ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

124 / 287
第124話『潜入作戦です!(西部学園編)』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第124話『潜入作戦です!(西部学園編)』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

西部学園との試合に向け、対空兵器を配備して合宿に励む大洗機甲部隊。

 

みほも対西部戦に向けた作戦計画を練るが………

 

相手によって使用戦車を変える西部の変幻自在な戦車部隊を前に、具体的な対策を立てあぐねていた………

 

そんなみほの姿を見た優花里は………

 

蛍、大詔、小太郎を引き連れて………

 

またもや、西部学園への潜入偵察を試みたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

西部学園艦・甲板都市………

 

西部劇に出て来そうな荒野を進んでいる優花里、蛍、大詔、小太郎………

 

「それにしても………何で学園艦の甲板都市にこんな荒野を造ったのかな?」

 

ふと、高い岩山が点在し、サボテンの生えている荒野の光景を見て、蛍がそう呟く。

 

「それは多分………」

 

「待て、秋山。何か聞こえないか?」

 

優花里が蛍に返事を返そうとしたところ、大詔がそう言って来た。

 

「はて………そう言えば………」

 

と、優花里がそう呟いた瞬間には、その音は全員にハッキリと聞こえる様になり、背後の方から振動が走って来るのも感じ取れる。

 

「「「「??」」」」

 

優花里達が振り向くとそこに居たのは………

 

「「「「「「「「「「アワワワワワワワワ~~~~~~~~~~~~ッ!!」」」」」」」」」」

 

馬に乗って独特の雄叫びを挙げているインディアンの大群が、コチラに向かって来ていた!

 

「!? ネイティブアメリカン!!」

 

「インディアンですよ!! 隠れましょうっ!!」

 

優花里達はすぐさま、近くに在った大きな岩の影に隠れる。

 

幸いにも、インディアン達は優花里達の姿を見ていなかったのか、馬を走らせたまま何処かへ行ってしまう………。

 

「ハア~、ビックリしました………」

 

「全くだ………」

 

優花里がホッとした様にそう呟くと、1人段ボール箱を被ってカモフラージュしていた大詔がそう返す。

 

「何で荒野に段ボールが在ったのに、気にしなかったんだろう?」

 

「段ボールは敵の目を欺く最高の偽装でござるからな」

 

蛍が納得が行かない様な顔をするが、小太郎が謎の説得力を持つ言葉で宥める。

 

と、そこで………

 

今度は突撃ラッパの音が響いて来た!

 

「「「「!?」」」」

 

岩陰と段ボールの中から、ラッパが聞こえた方向を見やると、今度は騎兵隊の大群がコチラにやって来ていた!

 

「「「「!!」」」」

 

優花里達はすぐさま、またも岩陰と段ボールの中へと逃げる。

 

「………行ったみたいですね」

 

「ハア~~、心臓に悪い………」

 

そして、騎兵隊達が走り去って行った事を確認すると、漸くホッとする。

 

「驚いたなぁ………この学園艦自体が西部劇そのものみたいだね」

 

「この学園艦の責任者………相当の西部劇好きだな………」

 

「そうでなければ、あんな光景を目にする事など先ず無いでござる………」

 

蛍、大詔、小太郎がそう言って、呆れる様な様子を見せるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、再び移動を開始した優花里達は程無くして………

 

これまた西部劇に出て来そうな小さな町へと辿り着く。

 

「町ですね………」

 

「此処も西部劇の片田舎風だな………」

 

広がる町並みを見て、蛍と大詔がそう言い合う。

 

「見たところ、この辺りに西部学園は無い様でござるが………」

 

「あの、すみません。西部学園へは如何行けば良いですか?」

 

と、小太郎が学園らしき建物が無い事を見てそう呟くと、優花里が偶々通り掛かった住人らしき人にそう尋ねる。

 

「ん? 西部学園かい? それならこの先の駅から列車に乗って、西部学園前駅ってとこで降りればすぐだよ」

 

「ありがとうございます!………皆さん、如何やら駅から列車が出てるみたいですよ」

 

「駅って言うと………アレか」

 

