ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第12話『ブリティッシュ騎兵隊です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第12話『ブリティッシュ騎兵隊です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第1作戦の待ち伏せが失敗した大洗機甲部隊は………

 

第2作戦へと移行し、大洗の街中を使って、市街戦へ突入。

 

思惑通りに戦力を分散させ、動きを制約されたグロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊に………

 

大洗機甲部隊は次々に奇襲を仕掛ける。

 

だが、そんな中………

 

遂にブリティッシュ歩兵部隊のエースであるアールグレイとティムが動き始め………

 

またも戦況は分からなくなるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗町・市街地内………

 

「「ハッハッハッハッ!!」」

 

マチルダⅡを1両撃破したCチームは、エルヴィンとカエサルが車外へ姿を晒し、腕組みをした状態で得意そうに笑いながら、路地を進んでいる。

 

「頼もしいなぁ」

 

「実際Ⅲ突は大洗戦車部隊の中では1番の火力を持っていますからね。Cチームを守れれば勝機はあります」

 

「…………」

 

そんなCチームのⅢ突に随伴している歩兵部隊の中には磐渡と灰史、そして途中でバッタリと会って合流した陣の姿が在る。

 

「! 正面に敵戦車っ!!」

 

とそこで、随伴部隊の中に居た偵察兵がそう声を挙げる。

 

その報告通りに、Ⅲ突一行が進んでいた路地の正面のT字路に、マチルダⅡと随伴のブリティッシュ歩兵部隊が現れる。

 

「ぬうっ! アレに見えるは大洗のⅢ突!! さっきグロリアーナのマチルダを1両やった奴だなぁ!! 此処で会ったが百年目!! マチルダの弔い合戦じゃあ!!」

 

「いや、オレガノ先輩! 死んでませんから!!」

 

Ⅲ突一行の姿を見るが否や、そう言い放ってPIATを構えるオレガノに、後輩の歩兵がツッコミを入れる。

 

「Ⅲ突、逃げろ! 歩兵の相手は俺達がする!!」

 

「任せたぞ! おりょう! 路地裏に逃げ込め!!」

 

「ほい」

 

四四式騎銃を構えながら磐渡がそう言うと、エルヴィンはおりょうに指示を出し、Ⅲ突は路地裏へと退避する。

 

「良し! 敵の歩兵を食い止めろぉっ!!」

 

磐渡がそう言って発砲したのを皮切りに、Ⅲ突に随伴していた歩兵部隊はマチルダⅡと共に進軍して来たオレガノを中心としたブリティッシュ歩兵部隊に銃弾を浴びせる。

 

「ぶわっはっはっはっはっ! 素人の弾なんぞ、そうそうに当たらんぞ!! 突撃兵部隊! 着剣っ!!」

 

と、弾丸が至近距離を掠めながらもオレガノがそう言い放ったかと思うと、ブリティッシュ歩兵部隊の中の、小銃を持った突撃兵達が、一斉に銃剣を着剣した。

 

「!? 何っ!?」

 

「まさか………」

 

「そーれっ!! 突撃いいいいいいぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーっ!!」

 

「「「「「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ!!」」」」」

 

オレガノがそう声を挙げた瞬間、着剣した突撃兵達が、一斉に突撃を開始する!

 

「嘘だろっ!? 突っ込んで来やがったっ!?」

 

「て、手榴弾をっ!!」

 

磐渡が驚きの声を挙げると、灰史は慌てて手榴弾を投げようとし、機関銃以外の武装だった大洗歩兵達も、手榴弾に手を伸ばす。

 

「「「「「おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!」」」」」

 

しかし、それよりも早く、着剣したブリティッシュの突撃兵達が、磐渡達の居る大洗歩兵部隊の中へと雪崩れ込んで来た!!

 

「テヤアァッ!!」

 

「うわああっ!?」

 

「セヤアアッ!!」

 

「ぎゃああぁっ!?」

 

路地は両軍の歩兵が入り混じり、混戦状態となる。

 

不意を突く様なブリティッシュ歩兵部隊の突撃に、一時混乱した大洗歩兵隊だったが、すぐに軍刀や銃剣を抜き、近接戦闘へと移行する。

 

「歩兵隊が攻撃を受けているぞ」

 

「慌てるな。入り組んだ道を利用して戦車共々背後を突くんだ。Ⅲ突は車高が低いからな」

 

カエサルの言葉に、エルヴィンはそう返して、Ⅲ突に入り組んだ道を進ませる。

 

このまま相手の裏を取り、一気に殲滅する作戦の様だ。

 

「皆! 持ちこたえろぉっ!! もうすぐⅢ突が援護してくれるっ!!」

 

四四式騎銃の銃剣を展開させた磐渡が、ブリティッシュの歩兵達を何とか捌きながら、大洗歩兵部隊にそう呼び掛ける。

 

と、その肩が何者かに突かれる。

 

「!?」

 

反射的に振り返りながら四四式騎銃の銃剣を振るう磐渡だったが、突っついた相手………陣は片手で磐渡の攻撃を止め、もう片方の手で自分を指差す。

 

「あ、浅間か!? 驚かすなっ!!」

 

「…………」

 

