ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

103 / 287
第103話『先輩と不沈艦です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第103話『先輩と不沈艦です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の試合………

 

『黄金スフィンクス男子高等学園』と『聖クレオパトラ女学院高校』の『クレオパトラ&スフィンクス機甲部隊』の戦いに備え………

 

本土のとあるガンショップに武器と弾薬の仕入れに訪れた大洗歩兵部隊とあんこうチーム。

 

そこで一同は………

 

強豪校『西部学園』の歩兵部隊のメンバー、『ジャンゴ』、『レオパルド』、『リボルバー・オセロット』と出くわす。

 

挑発的な言葉を残し去って行ったジャンゴ達は、大洗がクレオパトラ&スフィンクス機甲部隊を破れば、次に戦う相手である。

 

次の試合も終わらぬ内に新たな脅威を感じながら帰路に就いた大洗歩兵部隊とあんこうチーム。

 

その途中………

 

弘樹とみほが、道に迷ったお婆さんを助け、学園艦の出航に乗り遅れてしまう………

 

連絡船待ちで港で立ち往生していた弘樹とみほに声を掛けて来たのは………

 

旧大日本帝国海軍所属・陽炎型駆逐艦の8番艦『雪風』に乗った、弘樹が『新代先輩』と呼ぶ男だった………

 

果たして、何者なのか?………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海原を進む雪風………

 

その艦橋にて………

 

「すみません、先輩。態々送っていただいて………」

 

「ハハハ、気にするなって。俺とお前の仲だろう」

 

「恐縮です………」

 

先輩と呼ぶ、雪風の艦長と親しげに話している弘樹。

 

「あの、弘樹くん………その人は?」

 

とそこで、同じく艦橋に居たみほがそう尋ねる。

 

「ああ、すまない、みほくん。紹介が遅れた。この方は、小官の中学生時代の先輩で………」

 

「『新代 護(しんだい まもる)』。当艦、雪風の艦長だ」

 

弘樹がそう言うと、雪風の艦長………弘樹の中学生時代の先輩である『新代 護(しんだい まもる)』は、そう自己紹介した。

 

「先輩って事は………」

 

「ああ、新代先輩は軍艦道をやっておられるんだ。中学生時代は、先輩の援護砲撃のお蔭で勝ちを拾った試合もある」

 

「オイオイ、弘樹。俺1人の力じゃないぞ。お前や西………それにシメオンやハンネスにエグモンド、六郎達………部隊の全員が力を合わせて勝利を勝ち取ったんだ」

 

謙遜するかの様に、護はヒラヒラと手を振る。

 

「それにしても驚いたぞ。試合の帰りにちょっと立ち寄った港でお前達の姿を見た時は………」

 

「先輩は今、どちらの学園に?」

 

「広島だ。呉に所属している造船工業学校の学園艦さ」

 

「! 呉の造船工業学校と言えば、軍艦道では強豪で知られるエリート校じゃないですか! そこへ入学出来たとは………流石ですね、先輩」

 

「ハハハハ! 運が良かっただけさ………お前こそ、最近大活躍してるじゃないか。テレビで見てるぞ」

 

「いや、お恥ずかしい………小官はまだまだ未熟です」

 

「ハハハハ! 相変わらず生真面目だな、お前は」

 

笑い合いながら話に花を咲かせている弘樹と護。

 

(何だか良いな………)

 

そんな2人の様子を見て、みほは男同士の友情に憧れの様な感情を抱く。

 

と、その時………

 

「! 艦長! 左前方、10時の方向に艦影!」

 

「何っ?………」

 

艦橋に居た双眼鏡を覗いていた見張り員の1人がそう報告を挙げ、護は艦橋の窓の傍へ寄るとその方向を確認する。

 

見張り員の報告通り、その方向には艦影が見えていた。

 

「何処かの学園艦の連絡船みたいですが………」

 

「大洗の連絡船じゃないんですか?」

 

