勇者エリちゃん(憑依)勇者の旅へ出ます。 作:小指の爪手入れ師
もうエリちゃんのやってることがRTAにしか見えなくなってきた。私の筆は激遅なのにね。
今回は雑に雑を重ね、登場キャラクターが雑に吹っ飛びます。あれ、いつもの事か。
猛る紅きラインを軌道に置き去りにし、見晴らし最高の青天井を駆け抜ける鉄の処女。その様はまるでかの有名なスーパーカーの様だった。気分マシマシにユーロビートでも流して見せようか。
だがそれは決してスーパーカーなどではない。最高速度音速だからね! 防護魔術がないと首がグキるから気を付けよう。
そして素知らぬ顔で走るこの車、実は先程人を轢いている。
被害者はガウェインと言う円卓の騎士、かつての仲間ベディヴィエールと劇的な再会のあといざ尋常に勝負しようとしたその時に事件は起こりました。
容疑者であるエリザベートがベディヴィエールに対して謎の液体を頭から掛け、訳の分からない言葉を投げかけました。
そして悪びれもせずエリザベートはガウェインにこう言い放ち、そして指を指します。「あ、絶世の巨乳美人が!」、と。ガウェインも思わず、最早本能的に戦場だと言うことさえ忘れ、振り向いてしまいました。結果彼の振り向いた先に美女は居らず、騙された事に気付いた時には既に横合いから突如として現れた赤い車に轢き飛ばされていたのです。
あぁなんて可哀想なガウェイン。
「れ、レディエリザベート。それを行ったのは全て貴女なのですが……」
「ガウェインは勇敢で優秀な騎士でした。まさか彼にあんな事が起こるだなんて、残念です」
「彼は死んでません! と言うか残念ってどの口が言ってるんですか!?」
可愛いこの口。
「さてそんなどうでもいい事は置いておくとして」
「聞く耳を持ちませんかそうですか……」
観念して革のカバーに包まれた座席に身を任せるベディヴィエールに冷えたドリンク(エリクサー)を振る舞い機嫌を取っておく。あ、それはアメリカライブの幻の限定ドリンク。
私もホルダーに刺さってるドリンクをチューチュー吸いながらカーナビを立ち上げる。清姫を指定すれば村まで辿り着くはず。ベディヴィエールはそこで下ろして、清姫を拾って──
「ちょっ、前、前向いて下さい!」
「ん?」
いやこんな荒野のど真ん中で障害物なんてないでしょ。岩程度だったら粉砕、魔獣も玉砕、子ブタたちが居ても大喝采。仮に円卓の騎士が居たとしてもなんとも──
「な、い……いぃ!?」
「『
聖剣の煌々と輝く光は邪剣に転じ赤雷の苛烈な波涛が視界を覆う。触れれば最期、只人程度なら瞬間的に消し飛ばす光が王権の象徴『
叛逆の騎士モードレッド。
「先手必勝は私の専売特許だってのに! いいわよ受けて立つわ!」
「は?」
「口閉じてなさいよベディヴィエール。舌噛んでもエリクサーで解決だけど痛いからね!」
「なんで速度をあげるんですか? なんで放たれた宝具に真っ直ぐ進んでいるんですか? 避けますよね、避けてくださいレディ!!?」
アクセルをベタ踏みにして突っ込む。チキンレースも真っ青なデスゲームのはじまりはじまり、なんてったって私のブレーキは既にぶっ壊れてる!
一歩音越え、二歩無間、三歩絶刀。いや車だから一歩も二歩もないけれど!
「『
「テクニックも何も真っ直ぐ進んで、ひゃあああ!!!?」
あざとい悲鳴が隣から響くがそんなことは関係ない。魔力で編まれた鎧を鉄処女に装着させて、ダメ押しに魔力でニトロを代用し再加速。走破性ならシャドウボーダーにも負けない! 虚数潜航は無理だけど、それはそれ。力で捩じ伏せ走破すればヨシ!
これでいつサマーレースが開催されても負けはない!!
トップスピードで誰の目からも鉄処女が掻き消える。赤雷との衝突はそのすぐあとに起こった。
「幻想の鉄処女を焼き消そうとか傲慢ね! やりたきゃ最大狂化の清姫でも呼んでこいってぇの!」
赤雷の中を駆ける、夜闇を駆けるはずの鉄処女は最高ランクの宝具の一撃をものともせずに食い破って行く。何処ぞの神牛が引くチャリオットのように真っ直ぐ蹂躙していく。
そしてその赤雷を越えてその先へ。
「おわぁあああ!?」
その先にいるモードレッドを悠々と轢いていく。これで円卓の騎士を轢くのはお前で2人目だ。A+とA++では大きく差があるのだ、悔しかったら次からエクスカリバー持ってこい! エクスカリバーなら私の隣で寝てる(気絶)けどねハッハッハッ!!