突然肩を突かれた事を非難すると、陣は謝る様にペコリと頭を下げる。

 

最も、190cmの男が少し頭を下げたぐらいでは、少々分かり難かったが………

 

「で、如何した?」

 

「…………」

 

磐渡が尋ねると、陣はⅢ突が裏取りに向かっている路地裏の方向を指差す。

 

「ん?………!? うええっ!?」

 

その方向を見やり、磐渡は思わず間抜けた声を挙げる。

 

何故ならそこには………

 

木製の塀の向こうを移動している4本の幟の姿が在ったからだ。

 

更にタイミングが悪い事に、マチルダⅡが前進して来て、幟に気づいた様に砲塔を旋回させ、木製の塀越しに狙いを定める。

 

「Cチーム! 幟を下ろせ! 敵から丸見えだぞっ!!」

 

『『『『えっ?』』』』

 

慌てて通信を送る磐渡に、Cチームから間抜けた返事が返って来た瞬間!

 

マチルダⅡが発砲!!

 

放たれた砲弾が、木製の塀を吹き飛ばし、Ⅲ突の側面に命中!!

 

幟がボロボロとなり、まるでそれに代わる様に、判定装置が白旗を上げた。

 

「やったぞ!」

 

「ハハッ! あんな事したら誰だって気づくって!!」

 

マチルダⅡの乗員達が、撃破されたⅢ突を笑う様にそう言う。

 

「おおっ!? やったな、4号車! 全然気づかなかったぞ!! ぶわっはっはっはっはっ!!」

 

しかしそこで、オレガノがそう言いながら豪快に笑う。

 

「「オレガノ先輩………」」

 

そんなオレガノを見て、マチルダⅡの乗員とブリティッシュの歩兵達は苦笑いを浮かべる。

 

「さ、Ⅲ突がやられたっ!?」

 

「クソッ! 全員撤退!! 撤退しろぉっ!!」

 

すぐにそう命令を飛ばす磐渡だったが………

 

「おおっと! 逃がさんぞぉっ!!」

 

そんな磐渡に向かって、オレガノはPIATを発砲する!!

 

「!? うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」

 

直撃を受けた磐渡は吹き飛ばされ、地面を転がると、戦死判定を受ける。

 

「蹄さんがやられた!」

 

「こ、後退ぃっ!!」

 

その光景を見た大洗歩兵部隊には動揺が走り、灰史の声で一斉に退却を始める。

 

「逃がすなぁっ!!」

 

「撃て撃てぇっ!!」

 

しかし、ブリティッシュの歩兵達は、退却に転じた大洗歩兵部隊に容赦無く発砲する。

 

「うわぁっ!?」

 

「ぐああっ!?」

 

次々と背中から撃たれ、戦死判定を受けていく大洗歩兵部隊。

 

「ぶわっはっはっはっはっ! 一網打尽にしてくれるわぁ! オイ! 早く弾を込めろ!!」

 

その光景を見ながらオレガノは、自分のPIATの装填をさせている歩兵の1人にそう呼び掛ける。

 

「少しは自分でも装填の仕方を覚えて下さいよ!………良し! 出来た!!」

 

愚痴る様に歩兵がそう言い返すと、装弾を終えたPIATをオレガノに渡す。

 

「よおしっ! トドメを刺してやるぅっ!!」

 

PIATを受け取ると、退却している大洗歩兵部隊へと向けるオレガノ。

 

そして引き金が引かれる………

 

かと思われた瞬間!!

 

ズガーンッ!!と言う凄まじい銃声が鳴り響いた!!

 

「!? おうわぁっ!?」

 

直後にオレガノがブッ飛ばされ、地面に倒れる!

 

「!? オレガノさん!?」

 

「!?」

 

ブリティッシュの歩兵達が驚いていると、オレガノに戦死判定が下される。

 

「おおっ!? 何じゃあっ!? 誰にやられたんじゃ!?」

 

戦死判定を受けたオレガノが首だけ起こし、誰にやられたのかを確認する。

 

すると………

 

「…………」

 

銃口から硝煙の上がっているマウザーM1918を腰溜だめで構えている陣の姿を確認する。

 

「!!………」

 

更に陣は、ボルトを引いて排莢・装填を行ったかと思うと、今度はマチルダⅡに狙いを定めて発砲!!

 

放たれた銃弾がマチルダⅡの履帯に命中!

 

命中した部分から履帯が千切れ飛んだ!!

 

「!? キャアッ!?」

 

「しまったっ!? 履帯が!?」

 

履帯を切られたマチルダⅡが、横滑りする様に停止する。

 

「今の内です! 撤退ぃーっ!!」

 

その隙を見逃さず、灰史がそう叫んで、生き残った歩兵達と一緒に撤退して行く。

 

「…………」

 

陣も牽制射撃をしつつ、裏路地を使ってその場から撤退して行った。

 

「大洗の連中が逃げるぞ!」

 

「待て! マチルダの修理が先だ!!」

 

ブリティッシュの歩兵達は追撃せず、工兵を中心にマチルダⅡの壊れた履帯の修理に掛かる。

 

「さっきの狙撃兵の男は何だったんだ!?」

 

「あの反動の強いマウザーM1918を腰だめで………しかもかなり連射して撃っていたぞ」

 

マチルダⅡの壊れた履帯を修理しながら、ブリティッシュの歩兵達は陣について話し合う。

 

「大洗の歩兵は化け物かよ」

 

「クッソーッ! 今度会ったら絶対に負けんぞぉーっ!!」

 

戦慄を覚えているブリティッシュの歩兵達の横で、衛生兵に扮した歩兵道連盟の運営審判に運ばれていくオレガノが、悔しそうに叫びを挙げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方………

 

別の一角では………

 

「撃てぇっ!!」

 

誠也の号令で、一式機動四十七粍速射砲から榴弾が放たれる!!