「いや、形が違う………別の学園艦の連絡船だな」

 

見張り員と護がそう言い合っていると、みほと弘樹が同じ様に艦橋の窓から艦影を見ながらそう口を挟んで来る。

 

「! あ! 艦影の周りに機影有り!」

 

「! 何だとっ!?」

 

と、そこで見張り員が新たにそう報告を挙げると、護も首に下げていた双眼鏡を手に取り、機影を見やる。

 

確かに、連絡船らしき艦影の周囲には、飛行艇らしき機影が、多数飛び回っていた。

 

「! マズイ! 空賊に襲われてるぞ!!」

 

「! 空賊っ!?」

 

「空中海賊………航空機を所有して一団をなし、海賊や盗賊と同様の行為を行う連中だ。この辺りにも出没していたのか………」

 

護がそう声を挙げると、みほが驚き、弘樹が空賊について説明する。

 

「助けに行くぞ! 取り舵いっぱ~いっ!!」

 

「了解! 取り舵いっぱ~いっ!!」

 

すぐに護のそう言う指示が飛び、操舵輪を握っていた操舵手が、左に思いっきり舵を切る。

 

雪風の船体が勢い良く左に曲がり始める。

 

「キャッ!?」

 

「おっと!」

 

その際の慣性でみほがよろめいたが、弘樹が受け止める。

 

「近くの海上保安庁、並びに自衛隊に連絡! スマン、弘樹、みほちゃん。巻き込んでしまって………」

 

通信手にそう指示を飛ばしながら、護は弘樹とみほに謝罪する。

 

「いえ、気にしないで下さい」

 

「空賊に襲われている船を見す見す見過ごすワケには行きません」

 

「助かる。危ないから、艦内の方に避難して居てくれ………全速前進っ!!」

 

みほと弘樹がそう返すと、護は再び指示を飛ばし、空賊に襲われている連絡船の元へと急ぐのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空賊に襲われている連絡船………

 

「停まれーっ! 停まらねえと沈めるぞぉっ!!」

 

連絡船を取り囲む様に飛んでいた空賊達の飛行艇の中で、主犯格と思われる空賊の飛行艇が連絡船の横へと着水。

 

窓やハッチ、機銃座に居た団員達が、威嚇するかの様に機銃を発砲し、武器を振り回す。

 

「キャアーッ!」

 

「マンマユート団だぁっ!!」

 

「助けてくれーっ!!」

 

連絡船の乗客達は悲鳴を挙げながら、狭い甲板や艦内をパニックになって走り回る。

 

「ね、姐さん!」

 

「クソッ! 何でこんな事に………」

 

その乗客の中に、ペパロニやアンチョビの姿が在った。

 

如何やら、襲われているのはアンツィオ&ピッツァ学園艦の連絡船らしい。

 

「フォルゴーレ………」

 

「大丈夫です、カルパッチョ様。如何か冷静に………」

 

怯えるカルパッチョを抱き締めながら、フォルゴーレがそう言う。

 

「空賊怖い、空賊怖い………」

 

一方、ロマーノは………

 

シートを上半身に被せて床に蹲り、ガタガタと震えていた。

 

と、そこで連絡船が空賊の指示に従い速度を落とし始め、やがて完全に停止する。

 

「よおし、良い子だ! 野郎共ぉっ! 金目のモンは根こそぎ頂いて行けぇっ!!」

 

「お頭ぁーっ!! 9時方向から別の船が近づいて来ますーっ!!」

 

「!? 何ぃっ!?」

 

略奪の指示を出す団長だったが、そこで団員の1人がそう報告を挙げ、9時方向を見やる。

 

そこには、波飛沫を上げて近づいて来る、雪風の姿が在った。

 

「チイッ! 軍艦道をやってるガキ共か! 仕方ねえ、アッチを先に片付けるぞっ!!」

 

と、団長がそう言うと、彼の乗って居た飛行艇が離水。

 

