ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第101話『不死身の分隊長です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第101話『不死身の分隊長です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗学園艦の甲板都市にて勢力を拡大していた愚連隊を排除する為………

 

警察の機動隊と協力し、愚連隊の各拠点の制圧に乗り出した大洗機甲部隊。

 

作戦が順調に進む中………

 

愚連隊の頭が居ると思われる拠点へと乗り込んだとらさん分隊の内、弘樹が………

 

遂に頭である『飛鳥 隆太』と対峙する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗学園艦・甲板都市………

 

愚連隊のリーダーが居る拠点・廃工場の敷地内にて………

 

「こちらあんこうチーム! 舩坂分隊長、応答して下さい! 繰り返します! こちらあんこうチーム! 舩坂分隊長、応答して下さい!」

 

機動隊の装甲車等と共に廃工場の外で待機していたⅣ号の中で、沙織が通信機を弄りながら弘樹へと通信を送っている。

 

しかし、通信機からはノイズが返って来るだけである。

 

「駄目。やっぱり連絡が取れないよ」

 

「何かあったのでしょうか?」

 

「アイツに限ってチンピラ如きにやられたなんてのは考え難いがな………」

 

沙織がそう言うと、華と麻子がそんな事を口にする。

 

「…………」

 

「あ、あの、西住殿………」

 

そんな中、冷静な表情のままで居たみほに、優花里がオズオズと声を掛ける。

 

「大丈夫だよ、優花里さん。弘樹くんならきっと無事だよ」

 

するとみほは、そんな優花里にそう返した。

 

その目には、一片の疑いの色も無い。

 

「ハ、ハイ………」

 

そう言われて、優花里は黙り込む。

 

(………信じてるよ、弘樹君)

 

みほはそう思いながら、ペリスコープ越しに未だに銃撃音が鳴り響いている廃工場を見据えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

その弘樹は………

 

廃工場の地下・機材整備用のフロアに在った1室………

 

「…………」

 

「ヘヘヘへ………」

 

弘樹に一〇〇式機関短銃を突き付けられながらも、部屋の内部の中心に在った木箱の上に寝そべった姿勢のまま、愉快そうな笑みを浮かべている飛鳥 隆太。

 

「観念しろ………間も無く上の連中の制圧も終わる………お前達の負けだ」

 

そんな隆太に細心の注意を払いながら、弘樹は降伏を促す。

 

「へっ………そしたら、また新しい愚連隊を作るまでさ」

 

しかし隆太は平然とそう言い放つ。

 

「そんな事が出来ると思っているのか?」

 

「出来るさ。俺の………『力』さえ有ればな」

 

そう言って拳をグッと握って見せる隆太。

 

「(『力』に固執しているのか?)力で何もかも解決出来ると思ったら大間違いだぞ」

 

「いいや、出来るね。結局人は強い力に従う………力が有れば何でも出来る。力こそが強さだ!」

 

そこで隆太は初めて身を起こし、木箱に腰掛ける姿勢になる。

 

「………未熟者め」

 

「何だと?」

 

そう言った弘樹を、隆太は睨み付ける。

 

「お前の力には心が無い………心無き力は強さに在らず………寧ろ力ですらもない」

 

「知った様な口を聞くなぁっ!! もういい! お前倒すぜ、良いよな? 答えは聞かねえけどなっ!」

 

とそこで、隆太は弘樹に突撃する。

 

「!!」

 

すぐさま一〇〇式機関短銃の引き金を引こうとした弘樹だったが………

 

「セアアッ!!」

 

隆太は弘樹の眼前で両手を地面に着いたかと思うと、そのまま逆立ちをした状態で回し蹴りを繰り出して来た!

 

「!?」

 

思わぬ攻撃に、弘樹は一〇〇式機関短銃を蹴り弾かれる!

 

「セエエイッ!!」

 

すかさず隆太は、今度は身体を回転させながら鞭の様に撓らせた足での蹴りを繰り出して来る!

 

「!!」

 

素早く反応して防御する弘樹だったが………

 

「そらそらそらぁっ!!」

 

隆太は2撃目、3撃目と連続で蹴りを繰り出して来る!

 

「?!」

 

コレはマズイと思った弘樹は、蹴りと蹴りの僅かの間を読み、一旦隆太から距離を取った。

 

「………奇怪な技を使うな」

 

「カポエイラにブレイクダンスを混ぜた自己流さ………けど、手並みは保障するぜ」

 

弘樹の言葉に、本当にダンスでも踊っている積りなのか、ステップを踏みながらそう返す隆太。

 

「セヤアアッ!!」

 

と、その次の瞬間には、フォーリャの様な蹴りを繰り出して来る!