 

「「「うわあぁっ!?」」」

 

直撃と爆風、破片を受けたブリティッシュの歩兵が3人、戦死と判定される。

 

「誠也! 今ので榴弾は最後だぜっ!!」

 

と、装弾を担当していた砲兵が、誠也へそう報告する。

 

直後にブリティッシュの歩兵が投げた手榴弾が、至近距離で爆発した!!

 

「うわっ!?」

 

「もう防楯が持たないぞっ!!」

 

咄嗟に誠也が伏せると、別の砲兵がそう声を挙げる。

 

彼の言う通り、一式機動四十七粍速射砲の防楯は度重なる銃撃と手榴弾の破片を浴び、ボロボロになっている。

 

「クッ! 仕方が無い! 徹甲弾でやれるだけ………」

 

と、誠也がそう言った瞬間………

 

燃料タンクを撃ち抜かれ、炎上していたマチルダⅡが動き出す!

 

「!? マチルダが!?」

 

「まだ生きてやがったのか!?」

 

誠也と砲兵のそう言う声が挙がると、燃料タンク部分の火災が治まり、マチルダⅡの砲塔が、自分達に向けられている事がハッキリとした。

 

「! 伏せろぉっ!!」

 

その叫びで、誠也と砲兵達が一斉に地面に伏せると、マチルダⅡは同軸機銃のベサ機関銃を薙ぎ払う様に発砲!

 

一式機動四十七粍速射砲の防楯は忽ち破壊され、砲自体も損傷する。

 

「うわぁっ!?」

 

「ぬうあぁっ!?」

 

更に、銃弾は伏せていた砲兵の何人かにも命中し、戦死判定を下させる。

 

「! 皆さん! 逃げて下さいっ!!」

 

誠也のその言葉で、生き残った砲兵は損傷した一式機動四十七粍速射砲を放棄し、退却を始める。

 

それを追撃しようとするマチルダⅡだったが………

 

「させるかぁっ!! ブローックッ!!」

 

そこで歩兵に向けて榴弾を撃っていたBチームの八九式がマチルダⅡへと接近。

 

「撃てぇっ!!」

 

そのまま横付けする様に位置取ったかと思うと、至近距離でマチルダⅡの砲塔側面に徹甲弾を撃ち込む!!

 

だが………

 

八九式が放った徹甲弾は、ガキィンッ!!と甲高い音を立てたかと思うと、マチルダⅡの装甲に弾かれ、明後日の方向へと飛んで行った………

 

「「「「………アレェ?」」」」

 

バレー部メンバーの間抜けた声が重なる。

 

マチルダⅡの砲塔は、全周囲75mm。

 

八九式の主砲の徹甲弾が貫けるのは、精々30mm………

 

元々日本の戦車の大半は、対戦車戦闘を想定していないのである………

 

そして、至近距離から砲撃を弾かれて、唖然としていたBチームの八九式に、マチルダⅡが主砲を向ける。

 

「! ヤ、ヤバイッ!? 逃げろぉっ!!」

 

「逃がさんっ!!」

 

慌てて後退指示を出す典子だが、そうはさせないと、ブリティッシュの狙撃兵がボーイズ対戦車ライフルMKIを発砲!

 

弾丸が八九式の左の履帯と起動輪を破壊した!!

 

「!? しまったっ!?」

 

「サーブ権取られたぁっ!?」

 

動けなくなった八九式に、マチルダⅡは容赦無く砲撃を喰らわせる!!

 

八九式は横倒しになり、撃破の判定を受けて、白旗を上げる。

 

「! 八九式が!」

 

「クッ! 全員撤退だぁっ!!」

 

秀人が声を挙げると、大詔が撤退を叫び、大洗歩兵部隊はその場から撤退を始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『Cチーム! 走行不能!!』

 

『Bチーム、敵撃破及び走行不能! すみません!!』

 

『ぐああっ!? クソッ! β分隊の本多だ! やられた!!』

 

『δ分隊の桑原っす! やられたっす!!』

 

「ええい! 何たる事だ!!」

 

先程までとは打って変わって、再び追い込まれた大洗機甲部隊の知らせを聞いて、弘樹は思わずそう叫ぶ。

 

「現在敵戦車の残りは4両………歩兵も3分の2以上が残っています」

 

「対してコッチはAチームのⅣ号1両。加えて歩兵部隊の損耗率は70%以上と来てるぜ」

 

楓と地市が、現在の戦力比を確認し、苦い顔を浮かべる。

 

「こりゃもう駄目じゃないの?」

 

思わず了平が、そんな弱音を吐いたが………

 