優花里がそう報告すると、大詔が駅舎らしき建物を発見する。

 

駅にて切符を買い、暫く待つと、蒸気機関車がやって来た。

 

「凄い! 本物の蒸気機関車ですよ!」

 

「しかもご丁寧に西部開拓時代に使われていた代物だな………」

 

電動のレプリカなどではなく、本物の薪を使って走る昔の蒸気機関車だ。

 

優花里達が蒸気機関車に乗り込み、学園駅前まで向かう。

 

「おお~~っ! コレは電車では味わえない迫力であります!」

 

「ホント、凄いね」

 

力強く走る蒸気機関車に優花里は意気揚々とし、蛍も感激している様な様子を見せる。

 

「乗客も西部劇の登場人物みたいだな………」

 

「まるで俳優にでもなった気分でござる」

 

大詔と小太郎は車内の様子を見回した後、外の景色を見やる。

 

「! あ! ねえ、アレッ!」

 

とそこで、蛍が車両の外側後方を指差しながらそう声を挙げる。

 

「「「?………」」」

 

優花里達が、窓からやや身を乗り出して見やるとそこには………

 

「ハイヤーッ!!」

 

蒸気機関車に、馬に乗りながら並走して来ている、赤毛のカウガールが居た。

 

「! カウガールです!」

 

「いよいよ西部劇染みて来たな………」

 

優花里と大詔がそう言っていると、乗客達が窓から顔を出し、カウガールに向かって手を振り始める。

 

「えへへ」

 

赤毛のカウガールも、それに応える様に手を振る。

 

やがてカウガールは列車から離れて行った………

 

蒸気機関車はそのままトンネルを抜け、橋の上を渡って行く………

 

橋を渡り終えると、巨大な岩場の中を通り抜けて行く。

 

「凄い岩場ですね………!?」

 

と、岩場を見渡していた優花里が仰天の表情を浮かべた!

 

「如何したの? 優花里ちゃん?」

 

「あああ、アレッ!!」

 

蛍が尋ねると、優花里は仰天した様子のまま岩場の一角を指差す。

 

そこには………

 

岩場と岩場の間を跳躍している人影が在った!

 

間の感覚はかなり広く、普通の人間であれば、先ず跳べる距離ではない。

 

「何て跳躍力だ………」

 

「もしや………ニンジャ!?」

 

その跳躍力に舌を巻く大詔と、その影がニンジャではないかと疑う小太郎。

 

「なんだいアンタ達、知らないのかい?」

 

するとそこで、反対側の窓際の席に居た乗客がそう言って来たので、優花里達は思わず全員でその乗客の方を振り返る。

 

「見ない顔だが、観光にきたのかい?」

 

「ま、まあ………そんな所です………」

 

若干言葉に詰まりながらも、そう誤魔化す様に答える優花里。

 

「あの岩場を軽く越せる奴なんざ、居やしないさ………『アイツ』以外はね」

 

しかし、乗客はそれを気にした様子も見せず、そう言葉を続ける。

 

「『アイツ』?………」

 

「卓越した身体能力をもっている、アメリカの黒人留学生………1年生ながらもその身軽さ故に、この学園艦の生徒や住民から『ブラックパンサー』と呼ばれてるのさ」

 

「『ブラックパンサー』………」

 

と、優花里がそう呟いた瞬間、蒸気機関車は再びトンネルに入った。

 

暫くしてトンネルから出ると、そこには………

 

まるでカナダに来たかのような大自然な世界が広がっていた!

