ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第11話『大洗市街戦です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第11話『大洗市街戦です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊との練習試合に臨んだ大洗機甲部隊だったが………

 

第1作戦の待ち伏せは、Aチームとα分隊が敵を誘導する事には成功したものの………

 

トリガーハッピーと化した桃の居るEチームの発砲で、フレンドリーファイヤが発生。

 

その発砲で、待ち伏せと大洗機機甲部隊の位置を、グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊は把握。

 

逆に包囲を掛け、一斉攻撃を行った。

 

圧倒的に実戦経験が不足していた大洗機甲部隊は、Dチームが戦車を放棄して逃亡………

 

Eチームは履帯が脱落して走行不能に陥る。

 

更に、歩兵部隊もδ分隊の分隊長である勇武やγ分隊の重音が戦死判定を受け、士気が低かった隊員達が逃亡し始めた。

 

全滅は時間の問題かと思われたが、そこで弘樹が先祖・舩坂 弘から受け継いだ大和魂を見せ、全員を鼓舞。

 

如何にか持ち直した大洗機甲部隊は、第2作戦である市街地を利用したゲリラ戦を仕掛ける為、待ち伏せ作戦の為の陣地から撤退を始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗機甲部隊が放棄した陣地にて………

 

「ダージリン隊長! 煙幕が晴れる!」

 

セージがそう報告を挙げると、陣地の場所を覆っていた煙幕が晴れる。

 

「工兵部隊、前進」

 

「「「「「「「「「「「イエス、マイ・ロードッ!!」」」」」」」」」」

 

ダージリンがそう命じると、セージを中心に工兵達が注意深く前進し、地雷やトラップの類が仕掛けられていないかを確認する。

 

「地雷発見!」

 

「此方にも発見!」

 

何人かの工兵達からそう報告が挙がり、大洗機甲部隊が撤退の際に仕掛けていった対戦車地雷が発見される。

 

「すぐに処理しろ」

 

「「「「「「「「「「イエッサーッ!!」」」」」」」」」」

 

セージの指示で、発見した対戦車地雷を処理に掛かる工兵達。

 

やがて、戦車の進路確保が終わる。

 

「ダージリン総隊長。進路の確保、完了しました」

 

「ご苦労様………」

 

「オーイ、ダージリン! アイツは如何するんだぁっ!?」

 

とそこで、オレガノが大声でそう言いながら、そのデカイ手でとある方向を指差した。

 

そこには、履帯が外れた状態で擱座している大洗機甲部隊、戦車隊Eチームの38tの姿が在る。

 

擱座状態から抜け出そうともがいているが、履帯が外れている為、僅かに前後するだけだった。

 

「今は逃げた本隊を追うのが先決よ。対戦車兵に処理させなさい」

 

「了解。対戦車兵は何人か残って38tを処理しろ」

 

「「「「「了解っ!!」」」」」

 

セージがそう命令すると、グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊は、逃げた大洗機甲部隊を追って前進。

 

陣地には、数人の対戦車兵が残された。

 

「さて、悪く思うなよ」

 

「今回は殲滅戦だからな………」

 

ブリティッシュ歩兵部隊の対戦車兵達はそう言いながら、38tにPIATを向ける。

 

………と、その時!!

 

「今だ! 撃てぇっ!!」

 

岩陰に潜んでいた大洗歩兵部隊の突撃兵がそう言いながら姿を現すと、手にしていたDP28軽機関銃を掃射する!

 

更に数人の突撃兵が現れ、同じ様に手にしていた軽機関銃や短機関銃で掃射を浴びせる。

 

「!? 何ぃっ!?」

 

「しまったっ!? 残っていた奴が居たのか!?………!? ぐああっ!?」

 

迎撃能力に乏しいブリティッシュ歩兵部隊の対戦車兵達は、突撃兵達の軽機関銃・短機関銃の掃射に対応出来ず、瞬く間に全員が戦死判定を受けた。

 

「良し、今だ! 38tの履帯の修理に掛かれっ!!」

 

そこで更に、そう言う台詞と共に十河が姿を見せ、数名の工兵と共に、38tの外れた履帯の修理に掛かる。

 

「手伝います!」

 

「あ! 私も!」

 

そこで、38tの車内から柚子と蛍が飛び出し、修理に加わる。

 

「急げぇっ! すぐに直して奴等を殲滅に向かうのだぁっ!!」

 

今だに頭に血が上っている桃が、キューポラから姿を見せると、十河達に向かってそう喚く。

 

「五月蝿い! 誰のせいで第1作戦が失敗したと思っているっ!!」

 

「何だとぉっ!? 貴様の無能を棚に上げてぇっ!!」

 

「棚に上げているのはどっちだっ!!」

 

「け、喧嘩してる場合じゃないよ~!」

 

「早く直そうよ~!」

 

口論に発展する十河と桃を、柚子と蛍が宥める。

 

「さてさて~、如何なるかね~」

 

そしてそんな中でも、杏は1人、干し芋を齧って暢気そうにしているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗町の外れの荒野から大洗町の市街へと続く道………

 

煙幕でグロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊の目を遮った大洗機甲部隊は、先ず戦車隊を撤退させ、続いて万が一の為に後方に置いておいた車両を使い、歩兵部隊が撤退。

 

現在、市街地を目指して全部隊で悪路を走行中である。

 

「西住より平賀さん! 西住より平賀さん! 応答願います!」

 

と、その撤退中の最中、みほはオペレーターである煌人へ通信を送る。

 

