ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース 作:宇宙刑事ブルーノア
『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』
第102話『次の試合に向けてです!』
大洗学園艦の甲板都市で幅を利かせていた愚連隊を、警察と協力し排除した大洗機甲部隊。
そんな中で………
愚連隊の頭であった『飛鳥 隆太』と弘樹が、紆余曲折あり、決闘を行う事に………
拳にて語り合った両者の間には、やがては絆の様なモノが芽生える………
そして、決闘は弘樹の勝利に終わり………
飛鳥 隆太は、その弘樹の推薦で大洗国際男子校へと編入。
大洗歩兵部隊へ参加する事となったのだった。
大洗学園艦・甲板都市………
大洗女子学園・戦車格納庫内………
演習を終えた大洗機甲部隊のメンバーが、格納庫内へと入って来る。
「お疲れーっ!」
「ああ~、今日もキツかったなぁ~」
「けど、次の試合まではもうすぐなんだ。気合入れてかないとな」
武器や装備を外しながら、そんな事を言い合う大洗歩兵部隊の面々。
「飛鳥! 今日はお前、大活躍だったじゃないか!」
「い、いえ、そんな事は………」
「謙遜するな。今日の演習のMVPは間違いなくお前だ」
「あ、ありがとうございます………」
弦一郎と大詔からそう言われて、隆太は恐縮している様な様子を見せる。
あの決闘騒動の後、大洗男子校へと編入し、歩兵部隊のキツネさん分隊へと配属になった隆太。
弘樹が説明した通り、他の部隊員達は戦車チームを含めて納得済みであり、隆太自身も積極的に部隊に貢献しようとした為、馴染むのには時間が掛からなかった。
何より、彼に好印象を与えているのが………
「隆太」
「あ、『兄さん』」
やってきた弘樹の事を、隆太がそう呼ぶ。
拳で殴り合った仲故か、隆太は弘樹に対し尊敬の様な念を抱く様になり、前述の通り、または『アニキ』と呼ぶ様になっていた。
弘樹自身も「好きにしろ」と言って咎めたりはしなかったが、そのポジションは完全に舎弟のソレである。
「ええ舎弟が手に入ったやないけ、弘樹」
「そんな積りは無い………」
大河が肩を組みながらそう言って来るが、弘樹はやんわりと否定する。
「オーイッ! すまないが、誰か薬莢を出すのを手伝ってくれないかーっ!?」
とそこで、Ⅲ突の整備に入っていたカバさんチームの中で、カエサルがそう声を挙げる。
「あ! 俺やります!」
すると、隆太がそう言って駆け出し、Ⅲ突の車体の上に登る。
しかし、急いでいたのか、ハッチの有る戦闘室の上に登ろうとして足を滑らせる。
「!? うおわっ!?」
「ぜよっ!?」
そのまま三突の横へと落ち、偶々そこに居たおりょうを巻き込む!