「貴様ぁっ! 決まっても居ない勝負を投げ出すとは!! それでも日本男児かぁっ!? 大和魂は何処へやったぁっ!!」

 

途端に弘樹は了平の襟首を掴んで持ち上げ、そう怒声を飛ばす。

 

「ぐええっ!? 苦しいぃ~………」

 

「オ、オイ! 落ち着けって、弘樹!!」

 

完全に身体が宙に浮かび苦しむ了平を見て、地市が慌てて弘樹を止める。

 

「! スマン………」

 

それで我に返った弘樹が、すぐに了平を解放する。

 

「アダッ!?」

 

了平は諸に尻餅を着く。

 

「クッ! 頭に血が上るといつもコレだ………小官も修行が足りん」

 

(やっぱコイツ、日本兵の子孫だな………)

 

自分の未熟さを恥じる弘樹と、弘樹がやはり日本兵の血を引いている事を改めて認識する地市。

 

「兎に角、今はAチームのⅣ号を守りませんと。戦車が撃破されてしまってはコチラの負けですから」

 

その場を纏める様に楓がそう言う。

 

「そうだな」

 

「こちらα分隊の舩坂。西住総隊長。現在位置を教えて下さい」

 

それを聞いて、弘樹はすぐに無線でみほ達の現在位置を尋ねる。

 

『こちらは現在、コンビニ前を通過中………!? あっ!?』

 

「! 如何しました!?」

 

『敵の偵察兵に発見された! すぐに戦車が来るっ!!』

 

「! Aチームが狙われている! すぐに向かうぞっ!!」

 

それを聞いた弘樹は、すぐに地市達へそう呼び掛ける。

 

「よっしゃあっ! ココでポイント稼いでモテモテに!!………」

 

「オメェは黙ってろっ!!」

 

「あのジープを使いましょう!」

 

こんな時でも露骨な了平に地市が突っ込みを入れ、楓がブリティッシュ歩兵隊が何らかの事情で放棄したと思わしきSASジープを見つけてそう言う。

 

「良し!」

 

すぐにそのSASジープへと乗り込み始める弘樹達。

 

するとそこで………

 

馬の蹄が、地を蹴る音が聞こえて来た。

 

「「「「!?」」」」

 

弘樹達は驚きながら、音の聞こえてくる方向を見やると、そこには………

 

「…………」

 

馬に跨って腰にフルーレを差した、第二次世界大戦時のイギリス陸軍の戦闘服を着た騎兵、アールグレイの姿が在った。

 

「奴は………」

 

「ブリティッシュのエースだ!!」

 

「マジかよ!? うわっ! 死んだぁっ!!」

 

「まさかこんな時に出くわすなんて………」

 

弘樹達は緊迫感に包まれる。

 

「…………」

 

そんな弘樹達に対して、アールグレイは決して油断せず、ジリジリと距離を詰めてくる。

 

「………地市、了平、楓。お前達は先に行け」

 

すると、そんなアールグレイに注意を払いながら、弘樹は小声で地市達にそう言う。

 

「!? 弘樹!?」

 

地市が驚きの声を挙げる。

 

「奴は小官が食い止める………」

 

「オイ! それ典型的な死亡フラグだぜ!?」

 

続けて、アールグレイを食い止めると言う弘樹に、了平もそう言い放つ。

 

「舩坂さん! 相手はエースです! 舩坂さん1人では!!………」

 

「行けっ! コレは分隊長命令だっ!!」

 

楓も止めようとしたところ、弘樹はそれを遮ってそう叫んだ。

 

「!!………分かったっ!」

 

「弘樹………スマン!」

 

「舩坂さん………御武運を!」

 

それを聞き、弘樹の覚悟を感じ取ったのか、地市達はすぐさまSASジープに乗り込み、Aチームの援護へと向かう。

 

「!!………」

 

そんな地市達を行かさんとばかりに、アールグレイは愛馬を走らせようとしたが………

 

銃声が響いたかと思うと、その愛馬の足元に銃弾が撃ち込まれる!

 

「!!」

 

驚いた愛馬を宥めつつ、元の姿勢へと戻したアールグレイは、銃弾を撃った相手………着剣した三八式歩兵銃を構えている弘樹へと向き直る。

 

「お前の相手は………小官だ」

 

そう言いながら、銃口をアールグレイへと向ける弘樹。

 

「…………」

 

アールグレイは無言のまま、同じ様に右手だけで持っていたRifle No.4 Mk Iを向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

ブリティッシュ歩兵隊の偵察兵に発見されたAチームのⅣ号は………

 

偵察兵が呼んだマチルダⅡ2両に追い回されていた。

 

Ⅳ号を照準器に捉えた先を行っているマチルダⅡが発砲したが、Ⅳ号は曲がり角を右折して回避。

 

マチルダⅡが撃った砲弾は、民家を破壊する。

 

マチルダⅡはⅣ号を追跡する様に曲がり角を右折。

 

そこでⅣ号が発砲したが、牽制だったのか、まだ砲手である華の腕が未熟だった為か、砲弾をマチルダⅡを掠める様に外れる。

 

だが、その間にⅣ号は交差点を左折し、大洗の更に街中へ進入。

 

当然追撃するマチルダⅡだが、進行先がカーブである事と、狭い路地の為に照準が付けられない。

 

ならば接近してと思ったのか、速度を上げるマチルダⅡだったが………

 

上げ過ぎたのか、続いてのカーブを曲がり切れず、道端に在った旅館の軒先へと突っ込んだ!!

