ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第115話『第6回戦、終了です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第115話『第6回戦、終了です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦車道・歩兵道全国大会の第6回戦………

 

クレオパトラ&スフィンクス機甲部隊と相対した大洗機甲部隊は………

 

壊滅寸前の状態となり、最早コレまでかと思われたが………

 

試合会場が海辺の砂丘であった為、海上支援要請が通り………

 

新代 護が引き連れて来た第六戦隊と第十六駆逐隊の艦砲射撃が炸裂!

 

クレオパトラ&スフィンクス機甲部隊は、アッと言う間に………

 

隊長車兼フラッグ車であるネフェティの乗るティーガーⅠと歩兵部隊総隊長であるキングコブラだけとなった。

 

それを追撃したみほ達あんこうチームのⅣ号と随伴した弘樹は………

 

お互いに壮絶な一騎打ちの末………

 

遂に相手を撃破。

 

またしても薄氷の勝利で、更なる試合へ駒を進めたのだった。

 

だが、しかし………

 

試合が終了したと同時に………

 

限界を超えていた弘樹とみほが倒れる………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???………

 

「? ココは?………」

 

みほは暗闇の中で目を覚ました。

 

立っている為、地面の感覚はあるが、上下左右全てが真っ暗であり、その中に自分の姿が発光しているかの様にハッキリとしている。

 

「!? 試合は!? 試合は如何なったの!?」

 

そこで、クレオパトラ&スフィンクス機甲部隊との試合の結果が分かっていない事を思い出し、そう声を挙げる。

 

その瞬間!!

 

風切り音がしたかと思うと、みほが立っている場所の近くに、砲弾が着弾した!!

 

「!? キャアッ!?………な、何っ!?」

 

驚きながらも、すぐに砲弾が飛んで来た方向を確認するみほ。

 

そこに居たのは………

 

朦々と土煙を巻き上げながら進軍して来る所属不明の機甲部隊の姿が在った。

 

「!? 機甲部隊!?………!? ハッ!?」

 

そこでみほは、自分が何時の間にかⅣ号に乗って、キューポラから姿を晒している状態になっていた事に気付く。

 

そしてその周囲には………

 

撃破されて白旗を上げている大洗戦車チームの戦車達と………

 

戦死判定を受けて倒れ伏している大洗歩兵部隊の姿が在った。

 

「!? み、皆さん!?………!? キャアッ!?」

 

みほが再び驚きの声を挙げた瞬間、またも近くに砲弾が着弾する。

 

「クッ! 麻子さん! 移動を!!」

 

状況が呑み込めないまま、反射的に麻子へと指示を出すみほ。

 

「…………」

 

しかし、麻子からの返事は返って来ず、Ⅳ号も動かない。

 

「!? 麻子さんっ!?」

 

戸惑いながらみほがキューポラから車内を覗き込むと、そこには………

 

「「「「………」」」」

 

まるで人形の様に無表情の状態で固まっている沙織、華、優花里、麻子の姿が在った。

 

「!? 如何したの!? しっかりしてっ!!」

 

「「「「…………」」」」

 

慌ててそう呼び掛けるみほだが、やはり4人は固まったままである。

 

その間にも、所属不明の機甲部隊はドンドンと迫って来る。

 

「!!………」

 

恐怖に顔が歪むみほ。

 

するとそこで………

 

何者かがⅣ号の横を擦り抜け、所属不明の機甲部隊へと向かって行く。

 

「!? 弘樹くんっ!?」

 

それは着剣した四式自動小銃を手にしている弘樹だった。

 

一直線に所属不明の機甲部隊へと向かって行く弘樹。

 

「! 駄目! 弘樹くん、戻ってっ!!」

 

「…………」

 

みほが叫ぶが、弘樹は聞こえていないのか、真っ直ぐ突っ込んで行く。

 

その直後!!

 

所属不明の機甲部隊の戦車部隊の主砲が一斉に火を噴いた!!

 

砲弾が弘樹に向かって次々と降り注ぎ、着弾!