そのまま雪風の方へと向かうと、他の飛行艇もその後に続く。

 

「敵機、コチラに接近して来ますっ!」

 

「対空戦闘用意っ!!」

 

「対空戦闘用意ーっ!!」

 

見張り員の報告を聞いて、護がそう指示を出すと、副長が復唱。

 

雪風の各所に備え付けられた九六式25mm3連装機銃と九六式25mm単装機銃に付いて居た乗員達に緊張が走る。

 

やがて、空賊達の飛行艇が、対空機銃の射程内へと侵入する。

 

「撃ち方始めーっ!!」

 

護の指示が飛んだ瞬間、雪風の対空機銃が一斉に火を噴く!

 

曳光弾の混じった機銃の弾丸が、空に花火の様に煌めく!

 

その弾丸を浴びた1機の飛行艇が火を噴き、海へと墜落すると派手に水柱を上げた!

 

「チキショーッ! やられたぁっ!!」

 

「オノレェ、ガキ共めぇっ! コレでも喰らえっ!!」

 

海面を漂っている飛行艇の空賊団員がそう声を挙げる中、マンマユート団の団長が乗る飛行艇が、雪風の上空を通過した瞬間に、収束手榴弾を投げ落とす。

 

「おもーかーじっ!!」

 

「おもーかーじっ!」

 

それを確認した護がすぐに面舵の指示を出し、操舵手が右へと舵を切る。

 

収束手榴弾は雪風から外れて海中に落ち、派手に水柱を上げた!

 

「うわっ!?」

 

「怯むなっ! 弾幕張り続けろっ!!」

 

「ハ、ハイッ!!」

 

その水柱の水を浴びた九六式25mm単装機銃に付いて居た乗員の1人が、一瞬射撃を中止してしまうが、護に叱咤されてすぐに射撃を再開する。

 

その再開した対空射撃の銃弾が、またも空賊の飛行艇に命中!

 

「クソッ! エンジンがイカれた! 着水するっ!!」

 

エンジンを撃ち抜かれたらしく、命中弾を浴びた飛行艇は命中箇所から白い煙を吹きながら、海面へと着水する。

 

「またやられたぞ!」

 

「やられた時の修理費は割り勘だよなっ!?」

 

「女々しい野郎だぜ! 自己負担に決まってるだろうっ!!」

 

「割り勘じゃないんなら、俺は抜けるぞっ!!」

 

「爆弾も自己負担なのか!?」

 

「当たり前だろうっ!!」

 

と、仲間が次々にやられた事で、空賊達の間で言い争いが始まる。

 

「ウルセェーッ! だ・ま・れーっ!!」

 

そんな言い争いに辟易したのか、マンマユート団の団長が、ランチャーをブッ放しながら無理矢理黙らせる!

 

「高がガキだと思っていれば調子に乗りやがって………オイ! とっておきだっ!!」

 

「ええっ!? 『アレ』を使うですか!?」

 

「早くしろっ!!」

 

「!!」

 

団長に尻を蹴られて、団員は飛行艇の機内から何かを持ち出し、側面ハッチを開けると、脇に抱える様に持って雪風へと向ける。

 

「!? 主犯格の飛行艇に不審な動き有り!」

 

「何っ!?」

 

見張り員がその様子に気づくと、護も双眼鏡でマンマユート団の飛行艇を確認する。

 

側面ハッチから姿を見せていた団員は、脇に抱えていた何かに付いて居た導火線に火を着けると、そのまま落っこどす。

 

「!? マズイ! ロケット弾だっ!!」

 

護がそう声を挙げた瞬間に、落っことされたロケット弾が点火!

 

白煙の尾を引きながら、雪風の艦橋へと向かう!

 

「クウッ!!」

 

雪風の艦橋前に装備されていた九六式25mm3連装機銃に付いて居た乗員が、ロケット弾を迎撃しようと弾幕を張る!