「おりょう!?」
「隆太、大丈夫か!?」
エルヴィンが声を挙げ、弘樹が思わず近づいて来る。
「イテテテ………しくじったぁ………ん?」
左手で頭を押さえながら隆太が起き上がると、右手が何か柔らかい物を掴んでいる事に気付く。
「何だ、コレ? 柔らかい………」
思わず隆太がその柔らかい物を揉みしだくと………
「………何処を触ってるぜよ」
隆太に押し倒される形となっていたおりょうが、真っ赤な顔に涙目でそう訴えて来る。
隆太が揉みしだいていたのは、おりょうの豊満なバストだった。
「!??!」
慌てておりょうから飛び退く隆太。
「い、いや、あの! コレはその!」
と、隆太がテンパりながら何かを言おうとしたところ………
その首筋に、日本刀の刃が押し当てられた。
「!?」
「腹を切れ。介錯はしてやる」
仰天する隆太に向かって、日本刀の刃を突き付けている左衛門佐がそう言い放つ。
「これより軍事法廷を開く! 死刑! 以上っ!!」
何時の間にか用意されていた裁判官が座る席に付いて居たエルヴィンが、ガベルを叩いて一方的にそう宣告する。
「えええっ!? ちょっと、待って………!? ガッ!?」
尚も訴えようとしたところ、背中に衝撃を感じる隆太。
「ブルータス、お前もか………」
それは、隆太の背にナイフを突き刺しているカエサルのものだった。
「それ………アンタが言うの?………」
そう言い残して、隆太はどさりと倒れる。
「むっ? やり過ぎたか?」
倒れた隆太を見下ろしながら、カエサルはマジックナイフの刃の部分を引っ込めたり出したりしながら遊ぶ。
「ぬうう~~~っ! ラッキースケベめぇっ!!」
「何を羨ましがってるんですか、了平」
そんな隆太の事を羨ましげな目で見ている了平に、楓のツッコミが入る。
「………やれやれ」
そんな一連の流れを見ていた弘樹は、そう呟いたのだった。
◇
その翌日………
大洗学園艦はとある港町に寄港………
この町には、歩兵道用の大型ガンショップがあり、次の試合に向けて新たな武器と消耗した弾薬の調達を試みたのである。
大洗歩兵部隊のメンバーと整備部の面々、それに興味を持ったあんこうチームの面々が同行。
武器・弾薬を調達すると、一部のメンバーがガンショップに設置されていた射撃場で、射撃訓練を開始するのだった。
ガンショップ・射撃場………
「…………」
射撃ブースに立ち、離れた場所に在る人を象ったターゲットに、四式自動小銃の弾丸を次々に撃ち込んで行く弘樹。
放たれた弾丸は全て、1撃で戦死判定を狙える急所部分に直撃している。
「凄~いっ!」
「流石は舩坂殿! 見事な射撃の腕です!」
それを見ていた沙織と優花里が、そう感嘆の声を挙げる。
「…………」
みほも、射撃を行っている弘樹の姿に見惚れている。
「お嬢ちゃん達も撃ってみるかい?」
するとそこで、ガンショップのオーナーが、幾つかの銃を持って現れ、みほ達にそう言って来た。
「!? ええっ!?」
「私達が………ですか?」
突然そんな話を振られ、沙織と華が戸惑いの声を挙げる。
「遠慮は要らねえよ。可愛い子にはサービスしとくぜ。ホラ、好きなモンを選びな」
オーナーは笑いながらそう言うと、みほ達に持って来ていた銃を差し出す。
「如何するんだ?………」
「私! 撃ってみたいです!!」
麻子がそう言うと、優花里がノリノリでそう声を挙げる。
「………そうだね。ちょっとやってみようか?」
と、興味が湧いたのか、みほがそう言う。
その言葉で、あんこうチームの面々は、其々に思い思いの銃を取り、射撃ブースへと向かったのだった………
「キャアッ!?」
デリンジャーを撃った沙織が、反動で尻餅を着く。
勿論、弾は見当違いな方向に飛び、天井に当たる。
「いった~いっ!」
強かに打ち付けた尻を摩りながらそう言う沙織。
「やれやれ………何をやってるんだか………」
そんな沙織の姿を見た麻子がそう呟く。
「だって凄い衝撃だったんだもん! 麻子もやってみなよ!」
「良いだろう………」
と、沙織がそう言い返すと、今度は麻子が射撃ブースに立つ。
「ん………」
そして、二十六年式拳銃をターゲットに向けて構える。
「…………」
しっかりと照準を合わせると、引き金に指を掛け、思いっきり引く麻子。
と、途端に麻子の両腕は反動で背中側にまで仰け反り、それに引っ張られる様に身体まで仰け反って後頭部から床の上に落ちた!
