勇者エリちゃん(憑依)勇者の旅へ出ます。 作:小指の爪手入れ師
おかげで原作に穴が開き始めたぞ!?
そして、毎回いちゃいちゃしだすのやめちくれぇ…私が持たん!
ぁ、今回のお話が一番可笑しいと思います。ご了承ください!
私は嫌いな事が多い人生だった。また、好きな事も多い人生でもあった。まぁ言ってしまえば凡庸の感性を持っていた。
だが、私にだって他と違う個性という物は存在した…はずだ。
私の信念。と言うより理解し難い内容が周りの者にとって違和感だったらしい。らしいとはつまり、私は今でも理解できないのだ。
──悪役は何で悪役であるのか…
え?何で自分語りを始めたか?
勇者にバックストーリー無しはどうかなと思って。
「お待ちになって下さい。然もなくばどんな事をしてでも、どんな事を、してでも…フフ、フフフフ。どんな事も、どんな事でも、何をしても、何をしてでも……捕まえに行きますね?」
あと、今のうちに言っておかないと一生語る機会が無さそうだから。もちろん、現在進行形で限界を超えて失踪中なのだけれど。所謂、遺書的な何かだと思って欲しい。
清姫は定められたステータスを超越している。魔力放出で筋力と速力を得た私にほんの少しだけだが迫っているのだから。
擬音を付けるのならば、私は『シュッシュッ』、清姫は『ズズズズズ』という具合だろう。正直、明らかに可笑しい上に正気を失いそうな音だ。
本のページを高速で捲っていくように景色は移り変わり、やがて、人工的建造物が建てられた場所に移る。
「砦?城?良く分かんないけど鐘よりは圧倒的にマシよね!」
剣を地面に突き刺し無理矢理方向転換。その際に、軽く地鳴りが起こったが、最早気にしていられる余裕など無かった。清姫は私の動きを機敏に感じ取り直線的に追って来ることによって距離を縮めて来た。
地を裂き、空を裂き、時空をも裂く勢いで走る。目指すべき場所は定めた。あとは一心不乱に走り続けるだけでいい猪突猛進で何も省みるな。脇目も振らず進まなければ色々失うだろう。
──主に貞操とか尊厳とか!!
私は走り、そしてぶつかった。
「わぷっ!?」
「グヌッ…」
目を瞑っていても分かる。いや、分かってしまうと言った方が適当だろう。ソレはまさしく筋肉だ。
頼りになる壁だと、私は合理的に考えてしまった。
「助けて!」
私は全力で媚びた。上目遣いに涙を浮かべ、小さい背を活かして可愛らしく跳ねる。恥も外聞も最早関係ない。私は
だがしかし、私は更なる衝撃を受けることになる。
「落ち着け
浅黒く彫りの深い顔、男らしい顔には薄い笑みがある。持つ得物は棒にも見えるが槍、それも神秘を感じるとなれば宝具。宝具となれば英霊。
ここまで情報が揃えば、弾き出される答えは簡単だった。
──ローマである。
「ローマァ!?」
「然り。
いや、敵だよね。普通は即刻討ち捕えられる所だよね?
呉越同舟だなんて熟語があるが、本当に起こり得るかは疑問だった。だが、ローマは喜んで助けてくれる…
──ローマは素晴らしいのだわ!
チョロい?どうとでも言うがいい。
私は賢いアイドルなのだよ。と言うか、助けを求めなければヤられるのはコチラなのだから当然。
勇者としてどうなのか?
いや、勇者はプライベートまで勇者では無い筈、きっと日々修羅場から生き残るので一杯一杯だろう。
それに私はアイドル系勇者なのか、勇者系アイドルなのかが曖昧であり、つまり何が言いたいのかと言うと…
──もう放って置いてよ!!
故に私は己が本能に従い、ローマのマントに身を隠すのだ。
「友達が
「もう良い
ロムルスは槍を強く地面に突き立てる。
迫る清姫はその行動を訝しむ事なく、正面切って駆け抜けようとする。否、最早彼女には訝しむ事が出来ないのだ。今の彼女は
だが、その歩みは強制的に止められる。
清姫の眼前に森が現れた。それは紛れも無いローマだ。放たれる気は宝具による物だと激しく主張する。
驚くべきは規模だ。こちら側からは清姫が確認出来ず、ただ其処の居るのだという気配があるのみ。槍から扇形に広がる木々は今も尚成長を続け、更に更にとうねりながら主張を止めない。
「…椀飯振る舞いね」
正直に言う。
ここまでしなくてもいいのでは!?
