ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース 作:宇宙刑事ブルーノア
『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』
第110話『熱砂の危機です!』
戦車道・歩兵道全国大会の第6回戦の試合会場………
海に面した広大な海岸砂丘………
その上空にて………
1機のスツーカが、タイフーンの弾丸を浴びて炎上。
パイロットが射出座席で脱出すると、機体は一気に失速して墜落。
砂丘に叩き付けられて、爆発した。
「7番機がやられました!」
「ええい! 根性の無い奴め!!」
「根性で如何にかなる問題じゃないですよ………」
報告にそう怒鳴るハンネスに、エグモンドはそう返す。
「空の魔王め! 俺が叩き落してやる!!」
とそこで、1機のワイルドキャットが、ハンネスのスツーカを落とそうと後ろに付く。
「エグモンド! 追っ払えっ!!」
「もう弾がありませんよ!」
エグモンドに追っ払えと言うハンネスだったが、既に後部機銃座の弾丸は尽きていた。
「コレで俺の名も上がるってもんだ!!」
ワイドルキャットのパイロットはそう言いながら、照準器の中心にハンネスのスツーカを捉えようとする。
「ならばコレだぁっ!!」
すると何を思ったか、ハンネスはスツーカを急降下させ始めた!
「うわあっ!? ちょっ!? 隊長! 如何する気ですか!?」
「やかましい! 黙ってろっ!!」
エグモンドにそう返し、急降下を続けるハンネス。
「逃がすか!」
ワイルドキャットはそれを追う様に急降下する。
スツーカの『ジェリコのラッパ』と称される、独特の風切り音が辺りに鳴り響く。
「見てろよ………立て直す為に機首上げをしたところを撃ち抜いてやる」
ワイルドキャットのパイロットは、ハンネスが水平飛行に戻る瞬間を狙い撃とうとする。
しかし、間も無く限界高度に達しようとしているにも関わらず、ハンネスの機体は水平飛行に戻る気配を見せなかった。
「!? 何故引き起こさない!? このままでは地面に激突するぞ!? 気でも狂ったのか!?」
引き起こしをする様子の見えないハンネス機を見て、ワイルドキャットのパイロットはハンネスの正気を疑う。
その間にも、地面はドンドン接近して来る。
「! う、うわぁっ!? 駄目だぁっ!!」
とうとう耐えられなくなり、引き起こしを行うワイルドキャット。
だが、時既に遅く、機体は機首を上げながらも地面に向かう。
勿論、ハンネスのスツーカも。
「うわぁっ!? ぶつかるっ!!」
「バカモン! 何の為の頑丈な固定脚だ!!」
エグモンドの悲鳴が響く中、ハンネスがそう言い放った瞬間、スツーカの車輪が砂丘に接触。
「おりゃああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」
その瞬間にハンネスはエンジンをフルパワーにする。
すると何と!!
スツーカは激しく砂を撒き上げながら、砂丘の上を『走行』して行った!
「そら、飛べぇっ!!」
そしてそのまま、砂丘の頭頂部から再び離陸する。
「ば、馬鹿なああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」
墜落すると判定されたワイルドキャットから射出座席で飛び出したパイロットが、その様を見て驚愕する。
ワイルドキャットはそのまま砂丘に叩き付けられ、グシャリと潰れた。
「ハハハハハッ! 見たか!! スツーカの頑丈さを舐めるなよ!!」
「航空機をこんな使い方するのは隊長ぐらいですよ………」
勝ち誇る様なハンネスに、エグモンドがそうツッコミを入れるのだった。
とそこで、3機のワイルドキャットの編隊が、地面の方に向かって高度を落とし始める。
「むっ!? また来たか!?」
「いえ、コチラには向かって来ていません」
それを見たハンネスが警戒するが、エグモンドは3機のワイルドキャットの編隊は、自分達に向かって降下して来ているのではない事を察する。
「では、何を………! イカン!」
「! 敵の狙いは弘樹さんと西住さんです!」
そこでハッと気づくハンネスとエグモンド。
3機のワイルドキャットの編隊の狙いは、弘樹とみほだった。
弘樹とみほが居る地点………
「!!」
自分の方に向かって来る3機のワイルドキャットの編隊に気付いた弘樹は、すぐに発煙筒を放ると、みほを背負子式の椅子から降ろし、抱き抱えて走り出す。
直後に、3機のワイルドキャットの編隊が機銃掃射をお見舞いして来て、背負子式の椅子が粉々に砕け散った!
