、キャッチした物は………

 

手榴弾だった。

 

「「「「「………あ」」」」」

 

西部歩兵達の間抜けな声が響いた瞬間に、手榴弾は爆発!

 

当然、西部歩兵達は悲鳴を挙げる間も無く、全員が戦死判定となって倒れ伏せた。

 

「………欲に目が眩むと碌な事がないぞ」

 

とそこで、岩陰から出て来た弘樹が、倒れ伏せている西部歩兵達に向かって、皮肉の様にそう言う。

 

「オイ、弘樹。でも、流石に勿体無かったんじゃ………」

 

一方、遅れて出て来た了平はそんな言葉を漏らす。

 

「………欲しいならやるぞ」

 

すると弘樹は、足元に有った物を拾い上げ、了平の方へ背中越しに放り投げた。

 

「わっ、と!………! うおおおっ! き、金!………あ?」

 

それが先程使った金で有ったのを見た了平は歓喜の声を挙げたが、すぐに気づく………

 

その金が欠けた部分から………

 

プラスチックが見えている事に………

 

「偽物かよ!?」

 

「撮影で使われた小道具を忘れて行ったんだろう………まあ、お蔭で状況を打開出来たがな」

 

「チキショーッ!!」

 

小道具の金を地面に叩き付けると、了平は地団駄を踏む。

 

「………急ぐぞ」

 

しかし、それを気にする様子も見せず、弘樹はそう言うと走り出した。

 

「あ! オ、オイ! 待ってくれよぉっ!!」

 

慌ててその後を追う了平だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、別の坑道内でも………

 

38tが、時々車体を坑道内の付き出した岩で擦りながらも進んで行っている。

 

「え~と………次の分かれ道を左折で」

 

「了解………」

 

マッピングした坑道内の地図を見ながら、柚子に指示を出している蛍。

 

「でも、上手くT28の背後に回り込めても、38tの主砲じゃ貫通は難しいんじゃ………」

 

とそこで、蛍がそう不安を口にする。

 

「やるしかない………出来るとか出来ないとか言ってられる状況じゃないんだから」

 

すると、珍しく真剣な表情の杏がそう返す。

 

「流石です、会長!」

 

「…………」

 

桃のヨイショする言葉にも反応せず、ジッと照準器を覗き込んで居る杏。

 

「あ、次左折ね」

 

「うん」

 

とそこで、38tは真っ直ぐと正面に分かれた道を、左の方へと左折する。

 

途端に、目の前にローカストが立ちはだかった。

 

「「「あ………」」」

 

「「「え?………」」」

 

不意の至近距離での遭遇だった為、カメさんチームもローカストの乗員も、唖然となって思わず固まってしまう。

 

沈黙が坑道内を支配する………

 

「全速後退っ!! 元の道へ戻れっ!!」

 

「!!」

 

しかしそこで、杏の声が響き、柚子は反射的に38tをバックさせる!

 

「! う、撃てっ! 撃てぇーっ!!」

 

「!!」

 

そこでローカストの乗員達も我に返り、車長が砲撃を命じ、ローカストの主砲が火を噴く!

 

だが、間一髪、38tは左折した分かれ道のところへ後退し終え、砲弾を避ける。

 

「全速前進! 正面の道へ行けっ!!」

 

「ええっ!? 敵の前を横切るんですか!?」

 

「バックじゃスピードが出ない! 坑道が狭過ぎて信地旋回も無理だ! 今撃ったばかりだから急げば間に合う!」

 

「ハ、ハイッ!!」

 

直進せよと言う杏の指示に戸惑ったものの、矢継ぎ早に説明され、柚子はすぐに38tを全速前進させた!

 

そしてローカストが居る左の通路への入り口を通り過ぎた瞬間に、ローカストが放った次弾が、坑道の壁を抉った!

 

「うわっ!? 間一髪っ!!」

 

「まだだっ!!」

 

「追え追えーっ!! 逃がすなぁーっ!!」

 

直後にローカストが飛び出して来て、後を追って来る。

 

「うわあーっ!? 追って来るーっ!!」

 

「小山! 兎に角逃げろ! 逃げて逃げまくれ!」

 

「ハイッ!!」

 

例によって桃が絶望の悲鳴を挙げる中、杏は柚子にそう言い、38tは車体の彼方此方を擦りながら坑道内を駆け抜けて行く。

 

「逃がすかっ!!」

 

そこで三度、ローカストが発砲!