 

再び橋の上を渡ると、眼下にはマンモスの群れが行進しており、別の場所にはメガテリウムが居た。

 

「うわぁっ! 凄いです!!」

 

「絶滅した筈の動物達が自然の世界で戯れてる!?」

 

優花里と蛍が有り得ない光景に興奮を隠せずにそう言う。

 

「あれはフクロオオカミか………クアッガを追いかけているとは………」

 

「見てください! 広い河でシャチの親子が泳いでますよ!」

 

「成程………あの河は海水が含まれているのでござるな………」

 

「西部学園では絶滅した動物を遺伝子工学で復活させて保護してるって噂を聞いてたけど、ホントだったんだ………」

 

絶滅動物の保護区域があると噂されている学園艦『西部学園』

 

噂は本当であった………

 

これには流石の優花里達も驚きを隠せなかった。

 

「あ! アレは!?………」

 

とそこで、空には大きな鳥が羽ばたいている事に気付く。

 

それはインディアン達に伝わる伝説の巨鳥………『サンダーバード』である事を、優花里達は知らない………

 

大自然の光景が流れて行く中、蒸気機関車は再びトンネルへと入って行く………

 

そして、トンネルを抜けると、目的地である西部学園前駅へと到着する。

 

「着きました!」

 

「コレは………」

 

「いやはや………」

 

「凄~い!」

 

蒸気機関車を下車し、駅から街中へと出た優花里達は、目の前の光景にまたも驚きを露わにする。

 

そこに広がって居たのは………

 

まるで西部開拓時代のアメリカの街並みだったからだ。

 

しかし、住民らしき人々は、ウェスタンな恰好では無く、現代の普通の恰好をしているので、かなりシュールである。

 

「住民が普通なのが滑稽だな………」

 

「それよりも、早く西部学園に行くでござる」

 

大詔がそう呟くと、小太郎が促す。

 

「え~と………あ! アッチですね」

 

そこで優花里が、西部学園への案内板を発見する。

 

「じゃあ、行こうか」

 

蛍がそう言うと、一同は西部学園を目指して歩き出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10数分後………

 

「着きました! ココが西部学園です!」

 

優花里が西部学園にカメラを向けて撮影しながらそう言う。

 

「コッチは学校が普通だな………」

 

「通っている生徒は普通じゃないが………」

 

「日本人、外国人………あ、アレって部族民かな?」

 

一方、大詔、小太郎、蛍は、学校内にある生徒達らしき人達の姿を見て、そんな感想を漏らす。

 

「では、早速潜入しましょう!」

 

そう言う優花里の恰好は、何時の間にかカウガールの姿となっていた。

 

「よし、行くか」

 

「でござる」

 

「準備OK!」

 

そしてそれに返事を返す大詔、小太郎、蛍も、其々カウボーイ、シェリフ、シスターの恰好となっている。

 

此処に来る途中で在った服屋で購入したものである。

 

如何やら、今回は全員で堂々と潜入する積りらしい。

 

「イザ! 西部学園へ潜入です!」

 

優花里がそう言って、先陣を切り、大詔達もその後に続くのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

西部学園・敷地内………

 

「じゃあ、先ずは如何しようか?」

 

「取り敢えずは戦車格納庫を目指すか?」

 

「後は、戦車部隊の隊員にでも接触出来れば上々でござるな」

 

西部学園の敷地内を堂々と歩きながら、そんな事を言い合う蛍、大詔、小太郎。

 

「では、戦車格納庫を探し………」

 

と、優花里がそう言い掛けた時、一同の耳にある音が聞こえて来る。

 

「? コレは?………」

 

「ピアノ?………」

 

「この曲はモーリス・ラヴェルの『水の戯れ』か」

 

「綺麗な音色でござるな」

 

ピアノ演奏による『水の戯れ』が聞こえて来て、一同は思わず、それに誘われるかの様に、音の発生源を目指す。

 

 

 

 

 

暫く行くと、校舎らしき建物の1階部分の1室の窓際に、黒山の人だかりが出来ているのを発見する。

 

「此処から聞こえて来ますね」

 

優花里達は人混みを掻き分ける様にして、その教室へと近づく。

 

やがて窓際まで辿り着いて中を覗くと、そこは音楽室であり、1人の女子生徒がピアノを弾いていた。

 

如何やら、彼女が演奏の主の様だ。

 

「あぁ~………今日も美しい音色だ~………」

 

「流石は西部学園一のアイドル………」

 

「ブチお姉様~~~っ!!」

 

と、何人かの生徒達が、歓喜の声を上げる。

 

「ブチ………お姉様?………」

 