「舩坂 弘樹を倒せるなんて! またとない機会だ!!」
「流石の奴も、航空機に狙われては一溜りもあるまい!」
「逃げ回ってヒイヒイ言ってるところを狙い撃ちしてやるぜ!」
少々下衆な台詞を吐きながら、3機のワイルドキャットの編隊は旋回し、弘樹とみほを追う。
「良いか! 奴が戦車乗りから離れたところを狙うんだ!」
「「了解っ!!」」
そう言い合うと、みほを抱き抱えて走る弘樹の後にピッタリと付ける3機のワイルドキャットの編隊。
戦車から降りている、或いは身を出している戦車乗りの女性を攻撃する事は、ルールによって固く禁じられている。
また、そのルールを悪用されない為に、戦車乗りの女性を盾にする様な行為も禁止とされている。
つまり、現状では3機のワイルドキャットの編隊は、みほを巻き込む恐れが有るので攻撃出来ないが………
弘樹も、いつまでもみほを抱えたまま行動する事は出来ない。
何れ弘樹がみほから離れる時が来る………
3機のワイルドキャットの編隊は、その時を待ち続ける。
「………!」
やがて弘樹は、行く手に大きな岩が有るのを確認する。
その岩の陰に走り込むと、抱えていたみほを降ろし、岩陰に隠れる様にする。
「ひ、弘樹くん………」
「すぐに戻ります………」
何かを言おうとしたみほにそう返し、弘樹は四式自動小銃を構えると、岩陰から飛び出した!
「! おっ! 如何やら離れたみたいだな!」
「絶好のチャンスだ!」
「コレで俺達も英雄だな!」
それを確認した3機のワイルドキャットの編隊が、弘樹へと向かう。
「…………」
背後の空から爆音が聞こえて来るのを感じながらも、砂丘を走り続ける弘樹。
「そら、喰らえっ!!」
と、そこで遂に、3機のワイルドキャットの編隊は弘樹に機銃掃射を見舞う!
「!!」
しかし、弘樹はその場に伏せ、如何にかやり過ごす。
「チッ! 猪口才な!!」
「反転してもう1度だ!」
3機のワイルドキャットの編隊は、もう1度機銃掃射を見舞う為、弘樹の頭上を通り抜けて行く。
その瞬間!!
「!………」
弘樹が四式自動小銃を構え、3機の内、右に位置取っていたワイルドキャットに向かって発砲した!!
弾丸は、ワイルドキャットの下部に命中。
航空燃料が漏れ始める。
「!? 燃料計が低下!?」
「オイ! 機体の下から燃料が漏れてるぞ!?」
燃料計の針が低下しているのを見たパイロットが驚いていると、別のワイルドキャットのパイロットが、下部から燃料が漏れている事を指摘する。
「まさか、撃たれたのか!?」
「んな馬鹿な!? 低空飛行してたとは言え、ライフル銃の弾を航空機に当てるなんて!?」
パイロット達が有り得ないと言う様な声を響かせる中、燃料の漏れていたワイルドキャットの機体がガクリと揺れる。
「!? うおっ!? ヤバいっ!?」
立て直しを図るパイロットだったが、既に燃料計の針は0を示しており、プロペラの回転も止まる。
「クソォッ! 駄目だぁっ!!」
そうパイロットが叫んだ瞬間に射出座席が起動。
パイロットが座席ごと機外に放り出されると、ワイルドキャットは失速し、地面に叩き付けられてバラバラになった。
「クソッ! あの野郎!!」
その光景に激昂に駆られたパイロットが、機体をインメルマンターンで反転させ、再度弘樹の元へと向かう。
「ま、待てっ!!………」
「喰らえっ!!」
残りの1機のワイルドキャットのパイロットが止めるが、その瞬間には反転したワイルドキャットは、弘樹に向かって再び機銃掃射を仕掛けた!
「!!………」
弘樹は横っ飛びをして、ワイルドキャットの射線から逃れる。
「…………」
そして何を思ったか、ワイルドキャットが通過しようとしていた地面に向かって発砲した。
と、銃弾が地面に当たった瞬間!!
忽ちその辺り地面が火の海となった!!
「!? なっ!?」
突然目の前まで立ち上った火柱に驚愕するワイルドキャットのパイロット。
何と弘樹は、先程撃ち落としたワイルドキャットから洩れた燃料に火を着けたのである!
