勇者エリちゃん(憑依)勇者の旅へ出ます。 作:小指の爪手入れ師
覚えていますかねこの小説。至って平々凡々とした作品なので記憶から抜け落ちている人も居るかも知れませんね…
いつも通りサブタイには深い意味はありません。フィーリングです!
あとこの話は出す機会がなかったチェイテ周辺のお話ですので人理とか関係無いです。いやこの小説って人理とか二の次だったか…
とりあえず清エリを求める方だけこの先を進んで下さい。
第四特異点が気付けば終わり、チェイテに帰還して幾ばくかの時間が経った。私は朝昼晩の栄養バランスの整った食事とボディのメンテナンスを欠かさずこなし、ボイストレーニングで自分を酔わせる日々を送っている。
清姫も同様に家事全般から私のマネージメントまで甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる。
最近では暴走の機会も減って来てる様に思える為、お風呂で背中を洗いあったり、交換で耳かきをしてみたり、手を繋ぎあいながら同衾したりと仲の良い姉妹の様に過ごすのが通例だ。
「大浴場を増設して良かったわ。色合いが
件の黒とピンクのチェックのタイルが並ぶ浴場で大きく吐息を吐きながら私はくつろぐ。
お仕事のオファーが来るのは大抵月単位で暇が多い。よって手持ち無沙汰な分様々な事に挑戦しこの様な大浴場を作ってしまうことも多々ある。陣地作成と道具作成が職人エリザベートを作った。
今に始まったことではないけれど清姫ももの作りに精を出している。何故かヘルメットに大工道具が似合う女に日々近付いている彼女を見ると正気度が減るのよね…何でこうなるまで放っておいたんだ。
「えぇ
「アンタが背中のみならず前まで洗おうとしなければ私も素直に同意できるんだけどねぇ」
「枕であぴぃるしてどれほど経つか。反応を一切示してくださらないのならこの様にするしか…はぅう、エリザのスベスベ肌に溶けてしまいたい」
撓垂れ掛かる彼女は小柄な私にとっては凶器だ。着痩せする清姫が狂愛士キャストオフしてる今、持つもの持たざるものでせめぎ合っているのだから。まぁ柔らかいことけしからん!
「だってアンタが言うあの枕って表に『YES』、裏に『はい』じゃない」
「何時でも何処でも来いと言う声明ですから」
「言葉だけなら無駄に男前ね」
果たし状かな?
尻尾でペちペちと水面を叩き目を閉じる。指先で私の頬をつついて来る清姫を思考から追い出して数分、私は閃いた。
「領民の生活向上に務めるべきかしら」
「そう言えば居ましたね領民…」
私と領民の関係はあまり良くない。仲が悪い訳では無いだろうが、私が仕事して無いのがよろしくないという事。領民は私に食糧と税金を支払っているのに私は何一つ還元していない。これほっとくとメカな私が大激怒よ。
「溜め込んでいるだけの財力は経済にとって毒でしか無いはず。ここは何処ぞの皇帝の様に散財してやるべきかしら」
「しかし具体的には?」
「家畜はPOPするし、穀物とかも目を離せば直ぐに収穫期。洞窟にはドラゴンが居るくらい日々に刺激がある上、兵隊達が駐在してるから安全」
これもう私がとやかくする必要がないのではないかと唸るばかりだ。作った魔具をバラ撒けばいいのか、コンサートや握手会でも開けばいいのか。新曲を出すにもインスピレーションが湧かないし。
いや待てよ─
「デートしましょ清姫!」
「……ひゃい?」
「変装して行かないとね。お忍びよお忍び!」
「お忍びでぇと…」
サングラスと帽子は必須だとして、果たして庶民服で私の溢れ出るアイドルオーラが抑え切れるかどうか。流石エリザ何着てもラブリー&キュートに仕上がってしまう。
「何をもたもたしてるの清姫。アンタも着替えるの!」
「わ、私もですか? これが一張羅何ですけれど」
「え、私の服あるじゃない。背丈も言う程変わらないし着れるでしょ?」
バリエーションに富んだ服飾の数々は私の執念を言葉にせずとも伝えるだろう。今ではチェイテの一層がショッピングモールのファッションコーナーと化した。哀れかなチェイテ城。
「いやエリザの服は流石に…」
「私と清姫の仲じゃない。遠慮しなくてもいいわ」
「いえそうではなく、えっと、その、あの胸がキツいのです…」
この後めちゃくちゃ採寸した。
◇◆◇
