ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第114話『海軍の支援を要請します!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第114話『海軍の支援を要請します!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦車道・歩兵道全国大会の第6回戦の試合会場………

 

海に面した広大な海岸砂丘………

 

アヒルさんチームとペンギンさん分隊、サンショウウオさんチームとタコさん分隊の足止めを振り切り、移動を続けている大洗機甲部隊を追撃しているクレオパトラ&スフィンクス機甲部隊。

 

「! 前方に敵を発見!」

 

とそこで、前方を行っていたスフィンクス歩兵達の中の1人が、そう報告を挙げる。

 

「!」

 

ネフェティが、ハッチを開けてキューポラから車外へと姿を晒すと、前方を行っている大洗機甲部隊の姿を確認する。

 

「居たか………漸く捉えたぞ」

 

「総隊長。敵フラッグ車、有効射程内です」

 

そうネフェティが呟くと、ティーガーⅠの砲手がそう報告して来た。

 

「行進間射撃でやれるか?」

 

「やってみます………」

 

砲手はそう返すと、大洗機甲部隊のフラッグ車であるルノーB1bisに狙いを定める。

 

「………!!」

 

そして、ルノーB1bisが砂丘の頂上部に達した瞬間に発砲!!

 

88ミリ砲弾は、ルノーB1bisの車体を僅かにそれ、右履帯の後部に命中!

 

「!? キャアッ!?」

 

「り、履帯損傷っ!?」

 

「追い付かれたの!?」

 

途端に、みどり子、モヨ子、希美の悲鳴が挙がる。

 

直後、衝撃で砂丘の砂が崩れ、ルノーB1bisは砂丘の向こう側に落ちて行く。

 

「!! カモさんチーム!」

 

「全員、カバーッ!!」

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

すぐさま、みほのあんこうチームのⅣ号とレオポンさんチームのポルシェティーガーが砂丘を下り降りて、右履帯が千切れているルノーB1bisの傍で停止。

 

歩兵部隊も、周囲を囲む様に展開し、防護陣形を取る。

 

「工兵! すぐに修理だ!!」

 

「分かってますっ!!」

 

そして、工兵部隊が駆け寄り、履帯の修理に取り掛かる。

 

だが………

 

「そこまでじゃ………」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

そう言う声が降って来て、大洗機甲部隊の面々が見上げると、そこには………

 

砂丘の上に陣取り、完全にコチラを包囲して、砲門を向けているクレオパトラ戦車部隊と、攻撃準備の整っている対戦兵部隊と砲兵部隊を中心に展開しているスフィンクス歩兵部隊の姿が在った。

 

コレだけの数から一斉攻撃を受ければ、あんこうチームやレオポンさんチーム、そして大洗歩兵部隊の防御陣形など何の意味も為さない。

 

全員撃破・戦死判定にさせられ、それで終わりである。

 

「まさか自分から袋小路に入り込んでくれるとは思わなかったぞ。よりによってこんな場所へと逃げるとはな」

 

呆れた様な様子で自分達の展開している場所の反対側を見ながらそう言うネフェティ。

 

………そこは海であり、大洗機甲部隊の面々は、寄せては返す波打ち際に居る状態だ。

 

正に袋小路。

 

逃げ場は無い………

 

「チイッ!………」

 

それでも抵抗しようと、四式自動小銃を構える弘樹。

 

だが、狙いをつけようとした瞬間………

 

「!? むっ!?………」

 

突然視界がボヤけ、身体から力が抜ける様な感覚に襲われ、片膝を着くと、四式自動小銃を杖代わりにする。

 

「!? 弘樹っ!?」

 

「分隊長っ!?」

 

あの弘樹が片膝を着くと言う事態に、大洗歩兵隊員達の間に動揺が走る。

 

「限界の様じゃな。碌に水分補給もせずに炎天下の砂丘を越えて、平然として居られる奴など居らんのう」

 

「グッ!………」

 

そう言い放つネフェティだったが、弘樹は気力で体力をカバーで、立ち上がる。

 

「ほう? 見上げた精神力だ。だが、それももう無意味だ………攻撃用意!」

 