 

砲弾は38tの僅か後ろの地面に着弾し、トロッコのレールと地面を抉って穴を空ける。

 

「!? うわぁっ!?」

 

と、その穴の上をローカストが通過した際に、車体が跳ね上がる。

 

「駄目だ! こう狭いと外した時にコッチに支障が出る! 広めな所に出るまで待て!」

 

「了解!」

 

「こちらローカスト4号車! 敵38tを発見! 現在追跡中! 近くの歩兵はすぐに援護に来て!」

 

『『『『『了解っ!!』』』』』

 

無闇な発砲は自分達も危険だと判断したローカストの車長は発砲を控える様に指示し、歩兵部隊に救援要請を送る。

 

するとそこで、車体に銃弾が連続で当たり、金属音を響かせ始める。

 

「うわぁっ!」

 

「煩ーいっ!!」

 

車内に充満する不快な金属音に、ローカストの乗員は思わず悲鳴を挙げる。

 

「会長~! 効いてませ~んっ!!」

 

「牽制になれば良い! 兎に角撃ち続けろ!!」

 

後ろを向けた砲塔の主砲横に着けられていたMG37(t)を撃っている桃が涙声でそう訴えるが、杏は撃ち続けろと言い放つ。

 

「! 会長! 前にっ!!」

 

「!?」

 

そこで柚子がそう声を挙げ、杏がキューポラから前方を見やると、坑道が直進と右へと分かれており、直進の道には西部歩兵が展開していた。

 

「小山! 右へ行けっ!!」

 

「ハイッ!」

 

すぐさま杏はそう指示を出し、38tは西部歩兵達を避ける様に右の通路へと入った!

 

当然ローカストも後を追って来る。

 

「! 前方が開けるぞ!!」

 

と、キューポラから前方を見続けていた杏が、前方に木枠の入り口が見えたのを見てそう言う。

 

そして、木枠の入り口を越えた瞬間………

 

「なっ!?」

 

「何此処ーっ!?」

 

柚子と蛍がそう悲鳴を挙げた!

 

38tが飛び込んだ場所は………

 

トロッコ用のレールが、木で造られた櫓の上を走っていると言う、まるでジェットコースターの様な場所だった。

 

しかも、丁度38tが向かっている先は、ジェットコースターの始まりの様に、急な下り坂になっている。

 

「………行け、小山!」

 

一瞬考えた様な素振りを見せた後、柚子に向かってそう言い放つ杏。

 

「ええっ!? 此処をですかっ!?」

 

「追われてるんだ! 悩んでいる暇は無い!!」

 

「な、南無三ーっ!!」

 

思わずそんな言葉を口走りながら、柚子は38tを進ませた!

 

当然、下り坂に入った途端、38tは急加速する。

 

「「わあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!」」

 

「ぎゃああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーっ!!」

 

悲鳴を挙げる柚子と蛍。

 

桃に至ってはこの世の終わりの様な声を挙げている。

 

「…………」

 

そんな中でも、杏は1人冷静に、追って来るローカストに狙いを合わせようと、照準器を覗き込んで居る。

 

(クソッ! こう動きが激しいと………)

 

しかし、ジェットコースターのコースの様なトロッコのレール上を高速で移動している状態で狙いを付けるのは至難の技だった。

 

「良し! 開けた場所に出たぞっ! 撃ち方用意っ!!」

 

「ですが、この状況じゃ………」

 

「撃っていればその内当たる! 兎に角撃てっ!!」

 

一方、ローカストの方は下手な鉄砲数撃ちゃ当たる作戦で行く様で、主砲をドンドンと発砲する。

 

その内の1発が、38tの砲塔側面に、掠る様に命中した。

 

「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ! やられたーっ!!」

 

「やられてないよ、桃ちゃん!」

 

「会長! 如何するんですか!?」

 

「今考えてる!」

 

カメさんチームに焦りが生じ始める。

 

と、その時!!

 

ローカストから放たれた1発の砲弾が、38tの進路上に着弾!

 

トロッコのレールと足場の櫓が崩れ落ちた!