 

だがロケット弾はドンドンと近づいて来る!

 

「総員艦橋から退避っ!!」

 

と、護が退避命令を出した瞬間!

 

張られていた弾幕の弾丸1発が、ロケット弾に命中した!

 

ロケット弾は雪風の艦橋の眼前で爆発する!!

 

「うわあっ!?」

 

「!?」

 

艦橋前部の九六式25mm3連装機銃に付いて居た乗員が諸に爆風を浴びて倒れ、艦橋の窓ガラスも衝撃波で割れて、艦橋内へと飛び込んで来る!!

 

「クウッ! 全員無事か!?」

 

「な、何とか………」

 

「だ、大丈夫です………」

 

窓ガラスが全て割れた艦橋内で副長がそう声を挙げると、各乗員からそう返事が返って来る。

 

「艦長?………!? 艦長ぉっ!!」

 

しかし、艦長である護からの返事が無い事に副長が気付いて護が居た場所を見やるとそこには………

 

「ぐ、う………」

 

頭から血を流し、床の上に倒れている護の姿が在った。

 

「! 医務室! 艦長が負傷した! すぐに来てくれっ!!」

 

「先輩! 今の揺れは………!? 先輩っ!?」

 

副長が慌てて伝声管で医務室に連絡していると、先程のロケット弾が至近距離で爆発した振動を感じ取った弘樹が艦橋に現れ、血を流して倒れている護の姿を見てすぐさま駆け寄る。

 

「! 如何したんですかっ!?」

 

その後から艦橋に入って来たみほも、護の姿に気付くとすぐに傍に駆け寄って来て、弘樹が助け起こしているのを補助する。

 

「くう………油断………した………」

 

「喋らない下さい! 傷に障ります!」

 

「救急箱! 応急処置を!!」

 

「ハ、ハイ!」

 

護がそう呟く様に言うと、弘樹がそう言い、みほが艦医が来るまでの間の応急処置を行い始める。

 

「チキショーッ! 迎撃されたか! だが、あの距離で爆発したんなら相当の被害の筈だ! 野郎共ぉっ! 一気に畳み掛けろぉっ!!」

 

「「「「「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!」」」」」

 

とそこで、空賊達は艦橋の辺りから黒煙を上げている雪風の姿を見て、一気に畳み掛けようと殺到して来る!

 

「敵機! 接近して来ますっ!!」

 

「クッ! 艦長に代わって指揮を執る! 弾幕を張れっ!!」

 

見張り員の報告を聞いた副長が、護に代わって指揮を取り始める。

 

艦橋付近での爆発に動揺して止んでいた対空砲火が再び上がり始める。

 

「怯むなぁ! 正面から行けぇっ! 対空機銃が1門沈黙してるから弾幕が薄いぞっ!!」

 

しかし、艦橋正面の九六式25mm3連装機銃の乗員が倒れて気絶してしまっているので、僅かに空いた弾幕の隙間を縫って、空賊達の飛行艇は雪風へと接近して来る!

 

「駄目です! 敵機、止まりませんっ!!」

 

「クソッ! 誰か! 正面の機銃を!!………」

 

副長が縋る様な思いでそう声を挙げた瞬間!!

 

「!!」

 

弘樹が割れた艦橋の窓から飛び出し、艦橋正面の九六式25mm3連装機銃に着いた!

 

「! 弘樹くん!!」

 

「…………」

 

みほの声が挙がる中、弘樹はジッと照準器を見据え続け、そのレティクルに空賊達の飛行艇が重なるのを待つ。

 

「! そこだっ!!」

 

そしてドンピシャのタイミングで引き金を引き、1機の飛行艇を蜂の巣にした!!