圧倒的胸囲格差により無い胸が痛んだ気がしたが別にそんなことはなかった。そもそも私のエリザボディは完成系にして完全無敵鉄壁の極致に至っているから何の問題は無いのだ。貧乳はステータスでありその希少さと尊さは尊んで然るべきなんだよ。世の
「そもそも何で巨乳がプラスで貧乳がマイナスと言う概念が確立したのかしら。美麗であればどちらもプラスじゃないの。男性の大部分が巨乳派だからだとしても現代であれば女性の地位向上によって女性が自立して生きる道も大きく開けた。なのに昨今バストアップやヒップアップに務める文化が更なる躍進を見せている。やはり大は小を兼ねると言う言葉が生まれるほど固定概念化された巨乳正義は揺るがないのね」
よしアルテラ呼んでこよう。
「出ていけないナニカが漏れ出てます!」
「世界が、憎い……」
頭には角を飾りに誤認させる為に髪と同色のカチューシャと目元を隠す為の丸いサングラスを装着。後はローズピンクのシンプルなワンピースにカーキグリーンのジャケットボレロを羽織るだけ。足元もサンダルだけでいいでしょう。これで何処にでもいる一般美少女。
「角が隠せない時点で正体バレバレなのはアホ可愛いので黙っていましょうか」
「なんか言った?」
「エリザ可愛いとしか言っていませんよ」
何か馬鹿にされたと私のエリザセンスが感知したんだけれど、まぁ清姫さんは正直者なのできっと気の所為ね。うんそれにしても洋服の清姫も新鮮でいいわ。
「アンタも十分似合うじゃない。それでこそ私の
「もぉ、煽てたって私しか出てきませんよ!」
たぶん今夜の夕飯に一品増える。あとどさくさに紛れたボディタッチが露骨になる。そういう所なんだよ清姫。
「じゃあデート兼視察に行くわよ」
門を開け放ち、互いに手を引き合って和気藹々とチェイテを出た。道中スポーンしたスケルトンやウェアウルフ、ワイバーンはもれなく謎魔術により出現したカボチャの錆になった。魔力放出は小枝でさえ弱者を容易く葬る凶器になる。カボチャなら投擲後に爆発炎上するので殺傷性に拍車がかかる。
大きめな多頭蛇も居たようだがカボチャには勝てなかったよ。
石造りの道に大広間を中心としてレンガの建物が並んでいる。人通りもそれなり、店も活気に溢れた酒場からちょっと怪しい路地裏の古書店まで様々だ。
「まぁ悪くないんじゃないかしら!」
悪くない。
それが私が下した第一印象から得た評価だ。強いて言うならばもう少し領主たる私の影を見せていた方が良いと思ったり思ったり、思ったりね。
「まずここの責任者の所ね」
「その後ででぇとですね!」
清姫も乗り気な内に一気に店を回りたい所、とりあえずここの町長的なポジションを持つ人物に挨拶といこうか。
特にこれといったアクションも無く役所まで辿り着いた。通り過ぎて行く人がチラチラと見てきたけど、たぶん私のオーラが隠し切れなかったんだろう。やはり美少女は罪だわ。
「邪魔するわ!」
「最早お忍びでは無いですねコレ」
正体がバレなきゃ問題無いんですよ。
あと─
「─目立ちたい!」
「特異点では嫌という程目立っているじゃないですか」
「それはビキニアーマーのせいでしょ!」
そりゃ裸同然の恰好してたら目立つでしょうよ。でもそれは変態だとか痴女だとかそういう注目じゃない。実際初対面の清姫に痴女だと言われたし。
「確かに脱げばいいってもんじゃないという事は私にも理解出来ますよ。布を剥ぐ喜びを─」
「えっ…」
私の着替えの手伝いをしてると見せかけてこのバカ蛇は自身の情欲を満たしていた? 最近大人しいと思って居たのは単に私が気付かなかっただけ!?
ギリギリを見極めながら犯行に及ぶ知能犯にレベルアップしていたと言うの…
「今思えば脱衣所で清姫に脱がして貰うのが当たり前になってたわね。なんて狡猾な蛇! 貞淑な振舞いや大和撫子ムーヴは何処に置いてきたの!?」
「最近刑部さんに教材を送ってもらいまして、同性特有の身体的精神的な近さを研究致しましたの。結果は文句無しの大成功でしたわ」
男の娘やら百合やら明らかに清姫にとって猛毒なサブカルチャーを教え込んだ奴が居るらしい。と言うかまた狐じゃないかコレ!?
「おのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれぇ────っ!!」
これが所謂、洗脳・催眠・調教!?
