ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第128話『超重戦車T28です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第128話『超重戦車T28です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遂に戦車道・歩兵道公式戦の第7回戦………

 

大洗機甲部隊と西部機甲部隊の試合が開始された。

 

カスタムされたシャーマンを駆るエース戦車乗り達にT28を操る参謀………

 

そして、快速の駆逐戦車を駆る総隊長に、個々の能力に秀でている歩兵部隊………

 

またもや苦戦は免れそうにない中、白狼が試合会場を間違えると言うトラブルが発生。

 

果たして、大洗機甲部隊の運命は?………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦車道・歩兵道公式戦、第7回戦の試合会場………

 

和製西部劇の撮影所………

 

その観客席エリアにて………

 

「始まったな………」

 

大洗側の観客に席に座り、試合が始まったのを見てそう呟く護。

 

今回の試合会場は内陸に位置する為、洋上支援は使えず、呉造船工業学校の軍艦道の面々は、応援に徹するしかなかった。

 

「艦長………大洗は大丈夫でしょうか?」

 

雪風で副長を務めている生徒が、護にそう尋ねる。

 

「分からん。今の俺達に出来るのは、只管に勝利を祈る事だけだ」

 

「でも、それって結構大切な事じゃないかしら?」

 

と、護がそう返した瞬間に、そう言う声が響いて、護の前に絹代が姿を見せた。

 

「! 西! 来てたのか?」

 

「他の学校の子達も来てたわよ。皆大洗の事を気にしてるわ」

 

護が軽く驚きを示していると、絹代はそんな護の隣に腰掛ける。

 

「西………お前は大洗が勝つと思っているのか?」

 

「勿論」

 

「その根拠は?」

 

迷い無く大洗が勝つと断言した絹代に、そう問い質す護。

 

「無いわ。只の感よ」

 

「変わらないな、そういうところは………」

 

絹代はあっけらかんとそう言い返すが、その答えに護は納得が行ったかの様な表情となるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合会場内………

 

荒野を進軍している大洗機甲部隊………

 

「周囲への警戒を怠らないで下さい。例え歩兵1人であっても、それが観測要員なら脅威となります」

 

「「「「「「「「「「了解っ!!」」」」」」」」」」

 

今回フラッグ車を務めているあんこうチームのⅣ号のみほから全員にそう指示が飛ぶ。

 

やはりT28の超長距離を懸念し、観測要員の可能性も有る為、1人でも敵を見逃すなと警戒を厳にさせている。

 

「さて、敵は如何出て来るかな?………」

 

「普通に考えれば、小戦力で此方を足止めしている間に観測要員を配置し、T28で一方的にアウトレンジと言うのが効率の良い戦い方だな」

 

迫信がそう呟くと、俊が予測される最も効率の良い戦い方を述べる。

 

(普通ならばな………)

 

しかし、弘樹は何やら嫌な予感を感じていた。

 

と、その時!!

 

不意に風切り音が聞こえて来たかと思うと、Ⅳ号の傍に砲弾が着弾する!

 

「!?」

 

「! 敵襲ーっ!!」

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

咄嗟にキューポラにしがみ付くみほと、即座に敵襲の報告を挙げる弘樹。

 

『! 西住総隊長! 2時の方向に!!』

 

とそこで、今回は聖子が戦車長、伊代が通信手、優が砲撃手、唯が操縦士、明菜が装填手を務めているサンショウウオさんチームのクロムウェルの中で、聖子がそう報告を挙げる。

 

「! アレはっ!?」

 

報告のあった方角を見て、みほが驚愕を露わにする。

 

何故ならそこに居たのは………

 

西部機甲部隊の総隊長であるクロエの乗る………

 

M18ヘルキャットだった!

 

「! ヘルキャットッ!?」

 

「嘘っ!? 総隊長がいきなり仕掛けて来たの!?」

 

「しかも単独です………」

 

「舐めてるのか………それも余程の自信があるのか………」

 

優花里、沙織、華も驚きを露わにし、麻子も皮肉を言いながらも苦い顔を浮かべている。

 

と、その瞬間!!

 

ヘルキャットが両履帯後部から砂塵を巻き上げ、大洗機甲部隊に向かって突撃して来た!

 

「!? 突っ込んで来るぞっ!?」

 

「馬鹿な!? たった1両で何の積りだっ!?」

 

「撃てっ! 迎撃しろっ!!」

 

「! 攻撃開始っ!!」

 

十河の声が響き渡ると、みほも戦車部隊に攻撃命令を下す!