目の前には最早木しか映らない惨状。これを一騎のサーヴァントが一騎のサーヴァントにしていると考えたら白目を剥いてしまいそうだ。
「ほぉ、突き進んで来るか!それもまた
「え?」
感じるのは圧倒的な熱量と焦げた臭い。覗くのは白い鱗に爆炎。巨木に囲まれていても更なる巨大を持って塗り変えるストーキングが得意な竜。
眼には眼を歯には歯を──宝具には宝具を……
彼女は躊躇いもなく少女の姿を竜に転身させ、木に含まれる水分を干上がらせ、燃やし尽くし、絡まる太い枝も硬化した身体を用いて粉砕す。
「
ロムルスは号令を掛ける。木々をはソレに呼応し清姫を呑み込もうとする。
だが、その度に砕かれ、その度に燃やし尽くされる。
周りの者にとってはまさしく厄災以外の何物でもない。潜んでいた連合軍の兵たちは紙吹雪のように散っていく。
場は荒れながらも膠着状態に陥っていると思われた。
「せ、先輩!またです。また来ます!」
「何でそうなるのぉ!?ヒィ!燃える燃えるッ!!」
「何がどうなっているのだコレは!?竜?神祖ロムルス!?派手好きな余でもここまで来ると手に負えんぞ!」
悲しい事にこの世界の主人公も太刀打ちできないらしい。マシュは燃える大木を退け、自らのマスターを守っている。
ネロも便乗して守られているが、どう見ても隠れて切れていない。
「アレがローマの子を率いる皇帝か、美しいな。嗚呼実に!さぁお前も来るといい!我が袂に飛び込み、ローマと共に在ろう…」
「バッカ!アンタそんな言ってる場合じゃないでしょ!?狂化されてんの?」
「おぉ、神祖よ。余は、余は如何様にすれば!」
ネロはロムルスをキチンと認識した事により迷う。彼女からすればロムルスとは正しく神。彼女は神に逆らうか否かの選択を迫られている。
でも、私としてはどうでもいい。至極どうでもいい!ただ、迷う時間等無い中でオロオロする皇帝には腹が立つ。
「アンタも迷ってんじゃないわよ!」
「エ、エリザ!?何故神祖の股座に?」
「安全だからよ!!」
コチラには流れ弾は来ない。と言うか来ても弾かれる。私安全。まさに計画通り!!
何処と無く私は胸を張る。え?張る胸は無い?逆に有ったらエリちゃんじゃあ無い気がするんだ……
「そんな事より何迷ってんのよ?」
「しかし、神祖だぞ?建国王ロムルスその人が余の前に居るのだぞ?それだけは無いと、首魁は神祖である筈はないと信じたくとも現状がそれを否定しているのだ!正直に言おう!余は直ぐにでも平伏したい!」
「じゃあ何で直ぐにでもそうしないの?迷ってる時間が無い事くらい分かるでしょ!もうフィナーレはまぢかなの!!アイドルが歌詞と振り付けを忘れたからって終わっていい訳ないじゃない。アドリブでも何でもして輝くのよ!アンタが
「──」
ネロは俯いた。そして同時に剣を取った。
「余は第5代皇帝ネロ・クラウディウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクス!神祖よ!余は貴方に挑戦する!!」
ロムルスは小刻みに震える。それすなわち股間も震えているので止めて欲しい。
そして笑みを噛み殺し、ロムルスは言い放つ。
「
「ローマが為に!」
「──
それ以外の言葉は不要なようで、ローマという言葉の万能さを思い知った。
だが、そのような隙を晒せばどうなるかまでは思い至っていない。
どうなるか?彼女が動くのさ。
──嫉妬の竜が!
ネロのターゲット集中はロムルスにとって圧倒的な効果を発揮した。其処で生まれる大きな隙は私にとって致命的で、清姫とっては絶好の機会である。いや正直、清姫が機会等という空気が読める状態では無いのだがソレはソレ。
そう、結論だけ述べるなら…
「コッチ来たァアアーー!!」
私はロムルス戦線を放棄。砦内部に後退し弾幕を張り、耐久戦を挑む。作戦はこれしか無い!