ネフェティがそう号令を掛けると、クレオパトラ&スフィンクス機甲部隊の面々は、一斉に攻撃態勢に入る。

 

「や、やられるっ!?」

 

「もう駄目なのか?………」

 

「チキショーッ!!」

 

大洗歩兵部隊から絶望の声が挙がる。

 

「「…………」」

 

しかしそんな中で、みほと弘樹だけは、冷静な様子を崩さなかった。

 

(しかし解せぬ………何故奴等は態々こんな場所へ? 幾ら疲労していたとはいえ、あの西住流が指揮ミスとは考え難い………)

 

一方でネフェティも、未だに疑惑を感じ、考える様子を見せている。

 

(だが、それならば何故尚の事、逃げ場の無い海辺等に………!? 海辺っ!?)

 

とそこで、現在地が海辺である事を再確認したネフェティが、ある可能性に思い至る。

 

そしてすぐさま、水平線を確認する。

 

するとそこには………

 

コチラに側面を晒す様にして洋上に停泊している、複数の船影が在った………

 

「!? イカンッ! 全員退避っ! 全力でこの場から離れろぉっ!?」

 

「!? 総隊長っ!?」

 

「如何したんですか、一体!?」

 

勝利を目前として居る筈なのに、突然撤退命令を下したネフェティに、クレオパトラ&スフィンクス機甲部隊は困惑する。

 

「今更気づいても遅い」

 

「こちらあんこうチーム、西住! 砲撃支援、願います!!」

 

その姿を見た弘樹がそう言い放つと、みほが通信回線に向かってそう言う。

 

『了解! 砲撃開始ぃっ!!』

 

すると、そう言う返信が返って来て、洋上に停泊していた船影………

 

旧帝国海軍の重巡洋艦である『古鷹型』の1番艦『古鷹』と同2番艦『加古』

 

同じく重巡洋艦の『青葉型』の1番艦『青葉』と同2番艦の『衣笠』

 

旧日本海軍・第一艦隊・第六戦隊の艦隊が、主砲の50口径20.3cm連装砲の艦砲射撃を開始した!!

 

20.3cmの砲弾が、大洗機甲部隊の頭上を飛び越え、砂丘の稜線上に陣取っていたクレオパトラ&スフィンクス機甲部隊の中へ次々に叩き込まれて行く!!

 

「「「「「「「「「「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」」」」」」」」」」

 

直撃や爆発を諸に喰らったスフィンクス歩兵達が木の葉の様に宙に舞い、砂の上に倒れると戦死と判定されて行く。

 

「た、退避っ! 退避ーっ!!」

 

「ちょっ!? こっち来ないで!?」

 

慌てて逃げようとしたバレンタイン歩兵戦車Ⅱが、Ⅲ号戦車N型に衝突!

 

直後に、両者共に艦砲射撃の直撃を喰らい、何トンもの車体が一瞬宙に舞ったかと思うと、逆さまになって砂の上に叩き付けられ、底部から白旗を上げる!

 

「このぉっ!!」

 

と、1両のマチルダⅡが、水平線に見えている第六戦隊に向かって主砲を発砲する。

 

しかし、当然届く筈も無くマチルダⅡから放たれた砲弾は、遥か手前の海に着弾して海中に沈む。

 

そしてその瞬間に、青葉が撃った砲弾が、マチルダⅡの正面に命中!!

 

巨大な砲弾が一番厚い防盾部分に深々と突き刺さっており、マチルダⅡは砲塔の上部から白旗を上げる。

 

如何に分厚い装甲で知られているマチルダⅡと言えど、艦砲を防ぐ事は出来なかった。

 

「ハハハ! 敵は大慌てだな!」

 

「艦長、笑っている場合じゃありませんよ。我々も攻撃に加わりましょう!!」

 

とそこで、第六戦隊に追従していた駆逐艦の艦隊の中に居た雪風の艦橋で、護がそう声を挙げ、副長がそう促す。

 

「分かっている。よおし! 全艦! 撃ちー方始めーっ!!」

 

護がそう言い放つと、随伴して居た駆逐隊………

 

陽炎型8番艦『雪風』、同7番艦『初風』、同9番艦『天津風』、同10番艦『時津風』で構成された『第十六駆逐隊』も艦砲射撃を開始!