 

戦車部隊が一斉に砲撃を開始し、歩兵部隊も徹甲弾を装填したライフルや機関銃、野戦砲や対空機銃の水平射撃を始める。

 

だが、その激しい砲火と弾幕の中を、ヘルキャットは速度を落とすどころか、更に上げて前進を続ける。

 

「!? 止まらねえぞっ!?」

 

「敵の総隊長は頭がイカれてるのかっ!?」

 

狂気の沙汰とも取れるヘルキャットの行動に、大洗機甲部隊に動揺が走る。

 

その間に、遂にヘルキャットは、大洗機甲部隊の中へと飛び込んで来た!!

 

そしてその瞬間に、至近距離に居た一式装甲兵車に向かって発砲!

 

「「「「「うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」」」」」

 

一式装甲兵車は爆発し、近くにした大洗歩兵数名が、その爆発に巻き込まれて戦死判定を受ける。

 

「!?」

 

「クソッ!!」

 

1人の歩兵が、咄嗟にヘルキャットに向かって手榴弾を投げる。

 

しかし、ヘルキャットは手榴弾が投擲された場所を既に通り過ぎており、手榴弾は別の大洗歩兵達の元へと向かう。

 

「!? あっ!?」

 

手榴弾を投げた大洗歩兵が『しまったっ!』と言う顔をした瞬間に、弘樹がその手榴弾を手で弾き飛ばす。

 

弾かれた手榴弾は、荒野の方に落ち、そのまま爆発した。

 

「味方が至近距離に居る状態で迂闊に爆発物を使うなっ!!」

 

「ス、スミマセンッ!!」

 

弘樹にそう叱咤され、手榴弾を投げた大洗歩兵は平謝り状態となる。

 

とそこで、再び爆発音が聞こえて来た!

 

「!?」

 

弘樹がすぐにその方向を見やるとそこには………

 

ヘルキャットに撃ち抜かれ、大破・炎上しているオストヴィントの姿が在った。

 

「対空戦車が!?」

 

『このぉーっ! もうやらせないよっ!!』

 

その瞬間、聖子のそう言う声が響き渡り、味方の中で暴れるヘルキャットをクロムウェルが追った!

 

だが………

 

「唯ちゃん! もっと早くっ!!」

 

「コレで目一杯だ!………クソッ! 駄目だ! 追い付けねぇっ!!」

 

聖子がもっとスピードを上げろと指示を出すが、唯は既にクロムウェルは全速を出していると返す。

 

クロムウェルのカタログスペックでの最高速は時速64キロ。

 

対するヘルキャットのカタログスペックでの最高速は時速80キロ。

 

カタログスペックの時点で、両者には圧倒的な差が有るのだ。

 

追い掛けて来るクロムウェルなど物ともせず、またも発砲し、テクニカル化されていたジープを1台吹き飛ばす!

 

「またやられたぞっ!?」

 

「クソッ! アイツ1輌に良い様にやられちまうのかよっ!!」

 

大洗歩兵部隊の中から、焦燥の声が漏れ始める。

 

「地雷だ! 地雷を撒けっっ!!」

 

だがそこで、弘樹がそう叫んだ!

 

「!?」

 

「その手が有ったかっ!!」

 

それを聞いた工兵達が、一斉に手持ちの地雷を地面にばら撒き始める。

 

流石に地雷を避けながら走り回る事は出来ないのか、それを見たヘルキャットが、即座に撤退し始める。

 

「逃がさんっ!!」

 

だがその行く手に、Ⅲ突が立ちはだかったっ!!

 

「散々暴れ回った代金は払ってもらうぞ!」

 

「装填完了っ!!」

 

エルヴィンがそう言う中、カエサルが装填を追える。

 

「左衛門佐、慌てるなよ。何処を狙っても撃ち抜ける」

 

「心得ているでござる」

 

冷静にヘルキャットに狙いを合わせる左衛門佐。

 

「発射っ!!」

 

そして遂に引き金が引かれ、砲弾がヘルキャットに向かう。

 

だが、その瞬間!

 

ヘルキャットは一瞬車体をブレさせたかと思うと、何と!!

 

車体の左側を浮かせ、右の履帯だけで片輪走行状態となったっ!!