おまけとばかりに粛清騎士を鏖殺。真っ直ぐ轢いたり、ドリフトで回転しながら轢いたり、ソニックブームで消し飛ばしたり、バックファイアでこんがりさせる。上手に焼けました!
「テメェふざけた事を──わぷ!?」
どうにか起き上がったモードレッドにお化けかぼちゃを喰らわせ、煙巻いて逃げる。そして最高速度で射程圏内を脱出する。これ一方的見えてあと数分もすれば対応してくるから逃げるが吉よ。不意打ちだから有効だっただけ。
ベディヴィエールに相手をさせるにも、互いに煽りあって時間が掛かり過ぎちゃうのはいただけないのよ。目指せ仲間集めルート世界最速レコード。
「どうよベディヴィエール、私自前の騎乗スキルはって伸びてらっしゃる」
その後ポロロンしてた後ろ姿美人も背中から轢いた。お前で3人目だ。
◇◆◇
山の翁たちが守護する村は山間に位置する。本来見つかりにくい山と山の間にあるその村だが鉄処女に載せたカーナビなら一発で辿り着く。ただ清姫に渡した発信機無しだとただの置物なので過信はいけなかったりする。清姫の持つストーキングスキルの応用だからねしょうがないね。
発信機を渡した時の清姫の反応は、いや止めておきましょう。普通はこんなもの渡しても喜ばないし頬を赤らめない。発信機は絆にならないのよ清姫。寧ろ不信感の塊なんだからね。
言っても聞きやしないだろうけど。
明らかに山向けのフォルムから掛け離れている鉄処女でヒルクライムとダウンヒルを繰り返し、山道を開拓していく。
今度から空飛べるようにしようかしら。まるでチキチキでバンバン的な感じに、いややってることはバックでトゥなフューチャーか。最終的に列車にでも手を出して電王とか銀河鉄道。
私の境遇を加味すればマジで必要になるのが世知辛いわよねぇ。
見えてくるのは正直言って見窄らしい住宅群。
強度も見た目も可愛くないそれは息をひと吹きすれば飛んでいってしまいそうだ。
サーヴァント反応からしてここら辺に清姫が居るはず。
「お、居た。子ジカー無事ィ?」
まぁ見た感じ無事そうだし無事じゃなかったらロマニが騒いでるでしょうしあんまり心配はしていないんだけど、万が一の為にエリクサーパイセンを握りこんでおく。飲むタイプ、塗るタイプ、打つタイプ、吸うタイプ各種取り揃えてます。
「え、エリちゃーん!」
「え、顔ぶっさ! どうしたの?」
「ダ・ヴィンチちゃんが!」
…
……
………あぁ、そういえばそんな事もあったわ!
「カルデアのサーヴァントは霊基が記録されてるから時間経過で再召喚されるわよ」
「え?」
『あ』
「ドクター?」
『ち、違う! 僕も忘れてたんだ。間違っても故意じゃない!』
「でも忘れてたんですよね?」
『いや、ホントごめん』
必死に弁解するロマニにプンプンするカルデア組は暫く置いておくとして、いや反省はしなさいロマニ。女の子を泣かせた罪は重い。
「今日は随分と客が多いですな。清姫殿の伴侶殿でよろしいか?」
「呪腕のハサンね。話は疾うに済ましてるみたいだけど、勇者エリザベートよ。清姫とは、もう自分でも何なのかわかんない」
「紛れもなく夫婦です」
「はわ!」
貴様いつの間に背後に!?
気配遮断も無しにどうやってんのこの娘。圏境でも会得した?