『ブチ』と呼ばれた女子生徒の名に聞き覚えのあった優花里が、反芻する様に呟くと………

 

「何だい? 気になるかい?」

 

近くに居た男子生徒がそう言って来た。

 

「この西部学園に来たからには彼女を知らなければ損するだけさ!」

 

そのまま男子生徒は、嬉々として『ブチ』と呼ばれる女子生徒の事を説明し始める。

 

 

 

 

 

『ブチ』

 

当然名前は西部学園から与えられたソウルネームであり、本名は敢えて伏せている(しかし、西部学園の生徒達は全員知っている)。

 

その才能と魅力は、完全無欠の少女と言われている程である。

 

例えば、前年度学園艦を含み全国高校生限定ミスコンで2年連続優勝者。

 

実家が代々続く貿易商であるお嬢様。

 

文武両道、才色兼備、良妻賢母で、幼い頃から習っている稽古事の数は優に数10を超えると言うが、その全てに於いて類稀な才能を発揮している。

 

それでいてそれを鼻にかけない性格の良さ。

 

しっかりとした大人びた性格で、誰に対しても分け隔てなくにこやかに穏やかに接する。

 

正に白百合が咲く様な雰囲気と言うか、何にせよ、美人は性格が悪いと言う定説をひっくり返してくれる貴重な実例。

 

神様から与えられた貴重な才能を持っている為、まるで別世界の住人ではないかとすらも思えてしまう程だ

 

そんな彼女に魅了され、告って玉砕した数は、老若男女合わせて3桁を下らない………

 

 

 

 

 

 

「それがブチさ!」

 

「す、凄いです………」

 

「居るもんだな、そんな完璧な美女と言うのが………」

 

優花里がその説明に圧倒され、大詔が感心した様に呟く。

 

改めてピアノを演奏している女子生徒………『ブチ』に見惚れる一同。

 

「ん?………ねえ、アレ」

 

とそこで、蛍が何かに気付いた様に声を上げて、ある方向を指差す。

 

「「「??」」」

 

優花里、大詔、小太郎がその方向を見やるとそこには………

 

薄着な恰好で、手にブラシや何やを持って、何処かへと向かって居る生徒達の姿が在った。

 

「ブラシ………ひょっとして、戦車の清掃に向かってのでは」

 

「となれば、長居は無用でござる」

 

「行くぞ………」

 

そこで一同は本来の目的を思い出し、名残惜しそうにしながらも、その薄着の生徒達を追って行く………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

薄着の生徒達を追って辿り着いたのは………

 

「戦車格納庫ではなかったか………」

 

「プールでござるな………」

 

薄着の生徒達に交じってやって来た一同の中で、大詔と小太郎がそう言い合う。

 

「どうやらあの皆さんはプールの清掃に来た様でありますね」

 

「それにしても、かなり楽しそうだね………」

 

その様子を撮影しながら、優花里と蛍がそう言い合う。

 

如何やら、プール開きが近い様であり、一同はそれでプール掃除を始めている様だ。

 

モップやブラシを片手に大忙しの男子生徒達。

 

一方、女子達の方は、濡れるといけないと言う理由で、水着の上にTシャツを着て、掃除をしている。

 

了平が見たら鼻血を流して絶叫しそうな光景である。

 

「オイ、お前等! 何サボってんだ!!」

 

「早く手伝ってよ! 手が足りないんだから!!」

 

するとそこで、男子生徒と女子生徒が、優花里達に向かってそう声を掛けて来た。

 

「えっ!? あ、いや、あの、自分達は………」

 

「ホラ! 早く早く!」

 

「わああっ!?」

 

「オイオイ………」

 

誤魔化そうとした優花里だったが、西部の生徒達は強引に引き入れ………

 

結局優花里達は、成り行きでプール掃除の手伝いをさせられる事となったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小1時間後………

 

「お、終わりました~………」

 

「疲れた~………」

 

プール掃除が漸く終わり、すっかり疲れ切った様子の優花里と蛍が、絞り出した様な声でそう言う。

 

「身体を動かしたら、腹が減ったぞ………」

 

「そろそろ昼時でござるな」

 