 

50口径三年式12.7cm連装砲が次々と火を噴く。

 

第六戦隊の20.3cm連装砲と比べれば、かなり小型の艦砲であるが、しかし戦車にとってみれば12.7cmと言うのは、あのヤークトティーガーやマウスの主砲と粗同じである。

 

そんな物で撃たれては重戦車と言えど一溜りも無い。

 

「うわぁ、凄いね、コレ………」

 

「あ、圧倒的じゃないの………」

 

「正に敵がゴミの様だな………」

 

その光景を見ていた大洗機甲部隊の中で、ナカジマとみどり子がそう呟き、俊が某大佐の様な台詞を口にする。

 

「コレが、艦砲射撃………」

 

「新代先輩、感謝します」

 

優花里もそう呟く中、弘樹は洋上の第六戦隊と第十六駆逐隊に向かって頭を下げる。

 

そう………

 

何を隠そう、あの艦隊は弘樹の中学時代の先輩である新代 護が所属している『呉造船工業学校』の『軍艦道』の艦隊なのである。

 

実は護は、弘樹とみほに出会った後、大洗の支援艦隊として名乗りを挙げたのである。

 

彼もまた、大洗女子学園の事情を知っており、尚且つ戦友達が多数居て奮戦していると言う話を聞いて、放って於けなかったのである。

 

コレによって大洗機甲部隊は、航空支援のみならず、海上支援をも手に入れたのだ。

 

「総隊長! 逃げて下さいっ!!」

 

「せめてフラッグ車だけでも!!」

 

と、砲撃に曝されているクレオパトラ&スフィンクス機甲部隊の中で、戦車部隊や歩兵部隊の隊員達が、フラッグ車であるティーガーⅠに乗るネフェティにそう呼び掛ける。

 

「クウッ!………止むを得ん! 撤退じゃっ!!」

 

「りょ、了解っ!!」

 

それを受けて、ネフェティはそう命じ、ティーガーⅠは離脱して行く。

 

「!!………」

 

その様子を見たキングコブラも、ティーガーⅠに付き従って離脱する。

 

「あ! フラッグ車が逃げるよ!!」

 

「ツチヤ、追える!?」

 

「いや~、無理だね~。コレ以上はエンジンが持たないよ」

 

その様子を見たレオポンさんチームのポルシェティーガーの中で、ホシノ、ナカジマ、ツチヤがそう言い合う。

 

カモさんチームのルノーB1bisも、履帯が損傷している為、追撃出来ない。

 

「私達が追います! 麻子さん!」

 

「任せろ………」

 

そこで、みほがそう声を挙げ、Ⅳ号がティーガーⅠを追う。

 

「!!」

 

すると、それを見た弘樹がⅣ号の車体の上に飛び乗り、タンクデサントする。

 

「弘樹ぃっ! 持ってけぇっ!!」

 

とそこで、地市が自分が持っていたパンツァーファウストを投げ渡す。

 

「感謝する!………」

 

それを受け取ると、ベルトで背中に背負う弘樹。

 

『さあ、まさかの海上援護で大逆転の大洗機甲部隊! 決着は一騎打ちに縺れ込んだぁっ!!』

 

『Ⅳ号VSティーガー、コレは面白い対決ですよ』

 

観客席とTV放送には、ヒートマン佐々木とDJ田中のそう言う実況が流れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

艦砲射撃が行われている海岸から少し離れた地点………

 

背後から爆発音が鳴り響いて来る中、それから逃げる様に移動しているクレオパトラ&スフィンクス機甲部隊のフラッグ車・ティーガーⅠと、それに追従しているキングコブラ。

 

「! 総隊長! 追っ手だ!!」

 

「!?」

 

とそこで、背後を警戒していたキングコブラがそう報告を挙げ、ティーガーⅠのキューポラから姿を晒していたネフェティが振り返る。

 

そこには、砂塵を撒き上げてコチラを追撃して来るあんこうチームのⅣ号の姿が在った。

 

そのキューポラからは、みほが姿を晒している。

 

「Ⅳ号! 西住か!!」

 

「ネフェティ! 逃げろっ!! 奴は俺が始末するっ!!」

 

ネフェティがそう声を挙げた瞬間、キングコブラがⅣ号に向かって蛇腹剣の刃を伸ばした!