『こちら平賀。如何やら第1作戦は失敗したみたいですね。予測はしていましたが』

 

煌人からは、皮肉交じりのそんな返事が返って来る。

 

「ハイ、Dチームは撃破され、Eチームは戦車の故障により、待ち伏せ地点にて立ち往生しています」

 

「歩兵部隊はδ分隊の分隊長である柳沢 勇武やγ分隊の狗魁 重音が戦死! 更に脱走兵が多数出て、現在3分の2に落ち込んでいる!!」

 

みほがそう報告すると、くろがね四起の運転をしながら弘樹もそう報告を挙げる。

 

『ふむ、状況は芳しくないな………』

 

とそこで、市街地に潜伏している工兵達と砲兵達の指揮を取っていた迫信の声が通信回線に入って来る。

 

「神大歩兵隊長。市街地に潜伏させた部隊は如何ですか?」

 

『配置は完了している、何時でも作戦を決行可能だ』

 

弘樹の質問に、迫信はそう返事を返す。

 

「了解しました!」

 

「敵が追いついて来ました!」

 

弘樹が返事を返したところ、後部座席の楓がそう声を挙げる。

 

「!………」

 

一瞬振り返った弘樹の目に、コチラを追って来るグロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊の姿が飛び込んで来る。

 

「思ってたよりも早い………」

 

「全部隊、反撃は控えて下さい! 決戦は市街地で着けます! 今は兎に角逃げる事を考えて下さい!!」

 

みほはそう命令し、全軍の速度を上げさせる。

 

やがて、大洗機甲部隊は、荒野を抜けて舗装された道へと出る。

 

そのまま進んで行き、磯前神社へと登る道を下り、大洗ホテルの前の大鳥居を潜り、大洗の町へと入った。

 

グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊から執拗な砲撃が浴びせられるが、如何にか交わしつつ、大洗鳥居下交差点を左折。

 

そのまま県道2号線を通って、海沿いを移動。

 

やがて大洗マリンタワー前を通り越し、特設観覧席が設置されている大洗アウトレット前を通過しようとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗アウトレット・特別観覧席………

 

「あ! 湯江!! 兄貴達、此処のすぐ横を通るみたいだよっ!!」

 

「ええ! 見に行きましょうっ!!」

 

観覧席にてモニターで試合の様子を観戦して居た遥と湯江がそう言い、道路の方へと向かう。 

 

そして路肩へと辿り着くと丁度のタイミングで、市街地へと向かう大洗機甲部隊が姿を見せる。

 

「来たよっ!」

 

「お兄様達は………」

 

遥がそう言うと、湯江は大洗機甲部隊の中に、弘樹の姿を探す。

 

するとそこで、弘樹と大河が運転しているくろがね四起が姿を現した。

 

「あ! お兄様~!」

 

「兄貴~! 頑張んなさいよ~っ!!」

 

2人の姿を見つけた湯江と遥が声援と共に手を振る。

 

「!………」

 

「おう! 任しときぃっ!!」

 

それに気づいた弘樹は軽く手を振り、大河も返礼する。

 

「これより市街地に入ります! 地形を最大限に生かして下さい!」

 

『コチラは事前に立てた作戦通りに展開している。上手く敵を誘い込んでくれれば援護出来る。頑張ってくれたまえ』

 

とそこで、先頭を行っていたⅣ号のみほと、市街地に潜伏している部隊の指揮を取っていた迫信が、全員にそう通信を送る。

 

「Why not!」

 

「大洗は庭です! 任せて下さい!!」

 

エルヴィンと典子が、威勢の良い返事を返す。

 

「δ分隊は分散して各分隊へと合流! その後は各分隊長の指示に従え!」

 

「「「「「「了解っ!!」」」」」」

 

分隊長である勇武がやられていたδ分隊には、弘樹がそう指示を出し、光照、竜真、ジェームズ、清十郎、正義は其々の分隊へと合流する。

 

そして、大洗機甲部隊はマリンタワー南交差点を右折し、大貫町から市街地へと入って行った。

 

「如何やら、市街戦に持ち込む積もりみたいですね」

 

と、そんな大洗機甲部隊の様子を見ていた湯江がそう予想を立てていると………

 

「湯江ちゃ~ん! 遥ちゃ~ん!」

 

そう言う声と共に、男の子用の服を着た、湯江や遥と同い年ぐらいの少女が、ゴスロリファッションをした女性と、大洗女子学園の制服を着た女性を連れて現れる。

 

「あ! レナ!!」

 

その少女………『竹中 レナ』に気づいた遥が手を振る。

 

彼女もまた湯江と遥の友達であり、δ分隊の竹中 清十郎の妹なのである。

 

「ゴメンね~! お姉ちゃん達連れてくるのに時間掛かっちゃって~」

 

「当然よ。私は見たくないもの………戦車道と歩兵道の試合なんて」

 

「私も………試合結果は占いに出てたもの」

 

レナがそう謝罪していると、彼女と清十郎の姉で、竹中家の長女である大洗女子学園の制服を着た女性『竹中 愛』と、同じく彼女と清十郎の姉で、竹中家の次女であるゴスロリファッションの女性『竹中 あかね』がそう言う。

 

「もう~! お姉ちゃん達ったらまたそんな事言って~」

 

「だってそうでしょ! 私は戦車なんて嫌いなのよ!! 何であの子は、歩兵道なんかを始めたのよ!!」

 

「相変わらず戦車が嫌いなんですね」

 

愛のあからさまなな戦車嫌い発言に、遥が苦笑いを浮かべてそう言う。

 