大詔は腹に手を当ててそう言い、小太郎が校舎に掛けられている時計が昼時を差しているのを確認する。

 

「皆~! 御苦労様~っ!! お昼の準備、出来てるよ~っ!!」

 

「おお~っ! 待ってたぜっ!!」

 

「漸くメシだ!」

 

とそこで、プールにやって来た女子生徒が、掃除をしていた生徒達に向かってそう声を掛け、掃除をしていた生徒達はその女子生徒に付いて行く。

 

「おお! メシか!!」

 

そして食べる事に対して貪欲な大詔も、当然その中に交じって付いて行こうとする。

 

「ちょっ! 蛇野殿っ!?」

 

「調査は如何するの!?」

 

さも当然の様に付いて行く大詔の姿に、優花里と蛍が思わず声を挙げる。

 

「な~に、メシを頂いた後でも問題無いだろう。それに、食事の場での会話から、何か貴重な情報が得られるかも知れん」

 

だが、大詔はもっともらしい事を言って、そのまま付いて行ってしまう。

 

「蛇野さん!?」

 

「ああ、行っちゃた………」

 

西部学園の生徒達に交じって昼食に向かう大詔の姿に、蛍と優花里は唖然となる。

 

「ああなったら蛇野殿は止められないでござる。我々も続く以外に無いでござるな」

 

そこで、小太郎がそう言い、仕方なく優花里と蛍も、昼食の場へと向かうのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

西部学園・校庭………

 

連れて来られたのは、西部学園の複数在る校庭の1つであり、所狭しとバーベキューが行われている。

 

「おお~、コレは凄いな!」

 

「西部劇をモチーフにしてるだけに、サンダース&カーネルみたいに、アメリカンなノリがありますね」

 

大詔がその様子に軽く驚き、優花里がサンダースやカーネルとの共通点を見出す。

 

「ん? 子供?………」

 

「幼稚園児くらいに見えるけど………」

 

とそこで、小太郎と蛍が、その昼食の場に、幼稚園児らしき多数の子供達の姿がある事に気付く。

 

「ああ、ウチの学校の系列の幼稚園の子達だよ」

 

「機甲部隊のメンバーが招待したみたいだよ」

 

すると、近くに居た西部学園の生徒がそう説明して来る。

 

「機甲部隊のメンバーが………」

 

「と言う事は、西部機甲部隊のメンバーが居るんですか?」

 

蛍がそう呟くと、優花里がその生徒に更に尋ねる。

 

「ああ、丁度あそこに………」

 

そう言って、西部の生徒が視線で示した先には………

 

「さあ、皆ー! 僕の素敵なステーキを召し上がれ! なんちて!」

 

赤毛なカウガールの少女がダジャレを言いながら、園児達にステーキを振る舞っていた。

 

「! あの人はさっきの………」

 

蛍はその人物が、列車に乗って居た時に馬で並走して来ていた女性である事に気づく。

 

「良く見れば、あの人………西部戦車部隊の『ミケ』さんですよ!」

 

そこで優花里も、赤毛のカウガールが西部戦車部隊の隊員の1人………『ミケ』である事に気づく。

 

「うーまーいーぞーっ!!」

 

「「「「!?」」」」

 

とそこで、どこぞのリアクションが過剰な料理アニメで聞けそうなセリフが聞こえて来て、優花里達は一斉にその方向を見やる。

 

「やっぱりミケのステーキは最高だよ!」

 

「も~、『マンチカン』ったら、大袈裟なんだから」

 

「でも、本当に美味しいですわ」

 

そこには、ショートカットが似合うしっかり者と言った感じの少女『スコッティ』

 

高校生離れした巨乳とロングヘアがトレードマークのマイペースそうな少女『ラグドール』

 

そして、ポニーテールがトレードマークの元気っ子と言った雰囲気の少女『マンチカン』

 

通常『とりお・ざ・きゃっつ』と呼ばれている3人組の少女の姿が在った。

 

(彼女達も戦車部隊の隊員か?)