 

「ウチの店がぁーっ!?………コレで新築出来る!!」

 

観客席に居たその店の主人が、絶叫の後に歓喜の声を挙げる。

 

「縁起良いなぁ~」

 

「ウチにも突っ込まねえかなぁ~?」

 

両隣に居た知り合いらしき男性達も、そんな事を言い合う。

 

戦車道・歩兵道の試合、並びにその関連行為に於いて、建築物等が破壊された場合………

 

該当の建物が新築対象となり、両連盟が費用を補填する決まりとなっている。

 

その為、中には往年の怪獣映画の様に、ウチの街で試合をやってくれと言う様な市町村も存在する。

 

そんな住人達の事など知る由も無く、街中を逃げ回るⅣ号だったが………

 

その前方には、工事中の看板とフェンス、そしてコンクリートを剥がされた道路が広がっていた。

 

「! 停止! 急速転換!!」

 

みほはすぐにそう指示を出し、Ⅳ号は工事中の道路の前で停止すると信地旋回で反転し、別の道を逃げようとする。

 

しかし、その時には既に………

 

グロリアーナの全車両が、道を塞ぐ様に立ちはだかっていた。

 

グロリアーナ戦車部隊は、Ⅳ号からある程度の距離を取って停止したかと思うと、チャーチルのハッチが開いて、ダージリンが姿を見せる。

 

「こんな格言を知ってる? イギリス人は恋愛と戦争では………手段を選ばない!」

 

ダージリンがそう言い放つと、グロリアーナ戦車部隊の全砲門が、Ⅳ号へと向けられる。

 

「…………」

 

冷や汗を流すみほだが、この状況でさえ、彼女は打開策が無いかを探っている。

 

だが、良い案は思いつかない。

 

万事休すか………

 

………と思われたその時!!

 

「参上ーっ!!」

 

と言う杏の台詞と共に、38tが路地から姿を現し、グロリアーナ戦車部隊へ向かって行った!

 

「生徒会チーム!」

 

「履帯直したんですね!」

 

それを見て歓声を挙げる華と優花里。

 

「発射ぁっ!!」

 

不意を衝いてほぼ零距離まで接近した38tが発砲する!!

 

しかし、弾丸は明後日の方向へ飛んで行った………

 

「あ………」

 

「桃ちゃんココで外す?」

 

「零距離だったよ………」

 

間抜けた声を挙げる桃に、柚子と蛍がそうツッコミを入れる。

 

そして、グロリアーナ戦車部隊は目の前に飛び込んで来た38tに、全車での砲撃を浴びせた!!

 

それに38tが耐えられる筈も無く、アッサリと判定装置が作動。

 

「やられた~っ!」

 

白旗が上がる。

 

しかしココで、グロリアーナ戦車部隊はミスを犯していた!

 

それは、突然目の前に現れた38tに驚いた為か、全車で一斉砲撃してしまった事である!

 

次弾を込めるまでの隙………

 

Ⅳ号に脱出のチャンスを与えてしまったのだ!!

 

「前進! 1撃で離脱して! 路地左折!!」

 

みほが即座にそう指示を下し、麻子がⅣ号を前進させる!!

 

そして、38tが飛び込んできた路地へと飛び込もうとする。

 

だがその前に一旦停車し、一番右端に居たマチルダⅡに砲撃を浴びせた!!

 

至近距離だった事と、砲塔と車体の隙間に命中した事で、マチルダⅡは撃破と判定され、白旗を上げる。

 

それを見届ける間も無くⅣ号は再発進。

 

路地へと飛び込む。

 

「回り込みなさい! 至急っ!!」

 

ダージリンが怒鳴る様にそう言うと、チャーチルと残りのマチルダⅡ2両が後退を始める。

 

撃破した38tと、撃破されたマチルダⅡが道を塞ぎ、Ⅳ号を追撃出来ない。

 

そこで、一旦後退して回り込む積もりだ。

 

と、そこで………

 

「居ました! グロリアーナの戦車です!!」

 

「了平! このまま突っ込め!!」

 

「マジで!?」

 

地市達が乗るSASジープが現れ、後退中のグロリアーナ戦車部隊に突撃を掛ける!!

 

「!? マズイッ!!」

 

ダージリンは初めて焦った様な声を挙げる。

 

今グロリアーナ戦車部隊は突撃して来る地市達に完全に背を向けている。

 

如何に装甲の硬いチャーチルとマチルダと言えど、戦車共通の弱点として、後部の装甲は薄い(それでも他の同級戦車と比べれば厚い方だが)

 

「後ろを狙えばっ!!」

 

助手席の地市が立ち上がり、試製四式七糎噴進砲を構える。

 

と、その時!!

 

民家と民家の隙間から、火炎が伸びて来た!!