一瞬にして巨大な炎が上がった事で、その周辺の空気が一瞬だが無くなる。
「!? お、落ちるぅっ!?」
だがそれは、航空機を失速させるには十分な時間だった。
空気が無くなった事で、ワイルドキャットは一気に失速。
腹を打ち付ける様に地面に接触したかと思うと、パイロットが射出座席でブッ飛ばされ、機体は粉々に砕けて炎上した。
「クッ! 化け物めぇっ!!」
と、残る1機のワイルドキャットが、自棄になった様に弘樹へと向かう。
「…………」
その向かって来るワイルドキャットに対し、四式自動小銃を構えて仁王立ちする弘樹。
「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!」
ワイルドキャットが、弘樹に向かって12.7mm弾を放つ。
「…………」
その弾丸がすぐ傍を掠めながらも、射撃姿勢を崩さず、ワイルドキャットに狙いを定める弘樹。
そして、ワイルドキャットの距離と高度が、四式自動小銃の射程内に入った瞬間!
「………!」
弘樹は引き金を引き、1発発砲。
放たれた弾丸は、ワイルドキャットのプロペラの隙間を擦り抜け、冷却用の空気取り込み口からエンジン部へと入り込んだ!
「!? うおおおっ!?」
途端にワイルドキャットの機体がガクガクと揺れ始める!
そしてエンジンから黒煙が上がり始めたかと思うと、一瞬にして炎を上げる。
「だ、脱出っ!!」
途端に射出座席で脱出するパイロット。
炎上したワイルドキャットは、空中で分解し、バラバラの状態で砂丘の彼方此方へと落ちるのだった。
『何とーっ! 舩坂 弘樹ぃ! まさかの航空機撃墜の戦果だぁっ!!』
『いや~、対空火器じゃなくて、普通の歩兵用装備で航空機を撃墜だなんて、普通なら有り得ないですよ』
その様を見ていたヒートマン佐々木とDJ田中が熱い実況を送る。
「…………」
ワイルドキャットが全て墜落したのを確認すると、弘樹は再びみほの元へと向かう。
だが、そこで!
またもや機銃掃射が襲い掛かる!
「!!………」
幸いにも外れた様だが、次の瞬間に弘樹が見たのは………
「舩坂 弘樹! 覚悟ぉっ!!」
機体下部に取り付けられていたロケットランチャーを放とうとしているハリケーンの姿だった。
「!?………」
驚きながらも四式自動小銃を構える弘樹。
だが、相手がロケット弾では太刀打ちのしようが無い。
万事休すか!?
と、その瞬間!!
砲撃音が聞こえたかと思うと、ハリケーンの左主翼が吹き飛んだ!!
「!!」
「なっ!?」
弘樹とハリケーンのパイロットが驚く中、左主翼を失ったハリケーンは、錐揉み回転を始める。
「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!?」
パイロットの悲鳴が挙がると、射出座席が作動し、機外へ放り出される。
錐揉み回転していた機体は、砂丘の斜面に激突すると、ボールの様にバウンドしながらバラバラとなり、爆発・炎上した。
「! 今のは!………」
弘樹は、その砲撃音が戦車砲のモノ………
しかも良く聞き慣れていたものである事に気づき、音がした方向を見やる。
そこには………
「やりました!」
「華凄~いっ!!」
「戦車砲で航空機を撃墜するとはな………」
「まるでオットー・カリウスです!」
砂丘の頂上部に陣取り、車内で歓声を響かせ、砲口から硝煙を上げているⅣ号の姿が在った。
「! あんこうチーム! 無事だったか………」
「弘樹~っ!!」
「分隊長~っ!!」
「西住総隊長~!」
「西住さ~んっ!!」
弘樹がそう言うと、砂丘を超えて、無事だった大洗機甲部隊の面々が姿を見せ始める。
「…………」
それを確認した弘樹は、すぐに踵を返し、岩陰に避難させていたみほの元へと向かう。
「西住総隊長! 味方です! 無事合流出来ました!」
みほを抱き起しながらそう呼び掛ける弘樹。
「………ホントに?」
「本当です。ホラ」
「みぽり~ん!」
「みほさ~~ん!」
「西住殿~~~っ!!」
「無事か~!」
グッタリとしていたみほがそう問い質すと、その耳に沙織達の声が聞こえて来る。
「皆………」
「さ、行きましょう」
弘樹はそう言うと、再びみほを抱き抱え、大洗機甲部隊に合流しようとする。
しかし………
「! 後方に敵ですっ!!」
「何ぃっ!?」
「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」
清十郎がそう声を挙げたかと思うと、大洗機甲部隊の一同は、一斉に後方を振り返る。
そこには、砂煙を上げて大洗機甲部隊を追撃して来ているクレオパトラ&スフィンクス機甲部隊の姿が在った。
「! クレオパトラ&スフィンクス機甲部隊!!」
「クソッ! もう追い付いて来やがったのか!?」
「弘樹ーっ!! 急げーっ!!」
「!!」
大洗機甲部隊の一同が慌てる中、地市がそう叫ぶと、弘樹は一気に駆け出す。
「駄目だ! もう少しで敵の射程内だ!!」
だが、僅かに間に合わず、大洗機甲部隊がクレオパトラ&スフィンクス機甲部隊の有効射程内へ入ってしまう。
「そう上手くは行かんぞ。全部隊! 攻げ………」
き、とアナコンダが言葉を繋げようとした瞬間!!