あれだけの出力だ。恐らく魔力消費量は相当な物のハズ……
覆い被さっているマントを振り払い、クラウチングスタートからの全力疾走。ロムルスをデコイにするべく音は軽微に抑える。
高鳴る心音。
砕かれる大地。
響く警戒音─
──いやこの音は私の音ではない。
「居るって言うの?其処に!?」
巨大な白を瞳に捉えるその瞬間、身体全体を襲う衝撃と熱気。ぶつかっているのだ、あの竜の頭部が。
私の矮躯はその様な質量に耐えられる訳も無く持って行かれる。地面から遠のいたこの身では踏ん張りもきかず、密かにあったりする翼を展開しても無意味だろう。
「グググッ!!体当たりとか、そんな初期技で倒せるとでm─グハッ!?」
あえなく目指した砦に激突。当たり前のようにエリちゃん型の穴が空き、追撃をする様に清姫の頭部が更なる大きな穴を空ける。
受け身など取れないので無様に転がる。
最終的には石の柱に強く打ち付けられ止まる。
しかし、何時までも倒れている場合では無い。未だ清姫は乱心清姫サンモードだ。リーチ大回転は確定していない。へべれけの方が安牌とは恐れ入った。
「いやはや全く、何事にも例外は存在するモノだが。些かやり過ぎたな可愛らしい
響くのはCV杉〇。とてもでは無いが、私や清姫には出せないその声。場所から鑑みるに候補は一人。
モスグリーンのタキシードにシルクハットを被り、赤みが混じる髪色の青年。
そう─
──
少々派手に動き過ぎたらしい。この男が動くには速すぎる。いや、ネロとロムルスがぶつかり合うのを早めてしまったのだから節穴さんが動くのも道理かもしれない。
何はともあれ魔神柱…
狩らねば全国のFGOユーザーに鼻で笑われるというもの。
「一狩り行く─キャー!?」
最近は叫ぶのが定番の私。原因は何故か味方に有り、理由は襲われたからと言う意味不明さ。
今回も勿論味方からの強襲。
私は清姫に馬乗りにされている。
汗と唾液が混じり合った粘液が私の顔にポタポタと降りかかり、噎せ返る程の甘ったるい吐息が私の鼻を刺激する。
「…っと捕まえました。捕まえましたよぉ!煮るなり焼くなり私の自由。捕まえた褒美位、せがんでも構いませんよね?いいえ構うものですか!私の自由ですもの!!──アハァ…」
恍惚の表情を浮かべる清姫。男なら喜ぶ所だが、時と場所を弁えるべきと考える私である。
「フンッ、所詮自滅の道を歩む愚者に過ぎないか。私が手を下す価値さえない…いや、元より人如き淘汰されるだけの存在。王も何故…これ以上は不敬か……」
すると彼は徐ろに金色の杯を取り出した。
「どちらにしても出る杭は打たれるもの。ここで退場するといい。なに、良い経験だ。愚者は愚者らしく経験から学びたまえ──無駄な事だがな!」
高まり吹き荒れる魔力、虹の光球は激しく回転、乱れる清姫、収束し形作られるエーテルの身体、ペロリスト化する清姫、轟音響かせるこの空間はまさに混沌。
「此処に顕現するは神の鞭。貴様らに勝てる道理もないな!ではまた会うこともないが、さらばだ。崇高な理想を実現する為に忙しいのでね」
そう言って立ち去って行く。
彼が立ち去った後に残る者は、軍神の剣の切っ先を私たちに向ける少女だけ。その目には感情の光が射しているのかさえ微妙で、ただ分かるのは破壊すると言う一種の
「我が名はアルテラ。これより貴様らを破壊する」
息つく間も与えず繰り出される変幻自在の剣。鞭の様に撓り襲い掛かるソレは恐ろしく速く、読み難い。
だが、其処にばかり気を取られてかコチラ側の行動に思考が割けなかった。
彼女は
触れた。
柔らかい何かを。
唇に…
咥内に……
生理現象から涙が漏れ、息苦しい。時折漏れる嬌声はどちらのモノか…
「スキル発動」
「──焔色の接吻」
彼女は恐ろしく熱かった。
後少しでセプテム終了ですね…
評価が下がらぬ!?書けと、そういう事でしょうかね?
いや、きっと大丈夫でしょう!
小指の爪手入れ師さんの次回作に期待しましょう!
勿論連載にシフトする様になれば好き勝手しながら、皆さんの期待に添えるように頑張らせてもらいますよ。