「当たり前よ! 戦車に轢かれもすれば誰だって嫌いになるでしょっ!!」

 

「ホント、よく生きてたね………」

 

幼少時のトラウマを語る愛に、あかねがそうツッコミを入れる。

 

とそこで、大洗機甲部隊を追っていたグロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊が、湯江達の前を通過して行った。

 

「あ! グロリアーナとブリティッシュの部隊だよ!」

 

「愛さん。あかねさん。取り合えず、今は試合の様子を楽しみましょう」

 

レナがそう言うと、湯江はその場を纏める様にそう言い、特設モニターが設置されているアウトレットの観覧席へと戻ろうと提案する。

 

「仕方ないわね………」

 

「私の占いは当たるわ………」

 

愛とあかねはそう言うと、湯江、遥、レナと共に、観覧席へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊は………

 

大洗機甲部隊を見失い、市街地の入り口に当たる交差点で全軍一時停止していた。

 

「? 消えた?………」

 

「如何やら完全に市街地に入られてしまった様だね………」

 

キューポラの覗き窓から外を見ながらそう呟くダージリンと、クイッとメガネを上げてそう言うセージ。

 

「セージ歩兵隊長、如何しますか?」

 

馬上からティムがセージにそう指示を求める。

 

「この狭い市街では大部隊を組んで移動するのは困難だな………仕方が無い。ダージリン総隊長。ここは隊を細かく分けて虱潰しに探す分散行動を提案します」

 

「確かに………それが良さそうですわね」

 

セージとダージリンがそう言い合うと、グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊は、車両を中心として複数の分隊に分かれ、分散して大洗の市街地へと突入して行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗町・市街地内………

 

1両のマチルダⅡが、随伴歩兵達を周りに展開し、歩兵達に移動速度に合わせてゆっくりと市街地の路地を進んでいる。

 

「こちらロイヤル分隊。敵の姿は姿は発見出来ず。引き続き捜索を続ける。オーバー」

 

と、随伴分隊の分隊長と思わしき歩兵が、通信でそう報告を終えた瞬間………

 

ひゅるるるるる~~~~、と言う風切り音と共に、垂直上方から砲弾が降って来て、マチルダⅡと随伴歩兵分隊の眼前に着弾した!!

 

「!? 敵襲っ!!」

 

「迫撃砲か!? 何処からだっ!?」

 

分隊長が大声でそう叫ぶと、攻撃が迫撃砲である事を見抜いた歩兵が、発射場所を探す。

 

「! 正面ですっ!!」

 

すると、別の歩兵がそう報告を挙げ、随伴歩兵分隊の視線が前方へと集中すると………

 

「撃て撃てぇっ!!」

 

「発射発射ぁっ!!」

 

建物の上に設置した5cm leGrW 36を、マチルダⅡと随伴歩兵分隊目掛けて撃っている俊と正義に数名の歩兵の姿が在った。

 

「あそこか!」

 

「歩兵部隊は下がって下さい! 先行しますっ!!」

 

すると、迫撃砲の砲爆撃で動けない歩兵分隊に代わる様に、マチルダⅡが前進。

 

至近距離で迫撃砲の砲弾が爆発しつつも、持ち前の装甲でやや強引に突き進み、建物の上に陣取っている俊と正義を砲撃しようと試みる。

 

間も無く射程内に捉えられると、薬局の前を通り過ぎようとするマチルダⅡ。

 

しかし、その時………

 

迫撃砲の砲爆撃に晒されている事もあり、マチルダⅡの乗員達は気づかなかった………

 

通り過ぎようとしている薬局の前に置かれていた旗の中に………

 

真田の六文銭と新撰組の誠の旗がある事に………

 

「今だ! 撃てぇっ!!」

 

エルヴィンの叫びが木霊した瞬間!!

 

薬局と隣の民家の間に潜んでいたⅢ突が発砲!!

 

至近距離から砲弾が、マチルダⅡの砲塔右側面に叩き込まれた!!

 

更に、その次の瞬間!!

 

「喰らえぇっ!!」

 

薬局の反対側に位置していた店のシャッターが開いたかと思うと、そこに隠されて設置されていた7.62cm PaK 36(r)に着いていた鷺澪が発砲!

 

砲弾はマチルダⅡの左車体側面部に吸い込まれる様に命中!!

 

左右至近距離から連続攻撃を受けたマチルダⅡは撃破されたと判定され、砲塔上部から白旗が上がる。

 

「!? 何ぃっ!?」

 

「しまった!? 迫撃砲に気を取られた!?」

 

至近距離に潜んでいたⅢ突や、7.62cm PaK 36(r)の鷺澪に、残されたブリティッシュ歩兵部隊が驚いていると………

 

「よっしゃあぁっ!! 残りも一気に畳んだれぇっ!!」

 

大河がそう言う台詞と共に、屋根の上から姿を現し、手にしていた一〇〇式機関短銃を掃射し始める。

 

「「「「「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!」」」」」

 

更に、周囲の建物の影や中から、軽機関銃を装備した偵察兵や、短機関銃を装備した突撃兵達が姿を現し、ブリティッシュ歩兵部隊に銃撃を浴びせる。

 

「うおぉっ!?」

 

「ぐああっ!? やられたぁっ!?」

 

「クッ! 撤退! 撤退ぃっ!!」

 

ブリティッシュ歩兵部隊は戦死判定者を出しながらも、弾幕を張って撤退する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、別の場所でも………

 

「撃て撃てぇっ! 撃ちまくれぇっ!!」

 