「!?~~~~~~っ!?」
余りの痛みに、麻子は後頭部を抑えて転がって悶える。
「麻子、大丈夫っ!?」
慌てて駆け寄って介抱する沙織。
「銃は………危険だ」
麻子は涙目で訴える様にそう言うのだった。
「おお~~………コレがボーチャードピストル………」
一方、その隣のブースでは、優花里が世界初の自動拳銃・ボーチャードピストルを見てうっとりとしていた。
レア物な銃に見惚れており、射撃する事を忘れている。
「…………」
そして、更にその隣のブースでは、華が九七式狙撃銃を構え、スコープ越しにターゲットを見据えている。
「…………」
相当集中している様であり、見ている方が緊張感を感じる雰囲気を出している。
「………!!」
やがて何かのタイミングが合ったかの様に引き金を引いた!
放たれた三八年式実包が、人型ターゲットの頭の中心を撃ち抜く!
「アラァ………隣の的に当たってしまいました」
しかし、華がそう言った様に、命中したのは華が居る隣の射撃ブースの的だった。
「やっぱり、砲撃の様に上手くは行きませんねぇ~」
頭部分に穴が空いた隣の的を見ながら、溜息混じりにそう言う華。
「くうっ!………」
そんな中、ワルサーP38を構えたみほが、次々と弾をターゲットに向かって撃ちこんでいる。
だが、その全ては的に当たっているだけであり、致命傷になる様な場所には1発も当たって居ない。
「あう~、全然駄目だぁ~………」
「射撃は反復練習があってこそだからな。いきなり撃ってそう上手く当たるものではない」
みほがガッカリしていると、撃ち終えた弘樹がやって来てそう言う。
「あ、弘樹くん………」
「それに構え方も少し悪いな。良いか………」
するとそこで、弘樹はみほの腕を掴んだ。
「!??!」
「先ず、脇は締めてだな………」
みほが動揺しているのにも気づかず、そしてそのまま文字通り手取り足取りをしてみほに正しい射撃姿勢を取らせて行く。
「で、構えたら的を良く見据える」
更に最後には、二人羽織の様に背後からくっ付いて銃身を的の方へと向けさせる。
「!?!?!?!?!」
最早みほは完全にテンパり状態である。
「この距離なら両目とも開けておいて構わん。それから………」
(アワワワワワッ! ひ、弘樹くんと、み、密着~っ!?)
既に弘樹の説明の言葉も耳に入っていない。
「うわ~、弘樹くんったら大胆………」
「アレは気づいてないだけだと思うぞ………」
「みほさん、すっかり慌ててますね………」
「西住殿! お気を確かに!!」
そんなみほの姿を見て、沙織、麻子、華、優花里はそんなコメントをする。
と………
「こんな場所でイチャつくたぁ、流石に今年度最大のダークホース校は違うね~」
何処か小馬鹿にする様な台詞が聞こえて来た。
「!?」
「?………」
「「「「??………」」」」
それを聞いたみほが慌てて弘樹から離れ、弘樹と沙織達は、その声が聞こえた方向を見やる。
そこには、弘樹達と同い年くらいと思われる、西部劇の様な恰好の男子の姿が在った。
「それとそっちのお嬢ちゃん達も、撃ち方がなっちゃいないよ。てんで駄目だ」
男子は沙織達の射撃の様子を見ていたのか、今度は沙織達に向かってそう言う。
「何、その言い方!」
「例え本当の事でも、失礼じゃありませんか!」
あからさまにバカにしている様な言い方に、沙織達は文句を言う。
「銃の発展は大昔から来てるが、そのテクニックは、開拓時代に完成した」
すると今度はそう言う台詞が聞こえて来て、テンガロンハットを被っている、これまた飄々としたガンマン風の男が現れた。
テンガロンハットの男はそのまま、空いていた射撃ブースの立つ。
その次の瞬間!
腰にぶら下がっていたホルスターから、M1917リボルバーをクイックドロウよろしく素早く抜き取ったかと思うと、ターゲットに向かって一瞬で6発全弾発射した!