クレオパトラ&スフィンクス機甲部隊が居る場所に、次々と爆弾が降り注いだ!!
「「「「「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」」」」」
「!?」
アナコンダが驚きながら空を見上げると………
「落とせ落とせ! 爆弾倉を空にしろっ!!」
「生き残ってるのは俺達だけなんだ!」
「任務はキッチリと果たすんだっ!!」
生き残っていた3機の一式陸攻、数機のスツーカ達が、クレオパトラ&スフィンクス機甲部隊に対し爆撃を行っていた!
「そらそらそらぁっ!!」
勿論ハンネスも、G―1型の自慢である37mm砲をクレオパトラ&スフィンクス機甲部隊に向かってドンドンとぶっ放す。
「うわぁっ! こりゃ堪らん!」
「味方の戦闘機部隊は何をやってるんだ!?」
「今だ!………」
スフィンクス歩兵の怒声が響く中、弘樹は遂に大洗機甲部隊と合流し、そのままⅣ号の砲塔の上に登った。
「舩坂殿!!」
「西住総隊長を降ろす! 手伝ってくれっ!!」
「ハイッ!!」
そして、優花里と華に支えて貰いながら、みほをキューポラからⅣ号へと乗車させる。
「みぽりん!」
「大丈夫なのか?………」
車内へ入ったみほに、沙織と麻子が心配そうに声を掛ける。
「ハア………ハア………優花里さん………水………」
「ハイ、どうぞ!」
息も絶え絶えにみほがそう呟いたかと思うと、すぐさま優花里が水の入った水筒を差し出す。
「ん、んぐ、んぐ、んぐ………」
みほをそれを受け取ると、一息で一気に飲み干した。
「………プハッ!………ハア………ハア………」
「みほさん………」
「………沙織さん、全部隊に通信を」
「! わ、分かった!」
水を飲み終えたみほに、華が心配する様に声を掛けたが、みほはそう言い、沙織が通信回線を開く。
「………皆さん、御心配をお掛けしました。西住 みほ、部隊に復帰します!」
「「「「「「「「「「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」
先程までのグッタリとした様子など微塵も感じさせない調子で、凛とした声でみほがそう宣言すると、大洗機甲部隊は歓声に包まれた。
「西住殿、本当に大丈夫なのでありますか?」
「弘樹くんが命懸けでココまで連れて来てくれたんだもの………今更引き下がる事なんて出来ないよ」
優花里がそう尋ねると、みほは苦しそうな表情を浮かべながらも、揺るぎない口調でそう言った。
「………分かりました! この秋山 優花里!! 万が一の時には、西住殿と心中する覚悟です!!」
「縁起でもないこと言わないでよ、ゆかりん!!」
それを聞いた優花里がそんな事を言い、沙織からのツッコミが飛ぶ。
「………反撃を開始します!」
「…………」
そう宣言するみほが乗って居るⅣ号の傍では、弘樹が四式自動小銃をリロードしていた。
『さあ! 遂に合流に成功した西住 みほと舩坂 弘樹! 勝負はまだまだコレからの様です!』
『普通に考えれば、大洗に勝ち目は有りませんが………コレばっかりは分かりませんねぇ』
つづく
新話、投稿させていただきました。
遂にクレオパトラ&スフィンクスの航空部隊が、弘樹とみほへと襲い掛かる。
だが、弘樹は勇敢に戦い………
何と、航空機3機を撃墜する戦果を挙げた。
そして漸く………
2人は大洗機甲部隊との合流に成功。
反撃開始である。
では、ご意見・ご感想をお待ちしております。