路駐された車や電柱、ブロック塀に隠れて射撃を行っている歩兵隊の中に居た竜真が、別部隊が予め設置して置いた九二式重機関銃で弾幕を張っている。

 

他の歩兵達も、同じ様に九二式重機関銃で弾幕を張っている。

 

「クソッ! 重機関銃まで備えていたのか!?」

 

マチルダⅡやランチェスター装甲車、ベッドフォード OXAの影に隠れたブリティッシュ歩兵部隊の1人がそう声を挙げる。

 

「こちらデューク分隊! 我々が前に出ます!!」

 

すると、進撃を阻まれている歩兵隊を助けようと、ライノー重装甲車が前に出る。

 

「! 装甲車だぁっ!!」

 

竜真がそう叫ぶ中、ライノー重装甲車は銃弾を次々と弾きながら前進し、主砲のオードナンス QF 2ポンド砲 口径40mm マークⅡの砲口を大洗歩兵部隊に向ける。

 

そして轟音と共に砲弾が吐き出されたかと思うと、竜真が居る場所と丁度反対側の家のブロック塀が爆発と共に崩れた!!

 

「「「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」」」

 

その場所で弾幕を張っていた歩兵3人が衝撃波で吹き飛ばされ、戦死と判定される。

 

「クッ! 撤退ぃっ!! 撤退ぃっ!!」

 

それを見た竜真が、撤退の声を挙げる。

 

しかし、それを聞く前に、弾幕を張っていた大洗歩兵部隊は、重たい九二式重機関銃を放棄して撤退を始めていた。

 

「敵軍、撤退を開始」

 

「追撃するぞ。周囲に注意しろ」

 

撤退を始めた大洗歩兵部隊を追撃しに掛かるブリティッシュ歩兵部隊とマチルダⅡ。

 

と、その先頭を行っていたライノー重装甲車が、道路に在ったマンホールを踏む。

 

その途端、大爆発が起き、ライノー重装甲車が一瞬宙に浮かんで車輪が吹き飛ばされ、炎上しながら横倒しになった!!

 

車両は撃破と判定され、乗員も全員戦死と判定される。

 

「なっ!?」

 

「な、何が起こったのっ!?」

 

突然の事態にブリティッシュ歩兵部隊とマチルダⅡは混乱し、追撃が止まる。

 

その瞬間!!

 

「今デス!」

 

「そら、喰らえっ!!」

 

建物の屋根の上から現れたジェームズと大詔が、ブリティッシュ歩兵部隊とマチルダⅡの分隊の最後尾に居たランチェスター装甲車とベッドフォード OXAに、M24型柄付手榴弾の収束手榴弾と梱包爆薬を投げつけた!!

 

収束手榴弾はベッドフォード OXAの兵員輸送用の荷台へ、梱包爆薬はランチェスター装甲車のボンネットの上に落ちる。

 

そして次の瞬間には大爆発し、両車両とも撃破され、乗員も戦死と判定される。

 

「!? 後ろもっ!?」

 

「コレでは立ち往生だぞ!?」

 

車両の残骸が道を塞ぎ、立ち往生状態となるブリティッシュ歩兵部隊とマチルダⅡ。

 

「上手い事、マンホールに偽装した対戦車地雷に引っ掛かった様ですね」

 

「後は任せたぜ! Bチームっ!!」

 

逞巳が、先程ライノー重装甲車が踏んだマンホールが偽装した地雷である事を説明し、秀人がそう声を挙げたかと思うと………

 

風切り音が聞こえてきて、榴弾がブリティッシュ歩兵部隊の中に着弾する!!

 

「「「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」」」

 

破片を浴びたブリティッシュ歩兵部隊の歩兵達が吹き飛ばされ、戦死判定を受ける。

 

「良いぞぉっ! 撃って撃ちまくるんだっ!!」

 

「ハイ! キャプテンッ!!」

 

その榴弾を砲撃している八九式の車内で、九〇式榴弾を次々に装填している典子が、あけびにそう言う。

 

「クッ! マチルダ! この際仕方がない! ランチェスターとベッドフォードを蹴散らして強引に後退すんだ!!」

 

「りょ、了解ッ!!」

 

随伴歩兵分隊の分隊長からそう指示され、マチルダⅡは撃破されたランチェスター装甲車とベッドフォード OXAを強引に押し退け、後退する。

 

しかし、そこには………

 

「発射ぁっ!!」

 

撃破したランチェスター装甲車とベッドフォード OXAの残骸と煙に隠れて、一式機動四十七粍速射砲を設置していた誠也と数名の砲兵達の姿が在った!

 

一式機動四十七粍速射砲から発射された一式徹甲弾が、マチルダⅡの後部燃料タンクを撃ち抜く!!