 

「!!」

 

咄嗟に身を仰け反らせてかわす弘樹。

 

「甘いっ!」

 

だが、空かさずに隆太は、ヘッドスタンドの様な姿勢から、右足を振り下ろして、浴びせる様に蹴りを繰り出す。

 

「!!」

 

間一髪で降り注いで来た蹴りを受け止める弘樹。

 

「そらあっ!?」

 

「むっ!?」

 

しかしその瞬間に、隆太は身体をスピンさせ、足を掴んだままだった弘樹を投げ飛ばす!

 

「ガハッ!?………」

 

背中から強かに床に叩き付けられ、一瞬肺の空気が無くなる弘樹。

 

「! セエエイッ!!」

 

だが、すぐに持ち直したかと思うと、まだ床に寝そべったままだった隆太に向かって正拳突きを繰り出す。

 

「おっとっ!」

 

隆太は弘樹の正拳突きを、床の上を転がって避ける。

 

「そうらっ!!」

 

そして、起き上がろとして繰り出したウィンドミルの勢いで、またも蹴りを繰り出す。

 

「ッ!!」

 

ガードして如何にか防ぐ弘樹だったが、ガードした両腕に若干の痺れが残る。

 

(強い………予想以上だ………コイツならば………)

 

隆太の強さを実感しながら、弘樹はとある事を思いやる。

 

「何ボーッとしてやがる! まだ勝負は終わってないぜっ!!」

 

とそこで、隆太がそう叫び、側転しながら繰り出す蹴り、アウー セン マォンを見舞って来る。

 

「!!………」

 

すると弘樹は、両腕を肘を曲げて腰の辺りに構え、両足を踏ん張って軽く中腰になり、全身に力を込めた!

 

隆太のアウー セン マォンの蹴りが、その弘樹の肩へと命中!

 

しかし!!

 

「!? がっ!?(何だっ!? まるで岩を蹴ったみたいだっ!?)」

 

まるで岩でも蹴ったかの様な衝撃が足に返って来て、隆太の顔が驚きと痛みで歪む!

 

「!!」

 

その瞬間に、今度は弘樹は再び隆太の足を掴む!

 

「!? しまっ………」

 

「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!」

 

空かさず弘樹は、渾身の力で隆太を壁目掛けて投げ飛ばす!

 

「! ガハッ!?」

 

壁に顔と身体を強かに打ち付け、一瞬張り付いたかと思うと、そのままずり落ちる隆太。

 

「この、野郎………!?」

 

顔を抑えながら振り返った隆太が見たのは、飛び蹴りを繰り出して来ている弘樹の姿だった。

 

「セイヤーッ!!」

 

「うおわっ!?」

 

咄嗟に横に転がる様にしてかわす隆太だったが………

 

「逃がさんっ!!」

 

何と弘樹は飛び蹴りが壁に命中すると、そのまま蹴りの反動で三角跳びし、回避した隆太の方に跳ぶ。

 

「!? んなっ!?」

 

「むんっ!」

 

驚く隆太の顎に、空中回し蹴りをヒットさせる。

 

「ガハッ!?」

 

カンフー映画宜しく、ツイスト回転しながら床に叩き付けられる様に倒れる隆太。

 

「グッ! テメェッ!!………!? ととっ!?」

 

すぐに起き上がり、弘樹に向かって行こうとした隆太だったが、視界がグニャリと歪み、足がフラつく。

 

「無理をするな。脳を揺らす様に蹴った。暫くは真面に動けんだろう」

 

そう言いながらも、油断なく構えを取っている弘樹。

 

「このぉっ! 舐める、なぁっ!!」

 

しかし隆太は怒声を挙げると、シャペウ ジ コウロを繰り出す。

 

だが、その動きにキレはなかった。

 

「むんっ!」

 

「ガハッ!?」

 

アッサリとその蹴りを受け止められると、カウンターの正拳突きを真面に喰らう。

 

「ゲホッ!」

 

「もうその辺にしておけ。お前はまだ若い………真面目に更生すれば、きっとやり直せる」

 

再び倒れた隆太に向かって、弘樹はそう言い放つ。

 

「………やり直したところで………俺には………俺には………」

 

しかし、隆太はそう言うと無理矢理に立ち上がろうとする。

 

「…………」

 

そんな隆太の姿を見て、弘樹は何かを考える様な素振りを見せる。

 