いやいや私の対魔力はAランクだ魔術とか効かんし、呪術だったら駄目か? だとすると…
「やっぱり狐かァ!」
「全く関係のないタマモさんが火傷しましたね。ここに来て刑部さんにも"へいと"が分散されましたし上乗」
「やだこの娘悪どい!?」
「恋は戦場ですので裏切り化かし合うのは普通ですね。心配なさらずとも私は嘘は吐きませんよ嘘だけは…フフ」
堂々と裏切るんですね分かります。暗黒微笑こわひ。
なお、これを町長さんの眼前で行われている。しかもノックもなく、扉を開けたと同時に茶番が始まっため、一度たりとも町長とは会話をしていない。
初対面も初対面であるのにも関わらずいきなりお偉いさんが言い争いを始めたとなれば恐らく戸惑っているだろう。
「お気になさらずどうぞお続け下さい」
特に狼狽えることも無く町長は私たちにそう言ってのけた。その手にはカメラがある。明らかに時代にそぐわないオーパーツだけど、書斎机の上に置かれたダンボールで全てを察した。ちょっと仕事早すぎんよアマゾネス。
何となく察していたけどギャグ時空その物の空間に住んでいる住民もギャグ深度が手遅れなのね。
「丁度此処に"ぶろまいど"が」
「言い値で買いましょう!」
「いえ、後でそれを分けて貰えればそれで」
清姫と町長は堅い握手と友情を育んだ。
「それで勇者様はどの様な御用向きでこちらへ?」
「流石町長ね私のパーフェクトな変装を見破るだなんて」
「その設定生きてたんですね…」
今回はありのままの領民の姿を見て、これからの税金の使い方を考えるんだから。勇者のエリザベートとしてアイドルのエリザベートとして行動してたら私に釘付けで平静じゃ居られないのは目に見えてる。
と言うか既に町長が一人私の魅力にシャッターが止まらない。ビキニアーマーだったら即死だった──っ!?
「ふにゃん!?」
明らかに下着の感触が消えた。その代わりに革とも金属とも取れる不思議な感触がひんやりと私の胸と股に残った。何処か慣れ親しんだ不快感だ。
間違いなく私はお気に入りの下着をチョイスして着てたはずだ。断じて呪われた防具なんて装備して来ていない。そもそも帰ったら地下に秒で封印してる。
「遂に特異点以外でも干渉してくるかこの痴女装備が!」
「今の一瞬、撮れましたか?」
「もちろんですプロですから」
遂にビキニアーマーはフラグを感知し強制換装をして来るらしい。服の下だからセーフと言う嘲笑混じりの戯言がこの呪具から聞こえるようだ。んなわけないでしょうが、着てるだけで不快だわ。
だが幸いな事にここでは呪いの装備も脱げる。
「町長! この街にランジェリーショップは?」
「ございますとも。宜しければご案内致しますが?」
甘かったなビッチアーマー。私は貴様を脱ぎ捨て自由になる。
「行くわよ清姫、間に合わなくなっても知らないから!」
「えぇ清姫は何処までもついて行きますわ」
「フィッティングルームの中までは入ってこないでね!」
小さい舌打ちが聞こえた。清姫の笑顔は少しも揺らがない。こわひ。
下着と言うのは個人個人で最適なサイズ存在する。ボディラインの維持はいつの世の女性にとっても最大の課題であり、使命だと言える。よってそれらの助けとなる女性下着メーカーは素材を吟味しカップを研究しデザインに頭を悩ませる。
つまりそこまで研磨された下着を私も着るのだが、もちろん採寸をされる訳だ。
「私のエリザ私エリザ私のエリザ私の──」
「ひえぇ…」
流石に身体との距離が近くにならざるを得ない状況だと落ち着いてきた清姫と言えどもジェラシーに身を焦がすらしい。比喩ではなく本当に身を焦がしているのが恐ろしすぎる。
「や、やはり私も試着室に入った方がいいと思うんです!」
「いやいや何がやはりなのか1ミクロンも理解出来ないんですけど?」
「ほ、他の女性がエリザの着替えを覗かないように私が超至近距離で護衛を!」
「その状況だと清姫越しでも見られるでしょ?」
「私でお隠し致します。私が『最終防衛らいん』です!」
真面目な顔で何をアホな事言っているんだこの娘。
「心配はご無用です。私は熱感知が出来ますので泥に塗れるなどしない限り対象を逃がしません」
何で試着するだけでそこまで大事になるのか私には理解不能だが、清姫の使命感溢れる表情を曇らせるのもアレなので業腹だが縦に頷いてやる。
「下着は私が受け取りますので、エリザはそこに立っていて下さいませ。脱がすのも、着せるのも、見るのも私だけで事足りますから!」
「それは私だけで事足りるわ! 護衛って目的どこ行った!?」
女性下着専門店とかはよく見ますが男性下着専門店って見ませんよねってお話でしたね。おかしい事に最初は本当にただのデートシーンを書く気だったんですよ。何処で間違えたのだろう。
カルデアについても近々書かないとなって思ってるので、暫く清エリで誤魔化しつつ設定を垂れ流してみましょうか…