 

「キャアッ!?」

 

「!? 何時の間に!? クソッ! 戻れ! 戻れぇっ!!」

 

その砲撃音で誠也達と一式機動四十七粍速射砲の存在に気づいたブリティッシュ歩兵部隊が、慌ててマチルダⅡが押し退けたランチェスター装甲車とベッドフォード OXAを抜けてマチルダⅡの元へ向かうと、誠也達と一式機動四十七粍速射砲に向かって弾幕を張る。

 

「榴弾装填っ!!」

 

「了解っ!!」

 

銃弾が防楯に弾かれる音を聞きながら、誠也は装填手に榴弾の装填を指示し、ブリティッシュ歩兵部隊に榴弾を見舞って応戦するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また、別の一角では………

 

「向こうで銃声と爆発音がするぞ」

 

「多分、他の分隊が交戦状態に入ったんだ」

 

「コチラも油断せずに行くぞ」

 

遠くから聞こえる銃声と爆発音を聞きながら、ディンゴ偵察車を中心にした歩兵分隊が、四方を警戒しながらゆっくりと市内の路地を進んでいる。

 

今のところ、大洗機甲部隊との接触は無く、遠くから銃声と爆発音が断続的に聞こえるのに対し、この分隊は不気味な静寂に包まれていた。

 

「この辺だけ妙に静かだな………」

 

「敵は居ないんじゃないのか?」

 

周囲を警戒しているブリティッシュの歩兵達は、思わずそんな言葉を漏らす。

 

やがて、一同の前方に道路に、マンホールが現れる。

 

それを特に気にせず通過しようとするブリティッシュ歩兵部隊。

 

如何やら今度は偽装した地雷ではないらしく、ブリティッシュの歩兵達が踏んでも変化は無い………

 

やがてディンゴ偵察車も、そのマンホールを跨ぐ様にして通り過ぎようとする。

 

と、ディンゴ偵察車の車体の中心が丁度真上に重なった瞬間!!

 

マンホールがズッと横にズレ、中から手が伸びて来て、九九式破甲爆雷をディンゴ偵察車の車体下に取り付けた。

 

そうとは気づかぬディンゴ偵察車が少し前進を続けた次の瞬間!!

 

九九式破甲爆雷が爆発!!

 

「「うわあぁっ!?」」

 

撃破判定を受けたディンゴ偵察車から、戦死判定を受けた歩兵2人が崩れ落ちる様に出て来て、そのまま道路に倒れる。

 

「!? 何だっ!?」

 

「敵の攻撃っ!? 何処からだ!?」

 

突如ディンゴ偵察車が撃破され、ブリティッシュ歩兵部隊は慌てて敵の姿を探す。

 

「! あっ!? アレは!?」

 

そこで、ブリティッシュ歩兵の1人が、ズラされたマンホールに気づく。

 

「野郎っ! 下水道を使ってっ!!」

 

「ドブネズミみたいな真似しやがってっ!!」

 

「手榴弾だ!!」

 

偵察車を破壊された怒りからか、口調が荒くなるブリティッシュの歩兵達が、ベルトに下げていたミルズ型手榴弾を、蓋が開いたマンホールへ次々に放り込み、離れる。

 

手榴弾が下水に落ちたと思われる水音が響いたかと思うと、続いて爆発音が次々に起こり、マンホールから黒煙が噴き出す!

 

「やったかっ!?」

 

と、ブリティッシュ歩兵の1人がそう声を挙げた瞬間!!

 

「Wasshoi!」

 

そう言う掛け声と共に、ブリティッシュが手榴弾を放り込んだマンホールからやや離れた位置に在ったマンホールの蓋が宙に舞い、そこから人影が飛び出した!!

 

「「「「「!?」」」」」

 

驚くブリティッシュ歩兵部隊を他所に、飛び出した人影は激しく回転しながら、電柱を蹴って更に錐揉みで回転すると着地を決め、そこからジムナスティックス選手めいた動きで側転から後転、後転からのバク転を決め、ブリティッシュ歩兵部隊の頭上を飛び越えて、その傍に着地する!

 

それは、旧日本海軍空挺部隊の戦闘服姿で、顔を目元以外覆面で隠した背中に忍刀を背負った忍者………小太郎だった。

 

「ドーモ。ブリティッシュの皆=サン。葉隠 小太郎です」

 

小太郎はブリティッシュの歩兵部隊に向かって、身体の前で両手を合わせると頭を下げて、アイサツと共にオジギをする。

 

「アイエエエエ!」

 

「ニンジャ!? ニンジャナンデ!?」

 

「コワイ!」

 

「ゴボボーッ!」

 

サツバツ!

 

突如として奇怪な登場を果たした小太郎に、ブリティッシュ歩兵達は恐怖のあまり容易に(自主規制)し、嘔吐した。

 

何故なら、目の前に立ちはだかった大洗の歩兵・小太郎の姿があからさまにニンジャなのだ!

 

「イヤーッ!」

 

と、小太郎はNRSを起こしているブリティッシュの歩兵達に肉薄すると、その内の1人に容赦無く、ニンジャ腕力で強化されたカラテチョップを喰らわせる!

 

「グワーッ!」

 

カラテチョップを受けたブリティッシュの歩兵の1人は、衝撃のあまり、風に飛ばされた凧めいて宙に舞い、地面に叩きつけられる!

 

「!?」

 

「アイエエエエ!」

 

それで我に返った残りのブリティッシュの歩兵達は、すぐに小太郎へ襲い掛かる。

 

ある者は、銃剣で突きを繰り出し………

 

ある者は、拳銃を抜いて銃口を向け………

 

ある者は、殴り掛かる。

 

「イヤーッ!」

 

しかし!!

 

覆面に隠された小太郎の口からニンジャ・シャウトが挙がると、小太郎はバク転で飛び上がり、スクラップめいたディンゴ偵察車の残骸の上に着地する。

 

「イヤーッ!」

 

着地と同時に小太郎が腕を鞭の様に撓らせて振ると、袖から2枚のスリケンが射出される!

 

「アバーッ!」

 

「アバーッ!」

 

射出されたスリケンは、ブリティッシュの歩兵2人の眉間へと命中!

 

ワザマエ!