「オーイ、弘樹ーっ!!」

 

「何処行ったんだよーっ!」

 

「舩坂さ~ん! 無事ですか~!?」

 

するとそこで、弘樹が入って来た扉の方から、地市、了平、楓の声が聞こえて来る。

 

「む?………」

 

「! クソッ! 仲間が来やがったのか!!」

 

漸く立ち上がった隆太がそう悪態を吐く。

 

と………

 

「………行け」

 

「!? 何っ!?」

 

弘樹からの言葉に、隆太が驚く。

 

「行け。3日後に演習場に来い。そこでケリを着けよう」

 

「如何言う積りだ!?」

 

弘樹の意図が読めず、隆太は困惑した様子を見せながらも怒鳴る。

 

「………お前とはとことんやり合わなければならない。そんな気がするだけだ」

 

仏頂面でそう返す弘樹。

 

「…………」

 

「早くしろ。もうすぐアイツ等が来る」

 

「………クソッ!!」

 

隆太は最後に舌打ちをすると、弘樹が入って来た方向とは逆側に在ったドアから姿を消す。

 

「…………」

 

その姿を黙って見送る弘樹。

 

「おお! 此処に居たのか!?」

 

「オイオイ、探したぜ」

 

「何があったんですか?」

 

直後に、弘樹が入って来たドアから、地市、了平、楓が姿を見せる。

 

「ん? ボロボロじゃねえか? 誰かと戦ったのか?」

 

「まさか………飛鳥 隆太と?」

 

とそこで、弘樹の姿が若干ボロボロになっているのを見て、地市と了平がそう言う。

 

「ああ………」

 

「ホントですか!? で、飛鳥 隆太は?」

 

「まさか………逃がしたのか!?」

 

弘樹がそう返すと、楓がそう尋ね、了平がまさかと言う顔でそう言う。

 

「………3日後に演習場でケリを着ける」

 

「何っ!? 如何言う事だ!?」

 

「…………」

 

そう問い質す地市だったが、弘樹はその質問には答えず、落ちていた一〇〇式機関短銃を拾うと、地市達の脇を擦り抜け、部屋から出て行った。

 

「弘樹………」

 

「「…………」」

 

そんな弘樹の姿に、地市達は何かを察した様子を見せるのだった。

 

 

 

 

 

結局この日………

 

大洗機甲部隊は機動隊と共に愚連隊の粗全ての拠点とメンバーを制圧。

 

メンバーは全員が警察へと引き渡されたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてアッと言う間に3日後………

 

大洗学園艦・演習場………

 

暗雲立ち込め、時折稲光と共に雷鳴が鳴り響く中………

 

「…………」

 

戦闘服姿で丸腰の弘樹が、腕組みをして仁王立ちした状態で、隆太を待っていた。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

その後方に在る森林の中では、カモフラージュをした大洗機甲部隊のメンバーが、弘樹の姿を覗き見ていた。

 

地市達から話を聞いた大洗機甲部隊のメンバーは、弘樹に隆太を逃し、決闘の場を用意した意図を問い質したが、弘樹は何も答えなかった………

 

遂に決闘当日となり、演習場へと向かう弘樹に付いて行こうとしたが止められ、仕方なくコッソリと後を尾け、こうして隠れて様子を窺っているのである。

 

「如何言う積りなんだろう、舩坂くん?」

 

「態々こんな決闘染みた事をするとはな………」

 

「今回ばかりは流石に舩坂さんの意図が読めませんね………」

 

「私もです………」

 

頭に木の枝を付けてカモフラージュをしているあんこうチームの中で、沙織、麻子、華、優花里がそう言い放つ。

 

「…………」

 

同じ様にカモフラージュを行っているみほも、心配そうな様子で弘樹の姿を覗き見ている。

 

「みほさん、大丈夫ですか?」

 

するとそこで、今回の決闘の話を聞き付け、大洗機甲部隊に同行していた湯江が、そんなみほへ声を掛ける。

 

「あ、うん、大丈夫だよ。ありがとう、湯江ちゃん」

 

「無理はしないで下さいね」

 

「うん………ねえ、湯江ちゃん。湯江ちゃんは弘樹くんが何を考えてるのか分かる?」

 

とそこで、みほは湯江にそう尋ねてみた。

 

「いえ、残念ながら、私にも理解しかねます」

 

「そう………」

 

「ですが………」

 

「?」

 

「お兄様が無意味な事をやるとは思えません。きっと何かワケがあるのだと思います。それに殿方と言うのは、時には拳でしか語り合えない事もあると思っています」

 