 

「! 会長! 道がっ!!」

 

「!!」

 

杏は苦い顔で前方を見やる。

 

(! アレは!?)

 

しかしそこで、前方に下の方に、このエリアの出口と思われる場所を発見する。

 

「………小山! スピードを最大まで出せっ!!」

 

「ええっ!? 会長! 気でも狂ったんですかっ!?」

 

「良いから出せっ!!」

 

「ハ、ハイーッ!!」

 

杏の指示に従い、最高スピードを出す柚子。

 

「皆何かに掴まれっ!!」

 

「「!!」」

 

そして杏は続けてそう言い、桃と蛍は身体を固定する。

 

「飛ぶぞぉーっ!!」

 

と、杏が叫んだ瞬間!!

 

38tは崩れた場所から大ジャンプ!!

 

そのまま出口へと向かう。

 

「!? 停止ーっ!!」

 

「ま、間に合いませんーっ!!」

 

追って来ていたローカストはブレーキを掛けたが停まれず、そのまま崩れた部分から落下!

 

下方の地面に叩き付けられたかと思うと、そのまま大破と判定され、白旗が上がった。

 

「会長ーっ! コレ着地は考えてるんですかーっ!!」

 

一方、まだ空中に居る38tの車内で、柚子がそう杏に問い質す。

 

「任せろ………運に」

 

「「「運任せーっ!?」」」

 

柚子達の悲鳴が響いた瞬間!

 

38tは出口へと到達。

 

バウンドして、天井に叩き付けられた後に止まる。

 

「………ふ~~う、運が良かったみたいだな」

 

「今日ばかりは会長に付いて来た事を後悔しました………」

 

「私も………」

 

「うわあ~~~~~~んっ!!」

 

杏が天を仰いでいる中、柚子と蛍がそう言い合い、桃は子供の様に泣きじゃくるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更に別の坑道内では………

 

「居たぞっ!! 大洗の歩兵だ!!」

 

坑道内を進んでいた2名の大洗歩兵を見つけた西部歩兵がそう声を挙げ、他の西部歩兵が集まって来る。

 

「狙えっ!!」

 

そして一斉に銃を構えるが………

 

「イヤーッ!!」

 

その2名の歩兵の内の片方………小太郎がニンジャシャウトを響かせたかと思うと、腕を鞭の様に撓らせ、スリケンを複数投擲した!

 

投擲されたスリケンは、西部歩兵が構えていた銃の銃身に突き刺さり、銃口を塞ぐ!

 

「!?」

 

「銃がっ!?」

 

「イヤーッ!!」

 

西部歩兵達が驚いていた瞬間に、再び小太郎のニンジャシャウトが木霊し、複数のスリケンが投擲される!

 

「「「「「アバーッ!?」」」」」

 

そのスリケンは全て西部歩兵の眉間に命中!

 

西部歩兵達は一斉に戦死判定を喰らった!

 

「水谷殿、大丈夫でござるか?」

 

「ハ、ハイ………何とか………」

 

西部歩兵が全員戦死判定を喰らったのを確認した小太郎がもう1人の歩兵………灰史にそう声を掛ける。

 

直接戦闘能力に乏しい工兵の為、この場は小太郎に任せるしかなかったのだ。

 

とそこで、またも坑道内に砲撃音が響き、振動が走る。

 

「クッ! T28でござるか!」

 

「急がないと、本隊も危ないですよ」

 

「しかし、こう敵と出くわしてばかりでは………」

 

苦々しげにそう呟く小太郎。

 

「………うん?」

 

とその時、灰史が何かに気付いた様に坑道の壁に近づき、手を当てる。

 

「? 如何したでござる、水谷殿」

 

「………水です」

 

「水?」

 

灰史の言う通り、彼が今手を当てている坑道の壁からは、僅かだが水が染み出して来ていた。

 

「地下水でござるか………」

 

「コレは………使えるかも知れない」

 

そこで灰史はそう言うと、坑道内のマップを広げる。

 

「現在位置が此処だから………うん、行ける」

 

「何をする気でござる?」

 

「天竺&ジョロキア機甲部隊との練習試合で、西住総隊長が使った手ですよ」

 

小太郎が尋ねると、灰史はそう返すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、坑道の外………

 

T28が陣取っている場所では………

 

『着弾!! やや東より!!』

 