 

「「「「「!? おうわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」」」」」

 

蜂の巣にされた飛行艇の空賊達が悲鳴を挙げながら、海へと突っ込む。

 

「うおっ!? あの野郎っ! コレでも喰らえぇっ!!」

 

それを見たマンマユート団の団長が、怒りを露わに収束手榴弾を投げつける。

 

「! 弘樹くん! 危ないっ!!」

 

「!!」

 

みほが声を挙げた瞬間には、収束手榴弾は弘樹の眼前に迫っていた。

 

………が!

 

収束手榴弾は九六式25mm3連装機銃の防弾板に当たったかと思うと、爆発せずに弾かれ、海へと落ちた。

 

「うん?………」

 

弘樹が訝しげな顔をする。

 

やがて、雪風が少し離れると………

 

漸く収束手榴弾は爆発したのか、雪風の後方で水柱が上がる。

 

「んなっ!?」

 

「何やってんだ、マンマユート!」

 

「火薬の湿気った中古手榴弾でも買ったのか!?」

 

空賊達から、マンマユート団の団長へ罵声が飛ぶ。

 

「う、ウルセェーッ!!」

 

「今度はワシがやってやるわい! それ、投下っ!!」

 

すると、別の空賊の飛行艇から、手投げ式の投下爆弾が投げつけられる。

 

「! 直上より爆弾!!」

 

「! 全速前進!!」

 

弘樹が声を挙げると、副長は雪風を全速前進させて避けようとする。

 

だが、またしても………

 

手投げ式の投下爆弾は、雪風の上空で何故か勝手に爆発!

 

雪風には何の損傷も与えなかった。

 

「アレェッ!?」

 

「テメェこそ何やってやがる!」

 

驚く空賊に、マンマユート団の団長からそう罵声が飛ぶ。

 

「コレは………」

 

一方の雪風の乗組員達も、立て続けの幸運に唖然としていた。

 

「雪風は沈まず………か」

 

そんな中、艦医から手当てを受けていた護がそんな事を呟く。

 

(コレが太平洋戦争で『奇跡の駆逐艦』と言われた雪風の運か………それに加えて………)

 

そこで護は、九六式25mm3連装機銃で敵機の迎撃を続けている弘樹の姿を見やる。

 

(今は『不死身の分隊長』までもが乗艦してるからな………コレは沈む筈が無い)

 

雪風の運と弘樹の不死身っぷりが合わさり、最強に見える………

 

護の心情は正にそれだった。

 

「うわぁっ!? やられたぁっ!!」

 

またも空賊の飛行艇1機が機銃で撃ち抜かれ、錐揉みしながら海へと墜落する。

 

「またやられたぞ! さっきから何だ、このやられっぷりはっ!!」

 

「お頭ーっ! 如何すんですかーっ!!」

 

マンマユート団の団長はその様子を見て苦々しげにそう呟いていたところで、団員の1人がそう尋ねて来る。

 

「こうなりゃ仕方ねえ! 機関銃で蜂の巣にしてやる!! オイ! あの駆逐艦と並行する様に飛べっ!!」

 

「ヘ、ヘイッ!!」

 

マンマユート団の団長から指示が飛び、彼の乗る飛行艇が、一旦雪風から離れて背後に回ったかと思うと、水面スレスレまで降下し、後ろから迫って来る。

 

「! 敵機が後方からっ!!」

 

「! 機銃掃射を行う積りか!? 甲板に居る乗員は艦内へ退避! 急げっ!!」

 

後方の見張りをしていた乗員がそう報告すると、副長は慌ててそう指示を飛ばす。

 

「退避っ! 退避っ!!」

 

雪風の甲板や対空機銃に付いて居た乗員達が、すぐさま艦内へ入ろうと狭い出入口に殺到する。

 

「喰らえぇーっ!」

 

だが、マンマユート団は既に雪風を射程内に納め、飛行艇に搭載されて居たり、手持ちしていた機銃を全て向け、引き金を引こうとする!

 

………その瞬間!!

 

マンマユート団の頭上から多数の弾丸が降り注ぎ、その内の数発がエンジンへと被弾!