 

スリケンを喰らったブリティッシュの歩兵2人は、しめやかに戦死と判定を受ける。

 

「イヤーッ!」

 

小太郎はスクラップめいたディンゴ偵察車の残骸の上から更に飛ぶと、路地裏へと転がり込む様に隠れる。

 

「ザッケンナコラー!」

 

「スッゾコラー!」

 

興奮の余りヤクザめいた口調になりながら、生き残ったブリティッシュの歩兵が路地裏へと逃げ込んだ小太郎を追う。

 

だが、その歩兵達が路地裏に飛び込んで最初に見たモノは………

 

「…………」

 

刃物の様に鋭い眼光で、愛刀である軍太刀『戦獄』を、居合いの構えで構えている熾龍の姿だった。

 

「えっ?………」

 

「むうんっ!!」

 

先頭で路地裏へと飛び込んだブリティッシュの歩兵が呆けていた瞬間!!

 

熾龍は容赦無く居合い斬りを叩き込む!!

 

「!? ぐあああっ!?」

 

まともに居合い斬りを喰らったブリティッシュの歩兵は、断末魔の様に叫び、バタリと倒れると戦死判定を受ける。

 

「なっ!?」

 

「伏兵っ!?」

 

居合い斬りを受けてやられたブリティッシュの歩兵の後ろに居た2人の歩兵達が驚きながらも、前の方に居た歩兵が銃剣で突きを繰り出そうとする。

 

「遅いっ!!」

 

だが、それよりも早く、熾龍は返す刀での2撃目を喰らわせる!!

 

「ガハッ!?」

 

銃剣での突きを繰り出そうとしていたブリティッシュの歩兵は、敢えなく戦死判定となる。

 

「くうっ!!」

 

と、最後に残っていたブリティッシュの歩兵が、右手に握っていたエンフィールド・リボルバーNo.2 Mk.I*を向ける。

 

「貰ったぁっ!!」

 

エンフィールド・リボルバーNo.2 Mk.I*を握ったブリティッシュの歩兵がそう叫び、引き金を引く。

 

パアァンッ!と言う乾いた音が響き渡ったかと思うと………

 

エンフィールド・リボルバーNo.2 Mk.I*を握ったブリティッシュの歩兵がバタリと倒れ、戦死判定を受けた。

 

「…………」

 

熾龍はそのブリティッシュの歩兵を見ながら戦獄を納刀し、背後を振り返る。

 

「当たりましたか………良かった」

 

その方向の、やや離れた高い建物の上には、銃口から硝煙の上がっているモシン・ナガンM1891/30を伏せて構えていた飛彗の姿が在ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『こちら5号車! 申し訳ありません! やられました!!』

 

『ロイヤル分隊、被害甚大! 後退します!!』

 

『こちら3号車! 砲兵の攻撃を受けました! 現在損傷状況を確認中!!』

 

『プライム分隊、現在敵と交戦中! 我が方不利! 至急援軍請う!!』

 

「なっ!?………」

 

通信回線に次々と飛び込んで来る苦戦の報告に、ダージリンは思わず持っていたティーカップを落としてしまう。

 

ティーカップは床に落ちると割れ、紅茶が戦車の中を汚した。

 

「クッ………やってくれるな」

 

隣に居たSASジープの助手席のセージも、苦い顔をしながらメガネをクイッと上げる。

 

「セージさん、落ち着いて下さい」

 

と、そんなセージを気に掛ける様に、ティムがそう言う。

 

「………大丈夫だ、ティム。如何やら、少々彼等を侮っていた様だね」

 

するとセージは落ち着いた様子で、メガネのレンズを光らせながら、不敵な様子でそう言い放つ。

 

「おやりになるのね。でも、ココまでよ………」

 

と、ダージリンも気を取り直す様にそう呟いたかと思うと、ハッチを開けて車外へと姿を現す。

 

「…………」

 

そして、チャーチル歩兵戦車と並ぶ様に随伴していたアールグレイを見やる。

 

「アールグレイ。機甲部隊総隊長として命じます………大洗機甲部隊の歩兵達を倒しなさい」

 

そのアールグレイに向かって、ダージリンはバッと手を振る様に向け、そう命令する。

 

「………イエス・マイ・ロード」

 

アールグレイはそう返事を返すと、肩にベルトで下げていたリー・エンフィールドライフルのRifle No.4 Mk Iを手に構えた。

 

「ティム、君も頼む」

 

「ハイ、セージ隊長」

 

セージもティムへと呼び掛け、ティムはランチェスター短機関銃Mk.1*を握る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び、大洗の市街地の公園にて………

 

茂みと木の陰に隠れて、弘樹と楓が、公園の入り口から進入してこようとしているブリティッシュ歩兵部隊を迎え撃っている。

 

「楓! 手榴弾っ!!」

 

「! ハイッ!!」

 

弘樹に言われ、楓はベルトに下げていた九七式手榴弾を投げる。

 

「「「「「!? うわあぁーっ!?」」」」」

 

九七式手榴弾は公園に侵入しようとして来ていたブリティッシュ歩兵部隊の足元に転がり、纏めて戦死させた。

 

「クソッ! 駄目だ! コッチからは行けないっ!!」

 

「裏へ回れっ!!」

 

ブリティッシュ歩兵部隊は、公園への進入を諦め、裏から回ろうと撤退する。

 

「やりました!」

 

「ああ………」

 

短く言葉を交わし合いながら、楓と弘樹は弾丸をリロードする。

 

「地市、了平。そっちは如何だ?」

 

『今ブリティッシュのガイ装甲車を1両撃破したぜ』

 

『コッチも何人か歩兵を倒したぜ』

 

別の場所で戦っていた地市と了平に戦況を尋ねると、そう言う返事が返って来る。

 

「………神狩は如何した?」

 

弘樹は一瞬間を置き、2人の近場で戦っている筈である白狼について尋ねる。

 

『さっき江戸鮫と日暮と会ったんだが、そっちの援護に向かったぜ』

 

地市がそう返信して来る。

 

「そうか………」

 

と、その時!!