 

「「「!? うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」」」

 

忽ちその火炎に包まれ、SASジープの上から転げ落ちる地市達。

 

操縦者を失ったSASジープは、路肩の家に突っ込んで止まる。

 

そして炎が消えた地市達は、全員が戦死判定を受けた。

 

「ゼエ………ゼエ………危ないところだったね………」

 

とそこで、そう言う台詞と共に、イギリス軍の火炎放射器・Ack Packを背負ったセージが、息切れした様子で現れた。

 

先程地市達をやったのは彼らしい(注釈:歩兵道用の人体に無害な安全な火炎をしようしております)

 

「セージ歩兵隊長!」

 

「いや~………ゼエ………ゼエ………市街戦中に車をやられてね………ゼエ………ゼエ………代わりが見つからないまま………ゼエ………ゼエ………走り回ってたんだけど………ゼエ………ゼエ………そこで偶然此処に出てね………ゼエ………ゼエ………」

 

「セージ!!」

 

息を切らしながらもセージがダージリンに報告していると、チャーチルの中からアッサムが声を挙げた。

 

「アラ………」

 

ダージリンが何かに気づいた様に、ハッチから完全に出ると、アッサムが顔を出す。

 

「もう! 足が悪いのに、そんなに無理して!!」

 

顔を出すやいなや、アッサムはセージに向かってそう怒鳴る。

 

「いやはは、ゴメンよ………ゼエ………ゼエ………」

 

セージは苦笑いを浮かべると、その場にへたり込んだ。

 

「もう! そこで休んでなさい! もう敵の戦車は1両だけだから!!」

 

「すまない………」

 

「………無理しないでよね」

 

と、最後にそれまで怒鳴っていたのが嘘の様に、しおらしい顔となってそう言うアッサム。

 

「ありがとう、アッサム」

 

それに対し、セージも笑みを浮かべてそう言う。

 

「相変わらず仲が良ろしいですわね」

 

すると、そんな2人の様子を見ながら、ダージリンがクスクスと笑いながらそう言った。

 

「!? ダ、ダージリン隊長! も、申し訳ありません!! 勝手な事を!!」

 

アッサムはすぐにダージリンに謝罪したが………

 

「構いませんわよ。恋人同士の語らいを邪魔するほど、私は無粋じゃないわ」

 

「!!」

 

「アハハハ………」

 

そのダージリンの言葉に、アッサムは顔を真っ赤にして縮こまり、セージは苦笑いを浮かべる。

 

「セージ隊長!」

 

とそこへ、味方のハンバー装甲車マークⅢが現れる。

 

「セージ歩兵隊長を収容しなさい。大洗の残り戦車は私達で叩くわ」

 

「ハッ! 了解しました!!」

 

ダージリンはハンバー装甲車マークⅢの乗員にそう命じ、再びチャーチルの中へと引っ込むと、マチルダⅡ2両と共に、再び市街の中へと消えたⅣ号を追うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして………

 

ブリティッシュのティムは………

 

「撃て撃てぇーっ!!」

 

工兵が作って積んだ土嚢を楯に、大河が中心となって数人の歩兵達が、向かってくるティムに弾幕を張っている。

 

「悪く思わないで下さい」

 

しかしティムは巧みな手綱捌きで愛馬ライトニングスターを操り、そう言いながらミルズ型手榴弾を投擲した。

 

「! アカン! 手榴弾やっ!!」

 

「爆発するぞーっ!!」

 

大河と突撃兵の1人がそう声を挙げると、大洗歩兵達は慌てて土嚢の影から飛び出す。

 

直後に手榴弾が爆発し、土嚢が吹き飛ぶ!!

 

「そこっ!!」

 

ティムは、土嚢の影から飛び出した大洗歩兵の1人にランチェスター短機関銃Mk.1*を発砲する。

 

「うあああっ!?」

 

銃弾を全身に浴びた歩兵は、そのまま倒れて戦死と判定される。

 

「おんどれぇっ! よくもワイの仲間をぉっ!!」

 

それを見た大河は、怒りに任せて一〇〇式機関短銃を乱射する。

 

「おっと!」

 

しかしティムはまるで射撃される事を呼んでいたかの様な動きで回避する。

 

「ええい、クソッ! チョロチョロとぉっ!!」

 

遮蔽物の間を移動するティムを追う様に一〇〇式機関短銃の引き金を引きっぱなしにする大河だったが………

 

やがてカシンッ! カシンッ!と乾いた音を立てて弾が出なくなる。

 

「クッ! 弾切れかいな!!」

 

すぐに予備弾装を取り出そうとした大河だったが………

 

「! アカン! もう弾が有らへんっ!!」

 

もう全ての弾装を使い切ってしまった事に気づく。

 

「黒岩分隊長! コッチも弾切れです!!」

 

「コッチももう弾が有りません!!」

 

他の歩兵達も同じ様に、次々と弾切れの報告が挙がる。

 

「ええいっ! こうなったら最後の手段や!! 全員突撃ぃーっ! 男だったら拳で語らんかいぃっ!!」

 

大河はそう言い、弾切れした一〇〇式機関短銃を捨てると、ティムに殴り掛かって行く。

 

「「「「「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!」」」」」

 

そんな大河に触発された様に、他の大洗歩兵達も軍刀や銃剣で突撃を敢行した!!