 

弘樹の姿は、爆炎の中に消えた………

 

「弘樹くうううううううぅぅぅぅぅぅぅぅーーーーーーーーーっんっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!! 弘樹くんっ!?」

 

「!? うわぁっ!?」

 

突然飛び起きたみほに、沙織が驚きの声を挙げる。

 

「………アレ?」

 

そこでみほは、自分が病室の様な場所のベッドに居て、あんこうチームの面々に囲まれている事に気付く。

 

「夢?………」

 

「西住殿ぉーっ!!」

 

「!? キャアッ!?」

 

みほがそう呟いた瞬間、優花里が抱き付いて来る。

 

「うううっ! 良かったぁ~っ!! 良かったであります~~っ!!」

 

「ちょっ! ゆかりん! 顔から出るモノ全部出てるよっ!?」

 

感激の余りか、顔から出るモノが全て垂れ流しになっている優花里を見て、沙織が慌ててティッシュを取り出して拭いてあげる。

 

「あ、あの………」

 

「此処は大洗学園艦の甲板都市の病院です。みほさん、試合が終わった瞬間に気絶されて、丸1日寝たままだったんですよ」

 

みほが戸惑っていると、華がそう告げて来る。

 

「そうだったんだ………!? 試合は!? 試合は如何なったの!?」

 

そこで慌てて、試合の結果について尋ねるみほ。

 

「安心しろ。私達の勝ちだ。最も、今回は本当にギリギリだったがな………」

 

今度は麻子が、ニヒルな笑みを浮かべてそう告げる。

 

「そっか、良かった………あ、弘樹くんは?」

 

「「「「…………」」」」

 

と、みほが一旦安堵した後、今度は弘樹の事を尋ねると、沙織達の表情が曇った。

 

「えっ? な、何?………」

 

「………みぽりん。落ち着いてよおく聞いてね」

 

みほが戸惑っていると、沙織が真剣な表情でそう言って来る。

 

「舩坂さんも、みほさんと同じ様に、試合終了の瞬間に倒れられたんです………」

 

「あの炎天下の砂丘を人1人を背負って延々と歩いていたんだ。当然の結果だ………」

 

「重度の脱水症状に加えて熱中症に日射病………身体も彼方此方が疲労骨折を起こしかけていたそうです。搬送が開始された時には意識不明の重体でした………」

 

更に華、麻子、優花里も、真剣な表情でそう告げて来る。

 

「看護兵さんが、ひょっとしたら助からないかもって………」

 

「!? そんなっ!?」

 

沙織のその言葉を聞いて、みほは先程の夢の光景を思い出し、顔を青褪めさせる。

 

「………でもね」

 

「えっ?」

 

しかし、沙織が何か言葉を続けようとしたので、首を傾げた瞬間………

 

病室のドアがノックされる。

 

「あ、どうぞ」

 

みほは反射的にそう返事をする。

 

すると、病室のドアが開き………

 

「みほくん。目が覚めたのか」

 

至って健康そうな弘樹が姿を現した。

 

「………えっ?」

 

みほは混乱し、固まってしまう。

 

「? 如何したんだ? 幽霊でも見ている様な顔をして?」

 

そんなみほの姿に、今度は弘樹が首を傾げる。

 

「ひ、弘樹くん? 重体だったんじゃ?………」

 

混乱したまま、弘樹にそう問い質すみほ。

 

「治った」

 

「!? えええっ!?」

 

事も無げにそう返す弘樹に、みほは思わず仰天の声を挙げる。

 

「そうなの、みぽりん。舩坂くんったら、最初に試合会場の救護室に運ばれた時点で、意識は無かったんだけど、もう症状が回復し始めてて………」

 

「病院に搬送された頃には、もう完治していたそうです」

 

「驚異的な回復力でした」

 

「医者が頭を抱えていたぞ。医学的に言わせてもらうと、悪夢だって」

 

そこで沙織、優花里、華、麻子もそう言って来る。

 

「ア、アハハハハ………」

 

その言葉に、みほは乾いた笑いを零すしかなかったのだった。

 

「元気そうだな。安心したよ」

 

そんな中、弘樹はみほが居るベッドの傍まで来たかと思うと、傍に在った椅子に腰かける。

 

「………さてと、じゃあ私達もう行くね」

 

すると、沙織がそう言って立ち上がり、他の3人を連れて引き上げようとする。

 

「では、西住殿」

 

「今はゆっくりと身体を休めて下さいね」

 

「健康維持も総隊長の務めだぞ」

 

優花里、華、麻子がそう言い残し、沙織達は病室から退室する。

 