 

エンジンが火を噴き、煙を上げて停止する!

 

「!? んなっ!?」

 

墜落する飛行艇の窓から身を乗り出していたマンマユート団の団長が驚きの声を挙げた瞬間!!

 

太陽の中から、真っ赤な『マッキ M.33』に酷似した飛行艇が現れ、空賊達の飛行艇の中へと突っ込んで行く!!

 

「!? 豚だぁっ!!」

 

それを見た空賊の1人がそう声を挙げた瞬間に、真っ赤なマッキ M.33は機銃を発射!

 

その空賊が乗って居た飛行艇が即座に撃破された!

 

「この豚野郎っ!!」

 

と、1機の空賊の飛行艇が、真っ赤なマッキ M.33を追う。

 

だが………

 

宙返りした真っ赤なマッキ M.33を空賊の飛行艇が追ったかと思うと、何時の間にかマッキ M.33が空賊の飛行艇の後ろを取っていた。

 

『捻り込み』である!

 

「!? しまったっ!?」

 

空賊がそう声を挙げた瞬間に、真っ赤なマッキ M.33の機銃弾が、空賊の飛行艇のエンジンを撃ち抜く!

 

「わあああああぁぁぁぁぁーーーーーーっ!?」

 

空賊が悲鳴を挙げながら、空賊の飛行艇は墜落。

 

そのまま真っ赤なマッキ M.33は、空賊達の飛行艇部隊を瞬く間に全て撃墜した。

 

「凄い………」

 

「何と言う操縦技術だ………」

 

その圧倒的なまでのマッキ M.33の強さに、みほと弘樹は空を見上げながらそう呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数十分後………

 

撃墜され、漂流していた空賊達は、駆け付けた海上保安庁と自衛隊によって救助され、そのまま御用となった。

 

現在雪風は、被害が無いかを確認する為、連絡船に横付けしている。

 

「まさかお前達に助けられるとはな………」

 

「ア、アハハ………」

 

「特に何をしたと言うワケではないが………」

 

確認に来た雪風の乗組員の中に居たみほと弘樹に向かって、アンチョビがそう言う。

 

「………まあ、感謝はする………ありがとう」

 

しかし、すぐに視線を反らしながら、2人に向かってそう言った。

 

「ナイス、ツンデレ!」

 

「おお~~! コレが巷で流行中のツンデレっすか!」

 

そんなアンチョビの様子を見たロマーノとペパロニがそう声を挙げる。

 

「喧しい! 誰がツンデレだ!!」

 

途端にアンチョビは怒りを露わにする。

 

「すみません………」

 

「いや、こういう遣り取りには慣れている」

 

そんな様子をカルパッチョが代わる様に謝罪すると、弘樹は気にするなと返す。

 

「感謝する………ところで、あの赤い飛行艇のパイロットは?」

 

と、フォルゴーレがそう返礼すると、真っ赤なマッキ M.33の事について尋ねるが………

 

「若いの………俺に何か用か?」

 

そこで横から非常に渋い声が聞こえて来て、飛行服姿の何処となく豚を思わせる男が現れる。

 

「! 貴方は!?」

 

「! やはり!! 

 

「ポルコさん!!」

 

その男の姿を見た途端に、驚きを露わにするアンチョビ達。

 

「ポルコ?………」

 

「! まさか! 貴方が、嘗て航空機道の飛行艇部門で名を馳せたピッツァ校の伝説のエースパイロットの!?」

 

みほは首を傾げたが、弘樹はその男が元ピッツァ校の生徒で、航空機道の飛行艇部門で名を馳せた伝説のエースパイロットである事に気付く。

 

「昔の話だ………今は只の第一航空専門学校の校長だ。趣味で賞金稼ぎもしてるな」

 

そんな弘樹達に、ポルコと呼ばれた男は吸っていたタバコを灰皿に捨てながら、渋い声でそう返す。

 

「ええっ!? 一航専の!?」

 