 

「勇ましいですね………その行動に敬意を払います」

 

するとティムは、そんな大河達と対等に戦おうと思ったのか、ライトニングスターから降り、地面の上に立つ。

 

「ええ度胸や! 先ずは喰らったれぇーっ!!」

 

そんなティムへ、大河は容赦無く殴り掛かる。

 

「…………」

 

しかしティムは、その大河の殴り掛かって来た腕を掴み、そのまま投げる。

 

「!? うおおっ!?」

 

「ハアッ!!」

 

そして、大河がまだ空中に居る内に、脇腹に爪先での蹴りを喰らわせた!!

 

「ゴハッ!?………」

 

回転しながら地面に叩きつけられた大河は、そのまま動けなくなる。

 

「親分っ!」

 

「テメェッ! よくも親分をぉっ!!」

 

そこで今度は、大河の舎弟である大洗連合の歩兵が、軍刀と小銃に着剣した銃剣で襲い掛かる。

 

「…………」

 

しかしティムは慌てず、先ず軍刀を振ってきた突撃兵の、軍刀を握っている両腕を脇に抱え込む様にして押さえ込む。

 

「うおっ!?」

 

「そりゃああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

そこでその隙を狙って、小銃に着剣した銃剣を握った突撃兵が突きを繰り出して来たが………

 

「フッ!」

 

ティムは、両腕を脇に抱え込んでいた突撃兵の軍刀を使って防ぐ。

 

「!? 何ぃっ!!」

 

「ハッ!!」

 

驚いた小銃に着剣した銃剣を握った突撃兵にローキックを喰らわせる。

 

「!? うおっ!?」

 

小銃に着剣した銃剣を握った突撃兵が膝から崩れる。

 

するとその瞬間に、ティムは両腕を脇で押さえていた突撃兵を投げ飛ばし、軍刀を奪う!

 

「のうわっ!?」

 

「ハアッ!!」

 

奪った軍刀を右手に逆手に握ると、横薙ぎに一閃!

 

「ぐああっ!?」

 

膝から崩れていた小銃に着剣した銃剣を握った突撃兵が斬りつけられ、戦死と判定される。

 

「このぉっ!!」

 

「ハアッ!!」

 

軍刀を取られて投げ飛ばされた突撃兵が、起き上がると同時に軍刀を奪い返そうとしたが、それよりも早く、ティムは返す刀で斬り付ける!

 

「!? おうわぁっ!?」

 

斬り付けられた突撃兵は錐揉みしながら倒れ、そのまま戦死判定を受ける。

 

「「!!」」

 

その様を見て、残る2人の突撃兵が突撃を躊躇する。

 

「…………」

 

しかし、ティムはそこで軍刀の刃を地面に突き刺し、放棄する。

 

「「!?」」

 

突撃兵2人は、そんなティムの行動に驚く。

 

「どうぞ………」

 

ティムは、ボクシングの様な構えを取ったかと思うと、突撃兵2人にそう言い放つ。

 

「「!! うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!」」

 

その言葉に応じたのか、ティムの底知れぬ実力に恐怖を感じた反動か、突撃兵2人は叫び声を挙げながらティムへと突っ込む。

 

「セイヤアァッ!!」

 

「!!………」

 

先行した突撃兵がストレートパンチを繰り出したが、ティムは姿勢を低くしてかわし、そのまま懐へ入り込む!

 

「フッ!!」

 

「ゴハッ!?」

 

そしてカウンターのアッパーカットを繰り出し、突撃兵の顎を打った!!

 

顎への攻撃で脳に衝撃を受けた突撃兵は、もんどりうって倒れる。

 

「せやあっ!!」

 

「!?」

 

とそこで、何時の間にか後ろへと回っていたもう1人の突撃兵が、ティムを羽交い絞めにした。

 

「………フウッ!!」

 

一瞬驚いたティムだったが、慌てずに羽交い絞めにして来た突撃兵の鳩尾に肘打ちを打ち込む!

 

「!? ぐおっ!?」

 

「せええいっ!!」

 

突撃兵が怯んだその瞬間に投げ飛ばし、そのまま顎に蹴りを入れた!!

 

「!?………」

 

またも脳に衝撃が行き、突撃兵は気絶する。

 

「…………」

 

大河を含めた全ての歩兵を倒したティムは、その場で礼をする。

 

するとそのティムの隣に、愛馬のライトニングスターが鼻を鳴らしながら並び立って来る。

 

「分かってるよ、ライトニングスター。早くダージリン隊長の援護に行かないとね」

 

そんなライトニングスターにそう言うと、再びその背へと跨るティム。

 

と、その時………

 

「見つけたぞ! 待ちやがれぇっ!!」

 

「!?」

 

突如そう言う声が聞こえてきて、ティムは驚きながら声が聞こえて来た方向を見やる。

 

「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!」

 

そこには必死の形相で自転車を漕いでやって来る白狼の姿が在った。

 

「この声はさっきの………それにこの音は………まさか、自転車!?」

 

ティムは『何故か音で』、白狼が自転車に乗って来た事を察する。

 

「喰らえぇっ!!」

 

と、そこで白狼は、親友が使っていたZK-383短機関銃を発砲する!!