 

『うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!?』

 

「「!?」」

 

通信回線に大洗歩兵のモノと思われる悲鳴が響き、驚く弘樹と楓。

 

『な、何だアイツは!?』

 

『は、早いっ!?………!? ギャアッ!?』

 

『うわぁっ!? やられたぁっ!?』

 

『騎兵が!? 騎兵がぁっ!!』

 

それを皮切りにした様に、通信回線には大洗歩兵部隊の歩兵達の悲鳴が次々に挙がる。

 

「こ、コレは!?」

 

「こちらα分隊の舩坂! 如何した!? 何があったっ!?」

 

楓が狼狽していると、弘樹はすぐに状況報告を求める。

 

『こ、コチラβ分隊の東郷。すみません………やられました』

 

すると、β分隊の武志からそう報告が挙がる。

 

「一体何があったんだ?」

 

『腰にフルーレを差した騎兵が現れて………一瞬の内に、僕を含めた5人を………』

 

「腰にフルーレ?」

 

その報告を聞いた弘樹の脳裏に、試合前の挨拶の時に見たブリティッシュの騎兵………アールグレイの姿が過ぎる。

 

と………

 

『うわぁっ!?………コチラδ分隊の竹中! スミマセン! やられました!!』

 

そこで今度は、δ分隊の清十郎が戦死判定を受けたとの報告を挙げる。

 

「舩坂より竹中へ。敵は腰にフルーレを差した騎兵か?」

 

『いえ、違います………白馬に跨った騎兵でした………』

 

「白馬に跨った騎兵………」

 

「如何やら、その2人がブリティッシュ歩兵部隊のエースの様ですね………」

 

隣で同じ報告を聞いていた楓がそう推論を述べる。

 

「………舩坂より神大歩兵隊長。並びに西住総隊長。応答願います」

 

『コチラ西住です』

 

『私だ。報告を聞いていた………いよいよ敵も本気を出してきたと言う事だな』

 

弘樹はすぐにみほと迫信へと通信を送り、みほからはやや緊迫した、迫信からはいつもと変わらぬ落ち着いた声が返って来る。

 

「敵歩兵部隊の中にエースが2名居る様です。もし遭遇した場合は決して単独では戦おうとせず、他の歩兵、若しくは戦車との連携を取らせて戦うべきだと意見具申致します」

 

『確かに………未熟な大洗機甲部隊の隊員達では、単独で敵のエースと戦うのは危険だね』

 

『すぐに全員に指示を出します』

 

『平賀だ。隊員達との報告を纏めて、そのエースが何処に居るかを見当をつけた』

 

と迫信とみほが話し合っていると、煌人が通信回線に割り込んで来て、戦死判定を受けた大洗男子歩兵達の報告から、ブリティッシュ歩兵部隊のエースの予想現在位置を割り出し、全員に伝える。

 

「! 1人はこの近くに居るみたいですね」

 

ブリティッシュ歩兵部隊のエースの内、片方が今自分達が居る場所から近い場所に居ると聞いて、楓は思わずウィンチェスターM1887を握り締める。

 

「地市、了平。一旦合流するぞ」

 

『了解っ!』

 

『勘弁して欲しいよぉ、敵のエースと対決なんてさぁ~』

 

弘樹は地市と了平に合流指示を出し、2人と合流する為に、周囲を警戒しながら公園を出るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方………

 

「敵のエースが出て来たってよ」

 

「敵さんもいよいよ本腰入れたっちゅう事やな」

 

煌人からの全体通信でエース登場を聞いていた海音と豹詑がそう言い合い、お互いの獲物である試製五式四十五粍簡易無反動砲とGew98を点検する。

 

「ふふふ………面白くなってきたじゃないか」

 

そして白狼は1人、闘志を燃やす

 

「! そこだっ!!」

 

と、そう言う台詞と共に、白狼は正面に見えていた十字路の左の道路の出口に、シュミット・ルビンM1889の銃口を向ける。

 

その次の瞬間に、角からブリティッシュ歩兵部隊の騎兵の1人が飛び出し、白狼は容赦無く引き金を引いた!

 

「!? うわあぁっ!?」

 

出掛けを狙われ、丁度心臓の位置に弾丸を喰らってしまったブリティッシュ騎兵は落馬し、戦死と判定される。

 

「よっしゃあっ! 敵1撃破!!」

 

白狼は嬉しそうな様子を見せながら、レバーを引いて排莢する。

 

「おおっ!」

 

「流石やなぁ!」

 

と、海音と豹詑が関心の声を挙げると、今度は逆側の十字路の出口の方から、また馬の蹄の音が聞こえて来る。

 

「まだ居たか!!」

 

すぐに仕留めてやるとばかりにシュミット・ルビンM1889を構えると、ドンピシャのタイミングで発砲する白狼。

 

だが、しかし!!