 

その先端には、梱包爆薬が括り付けられている。

 

「!?」

 

コチラに向かって伸びて来る蛇腹剣の刃と、その先端に括り付けられている梱包爆薬を見て驚くみほ。

 

しかし………

 

銀色の閃光が煌めいたかと思うと、蛇腹剣の刃が真上へと弾かれる。

 

括り付けられていた梱包爆薬は、そのまま爆発し、花火となる。

 

「!!」

 

キングコブラが驚きながら、良くⅣ号の姿を見やると………

 

「…………」

 

そこには、英霊を抜き放った体勢のままでⅣ号の上に乗って居た弘樹の姿が在った。

 

「舩坂………弘樹!」

 

途端に、キングコブラの顔が険しくなる。

 

「西住総隊長! 奴は小官が引き受けますっ!!」

 

「お願いっ!!」

 

弘樹はみほにそう言うと、Ⅳ号の上から飛び降り、キングコブラと対峙。

 

Ⅳ号はそのまま、ティーガーⅠを追う。

 

「Ⅳ号! 向かって来ますっ!!」

 

「コレ以上の敵に背を向けての逃走はクレオパトラ戦車部隊の名折れ………迎え撃つぞ!」

 

そこでティーガーⅠも、コレ以上の逃走はプライドが許さない為、反転してⅣ号を迎え撃ちに掛かるのだった。

 

 

 

 

 

弘樹VSキングコブラ………

 

「!!………」

 

「!」

 

生き物の様に撓りながら伸びて来た蛇腹剣の刃を、弘樹は英霊を振って弾く。

 

「ぬんっ!」

 

しかし、キングコブラが蛇腹剣の柄を引くと、刃が再び弘樹の方へと向かう。

 

「! チイッ!」

 

即座に側転すると、蛇腹剣は先程まで弘樹が居た場所に突き刺さる。

 

(やはりあの剣が厄介だ。アレを如何にかしなくては………)

 

蛇腹剣を無力化しなければ、キングコブラを倒すのは難しいと感じる弘樹。

 

(………やってみるか)

 

そして、ある思案が脳裏に浮かぶ。

 

それを実行に移そうと、移動を始める。

 

「!? グッ!?………」

 

だがそこで、再び目眩がし、頭を押さえて片膝を着く。

 

「隙有りだ! 舩坂 弘樹!!」

 

その隙を見逃さず、キングコブラは蛇腹剣の刃を伸ばす!

 

「!?」

 

弘樹に向かって一直線に迫り来る蛇腹剣の刃!

 

「終わりだ!」

 

勝利を確信したキングコブラがそう叫ぶ。

 

………しかし!!

 

「むんっ!!」

 

弘樹は、迫って来た蛇腹剣の刃を、英霊で防いだかと思うと、敢えて英霊に、蛇腹剣の刃を巻き付かせる!

 

「!? 何っ!?」

 

「!!」

 

キングコブラが驚いた瞬間、弘樹は蛇腹剣の刃が巻き付いたままの英霊を、地面に深々と突き刺した!

 

そして、四式自動小銃に着剣し、キングコブラに突っ込んだ!

 

「!? しまった!?」

 

慌てて蛇腹剣の刃を戻そうとするキングコブラだったが、刃は英霊ごと地面に深々と突き刺さっており、戻らない!

 

「ハアアッ!!」

 

動きの停まっていたキングコブラに向かって、弘樹は四式自動小銃に装着していた銃剣で袈裟懸けを繰り出す!

 

「! チイッ!」

 

止むを得ないと、蛇腹剣を手放し、バックステップをして回避するキングコブラ。

 

(一気に決めるっ!!)

 

自分の体力が限界を超えている事を察していた弘樹は勝負を急ぐ。

 

袈裟懸けから素早く着剣した四式自動小銃を持ち上げ、突きを繰り出す弘樹。

 

しかし………

 

「ぬううんっ!?」

 

「!? ぐあっ!?」

 

その瞬間に、キングコブラの丸太の様な太い腕が弘樹の背に回され、ベアハッグを掛けられる!