 

「!! クウッ!!」

 

間一髪のところで回避が間に合うティム。

 

「申し訳ありませんが………今貴方に構っている暇は有りません!」

 

だがティムは、今はダージリンの援護に向かうのが先と判断し、白狼に背を向けて、ライトニングスターを走らせた。

 

「逃がすかぁっ!!」

 

しかし何と!

 

白狼は自転車で馬に乗っているティムのスピードに追い付く。

 

「!? まさかっ!?」

 

「せえやぁっ!!」

 

驚くティム目掛けて、白狼はアクション映画の様に、自転車をジャンプさせると、ハンドルを両手で握った状態で身体を浮かせ、蹴りを繰り出す!

 

その蹴りでティムは、ランチェスター短機関銃Mk.1*を蹴り飛ばされる。

 

「!? しまったっ!?」

 

「貰ったっ!!」

 

着地を決めた白狼が再び自転車ごとジャンプすると、ZK-383短機関銃を向ける。

 

「!! ハアッ!!」

 

しかしその瞬間に、今度はティムが馬上から蹴りを繰り出し、白狼のZK-383短機関銃を蹴り飛ばした!!

 

「うおっ! やるじゃねえかっ!!」

 

ZK-383短機関銃を失った白狼は、代わりとばかりにティムを殴りつける!!

 

「ぐうっ!?………ハアッ!!」

 

横っ面に白狼の拳を喰らったティムだったが、すぐにカウンターで白狼の胸を殴りつけた!

 

「ガハッ!?」

 

肺の酸素が一瞬で無くなり、思わず咽そうになった白狼。

 

「何のおぉっ!!」

 

しかし気合で耐えて、ティムに今度は延髄斬りを喰らわせる!

 

「ぐうっ!?………ハアッ!!」

 

一瞬意識が飛びかけたティムだったが、コチラも気合で耐えて、反撃のレッグラリアートを喰らわせる!!

 

「ゲホッ!? しぶとい奴だなぁっ!!」

 

と、白狼がそう言い、新たなる攻撃を繰り出そうとしたところ………

 

突如ライトニングスターが嘶き、前足を高々と振り上げた!!

 

「!?」

 

「!? ライトニングスターッ!?」

 

ライトニングスターの突然の行動に、白狼も主であるティムも驚く。

 

その次の瞬間!!

 

ライトニングスターは、振り上げていた両前足を白狼目掛けて振り下ろした!!

 

「!? チイッ!!」

 

舌打ちしながらティムとライトニングスターから一旦距離を離して回避する白狼。

 

「ハーハッハッハッ! 食らうかよぉっ!!」

 

そう言い放つ白狼だったが、そのまま路地の出口へと差し掛かった瞬間!!

 

路地からチャーチルが飛び出して来て、白狼を撥ね飛ばす!!

 

「!? おうわああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーっ!?」

 

何が起こったのか分からぬまま、白狼は某有名映画の様に自転車に乗ったまま飛んで行った。

 

「…………」

 

しかしティムは、白狼の身に何かが起こったのは理解したが、何が起こったのか分からぬ様子で居る。

 

「アラ? 今何か撥ねたかしら?」

 

と、白狼を撥ねたチャーチルが停止し、ダージリンが首を傾げながらハッチから顔を出す。

 

「ダージリン隊長?」

 

「アラ、ティム。こんな所に居たのね」

 

その声にティムが反応すると、ダージリンはティムの存在に気づく。

 

「え、ええ………今、敵の歩兵と戦闘していたのですが………」

 

「まあ。じゃあ、さっき撥ね飛ばしたのは………」

 

「えっ? 撥ね飛ばしたんですか?」

 

「ええ。突然進行先に出て来たものだから、ブレーキが間に合わなくて………」

 

「まあ、戦闘服を着てますから、怪我をするって事は無いでしょうが………」

 

ティムは半分呆れた様子でそう呟く。

 

「そう、まるであの有名映画みたいに………っと、ゴメンなさい。貴方に言っても分からなかったわね」

 

そう言いかけて、ハッとした様にティムに謝罪するダージリン。

 

「いえ、気にしないで下さい。今ではもう、目が見えない事に不便はしていません」

 

ティムは気にしていないと返す。

 

そう、実は閉じているかの様に見える彼の目に視力は無いのである。

 

幼少期の事故で、彼は両親と光を失っていた………

 

しかし、視力を失った代わりに、代償機能が働き、嗅覚や聴覚が凄く優れ始め、更に本人の並大抵ならぬ努力により、失った視力を補う感性や能力を体得したのだ。

 

「そう、ありがとう………では、貴方も街中に潜んでいる大洗の最後の1両の捜索に移りなさい」

 

「了解!!」

 

ダージリンの命令にイギリス式敬礼を返すと、ティムは大洗の街中へ姿を消したⅣ号の捜索に入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

大洗機甲部隊とグロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊との激しい市街戦が続く。
そんな中で、ブリティッシュ歩兵部隊のエースであるアールグレイとティムが、弘樹と白狼と対峙。
白狼とティムの戦いは済し崩しに終結したが、弘樹とアールグレイの戦いは始まったばかり。
更に、大洗戦車隊も、みほ達のⅣ号を残し全滅。
果たして試合の結末や如何に?

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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