 

Ⅲ突の砲弾は、片輪走行状態のヘルキャットの車体下を擦り抜けて外れる。

 

「!? なっ!?」

 

「「「!?」」」

 

カバさんチームが驚愕を露わにしていた間に、ヘルキャットはそのままⅢ突も跨ぐ様にして片輪走行で擦り抜けると、漸く元に戻り、そのまま砂埃を立てて離脱して行った。

 

「逃げられる!」

 

「西住総隊長、追いますか!?」

 

歩兵隊員の1人が、みほに向かってそう尋ねるが………

 

「いえ、深追いはしないで下さい。態勢を立て直しましょう」

 

「了解」

 

みほは態勢の立て直しを優先し、追撃命令を出さなかった。

 

「………よもや総隊長車が単独で突貫して来るとは思いませんでしたね」

 

「うん。駆逐戦車で片輪走行するなんて………」

 

そこでⅣ号の傍に立った弘樹がそう言い、みほが先程のヘルキャットの動きを思い出してそう言う。

 

「出鼻を挫かれた感じだね………」

 

迫信も、ヘルキャットが去って行った方向を見やりながら、そんな事を呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、大洗機甲部隊の中から離脱して行ったヘルキャットの車内では………

 

「う~ん………いきなりフラッグ車は無理でも、2、3輌は食えるかと思ったんだけどなぁ~」

 

先程の大洗機甲部隊への突貫で撃破したのが歩兵や彼等の使っている車輌、対空戦車だけだった戦果に、クロエが不満そうに呟く。

 

「私の読み違いだったって事ね………良いわ。そうじゃなくちゃ面白くないわ」

 

しかしすぐに笑みを浮かべてそう言う。

 

「総隊長。オセロットさんから通信が入って来てます」

 

とそこで、通信手がクロエにそう告げて来た。

 

「ん、コッチに回して」

 

「了解」

 

クロエがそう言うと、通信手はクロエに通信回線を繋げる。

 

「ハ~イ、コチラはクロエ」

 

『ハ~イ、じゃありません! 総隊長!! 一体何を考えているのですか!!』

 

間延びした声で、クロエが通信機に向かって喋ると、途端にオセロットからの怒声が響いて来る。

 

「何って………ちょっと大洗機甲部隊に小手調べしてやっただけだけど?」

 

だが、クロエはまるで悪びれる様子も無く、平然とした様でそう返す。

 

『小手調べではありません! 敵軍の中へ単独で攻撃を仕掛けに行く総隊長が何処に居るのですか!?』

 

「此処に居るじゃない」

 

『そうではありません! そもそもクロエ総隊長には総隊長としての自覚が………』

 

「黙れ」

 

『!?』

 

と、そこで突然、クロエの声がドスの利いた低いモノとなり、オセロットは絶句する。

 

「良い、私はね………神に会うては神を斬り! 悪魔に会うてはその悪魔をも撃つ! 戦いたいから戦い! 潰したいから潰す! 私に大義名分などないのよ!!」

 

そしてそのまま、クロエは通信機越しにオセロットに向かってそう言い放った!

 

「私がやられたとしても、シロミやシャムの指揮が有れば十分でしょう? コレ以上私に何か言おうってんなら………命を掛けて来なさい」

 

『ぐうっ!………』

 

クロエの迫力に押され、完全に何も言えなくなるオセロット。

 

『オセロット。その辺にしておけ』

 

とそこで、通信回線にジャンゴの声が割り込んで来た。

 

『! ジャンゴ! しかしだな………』

 

『ウチの総隊長殿がこんななのは分かり切ってる事だろ』

 

『ッ!………』

 

ジャンゴの諦めにも似た言葉を聞き、オセロットは再び黙り込む。

 

『………分かりました。ですが! 既に第1作戦は開始されています! せめてその間は作戦通りに動いてもらいますよ!!』

 

だが、せめてもと言った具合に、オセロットはクロエに作戦が発動した事を知らせる。

 

「了解、了解。じゃ、切るわよ」

 

『ちょっ! 総隊………』

 

クロエが軽い感じで返事を返し、通信を切ろうとした事に慌てたオセロットだが、何かを言う間に通信は切断される。

 

「さて………本番はココからよ、大洗さん。フフフ………一体如何するのかしらね?」

 

猛獣の様な獰猛な笑みを浮かべて、クロエは心底楽しそうにそう呟くのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び、大洗機甲部隊側では………

 

クロエのヘルキャットの奇襲から態勢を立て直し終え、再び進軍を開始していた。

 