 

「勝負を焦ったなな、舩坂 弘樹!」

 

そう言い放ち、キングコブラは弘樹の身体を締め上げる!

 

「ッ!!………」

 

弘樹は苦痛に顔を歪ませながらも、キングコブラを引き剥がそうと、頭を殴りつけたり、首に手刀を打ち込む。

 

「むううんっ!!」

 

だが、キングコブラはビクともせず、更に弘樹の身体を締め上げる。

 

「ガッ!?………」

 

元より体力で限界を超えていた弘樹は、徐々に意識が遠くなり始める。

 

(意識が………マ………ズ………イ………)

 

徐々に思考も回らなくなる弘樹。

 

最早ココまでか………

 

………しかし、その瞬間!

 

弘樹の手が、キングコブラが装備していたある物に掛かる。

 

「………!!」

 

飛びかけていた意識を無理矢理引き戻す弘樹。

 

その手に掛かっていたのは、キングコブラが胸元に装備していた手榴弾の安全ピンだった。

 

「!!」

 

弘樹は最後の力を振り絞り、その安全ピンを抜き放つ!

 

「!? 手榴弾のピンが!?」

 

途端にキングコブラは慌てふためき、弘樹を解放してしまう。

 

「!!」

 

その瞬間!!

 

弘樹は先程まで意識を失い掛けていたとは思えない様な高打点の空中後ろ回し蹴りを繰り出す!

 

「!? ガッ!?」

 

キングコブラは顎を蹴り飛ばされ、そのまま砂丘の上から転がり落ちて行く!

 

やがて下まで到達して止まったかと思うと………

 

ピンが抜かれていた手榴弾が他の手榴弾や携帯していた弾薬を誘爆させて爆発!!

 

「!!………」

 

派手な爆発が上がった中で、キングコブラは戦死判定を受けたのだった。

 

 

 

 

 

Ⅳ号VSティーガーⅠ………

 

「撃てっ!!」

 

「ハイッ!!」

 

Ⅳ号の主砲が火を噴くが、やはり砲弾は、ティーガーⅠの正面装甲で弾かれる。

 

反撃とばかりに、ティーガーⅠの主砲が火を噴く!

 

「回避っ!!」

 

「くうっ!!」

 

間一髪、麻子の抜群の操縦で、砲弾を回避するⅣ号。

 

「西住殿! コレが最後の砲弾………成型炸薬弾です!!」

 

と、そこで新たな砲弾を装填した優花里が、その成型炸薬弾が最後の砲弾である事を告げる。

 

「外しちゃったら終わり………華!」

 

外したら終わりと言うプレッシャーを感じているだろう華の事を、沙織が見やる。

 

「大丈夫です、沙織さん。必ず当てます」

 

しかし華は、照準器を覗き込んだまま、凛とした表情でそう言い放つ。

 

「しかし、成型炸薬弾でも正面は厳しい。後ろか、せめて横に回りたいところだが、そんな隙は見せてくれんぞ」

 

そんな中で、麻子がそう呟く。

 

先程からⅣ号は、ティーガーⅠの後面、或いは側面を狙おうとしているが、敵もそれを分かっているのか、常に正面がⅣ号の方を向く様に上手く立ち振る舞っている。

 

「…………」

 

何か手は無いかと、注意深くティーガーⅠの姿を観察するみほ。

 

「! アレは!?」

 

するとそこで、ティーガーⅠの車体に、『あるモノ』を発見する。

 

「華さん! 『アレ』を狙えますか!?」

 

すぐさま華にそう問い質すみほ。

 

「………やってみます」

 

華はそう返し、ジッと照準器を覗き込む。

 

「次弾、装填完了!」

 

「良く狙え! 今度は外すなっ!!」

 

「ハイ!」

 

一方、ティーガーⅠの方でも次弾装填が完了。

 

ネフェティの指示で、砲手が照準器越しにⅣ号の方をジッと見据える。

 

だが、狙われているのは分かっている筈なのに、Ⅳ号は動かない。

 

「? 諦めたか? それも砲弾が尽きたか? 何れにせよ、動かぬと言うならば遠慮無く撃たせてもらうぞっ!!」

 

そう言って、砲撃命令を下そうとするネフェティ。

 

その直後!!