「清姫殿、けが人の治療はもう終わったのですかな?」
「はいお薬を手渡すだけですので」
エリクサーですね分かります。
「じゃあ呪腕、こっちからは当分の食料とけが人に使用したエリクサーを渡すわ。代わりに情報を頂戴」
ついでにベディヴィエールの面倒もと付け加える。
「欲しい情報は2つ。静謐のハサンの場所」
捕まってるのは知ってる。けれど場所は知らない。雑魚狩りなら吐息一つで済む彼女とは是非コンタクトを取りたい。毒のサンプルも欲しい。寧ろそっちが本音。
「静謐の場所については我々もついて行きましょう。それで、もう1つは?」
「初代の場所」
「……初代、ですかな? 申し訳ない、ピンと来ないのですが」
「初代ハサンの事よ」
「ぶぉっふぁ!!?」
この特異点最大戦力と言って過言じゃないキングハサン。つまるところじょーじ、ではなくじぃじ。ガウェインの当て役なんて勿体なさすぎるけれど、実質異次元の耐久してるガウェインには必要な相手だ。
あと此処で関わりを持たないと普通に次の特異点で詰むと思うの。
「我らの秘中の中の秘なのだが、いやそもそも初代様にお目通りが叶うかは分かりかねますが。確かに協力が取り付けられるならばこれに勝るものはないでしょう。ですが、しかし……絶対首がですね!」
早口でぶつくさ言う呪腕に合掌はしても容赦はしない。でぇじょうぶだエリクサーがある。首チョンパくらい切れた瞬間エリクサればギリ生きる、ソースはオジマン。ガッツ効果もおまけだ。
目の前でカタカタ震える骨仮面に肩ポンすると頭を抱えてしまった。往生際が悪いぞ呪腕の。心配するな百貌と静謐も一緒だ。
「何一つ安心できませんぞ!」
「じゃあもう廟の場所だけ教えなさいよ! 私が交渉するわ!」
「交渉材料がおありで?」
「ない!!」
我欲とかじぃじにないし。狂信者だし。
「パンでも用意しとく?」
パンが全てを救う。なおウチのカルデアには来なかった。
「……あい分かった。ですがまずは同胞を救出しましょう」
「パンは?」
「もうお好きになさって」
「じゃあチョココロネ用意しとくわ」
結局あれはどっちが頭なんでしょうね。
「じゃあ早速だけど、誰が行く?」
「一先ず身体を休めて明日にでも発ちましょう。西の頭目にも文を飛ばします」
私は直ぐにでも行けるけど。子ジカも同行するならそうなるのも分かる。只人なら無理はさせられない。ダ・ヴィンチの事で心身ともに疲弊しているはずだし。
「あ、ご飯の姉ちゃん!」
「おお、ルシュド。ご客人だ、迷惑を掛けてはいけないぞ」
「姉ちゃんは大丈夫だよ」
聖抜で選ばれてしまった母親を持つ子供。本来であれば母親を失っている。今回は誰一人として粛清させることは無かった。目に見えて救った人間が目の前に居ると、なんだか尻尾が落ち着かない。
「お母さんは無事? お腹すいてない?」
「うん、大丈夫!」
「ならお菓子をあげましょうね。ほら飴ちゃんよ!」
「ありがとう!」
お礼が言えるいい子で良かった。助けた甲斐もあったってものよ。追加で飴ちゃんあげよ。お母さんと分け合いなさい。
「子供は何人でもいいですよね」
「そんな話は一切してない」
あと私たちもどちらかと言えば子供側よ。
「何か賑やかだな」
「お、最大戦力その3みっけ!」
私が思う最強メンバーはオジマン、じぃじ、そしてアーラシュ。三蔵ちゃん? 同族っぽくて相性悪そう。
「初対面の筈なんだが、随分買ってくれてんだな。妙な気分だぜ」
「目の届く範囲全て射程にする弓の腕は勿論、とっておきもあるでしょ?」
「本当に初対面?」
「勇者なので」
「勇者だからかぁ」
実はお前もオジマンの扱い的に勇者じゃい。
無理やりエリクサーを押し売りしとく。食前ならぬステラ前に飲用下さい。性能は保証します。今ご連絡頂ければサンプルをプレゼント。
後は大きな倉庫をドーン。
中に保存食と保存水と布教用ポスターをドーン。
たくあんとか食べれるかしら、ピクルスにしとこうか、いやアンチョビもいいわね。いやもう全部入れとこうと、そんなこんなあって。立派な倉庫が出来ました。
巨大すぎる内装を隠すため山に風穴を開け、思った以上に環境が良かったので、余計な機器を取り払い広々空間を全て有効利用。腐蝕防止の魔術を施した角鋼やH鋼で洞穴を補強しつつちゃっかり陣地作成で異界化したので安全性も申し分無し。
あとうちはプレカットなんで、顧客もにっこり。ありがとうメカな私たち!
彼女たちなら半刻でやってくれます。我がチェイテに不可能は大体ない。
満足の仕上がりに自画自賛をしている所、横槍が入った。どうやら西の村から救援要請が掛かったらしい。道中の円卓は轢いたんだけどなぁ。
「最終的に各村には結集して貰う必要があったわけだし。まぁ悪いけれどいいキッカケよね」
「行かれるんですねエリザ」
「勿論! それに実は少し楽しみだったのよ!」
「アーラシュの宴会芸!」
いざ紐無し逆バンジー!!
いつかウチのエリちゃんの設定を晒せる時が来るのかな。いやまず伏線っていう伏線もないから誰も納得せんか……
次回はバンジーして、敵の砦に突撃して、じぃじにチョココロネを渡す。所まで行けばいいなぁ!
感想くれてもいいんだからね!