 

(ハイ………『とりお・ざ・きゃっつ』と呼ばれている『スコッティ』、『ラグドール』、『マンチカン』の3人組です)

 

とそこで、大詔と優花里がそう小声で言い合っていると………

 

「ほらほら! 君達も食べて食べて!!」

 

そう言いながら、ミケがステーキが大量に乗った皿を、優花里達に手渡して行く。

 

「ええっ!?」

 

「こ、こんなに!?」

 

「何と………」

 

その凄まじい量に圧倒される優花里、蛍、小太郎。

 

「おお~~っ!」

 

只1人、大詔だけが、目を輝かせて嬉しそうにして居た。

 

「ささ! 遠慮せずに!」

 

「では頂こう。むぐっ!………美味過ぎるっ!!」

 

ミケがそう言うと、大詔が最初に手を付け始め、一息でステーキ1枚を平らげ、お馴染みのリアクションを決める!

 

「この肉汁の量………肉質………焼き加減………どれ1つとっても最高の出来だ!」

 

「ホント! 嬉しいな~っ! まだまだ沢山あるから、ドンドン食べてね!」

 

手放しで絶賛する大詔に、ミケは気を良くする。

 

「ど、如何しましょう?………」

 

「食べるしか………ないんじゃないかな?」

 

「でござる………」

 

優花里達も戸惑いながらも、食べるしかないと思い、盛られたステーキに手を付け始めるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数10分後………

 

「ゲフッ!………も、もう無理です~………」

 

「は、腹が………はち切れるでござる………」

 

「明日から………ダイエットしなきゃ………」

 

すっかり腹がパンパンになっている様子の優花里、小太郎、蛍が、地面に座り込んで苦しそうに腹を摩っている。

 

「最高だっ!」

 

一方の大詔は、未だにステーキを食べ続けている。

 

更に、それだけは飽き足らず、幼稚園の先生達が持って来たサンドイッチやおにぎりや唐揚げ等にも手を付け始めている。

 

「ヘイ、良い食いっぷりだな、ブラザー」

 

とそこで、そんな大詔に声を掛ける者が居た。

 

あの岩場を飛んでいた男子生徒、『ブラックパンサー』である。

 

「! アンタ………ブラックパンサーか」

 

「パンサーで良いぜ。皆からはそう呼ばれてるからな」

 

大詔が一瞬表情を引き締めると、パンサーはフランクな様子でそう言って来る。

 

「ところで、まだまだ行ける口かい?」

 

「ああ、勿論だとも」

 

「じゃあ、コイツは如何だ? 俺の祖母ちゃんの自家製オートミールだ」

 

パンサーはそう言って、オートミールの入ったタッパーを大詔に差し出す。

 

「おお! 頂こうか!!」

 

大詔はすぐさまタッパーを受け取ると、オートミールを一気に口から胃へ流し込む。

 

「………!?」

 

だが、その途端!!

 

大詔の頭の上に『!』が浮かんだ様なイメージが見えた後、バタリと倒れた!

 

「!? 蛇野殿!?」

 

「蛇野さんっ!?」

 

「!?」

 

慌てて優花里達が駆け寄る。

 

「………気絶しているでござる」

 

倒れた大詔の状態を調べた小太郎がそう言う。

 

「一体如何して!?」

 

「多分………コレじゃないかな?」

 

優花里がそう言うと、蛍が空になったオートミールが入っていたタッパーを手に取る。

 

良く見れば、僅かに残っているオートミールは食べ物としてあってはいけない色をしており、刺激臭の様な臭いも漂って来ている。

 

「おお~っ! そんなに美味かったのか!!」

 

パンサーは気絶する程に美味かったのかと解釈したが、明らかに違う………

 

実は彼の祖母の作る非常に不味く、知人達の間では拷問だとまで言われている代物なのである。

 

「やっぱ祖母ちゃんのオートミールは最高だよな」

 

しかし、幼少期よりそれを食して来たパンサーは味覚が完全に破壊されており、全く平気な様子で食べ進めていたのだった。

 

(パンサー………恐るべしでござるな………)

 

そんなパンサーの姿に、ある意味の畏怖の念を抱く小太郎。

 