「…………」

 

そう言う湯江の言葉を聞いて、再び弘樹の姿を見やるみほ。

 

(拳でしか語れない………か)

 

先程の湯江の言葉が脳内で反芻され、自分と姉であるまほが、戦車に乗って対峙している光景が思い浮かぶ。

 

「! オイ、来たぞ!」

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

とそこで、俊がそう声を挙げ、全員が弘樹の方を見やる。

 

「…………」

 

立っている弘樹の前方から、明確な敵意を表情に浮かべた隆太が歩いて来ていた。

 

「…………」

 

弘樹から少し離れた場所まで来ると、そこで静止する隆太。

 

「………来たか」

 

その隆太の姿を確認した弘樹が、腕組みを解きながらそう言う。

 

「………アンタだけは絶対にブッ潰す」

 

最早殺気とも取れる闘気を溢れ出させながら、弘樹を睨みつけてそう言う隆太。

 

「勝手ですまないが………お前の事を調べさせてもらった」

 

だが、弘樹はそんな殺気も何処吹く風と言った様子でそう言い放つ。

 

「何?………」

 

「飛鳥 隆太………元はそれなりに裕福な家庭の生まれである、家族構成は父と母、それに妹が1人………しかし、家族揃って外食中に暴力団同士の抗争に巻き込まれ、お前を除く全員が死亡した………」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

弘樹の口から語られた隆太の過去に、隆太自身と大洗機甲部隊の面々は驚く。

 

「1人生き残ったお前は引き取り手が見つからず、施設へと預けられた。しかし、程無くして脱走………非行行動を繰り返しながら各地を転々とし、この大洗学園艦に流れ着いた………」

 

「テメェッ! 何勝手に調べてやがるっ!!」

 

「お前が力に固執するのは、理不尽な理由で家族を失ったからか? 自分にもっと力が有れば如何にか出来たのではないかと………」

 

激昂する隆太だったが、弘樹は相変わらず意にも介さず言葉を続ける。

 

「だが、今のお前の持っている力が、本当にお前の望んだ力か? そんな事をしていて………御両親や妹に顔向け出来るのか?」

 

「黙れぇっ! アンタに俺の何が分かるぅっ!!」

 

隆太がそう叫びを挙げた瞬間に雷が落ち、激しい雨が降り出した。

 

「………問答はココまでだ」

 

とそこで弘樹は構えを取る。

 

「後は拳………お前のその『力』で語ってみろ」

 

「上等だあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!」

 

怒声と共に、弘樹に向かって突撃する隆太。

 

「セリャアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!」

 

その勢いのままにシャーパを繰り出す。

 

「!………」

 

弘樹は、繰り出された蹴りを、僅かに身を動かしてかわす。

 

「!!」

 

そしてそのまま、隆太の方へと踏み込んだ!

 

「!? なっ!?」

 

まさか踏み込んで来るとは思わなかった隆太は、驚きながら慌てて距離を取ろうとしたが………

 

「逃がさんっ!!」

 

弘樹がそう言い放って、隆太の服の両肩部を掴んだ!

 

「!? しまっ………」

 

「うおおおおっ!!」

 

弘樹はそのまま、隆太を力任せに振り回して、地面に背中から叩き付ける!

 

「ガハッ!?」

 

泥水が跳ね上がる中、肺の空気が一気に吐き出されて、一瞬意識が遠のく隆太。

 

「! このぉっ!!」

 

だが、すかさず反撃の蹴りが、弘樹の側頭部へ叩き込まれた!

 

「! ぬああああっ!!」

 

しかし、弘樹は隆太を離さず、再度力任せに振り回して、またも地面に背中から叩き付けた!

 

「グハッ!?」

 

「おおおおおおおっ!!」

 

再び意識が遠のいた隆太だったが、弘樹は今度は連続して、隆太を振り回しては地面に何度も何度も叩き付ける。

 

「ゴホッ!? ゲバッ!? ゴバッ!?(コ、コイツ!! 俺の技が距離が無いと使えないの知って投げ技で!!)」

 

ドンドンと酸素を失って行きながらも、弘樹が打撃技を避ける為に超接近戦での投げ技で来た事を察する。

 

「ッ! 舐めるなああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

しかし、プライドからの意地か、弘樹が振り回した瞬間を見計らって身体を捻らせる隆太。

 

隆太の服の肩口辺りを掴んでいた弘樹の手が離れる。

 

「………!!」

 

「でりゃあああっ!!」

 

隆太はそのまま弘樹の脳天に浴びせ蹴りを食らわせる。

 

「ッ!?………」

 

脳天への衝撃で、弘樹はフラついた………

 

かと思われた次の瞬間には、着地した隆太に最接近する!