超長距離砲撃の為の観測要員が居ないかを警戒しながら、慎重に進軍している大洗機甲部隊。

 

「10時方向、異常無し」

 

「2時方向も異常無し」

 

「6時方向、異常ありません」

 

周囲を監視している歩兵達から、次々と異常無しの報告が挙がる。

 

「今のところ、観測要員の姿は無し、か………」

 

「敵は超長距離砲撃では来ないのではないですか?」

 

「それはちょっと考え難いかな………折角T28が居るのに、アウトレンジ戦法を使ってこない事は無いと思うんだ」

 

余りに異常が無い為、優花里は敵は長距離砲撃では来ないのではと疑うが、みほはそれは考え難いと返す。

 

(………嫌な予感がするな)

 

そして弘樹もまた、不気味な静けさに、嫌な予感を覚えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………と、その時!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

静けさを保っていた荒野に、風切り音が響き渡る!

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

その音を聞いた大洗機甲部隊の一同は、すぐさま空を見上げた。

 

そしてその目に飛び込んで来たのは………

 

太陽の中から大洗機甲部隊目掛けて落ちて来る………

 

砲弾の姿だった。

 

「! 散れえぇーっ!!」

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

弘樹が叫んだ瞬間には、大洗機甲部隊はバラバラになり、方々へと逃げ出す。

 

直後に、砲弾が先程まで大洗機甲部隊が居た場所に着弾!

 

爆発と共に巨大な炎が上がり、黒煙が立ち上った!!

 

着弾跡は、巨大なクレーターとなっている。

 

「来やがった!」

 

「超長距離攻撃です!」

 

「固まるな! バラバラになって逃げるんだっ!!」

 

遂に襲い掛かって来たT28の物と思われる超長距離砲撃に、大洗機甲部隊の面々は分散して攻撃を凌ごうとする。

 

と、その直後に再び風切り音が聞こえて来たかと思うと、再び上空から降って来た砲弾が、ウサギさんチームのM3リーの傍に着弾した!

 

「「「「「キャアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!?」」」」」

 

爆煙でM3リーの姿が見えなくなる中、紗希を除いたウサギさんチームの悲鳴が響き渡る。

 

「! ウサギさんチーム! 大丈夫ですか!?」

 

すぐさまみほはM3リーへと通信を送る。

 

「だ、大丈夫です………」

 

と、そこで梓のそう言う声が返って来たかと思うと、爆煙の中から装甲の表面が所々黒く煤けたM3リーがゆっくりと姿を現す。

 

如何やら、ギリギリ爆発の威力範囲からは外れていた様である。

 

「ほっ………」

 

その様子を見て、安堵の溜息を吐くみほ。

 

しかしそこで、3度目の風切り音が響き渡る。

 

「! 左だっ!!」

 

「うわおっ!?」

 

くろがね四起の助手席に乗って居た弘樹が、ハンドルに手を伸ばして無理矢理左へ切らせた。

 

直後に、くろがね四起が向かおうとして居た先に砲弾が着弾!

 

「「「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」」」

 

「!?」

 

直撃はしなかったが、至近距離からの爆発に煽られたくろがね四起は宙に舞い、乗って居た弘樹、地市、了平、楓は車内から投げ出されて荒野に転がる。

 

宙に舞ったくろがね四起は、そのまま逆さまに地面に叩き付けられて爆発する。

 

「! 弘樹くん!」

 

「大丈夫だ………問題無い」

 

「コッチも大丈夫だ!」

 

「危ないところでした………」

 

みほが慌てるが、即座に弘樹が大丈夫だと返事を返し、地市と楓も無事である様子を見せる。

 

「もうやだ………こんな生活………」

 

只1人、了平だけが無事なものの、倒れたまま涙を流していた。

 

「! 敵の攻撃は正確です! 何処かに観測要員が居る筈です! 高所を中心に周囲を再確認して下さい!!」

 

それに再び安堵しつつも、敵の長距離砲撃が正確な事を見て、観測要員が居ると踏んだみほは、即座にそう命令を下す。

 

「「「「「「「「「「了解っ!!」」」」」」」」」」

 

すぐさま双眼鏡を持つ偵察兵を中心に、歩兵部隊が周囲に見回す。

 

各戦車チームの車長も、ハッチを開けて姿を晒し、観測要員が居ないか辺りを見回す。

 

しかし………

 

「東方向に観測要員の姿無し!」

 

「西方向、同じく!」

 

「北方向にも観測要員は居ません!」

 

「南方向もです!」

 

各方向何れにも、観測要員の姿は無いと言う報告が挙がる。

 

「そんなバカな! もっと良く探せっ!!」

 

「し、しかし、本当に姿が見えないんです!」

 

十河が怒鳴るが、どれだけ捜索しても、観測要員らしき者の姿は発見出来ない。

 

その間に、4発目の砲撃が着弾!