弾丸は全てターゲットの中心を撃ち抜いており、百発百中だった。
「「「「…………」」」」
「す、凄い………」
「ふふん………」
余りの射撃能力に、唖然とする沙織を見て、最初に声を掛けて来た男子は、得意げな顔をする。
「見ただろう? こいつの腕前を。なぁ、『ジャンゴ』!」
「ふっ………ならお前も見せてやれ、『レオパルド』………」
ジャンゴと呼ばれたテンガロンハットの男はM1917リボルバーの銃口から上がっていた硝煙を吹き消すとホルスターに納め、レオパルドと呼ばれた飄々とした男子に向かってそう言う。
「おうよ」
レオパルドと呼ばれた男子はライフルを取り出す。
すると殆ど息つく暇もなく2連射し、ターゲットの頭と身体の中心を連続で貫いた。
「「「「「!!」」」」」
「本当に見事なものだよ………山猫の名に恥じぬ実力だ………」
みほ達が驚いていたところにまた別の客が現れた。
ベレー帽をかぶっている男である。
男は腰のホルスターからコルト・シングル・アクション・アーミー、通称ピースメーカーを引き抜くと、銃を回転させるガンスピンを披露する。
「「「「おお~~~…………」」」」
見事なガンスピンに、みほ達は思わず感嘆の声を漏らす。
「俺の名は『オセロット』………またの名を、『リボルバー・オセロット』」
男………『オセロット』はそう名乗った瞬間!!
その場でグルリと回転し、ピースメーカーをしっかりと握り締めて、弘樹へと向けた!!
「「「「!?」」」」
「弘樹くん!!………」
「フッ………」
みほが悲鳴の様な声を挙げた瞬間、オセロットは発砲!
発射された弾丸が、弘樹の脇や股下、顔の横など掻い潜ったかと思うと、射撃場の壁に命中して何度も何度も跳弾し、最後はターゲットの股間部分を貫いた。
「「「「「「「「「「うっ!!………」」」」」」」」」」
大洗歩兵部隊のメンバーは、その光景を見て、思わず股間を抑える。
「…………」
一方の弘樹は、弾丸が至近距離を通過したにも関わらず、身動ぎどころか表情1つ変えていない。
「山猫は獲物を決して逃さない………これが我々のポリシーだ………」
「大した大道芸だな………」
誇らしげにそう語るオセロットに、弘樹は冷めた様子でそう言い放つ。
「射撃の腕を見せたとはいえ、男にとっての大切な場所を撃つのは気持ちが良いものではないな………」
「だったらやるなよな………」
そう言うオセロットに、大洗歩兵部隊員がそうツッコミを入れる。
オセロットはピースメーカーをガンスピンさせながら、弘樹達を見やる。
そして、スピンを止めると………。
「………お前達の学園には蛇と名の付く男が居るそうだな」
「俺がなんだって?」
オセロットがそう言うと、その後ろに、大詔が現れた。
「フッ………」
オセロットは振り向かず、ニヤリと笑う
そしてゆっくりと振り向きながら、表情を戻し、大詔を向き合う。
「お前があの蛇野………か?」
「あのか如何かは知らんが、俺は確かに蛇野だ。それが如何なんだ?」
「いやいや、鬼に見つからずに良くかくれんぼに勝利したものだな」
「何だと?」
それを聞いた大詔は、眉をピクリとさせる。
「君の家系の話も聞いた事がある。代々潜入工作員の家系だそうだな………しかし、君の祖父は所詮、隠れる事しか出来ない弱虫野郎だ………何の理由で大会に出たのかは知らないが、伝統だけは汚さないでもらおう………」
「弱虫だと?………」
「別の学園艦の調査を行う事しか出来ない君には、この大会と言う世界での実力というモノとは次元が違うのだよ………目的は金か? 名声か?」
「…………」