 

「!? マジかよッ!!」

 

弘樹のタフさに驚愕しながらも、バックステップで距離を取ろうとする隆太。

 

「!!………」

 

だが弘樹は、伸びていた隆太の左腕を、右手で掴む事に成功する。

 

「!? うわっ!?………」

 

「むんっ!」

 

そのまま隆太の左腕に、自分の右腕を絡めて、まるでボクシングのクリンチの様に肩口がぶつかり合う程に組み合う弘樹。

 

「ハアッ!!」

 

その状態のまま、空いている左手で、隆太の顔面を殴りつける!

 

「ブッ!?………コイツウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーッ!!」

 

すると喰らった隆太も、空いている右手で弘樹の顔面を殴り返す!

 

「!!………」

 

隆太の拳を食らった瞬間に、再度左の拳を再び隆太の顔面に打ち込む弘樹。

 

「ガッ!………ウワアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

隆太もまた、弘樹の顔面に拳を打ち込む。

 

2人はそのまま、ノーガードで相手の顔面を殴打すると言う、何とも痛々しい戦いへと発展した。

 

骨と骨がぶつかり合う鈍い音が、豪雨の中でもハッキリと聞こえて来る。

 

「キャアッ!?」

 

「うわぁ………」

 

「見てるコッチが痛くなってくるぜ………」

 

その凄惨な光景に、女性陣の殆どは目を反らし、男性陣も痛々しさを覚える。

 

「も、もう見てらんないよ! 地市くん! 舩坂くんを止めて!!」

 

「飛彗さん! お願いします!!」

 

「神狩殿!!」

 

と、沙織がそう言って地市に弘樹を止める様にお願いし、華も飛彗、優花里も白狼にそう頼む。

 

「「「…………」」」

 

しかし、地市、飛彗、白狼の3人は、黙って弘樹と隆太の殴り合いを見守っていた!

 

「! 如何したの!? 何で止めないの!?」

 

「武部ちゃん………男が何かを賭けて戦っている時、それを止める事など誰にも出来はしない………それでも止めるとしたら………それこそ弘樹の奴を殺す積りでないとな」

 

沙織がそう言うと、シメオンがそう返して来る。

 

「何ソレ!? 全然分かんないよ!」

 

「それが男と言う生き物さ………」

 

「! みぽりん! 湯江ちゃん! 舩坂くんを止めよう!!」

 

そこで沙織は、男子以外で弘樹を止められそうな人物であるみほと湯江にそう言う。

 

だが、しかし………

 

「「…………」」

 

みほと湯江は、その手を血が出そうなぐらい固く握り締めながらも、弘樹の姿から決して目を反らそうとせず、見守り続けていた。

 

「み、みぽりん………湯江ちゃん………」

 

その2人の覚悟に満ちた顔を見て、沙織は何も言えなくなる………

 

その間にも弘樹と隆太の殴り合いは続いており、最早両者の顔は特殊メイクでもされたかの様にボコボコとなり、流血さえもしていた。

 

「ハア………ハア………ハア………ハア………」

 

「ゼエ………ゼエ………ゼエ………ゼエ………」

 

両者体力が限界に近づいたのか、クリンチ状態こそ解けていないが、共に肩で息をしている。

 

「………次で決まるな」

 

その様子を見ていた俊がそう呟く。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

見守っている大洗機甲部隊の面々にも緊張が走る。

 

「………やるじゃないか」

 

「貴様こそ………」

 

そう言い合う隆太と弘樹。

 

何時の間にか、両者の間には微笑が浮かんでいる。

 

「だが、勝つのは俺だ………」

 

「如何かな?………」

 

そこで両者は最後の力を振り絞り、互いに拳を握り合い、腕を振り上げる。

 

「「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ!!」」

 

そして同時に拳を繰り出した!

 

「!! お兄様っ!!」

 

とそこで、我慢が限界に達したのか、湯江が隠れていた茂みから立ち上がってそう叫ぶ!

 

(!? 麻友!?)

 

しかし、その声に反応したのは弘樹ではなく、隆太だった。

 

湯江の姿が、亡くなった妹と重なったのである。

 

その次の瞬間!!

 

ガキィッ!と言う鈍い音と共に、弘樹と隆太の拳が、互いの顔面に叩き込まれた!!