「アレ? そう言えば、ジャンゴとブチはまだかな?」

 

するとそこで、ミケがジャンゴとブチの姿がこの場に無い事に気づく。

 

「多分、校舎の方だと思いますけど………探しに行ってみます?」

 

傍に居た同じ戦車部隊の隊員『ノーラ』が、そう提案して来る。

 

「うん、行ってみようか」

 

ステーキを焼くのが一段落していたミケは、その提案に乗って、ジャンゴとブチの事を探しに校舎に向かう。

 

「! ジャンゴ!」

 

「それにブチって、さっきの人だよね?」

 

とそこで、優花里が西部歩兵部隊のジャンゴの名が出た事に反応し、蛍もブチと言うのが、先程の音楽室の少女である事を思い出す。

 

「………行ってみましょう」

 

「うん………葉隠さん。蛇野さんをお願いします」

 

「心得たでござる」

 

優花里と蛍は、大詔の事を小太郎に任せると、ミケとノーラの後を追い、校舎へと向かうのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

西部学園・校舎内………

 

「オ~イ! ジャンゴ~ッ!」

 

「ブチ~! 何処に居るんですか~?」

 

ジャンゴとブチの事を呼びながらその姿を探すミケとノーラ。

 

「「…………」」

 

その後方では、優花里と蛍が気取られない様に後を付けていた。

 

「オ~イ………ん?」

 

「如何しました、ミケ?」

 

「今、此処から声がした様な………」

 

突然立ち止まったミケにノーラが声を掛けると、ミケはとある教室の入り口の傍による。

 

すると………

 

「………それじゃ、もう良いだろう」

 

「あ、はい………ですが………」

 

すると扉越しに、男女の会話らしき声が聞こえて来る。

 

「ジャンゴ?」

 

「ブチ?」

 

「大丈夫だって、俺だってこんなのは初めてだしさ」

 

「は、はい、実は私も………」

 

ミケとノーラが、それがジャンゴとブチの声である事に気づくと、更に会話が続く。

 

「あ、ココ………思ったより良いね………何だか………マシュマロみたいで柔らかいな………」

 

「あ、はい………お母様ゆずりです………あ、そ、そんなに触ってはいけません………もっと優しく扱って下さると………」

 

「あ、御免。余りにも柔らかくてな………コッチは如何だ?」

 

「は、はい………凄く大きいです………」

 

「「!??!」」

 

会話の続きを聞いたミケとノーラはボンッ!と音を立てて真っ赤になる。

 

その会話は如何聞いて………『アレ』の最中の様に聞こえたからだ

 

「あああ、あの2人、学校で何やってんの!?」

 

「それじゃあ、こいつをココに入れて………」

 

「あ、ダメです………もっとゆっくりとしないと………」

 

「大丈夫だって、もう限界なんだ………良いだろう? 最初はヘタで失敗するかもしれんが………」

 

思わずミケがそう声に出す中、2人の会話は続く。

 

「だ、大丈夫です………覚悟は出来ています………それでは………」

 

「ああ………行くぞ………」

 

「ちょ………ちょっと待った~~~~~~~~~っ!!」

 

とそこで耐え切れなくなったのか、ミケは勢い良くドアを蹴り開けた!!

 

「「!?」」

 

「ゆ、ユー達一体何をしてたの!? ランチタイムの前にまずそっちからなの!?」

 

「エ、エッチなのはいけないと思います!!」

 

驚いているジャンゴとブチに向かって、ミケとノーラはそう叫ぶ。

 

「いや、調理にエッチは関係ないだろ………」

 

「「………えっ?」」

 

だが、ジャンゴがそう言うのを聞いて、よく見てみると………

 

そこは調理室であり、ジャンゴはホットプレートで焼いている生地にコテを入れている状態で、近くのテーブルには真っ白な柔らかそうなクリームの入ったボールがある。

 

「え?」

 

「ア、アレ?………」

 

その光景を見たミケとノーラは、目をこれ以上にないくらいに点にする。

 

「あの………私達は『オムレツスフレ』を作っているところなんです」

 