「まあ、所詮はそんなもんだろう。君の学校にはチートなバカ共が多いが、我々は違う。常に辛い訓練で力を蓄え、体を鍛え、技を磨きつつ、大会に出場し、その成果を試した。そしてその瞬間、今までの辛さが報われ我々は、勝利を喜び合うんだ。君達みたいな最初からチートで他の学園を簡単に負かしてしまうようでは、本当の強さには辿り着けないさ。特に君の様に他の学園を調べなければ勝てない………いや、あの伝説の英霊や死神、魔王、西住流、そしてフェンリルに助けられなければ勝てない弱小校ではな………」
「それ以上………」
「もう良いだろオセロット………コレ以上は規則に引っ掛かるぜ」
大詔が何か言おうとした瞬間に、ジャンゴがそう言ってオセロットを止める。
「もう帰ろうぜ。教官にどやされちまうぜ」
「フン………山猫は雑食だ、何でも喰える。何れ我々と戦えばお前達は獲物と化すのだ………」
ジャンゴを筆頭に、レオパルドとオセロットは帰ろうとする。
と………
「………待て」
「何だい? かくれんぼでも教えてくれるのかい? 臆病者の蛇め………」
「どうもお前は………俺が只のかくれんぼのマニアとでも言いたい様だな?」
「犬が西向けば尾は東、そんな事は当たり前だ………だいたい先程のプラウダ&ツァーリ戦では、コレと言った活躍もしてないではないか。いや、今までも、か………」
「………どうもお前は2つの根本的な誤解をしている様だ」
「………何だと?」
大詔にそう言われて、オセロットの表情が変わる。
「まず1つ………大洗は弱小でもチートが無くては勝てない弱虫などではない。2つ………お前は相手を見縊り過ぎている………」
そう言いながら、蛇野はM1911Aを構えると、素早く発砲した。
するとオセロットのベレー帽が宙に舞った!
「!?」
驚くオセロット。
「俺達は大洗に勝利を貢献する為にずっとずっと頑張ってきた………貴様なぞに、俺達の学園を侮辱する資格は無い!」
「………ふん、言ってくれるじゃないか」
と、オセロットがそう言った瞬間………
「………落ちましたよ」
何時の間にかその横に立っていた弘樹が、大詔が撃ち落としたオセロットのベレー帽を差し出した。
(!? 何時の間に!?)
全く気付かないままキルゾーンに入れられていたオセロットは一瞬動揺する。
「チッ!………君がそこまで言うのだったら、次の対戦相手………『黄金スフィンクス男子高等学園』と『聖クレオパトラ女学院高校』の『クレオパトラ&スフィンクス機甲部隊』との試合で示してみせろ、貴様が弱虫でない証拠。そして君達学園がどこまで太刀打ち出来るかをな………」
オセロットは舌打ちをしながら、ベレー帽を引っ手繰る様に受け取り、大詔にそう言い放つ。
「………良いだろう」
「あ~、言っとくけど、戦場場所が砂漠でない事を祈った方が良いよ。それじゃな」
オセロットと蛇野が睨み合うと、レオパルドが付け加えるかのようにそう忠告すると、3人はそのまま帰って行った。
「テンガロンハットに滑車付きブーツ………間違いありません! 強豪校として、マカロニウェスタンで名高い、学園艦ワイルドキャットの西部学園の生徒達です!」
「強豪校って、強い?」
「私も聞いた事ある。西部学園の歩兵はリボルバーの扱い方に長けていて、戦車部隊も自動装填装置が付いてるんじゃないかってぐらい早打ちが得意だって………」
みほ達は西部校に対し戦慄を覚え始める。
「もし、このまま行けば、次の次の試合でそこと当たるワケか………」
と、何時の間にか対戦表を取り出していた弘樹が、組み合わせを確認してそう言う。
「マジかよ………」
「心配している場合か。先ず我々が考えなければならないのは、次のクレオパトラ&スフィンクス機甲部隊だ」
絶望する様な呟きを漏らす了平に、弘樹はそう言い放つ。
「西部学園の方達が言っていた通り、クレオパトラ&スフィンクス機甲部隊は砂漠戦を得意としています。もし砂漠でのフィールドで試合になんて事になったら………」
「…………」
優花里がそう言うと、みほも懸念するかの様な表情を見せるのだった………