「何と………」

 

みほと弘樹は、ポルコと呼ばれた男が六郎やハンネスの通う一航専の校長だと聞いて更に驚く。

 

「お、お会いできて光栄です!」

 

「是非今度! 我が校でご教授を………」

 

「気が向いたらな………」

 

アンチョビやロマーノが緊張しまくりの様子でそう言う中、ポルコと呼ばれた男は連絡船の隣に停めてあった真っ赤なマッキ M.33に乗り込む。

 

「じゃあな、お嬢ちゃん達に若いの。縁が有ったらまた会おう」

 

そしてそう言い残すと、真っ赤なマッキ M.33は離水。

 

翼端から雲を引いて、夕焼けになっていた空に消えて行く。

 

「「「「「「「…………」」」」」」」

 

弘樹とみほ、アンチョビ達………

 

それに雪風は、その雲が消えるまで、ずっと空を見上げていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オマケ

 

最近、アニメ化が切っ掛けで『ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』の漫画を電子書籍で購入したのですが………

 

いや、面白いですね。

 

元々地球舐めんなファンタジー系は好物だったので。

 

で、当然ながら、思った事なんですが………

 

『もしもゲートを、この小説の延長線上の物語にしたとすれば』………

 

などとくだらない事を考えてしまいまして………

 

取り敢えず、ダイジェスト予告風を作ってみましたので、お目汚しにご覧下さい。

 

 

 

 

 

『ゲート異伝 大洗機甲部隊奮戦記』

 

大洗機甲部隊が全国大会で優勝してから数か月後………

 

東京・銀座に出現した異世界への扉『門(ゲート)』

 

そこから出現した『帝国』の軍勢により、多数の死傷者が出た『銀座事件』

 

日本政府はゲートの先に在る異世界『特地』の勢力を交渉の場に引き出す為、自衛隊の派遣を決定する。

 

しかし………

 

開いたゲートは1つではなかった………

 

何と、大洗学園艦の甲板都市にも、ゲートが出現!

 

銀座の悲劇が、大洗学園艦でも繰り広げられ………

 

………る事はなかった。

 

その理由は、ゲートから現れた軍勢が、銀座と比べて遥かに少数だった事。

 

そしてもう1つ………

 

ゲートが出現した場所は、大洗機甲部隊が使用している演習場のど真ん中であり………

 

奇しくも丁度、大洗機甲部隊による演習が行われている真っ最中だった。

 

突如現れた不審な軍勢を、大洗機甲部隊は躊躇せずに総攻撃!

 

航空機部隊の爆撃と機銃掃射。

 

戦車部隊と砲兵部隊の連続砲撃。

 

そして、歩兵部隊の制圧射撃と精密狙撃、銃剣突撃によって、軍勢は瞬く間に制圧された。

 

なお、制圧と称したのは、彼等が使用している武器が戦車道・歩兵道・航空機道の為の物であり、殺傷能力を有していなかった為に相手に多数の死傷者を出した銀座とは異なり、全員を生きたまま拘束したのである。

 

第2のゲートの存在を知った日本政府は、大洗の学園艦を接収しようと試みたが………

 

折角守った学園艦を接収されては堪らないと思った杏と迫信は策略と謀略を巡らせ………

 

何と、学生による学園艦の自治権を盾に、日本政府から第2のゲートの管理並びに独自調査を任されたのである。

 

他国の陰謀も、迫信が神大コーポレーションを通じた圧力と買収で黙らせ、大洗機甲部隊は協力校である第一航空専門学校、呉造船工業学校………

 

更には、先の全国大会で砲火を交えた学園艦の学校の部隊と同盟を築き………

 

学生による一大戦闘部隊………

 

『学生連合軍』、通称『学連軍』を結成!