 

「ライトニングスター、跳べ!!」

 

そう言う声が響いたかと思うと、馬の鳴き声が聞こえ、十字路の出口から姿を現した騎兵が馬ごと大跳躍し、白狼が撃った弾丸は、ブロック塀に穴を開けた。

 

「!?」

 

「何やてっ!?」

 

「跳んだ!?」

 

敵騎兵の思わぬ回避に、白狼、海音、豹詫は驚きを露にする。

 

「そこっ!!」

 

敵騎兵………愛馬のライトニングスターに跨ったティムは、跳躍した状態の馬上からランチェスター短機関銃Mk.1*を構え発砲!

 

「!? うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」

 

海音に無数の銃弾を浴びせた!!

 

「! 海音っ!!」

 

「!?」

 

豹詫と白狼が驚愕する中、海音は戦死と判定される。

 

「待ち構えられていたとは………あと少し反応が遅れていたら危なかったですね」

 

と、着地したライトニングスターを翻し、ティムは豹詫と白狼に向き直る。

 

「「!!」」

 

その言葉で我に返った豹詫と白狼はすぐに、ZK-383短機関銃とシュミット・ルビンM1889を構える。

 

「自己紹介が遅れましたね。僕は聖ブリテッシュ男子高校の突撃兵、ティムです。以後お見知り置きを」

 

そんな2人に向かって、ティムは畏まった様子で挨拶をする。

 

「随分な余裕だな、オイ」

 

その様子が余裕に見えた白狼が、舐められていると思い、若干口調を荒くしてティムにそう言い放つ。

 

「戦車道、そして歩兵道は唯戦うだけのモノではありません。戦いを通して礼節を学ぶ神聖なる武道です。その精神に則って挨拶をしたまでです」

 

ティムは別段に気にした様子は見せず、そう返すが………

 

「そうかいっ!!」

 

途端に白狼は不意を衝く様に、シュミット・ルビンM1889を発砲した。

 

「っ! 粗野な人ですね………」

 

そんな白狼の様に呆れる様な様子を見せながら、ライトニングスターを走らせ、銃弾を回避するティム。

 

「逃がすかっ!!」

 

豹詫がすぐに、ティムへとZK-383短機関銃を向けたが………

 

「遅いですよっ!」

 

ティムの方が先に、ランチェスター短機関銃Mk.1*を発砲!

 

豹詫のZK-383短機関銃を弾き飛ばした!

 

「うわぁっ!? クソッ!!」

 

すぐに腰のホルスターからラハティL-35を抜いたが………

 

その瞬間には、ティムの跨ったライトニングスターが目の前にまで迫っていた。

 

「!? うおおっ!?」

 

横っ飛びする様に回避する豹詫だったが………

 

「貰いました!」

 

その回避先を読んでいた様に、ティムはランチェスター短機関銃Mk.1*を発砲する!

 

「!? うわああああぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!」

 

回避中で動けぬ瞬間に無数に弾丸を叩き込まれ、豹詫は地面に倒れると、戦死判定となった。

 

「! 豹詫! この野郎っ!!」

 

仲間の仇とばかりシュミット・ルビンM1889を連射する白狼。

 

「当たりませんよ」

 

しかし、照準が良く定まっていないまま発砲している為か、ライトニングスターで走るティムには掠りもしない。

 

「クソッ!!」

 

それでも次々に弾丸を発砲する白狼だったが………

 

やがてシュミット・ルビンM1889が弾切れし、引き金を引いても乾いた音を立てるだけとなる。

 

「!? ヤベッ! 弾が!?」

 

「隙有りです!」

 

その瞬間を見逃さず、ティムは白狼に突撃する。

 

「!! クソッタレッ!!」

 

すぐに腰のホルスターから、ラドムVIS wz1935を抜く白狼だったが………

 

「ハアッ!!」

 

目の前まで迫ってきていたライトングスターが不意に横腹を見せた瞬間!!

 

ティムの蹴りが繰り出され、ラドムVIS wz1935を弾き飛ばした!!

 

「!?」

 

「ライトニングスターッ!!」

 

そして、動きが止まった白狼に、ライトニングスターの後ろ蹴りが叩き込まれる!!

 

「!? ガハッ!?」

 

白狼は咄嗟にガードしたももの、弾き飛ばされてブロック塀に背中から激突。

 

そのままガクリと座り込んで動かなくなった。

 

「コレも試合です………悪くも思わないで下さい」

 

気絶したと思い込んだティムはそう言い残すと、その場から去って行く。

 

しかし、ティムが去って少しすると………

 

「アイダダダダ………あの野郎~!」

 

何と、気を失ってはいなかった白狼が、ゆっくりと起き上がり、そう呟いた。

 

「野郎! ブッ倒してやるっ!!」

 

白狼はまるで頭に来たとばかりにそう叫ぶと、弾切れした自身のシュミット・ルビンM1889の代わりに、豹詫が使っていたZK-383短機関銃を拾い上げる。

 

そして、近くの路肩に置かれていた、住民の物と思われる自転車を発見すると………

 

「借りるぞっ!!」

 

そう言うと共に鍵を壊して跨り、自転車兵よろしくティムを追うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

いよいよ市街戦です。
私の作品では歩兵が居る事もあり、若干激しめ………
と言うより、泥臭くなってる感じがありますね。
まあ、歩兵の戦闘と言うのは泥臭いのがデフォルトですからね。

それと、今回の話の中で一部雰囲気が違う箇所があったと御思いでしょうが………
ニンジャはいない、良いね?
作者はニュービーニンジャヘッズなので、忍殺語が上手く使えない。
実際難しい。
今後小太郎が登場する場面で、同じ様な描写をする可能性がありますが、お遊びだと思って笑って流してもらえると幸いです。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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