 

「「「「「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」」」」」

 

運悪く、Sd Kfz 250に直撃し、搭乗者と輸送されていた兵員が戦死判定を受ける。

 

「仲間がやられたぁっ!!」

 

「敵は一体何処に居るんだ!?」

 

「だから超長距離攻撃してるんだろうが!」

 

段々と大洗機甲部隊に動揺が走り始める。

 

(おかしい………観測要員も無しに、これだけ正確な砲撃が出来る筈は無い………観測要員は一体何処に?………!? まさかっ!?)

 

するとそこで、何かに気付いた様に、みほが上空を見上げる。

 

「!!」

 

と、全く同じタイミングで、弘樹も何かに気付いた様に空を見上げた。

 

そして、2人が見上げた空………

 

その太陽の中に………

 

軽飛行機ボイジャーの軍用型………

 

『スチンソン L-5 センチネル』………

 

『観測機』の姿が在った!

 

「! 上です! 上空に観測機がっ!!」

 

「高射部隊! 対空砲火ぁっ!!」

 

みほがそう声を挙げ、弘樹が号令を掛けると同時に、アハト・アハトを中心とした高射砲兵達が、上空のL-5に向かって対空砲火を打ち上げ始めた!

 

「! チイッ! 気づかれたかっ!?」

 

「コチラ観測機! 敵に気付かれました! 一旦離脱しますっ!!」

 

と、L-5の乗員が西部機甲部隊にそう連絡を入れると、一旦大洗機甲部隊の上空から離脱して行く。

 

「今の内です! 向こうの岩山の陰に隠れます! 全部隊、全速前進っ!!」

 

それを確認したみほは、すぐさま岩山の陰に隠れるべく、そう命令を下したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後………

 

岩山の陰にて………

 

T28の射線から逃れる様に、岩山の陰に固まってジッとしている大洗機甲部隊。

 

「多分、T28が居るのは、この辺りだと………」

 

みほが、先程の超長距離砲撃で、砲弾が飛んで来た方向と角度、それにT28の射程を逆算し、T28が居ると思われる大体の位置を割り出す。

 

「鉱山付近ですか………」

 

その場所が、鉱山となっている場所である事に気付いた優花里がそう指摘する。

 

「それで如何するの、みぽりん?」

 

「皆さんで一気に攻め掛かりますか?」

 

沙織と華がそう尋ねるが………

 

「いえ、恐らく敵はT28を守る様に布陣している筈です。大部隊で移動すれば、すぐに気付かれて、包囲されたところに再度T28からの超長距離砲撃を受ける可能性が有ります」

 

みほは西部機甲部隊の布陣予想図を地図に書き込みながらそう返す。

 

「だが、このまま此処にジッとしているワケにも行かんぞ」

 

「分かってます………やっぱり、あの手しかないか」

 

麻子がそう指摘すると、みほはそう呟いて、ハッチを開けて車外へ姿を晒す。

 

「…………」

 

するとⅣ号の傍には弘樹が待機しており、命令を待っている様子だった。

 

「………弘樹くん」

 

「ハッ!」

 

みほが呼び掛けると、弘樹はヤマト式敬礼をする。

 

「これよりT28撃破を任務とした特務部隊を臨時編成するね。その部隊長をお願い出来る?」

 

「御命令と在らば、一命を賭してでもやり遂げる所存です」

 

「………編成するメンバーは一任するけど、無理はしないでね」

 

「了解」

 

弘樹は再度みほに向かってヤマト式敬礼をすると、T28撃破の為の、特務部隊の編成に掛かるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

遂に始まった西部学園との試合。
開幕でいきなりクロエの駆けるヘルキャットの襲撃を受けたかと思うと、続けてT28の超長距離攻撃を受ける。
観測機を排除した事で一旦難を逃れたが、T28を撃破しない事には動きが取れない………
そこでみほは、作戦立案時にも出たアイデア………
弘樹を部隊長に、T28撃破を任務とした、特務部隊を臨時編制するのだった。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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