 

日本政府・自衛隊とは別に、特地の調査を開始したのだった………

 

 

 

 

 

「まさか異世界に来て戦う事になるなんて………」

 

「心配するな、みほくん。例え何処であろうと、君と君が乗る戦車は小官が守る」

 

「弘樹くん………」

 

「相変わらず、お熱いね。あの2人」

 

「みほ………ううう………」

 

変わらぬ絆を見せる弘樹とみほに、そんな2人を見守る都草と複雑な心中のまほ。

 

 

 

 

 

「報告。調査中に敵小規模部隊と交戦。全員捕虜にしました」

 

「またか。いい加減収容所がパンクしちまうぞ」

 

「俺達の武器には殺傷能力が無いからな。敵と交戦すれば、必然的に相手は皆捕虜として生捕る事になっちまう」

 

「でも、流石にコレ以上は面倒見切れんぞ」

 

殺傷能力を持たない武器での交戦の為、増え続ける捕虜。

 

そんな中で、みほは有る大胆な思い付きをする。

 

「………捕虜の人達にも私達に協力してくれるよう、説得してみましょう」

 

 

 

 

 

ヒト種は兎も角、亜人種は帝国の政策により虐げられていた事もあり、高待遇をしてくれた学連軍に恭順。

 

学連軍は亜人の部隊をも取り込んだ一大勢力と化す。

 

更に、異世界でも変わらぬ活躍ぶりから、みほは『軍神』、弘樹は『戦神』として亜人達より崇め奉られる。

 

「軍神・西住 みほ様! 我々をお導き下さい!!」

 

「戦神・舩坂 弘樹様! 我々に勝利を!!」

 

「え、え~と………」

 

「小官は神と言う柄じゃない………」

 

 

 

 

 

「貴方が銀座事件の英雄『伊丹 耀司』二等陸尉ですか。お会い出来て光栄です」

 

「いや、そんな英雄だなんて………それを言ったら、『不死身の分隊長』って言われてる君の方が凄いんじゃない?」

 

「御謙遜を………小官がやっている事は飽く迄『武道』………貴方達の様に国防を担うものではありません」

 

時には自衛隊とも協力。

 

特地の調査と、帝国と日本との交渉を進めて行く。

 

 

 

 

 

だが、そんな中………

 

帝国の皇帝モルトの長男・ゾルザルによるクーデターが発生。

 

水面下で交渉を進めていた帝国の講和派を捕らえた彼は、暴君となりて自衛隊と学連軍に戦いを挑む。

 

如何やったかは不明であるが、特地で災害とまで言われている『炎龍』を味方に付け、自衛隊をも苦戦させるゾルザル。

 

「最早俺は皇帝などではない! 神だ! この世界の頂点に君臨する神となったのだぁっ!!」

 

だが、彼は自分が犯した最大の過ちに気付いていなかった………

 

ゾルザルが犯した最大の過ち………

 

それは………

 

「例え神にでも、小官は従わない」

 

『ヤツ(舩坂 弘樹)』を敵に回した事だ!!

 

 

 

 

 

 

 

………こんな感じですかね。

 

結局最後はボトムズでむせるです。




新話、投稿させていただきました。

弘樹とみほの前に現れた雪風に乗る人物………
それは弘樹の中学時代の先輩で、軍艦道の履修者『新代 護』だった。

護の雪風に送られて学園艦へと戻る弘樹とみほだったが………
その途中で空賊に襲われているアンツィオ&ピッツァ校の連絡船に遭遇。
雪風は即座に救援に向かう。
護が負傷しながらも、弘樹の助力と雪風の運、そして現れた一航専の校長の助太刀もあって、如何にか空賊を退けたのだった。

前回予告したスペシャルゲスト!
アドリア海のエースにお越しいただきました!
彼の乗る機は原作設定ではサボイアですが、形状的にはマッキなので、そっちであるとさせていただきました。
御了承下さい。

オマケはゲート見てハマった為の妄想です。
重ねてお目汚し、失礼しました。

来週は予告通り、2回目の紹介します!をやります。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。