「………気を遣わせてしまったかな?」

 

「あの………弘樹くん」

 

気を遣わせてしまったかと思った弘樹に、みほが声を掛ける。

 

「? 何だい?」

 

「えっと………」

 

みほは何かを言おうとして、先程の悪夢の内容を思い出してしまう………

 

「………ううん、何でも無いよ」

 

「? そうか?」

 

結局何も言えず、弘樹はそんなみほの姿に首を傾げるのだった。

 

「兎も角、無事に目を覚ました様で良かった………」

 

するとそこで、今度は弘樹の方が黙り込む。

 

「? 如何したの? 弘樹くん?」

 

そんな弘樹に向かって、みほがそう尋ねる。

 

「………実は、君と砂丘を越えようとしていた、あの時………小官は試合を棄権しようと考えた」

 

「えっ?」

 

不意にそう語り始めた弘樹に、みほは驚きの声を挙げる。

 

「小官は兎も角、まだ大洗機甲部隊は君無しで勝てる程の実力は無い………それでも、苦しむ君を見て、放って於けなかった」

 

吐露するかの様に弘樹は言葉を続ける。

 

「例えどんな理由が有ろうと、小官がやろうとした事は戦友達を裏切る行為だ………そんな自分が許せん」

 

そう言うと、右手の拳を血が出んばかりに握り締め、表情を険しくする弘樹。

 

「…………」

 

みほは、そんな弘樹の姿を少しの間見つめていたかと思うと………

 

その握り締められている右手に、自分の右手を重ねた。

 

「! みほくん」

 

「弘樹くんは皆を裏切ってなんかないよ。もし、逆の立場だったら私も………ううん、大洗の皆は、弘樹くんと同じ事を考えたと思うよ」

 

優しく諭すかの様な口調で、みほは微笑みを浮かべて弘樹にそう言う。

 

「そうか?………」

 

「うん、きっとそうだよ」

 

「…………」

 

みほに断定口調でそう言われ、弘樹の握っていた手の力が抜ける。

 

「………ありがとう、みほくん。そしてすまなかったな。病み上がりだと言うのに、愚痴を聞かせる様な事をして………」

 

「ううん、気にしないで。弘樹くんの気が楽になったんなら、私も安心出来るから」

 

「本当にありがとう。みほくん」

 

そう言われて、弘樹は微笑を浮かべたのだった。

 

「さて………小官もそろそろ御暇するよ。次の試合への準備もしなけばならないからな」

 

「次の試合………」

 

その言葉で、みほは次の試合の相手………

 

以前、ガンショップで出くわした『西部学園』の面々の事を思い出す。

 

強豪と名高い西部学園………

 

彼等は次の試合も勝って、大洗と戦う事になるだろう………

 

恐らく今度も苦戦は免れまい………

 

そう考えると、みほの脳裏に、先程の悪夢の光景が思い起こされる………

 

弘樹の姿が、爆炎の中に消える様が、フラッシュバックの様に再生される。

 

「!!」

 

みほはビクリと身体を震わせる。

 

「では、大事にな………」

 

しかし、その様に気付かなかった弘樹は、椅子から立ち上がると、病室を後にしようとする。

 

「!! 待ってっ!!」

 

その瞬間、みほは思わずそう叫び、去ろうとしていた弘樹の手を握って引き留めていた。

 

「? みほくん?」

 

みほの思わぬ行動に、弘樹は僅かに戸惑いを見せながら振り返る。

 

「あ!………え、えっと………」

 

引き留めてしまったみほは、何と言って良い分からず困惑する。

 

「………何かあったのか?」

 

しかし、そんなみほの様子を見て、弘樹はそう察し、再び椅子に座り込む。

 

「良かったら話してくれ。小官だけ愚痴を聞いてもらって、君の話を聞かないと言うのも悪いからな」

 

「………あのね」

 

弘樹にそう言われ、みほは先程の悪夢の内容を語り出すのだった………

 

 

 

 

 

「そうか………そんな夢を………」

 

「それを思い出したら、凄く怖くなっちゃって………ゴメンね。こんな事で引き留めたりしちゃって………」

 

申し訳無さそうな顔をして弘樹に向かって謝罪するみほ。

 

「…………」

 

するとそこで、弘樹はみほの頭の上に手を置いたかと思うと、優しく撫で始めた。

 