「右に2度修正」

 

「ハイッ!!」

 

シャムの指示で、僅かに車体を動かすT28の操縦手。

 

「装填完了!」

 

「撃てっ!!」

 

「発射っ!!」

 

そしてまたもや、主砲から轟音と共に砲弾が吐き出される。

 

『着弾!! 敵装甲車を撃破!!』

 

「チッ! 中々戦車に損害を出せないわね………」

 

さっきからバカスカ撃っているのに、大洗の戦車には命中弾を出せていない事にシャムが苛立ち始める。

 

「まあ、良いわ。どうせ向こうは何も出来ないんだから。ジワジワと追い詰めてあげる。左に3度」

 

「ハイ!」

 

しかし、すぐに冷静になると、またも操縦手に車体を動かす様に指示を出す。

 

と、その時!!

 

ガキンッ!!と言う金属同士がぶつかり合った様な音が、T28の車内に響いた!

 

「!? 何っ!?」

 

損害は無かったが、何事かとハッチから上半身を出して、音の正体を確認しようとするシャム。

 

その直後に発砲音がしたかと思うと、T28の車体上面右側の部分に何かが当たって、火花を散らした!

 

「!!」

 

シャムが発砲音がした方向を確認すると、そこには…………

 

「…………」

 

崖の稜線越しに、ラハティ L-39 対戦車銃を伏せ撃ちで構えている陣の姿が在った。

 

排莢を行ったかと思うと、再び射撃する陣。

 

「キャッ!? 狙撃兵!? 何考えてるの!? 対戦車ライフル如きでこのT28の装甲を抜けると思ってるの!?」

 

近くに着弾した為、シャムは驚きの声を挙げるが、すぐに車内へと引っ込んでそう言う。

 

「撃ちますかっ!?」

 

「止めなさい! 歩兵1人に構ってる暇は無いわ! 今は大洗の本隊を攻撃するのが先よ! アイツは歩兵部隊に処理させるわ!!」

 

対戦車ライフルではT28に損害は与えられないので、シャムは陣を無視して超長距離攻撃を続ける様に指示する。

 

「…………」

 

その間にも、陣は黙々と射撃を続けるのだった。

 

「野郎っ!」

 

「場所も変えないで撃ち続けるとは、舐められたもんだぜっ!!」

 

そんな陣の元へ、西部歩兵達が向かおうとする。

 

と………

 

「行かせるかぁーっ!!」

 

直後に、坑道への入り口から、陸王に乗った弦一朗が飛び出して来て、陣の元へと向かおうとしていた西部歩兵部隊に突っ込む!

 

「!? 何っ!?………! うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」

 

1人の西部歩兵が、突然現れた弦一朗のバイクに跳ね飛ばされ、崖を落ちて行く。

 

そして崖の下に到達すると、戦死と判定される。

 

「! 野郎っ!!」

 

「おらあっ!」

 

「ガハッ!?」

 

別の西部歩兵が、ピースメーカーを抜いたが、弦一朗はバイクに乗ったまま、擦れ違い様に蹴りを喰らわせる!

 

「ヒャッホーッ!!」

 

そして一旦、西部歩兵達から距離を離す様に去って行く。

 

「野郎!」

 

「ふざけやがってっ!!」

 

距離を離した弦一朗に向かって、西部歩兵達は一斉に銃を向けたが………

 

「撃てぇーっ!!」

 

横からそう言う声が聞こえたかと思うと、弦一朗が飛び出して来た坑道の入り口に姿を現した大洗歩兵達が、短機関銃や軽機関銃で銃撃を浴びせた!

 

「「「「「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」」」」」

 

「良し、今だっ!!」

 

坑道の出入り口付近に居た西部歩兵達を排除すると、大洗歩兵達は坑道内から出て来て、障害物に隠れながら武器を構えて、陣の元へと向かう道を封鎖する。

 

「クソッ! 防御線を敷かれたか!!」

 

「A班! 上の方から行けるかっ!?」

 

『任せろっ!!』

 

しかし、西部歩兵達は段々となっている崖の内、大洗歩兵部隊が展開した所より上の段の方から、別の部隊が回り込もうとする。

 

「おっと! 此処は通行止めだぜっ!!」

 

だが、その前にも、右手に二式拳銃を持った隆太が立ちはだかった。

 