◇
その後………
一通りの試射と射撃訓練を終えた大洗歩兵部隊は、あんこうチームと共に学園艦への帰路に着いた。
しかし、その途中………
「あの、すみません………」
「? 何でしょう?」
弘樹が風呂敷包みを担いだお婆さんに声を掛けられた。
「この場所へ行きたいのですが、如何行けば良いでしょうか?」
そう言うとお婆さんは地図が描かれたメモを弘樹に見せる。
「この場所は………」
「さっきまで居たガンショップの近くだね………」
その地図を見た弘樹と、それを覗き込んで来たみほが、それに掛かれている場所が、先程まで居たガンショップの近くである事に気付く。
「………お送りしましょう」
弘樹は少し考える様な素振りを見せた後にそう言う。
「いえ、そんな。道だけ教えて頂ければ………」
「遠慮なさらないで下さい。さ、どうぞ」
遠慮するお婆さんの前に弘樹は背を向けて屈み込み、背中に乗る様に促す。
「………すみません」
「いえ、当然の事です」
お婆さんが遠慮しながら背に乗ると、弘樹はお婆さんをおんぶして立ち上がる。
「では、しっかりと掴まっていて下さい」
「あ、弘樹くん。私も付き合うよ」
と、弘樹が歩き出すと、みほが付いて来る。
「いや、小官1人で十分なんだが………」
「気にしないで。私が付いて行きたいだけだから」
「………分かった。スマンが先に戻って居てくれ」
他の歩兵部隊やあんこうチームの面々にそう言い、弘樹とみほは、お婆さんを目的地に送りに行くのだった。
「みぽり~ん! 舩坂く~ん! 出航の時間には遅れない様にね~!!」
去り際に沙織がそう呼び掛け、2人は手を振って答える。
しかし、その後………
簡単に済むと思っていた目的地探しは思いのほか難航。
途中で放り出すワケにも行かず、弘樹とみほはお婆さんの目的地を必死に捜索。
その結果………
学園艦の出航時間を、大幅にオーバーしてしまったのだった………
港………
「やっぱり、もう出航しちゃったみたいだね………」
大洗の学園艦が港に無いのを見て、みほがそう呟く。
「すまない、みほくん。小官が手間取ったばかりに………」
「ううん、そんな! 弘樹くんのせいじゃないよ!」
責任を感じて謝る弘樹に、みほはそう言う。
「しかし、こうなると、連絡船を待つしか………」
「そこのお熱い御2人さん! 良かったら乗ってくかい?」
と、弘樹がそう呟いた瞬間、そんな声が聞こえて来た。
「!? ふええっ!?」
「!? この声は!?」
カップルとしてからかわれた事に動揺するみほと、その声を聴いて驚きを露わにする弘樹。
その声が聞こえて来た方向には、入港している1隻の艦船………
旧大日本帝国海軍所属・陽炎型駆逐艦の8番艦………
太平洋戦争初戦から終戦まで主要な海戦に参加し続けながらも、小破以上の損傷を受ける事無く、数々の戦果を挙げた、類稀なる幸運の不沈艦………
『雪風』の姿が在った。
「久しぶりだな、弘樹。噂は聞いているぞ」
「! 新代先輩!」
その艦橋横の甲板に立っていた海軍将校の服を着た人物が、弘樹に向かってそう言い、弘樹はヤマト式敬礼をするのだった。
つづく
新話、投稿させていただきました。
早速大洗機甲部隊に馴染んでいる隆太。
ラッキースケベイベントなんて起こしちゃって(笑)
そして出て来た新たな学校………
西部学園のキャラ達。
何と、MGSの名物キャラ、オセロットがそのまま登場です。
最も性格にはこの世界のオセロットといったところですが………
学園艦の出航に乗り遅れてしまった弘樹とみほ。
そこに現れた、駆逐艦・雪風に乗る弘樹が新代先輩と呼ぶ人物。
果たして何者か?
次回もまた、大物ゲストが出演します。
次回の話の次に、2度目の紹介します!を予定しています。
では、ご意見・ご感想をお待ちしております。