「ふえっ!?」

 

「みほくん。もしコレからも何か不安な事があったなら、遠慮なく小官に言ってくれ。小官の前では大洗機甲部隊の総隊長としてではなく、只の西住 みほで居ても構わない」

 

赤面するみほの頭を優しく撫で続けながら、弘樹はそう言う。

 

「弘樹くん………」

 

ゴツゴツとした無骨な手の感触が、みほの中から不安や恐れと言った感情を消して行く。

 

「それに………」

 

と、そこで撫でるのを止めたかと思うと、一瞬言葉を貯める弘樹。

 

「??」

 

みほが何かと首を傾げると………

 

「もしその悪夢と同じ様な事が起きたとしても、小官がそれぐらいでやられはせんさ」

 

弘樹は至って真面目な顔でそう言い放った。

 

「そ、それは………確かに………」

 

思わず顔が引きつるみほ。

 

普通に考えれば先ず助からない状況である。

 

しかし、そこは英霊の子孫・舩坂 弘樹。

 

コレまでの戦績もあり、全く無事な姿で居ると言う悪夢の続きが容易に想像出来てしまった。

 

「「…………」」

 

お互いに沈黙する弘樹とみほ。

 

「………フフ………アハハハ!」

 

「ハハハハ!」

 

やがて、どちらからともなく笑い出す。

 

「ありがとう、弘樹くん。お蔭で楽になった気がするよ」

 

「何、お互い様だ」

 

「あ、あのね………それで………もう1つ頼みたい事がるんだけど………良いかな?」

 

「小官に出来る事なら」

 

「もう少し眠りたいんだけど………眠るまでの間、そ、その………」

 

モジモジとしながら、言葉に詰まるみほ。

 

「………て、手を………握ってて貰っても良いかな?」

 

「………了解した」

 

弘樹はそう返すと、みほの右手を、自分の両手で包み込む様にして握る。

 

「ふあぁ………」

 

みほは更に顔を赤くしながら、ベッドに横になる。

 

「…………」

 

そして弘樹は約束通り、みほが眠るまで、手を握り続けるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

余談となるが………

 

その後程無くして、みほは眠りについたのだが………

 

その際に弘樹の手をしっかりと握り締めてしまい………

 

解く事が出来ず、かと言ってみほを起こすなんて事も出来なかった弘樹は………

 

検診の看護師が訪れるまで、その場から動く事が出来なかったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗女子学園・戦車格納庫の脇………

 

「「「「「「「「「「ワン、ツー! ワン、ツー!」」」」」」」」」」

 

格納庫の脇にて、全員がジャージ姿でダンスレッスンに励んでいるサンショウウオさんチーム。

 

クレオパトラ&スフィンクス機甲部隊との試合で、大洗機甲部隊の殆どの戦車が撃破され、深い損傷を負った。

 

その為、現在自動車部の面々と整備部の一同が、オーバーホールも兼ねて徹底的に整備を行っている。

 

なので、歩兵部隊は訓練を続けているが、戦車チームはやる事がない状態なのである。

 

そこでサンショウウオさんチームは、もう1つの本業であるスクールアイドル活動に精を出しているのだ。

 

ミュージックに合わせてステップを続けるサンショウウオさんチーム。

 

「いい加減にして下さいっ!!」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

そこで、そう言う叫び声が聞こえて来て、一同は思わず動きを止める。

 

「何だろう?………」

 

「行ってみよう!」

 

伊代がそう呟くと、聖子がいの1番に駆け出す!

 

「あ、聖子! 全く………好奇心が旺盛なのにも程がありますよ」

 

そんな聖子の姿を見てそう言うと、後に続く優。

 

他の面子も、同じ様に後に続くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、校舎傍まで来たサンショウウオさんチームが見たのは………

 

「話を………聞いていただけませんか?」

 

「話す事なんてありません!」

 

346プロのプロデューサーと、彼に向かって怒鳴っている近藤 里歌の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

試合後に倒れた弘樹とみほだったが………
弘樹は当然として(笑)、みほも大事には至らなかった。
一安心したところで、次なる相手………西部学園への懸念が過る。

一方………
サンショウウオさんチームは、346プロのプロデューサーが、近藤 里歌に声を掛けている光景を目撃していた。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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