とそこで、ジャンゴと同じ事をしていたブチがそう言って来る。

 

「オ………オムレツ………」

 

「スフレ………ですか?」

 

「はい、『COOK PARTY』と呼ばれるお料理サイトで美味しそうな卵のホットケーキがありましたので、ジャンゴさんと一緒に作ろうって意気込んでいたんです」

 

ブチの屈託のないにっこり笑顔

 

「「…………」」

 

沈黙が続いているミケとノーラ。

 

やがて………

 

「………てことは僕の勘違い?………な、何だー! それなら早く言ってよ! 僕はてっきり………」

 

「何だよ、てっきりって?」

 

誤魔化す様にそう言うミケに、ジャンゴのツッコミが飛ぶ。

 

「い、良いんだよ!! 何でもないったら何でもない!! もう! デリカシーが無いんだから!!」

 

「少しは乙女心を読んで下さい!!」

 

「…………」

 

ジャンゴはそう言われると、出来上がったスフレを皿に移し、ソースやミントを盛り付けると、ノーラに突きつけた。

 

「あ、ありがとう」

 

「そういう考えをするヤツほど………ロクな事がないんだよ………」

 

「うぐ!………」

 

そう言いながらジャンゴは、ホットプレートに戻り、再び作業を開始するのだった。

 

「…………」

 

そして、ブチはそんなジャンゴの事を気にしている様な様子を見せている………

 

「何だったんでしょうね?」

 

「さあ?………」

 

一方、遠方からその様子を見ていた優花里と蛍は、会話が聞こえていなかったので、何が何やらサッパリだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び、校庭にて………

 

ブチとジャンゴが合流し、優花里と蛍が戻ると、バーベキューパーティーはダンスパーティーに移行。

 

ウェスタン・ミュージックが鳴り響く中、皆思い思いに踊り楽しんでいる。

 

(有益な情報は得られませんでしたね)

 

(やっぱり戦車格納庫に向かった方が良かったんじゃ………)

 

(蛇野殿………)

 

(スマン………)

 

そんな中で優花里達は語り、そう小声で話し合っていた。

 

と、その時………

 

「ホラホラ! 貴方達も踊りなさいよ!」

 

そう言う台詞と共に突如現れた黒い髪をポニーテールにし、元気な笑顔と人懐っこい瞳が特徴的な闊達かつ天真爛漫そうな少女が、優花里の手を取って、踊っている西部の生徒達の中心へと連れて行った!

 

「えっ!? あ、あのっ!?」

 

「優花里ちゃん!?」

 

「「!?」」

 

蛍達が止める間も無く、優花里はポニーテールの少女と共に踊らされる。

 

「す、すみません! 私、やらなきゃいけない事が………」

 

と、優花里がそう言いながらポニーテールの少女から離れようとしたところ………

 

「来るのは知っていたよ………大洗の生徒さん」

 

「!?」

 

ポニーテールの少女がそう言い放ち、優花里は仰天する。

 

「申し遅れたね。私は『クロエ』。西部機甲部隊の総隊長だよ」

 

「! 総隊長っ!?」

 

慌ててクロエを振り解き、逃げ出そうとする優花里だったが………

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

先程まで楽しく踊っていた筈の西部の生徒達が、全員で優花里を取り囲み、ピースメーカーを向けていた。

 

「!?」

 

「ゆ、優花里ちゃん………」

 

「スマン………」

 

「抜かったでござる………」

 

またも驚愕する優花里の元に、ピースメーカーを突き付けられている蛍、大詔、小太郎が連れて来られる。

 

「うふふ………ようこそ、西部学園へ」

 

そしてそんな中で、クロエは不敵に笑うのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

西部学園への潜入任務に向かった優花里達。
西部劇の街並みや、絶滅動物を復活させて保護している事に圧倒されながら、西部学園へと忍び込む。

次々に現れる西部の戦車隊や歩兵隊と会合。
だが、肝心の使用戦車を突き止める前に………
西部機甲部隊の総隊長、『クロエ』に見つかって捕まってしまう。
果たして、優花里達の運命は!?

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。