 

まるで見計らったかの様に雷が落ちて、稲光が辺りを包み込み、雷鳴が響き渡る。

 

「「…………」」

 

互いに拳を打ち込んだ状態で固まっている弘樹と隆太。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

大洗機甲部隊の面々は、固唾を飲んでその光景を見守っている。

 

………と、

 

「………ぐっ!?」

 

そう言う台詞と共に、弘樹がクリンチを解いて、片膝を地面に着けた。

 

「! 弘樹くんっ!!」

 

みほが悲鳴の様な声を挙げる。

 

その次の瞬間!!

 

「ガハッ!?………」

 

隆太からそう声が漏れたかと思うと、そのままグラリと身体が揺れ、仰向けに地面に倒れた。

 

「弘樹の勝ちだ………」

 

笑みを浮かべてそう言い放つシメオン。

 

まるでこの結果が最初から分かって居たかの様に………

 

「ハア………ハア………ハア………ハア………」

 

「アンタ………やっぱり………強い………な………」

 

息を切らせている弘樹に、隆太はそう言い放ち、気を失ったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???………

 

「………うっ!?………う、うう~ん………」

 

意識を取り戻した隆太が最初に見たのは、知らない天井だった。

 

「此処は………! そうだ、俺はっ!!………!?~~~~ッ!?」

 

ぼんやりとしていた意識がパッと覚醒し、慌てて飛び起きると、全身が痛んで悶える隆太。

 

「気が付いたか………」

 

「!!………」

 

と、横からそう声を掛けられて、隆太が見やると、そこには………

 

学生服姿の弘樹が居た。

 

「アンタ………」

 

「此処は大洗国際男子校の保健室だ………あの後に運び込んだんだ」

 

状況を説明するかの様に隆太にそう言う弘樹。

 

「そうか………勝負は俺の負けだな」

 

「ああ………」

 

「で………俺を如何するんだ?」

 

弘樹にそう問い質す隆太。

 

その顔には吹っ切れたかの様な様子が見て取れる。

 

「………お前にはこの学校………大洗国際男子校に入学してもらい、歩兵道者として参加してもらう」

 

「!? ええっ!?」

 

しかし、弘樹からの思わぬ返答に、驚きを露わにした。

 

「実はお前には歩兵の素質が有ると思っていてな。戦ってみて確信に至った。全国大会で優勝する為に、是非ともお前の力が欲しい」

 

「そんな、急に言われても………」

 

「手続きや経歴の事なら心配するな。会長閣下が全て手を回してくれている。隊員達は全員納得済みだ」

 

「…………」

 

弘樹の手際の良さに唖然とする隆太。

 

「ハア~~~………逃げられそうにないな………分かったよ、ココに入学して歩兵道をやるよ」

 

「うむ………では、ゆっくり休んで、早く傷を治せ」

 

「ああ………って、オイ! ちょっと待て!」

 

「? 何だ? 何か質問か?」

 

「いや、アンタの怪我は!? 俺と同じぐらいになってた筈じゃ!?」

 

そう言い放つ隆太。

 

彼の言葉通り、ボコボコに殴られた隆太の顔には包帯がグルグル巻かれてミイラ男の様な状態になっているのに、同じくらいのダメージを受けた弘樹の顔は綺麗そのものであった。

 

「治った」

 

「ハアッ!?」

 

「生まれつき傷が治り易い体質でな………じゃあ、ゆっくり休め」

 

それだけ言うと、弘樹は保健室を後にした。

 

「…………」

 

残された隆太は暫し茫然としていたが、やがて脱力した様にベッドに倒れる。

 

「ハ、ハハハハ………俺………トンでもない化け物と戦ってたみたいだな………」

 

そして天井を見上げて、乾いた笑いを零す。

 

(………父さん………母さん………麻友………俺………やり直してみるよ………)

 

そんな事を思いやり、隆太は目を閉じて、やがては寝息を立て始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

愚連隊の頭、飛鳥 隆太との対決。
予告した通り、少年漫画的に拳で語り合せてみました。
ちょっと血生臭かったですが(爆)

さて、その隆太も男子校へ編入されて歩兵部隊に配属。
いよいよ次の試合に向けての準備が始まりますが、その前にちょっとした伏線張りをしたいと思っています。
遂にあのゲームから、あの名物キャラが登場します。
お見逃しなく。

それと、次の試合に入る前に、2度目の紹介します!をやろうかと予定しています。
御了承下さい。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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