 

ティーガーⅠの傍に何かが落ちて、派手に爆発した!!

 

「!?」

 

ネフェティが驚きながら、その何かが飛んで来た方向を確認すると、そこには………

 

「…………」

 

撃ち終えたパンツァーファウストを構えている弘樹の姿が在った。

 

「舩坂 弘樹………流石のお前も限界じゃった様じゃな。この千載一遇のチャンスを逃してしまうとはのう」

 

そんな弘樹の姿を見て、ネフェティは嘲笑の様な笑みを浮かべる。

 

しかしこの時、弘樹に気を取られて、命令を下すのが遅れていた事に気付かなかった………

 

「! 今ですっ!!」

 

「! 発射っ!!」

 

そしてその隙を衝く様に、Ⅳ号が最後の砲弾………成型炸薬弾を放った!

 

「! 敵戦車発砲!」

 

「慌てるでない! どうせコチラの装甲は貫けんのじゃ!」

 

装填手が報告を挙げるが、ネフェティはそう返す。

 

だが、しかし!!

 

成型炸薬弾が、ティーガーⅠの砲塔正面の装甲に命中した瞬間………

 

それまでとは違う、巨大な爆発が起こった!?

 

「!? ぬあああっ!?」

 

キューポラから姿を晒していた為、その爆風の熱風を直に感じるネフェティ。

 

そしてその直後………

 

ティーガーⅠは白旗を上げた!!

 

「!? 馬鹿な!? Ⅳ号の主砲ではティーガーの装甲は貫けぬ筈じゃ! それが何故!?………!?」

 

信じられないと言う声を挙げながら、ネフェティは被弾箇所をチェックし、ある事に気付いた。

 

Ⅳ号が成型炸薬弾を命中させた場所、それは………

 

カバさんチームのⅢ突が、成型炸薬弾を命中させ、僅かに装甲を穿っていた場所だった!

 

「ま、まさか彼奴等………寸分違わず同じ場所に命中させて、このティーガーⅠの装甲を!?………」

 

そう言い放ったかと思うと、ネフェティは脱力したかの様に車内へ引っ込み、車長の椅子に深く凭れ掛かった。

 

「総隊長………」

 

「何と言う奴等じゃ………全く持って………信じられん」

 

声を掛けて来た乗員に、ネフェティは悟ったかの様な表情でそう返すのだった。

 

『試合終了! 大洗機甲部隊の勝利っ!!』

 

「やったーっ!!」

 

「やりました!!」

 

「やれやれ………今回は本当に薄氷の勝利だったな」

 

主審のレミのアナウンスが流れる中、Ⅳ号の中で沙織と優花里が歓声を挙げ、麻子が漸く一息つけると言う感じに脱力した。

 

「みほさん! やりました!!………!? みほさん!?」

 

「「「!?」」」

 

とそこで、みほに声を掛けた華が悲鳴の様な声を挙げ、他の3人も慌ててみほの方を見やる。

 

「…………」

 

そこには、グッタリとして、車長用の席に凭れ掛かって気を失っているみほの姿が在った。

 

「!? みぽりん!」

 

「しっかりしろっ!!」

 

「舩坂殿! 西住殿が!!」

 

沙織と麻子が慌てて傍により、優花里がハッチを開けて外に出ると、弘樹に救援を求める。

 

「…………」

 

だが、そこで優花里が見たのは、砂の上に倒れ伏す弘樹の姿だった………

 

「!? 舩坂殿ぉ!?」

 

優花里の悲鳴が、砂丘に木霊する………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

絶体絶命だった大洗機甲部隊。
それを救ったのは何と!
新代 護の艦隊!!
遂に大洗は、海上支援をも手に入れたのだった!
予想されていた方もいらっしゃいましたが、逆転の手立て………
それは艦隊による艦砲射撃でした。

逃げ果せたかに見えた敵フラッグ車のティーガーⅠとキングコブラも、あんこうチームと弘樹の奮戦で撃破!
しかし試合終了と同時にみほと弘樹が倒れてしまう。
果たして無事なのか?

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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