「お前達、倒すけど良いよな? 答えは聞かないけどな!」

 

「生意気な野郎めっ!」

 

「たった1人で何が出来るっ!!」

 

隆太の挑発の言葉に怒った西部歩兵達が、一斉に隆太に向かって銃撃する。

 

「よっ! ほっ! ハッ!」

 

しかし、隆太はブレイクダンスをしながら、その銃撃をかわす。

 

「コノヤロウッ! ふざけやがってっ!!」

 

踊りながら自分達の弾をかわす隆太に、西部歩兵達は怒りを募らせる。

 

と………

 

「バーンッ!」

 

不意に隆太は、ブレイクダンスのアクロバティックな姿勢のまま、二式拳銃を発砲した!

 

「ぐあっ!?」

 

1人の西部歩兵が、その弾丸で頭に命中弾を喰らい、戦死と判定される。

 

「何っ!?」

 

「バンッ! バンッ! バーンッ!!」

 

別の西部歩兵が驚きの声を挙げる中、隆太は子供の様に発砲音を口で響かせながら、ブレイクダンスのアクロバティックなポーズを次々に決めて、その都度に発砲する。

 

「がはっ!?」

 

「ギャッ!?」

 

その弾が次々に西部歩兵達に命中し、次々と戦死判定者を出して行く。

 

「隆太、大丈夫か?」

 

「うええ、漸く狭苦しい場所から出たかと思ったら、最前線かよ………」

 

とそこで、近くに在った坑道への出入り口から、弘樹と了平が出て来る。

 

「ああ、兄さん。別に如何って事ないさ、コレぐらい」

 

『準備、完了しました!』

 

隆太が弘樹にそう返した瞬間に、通信回線に灰史の声が響いた。

 

「良し! やれ、水谷くん!」

 

『ハイ!………爆破ッ!!』

 

弘樹の指示に灰史がそう返すと、爆発音と振動が坑道エリアに響いた!

 

『!? 何っ!?』

 

シャムが驚きの声を挙げると………

 

坑道の出入り口から、大量の水が噴き出して来た!!

 

「「「「「わあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!?」」」」」

 

「「「きゃああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」」」

 

余りの水の量の前に、坑道内に残っていた西部歩兵達だけでなく、残っていた2両のローカストも流し出されて来る。

 

そして、大量の水によって、辺り一面の地面がぬかるみ始める。

 

『地盤を緩ませて、コッチの動きを封じる積りね………けど、このT28の4重履帯なら!』

 

だが、4重の履帯を持つT28は、泥沼状態の地面でも問題無く動いて見せる。

 

と、その時!!

 

「…………」

 

陣がまたもやラハティ L-39 対戦車銃を発砲する。

 

そして、放たれた弾丸が、T28の左上面部に命中したかと思うと………

 

何と、T28の左外側の履帯が車体から外れた!

 

『えっ!?』

 

シャムが驚きの声を挙げた瞬間に、再び20ミリ弾がT28の今度は右上面部に命中。

 

すると今度は、右外側の履帯が外れる!

 

『右外部履帯脱落!』

 

『!? まさかっ!?』

 

操縦手の報告を聞いたシャムが、ハッチから飛び出して『ある物』を確認する。

 

「! やっぱり! 履帯の固定器具を!?」

 

そう………

 

先程からの陣の攻撃………

 

それは、T28の外側の履帯を固定している器具を狙っていたのだ。

 

履帯が2本になり、接地圧が下がったT28は、ぬかるんだ地面に埋まり始める。

 

「! いけないっ!!」

 

「良し、今だ! 白鳥くんっ!!」

 

「ハイッ!!」

 

シャムが声を挙げた瞬間に弘樹がそう叫び、彼が居る場所から1つ上の段の崖の上に、パンツァーファウストを構えた弁慶が姿を見せる。

 

「うおおおおっ!! させるかああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

だがそこで、弘樹達の居る段と同じ段の崖の上に居た西部歩兵の1人が、弁慶目掛けて手榴弾を投擲した!

 

「!? うわぁっ!?」

 

幸い爆発の殺傷範囲からは逃れたが、爆風に煽られ、弁慶はパンツァーファウストを手放してしまう。

 

「白鳥くん!? チイッ!!」

 

弁慶の心配をしつつも、四式自動小銃で西武歩兵達を射撃する弘樹。

 

「あわわわっ!? やばいじゃん!!」

 

そんな中であわあわするばかりの了平。

 

と、そんな了平の傍に………

 

弁慶が手放してしまったパンツァーファウストが落ちて来る。

 

「!!」

 

そのパンツァーファウストを見てハッとする了平。

 

そして、反対側の崖の方を見やると、採掘品を運ぶ為に空中に張られたロープに付いている滑車が目に入る。

 

丁度その張られているロープは、T28の真上を通過している。

 

「…………」

 

了平は、考え込む様な素振りを見せる。

 

「クソッ! うっとおしいなっ!!」

 

「そこか!………」

 

隆太と弘樹は、西部歩兵達への対処で手一杯の状態である。

 

「………よ、よおし! 俺だって!!」

 

とそこで、了平はパンツァーファウストを拾い上げると、滑車の方へと向かう了平。

 

「! 綿貫先輩!?」

 

「了平っ!?………! 隆太! 了平を援護しろ!!」

 

「! ハイッ!!」

 

了平の突然の行動に驚く2人だったが、弘樹はすぐに何をする気なのかを悟り、隆太に援護する様に言う。

 

「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!」

 

了平はパンツァーファウストを片腕に抱え、もう片方の腕で滑車にしがみ付く。

 

「ア~ア~ア~ッ!!」

 

そしてターザンの様な声を挙げながら、滑車で空中のロープを滑って行く。

 

そのままT28の頭上に差し掛かると、パンツァーファウストを向ける。

 

「喰らえっ!………アレッ?」

 

しかし、引き金を引いても弾頭が発射されない………

 

如何やら、先程落下した際に、壊れてしまっていた様である。

 

「チキショーッ! マジかよっ!?」

 

嘆く了平。

 

このままではT28の頭上を素通りしてしまう。

 

「…………」

 

そこで了平は、覚悟を決めた顔になった。

 

「………おりゃあっ!!」

 

何と!

 

滑車から手を離し、T28目掛けて落下する!!

 

「!? ヤバイッ!!」

 

その了平の姿を見たシャムが、反射的に車内へ引っ込む。

 

「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ! コレで俺もモテモテにぃーっ!!」

 

そしてそのまま………

 

パンツァーファウストの弾頭を、T28の上面………エンジンルーム部分へ叩き付けた!!

 

途端に弾頭が爆発!!

 

巨大な爆煙が、立ち上る!!

 

「了平っ!!」

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

弘樹が声を挙げ、他の大洗歩兵隊員達も爆発地点に注目する。

 

やがて、徐々に爆煙が晴れて行き、その中から………

 

戦死判定を受けて地面に倒れ伏せている了平と………

 

その傍で白旗を上げているT28の姿が露わになった。

 

「………見事だ、了平」

 

それを見た弘樹はそう呟き、ヤマト式敬礼をする。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

他の面子も、それに倣ってヤマト式敬礼を了平へと送るのだった。

 

『こちらカメさんチーム。残ってたローカストと西部の歩兵達が撤退して行くよ』

 

『追撃しますか!?』

 

とそこで、事前に坑道内から退避していたカメさんチームの杏とアヒルさんチームの典子からそう通信が入る。

 

「いえ、我々の目的は果たしました。本隊に合流しましょう」

 

『りょ~か~い』

 

『分かりました』

 

「………撤収するぞ。本隊に合流だ」

 

「「「「「「「「「「了解!」」」」」」」」」」

 

杏と典子にそう返すと、傍に居た歩兵隊員達にもそう言い、アッセンブルEX-10は大洗機甲部隊の本隊へ合流に向かうのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

T28撃破の為に、坑道を利用したゲリラ戦を展開したアッセンブルEX-10だったが、敵の立て直しが早く、苦戦を強いられる。
だが、灰史が地下水が染み出しているのを発見し、天竺&ジョロキア機甲部隊との練習試合で使った、泥濘を利用する手を考える。
陣のアシストもあって、護衛部隊を排除し、T28の動きを封じる事に成功する。
そして最後は、了平の捨て身の攻撃のより、T28撃破に成功。
任務を果たしたアッセンブルEX-10は、本隊へ帰還するのだった。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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